説明

立体構造物

【課題】停電時に安全に非難させることができるとともに、意匠的表現や装飾性の豊かな表現をすることのできる立体構造物を提供すること。
【解決手段】立体構造物1は、第1のプレート2と第2のプレート3とを接着剤8で接合する。第1のプレート2は、一方の面を印刷面2aに形成して印刷表示5を施し、他方の面に、蓄光性シール6を貼着している。第1のプレート2の印刷面2aと第2のプレート3の一方の面を可視光重合型一液性樹脂材で形成された接着剤8で接合する。印刷表示を、例えば、「非常口」を示す内容で表示することによって、停電時、蓄光性シール6の残光により人を安全に非常口に避難させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光透過性樹脂材を使用して多彩な表現をかもし出すことができる置物や飾り物等の立体構造物に関し、さらに意匠性、装飾性に優れた立体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性樹脂材を使用した置物や飾り物は、従来から提供されている。例えば、従来において、固型中空部を透明性の樹脂枠体内に備えた立体有形物の樹脂構造体が特許文献1によって知られている。これによると、立体有形物の樹脂構造体は、各種の教材・展示物・置物において平面的な写真や印刷物に代わるものとして有用に活用できるものとして提供されている。この樹脂構造体は継ぎ目なし樹脂枠体に固型中空部として現した構造からなり、中空部を彫刻体の立体外周と同一サイズ同一形状の外形形状を有する立体中空部にして底部が開放されて外側と連通した構造となっている。
【特許文献1】特開2004−114473公報
【特許文献2】特開2001−271064公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されているものでは、実物と同質同一となる精微な外周形状・表面意匠を備えた高度のリアリティで高品質なものであるものの、その成形方法は、精微鋳造のロストワックス工法を応用していることから、極めてコストを高くするものであった。また、透明な樹脂枠を使用しているものの、樹脂材内で表現される表現体を、例えば、光の屈折等を利用して強調することに関しては表現しきれない状態であった。つまり、透明な樹脂枠内に表現される表現体を挿入して、光を当てることによって多彩な意匠的表現や色彩的な表現を強調することはできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、多彩な表現を強調することができるとともに、多様なものに利用できる立体構造物を提供することを目的とする。そのために、本発明に係る立体構造物は、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明では、光透過性樹脂材で形成されたプレートと、前記プレートに記録手段を施して薄板状に形成された被写部材とを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成されるとともに、前記プレートの前記被写部材との接合面と別の面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とするものである。
【0005】
請求項2記載の発明では、光透過性樹脂材で形成された第1のプレートの一方の面に印刷が施され、前記第1のプレートの印刷された面に光透過性樹脂材で形成された第2のプレートを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成されるとともに、前記第1のプレートの印刷面と前記第2のプレートとの接合面と別の面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項3記載の発明では、光透過性樹脂材で形成された複数のプレートを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成された立体構造物であって、複数のプレートのうち、1接合面には記録手段を施して薄板状に形成された被写部材が挟着され、他の接合面あるいは外端面のいずれかの面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項4記載の発明では、光透過性樹脂材で形成された複数のプレートを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成された立体構造物であって、複数のプレートのうち、1枚のプレートの一方の面には印刷が施された印刷面に形成され、前記印刷面と別の接合面あるいは外端面のいずれかの面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項5記載の発明では、光透過性樹脂材で形成された少なくとも一対のプレートを可視光重合型一液性接着剤で接合された立体構造物であって、前記一対のプレート間に、蓄光性蛍光材料で形成された表示物が挟着されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項6記載の発明では、前記シール層が、ユウロピウムを賦活したアルカリ土類金属のアルミン酸塩を蓄光性蛍光体材料として形成していることを特徴としている。
【0010】
請求項7記載の発明では、前記接着剤で接合された1枚の前記プレート又は前記複数のプレートの外周形状が、切削加工又は研磨加工によって形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立体構造物は、光透過性樹脂材で形成されたプレートと記録手段を施した薄板状の被写部材とを、可視光重合型一液性接着剤で接合することによって、板状に形成するプレートと被写部材とを容易に接合することができる。この接着剤は気泡を発生することなくまた光の屈折を妨げることなく接着できる。しかも、被写部材は蓄光性蛍光材料で形成されたシール層によって、太陽の陽や電気が消えても表示することができることから、夜間や暗い場所でも立体構造物を鑑賞することができる。
【0012】
したがって、プレートに独自な表現を付与する被写部材を接合して、被写部材に多様な記録手段(例えば、有色、印刷した文字、各種の模様等)を施すことによって、光透過性樹脂材で形成されたプレートを通して多彩な表現を付与することができて、ディスプレイや置物又は飾り物等としてファンタジックに鑑賞することができる。
【0013】
また、この立体構造物は、光透過性樹脂材で形成された2枚または3枚以上のプレートで構成しても、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層を形成することによって、残光を灯すことができる。そのため、停電時や電気が消灯した夜間において、人を安全に避難させことができ緊急時の対応に適用できる。
【0014】
この立体構造物は、薄板状の被写部材を挿入するものではなくても、1枚のプレートの一方の面に印刷表示を形成したものであって、印刷表示を蓄光性蛍光材料で表示可能とするものであってもよく、また蓄光性蛍光材料で形成された表示物を各プレート間に挟着するようにしてもよい。
【0015】
いずれにしろ、この立体構造物で使用されるシール層が、ユウロピウムを賦活したアルカリ土類金属のアルミン酸塩を蓄光性蛍光体材料として形成されているものであれば、電気を消灯してから長時間残光輝度を維持することができる。さらに、被写部材やシール層を接合した多層のプレートの外形を切削加工や研磨加工で仕上げることから、透過性樹脂剤の外観形状を綺麗にまた自由に表現できることとなって高級感を表現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態による立体構造物を図面に基づいて説明する。
【0017】
本願発明は光透過性樹脂材を接着剤で複数層に形成して、多彩な形状にするものであり、図1〜3は本願発明の基本的な実施形態を示している。
【0018】
第1の形態による立体構造物1は、光透過性樹脂材で形成された2枚の矩形板状のプレート2、3を接着剤8で接着して重合している。第1のプレート2には一方の面が印刷面2aとして形成されている。印刷面2aには、設置される場所に応じて適宜な印刷表示5が施されている。第1のプレート2の他方の面には蓄光性蛍光材料で形成されたシール(以下、蓄光性シールという。)6が貼着されている。第2のプレート3の一方の面は、第1のプレート2の印刷面2aと接着剤8で接合されている。なお、第1の形態の立体構造物1においては、印刷された印刷表示5は、ビル建物内や劇場等で使用される「非常口」を表示している。
【0019】
第1のプレート2、第2のプレート3は、光透過性樹脂材、例えば、アクリル系樹脂材あるいはポリカーボネート系樹脂材、で形成されている。第1のプレート2、第2のプレート3の外形は,実施形態では,矩形板状に形成されているが、もちろん、これに限定するものではなく、例えば、円型板状や、多角形板状、楕円板状に形成されていてもよい。
【0020】
接着剤8は、接着する際に気泡を発生させず、また、第1のプレート2と第2のプレート3に透過する光の屈折を妨げないような特殊な接着剤8を使用する。この接着剤8は、例えば、可視光重合型プラスチック用接着剤として形成された商品名「クリアルーチェMA21」(株式会社アーデル製 登録商標)を使用している。商品名「クリアルーチェMA21」は、成分が変成アクリレートで形成され、黄色透明液体の外観を有して粘度が15〜25mP・sと超低粘度を示している。つまり、アクリルやポリカーボネートなどの透明樹脂板の面接着に最適な可視光重合型一液性接着剤であり、アクリル系モノマーだけからなる無溶剤系接着剤である。この接着剤8はアクリル樹脂やポリカーボネートを溶解せずに強力接着できることが特徴である。
【0021】
この接着剤8は、各プレートの接合面、つまり、第1のプレート2の印刷される面の全面、あるいは第2のプレート3における第1のプレート2の印刷面2aと対向する面の全面に塗布される。従って、第1のプレート2の接着面は、印刷表示5とその周りの周縁部となり周縁部において強力な接着が得られる。
【0022】
この第1の形態の立体構造物1は、図2に示すように、第1のプレート2の一方の面に印刷表示5を施した後、第1のプレート2における印刷面2aと反対側の面に蓄光性シール6を貼着し、第1のプレート2の印刷面2aと第2のプレート3との一方の面に接着剤8を塗布して重ね合わせた後、光を照射することによって接合する。これは、接着剤8が光を照射することによって硬化するためである。第1のプレート2と第2のプレート3とを一体的に接合した後、切削加工又は研磨加工によって外周面を加工して最終的な製品として形成する。なお、切削加工又は研磨加工をする際、外周面を自由な形状にすることができる。実施形態においては、矩形板状に形成しているが、真円状に形成してもよく、また楕円状でもよく、さらには自由な曲面に形成してもよい。なお、蓄光性シール6の粘着は第1のプレート2と第2のプレート3の外周面を研磨加工した後で行なってもよい。
【0023】
印刷表示5は、文字や記号又は図形あるいは絵表示や写真等であり、この印刷表示5は立体素材に対応した印刷機で印刷される。この印刷機において、印刷表示5は、第1のプレート2の周縁部を残して略全面に印刷される。
【0024】
蓄光性シール6は、一般的に使用されている夜間利用可能な硫化物系蛍光体で形成されたもの、あるいは、長時間の残光特性を有する材料で形成されたものが使用される。実施形態においては、長時間の輝度を維持できるものを使用している。例えば、ユウロピウムを賦活したアルカリ土類金属のアルミン酸塩を蓄光性蛍光体材料として形成された「ルミノバ シート」(根本特殊化学株式会社製 登録商標)を使用している。この蓄光性蛍光材料は、特許文献2で詳細に示されているように、MAI24で表される化合物で、Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素からなる化合物を母結晶にし、これを賦活剤としてユウロピウムを、Mで表す金属元素に対するモル%で0.001%以上10%以下添加し、さらに共賦活剤としてマンガン、スズ、ビスマスからなる群の少なくとも1つ以上の元素を、Mで表す金属元素に対するモル%で0.001%以上10%以下添加したものである。
【0025】
なお、第1の形態の立体構造物1は、上述の形態に限定するものではなく、印刷表示5が施された第1のプレート2と印刷が施されていない複数の第2のプレート3で構成してもよい。例えば、立体構造物1Aは、図4に示すように、第1のプレート2を挟んで第2のプレート3、3を重合して形成されている。第1のプレート2の印刷面2aと反対側の第2のプレート3は2枚重合され、その外端面には蓄光性シール6が貼着されている。
【0026】
また、図5に示す立体構造物1Bは、一方の面に印刷面2aを形成し、他方の面に蓄光性シール6を貼着した第1のプレート2を挟むように一対の第2のプレート3、3が重合されている。第1のプレート2の印刷面2aと第2のプレート3とは接着剤8で接合され、蓄光性シール6と第2のプレート3とは接着剤8で接合されている。
【0027】
したがって、「非常口」を表示した第1の形態の立体構造物1では、例えば、ビル建物や劇場に設置されていれば、電気消灯時や停電時において、残光によって非常口の位置を表示することができることから、安全に避難することができる。
【0028】
第2の形態による立体構造物は、光透過性樹脂材で形成された一対のプレートと一対のプレート間に挟持された被写部材とを接着剤で接合して形成されている。つまり、図6〜7に示すように、立体構造物11は、第1のプレート12、第2のプレート13及び被写部材14とからなり、第1のプレート12における第2のプレート13との接合面と反対側の面には蓄光性シール6が貼着されている。
【0029】
第1のプレート12は、ベース板として円板状に形成されて一方の面が第2のプレート13と対向し、他方の面に蓄光性シール6が貼着されている。第2のプレート13は、立体構造物11の特徴的な外観形状を示すものであり、球状の一部を切り欠いた中実の湾曲部13aを有している。湾曲部13aの下方は、第1のプレート12と接合する面を有する円板部13bが形成されている。第1のプレート12と第2のプレート13との間に薄板状に形成された被写部材14をそれぞれ接着剤8で接着して重合している。
【0030】
なお、第1のプレート12と第2のプレート13は、前述と同様、光透過性樹脂材、例えば、アクリル系樹脂材あるいはポリカーボネート系樹脂材、で形成されている。
【0031】
被写部材14は、木製、布製、紙製又は樹脂製のもので形成され、第1のプレート12と略同一の外径で円板状に形成されている。また、被写部材14には記録手段が設けられている。記録手段は光透過性の第2のプレート13を透過して独自の雰囲気を表現するものであり、特に湾曲部13aを通ることによって光の屈折でその表現が拡大されることになる。この記録手段は、例えば、有色に形成されるか、印刷して形成されるか、適宜な模様をつけて形成されるかによって立体構造物11の独自の表現を可能にしている。実施形態の被写部材14の厚みは、0.1〜1mmの間に形成され、図6〜7においては、被写部材14は木製で形成され、記録手段として床又は壁に適した木目模様が形成されている。
【0032】
また、立体構造物11は、被写部材14を第1のプレート12及び第2のプレート13との間に接着剤8で接着することによって第1のプレート12と第2のプレート13とを一体的に形成する。この接着剤8は、前述の形態と同様、可視光重合型プラスチック用接着剤として形成された商品名「クリアルーチェMA21」(株式会社アーデル製 登録商標)を使用している。また、蓄光性シール6も、前述と同様の「ルミノバ シート」(根本特殊化学株式会社製 登録商標)を使用している。
【0033】
この第2の形態の立体構造物11を製作する場合は、まず矩形板状の第1のプレート12と被写部材14と矩形板状の第2のプレート13とを接着剤8の接着によって一体的に形成した後、切削加工又は研磨加工によって最終的な製品として形成する。つまり、まず矩形板状の2枚の樹脂板を予め工作機械で円板状となるように粗加工する。その後、円板状の被写部材14を接着剤8で接着して一体的に形成する。そして、第2のプレート13を被写部材14の外径に合わせて湾曲状に切削加工して第2のプレート13の外周形状を形成する。その後、第1のプレート12と第2のプレート13との外周表面に研磨加工を行なって仕上げる。蓄光性シール6は、予め第1のプレート12に貼着してから切削加工を行なってもよく、また、第1のプレート12の外周表面の研磨加工を行なってから貼着してもよい。
【0034】
これによって形成された立体構造物1では、光の屈折により記録手段としての被写部材14とその木目模様が第2のプレート13の湾曲部13aに写し出されて、被写部材14の形状と木目模様が膨潤した状態を鑑賞することができる。しかも、蓄光性シール6によって、夜間、電気が消灯した後でも残光によって、周辺を照らすことができるとともに、木目模様を鑑賞することができる。
【0035】
なお、この形態の場合、第1のプレート12を多数層で形成してもよい。この場合、蓄光性シール6は、複数の第1のプレート12間に挿入してもよく、第1のプレート12の外端面に貼着するように配置してもよい。
【0036】
また、第2の形態の変形として、図8〜9に示すように、第1のプレート16を矩形板状に形成し、第2のプレート18が図7における円板部13bを除いた湾曲部17aに形成されたものである。また、第1のプレート17は第2のプレート18より大形に形成されている。このように形成されている単一の立体構造物16を左右方向、上下方向に並列させて、建物の壁に装着するタイルとして使用することができる。この場合、被写部材14は有色に形成されるとともに第1のプレート17と第2のプレート18との間に挿入され、第1のプレート17における被写部材14が挿入される面と反対側には蓄光性シール6が貼着されている。
【0037】
したがって、例えば、この立体構造物16を並列したタイルが、風呂場あるいはキッチンルームの壁に貼着されていれば、被写部材14の有色により、室内を明るくした雰囲気をかもし出すことができるとともに、蓄光性シール16によって残光を灯すことから、停電時に、慌てることなく安全に避難することができる。
【0038】
次に、第3の形態の立体構造物について説明する。図10〜11に示すように、第3の形態の立体構造物21は、半円柱状に形成された第1のプレート22と半円柱状に形成された第2のプレート23との間に蓄光性シール6が挟着されたものである。半円柱状の第1のプレート22と半円柱状の第2のプレート23とを蓄光性シール6を挟んで接合することによって、円柱状の部材、例えば、手摺として使用することができる。
【0039】
第1のプレート22、第2のプレート23は、前述の形態と同様、いずれもアクリル系樹脂材あるいはポリカーボネート系樹脂材の光透過性樹脂材で形成され、蓄光性シール6も、前述と同様、ユウロピウムを賦活したアルカリ土類金属のアルミン酸塩を蓄光性蛍光体材料として形成された「ルミノバ シート」(根本特殊化学株式会社製 登録商標)を使用している。第1のプレート22と第2のプレート23の対向する面は、蓄光性シール6を介して接着剤8で接合されている。接着剤8も前述と同様、可視光重合型プラスチック用接着剤として形成された商品名「クリアルーチェMA21」(株式会社アーデル製 登録商標)を使用している。この際、第1のプレート22と第2のプレート23とを、強固に接着するためには、蓄光性シール6の外形を、第1のプレート22及び第2のプレート23の平面部(合わせ面)の外形より小さくするか、あるいは、蓄光性シール6に小孔を多数形成するかして、両平面部と直接接着する面積を増やすことが望ましい。
【0040】
この立体構造物21を製作する場合、光透過性樹脂部材で形成された円柱部材を軸心に沿って切断して形成した後、第1のプレート22と第2のプレート23のそれぞれの合わせ面の間に、蓄光性シール6を挿入して接着剤8で接合する。この際、光を照射して接着剤8を硬化させる。第1のプレート22と第2のプレート23とを一体的に接合した状態で、第1のプレート22と第2のプレート23の外周面を研磨加工して仕上げる。
【0041】
第3の形態の立体構造物21においては、その長さを長尺状に形成することによって、各種の手摺として使用することができる。つまり、手摺が階段の壁部に設置されるものであれば、階段に設置されている電気が暗くても、また停電で消灯した後でも、立体構造物21の蓄光性シール6によって、残光を灯すことができ、安全に階段の昇降を行うことができる。また、玄関に設置すれば、日暮れ時に、室内で電灯が消灯している状態でも、太陽の光の残光によって玄関のドアの鍵の施錠及び施錠解除を容易に行うことができる。
【0042】
この場合、蓄光性シール6を有色にて形成すれば、さらに、手摺を目立てさせることができ、高齢者にとっても安全に使用できるとともに、カラフルな飾り物として鑑賞することもできる。
【0043】
第4の形態の立体構造物は、蓄光性シールを文字や記号あるいは絵文字に切り抜いて切り抜きシールを形成し、切り抜きシールを2つのプレート間に挿入して形成するものである。例えば、図12〜13に示すように、立体構造物26は、第1のプレート27と第2のプレート28とを備え、第1のプレート27と第2のプレート28との間に切り抜きシール29を挿入している。
【0044】
第1のプレート27と第2のプレート28は、前述と同様、アクリル系樹脂材あるいはポリカーボネート系樹脂材で形成された光透過性樹脂材であり、この接着剤8は、前述の形態と同様、可視光重合型プラスチック用接着剤として形成された商品名「クリアルーチェMA21」(株式会社アーデル製 登録商標)を使用している。また、蓄光性シール6(切り抜きシール29)も、前述と同様の「ルミノバ シート」(根本特殊化学株式会社製 登録商標)を使用している。
【0045】
切り抜きシール29は、蓄光性シール6から文字や記号の形に切り抜いたものであり、第4の形態の立体構造物26場合、「非」「常」「口」の文字と「←」の記号に切り抜いている。この切り抜きシール29を第1のプレート27と第2のプレート28との間に挿入して、接着剤8で一体的に接合している。これによって、蓄光性シール6から切り抜いた切り抜きシール29によって、電気が消灯しても残光を灯すことができるとともに、第1の形態の立体構造物1に対して、より簡潔に構成された立体構造物26が形成されることになる。
【0046】
次に、第5の形態の立体構造物について説明する。この形態の立体構造物は、被写部材が、立体構造物の端面に配置されているものであり、図14〜15に示すように、立体構造物31は光透過性樹脂材で形成されたプレート32が接着剤8で接合されて複数層に重合された円柱状に形成されている。一端に配置されたプレート32の外端面には有色の被写部材34が接着剤8で接合されている。さらに、被写部材34の外端面には蓄光性シール6が貼着されている。
【0047】
複数のプレート32の軸方向両端面には凹状湾曲部35、35が形成され、一方の側面には軸方向に沿って平面部36が形成されている。
【0048】
プレート32は、前述の形態と同様、いずれもアクリル系樹脂材あるいはポリカーボネート系樹脂材の光透過性樹脂材で形成され、被写部材34もアクリル系樹脂材あるいはポリカーボネート系樹脂材の光透過性樹脂材で形成されているとともに、有色に形成されている。蓄光性シール6も、前述と同様、ユウロピウムを賦活したアルカリ土類金属のアルミン酸塩を蓄光性蛍光体材料として形成された「ルミノバ シート」(根本特殊化学株式会社製 登録商標)を使用している。接着剤8も前述と同様、可視光重合型プラスチック用接着剤として形成された商品名「クリアルーチェMA21」(株式会社アーデル製 登録商標)を使用している。
【0049】
この立体構造物31を製作する場合、円板状に形成された被写部材34を一端に配置して円板状に形成された複数のプレート32を接着剤8で接着した後、接着剤8に光を照射することによって硬化させる。その後、表面を切削加工で円柱状に形成する。そして、凹状湾曲部35及び側面の平面部36を切削加工して全体表面を研磨加工で仕上げる。その後、蓄光性シール6を被写部材34の外端面に貼着して立体構造物31が形成される。
【0050】
この立体構造物31は有色の被写部材34が凹状湾曲部35に写し出されて色が拡大された常態でファンタジックな雰囲気を作ることができる。そのため、立体的でカラフルな置物又は飾り物として好適に使用することができる。しかも、蓄光性シール6によって、電気が消灯しても残光が灯ることになるから、例えば、玄関の外や、庭等に設置すれば、周辺を照らすことができて独特な雰囲気をかもし出すこともできる。
【0051】
上述のように、実施形態の立体構造物1は、光透過性樹脂材で形成された一対のプレート2、3を接着剤8で接合して形成されている。この一対のプレート2、3間、あるいは一方のプレート2の端面に、表示物を配置する。表示物は、一方のプレートに形成された印刷表示5や薄板状に形成された被写部材14、又は蓄光性シール6であっても良い。この立体構造物に対して、光を透過させることによって、表示物が独特な雰囲気を有して表示されるとともに、立体構造物には蓄光性シール6が粘着されていることから、夜間時や電気の消灯時において、残光を灯すことができる。そのため、ビル建物や劇場の壁に設置し、非常口の案内として使用すれば、停電時において、安全に非難させることができる。また、この立体構造物を手摺として、例えば、階段や廊下等の暗い場所に設置すれば、電気が消灯してもその残光によって、高齢者でも安全に手摺に捉まることができる。さらには、表示物を有色に形成することによって、独特な雰囲気をかもし出す飾り物や置物として使用することができる。この場合も蓄光性シールによってファンタジックな雰囲気を作ることができる。
【0052】
なお、本発明の立体構造物は、上記の形態に限定するものではない。各形態は、それぞれの立体構造物の特徴部分を示すものであって、表示内容は、あくまで一つの例を示したものである。例えば、第1の形態、及び第3の形態、第4の形態に示す印刷表示内容は、設置される場所に合わせて適宜形成されていればよい。
【0053】
また、第2の形態に示す立体構造物11の被写部材14として使用される薄板状部材は、その厚みに限定されるものではない。また、第2の形態の変形である立体構造物16は、左右方向又は上下方向に並列できるものであれば、第1のプレート17は多角形でもよく、第1のプレート17を平面視真円状に形成し、隣接する部位に平面部を形成したものであってもよい。
【0054】
さらに第3の形態の立体構造物21としての手摺においては、第1のプレート22や第2のプレート23を多層に形成してもよく、外形を円柱状ではなく、円筒状にしてもよく、また多角形に形成してもよい。さらに第1のプレート22と第2のプレート23間に挿入する蓄光性シール6を、第4の形態の立体構造物26における切り抜きシール29にしてもよく、蓄光性シール6に隣接して第2の形態の立体構造物11に示す被写部材14を配置してもよい。また、第5の形態の場合は、被写部材34を各プレート32間に挿入してもよい。
【0055】
いずれにしろ、光透過性樹脂材で形成されたプレートと、印刷面や被写部材で形成された表示部材及び蓄光性シールを使用して、各形態の各部位の組み合わせによって形成される立体構造物であれば、本発明として適宜適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明における第1の形態の立体構造物を示す正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同分解斜視図である。
【図4】第1の形態の立体構造物における別の形態を示す側面図である。
【図5】第1の形態の立体構造物におけるさらに別の形態を示す側面図である。
【図6】第2の形態の立体構造物を示す斜視図である。
【図7】同正面図である。
【図8】第2の形態の一部を変形した立体構造物を示す斜視図である。
【図9】同正面図である。
【図10】第3の形態の立体構造物を示す斜視図である。
【図11】同側面図である。
【図12】第4の形態の立体構造物を示す正面図である。
【図13】同側面図である。
【図14】第5の形態の立体構造物を示す斜視図である。
【図15】同正面図である。
【符号の説明】
【0057】
1、11、16、21、26、31、立体構造物
2、12、17、22、27、第1のプレート
2a、印刷面
3、13、18、23、28、第2のプレート
5、印刷表示
6、蓄光性シール
8、接着剤
14、34、被写部材
29、切り抜きシール
32、プレート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性樹脂材で形成されたプレートと、前記プレートに記録手段を施して薄板状に形成された被写部材とを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成されるとともに、前記プレートの前記被写部材との接合面と別の面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項2】
光透過性樹脂材で形成された第1のプレートの一方の面に印刷が施され、前記第1のプレートの印刷された面に光透過性樹脂材で形成された第2のプレートを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成されるとともに、前記第1のプレートの印刷面と前記第2のプレートとの接合面とは別の面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項3】
光透過性樹脂材で形成された複数のプレートを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成された立体構造物であって、
複数のプレートのうち、1接合面には記録手段を施して薄板状に形成された被写部材が挟着され、他の接合面あるいは外端面のいずれかの面に、蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項4】
光透過性樹脂材で形成された複数のプレートを、可視光重合型一液性接着剤で接合して形成された立体構造物であって、
複数のプレートのうち、1枚のプレートの一方の面には印刷が施された印刷面に形成され、前記印刷面と別の接合面あるいは外端面のいずれかの面に蓄光性蛍光材料で形成されたシール層が形成されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項5】
光透過性樹脂材で形成された少なくとも一対のプレートを可視光重合型一液性接着剤で接合された立体構造物であって、
前記一対のプレート間に、蓄光性蛍光材料で形成された表示物が挟着されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項6】
前記シール層が、ユウロピウムを賦活したアルカリ土類金属のアルミン酸塩を蓄光性蛍光体材料として形成していることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5のいずれかに記載の立体構造物。
【請求項7】
前記接着剤で接合された1枚の前記プレート又は前記複数のプレートの外周形状が、切削加工又は研磨加工によって形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6のいずれかに記載の立体構造物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−172916(P2009−172916A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15173(P2008−15173)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(501403656)株式会社新工 (5)
【出願人】(596093112)明商株式会社 (1)
【Fターム(参考)】