説明

立体映像撮影アダプタ及び撮像装置

【課題】一つの撮像素子を有する撮像装置により左右視差を有する立体画像を撮影でき、光量を低下させず、カメラの画素を無駄にせずに、画角が広い撮像レンズも使用できる立体映像撮影カメラアダプタを提供する。
【解決手段】被写体からの入射光を直線偏光にする偏光フィルタ1と、この光の偏光方向を切り替える液晶パネル2と、光の偏光状態に応じてこの光を透過させ、または、反射する偏光分離面3aを有するPBS3と、液晶パネル2を駆動する液晶パネル駆動部とを備え、PBS3は、偏光分離面となるワイヤーグリッド3aと、ワイヤーグリッド3aの基材面に接着された第1のプリズム3bと、ワイヤーグリッド面に圧接された第2のプリズム3cとから構成され、被写体から水平方向一方側に入射した光を偏光分離面3aにより反射して撮影レンズ4に入射させ、被写体から水平方向他方側に入射した光を偏光分離面3aを透過させて撮影レンズ4に入射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの撮像素子を有する撮像装置により左右の視差を有する立体画像を撮影するための立体映像撮影アダプタ及びこの立体映像撮影アダプタを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの撮像素子で左右の視差を有する立体画像を撮影する立体撮像装置が提案されている。このような立体撮像装置としては、ハーフミラー及びフィールド周期で開閉する2個のシャッターを使用したものが提案されている。また、素通しガラス部とミラー部とが交互に現われる回転ミラーをレンズの前で回転させ、素通しガラス越しの光と、固定ミラーと回転ミラーとで反射光とが交互に撮影レンズに到達するようにした立体撮像装置も提案されている。
【0003】
そして、特許文献1には、単一の液晶シャッターで左右の入力画像を切り換えることができるようにした立体映像撮影カメラアダプタが記載されている。この立体映像撮影カメラアダプタは、被写体の光束を平行光に変換するレンズと、これらレンズから入射した光を所定方向の振動を有する光に変換する第1の偏光板と、第1の偏光板を透過した光の一部に位相差を与える位相差板と、第1の偏光板及び位相差板を透過した第1の透過光及び第1の偏光板のみを透過した第2の透過光の少なくとも一方の光路を変更して共通の光路上で合流させる光合流手段と、第1の偏光板の偏光軸と平行な第1の方向と、位相差板の光軸方向と直角な第2の方向との間で液晶分子の配向方向を変更可能な液晶シャッターと、第1の偏光板と直角方向に偏光軸を有する第2の偏光板とを有する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−75201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のような立体撮像装置において、左右の被写体光の合成にハーフミラーを使用すると、左右各々の被写体光の光量が30%程度に低下するという問題がある。
【0006】
特許文献1に記載された立体映像撮影カメラアダプタにおいては、左右被写体光の合成に誘電体多層膜からなる偏光ビームスプリッタを使用しているので、画角が極狭い超望遠レンズ以外では、左右画像の合成ができないという問題がある。また、液晶パネルを2枚の偏光フィルタで挟んだ液晶シャッタを左右被写体光の切り替えに使用しているので、光量が30%程度に低下するという問題がある。
【0007】
また、望遠鏡を2本並べた構造を有し、その2つの視野を一つのカメラで撮影する立体映像撮影カメラアダプタも提案されているが、画角が広げられないという問題がある。さらに、2つの画面を左右に並べて撮像するため、カメラの撮像素子を有効に使えず、画質が劣るという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、一つの撮像素子を有する撮像装置により左右の視差を有する立体画像を撮影することができる立体映像撮影アダプタであって、光量を低下させることなく、また、カメラの画素を無駄にせずに、画角が広い撮像レンズも使用することができる立体映像撮影カメラアダプタを提供することを目的とする。また、この立体映像撮影アダプタを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る立体映像撮影アダプタは、以下の構成の少なくとも一を有するものである。
【0010】
〔構成1〕
被写体から入射する光を直線偏光にする偏光フィルタと、偏光フィルタを通過した光の偏光方向を切り替える液晶パネルと、液晶パネルを通過した光の偏光状態に応じて光を透過させ、または、反射する偏光分離面を有し偏光分離面において光の進行方向を切り替える偏光ビームスプリッタと、入力される信号に同期して液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部とを備え、偏光ビームスプリッタは、平行平板の基材に形成された偏光分離面となるワイヤーグリッドと、ワイヤーグリッドの基材面側に接着された第1のプリズムと、ワイヤーグリッド側の面に圧接された第2のプリズムを含んで構成されており、被写体から偏光フィルタの水平方向の一方側に入射した光を、偏光分離面により反射して撮影レンズに入射させ、被写体から偏光フィルタの水平方向の他方側に入射した光を、偏光分離面を透過させて撮影レンズに入射させることを特徴とするものである。
【0011】
〔構成2〕
被写体から入射する光を直線偏光にする偏光フィルタと、偏光フィルタを通過した光の偏光方向を切り替える液晶パネルと、被写体から偏光フィルタの水平方向の一方側に入射した光を偏向させる偏向プリズムと、被写体から偏光フィルタの水平方向の一方側に入射し偏向プリズムにより偏向された光と被写体から偏光フィルタの水平方向の他方側に入射した光とが入射しこれら光の偏光状態に応じて光を透過させ、または、反射する偏光分離面を有し偏光分離面において光の進行方向を切り替える偏光ビームスプリッタと、入力される信号に同期して液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部とを備え、偏光ビームスプリッタは、平行平板の基材に形成された偏光分離面となるワイヤーグリッドと、ワイヤーグリッドの基材面側に接着された第1のプリズムと、ワイヤーグリッド側の面に圧接された第2のプリズムを含んで構成されており、被写体から偏光フィルタの水平方向の一方側に入射した光を、偏光分離面により反射して撮影レンズに入射させ、被写体から偏光フィルタの水平方向の他方側に入射した光を、偏光分離面を透過させて撮影レンズに入射させることを特徴とするものである。
【0012】
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する立体映像撮影アダプタにおいて、第1のプリズム及び第2のプリズムのワイヤーグリッドを挟む平面の面精度が55nm以下であり、ワイヤーグリッド基材の平面度が55nm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
〔構成4〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する立体映像撮影アダプタにおいて、偏光フィルタは、透過軸が偏光ビームスプリッタに対してS波、または、P波のいずれかとなるよう配置されており、液晶パネルは、その配向方向が偏光ビームスプリッタに対してS波、または、P波のいずれかとなるよう配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
〔構成5〕
構成1乃至構成4のいずれか一を有する立体映像撮影アダプタと一体化し、撮影レンズ及び撮像素子を備え、撮像素子を駆動する信号が液晶パネル駆動部の入力信号となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、偏光ビームスプリッタは、平行平板の基材に形成された偏光分離面となるワイヤーグリッドと、このワイヤーグリッド基材面に接着された第1のプリズムと、ワイヤーグリッド面に圧接された第2のプリズムとから構成されており、被写体から水平方向の一方側に入射した光を、偏光分離面により反射して撮影レンズに入射させ、被写体から水平方向の他方側に入射した光を、偏光分離面を透過させて撮影レンズに入射させる。
【0016】
本発明に係る立体映像撮影アダプタは、通常のカメラと同様の小型のカメラに対し、撮像同期信号の液晶パネルへの出力端子を設けるだけで、3D撮影が必要なときにのみ取り付けることが可能であり、3Dテレビの普及前後に渡って利用ができるカメラの提供が可能となる。また、カメラの画素を無駄にせず、高画質の立体映像を撮影できる。
【0017】
すなわち、本発明は、一つの撮像素子を有する撮像装置により左右の視差を有する立体画像を撮影することができる立体映像撮影アダプタであって、光量を低下させることなく、また、カメラの画素を無駄にせずに、画角が広い撮像レンズも使用することができる立体映像撮影カメラアダプタを提供することができるものである。また、この立体映像撮影アダプタを備えた撮像装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る立体映像撮影アダプタの第1の実施形態構成における光学系部分と光路を示す概念図である。
【図2】偏光ビームスプリッタ(PBS)の構成を示す平面図である。
【図3】本発明に係る立体映像撮影アダプタの第2の実施形態構成における光学系部分と光路を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係る立体映像撮影アダプタの第1の実施形態構成における光学系部分と光路を示す概念図である。図1は、左右の被写体光が上下に並ぶ向きで描いている。被写体からの光は、図1中の左から右に進む。
【0021】
被写体からの光は、最初に偏光フィルタ1を通過し、直線偏光となる。その偏光方向は、電場が水平方向(図1の紙面に平行な方向)に振動する向きである。この向きは、例えば、海面やガラステーブルの表面などの水平面を持つ透明物質の表面反射と同じ方向である。
【0022】
なお、偏光フィルタ1の向きを、透過光の電場が垂直方向に振動するように配置することも可能だが、この場合には、海面やガラステーブルの表面などからの反射光をカットしてしまう。海面やガラステーブルの表面などからの反射光は、撮影者に歓迎されず、通常のカメラでも偏光フィルタを用いてカットすることもある。しかし、海面やガラステーブルの表面などからの反射の有無については、撮影者の撮影意図を反映させるため、ここでは、電場が水平方向に振動する向きとなるように偏光フィルタ1の配置を決めている。
【0023】
偏光フィルタ1を経た直線偏光は、液晶パネル2を透過する。この液晶パネル2は、偏光フィルタ1の直後に配置されている。この液晶パネル2は、2枚の透明ガラス板の間に液晶物質が封入されて構成されている。各々の透明ガラス板には、透明電極と配光膜が設けられている。配光膜の配光方向は、入射光が液晶パネル2を透過したときに、その偏光方向が90度回転するように決められている。透明ガラス板の透明電極に電圧が加えられると、入射光は偏光方向を維持したまま射出する。すなわち、透明電極への電圧印加により、射出光の偏光方向を切り替えることができる。
【0024】
液晶パネル2を透過した直線偏光は、偏光ビームスプリッタ3(以下、「PBS3」という。)に入射する。このとき、被写体から偏光フィルタ1の右側(図1中の上側)に入射した光は、PBS3の第1のプリズム3bに入射し、被写体から偏光フィルタ1の左側(図1中の下側)に入射した光は、PBS3の第2のプリズム3cに入射する。第1のプリズム3bと第2のプリズム3cとの間には、偏光分離面となるワイヤーグリッド3aが配置されている。ワイヤーグリッド3aは、ガラスやプラスチックなどの透明基材表面に、可視光波長の1/4程度、すなわち、100nm乃至150nm間隔で、アルミ線の格子を設けたものである。
【0025】
図2は、偏光ビームスプリッタ(PBS)3の構成を示す平面図である。
【0026】
PBS3は、図2中の(a)に示すように、ワイヤーグリッド3aの基材を第1のプリズム3bの斜面に接着し、第2のプリズム3cの斜面をワイヤーグリッド3aの格子に押し付けて構成されている。この状態を維持したまま、図2中の(b)に示すように、第1のプリズム3bと第2のプリズム3cとを保持板6によって固定している。第2のプリズム3cの斜面とワイヤーグリッド3aの格子との間には接着剤を用いず、空隙も設けない。このとき、ワイヤーグリッド3aの格子が第2のプリズム3cの斜面に十分に接近できるように、各斜面の平面度は、可視光波長の1/10、すなわち、55nm以下の平面度とすることが望ましい。さらに、ワイヤーグリッド3aの厚み偏差も、同様に55nm以下とすることが望ましい。
【0027】
ワイヤーグリッド3aは垂直に配置されており、水平方向の直線偏光は、ワイヤーグリッド3aに対してP偏光となる。PBS3のワイヤーグリッド3aは、P偏光を透過させる向き、すなわち、入射面に直交する方向にワイヤーグリッドが伸びる方向に配置されている。
【0028】
被写体から偏光フィルタ1の右側(図1中の上側)に入射した光は、PBS3の第1のプリズム3bに入射し、ワイヤーグリッド3aにおいて反射されると、第1のプリズム3bから出射して、カメラの撮影レンズ4に入射し、撮像される。
【0029】
被写体から偏光フィルタ1の左側(図1中の下側)に入射した光は、PBS3の第2のプリズム3cに入射し、ワイヤーグリッド3aを透過すると、第1のプリズム3bに入射し、この第1のプリズム3bから出射して、カメラの撮影レンズ4に入射し、撮像される。
【0030】
被写体からの光は、以下の〔表1〕に示すように、液晶パネル2の透明電極への電圧印加の有無に応じて、偏光フィルタ1の右側(図1中の上側)に入射した光と、偏光フィルタ1の左側(図1中の下側)に入射した光とのいずれかが選択されて、撮影レンズ4に入射する。液晶パネル2の透明電極への電圧印加は、撮像素子を駆動する信号、すなわち、カメラの左右画像同期信号にしたがって、液晶パネル駆動部によって行なう。撮影レンズ4には、被写体からの光が左右交互に入射されることになる。
【0031】
【表1】

以上の構成により、1台のカメラで、時間順次に3D映像の撮影が可能となる。このようにして撮影した映像は、3D表示が可能なテレビモニタにより、立体映像として鑑賞することが可能となる。
【0032】
この立体映像撮影アダプタを外した状態のカメラは、通常のカメラと変わらない形状及び大きさとなる。また、この立体映像撮影アダプタと一体化させたカメラは、3D映像の撮影が可能な撮像装置となる。この場合にも、撮像素子を駆動する信号が、液晶パネル駆動部の入力信号となる。
【0033】
この立体映像撮影アダプタにおいて、PBS3は、ワイヤーグリッド3aを2つのプリズム3b,3cで挟んだキューブタイプである。このPBS3は、誘電体多層膜を用いたPBSよりも入射角度依存が少ないので、画角を広げることができる。また、パネルタイプのワイヤーグリッドと比較して、装置を大型化することなく、画角を広げることができる。
【0034】
また、金属膜を用いたハーフミラーよりも透過率が高いので、被写体光からの光量を低下させることがない。
【0035】
さらに、ワイヤーグリッド3aは、プリズム面に接着させず圧接させる構造であるため、偏光分離特性を悪化させずに、左右映像の漏れ(クロストーク)を低減させることができる。
【0036】
〔第2の実施の形態〕
図3は、本発明に係る立体映像撮影アダプタの第2の実施形態構成における光学系部分と光路を示す概念図である。図3は、左右の被写体光が上下に並ぶ向きで描いている。被写体からの光は、図3中の左から右に進む。
【0037】
この実施の形態において、第1の実施の形態との違いは、図3に示すように、PBS3の形状と、偏向プリズム5が追加されている点である。
【0038】
第1の実施の形態のPBS3では、左右被写体からの光が互いに平行に入射するが、この実施の形態におけるPBS3は、左右被写体からの光が互いに直角に入射する。そのため、左右被写体からの光の一方を90度曲げる必要があり、偏向プリズム5が追加されている。
【0039】
すなわち、被写体からの光は、偏光フィルタ1を通過し、直線偏光となる。その偏光方向は、電場が水平方向(図3の紙面に平行な方向)に振動する向きである。
【0040】
偏光フィルタ1を経た直線偏光は、液晶パネル2を透過する。この液晶パネル2は、偏光フィルタ1の直後に配置されている。この液晶パネル2の配光膜の配光方向は、入射光が液晶パネル2を透過したときに、その偏光方向が90度回転するように決められている。液晶パネル2の透明ガラス板の透明電極に電圧が加えられると、入射光は偏光方向を維持したまま射出する。すなわち、透明電極への電圧印加により、射出光の偏光方向を切り替えることができる。
【0041】
被写体から偏光フィルタ1の右側(図3中の上側)に入射した光は、偏向プリズム5に入射し、光路を90°偏向させて、PBS3に側面から第1のプリズム3bに入射する。被写体から偏光フィルタ1の左側(図3中の下側)に入射した光は、PBS3に正面から第2のプリズム3cに入射する。
【0042】
PBS3の構成は、第1の実施の形態におけるものと同様である。第1のプリズム3bと第2のプリズム3cとの間には、偏光分離面となるワイヤーグリッド3aが配置されている。ワイヤーグリッド3aは垂直に配置されており、水平方向の直線偏光は、ワイヤーグリッド3aに対してP偏光となる。PBS3のワイヤーグリッド3aは、P偏光を透過させる向き、すなわち、入射面に直交する方向にワイヤーグリッドが伸びる方向に配置されている。
【0043】
被写体から偏光フィルタ1の右側(図3中の上側)に入射した光は、PBS3の第1のプリズム3bに入射し、ワイヤーグリッド3aにおいて反射されると、第1のプリズム3bから出射して、カメラの撮影レンズ4に入射し、撮像される。
【0044】
被写体から偏光フィルタ1の左側(図3中の下側)に入射した光は、PBS3の第2のプリズム3cに入射し、ワイヤーグリッド3aを透過すると、第1のプリズム3bに入射し、この第1のプリズム3bから出射して、カメラの撮影レンズ4に入射し、撮像される。
【0045】
被写体からの光は、前記した〔表1〕に示すように、液晶パネル2の透明電極への電圧印加の有無に応じて、偏光フィルタ1の右側(図3中の上側)に入射した光と、偏光フィルタ1の左側(図3中の下側)に入射した光とのいずれかが選択されて、撮影レンズ4に入射する。液晶パネル2の透明電極への電圧印加は、撮像素子を駆動する信号、すなわち、カメラの左右画像同期信号にしたがって、液晶パネル駆動部によって行なう。撮影レンズ4には、被写体からの光が左右交互に入射されることになる。
【0046】
以上の構成により、1台のカメラで、時間順次に3D映像の撮影が可能となる。このようにして撮影した映像は、3D表示が可能なテレビモニタにより、立体映像として鑑賞することが可能となる。
【0047】
この立体映像撮影アダプタを外した状態のカメラは、通常のカメラと変わらない形状及び大きさとなる。また、この立体映像撮影アダプタと一体化させたカメラは、3D映像の撮影が可能な撮像装置となる。この場合にも、撮像素子を駆動する信号が、液晶パネル駆動部の入力信号となる。
【0048】
この立体映像撮影アダプタにおいて、PBS3は、ワイヤーグリッド3aを2つのプリズム3b,3cで挟んだキューブタイプである。このPBS3は、誘電体多層膜を用いたPBSよりも入射角度依存が少ないので、画角を広げることができる。また、パネルタイプのワイヤーグリッドと比較して、装置を大型化することなく、画角を広げることができる。
【0049】
また、金属膜を用いたハーフミラーよりも透過率が高いので、被写体光からの光量を低下させることがない。
【0050】
さらに、ワイヤーグリッド3aは、プリズム面に接着させず圧接させる構造であるため、偏光分離特性を悪化させずに、左右映像の漏れ(クロストーク)を低減させることができる。
【0051】
なお、偏向プリズム5に代えて、鏡を用いてもよい。鏡を用いると、安価で軽量に作ることが可能だが、光が通過する空間が大きくなってしまう、すなわち、装置全体を大きくしてしまう虞がある。一方、偏向プリズム5を用いると、屈折率に応じて光の通過する空間が小さくなるうえ、反射は斜面の全反射により行なわれるため、光の損失が無い。
【0052】
ただし、使用するカメラの画角が広い場合には、画面周辺部光のプリズム斜面入射角が小さくなり、全反射ができなくなる。そのため、必要な画角に応じて、偏向プリズム5をなす素材の屈折率を決める必要がある。必要に応じて、偏向プリズム5、鏡、あるいは、斜面にミラーコートを施した偏向プリズムなどを選択することができる。
【0053】
〔その他の実施の形態〕
前述の各実施の形態においては、被写体からの光が、偏光フィルタ1、液晶パネル2及びPBS3を経て、カメラ4に至る光路を構成しているが、本発明に係る立体映像撮影アダプタは、このような光路を構成するものに限定されない。すなわち、この立体映像撮影アダプタは、液晶パネル2及び偏光フィルタ1を、PBS3及びカメラ4の間に配置しても構成することができる。
【0054】
この場合には、前述の第1の実施の形態に相当する構成においては、被写体からの光は、まずPBS3に入射し、次いで、液晶パネル2及び偏光フィルタ1を経て、カメラ4に至る。
【0055】
被写体からPBS3の第1のプリズム3bに入射した光のうちのS偏光成分は、ワイヤーグリッド3aにおいて反射され、第1のプリズム3bから出射して、液晶パネル2に至る。また、被写体からPBS3の第2のプリズム3cに入射した光のうちのP偏光成分は、ワイヤーグリッド3aを透過して、第1のプリズム3bから出射して、液晶パネル2に至る。これらS偏光成分及びP偏光成分は、液晶パネル2の透明電極への電圧印加の有無に応じて、偏光方向を変換されて、または、変換されずに液晶パネル2を透過する。そして、この光は、偏光フィルタ1に至り、この偏光フィルタを透過する偏光成分のみが、偏光フィルタを透過して、カメラの撮影レンズ4に入射し、撮像される。
【0056】
液晶パネル2の透明電極への電圧印加は、カメラの左右画像同期信号にしたがって液晶パネル駆動部によって行なうので、撮影レンズ4には、被写体からの光が左右交互に入射されることになる。
【0057】
また、前述の第2の実施の形態に相当する構成においては、被写体からの光は、PBS3及び偏向プリズム5に入射し、偏向プリズム5に入射した光はPBS3に入射し、次いで、液晶パネル2及び偏光フィルタ1を経て、カメラ4に至る。
【0058】
被写体から偏光プリズム5に入射し、PBS3の第1のプリズム3bに入射した光のうちのS偏光成分は、ワイヤーグリッド3aにおいて反射され、第1のプリズム3bから出射して、液晶パネル2に至る。また、被写体からPBS3の第2のプリズム3cに入射した光のうちのP偏光成分は、ワイヤーグリッド3aを透過して、第1のプリズム3bから出射して、液晶パネル2に至る。これらS偏光成分及びP偏光成分は、液晶パネル2の透明電極への電圧印加の有無に応じて、偏光方向を変換されて、または、変換されずに液晶パネル2を透過する。そして、この光は、偏光フィルタ1に至り、この偏光フィルタを透過する偏光成分のみが、偏光フィルタを透過して、カメラの撮影レンズ4に入射し、撮像される。
【0059】
液晶パネル2の透明電極への電圧印加は、カメラの左右画像同期信号にしたがって液晶パネル駆動部によって行なうので、撮影レンズ4には、被写体からの光が左右交互に入射されることになる。
【0060】
このように、液晶パネル2及び偏光フィルタ1を、PBS3及びカメラ4の間に配置した場合には、偏光フィルタ1及び液晶パネル2を小型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、一つの撮像素子を有する撮像装置により左右の視差を有する立体画像を撮影するための立体映像撮影アダプタに適用され、また、この立体映像撮影アダプタを備えた撮像装置に適用される。
【符号の説明】
【0062】
1 偏光フィルタ
2 液晶パネル
3 PBS
3a ワイヤーグリッド
3b 第1のプリズム
3c 第2のプリズム
4 撮影レンズ
5 偏向プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から入射する光を直線偏光にする偏光フィルタと、
前記偏光フィルタを通過した光の偏光方向を切り替える液晶パネルと、
前記液晶パネルを通過した光の偏光状態に応じて光を透過させ、または、反射する偏光分離面を有し、前記偏光分離面において光の進行方向を切り替える偏光ビームスプリッタと、
入力される信号に同期して前記液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部と
を備え、
前記偏光ビームスプリッタは、平行平板の基材に形成された前記偏光分離面となるワイヤーグリッドと、前記ワイヤーグリッドの基材面側に接着された第1のプリズムと、ワイヤーグリッド側の面に圧接された第2のプリズムを含んで構成されており、
前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の一方側に入射した光を、前記偏光分離面により反射して撮影レンズに入射させ、前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の他方側に入射した光を、前記偏光分離面を透過させて前記撮影レンズに入射させる
ことを特徴とする立体映像撮影アダプタ。
【請求項2】
被写体から入射する光を直線偏光にする偏光フィルタと、
前記偏光フィルタを通過した光の偏光方向を切り替える液晶パネルと、
前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の一方側に入射した光を偏向させる偏向プリズムと、
前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の一方側に入射し前記偏向プリズムにより偏向された光と、前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の他方側に入射した光とが入射し、これら光の偏光状態に応じて光を透過させ、または、反射する偏光分離面を有し、前記偏光分離面において光の進行方向を切り替える偏光ビームスプリッタと、
入力される信号に同期して前記液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部と
を備え、
前記偏光ビームスプリッタは、平行平板の基材に形成された前記偏光分離面となるワイヤーグリッドと、前記ワイヤーグリッドの基材面側に接着された第1のプリズムと、ワイヤーグリッド側の面に圧接された第2のプリズムを含んで構成されており、
前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の一方側に入射した光を、前記偏光分離面により反射して撮影レンズに入射させ、前記被写体から前記偏光フィルタの水平方向の他方側に入射した光を、前記偏光分離面を透過させて前記撮影レンズに入射させる
ことを特徴とする立体映像撮影アダプタ。
【請求項3】
前記第1のプリズム及び前記第2のプリズムの前記ワイヤーグリッドを挟む平面の面精度が55nm以下であり、ワイヤーグリッド基材の平面度が55nm以下である
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の立体映像撮影アダプタ。
【請求項4】
前記偏光フィルタは、透過軸が前記偏光ビームスプリッタに対してS波、または、P波のいずれかとなるよう配置されており、
前記液晶パネルは、その配向方向が前記偏光ビームスプリッタに対してS波、または、P波のいずれかとなるよう配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の立体映像撮影アダプタ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の立体映像撮影アダプタと一体化し、前記撮影レンズ及び撮像素子を備え、
前記撮像素子を駆動する信号が、前記液晶パネル駆動部の入力信号となる
ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−123098(P2012−123098A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272572(P2010−272572)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】