説明

立体映像用メガネ、立体映像用表示装置および立体映像表示システム

【課題】使用者の両眼の並んでいる方向が水平方向から傾いたときにも使用者の疲労を回避できる立体映像用メガネ,表示装置および立体映像表示システムを提供する。
【解決手段】この立体映像表示システムでは、立体映像用メガネ102の傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合に、制御IC4は液晶駆動回路3を制御して、右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2の両方を閉じさせる。これにより、現在の姿勢では眼の疲労を招くことを視聴者に警告できると共に視聴者の眼の疲労を回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立体映像用メガネ、立体映像用表示装置および立体映像表示システムに関し、より詳細には、テレビジョン受像機、パーソナルコンピュータ、プロジェクター等の立体映像表示装置に対応可能な立体映像用メガネ,立体映像用表示装置および立体映像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン受像機やパーソナルコンピュータ等の表示装置を有する電子機器では、立体映像表示方式として、左眼用の映像と右眼用の映像とを液晶シャッターにて切換えるためのメガネ(立体映像用メガネ)を用いるのが一般的である。
【0003】
実開昭64−19915号公報(特許文献1)には、ワイヤレス立体視用シャッターメガネが開示されている。このワイヤレス立体視用シャッターメガネは、図9の外観斜視図および図10の要部断面図に示すように、メガネフレーム1001に取り付けた右眼用液晶シャッター1002と左眼用液晶シャッター1003、上記メガネフレーム1001の上縁に取り付けた受信部1004、この受信部1004に取り付けたヘッドバンド1005を備える。上記受信部1004は、赤外光透過フィルタ1010とシェードカバー1006を有し、このシェードカバー1006に受光素子1009と信号処理回路1007を内蔵している。赤外線通信により送られてくる液晶シャッター切り替えタイミング信号を受光素子1009で受信し、信号処理回路1007で液晶駆動信号に変換し、この液晶駆動信号で右眼用液晶シャッター1002と左眼用液晶シャッター1003を開閉制御する。また、上記ヘッドバンド1005には、上記液晶シャッター1002,1003を開閉制御する装置を駆動するための電源装置1008が取り付けられている。
【0004】
また、特開平8−265863号公報(特許文献2)には、立体映像装置の液晶シャッターメガネのシャッター作用を遠隔制御するシステムが開示されている。このシステムでは、図11の外観図に示すように、遠隔制御信号を送出する送信装置2012をテレビジョン受像機2011の上に設置し、上記送信装置2012から左右の画像に同期したメガネシャッター切り替え信号を送信する。一方、液晶シャッターメガネ2020は、ツル(メガネ枠)2021に左右の眼に対応する液晶シャッター2022,2023が取り付けられ、ツル2021の前部中央に受信装置2004が装着されている。この受信装置2004で上記送信装置2012からのメガネシャッター切り替え信号を受信する。
【0005】
上記送信装置2012が送信するメガネシャッター切り替え信号は、テレビジョンの遠隔操作信号のうちの一つで、シャッター切り替えのための信号であることを識別する符号と、左眼用であるか右眼用であるかを区別する符号でなるコード信号であり、このコード信号によって搬送波を変調し、赤外線等によって送信装置2012の筐体の窓2013から送信される。
【0006】
図12に示すように、送信装置2011から赤外線信号として送られて来たメガネシャッター切り替え信号は、受信装置2004の受信部2102の光電変換器で受光され、波形整形されたコード信号として、デコーダ2103に供給される。デコーダ2103は受信した信号を復号化してシャッター信号としてシャッターメガネ駆動装置2104に送る。シャッターメガネ駆動装置2104は、デコーダ2103から供給される制御信号としてのシャッター信号に従って、液晶シャッターメガネ2020の左眼用液晶シャター2022と右眼用液晶シャッター2023のシャッター動作を行う。なお、このシステムでは、パルス発生回路2107の出力パルスと受信部2102の出力とを位相比較器2108で比較してパルス発生回路2107を制御し、パルス発生回路2107の出力パルスの位相を受信部2102の出力パルスの位相に同期させる。これにより、スイッチ2106をオンオフさせて、コード信号が来ていない期間に受信部2102に電源が供給されないようにし消費電力を少なくしている。
【0007】
ところで、立体画像表示装置を見る場合、少なくとも2種類の視差のある左眼用の表示画像と右目用の表示画像を1つのスクリーン上に表示し、レンズや回析格子による屈折作用もしくは装着した立体映像用メガネの作用によって、視聴者の左眼には左眼用の表示画像からの光が入射し、右目には右目用の表示画像からの光が入射するようにしている。
【0008】
ところが、視聴者が、上述の様な液晶シャッターを利用して立体映像を見ることができる立体映像用メガネをかけているときに、立体映像表示装置の左眼用の画像と右目用の画像が並んでいる方向に対して視聴者の左右の目が並んでいる方向が傾いていると、視聴者は疲労を感じることが知られている(特開2001−296501号公報(特許文献3)参照)。
【0009】
このため、上記特許文献1および特許文献2に開示された立体映像用メガネによれば、ワイヤレスで両眼視差を利用した表示装置の立体映像を見ることができるが、両眼が水平から傾いた状態でもメガネの液晶シャッターはオンオフを繰り返すので、例えば、視聴者が寝転がって立体映像を見続けると気分が悪くなるなど身体的に好ましくない状況になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭64−19915号公報
【特許文献2】特開平8−265863号公報
【特許文献3】特開2001−296501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明の課題は、使用者の両眼が水平方向から傾いたときにも使用者の疲労を回避可能な立体映像用メガネ,表示装置および立体映像表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明の立体映像用メガネは、表示装置が時間的に交互に表示する右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を上記表示装置から受信する受信部と、
右眼用の液晶シャッターと、
左眼用の液晶シャッターと、
上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターとを独立に開閉制御する液晶シャッター駆動制御部と、
上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向の水平方向からの傾斜を検出する傾きセンサと
を備え、
上記液晶シャッター駆動制御部は、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を閉じる第1の駆動制御と、上記表示装置の右眼用映像または左眼用映像の一方の映像が上記表示装置に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開き、上記表示装置の右眼用映像または左眼用映像の他方の映像が上記表示装置に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を閉じる第2の駆動制御と、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開ける第3の駆動制御の3つの駆動制御のうちのいずれか1つの駆動制御を行なう一方、上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出していない場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターを交互に開閉させる第4の駆動制御を行なうことを特徴としている。
【0013】
この発明の立体映像用メガネによれば、使用者が頭を傾ける等して、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向が水平方向から予め定められた角度以上に傾斜した場合に、上記液晶シャッター駆動制御部が、上記第1〜第3の駆動制御のうちのいずれか1つの駆動制御を行なうことで、使用者の眼の疲労を回避できる。
【0014】
すなわち、上記第1の駆動制御では、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を閉じるので、表示装置の立体視用映像が見えなくなり、現在の姿勢では眼の疲労を招くことを警告できると共に眼の疲労を回避できる。また、上記第2の駆動制御では、右眼用および左眼用の液晶シャッターの開閉を同期させて、使用者に右眼用映像または左眼用映像のいずれか一方の映像だけを見させるので、眼の疲労を回避できる。また、上記第3の駆動制御では、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開けるので、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターを交互に開閉させる場合に比べて、眼の疲労を軽減できる。
【0015】
また、一実施形態の立体映像用メガネでは、送信部と、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、第一の信号を上記送信部から上記表示装置へ送信させる一方、上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出していない場合に、第二の信号を上記送信部から上記表示装置へ送信させる送信制御部を備え、
上記液晶シャッター駆動制御部は、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開ける第3の駆動制御を行なう。
【0016】
この実施形態の立体映像用メガネによれば、使用者が頭を傾ける等して、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向が水平方向から予め定められた角度以上に傾斜した場合に、上記送信部から上記第一の信号を上記表示装置に送信して、上記表示部に立体視を生じない2次元映像を表示させる。したがって、上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開けることで、使用者は通常の2D(2次元)映像を見ることとなり、眼の疲労を軽減できる。
【0017】
また、一実施形態の立体映像用メガネでは、上記傾きセンサを、MEMS型加速度センサで構成した。
【0018】
この実施形態の立体映像用メガネによれば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)型加速度センサで傾きセンサを構成することで、傾きセンサを小型化でき、身体的なストレスをかけない小型軽量の立体映像用メガネを実現できる。
【0019】
また、一実施形態の立体映像用メガネでは、上記傾きセンサを、
上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向が水平方向から傾斜したときに、発光素子から受光素子への光が遮光されるようにしたフォトインタラプタで構成したことを特徴としている。
【0020】
この実施形態の立体映像用メガネによれば、傾きセンサを低コストで実現でき、身体的なストレスをかけない低コストな立体映像用メガネを実現できる。
【0021】
また、一実施形態の立体映像用メガネでは、上記液晶シャッター駆動制御部は、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出して、上記第1〜第3の駆動制御のうちのいずれか1つの駆動制御を行なってから、上記傾きセンサが上記予め定められた角度よりも予め定められたハンチング回避角度以上小さい傾斜を検出したときに、上記第4の駆動制御を行なう。
【0022】
この実施形態の立体映像用メガネによれば、上記第1〜第3の駆動制御による眼の疲労回避動作に入る上記右眼用および左眼用の液晶シャッターの傾斜角度よりも予め定められたハンチング回避角度(一例として5度)以上小さい傾斜角度に戻ったときに第4の駆動制御による立体視動作を行なう。これにより、上記液晶シャッターの小さな揺れ等で疲労回避動作と立体視動作とが頻繁に切り替わることを回避でき、動作の切り替えを安定化できる。
【0023】
また、一実施形態は、右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に表示する表示装置であり、
請求項2から5のいずれか1つに記載の立体映像用メガネの受信部に、右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を送信する表示側の送信部と、
表示側の受信部とを備え、
上記表示側の受信部が、上記立体映像用メガネの送信部から上記第一の信号を受信した場合に、立体視を生じない2次元映像を表示する一方、上記表示側の受信部が上記立体映像用メガネの送信部から上記第二の信号を受信した場合に、上記右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に表示する。
【0024】
この実施形態の表示装置によれば、上記立体映像用メガネが予め定められた角度以上の傾斜を検出して、上記立体映像用メガネの送信部から上記立体視を生じない2次元映像を表示させるための第一の信号を受信すると、上記立体視を生じない2次元映像を表示する。よって、上記立体映像用メガネが、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開ける第3の駆動制御を行なうことで、使用者は、通常通りの明るい2次元映像を見ることができ、眼の疲労を回避して使用者の身体的なストレスを防止できる。
【0025】
また、一実施形態の立体映像表示システムは、上記立体映像用メガネと上記表示装置とを備える。
【0026】
この実施形態の立体映像表示システムによれば、使用者が予め定められた角度以上に両眼を傾けた時に表示装置の表示映像を立体視用映像から2次元映像に自動的に切り替えて、身体的なストレスをかけない立体映像表示システムを実現できる。
【0027】
また、一実施形態の立体映像表示システムでは、上記立体映像用メガネの受信部および送信部と、上記表示側の受信部および送信部とが、赤外線通信を行なうことにより双方向通信を行なう。
【0028】
この実施形態の立体映像表示システムによれば、双方向通信を赤外線通信で行なうので、指向性が高く混信を回避できる。
【0029】
また、一実施形態の立体映像表示システムでは、上記立体映像用メガネの受信部および送信部と、上記表示側の受信部および送信部とが、電波無線通信を行なうことにより双方向通信を行なう。
【0030】
この実施形態の立体映像表示システムによれば、双方向通信を無線通信で行なうので、通信が無指向性のためメガネが水平方向のどんな角度にあっても液晶シャッターの開閉が途切れることがなく、身体的なストレスをかけない立体映像表示システムを実現できる。
【発明の効果】
【0031】
この発明の立体映像用メガネによれば、使用者が頭を傾ける等して、右眼用の液晶シャッターと左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向が水平方向から予め定められた角度以上に傾斜した場合に、自動的に両方の液晶シャッターを閉じて映像を見えなくするか、使用者に2次元映像を見させるように液晶シャッターを制御して、使用者の眼の疲労を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の立体映像用メガネの第1,2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】上記立体映像用メガネの斜視図である。
【図3】上記立体映像用メガネの水平姿勢と傾斜姿勢を示す正面図である。
【図4】この発明の立体映像用メガネの第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5A】傾きセンサの一例を示す上面図である。
【図5B】図5AのA‐A’断面図である。
【図5C】図5AのB‐B’断面図である。
【図6】赤外線送信部と赤外線受信部を備えた上記第1,第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図7】電波無線送受信部を備えた上記第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】上記第1〜第3実施形態の立体映像用メガネの液晶シャッター駆動制御部の変形例の動作を説明する模式図である。
【図9】従来の立体映像用メガネの外観を示す斜視図である。
【図10】上記従来の立体映像用メガネの断面図である。
【図11】従来の立体映像表示システムを示す斜視図である。
【図12】上記従来の立体映像表示システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の立体映像表示システムの第1実施形態の構成を簡略に示すブロック図である。この立体映像表示システムは、立体映像用表示装置101と立体映像用メガネ102とで構成されている。上記立体映像用表示装置101は、送信部10と立体映像表示部11とを備え、この立体映像表示部11は、右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に映像表示する。また、上記送信部10は、上記右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を送信する。
【0035】
この送信部10が送信した左右映像切換えタイミング信号は、立体映像用メガネ102が備える受信部9で受信される。
【0036】
図2は、上記立体映像用メガネ102の斜視図である。この立体映像用メガネ102は、メガネフレーム23と、このメガネフレーム23に取り付けられた右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2を有する。また、上記メガネフレーム23には、回路基板22が取り付けられ、この回路基板22は、フレキシブル基板24でバッテリー8に電気的に接続されている。また、上記フレキシブル基板24は、上記右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2をバッテリー8と回路基板22に電気的に接続している。また、上記メガネフレーム23の右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2との間に傾きセンサ6が取り付けられ、この傾きセンサ6は上記フレキシブル基板24でバッテリー8と回路基板22に電気的に接続されている。この傾きセンサ6は、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2が並んでいる方向の水平方向からの傾斜を検出する。
【0037】
この回路基板22は、図1のブロック図に示す液晶駆動回路3と制御IC4と受信部9およびI/F(インターフェイス)部7とを含む。このI/F部7は、制御IC4と受信部9との間のインターフェイスおよび制御IC4と液晶駆動回路3との間のインターフェイスをなす。また、上記制御IC4は、MPU(マイクロプロセッサ)と記憶部であるROM(リードオンリメモリ)5を含み、受信部9からI/F部7を通して入力される左右映像切換えタイミング信号に基づいて、液晶駆動回路3を制御し、上記液晶駆動回路3は上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターを交互に開閉させる。上記制御ICと液晶駆動回路3が液晶シャッター駆動制御部を構成している。上記記憶部としてのROMには、後述する予め定められた角度θ等の情報が記憶されている。
【0038】
上記右眼,左眼用の液晶シャッター1,2は短冊状の液晶シャッターであり、人がこの立体映像用メガネ102を掛けたとき、短冊の長手方向が地面に対し略垂直な方向となる。また、上記液晶シャッター1,2の中心とは、この中心を結んだ中心線が液晶シャッター1,2の短冊の長手方向に対し垂直な方向(つまり、地面に対して略水平な方向)となるような仮想的な点である。人がこの立体映像用メガネ102を掛けたとき、この人の両目を結ぶ方向を人の顔の方向とすると、この人の顔が水平方向であるときにはこの立体映像用メガネ102の中心線と平行になると考えられる。したがって、人の顔が地面に対して水平方向から傾いたとき、立体映像用メガネ102も水平方向から傾くと考えられる。
【0039】
この立体映像用メガネ102の傾きセンサ6は、図2に示すように、液晶シャッター1,2の間に垂直に取り付けられ、水平方向に対する立体映像用メガネ102の傾きが検知できるように配置されている。なお、傾きセンサ6は、水平方向からの傾きを検知できるのであれば配置場所は上記の位置に限らない。
【0040】
上記構成の立体映像表示システムでは、上記立体映像用表示装置101は、立体映像表示部11に右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に映像表示し、上記送信部10は、上記右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を送信する。
【0041】
一方、上記立体映像用メガネ102の受信部9は、上記左右映像切換えタイミング信号を受信して、制御IC4に入力する。また、この制御IC4には、上記傾きセンサ6の出力が入力される。制御IC4は、上記傾きセンサ6が検出した上記立体映像用メガネ102の傾斜が予め定められた角度θ(例えば20°)未満である場合に、上記左右映像切換えタイミング信号に従って、液晶駆動回路3を制御し、液晶駆動回路3に上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2を交互に開閉させる(第4の駆動制御)。これにより、上記立体映像用表示装置101に右眼用映像が表示されているときに上記右眼用の液晶シャッター1を開いて上記左眼用の液晶シャッター2が閉じられ、上記立体映像用表示装置101に左眼用映像が表示されているときに上記右眼用の液晶シャッター1を閉じて上記左眼用の液晶シャッター2を開かれる。よって、この立体映像用メガネ102を着用した視聴者は、上記右眼用映像と左眼用映像による立体映像を視聴できる。
【0042】
次に、上記視聴者の両眼が上記立体映像用表示装置101の立体映像表示部11に向かった状態で、上記視聴者の顔が水平方向から20°以上傾斜すると、傾きセンサ6は、図3に一点鎖線で示すように、上記右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2が並んでいる方向が水平方向hから20°以上の角度θ傾斜したことを検出する。すると、上記制御IC4は、液晶駆動回路3を制御し、液晶駆動回路3に上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を閉じさせる(第1の駆動制御)。これにより、上述のように両眼の方向が水平方向hから20°以上傾いた状態では右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2の両方が閉じたままの状態となって視聴者は、上記立体映像表示部11の立体視用映像が見えなくなる。これによって、現在の姿勢では眼の疲労を招くことを視聴者に警告できると共に視聴者の眼の疲労を回避できる。
【0043】
次に、上記視聴者の顔が水平方向に近づいて傾斜角度が20°未満になると、上記傾きセンサ6は、上記立体映像用メガネ102の水平方向hからの傾きが予め定められた角度θ(例えば20°)未満であることを検出する。すると、上記制御IC4は、液晶駆動回路3を制御して上記左右映像切換えタイミング信号に従って、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2を交互に開閉させる(第4の駆動制御)。これにより、上記視聴者は、上記立体映像表示部11に表示された上記右眼用映像と左眼用映像による立体映像を視聴できる。
【0044】
なお、上記説明では、図3に例示するように、上記立体映像用メガネ102に向かって時計回りの方向に水平方向hから傾斜した場合を説明したが、向かって反時計回りの方向に立体映像用メガネ102が水平方向hから傾斜した場合も同様である。
【0045】
また、上記第1実施形態において、上記傾きセンサ6が予め定められた角度θ(例えば20°)以上の傾斜を検出して、上記制御IC4と液晶駆動回路3により、上記疲労回避のための第1の駆動制御を行なってから、上記傾きセンサ6が上記予め定められた角度θ(例えば20°)よりも予め定められたハンチング回避角度、例えば5度以上小さい傾斜を検出したときに、上記制御IC4と液晶駆動回路3により、上記第1の駆動制御から上記第4の駆動制御に切り替えるようにしてもよい。この場合、図8に例示するように、上記第1の駆動制御による眼の疲労回避動作に入る上記右眼用および左眼用の液晶シャッター1,2の傾斜角度θ1よりも5度以上小さい傾斜角度θ2に戻ったときに第4の駆動制御による立体視動作を行なう。これにより、上記液晶シャッターの小さな揺れ等で第1〜第3の駆動制御による疲労回避動作と第4の駆動制御による立体視動作とが頻繁に切り替わることを回避でき、動作の切り替えを安定化できる。
【0046】
(第2の実施の形態)
次に、この発明の立体映像表示システムの第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、図1のブロック図に示す制御IC4の制御内容が、前述の第1実施形態の制御IC4と異なる点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、主に制御IC4の制御内容について説明する。
【0047】
この第2実施形態では、制御IC4は、上記傾きセンサ6の出力が入力され、上記傾きセンサ6が検出した上記立体映像用メガネ102の傾斜が予め定められた角度θ(例えば20°)以上ではない場合に、上記左右映像切換えタイミング信号に従って、液晶駆動回路3を制御し、液晶駆動回路3に上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2を交互に開閉させる(第4の駆動制御)。この第4の駆動制御によって、視聴者に立体映像を見せる点は、前述の第1実施形態と同様である。
【0048】
一方、上記視聴者の両眼が上記立体映像用表示装置101の立体映像表示部11に向かった状態で、上記視聴者の顔が水平方向から20°以上傾斜すると、傾きセンサ6は、図3に一点鎖線で示すように、上記右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2が並んでいる方向が水平方向hから20°以上の角度θ傾斜したことを検出する。すると、上記制御IC4は、上記左右映像切換えタイミング信号に基づいて上記立体映像用表示装置101の右眼用映像が上記立体映像表示部11に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を開き、左眼用映像が上記立体映像表示部11に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を閉じる(第2の駆動制御)。
【0049】
その後、上記傾きセンサ6が上記立体映像用メガネ102の水平方向hからの傾きが予め定められた角度θ(例えば20°)未満であることを検出すると、上記制御IC4により液晶駆動回路3を制御して右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2を交互に開閉させる(第4の駆動制御)。
【0050】
したがって、この第2実施形態によれば、視聴者が頭を傾ける等して、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2が並んでいる方向が水平方向から予め定められた角度(例えば、20°)以上に傾斜した場合に、右眼用の液晶シャッター1および左眼用の液晶シャッター2の開閉を同期させて、視聴者に右眼用映像と左眼用映像のうちの右眼用映像だけを見させる。これにより、視聴者は、予め定められた角度以上に両眼を傾けた時に自動的に立体映像から2次元映像に切り替えられた映像を視聴するから、眼の疲労を回避して身体的なストレスをかけない立体映像表示システムを実現できる。
【0051】
なお、上記制御IC4は、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合に、左眼用映像が上記立体映像表示部11に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を開き、右眼用映像が上記立体映像表示部11に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を閉じる制御を第2の駆動制御として行なってもよい。この場合、視聴者が頭を傾ける等して、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2が並んでいる方向が水平方向から予め定められた角度(例えば、20°)以上に傾斜した場合に、視聴者に右眼用映像と左眼用映像のうちの左眼用映像だけを見させる。
【0052】
また、上記第2実施形態において、上記傾きセンサ6が予め定められた角度θ(例えば20°)以上の傾斜を検出して、上記制御IC4と液晶駆動回路3により、上記疲労回避のための第2の駆動制御を行なってから、上記傾きセンサ6が上記予め定められた角度θ(例えば20°)よりも予め定められたハンチング回避角度、例えば5度以上小さい傾斜を検出したときに、上記制御IC4と液晶駆動回路3により、上記第2の駆動制御から上記第4の駆動制御に切り替えるようにしてもよい。この場合、図8に例示するように、上記第2の駆動制御による眼の疲労回避動作に入る上記右眼用および左眼用の液晶シャッター1,2の傾斜角度θ1よりも5度以上小さい傾斜角度θ2に戻ったときに第4の駆動制御による立体視動作を行なう。これにより、上記液晶シャッターの小さな揺れ等で第1〜第3の駆動制御による疲労回避動作と第4の駆動制御による立体視動作とが頻繁に切り替わることを回避でき、動作の切り替えを安定化できる。
【0053】
(第3の実施の形態)
次に、この発明の立体映像表示システムの第3実施形態を説明する。この第3実施形態は、図4に示すように、図1の立体映像用表示装置101に替えて立体映像用表示装置201を備え、図1の立体映像用メガネ102に替えて立体映像用メガネ202を備える。この立体映像用メガネ202は、受信部9に替えて送信部と受信部を含んだ送受信部31を有する点、および、制御IC4に替えて制御IC34を有する点が、前述の立体映像用メガネ102と異なる。したがって、この第3実施形態では、上記立体映像用メガネ202については、前述の第1実施形態の立体映像用メガネ102と同じ構成部分に同じ符号を付して、前述の第1実施形態の立体映像用メガネ102と異なる部分を主に説明する。
【0054】
この第3実施形態では、上記立体映像用表示装置201は、送信部と受信部を含んだ送受信部30と立体映像表示部33を有する。この立体映像表示部33は、右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に映像表示する立体(3D)映像表示機能と2D(2次元)映像を表示する機能とを有する。上記送受信部30が受信した信号に基づいて、この立体映像表示部33の3D映像表示機能と2D映像表示機能とが切り替えられる。
【0055】
上記立体映像表示部33は、右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に映像表示しているときに、上記送受信部30の送信部は、上記右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を送信する。また、上記立体映像用メガネ202の送受信部31の受信部は、上記立体映像用表示装置201の送受信部30の送信部からの左右映像切換えタイミング信号を受信する。この点は、前述の第1,第2実施形態と同様である。
【0056】
また、この第3実施形態では、上記立体映像用メガネ202が有する制御IC34は、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出していない場合に、上記立体映像用表示装置201の送受信部30からの左右映像切換えタイミング信号に基づいて、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2を交互に開閉させる第4の駆動制御を行なう。また、上記制御IC4は、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出していない場合に、右眼用映像と左眼用映像を交互に表示させるための信号を送受信部31から上記立体映像用表示装置201へ送信する。
【0057】
また、この第3実施形態では、上記立体映像用メガネ202が有する制御IC34は、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合に、液晶駆動回路3を制御して上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を開ける第3の駆動制御を行なう。また、上記制御IC34は、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合に、立体視を生じない2次元映像を表示させるための第一の信号を送受信部31の送信部から上記立体映像用表示装置201へ送信する。
【0058】
上記構成の立体映像表示システムによれば、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出していない場合、上記立体映像用メガネ202の制御IC34は、送受信部31の送信部から立体映像用表示装置201へ右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に表示させるための第二の信号を送信させる。そして、上記第二の信号を上記立体映像用表示装置201の送受信部30が受信すると、上記送受信部30からの上記第二の信号が入力された立体映像表示部33は、3D映像のための右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に映像表示する。また、上記送受信部30は、上記右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を送信する。
【0059】
これより、上記立体映像用メガネ202の送受信部31は、上記送受信部30からの左右映像切換えタイミング信号を受信して、制御IC34に入力する。すると、上記制御IC34は、上記左右映像切換えタイミング信号に基づいて、液晶駆動回路3を制御して、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2を交互に開閉させる第4の駆動制御を行なう。これにより、視聴者は、上記立体映像表示部33に表示された立体映像を見ることができる。
【0060】
一方、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合、上記立体映像用メガネ202の制御IC34は、送受信部31の送信部から立体映像用表示装置201へ立体視を生じない2次元映像を表示させるための第一の信号を送信させる。これに伴い、上記制御IC34は、液晶駆動回路3を制御して上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を開ける第3の駆動制御を行なう。これにより、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合に、上記右眼用の液晶シャッター1と上記左眼用の液晶シャッター2の両方を開けることで、視聴者は通常の2D(2次元)映像を見ることとなり、眼の疲労を軽減できる。
【0061】
尚、上記第3実施形態において、上記傾きセンサ6が予め定められた角度θ(例えば20°)以上の傾斜を検出して、上記制御IC34と液晶駆動回路3により、上記疲労回避のための第3の駆動制御を行なってから、上記傾きセンサ6が上記予め定められた角度θ(例えば20°)よりも予め定められたハンチング回避角度、例えば5度以上小さい傾斜を検出したときに、上記制御IC34と液晶駆動回路3により、上記第3の駆動制御から上記第4の駆動制御に切り替えると共に送受信部31の送信部から立体映像用表示装置201へ右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に表示させるための信号を送信させようにしてもよい。この場合、図8に例示するように、上記第3の駆動制御による眼の疲労回避動作に入る上記右眼用および左眼用の液晶シャッター1,2の傾斜角度θ1よりも5度以上小さい傾斜角度θ2に戻ったときに第4の駆動制御による立体視動作を行なう。これにより、上記液晶シャッターの小さな揺れ等で疲労回避動作と立体視動作とが頻繁に切り替わることを回避でき、動作の切り替えを安定化できる。
【0062】
尚、上記第1〜第3実施形態では、予め定められた角度θを一例として、20°として説明したが、この角度θは、20°に限らないのは勿論で、例えば、15°から25°の範囲または10°から30°の範囲内の所望値に設定してもよい。
【0063】
(傾きセンサ6の具体例)
上述の第1〜第3実施形態の立体映像用メガネ102,202が備える傾きセンサ6としては、一例として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)型加速度センサを採用できる。このMEMS型加速度センサを採用することで、傾きセンサ6を小型化でき、装着した使用者に身体的なストレスをかけない小型軽量の立体映像用メガネを実現できる。
【0064】
また、上記傾きセンサ6の他の一例として、フォトインタラプタを利用してもよい。図5Aは、上記フォトインタラプタを利用した傾きセンサ6の平面図であり、図5Bは図5AのA−A’断面図、図5Cは図5AのB−B’断面図である。この傾きセンサ6は、遮光性樹脂で作製された支持体546とこの支持体546と一体の保持部556、および上記支持体546と保持部556の継ぎ目に係止爪547a,547bが嵌合する遮光性樹脂製の蓋体547が外装部557をなす。なお、図5Cでは、蓋体547を省略している。上記支持体546には溝555が形成され、上記溝555の開口部に上記蓋体547が覆い被さっている。上記蓋体547は、上記支持体546に装着する際に係止爪547a,547bが外側に広がるように弾性変形するので、作業上、容易かつ確実に支持体546と保持部556に係止される。このため、上記蓋体547は、人の手などで外さない限り衝撃等で支持体546と保持部556から容易に外れることはない。
【0065】
上記溝555の底面は、長手方向の中央部の底平面544cとこの底平面544cの両端から長手方向の両側に上り勾配で延在している傾斜面544a,544bで構成されている。この傾斜面544a,544bは、上記中央部の底平面544cから予め定められた傾斜角θで傾斜している。上記溝555内にはボール体548が配置され、このボール体548は、一例としてステンレス製であり、上記溝555内を底平面544c,傾斜面544a,544bに沿って走行可能になっている。上記蓋体547は、上記ボール体548が上記溝555から飛び出さないようにする役目を果たしている。
【0066】
図5Cに示すように、この支持体546は断面コ字形状であり、上記支持体546の短手方向の一方の壁部546aには、窓部558aが形成されており、この窓部558aに受光側1次モールド体554が搭載されている。この受光側1次モールド体554には受光チップ552がモールドされている。また、上記支持体546の短手方向の他方の壁部546bには、窓部558bが形成されており、この窓部558bに発光側1次モールド体553が搭載されている。この発光側1次モールド体553に発光チップ551がモールドされている。図5Bに示すように、受光側1次モールド体554は、受光チップ552の受光面552aが溝555内の支持体546の傾斜面544bの上端付近に位置している。また、上記受光チップ552のもう1つの受光面552bがもう1つの傾斜面544aの上端付近に位置している。
【0067】
次に、図5Bを参照して、上記構成の傾きセンサ6の動作を説明する。この傾きセンサ6は、非傾斜状態では、底平面544cの中央部に位置し、発光チップ551からの光は遮られることなく受光チップ552の2つの受光面552a,552bに入射される。このとき、上記制御IC4,34は、2つの受光面552a,552bからの出力信号をリード端子549a,549cから受けて被検出体(立体映像用メガネ102,202)が非傾斜状態であることを判断する。一方、図5Bにおいて、上記被検出体が傾斜面544aの傾斜角度θを越えて、左方へ傾斜した傾斜状態では、ボール体548は、一点鎖線で示すように傾斜面544aの端部に移動し、発光チップ551からの光がこのボール体548によって遮られて、受光面552aに入射しなくなる。これにより、発光チップ551からの光は、図5Bにおいて、右側の受光面552bだけに入射される。このとき、上記制御IC4,34は、2つの受光面552a,552bからの出力信号をリード端子549a,549cから受けて被検出体(立体映像用メガネ102,202)が傾斜状態であると判断する。また、図5Bにおいて、上記被検出体が傾斜面544bの傾斜角度θを越えて、右方へ傾斜した傾斜状態では、ボール体548は、一点鎖線で示すように傾斜面544bの端部に移動し、発光チップ551からの光がこのボール体548によって遮られて、受光面552bに入射しなくなる。これにより、発光チップ551からの光は、図5Bにおいて、左側の受光面552aだけに入射される。このとき、上記制御IC4,34は、2つの受光面552a,552bからの出力信号をリード端子549a,549cから受けて被検出体(立体映像用メガネ102,202)が傾斜状態であると判断する。このフォトインタラプタを利用した傾きセンサ6では傾斜面544a,544bの角度θを上記予め定められた角度θ(例えば20°)と等しくすればよい。また、疲労回避動作を行ってから第4の制御動作に切り替える角度はボール体548が傾斜面544a,544bの端部より動き出すまでの角度で決まるので特別な制御を必要としない。
【0068】
上記構成の傾きセンサ6は、電子カメラ等の各種機器,装置に搭載され、その傾斜方向を検出するものであるが、傾きセンサ6が安価に入手できるようになり、身体的なストレスをかけない安価な立体映像用メガネを実現できる。
【0069】
(第1,第2実施形態の送信部10と受信部9の具体例)
図6に、上記第1実施形態の立体映像表示システムの立体映像用表示装置101と立体映像用メガネ102を示す。上記立体映像用表示装置101は、送信部10の具体的一例としての赤外線送信部661を備える。また、上記立体映像用メガネ102は、受信部9の具体的一例としての赤外線受信部664を備える。上記赤外線送信部661は、赤外発光素子662とこの赤外発光素子662を駆動する駆動回路663を有する。また、上記赤外線受信部664は、赤外受光素子665とこの赤外受光素子665からの信号を増幅する増幅回路666を有する。
【0070】
上記赤外線送信部661では、駆動回路663により赤外発光素子662を駆動して、赤外線による左右映像切換えタイミング信号を送信する。この左右映像切換えタイミング信号は、右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す。一方、上記赤外線受信部664では、赤外受光素子665が上記左右映像切換えタイミング信号を受光し、上記受光信号による左右映像切換えタイミング信号を、増幅回路666で増幅する。この増幅された受光信号は、I/F部7を介して制御IC4へ入力される。この制御IC4は、上記第1,第2実施形態において述べた内容と同様の動作をする。
【0071】
この具体例の赤外線送信部661と赤外線受信部664によれば、指向性が高く混信を回避できると共に、立体映像用表示装置101の送信部10と立体映像用メガネ102の受信部9を安価に実現できる。
【0072】
尚、上記送信部10を電波無線送信部とし、上記受信部9を電波無線受信部としてもよい。この場合、通信が無指向性のため立体映像用メガネが水平方向のどんな角度にあっても液晶シャッターの開閉が途切れることがなく、身体的なストレスを回避できる。
【0073】
(第3実施形態の送受信部30,31の具体例)
図7に、上記第3実施形態の立体映像表示システムの立体映像用表示装置201と立体映像用メガネ202を示す。上記立体映像用表示装置201は、送受信部30の具体的一例としての電波無線送受信部768を備える。また、上記立体映像用メガネ202は、送受信部31の具体的一例としての電波無線送受信部769を備える。
【0074】
上記立体映像用表示装置201の電波無線送受信部768では、電波による左右映像切換えタイミング信号を送信する。この左右映像切換えタイミング信号は、右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す。一方、上記立体映像用メガネ202の電波無線送受信部769では、上記電波による左右映像切換えタイミング信号を受信する。この左右映像切換えタイミング信号は、I/F部7を介して制御IC34へ入力される。この制御IC34は、上記第3実施形態において述べた内容と同様の動作をする。
【0075】
よって、上記立体映像用メガネ202の電波無線送受信部769は、傾きセンサ6が予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、立体視を生じない2次元映像を表示させるための第一の信号を立体映像用表示装置201の電波無線送受信部768に無線送信する。これにより、上記第3実施形態で述べた通り、上記傾きセンサ6が予め定められた角度(例えば20°)以上の傾斜を検出した場合に、右眼用の液晶シャッター1と左眼用の液晶シャッター2の両方を開けて、視聴者は通常の2D(2次元)映像を見ることができ、眼の疲労を軽減できる。
【0076】
また、この具体例の立体映像表示システムによれば、双方向通信を無線通信で行なうので、通信が無指向性のためメガネが水平方向のどんな角度にあっても液晶シャッターの開閉が途切れることがなく、身体的なストレスをかけない立体映像表示システムを実現できる。
【0077】
また、上記送受信部30および31を、赤外線通信を行なうことにより双方向通信を行なう赤外線送受信部としてもよい。この場合、双方向通信を赤外線通信で行なうので、指向性が高く混信を回避できる。
【0078】
上述したように、上記第1〜第3実施形態の立体映像表示システムを採用した電子機器によれば、観賞者の両眼が傾いたときに、自動的に眼の疲労回避のための第1〜第3の駆動制御のうちのいずれか1つの駆動制御が行なわれて、立体映像用メガネの液晶シャッターの動作を自動的に切り替えることにより身体的なストレスをかけない立体映像に関する電子機器を実現できる。
【0079】
尚、本発明の立体映像用メガネ,表示装置および立体映像表示システムは、上述の実施形態に限定されない。例えば、上記第1から第3実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。また、上記第1から第3実施形態の立体映像用メガネを、テレビやパソコン等の電子機器に一体に用いてもよいし、また、オフィス,家庭用プロジェクターや映画館の映写システム、ゲーム機器などに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 右眼用の液晶シャッター
2 左眼用の液晶シャッター
3 液晶駆動回路
4,34 制御IC
5 ROM(記憶部)
6 傾きセンサ
7 I/F(インターフェイス)部
8 バッテリー
9 受信部
10 送信部
11,33 立体映像表示部
22 回路基板
23 メガネフレーム
24 フレキシブル基板
30 送受信部(立体映像用表示装置側)
31 送受信部(立体映像用メガネ側)
101,201 立体映像用表示装置
102,202 立体映像用メガネ
544a,544b 傾斜面
544c 底平面
546 支持体
546a,546b 壁部
547 蓋体
547a,547b 係止爪
548 ボール体
549a〜549c リード端子
551 発光チップ
552 受光チップ
552a,552b 受光面
553 発光側1次モールド体
554 受光側1次モールド体
555 溝
556 保持部
557 外装部
558a,558b 窓部
661 赤外線送信部
662 赤外発光素子
663 駆動回路
664 赤外線受信部
665 赤外受光素子
666 増幅回路
768,769 電波無線送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置が時間的に交互に表示する右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を上記表示装置から受信する受信部と、
右眼用の液晶シャッターと、
左眼用の液晶シャッターと、
上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターとを独立に開閉制御する液晶シャッター駆動制御部と、
上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向の水平方向からの傾斜を検出する傾きセンサと
を備え、
上記液晶シャッター駆動制御部は、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を閉じる第1の駆動制御と、上記表示装置の右眼用映像または左眼用映像の一方の映像が上記表示装置に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開き、上記表示装置の右眼用映像または左眼用映像の他方の映像が上記表示装置に表示されているときに上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を閉じる第2の駆動制御と、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開ける第3の駆動制御の3つの駆動制御のうちのいずれか1つの駆動制御を行なう一方、上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出していない場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターを交互に開閉させる第4の駆動制御を行なうことを特徴とする立体映像用メガネ。
【請求項2】
請求項1に記載の立体映像用メガネにおいて、
送信部と、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、第一の信号を上記送信部から上記表示装置へ送信させる一方、上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出していない場合に、第二の信号を上記送信部から上記表示装置へ送信させる送信制御部を備え、
上記液晶シャッター駆動制御部は、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出した場合に、上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターの両方を開ける第3の駆動制御を行なうことを特徴とする立体映像用メガネ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の立体映像用メガネにおいて、
上記傾きセンサを、MEMS型加速度センサで構成したことを特徴とする立体映像用メガネ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の立体映像用メガネにおいて、
上記傾きセンサを、
上記右眼用の液晶シャッターと上記左眼用の液晶シャッターが並んでいる方向が水平方向から傾斜したときに、発光素子から受光素子への光が遮光されるようにしたフォトインタラプタで構成したことを特徴とする立体映像用メガネ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の立体映像用メガネにおいて、
上記液晶シャッター駆動制御部は、
上記傾きセンサが予め定められた角度以上の傾斜を検出して、上記第1〜第3の駆動制御のうちのいずれか1つの駆動制御を行なってから、上記傾きセンサが上記予め定められた角度よりも予め定められたハンチング回避角度以上小さい傾斜を検出したときに、上記第4の駆動制御を行なうことを特徴とする立体映像用メガネ。
【請求項6】
右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に表示する表示装置であり、
請求項2から5のいずれか1つに記載の立体映像用メガネの受信部に、右眼用映像と左眼用映像とを切り換えるタイミングを表す左右映像切換えタイミング信号を送信する表示側の送信部と、
表示側の受信部と
を備え、
上記表示側の受信部が、上記立体映像用メガネの送信部から上記第一の信号を受信した場合に、立体視を生じない2次元映像を表示する一方、上記表示側の受信部が上記立体映像用メガネの送信部から上記第二の信号を受信した場合に、上記右眼用映像と左眼用映像を時間的に交互に表示することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項2から5のいずれか1つに記載の立体映像用メガネと請求項6に記載の表示装置とを備えることを特徴とする立体映像表示システム。
【請求項8】
請求項7に記載の立体映像表示システムにおいて、
上記立体映像用メガネの受信部および送信部と、上記表示側の受信部および送信部とが、赤外線通信を行なうことにより双方向通信を行なうことを特徴とする立体映像表示システム。
【請求項9】
請求項7に記載の立体映像表示システムにおいて、
上記立体映像用メガネの受信部および送信部と、上記表示側の受信部および送信部とが、電波無線通信を行なうことにより双方向通信を行なうことを特徴とする立体映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−205167(P2012−205167A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69293(P2011−69293)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】