説明

立体物検出装置および立体物検出方法

【課題】立体物の検出位置精度の向上および安定化を簡便に実現することができる「立体物検出装置および立体物検出方法」を提供すること。
【解決手段】撮像装置2の撮像画像に基づいて検出された撮像対象面上の立体物のみをシルエットとして残した検出対象画像を作成する検出対象画像作成装置4と、検出対象画像および座標平面に仮想配置された各座標ごとの直方体に基づいて取得された各座標ごとのマスク画像に基づいて、各座標における立体物の空間密度を算出し、算出した空間密度に応じた画素値を有する各座標ごとの画素からなる密度マップを作成する密度マップ作成装置5と、密度マップ中の高密度領域における代表点を立体物の位置として検出する立体物位置検出装置6とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物検出装置および立体物検出方法に係り、特に、単一の撮像装置の撮像画像に基づいて撮像対象面上の立体物を検出するのに好適な立体物検出装置および立体物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に取り付けられた単眼(単一)カメラによる車両周辺の撮像画像(カメラからの入力画像)に基づいて、撮像画像中の路面上に存在する障害物を検出し、検出された障害物を対象とした警報を出力する路上障害物警報システムが知られている。
【0003】
この種のシステムには、路面上の立体物(障害物)を検出するための種々の立体物検出方法が適用されており、例えば、特許文献1に示すように、自車の移動量を把握して、単眼カメラによる過去の撮像画像と現在の撮像画像とを照らし合わせることによって、路面や遠景等の不要な領域を除去して路面上の立体物(動体)のみを抽出する方法(所謂、背景差分法)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−222679号公報
【特許文献2】特開2010−056975号公報
【特許文献3】特開2007−129560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の立体物検出方法において、カメラの撮像画像から立体物の位置を推定するには、通常は、立体物の足下(換言すれば、接地点)が撮像画像中のいずれの位置に映っているのかを検出することによって行うようになっていた。
【0006】
しかるに、従来の立体物検出方法においては、車両のような移動プラットフォームに固定されたカメラの場合には、カメラの移動によって立体物以外の背景の映り方も変化するため、カメラの撮像画像から立体物が映っている領域だけを過不足無く検出することが困難であり、不要な背景を誤検出してしまったり、あるいは、立体物の一部しか検出できない検出漏れが発生してしまうことがあった。このような誤検出や検出漏れは、車両が停止している場合やカメラが静止プラットフォーム(例えば、建物)に固定されている場合においても、撮影対象面(路面や床面等)上の日照条件や照明条件等の変化によって発生する虞があった。
【0007】
そして、このような誤検出や検出漏れが発生した状態の立体物の検出画像においては、パターンマッチング(特許文献2、3参照)等の煩雑な処理を行わなければ立体物の足下を正確に検出することができず、誤検出・検出漏れが発生しなかった場合に比べて位置精度が著しく劣化してしまっていた。このような位置精度の劣化は、検出された立体物が静止物であるのか動体であるのか、また、接近しているのか遠ざかっているのか等の判定精度にも悪影響を与えることになり、立体物検出を適用したカメラ画像処理システム(路上障害物警報システムや監視カメラシステム等)の信頼性の低下に繋がる虞があるため、早急な解決が求められていた。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、立体物の検出位置精度の向上および安定化を簡便に実現することができ、ひいては、立体物検出を適用したシステムの信頼性を向上させることができる立体物検出装置および立体物検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明に係る立体物検出装置は、所定の位置に配置され、所定の撮像対象面を含む所定の撮像領域を撮像する単一の撮像装置を備え、前記撮像領域の撮像画像に基づいて、前記撮像対象面上の立体物を検出する立体物検出装置であって、前記撮像画像に基づいて前記撮像対象面上の立体物を検出し、この検出された立体物以外の不要な領域を除去して前記検出された立体物のみをシルエットとして残した検出対象画像を作成する検出対象画像作成装置と、前記撮像対象面上に設定された座標平面における所定の座標に、一定の幅、奥行きおよび高さを有する直方体を配置したと仮定した場合に、前記配置したと仮定された直方体のシルエットを前記撮像装置の像面に投影した場合に得られるべきマスク画像を、互いに異なる複数の座標ごとに予め記憶しておき、これら各座標ごとに、前記検出対象画像における立体物のシルエットと各座標に対応する前記マスク画像における直方体のシルエットとの重なり部分についての面積比を、各座標における前記立体物の空間密度としてそれぞれ算出し、算出された各座標における前記空間密度に応じた画素値を有するような各座標ごとの画素を、各座標の配列順にしたがって配列することによって、前記撮像対象面における前記空間密度の分布を示す密度マップを作成する密度マップ作成装置と、この密度マップ作成装置によって作成された前記密度マップから、前記画素値が閾値画素値を超える少なくとも1つの高密度領域を抽出し、抽出された前記高密度領域における前記撮像装置に最も近い代表点の座標を、当該高密度領域に対応する前記立体物の位置として検出する立体物位置検出装置とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る立体物検出方法は、所定の撮像対象面を含む所定の撮像領域を撮像する単一の撮像装置を所定の位置に配置し、前記撮像領域の撮像画像に基づいて、前記撮像対象面上の立体物を検出する立体物検出方法であって、前記撮像画像に基づいて前記撮像対象面上の立体物を検出し、前記撮像画像から前記検出された立体物以外の不要な領域を除去して前記検出された立体物のみをシルエットとして残した検出対象画像を作成する第1のステップと、前記撮像対象面上に設定された座標平面における所定の座標に、一定の幅、奥行きおよび高さを有する直方体を配置したと仮定した場合に、前記配置したと仮定された直方体のシルエットを前記撮像装置の像面に投影した場合に得られるべきマスク画像を、互いに異なる複数の座標ごとに予め用意しておき、これら各座標ごとに、前記第1のステップにおいて作成された前記検出対象画像における前記立体物のシルエットと各座標に対応する前記マスク画像における前記直方体のシルエットとの重なり部分についての面積比を、各座標における前記立体物の空間密度としてそれぞれ算出し、算出された各座標における前記空間密度に応じた画素値を有するような各座標ごとの画素を、各座標の配列順にしたがって配列することによって、前記撮像対象面における前記空間密度の分布を示す密度マップを作成する第2のステップと、この第2のステップにおいて作成された前記密度マップから、前記画素値が閾値画素値を超える少なくとも1つの高密度領域を抽出し、抽出された前記高密度領域における前記撮像装置に最も近い代表点の座標を、当該高密度領域に対応する前記立体物の位置として検出する第3のステップとを含むことを特徴としている。
【0011】
そして、このような本発明によれば、検出対象画像が立体物の誤検出および/または検出漏れが発生した状態のものであっても、密度マップを用いた立体物の位置検出を行うことによって高い検出位置精度を確保することができる。すなわち、密度マップを作成する際には、撮像装置に近い側の座標に仮想配置された各直方体にそれぞれ対応する各マスク画像が、直方体のシルエットが相対的に大きくなる(撮像装置から遠い側の座標に仮想配置された各直方体に比べて大きくなる)ことによって、それぞれの直方体のシルエットと検出対象画像における立体物のシルエットとの重なり面積を稼ぐことができるため、密度マップ上の高密度領域を、立体物の足下側に相当する撮像装置側に伸長させることができる。これにより、検出対象画像に立体物の足下の欠損(検出漏れ)が生じている場合でも、これを補填して高精度な位置検出が可能となる。一方、検出対象画像における立体物以外の不要な部分については、元々検出対象画像中の面積占有率が低い場合が多いので、マスク画像における直方体のシルエットとの重なり部分も小さくなり、空間密度としては低い値が算出されて立体物の位置検出には関与しないものとなる。これにより、立体物以外の不要な部分が誤検出された場合であっても、これの位置精度への影響を回避することが可能となる。また、パターンマッチングのような複雑な処理や、レーダー等の位置検出用の特別な構成を要しないので、立体物の検出を簡便かつ低コストで行うことができる。さらに、パターンマッチングでは、演算量が多く、テンプレートとして記憶している物体の接地位置しか検出できないのに対して、本発明においては、全物体に対して、接地位置を迅速に検出することが可能となる。
【0012】
また、本発明の立体物検出装置において、前記検出対象画像作成装置は、所定の作成周期ごとに前記検出対象画像の作成を繰り返し、前記密度マップ作成装置は、前記検出対象画像が作成される毎に、最新の前記密度マップを作成し、前記立体物位置検出装置は、前記最新の密度マップが作成される毎に、最新の前記立体物の位置を検出し、前記最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で追跡対象となる物標の履歴として記憶部に記録する物標履歴記録装置と、前記記録された物標の履歴に基づいて、当該物標の移動軌跡を推定する移動軌跡推定装置と、前記推定された移動軌跡に基づいて、当該移動軌跡に対応する前記物標が接近物であるか否かを判定する接近物判定装置とを備えてもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記第1のステップは、前記検出対象画像の作成を、所定の作成周期ごとに繰り返すステップであり、前記第2のステップは、前記第1のステップにおいて最新の前記検出対象画像が作成される毎に、最新の前記密度マップを作成するステップであり、前記第3のステップは、前記第2のステップにおいて前記最新の密度マップが作成される毎に、最新の前記立体物の位置を検出するステップであり、前記第3のステップにおいて検出された前記最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で追跡対象となる物標の履歴として記憶部に記録する第4のステップと、この第4のステップにおいて記録された前記物標の履歴に基づいて、当該物標の移動軌跡を推定する第5のステップと、この第5のステップにおいて推定された前記移動軌跡に基づいて、当該移動軌跡に対応する前記物標が接近物であるか否かを判定する第6のステップとを含んでもよい。
【0013】
そして、このような本発明によれば、密度マップに基づいた高精度な検出位置の時間変化を監視することによる立体物(物標)の追跡によって、立体物が自ら撮像装置に接近する接近物であるか否かを高精度に判定することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明の立体物検出装置において、前記物標履歴記録装置は、前記最新の立体物の位置が検出された時点で、既に履歴として記録されている前記物標の予想される現在位置を、当該履歴に基づいて算出し、算出された前記物標の予想される現在位置と、前記検出された最新の立体物の位置とを比較して、両者が近いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、当該算出された物標の予想される現在位置に該当する物標の履歴に追記し、前記両者が遠いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、新たな物標の履歴として前記記憶部に新規記録してもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記第4のステップは、前記第3のステップにおいて前記最新の立体物の位置が検出された時点で、既に前記履歴に記録されている前記物標の予想される現在位置を、当該履歴に基づいて算出し、算出された前記物標の予想される現在位置と、前記検出された最新の立体物の位置とを比較する第4aのステップと、この第4aのステップにおいて比較された両者が近いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、当該算出された物標の予想される現在位置に該当する物標の履歴に追記し、前記両者が遠いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、新たな物標の履歴として前記記憶部に新規記録する第4bのステップとを含んでもよい。
【0015】
そして、このような本発明によれば、新たに検出された立体物の位置について、既に追跡している立体物の予想される現在位置との距離関係に基づいて、既に追跡している立体物に紐付けるかまたは新たな追跡対象の初期位置とするかを適正に選択することができるので、立体物が接近物であるか否かを更に高精度に判定することが可能となる。
【0016】
さらにまた、本発明の立体物検出装置において、前記物標履歴記録装置は、前記検出された最新の立体物の位置に前記算出された物標の予想される現在位置が近いとみなされる物標が複数存在する場合には、前記検出された最新の立体物の位置を、当該複数の物標の履歴のうちの前記算出された物標の予想される現在位置が前記検出された最新の立体物の位置に最も近い物標の履歴に追記してもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記第4bのステップは、前記検出された最新の立体物の位置に前記算出された物標の予想される現在位置が近いとみなされる物標が複数存在する場合には、前記検出された最新の立体物の位置を、当該複数の物標の履歴のうちの前記算出された物標の予想される現在位置が前記検出された最新の立体物の位置に最も近い物標の履歴に追記するステップであってもよい。
【0017】
そして、このような本発明によれば、新たに検出された立体物の位置の近傍に、既に追跡している立体物が複数存在する場合には、新たに検出された立体物の位置を、当該追跡中の複数の立体物の予想される現在位置との距離関係に基づいて、当該追跡中の複数の立体物のうちのより同一性が高い側に紐付けることができるので、立体物が接近物であるか否かをより高精度に判定することが可能となる。
【0018】
また、本発明の立体物検出装置において、前記撮像装置が移動体に配置されており、前記移動体の移動量を取得する移動量取得装置を備え、前記物標履歴記録装置は、取得された前記移動体の移動量に基づいて、前記物標の履歴における前記立体物の位置を補正してもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記撮像装置を移動体に配置し、前記移動体の移動量を取得する第7のステップと、この第7のステップにおいて取得された前記移動体の移動量に基づいて、前記物標の履歴における前記立体物の位置を補正する第8のステップとを含んでもよい。
【0019】
そして、このような本発明によれば、移動体とともに撮像装置が移動する場合であっても、過去の追跡結果を移動に応じて補正することができるので、立体物の適正な追跡を継続して、接近物の有無の判定を安定的に行うことが可能となる。
【0020】
さらに、本発明の立体物検出装置において、前記接近物判定装置によって接近物であると判定された前記物標の衝突余裕時間を、当該物標の前記推定された移動軌跡に基づいて算出し、算出された前記衝突余裕時間が閾値時間以下の場合に、当該物標を対象とした警報を出力する警報出力装置を備えてもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記第6のステップにおいて接近物であると判定された前記物標の衝突余裕時間を、当該物標の前記推定された移動軌跡に基づいて算出し、算出された前記衝突余裕時間が閾値時間以下の場合に、当該物標を対象とした警報を出力する第9のステップを含んでもよい。
【0021】
そして、このような本発明によれば、立体物の位置についての高精度な検出結果および立体物が接近物であるか否かについての正確な判定結果に基づいて、立体物を対象とした警報の出力制御を行うことができるので、警報システムの信頼性を向上させることができる。
【0022】
さらにまた、本発明の立体物検出装置において、前記撮像装置が移動体に配置されており、前記最新の検出対象画像が作成される毎に、当該最新の検出対象画像とこれの前回に作成された前記検出対象画像との差分面積を算出する差分面積算出装置と、この差分面積算出装置によって算出された前記差分面積に基づいて、前記検出対象画像に対応する前記立体物が接近物であるか否かを判定する第2の接近物判定装置とを備え、前記第2の接近物判定装置は、前記算出された差分面積の変化に基づいて、前記差分面積が増加したか否かを判定する差分面積増加判定装置と、前記移動体が移動中であるか否かを判定する移動判定装置と、前記算出された差分面積の変化量が閾値変化量以上であるか否かを判定する差分面積変化量判定装置とを備えるとともに、次の(a)および(b)の各条件、(a)前記差分面積が増加したとの判定がなされ、かつ、前記移動中ではないとの判定がなされたこと、(b)前記差分面積が増加したとの判定がなされ、かつ、前記移動中であるとの判定がなされ、かつ、前記差分面積の変化量が前記閾値変化量以上ではないとの判定がなされたこと、のいずれかが満足される場合に、前記接近物であるとの判定を行い、一方、(a)および(b)の各条件のいずれも満足されない場合には、前記接近物ではないとの判定を行い、前記警報出力装置は、前記第2の接近物判定装置によって前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物については、当該立体物に対応する前記衝突余裕時間が前記閾値時間以下の場合であっても前記警報を出力しなくてもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記撮像装置を移動体に配置し、前記第1のステップにおける最新の前記検出対象画像の作成の度毎に、当該最新の検出対象画像とこれの前回に作成された前記検出対象画像との差分面積を算出する第10のステップと、この第10のステップにおいて算出された前記差分面積に基づいて、前記検出対象画像に対応する前記立体物が接近物であるか否かを判定する第11のステップとを含み、前記第11のステップは、次の(a)および(b)の各条件、(a)前記算出された差分面積の変化に基づいて前記差分面積が増加したとみなされ、かつ、前記移動体が移動中ではないこと、(b)前記算出された差分面積の変化に基づいて前記差分面積が増加したとみなされ、かつ、前記移動体が移動中であり、かつ、前記算出された差分面積の変化量が閾値変化量以上ではないこと、のいずれかが満足される場合には、前記接近物であると判定し、一方、(a)および(b)の各条件のいずれも満足されない場合には、前記接近物ではないと判定するステップであり、前記第9のステップは、前記第11のステップにおいて前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物については、当該立体物に対応する前記衝突余裕時間が前記閾値時間以下の場合であっても前記警報を出力しないステップであってもよい。
【0023】
そして、このような本発明によれば、前述した立体物の検出位置に基づいた接近物判定に併せて、差分面積に基づいた接近物判定を行った上で警報の出力を制御することができるので、接近物であるか否かについてのより正確な判定結果を警報の出力の有無に反映させることができ、ひいては、警報システムの信頼性を更に向上させることが可能となるとともに、不要な警報の出力によるユーザの不快感を軽減することが可能となる。特に、このような本発明は、検出された立体物が静止している状況下(とりわけ、撮像装置の近くで静止している状況下)で、移動体とともに撮像装置が移動したが為に差分面積が大きく増加するような場合に、これを誤って立体物の接近とみなした誤判定およびこれにともなう誤警報を未然に回避するのに有効である。
【0024】
また、本発明の立体物検出装置において、前記警報出力装置は、前記差分面積の変化量が前記閾値変化量以上であるとの判定がなされたことによって前記第2の接近物判定装置によって前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物についても、これを対象とした前記警報の出力を既に行っている場合には、この警報の出力を継続してもよい。同様に、本発明の立体物検出方法において、前記第9のステップは、前記算出された差分面積の変化量が前記閾値変化量以上であることによって前記第11のステップにおいて前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物についても、これを対象とした前記警報の出力を既に行っている場合には、この警報の出力を継続するステップであってもよい。
【0025】
そして、このような本発明によれば、差分面積に基づいて接近物ではないと判定された立体物についても、これを対象とした警報が既に出力されている場合には、その警報の出力を維持することによって、立体物に近づいている状況に変化がないにもかかわらず警報が突然停止することによるユーザの違和感の発生を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、立体物の検出位置精度の向上および安定化を簡便に実現することができ、ひいては、立体物検出を適用したシステムの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、車載カメラの撮像画像の一例を示す図
【図3】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、検出対象画像の一例を示す模式図
【図4】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、マスク画像の一例を示す図
【図5】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、マスク画像の作成方法を示す概念図
【図6】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、密度マップの作成方法を示す概念図
【図7】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、密度マップに該当する領域を模式的に示す斜視図
【図8】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、深度マップの作成方法を示す概念図
【図9】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、立体物の位置の検出方法を示す概念図
【図10】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、物標の履歴を示す概念図
【図11】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、物標の追跡状態を示す概念図
【図12】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、物標の移動軌跡の推定状態を示す概念図
【図13】本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態において、警報の出力状態の一例を示す図
【図14】本発明に係る立体物検出方法の第1実施形態を示すフローチャート
【図15】本発明に係る立体物検出装置の第2実施形態を示すブロック図
【図16】本発明に係る立体物検出装置の第2実施形態において、差分面積の算出方法を示す概念図
【図17】本発明に係る立体物検出方法の第2実施形態を示す第1のフローチャート
【図18】本発明に係る立体物検出方法の第2実施形態を示す第2のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態について、図1乃至図13を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る立体物検出装置の第1実施形態として、移動体としての自車(車両)に搭載された立体物検出装置1を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態における立体物検出装置1は、単一の撮像装置としての車載カメラ2を有している。この車載カメラ2は、自車の所定の位置に取り付けられており、所定の撮像対象面としての路面を含む自車の周辺の視野角内の撮像領域を、不図示の入力装置(操作ボタン等)を用いたユーザ操作や車両の所定の運転操作等を開始トリガとして所定のフレームレートで撮像するようになっている。なお、路面には、道路の路面だけでなく、駐車場の路面、地面、その他の車両の走行が想定される走行面が含まれる(以下、同様)。そして、立体物検出装置1は、このような車載カメラ2の撮像画像に基づいて、路面上の立体物を検出するようになっている。なお、車載カメラ2は、魚眼レンズ等の広角のレンズを備えた広視野角のカメラであって、CCDやCMOS等の固体撮像素子(像面)を備えたデジタルカメラであってもよい。また、車載カメラ2は、自車の後部(例えば、リアライセンスガーニッシュ部等)に自車の後方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車の後方を中心とした所定の撮像領域を撮像するバックカメラであってもよい。これ以外にも、車載カメラ2は、自車の前部(例えば、エンブレム部等)に自車の前方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車の前方を中心とした所定の撮影領域を撮影するフロントカメラであってもよい。また、これら以外にも、車載カメラ2は、自車の左側部(例えば、左ドアミラー等)に自車の左側方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車の左側方を中心とした所定の撮影領域を撮影する左サイドカメラであってもよい。さらに、これら以外にも、車載カメラ2は、自車の右側部(例えば、右ドアミラー等)に自車の右側方の路面を斜め方向から見下ろすような姿勢で取り付けられた自車の右側方を中心とした所定の撮影領域を撮影する右サイドカメラであってもよい。
【0031】
また、図1に示すように、立体物検出装置1は、カメラ画像取得部3を有しており、このカメラ画像取得部3には、車載カメラ2の撮像画像が、撮像の度毎に逐次入力されるようになっている。
【0032】
さらに、図1に示すように、立体物検出装置1は、検出対象画像作成装置としての検出対象画像作成部4を有している。この検出対象画像作成部4は、カメラ画像取得部3によって取得された車載カメラ2の撮像画像をカメラ画像取得部3から逐次取得し、取得された撮像画像に基づいて、路面上の立体物を画像認識によって検出するようになっている。ここでの立体物の検出は、撮像画像中のいずれの画素領域が立体物に該当するものであるかを検出できる方法によって行えばよく、前述した背景差分法その他の公知の立体物検出方法を適用することができる。そして、検出対象画像作成部4は、このようにして立体物が検出された場合には、検出された立体物以外の不要な画素領域を撮像画像から除去して、検出された立体物のみをこれのシルエットとして残した画像である検出対象画像を作成するようになっている。なお、検出対象画像は、歪み補正後の画像であってもよい。ここで、図2に示すように、撮像画像が、画像左端側に2台の他車両が並んで映っている画像であるとする。この場合に、これら2台の他車両が検出対象画像作成部4によって立体物として検出された場合には、検出対象画像は、例えば、図3に示すように、2台の他車両に対応するシルエット(白塗り部)と、これ以外の背景(黒塗り部)とからなる画像となる。ただし、検出対象画像における背景は、立体物(図3における他車両)のシルエットの像面上の位置および範囲を規定するために補足的に存在するものであり、撮像画像を反映した画像は一切含まれていない。なお、検出対象画像作成部4は、例えば背景差分法を用いた立体物検出を行う場合には、時系列的に前後する複数の撮像画像の差分をとって差分画像に相当する立体物を検出することになるが、このような差分をとる処理を撮像画像における全画素を対象として行う場合には処理負担が過大となる場合がある。そこで、このような場合には、撮像画像の画素を間引いてサイズを縮小した上で差分をとるようにしてもよい。そして、このようにして差分をとって立体物を検出した後に撮像画像の間引かれた画素を復元してサイズを元に戻して検出対象画像を作成する場合には、検出対象画像は、図3のような一連のシルエットではなく、画素を間引いたことを反映したドット群のようなイメージとなる。このような検出対象画像の作成周期は、撮像画像の取得周期と同周期であってもよいし、または、異なる周期(例えば、撮像画像の取得周期の複数周期分または当該取得周期より短い周期)であってもよい。
【0033】
図1に戻って、立体物検出装置1は、密度マップ作成装置としての密度マップ作成部5を有している。この密度マップ作成部5は、検出対象画像作成部4によって作成された検出対象画像に基づいて、路面における立体物の空間密度の分布を示す画像である密度マップを作成するようになっている。この密度マップの作成は、検出対象画像作成部4によって最新の検出対象画像が作成される毎に繰り返し行われる。
【0034】
ここで、密度マップ作成部5は、密度マップの作成にあたって、まず、前提として、図4に示すような複数のマスク画像Mij(i、jは整数、以下同様)を予め記憶しておく。これらのマスク画像Mijは、次のようにして作成されたものである。すなわち、図5に示すように、路面上に、この路面と同一平面状の座標平面(X−Y座標)を設定(仮定)する。なお、この座標平面は、三次元ワールド座標系の一部を構成するものであるが、Z軸(高さ方向)に垂直なZ座標が一定の座標平面であるため、以下の説明では、この座標平面上での座標点におけるZ座標は無視して扱う。また、このような座標平面は、図5に示すように、車載カメラ2の位置(三次元位置)の座標平面上への垂直投影点を原点(0,0)としたものである。なお、車載カメラ2をバックカメラとした場合には、図5の座標平面におけるX軸方向が車幅方向となり、Y軸方向が車両全長方向となる。また、図5に示すように、X座標は、車載カメラ2に最も近い原点(0,0)よりも右側が正、左側が負であってもよい。一方、図5におけるY座標はすべて正である。このような座標平面および三次元ワールド座標系は、車載カメラ2の既知のカメラパラメータ(外部パラメータ等)に対応付けて設定されたものであってもよい。次いで、図5に示すように、前述のようにして設定された座標平面における所定の座標(i,j)に、一定の幅、奥行きおよび高さを有する直方体マスク(直方体)を配置したと仮定する。この直方体マスクは、これに対応するマスク画像Mijの作成に関与することになる。なお、図5には、便宜上、複数の直方体マスクが同時に仮定されているが、個々のマスク画像Mijを作成する際には、それぞれに対応する直方体マスクを個別に仮定することになる。また、直方体マスクのサイズや配置周期はコンセプトに応じて種々の値を選択することができる。例えば、全直方体マスクを同時に配置したと仮定した場合に、互いに隣位する直方体マスク同士に接触や重なりが生じるようなサイズ/配置周期を選択してもよい。次いで、このようにして配置したと仮定された各直方体マスクのシルエットを、車載カメラ2の像面に投影(撮像)した場合に得られるべき画像を、各座標ごとに算出する。そして、このようにして算出された各座標ごとの画像が、図4に示した複数のマスク画像Mijとなる。図4に示すように、各マスク画像Mijは、対応する座標に仮想配置された直方体マスクのシルエットが白塗りの投影画像として含まれているとともに、残余の領域が黒塗りの画像となっている。また、各マスク画像Mijは、いずれも撮像画像と同一サイズの画像となっている。さらに、各マスク画像Mijは、同一サイズの直方体マスクに基づいたものであるため、各マスク画像Mijのうち、車載カメラ2に最も近い座標の原点(0,0)に対応するマスク画像M(i=0、j=0)が、直方体マスクのシルエットが最も広い範囲で投影されたものとなっている。なお、座標におけるi、jの配置間隔(実世界上における距離間隔)は、コンセプトに応じて好適な値を選択することができる。また、マスク画像Mijの総枚数は、座標平面上の全座標(i,j)に直方体マスクを配置したと仮定して、X座標iの上限値をn、下限値を−n、Y座標jの上限値をm(下限値は0)とした場合には、(2n+1)×(m+1)枚となる。このような直方体マスクの仮定によるマスク画像Mijの作成は、車載カメラ2の既知のカメラパラメータ(内部/外部パラメータ)を利用して行うようにしてもよい。
【0035】
次いで、密度マップ作成部5は、このようにしてマスク画像Mijを各座標ごとに(対応付けて)予め記憶しておいた上で、各座標ごとに、検出対象画像作成部4によって作成された検出対象画像における立体物のシルエットと各座標に対応するマスク画像Mijにおける直方体マスクのシルエットとの重なり部分の面積sijを求める畳み込み演算を行う。この面積sijは、当該重なり部分を構成する画素領域の画素数として求めてもよい。図6には、このような畳み込み演算が概念的に示されている。
【0036】
次いで、密度マップ作成部5は、このようにして求められた各座標ごとの重なり部分の面積sijを、各座標ごとのマスク画像Mijにおける直方体マスクのシルエットの面積Sij(画素数であってもよい)で除することによって、各座標ごとに、当該重なり部分についての直方体マスクのシルエットに対する面積比sij/Sijを算出する。そして、密度マップ作成部5は、算出された各座標ごとの面積比sij/Sijを、各座標における立体物の空間密度dijとする。すなわち、dij=sij/Sijとなる。
【0037】
そして、密度マップ作成部5は、このようにして算出された各座標における空間密度dijに応じた画素値を有するような各座標ごとの画素を仮定する。ただし、画素の画素値は、空間密度dijが高いほど高い値を設定する。そして、当該仮定された各座標ごとの画素を、各座標の配列順にしたがって配列することによって、図6に示すような密度マップを作成する。ここで、図6に示すように、密度マップは、各座標ごとの空間密度dijを反映した画素値を有する画素を構成単位とした前述した座標平面(図5参照)に対応する一連の画像となっている。また、密度マップの原点は、車載カメラ2の位置に最も近い前述した座標平面の原点(0,0)に対応している。図7には、このような密度マップで示される領域が模式的に示されている。ここで、図6に示すように、密度マップ上における立体物は、原点側から周辺側に向かって放射状に延びる楔形の画像として現われるようになっている。また、立体物が互いに隣接するようにしてN個存在するような場合には、図6に示すように、密度マップ上にN個(図6において2つ)の楔形を合成したような画像として現われる。このような楔形の画像を構成する画素の画素値(すなわち、空間密度)は、次の(i)〜(iii)に示すような特徴を有している。(i)原点から楔形の先端部までの領域をはじめとした楔形の外側の領域では0となる。(ii)楔形の先端部を基点として原点から離れるにしたがって高くなる。(iii)立体物の実際の位置に対応する座標付近で飽和する(ピークとなる)。
【0038】
図1に戻って、立体物検出装置1は、立体物位置検出装置としての立体物位置検出部6を有している。この立体物位置検出部6は、密度マップ作成部5によって作成された密度マップに基づいて、立体物の位置を検出するようになっている。この立体物の位置の検出は、密度マップ作成部5によって最新の密度マップが作成される毎に繰り返し行われる。
【0039】
ここで、立体物位置検出部6は、立体物の位置の検出にあたって、まず、密度マップから、空間密度dijを反映した画素値が予め設定された閾値画素値を超えるような高密度領域を抽出する。この高密度領域は、画素の集合として抽出される。図8(a)は、このような高密度領域(図8(a)における楕円枠内)が密度マップ上において抽出された状態を示す概念図である。図8(a)に示すように、密度マップにおいて複数の楔形が得られた場合には、同数の高密度領域が抽出されることになる。
【0040】
次いで、立体物位置検出部6は、このようにして抽出された高密度領域における原点側のエッジを抽出する。図8(b)は、このようなエッジが抽出された状態を示す概念図である。なお、図8(b)に示すように、抽出されたエッジは、密度マップから当該エッジに対応する画素以外を除去したような密度マップと同サイズの画像として得られる。この画像は、立体物の足下側を示す画像であり、奥行(深さ)に関与するので、深度マップと称することとする。
【0041】
次いで、立体物位置検出部6は、このようにして抽出されたエッジから、高密度領域における原点に最も近い代表点の座標(x,y)を抽出する。そして、立体物位置検出部6は、抽出された代表点の座標を、高密度領域に対応する立体物の位置(x,y)として決定(検出)する。図9(a)および図9(b)は、このような立体物位置検出部6による位置検出を示す概念図である。同図においては、代表点が2つ検出されているが、これらは、検出対象画像作成部4によって検出された2台の他車両の位置をそれぞれ示している。なお、図9(b)は、図9(a)の深度マップの縮尺を、代表点のみを残した状態で1/4に縮小したものに相当する。
【0042】
図1に戻って、立体物検出装置1は、物標履歴記録装置としての物標履歴記録部7を有している。この物標履歴記録部7には、立体物位置検出部6によって検出された最新の立体物の位置が、検出(更新)する毎に立体物位置検出部6側から逐次データとして入力されるようになっている。そして、物標履歴記録部7は、この入力された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、追跡対象となる物標の履歴として記憶部8に記録するようになっている。なお、最新の立体物の位置の検出時刻については、立体物位置検出部6が位置の検出と同時に取得するようにしてもよいし、物標履歴記録部7側において取得してもよい。このような時刻の取得手段としては、公知の種々の現在時刻取得手段を適用することができ、例えば、ラジオの時報、GPSレシーバによって受信されたGPS情報または装置の時刻表示機能等を挙げることができる。また、撮像画像の取得周期または検出対象画像の作成周期に同期して装置1がカウントアップする値を時刻として用いてもよい。図10は、このような物標の履歴を模式的に示したものであり、図10においては、立体物の検出位置(x,y)が、検出時刻および物標識別情報(例えば、物標名や物標番号)と対応付けて記録されている。
【0043】
ここで、物標履歴記録部7は、このような物標の履歴の記録(追跡)を、立体物位置検出部6によって最新の立体物の位置が検出される度毎に繰り返す過程で、最新の立体物の位置が検出された時点で、この時点において既に履歴に記録されている物標の予想される現在位置を、当該履歴に基づいて算出するようになっている。この予想される現在位置は、例えば、物標の前回の検出位置の前々回の検出位置に対する位置変化量と前回の検出時刻の前々回の検出時刻に対する時間変化量との比をとって前回の位置検出時における物標の速度(ベクトル)を求め、この速度と、前回の検出位置と、前回の検出時刻から現在時刻までの経過時間とに基づいて算出してもよい。そして、物標履歴記録部7は、このようにして算出された物標の予想される現在位置と、検出された最新の立体物の位置とを比較して、両者が近いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、当該算出された物標の予想される現在位置に該当する物標の履歴に追記するようになっている。一方、前記両者が遠いとみなされる場合には、物標履歴記録部7は、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、新たな物標の履歴として記憶部8に新規記録するようになっている。また、物標履歴記録部7は、このような物標の予想される現在位置に基づいた物標の最新の検出位置の追記または新規記録を行う過程で、最新の検出位置に算出された物標の予想される現在位置が近いとみなされる物標が複数存在する場合には、最新の検出位置を、当該複数の物標の履歴のうち、算出された物標の予想される現在位置が最新の検出位置に最も近くなるような1つの物標の履歴に追記するようにしてもよい。あるいは、このような最新の検出位置の近傍に複数の物標が存在する場合に、これら複数の物標の履歴の全てに最新の検出位置を一旦追記しておいてもよい。この場合には、その後の位置検出によって最新の検出位置から遠いとみなされるようになった物標の履歴から、当該検出位置に対応する位置・時刻を事後的に削除すればよい。さらに、物標履歴記録部7は、このような物標の履歴の記録を繰り返す過程で、図1に示す移動量取得装置としての移動量取得部9によって取得された自車の移動量に基づいて、物標の履歴における検出位置を補正(シフト/回転)するようになっている。このような履歴の補正を行う理由は、履歴内の検出位置は、これの検出時点(過去)における車載カメラ2の位置に対応した原点(0、0)を有する座標系において検出されたものであるため、自車の移動によって車載カメラ2が移動している現在においては、原点(座標系)がずれているため履歴中の検出位置もそれに応じてオフセットさせる必要があるからである。なお、移動量取得部9は、車載カメラ2の撮像画像の差分(時間変化)に基づいて自車の移動量を推定して取得するものであってもよいし、あるいは、車速センサ、加速度センサまたはジャイロセンサ等を用いて移動量を取得するものであってもよい。なお、物標履歴記録部7は、最新の検出位置が追記されないまま所定の時間が経過した物標の履歴については、物標を見失ったものとみなして履歴を破棄してもよい。図11は、このような物標履歴記録部7によって記録された物標の履歴を最新の検出位置とともに深度マップの1/4縮尺画像上に示したものである。同図中の物標#1と物標#2とは、検出対象画像作成部4によって検出された2台の他車両に相当する。
【0044】
図1に戻って、立体物検出装置1は、移動軌跡推定装置としての移動軌跡推定部10を有している。この移動軌跡推定部10は、物標履歴記録部7によって記録された物標の履歴に基づいて、当該物標の移動軌跡を推定するようになっている。移動軌跡推定部10は、物標(立体物)が所定の運動モデルにしたがって移動すると仮定して、物標の移動軌跡を当該物標の履歴から推定するようになっている。
【0045】
ここでは、物標が等速直線運動をすると仮定して説明する。まず、物標の履歴を(ti,xi,yi)(但し、1≦i≦n)とする。ここで、tiは、物標(立体物)の検出時刻、xi、yiは、時刻tiにおいて検出された物標の位置である。また、nは、移動軌跡の推定に用いる履歴の要素数である。nの値としては、後述の警報タイミングが遅延しない程度の好適な値を選択すればよい。今、物標が等速直線運動をしていると仮定しているので、時刻T=tにおける物標の位置(xt,yt)は、速度ベクトル(vx,vy)と時刻T=0における物標の位置(x0,y0)とを用いて、次式のように表される。
xt=vx・t+x0 ・・・(1)
yt=vy・t+y0 ・・・(2)
【0046】
次に、(1)式を点群(ti,xi)の回帰直線、(2)式を点群(ti,yi)の回帰直線として、vx、vy、x0、y0を求める。これらは最小二乗法を用いて次式のように求まる。
vx={nΣ(ti・xi)−ΣtiΣxi}/{nΣti−(Σti)}(但し、Σは、i=1〜nまでとる、以下同様) ・・・(3)
vy={nΣ(ti・yi)−ΣtiΣyi}/{nΣti−(Σti)
・・・(4)
x0=(Σxi−vxΣti)/n ・・・(5)
y0=(Σyi−vyΣti)/n ・・・(6)
【0047】
図12は、このような移動軌跡推定部10による移動軌跡の推定によって求められた速度ベクトルを、図11と同様の画像上に重畳表示したものである。このような移動軌跡の推定結果によれば、物標#1が、車載カメラ2の位置に対応する原点(0,0)から遠ざかるような速度ベクトルを有しているため、自車から遠ざかっていることが分かり、また、物標#2が、原点に接近するような速度ベクトルを有しているため、自車に接近していることが分かる。
【0048】
なお、移動軌跡推定部10は、これ以外も、コンセプトに応じて種々の運動モデル(例えば、円運動)を仮定し、それにしたがった計算によって移動軌跡を推定してもよい。
【0049】
図1に戻って、立体物検出装置1は、接近物判定装置としての接近物判定部11を有している。この接近物判定部11は、移動軌跡推定部10によって推定された移動軌跡に基づいて、当該移動軌跡に対応する物標が接近物であるか否かを判定するようになっている。図11の場合には、物標#1が接近物ではないと判定され、物標#2が接近物であると判定されることになる。なお、接近物判定部11は、接近物ではないと判定する場合には、更に、静止物および遠ざかる動体のいずれであるかの判定も同時に行うようにしてもよい。
【0050】
また、図1に示すように、立体物検出装置1は、警報出力装置としての警報出力部12を有している。この警報出力部12は、接近物判定部11によって接近物であると判定された物標の衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)を、移動軌跡推定部10によって推定された移動軌跡に基づいて算出するようになっている。衝突余裕時間は、車載カメラ2の位置(原点)、物標の位置および速度等に基づいて算出してもよい。そして、警報出力部12は、算出された衝突余裕時間が予め設定された閾値時間以下の場合に、該当する物標を対象とした警報を出力するようになっている。この警報の出力は、図13に示すように、撮像画像に基づいて作成されて表示部13に表示された車両周辺監視画像における接近物(他車両)上への警報枠fの表示や、音声出力部14を介した警報音の音声出力によって行うようにしてもよい。また、警報音は、移動ベクトルと対応付けて記憶された接近物の方向を示すアナウンスパターン(例えば、「右後方接近物に注意して下さい」等)を選択して音声アナウンスするものであってもよい。なお、車両周辺監視画像は、車載カメラ2の内部パラメータを用いた歪み補正や、車載カメラ2の絞りや自車の一部等の不要な映り込み部分の除去がなされた画像であってもよい。
【0051】
さらに、立体物検出装置1の前述した各構成部3〜12は、立体物検出装置1の機能に相当する処理を行うCPU、CPUの実行プログラムが記憶されたROMおよびCPUの処理結果の一時的な保存に用いられるRAM等によって実現してもよい。
【0052】
次に、前述した立体物検出装置1を適用した本発明に係る立体物検出方法の第1実施形態について、図14を参照して説明する。
【0053】
本実施形態においては、まず、図14のステップ1(ST1)において、検出対象画像作成部4により、前述した手法によって検出対象画像を作成する。このステップ1(ST1)は、検出対象画像の作成周期毎に繰り返す。
【0054】
次いで、ステップ2(ST2)において、密度マップ作成部5により、前述した手法によって密度マップを作成する。このステップ2(ST2)は、ステップ1(ST1)において最新の検出対象画像が作成される毎に繰り返す。
【0055】
次いで、ステップ3(ST3)において、立体物位置検出部6により、前述した手法によって立体物の位置を検出する。このステップ3(ST3)は、ステップ2(ST2)において最新の密度マップが作成される毎に繰り返す。
【0056】
次いで、ステップ4(ST4)において、物標履歴記録部7により、前述した手法によって物標の履歴の記録を行う。このステップ4(ST4)は、前述のように、履歴の追記(更新)の場合もあるし、新規記録の場合もある。
【0057】
次いで、ステップ5(ST5)において、移動軌跡推定部10により、前述した手法によって物標の移動軌跡を推定する。
【0058】
次いで、ステップ6(ST6)において、接近物判定部11により、前述した手法によって物標が接近物であるか否かの判定(接近物判定)を行う。
【0059】
最後に、ステップ7(ST7)において、警報出力部12により、ステップ6(ST6)において接近物であると判定されたことを条件として、接近物への警報の出力を行う。
【0060】
以上述べたように、本実施形態によれば、密度マップを用いた立体物の位置検出を行うことによって高い検出位置精度を確保することができる。また、パターンマッチングのような複雑な処理や、レーダー等の位置検出用の特別な装置を要しないので、立体物の検出を簡便かつ低コストで行うことができる。さらに、密度マップに基づいた高精度な検出位置の時間変化を監視することによる立体物(物標)の追跡によって、立体物が接近物であるか否かを高精度に判定することができる。さらにまた、新たに検出された立体物の位置について、既に追跡している立体物の予想される現在位置との距離関係に基づいて、既に追跡している立体物に紐付けるかまたは新たな追跡対象の初期位置とするかを適正に選択することができるので、立体物が接近物であるか否かを更に高精度に判定することができる。また、新たに検出された立体物の位置の近傍に、既に追跡している立体物が複数存在する場合に、新たに検出された立体物の位置を、当該追跡中の複数の立体物の予想される現在位置との距離関係に基づいて、当該追跡中の複数の立体物のうちのより同一性が高い側に紐付けることもでき、立体物が接近物であるか否かをより高精度に判定することも可能となる。さらに、自車とともに車載カメラ2が移動する場合であっても、過去の追跡結果を移動に応じて補正することができるので、立体物の適正な追跡を継続して、接近物の有無の判定を安定的に行うことができる。さらにまた、立体物の位置についての高精度な検出結果および立体物が接近物であるか否かについての正確な判定結果に基づいて、立体物を対象とした警報の出力制御を行うことができるので、警報システムの信頼性を向上させることができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る立体物検出装置の第2実施形態について、図15および図16を参照して説明する。
【0062】
なお、第1実施形態と基本的な構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0063】
図15は、本発明に係る立体物検出装置の第2実施形態として、第1実施形態と同様に車両に搭載された立体物検出装置21を示すブロック図である。
【0064】
図15に示すように、本実施形態における立体物検出装置21は、図1に示した第1実施形態の立体物検出装置1の各構成部をそのまま備えている。このような第1実施形態の各構成部に加えて、更に、本実施形態における立体物検出装置21は、図15に示すように、差分面積算出装置としての差分面積算出部22を有している。この差分面積算出部22は、検出対象画像作成部4による最新の検出対象画像の作成の度毎に、当該最新の検出対象画像とこれの前回に作成された検出対象画像との差分面積を算出するようになっている。この差分面積の算出は、例えば、図16に示すように、最新の検出対象画像と前回の検出対象画像との差分画像を求め、この差分画像の面積を求めることによって行うようにしてもよい。差分面積は、画素数として算出されるものであってもよい。
【0065】
また、図15に示すように、立体物検出装置21は、第2の接近物判定装置としての第2の接近物判定部23を有している。この第2の接近物判定部23は、差分面積算出部22によって算出された差分面積に基づいて、検出対象画像に対応する立体物が接近物であるか否かを判定するようになっている。
【0066】
この第2の接近物判定部23についてさらに詳述すると、図15に示すように、第2の接近物判定部23は、差分面積増加判定装置としての差分面積増加判定部24を有している。この差分面積増加判定部24は、差分面積算出部22によって算出された差分面積の変化(すなわち、今回算出された差分面積と、これの前回に算出された差分面積との差)に基づいて、差分面積が増加したか否かを判定するようになっている。
【0067】
また、図15に示すように、第2の接近物判定部23は、移動判定装置としての移動判定部25を有している。この移動判定部25は、自車の移動量をモニタして、自車が移動中であるか否かを判定するようになっている。自車の移動量については、前述した移動量取得部9から取得してもよい。
【0068】
さらに、図15に示すように、第2の接近物判定部23は、差分面積変化量判定装置としての差分面積変化量判定部26を有している。この差分面積変化量判定部26は、差分面積算出部22によって算出された差分面積の変化量が予め設定された閾値変化量以上であるか否かを判定するようになっている。
【0069】
そして、第2の接近物判定部23は、このような各構成部24〜26を備えた上で、次の(a)および(b)の各条件のいずれかが満足された場合に、検出対象画像に対応する立体物が接近物であると判定するようになっている。
(a)差分面積増加判定部24によって差分面積が増加したとの判定がなされ、かつ、移動判定部25によって自車が移動中ではないとの判定がなされたこと。
(b)差分面積増加判定部24によって差分面積が増加したとの判定がなされ、かつ、移動判定部25によって自車が移動中であるとの判定がなされ、かつ、差分面積変化量判定部26によって差分面積の変化量が閾値変化量以上ではないとの判定がなされたこと。
【0070】
一方、第2の接近物判定部23は、(a)および(b)のいずれの条件も満足されない場合には、検出対象画像に対応する立体物が接近物ではないと判定するようになっている。
【0071】
そして、本実施形態において、警報出力部12は、第2の接近物判定部23によって接近物ではないと判定された立体物については、当該立体物に対応する衝突余裕時間が閾値時間以下の場合であっても警報を出力しないようになっている。
【0072】
ただし、警報出力部12は、差分面積変化量判定部26によって前記閾値変化量以上であるとの判定がなされたことによって第2の接近物判定装置23によって接近物ではないとの判定がなされた立体物についても、これを対象とした警報の出力を既に行っている場合には、この警報の出力を継続するようになっている。
【0073】
ここで、従来から、自車に対する接近物の有無の判定方法として、差分面積の変化に基づいた判定を行う技術は既にあった。しかしながら、このような差分面積による判定を行う場合には、自車の移動による差分面積の変化が、接近物であると誤判定されてしまうことが問題点として指摘されていた。特に、自車の近くに存在する静止物(例えば、停車車両)が車載カメラ2で捕捉されている状況下で、自車が移動すると、差分面積は著しい増加を示すことになり、接近物であるとの誤判定がなされる可能性が極めて高かった。そして、このような誤判定は、近接静止物に対する無用な警報の出力に繋がることになり、ユーザの不快感を招く結果となっていた。本実施形態は、このような問題を回避するために有効である。
【0074】
次に、立体物検出装置21を適用した本発明に係る立体物検出方法の第2実施形態について、図17および図18を参照して説明する。
【0075】
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、まず、ステップ1(ST1)において、検出対象画像作成部4によって検出対象画像を作成する。
【0076】
次いで、第1実施形態と同様のステップ2〜6(ST2〜6)において、密度マップを用いて検出された立体物の位置(物標)の移動軌跡(移動ベクトル)に基づいた接近物であるか否かの判定(接近物判定)を、接近物判定部11によって行う。
【0077】
また、このとき、ステップ8(ST8)において、第2の接近物判定部23により、差分面積の変化に基づいた接近物判定を行う。
【0078】
次いで、ステップ7’(ST7’)において、警報出力部12により、ステップ2〜6(ST6)における判定結果に基づいた警報の出力の有無の決定を行う。
【0079】
また、このとき、ステップ9(ST9)において、警報出力部12により、ステップ8(ST8)における判定結果に基づいた警報の出力の有無の決定を行う。
【0080】
次いで、ステップ10(ST10)において、警報出力部12により、ステップ7’(ST7’)およびステップ9(ST9)の双方において警報を出力すると決定したか否かを判定する。そして、ステップ10(ST10)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ11(ST11)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ12(ST12)に進む。
【0081】
次いで、ステップ11(ST11)に進んだ場合には、警報出力部12により、検出対象画像に対応する立体物を対象とした警報の出力を行う。
【0082】
一方、ステップ12(ST12)に進んだ場合には、警報出力部12による警報の出力は行わない。
【0083】
次に、図18は、ステップ8(ST8)およびステップ9(ST9)の詳細な内容を示したものである。
【0084】
図18に示すように、ステップ8(ST8)は、ステップ8a(ST8a)〜ステップ8d(ST8d)の4つのステップによって構成される。また、ステップ9(ST9)も、ステップ9a(ST9a)〜ステップ9c(ST9c)の3つのステップによって構成される。
【0085】
具体的には、まず、ステップ8a(ST8a)において、差分面積算出部22により、前述した手法によって差分面積を算出する。このステップ8a(ST8a)は、検出対象画像作成部4によって最新の検出対象画像が作成される毎に繰り返す。
【0086】
次いで、ステップ8b(ST8b)において、差分面積増加判定部24により、ステップ8a(ST8a)によって算出された今回の差分面積が、前回算出された差分面積よりも増加したか否かを判定する。そして、ステップ8b(ST8b)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ8c(ST8c)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、立体物が接近物ではないと判定してステップ9c(ST9c)に進む。
【0087】
ここで、ステップ8c(ST8c)以降の処理について先に説明すると、まず、ステップ8c(ST8c)において、移動判定部25により、自車が移動中であるか否かを判定する。そして、ステップ8c(ST8c)において否定的な判定結果が得られた場合には、立体物が接近物であると判定してステップ9b(ST9b)に進み、肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ8d(ST8d)に進む。
【0088】
そして、ステップ9b(ST9b)に進んだ場合には、警報出力部12により、警報を出力すると決定してステップ10(ST10)に進む。
【0089】
一方、ステップ8d(ST8d)に進んだ場合には、差分面積変化量判定部26により、差分面積の変化量が閾値変化量以上であるか否かを判定する。そして、ステップ8d(ST8d)において肯定的な判定結果が得られた場合には、立体物が接近物ではないと判定してステップ9a(ST9a)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、立体物が接近物であると判定してステップ9b(ST9b)に進む。
【0090】
次いで、ステップ9a(ST9a)において、警報出力部12により、検出対象画像に対応する立体物を対象とした警報を既に出力中であるか否かを判定する。そして、ステップ9a(ST9a)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ9b(ST9b)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ9c(ST9c)に進む。
【0091】
次いで、ステップ9c(ST9c)において、警報出力部12により、警報を出力しないと決定してステップ10(ST10)に進む。
【0092】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、更に、自車の移動にともなう静止物(特に、近接静止物)に対する誤警報を未然に回避することができ、無用な警報によるユーザの不快感を軽減するといった効果を奏することができる。
【0093】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 立体物検出装置
2 車載カメラ
4 検出対象画像作成部
5 密度マップ作成部
6 立体物位置検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に配置され、所定の撮像対象面を含む所定の撮像領域を撮像する単一の撮像装置を備え、
前記撮像領域の撮像画像に基づいて、前記撮像対象面上の立体物を検出する立体物検出装置であって、
前記撮像画像に基づいて前記撮像対象面上の立体物を検出し、この検出された立体物以外の不要な領域を除去して前記検出された立体物のみをシルエットとして残した検出対象画像を作成する検出対象画像作成装置と、
前記撮像対象面上に設定された座標平面における所定の座標に、一定の幅、奥行きおよび高さを有する直方体を配置したと仮定した場合に、前記配置したと仮定された直方体のシルエットを前記撮像装置の像面に投影した場合に得られるべきマスク画像を、互いに異なる複数の座標ごとに予め記憶しておき、これら各座標ごとに、前記検出対象画像における立体物のシルエットと各座標に対応する前記マスク画像における直方体のシルエットとの重なり部分についての面積比を、各座標における前記立体物の空間密度としてそれぞれ算出し、算出された各座標における前記空間密度に応じた画素値を有するような各座標ごとの画素を、各座標の配列順にしたがって配列することによって、前記撮像対象面における前記空間密度の分布を示す密度マップを作成する密度マップ作成装置と、
この密度マップ作成装置によって作成された前記密度マップから、前記画素値が閾値画素値を超える少なくとも1つの高密度領域を抽出し、抽出された前記高密度領域における前記撮像装置に最も近い代表点の座標を、当該高密度領域に対応する前記立体物の位置として検出する立体物位置検出装置と
を備えたことを特徴とする立体物検出装置。
【請求項2】
前記検出対象画像作成装置は、所定の作成周期ごとに前記検出対象画像の作成を繰り返し、
前記密度マップ作成装置は、前記検出対象画像が作成される毎に、最新の前記密度マップを作成し、
前記立体物位置検出装置は、前記最新の密度マップが作成される毎に、最新の前記立体物の位置を検出し、
前記最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で追跡対象となる物標の履歴として記憶部に記録する物標履歴記録装置と、
前記記録された物標の履歴に基づいて、当該物標の移動軌跡を推定する移動軌跡推定装置と、
前記推定された移動軌跡に基づいて、当該移動軌跡に対応する前記物標が接近物であるか否かを判定する接近物判定装置と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の立体物検出装置。
【請求項3】
前記物標履歴記録装置は、前記最新の立体物の位置が検出された時点で、既に履歴として記録されている前記物標の予想される現在位置を、当該履歴に基づいて算出し、算出された前記物標の予想される現在位置と、前記検出された最新の立体物の位置とを比較して、両者が近いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、当該算出された物標の予想される現在位置に該当する物標の履歴に追記し、前記両者が遠いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、新たな物標の履歴として前記記憶部に新規記録すること
を特徴とする請求項2に記載の立体物検出装置。
【請求項4】
前記物標履歴記録装置は、前記検出された最新の立体物の位置に前記算出された物標の予想される現在位置が近いとみなされる物標が複数存在する場合には、前記検出された最新の立体物の位置を、当該複数の物標の履歴のうちの前記算出された物標の予想される現在位置が前記検出された最新の立体物の位置に最も近い物標の履歴に追記すること
を特徴とする請求項3に記載の立体物検出装置。
【請求項5】
前記撮像装置が移動体に配置されており、
前記移動体の移動量を取得する移動量取得装置を備え、
前記物標履歴記録装置は、取得された前記移動体の移動量に基づいて、前記物標の履歴における前記立体物の位置を補正すること
を特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の立体物検出装置。
【請求項6】
前記接近物判定装置によって接近物であると判定された前記物標の衝突余裕時間を、当該物標の前記推定された移動軌跡に基づいて算出し、算出された前記衝突余裕時間が閾値時間以下の場合に、当該物標を対象とした警報を出力する警報出力装置を備えたこと
を特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の立体物検出装置。
【請求項7】
前記撮像装置が移動体に配置されており、
前記最新の検出対象画像が作成される毎に、当該最新の検出対象画像とこれの前回に作成された前記検出対象画像との差分面積を算出する差分面積算出装置と、
この差分面積算出装置によって算出された前記差分面積に基づいて、前記検出対象画像に対応する前記立体物が接近物であるか否かを判定する第2の接近物判定装置と
を備え、
前記第2の接近物判定装置は、
前記算出された差分面積の変化に基づいて、前記差分面積が増加したか否かを判定する差分面積増加判定装置と、
前記移動体が移動中であるか否かを判定する移動判定装置と、
前記算出された差分面積の変化量が閾値変化量以上であるか否かを判定する差分面積変化量判定装置と
を備えるとともに、次の(a)および(b)の各条件、
(a)前記差分面積が増加したとの判定がなされ、かつ、前記移動中ではないとの判定がなされたこと
(b)前記差分面積が増加したとの判定がなされ、かつ、前記移動中であるとの判定がなされ、かつ、前記差分面積の変化量が前記閾値変化量以上ではないとの判定がなされたこと
のいずれかが満足される場合に、前記接近物であるとの判定を行い、一方、(a)および(b)の各条件のいずれも満足されない場合には、前記接近物ではないとの判定を行い、
前記警報出力装置は、前記第2の接近物判定装置によって前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物については、当該立体物に対応する前記衝突余裕時間が前記閾値時間以下の場合であっても前記警報を出力しないこと
を特徴とする請求項6に記載の立体物検出装置。
【請求項8】
前記警報出力装置は、前記差分面積の変化量が前記閾値変化量以上であるとの判定がなされたことによって前記第2の接近物判定装置によって前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物についても、これを対象とした前記警報の出力を既に行っている場合には、この警報の出力を継続すること
を特徴とする請求項7に記載の立体物検出装置。
【請求項9】
所定の撮像対象面を含む所定の撮像領域を撮像する単一の撮像装置を所定の位置に配置し、前記撮像領域の撮像画像に基づいて、前記撮像対象面上の立体物を検出する立体物検出方法であって、
前記撮像画像に基づいて前記撮像対象面上の立体物を検出し、前記撮像画像から前記検出された立体物以外の不要な領域を除去して前記検出された立体物のみをシルエットとして残した検出対象画像を作成する第1のステップと、
前記撮像対象面上に設定された座標平面における所定の座標に、一定の幅、奥行きおよび高さを有する直方体を配置したと仮定した場合に、前記配置したと仮定された直方体のシルエットを前記撮像装置の像面に投影した場合に得られるべきマスク画像を、互いに異なる複数の座標ごとに予め用意しておき、これら各座標ごとに、前記第1のステップにおいて作成された前記検出対象画像における前記立体物のシルエットと各座標に対応する前記マスク画像における前記直方体のシルエットとの重なり部分についての面積比を、各座標における前記立体物の空間密度としてそれぞれ算出し、算出された各座標における前記空間密度に応じた画素値を有するような各座標ごとの画素を、各座標の配列順にしたがって配列することによって、前記撮像対象面における前記空間密度の分布を示す密度マップを作成する第2のステップと、
この第2のステップにおいて作成された前記密度マップから、前記画素値が閾値画素値を超える少なくとも1つの高密度領域を抽出し、抽出された前記高密度領域における前記撮像装置に最も近い代表点の座標を、当該高密度領域に対応する前記立体物の位置として検出する第3のステップと
を含むことを特徴とする立体物検出方法。
【請求項10】
前記第1のステップは、前記検出対象画像の作成を、所定の作成周期ごとに繰り返すステップであり、
前記第2のステップは、前記第1のステップにおいて最新の前記検出対象画像が作成される毎に、最新の前記密度マップを作成するステップであり、
前記第3のステップは、前記第2のステップにおいて前記最新の密度マップが作成される毎に、最新の前記立体物の位置を検出するステップであり、
前記第3のステップにおいて検出された前記最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で追跡対象となる物標の履歴として記憶部に記録する第4のステップと、
この第4のステップにおいて記録された前記物標の履歴に基づいて、当該物標の移動軌跡を推定する第5のステップと、
この第5のステップにおいて推定された前記移動軌跡に基づいて、当該移動軌跡に対応する前記物標が接近物であるか否かを判定する第6のステップと
を含むことを特徴とする請求項9に記載の立体物検出方法。
【請求項11】
前記第4のステップは、
前記第3のステップにおいて前記最新の立体物の位置が検出された時点で、既に前記履歴に記録されている前記物標の予想される現在位置を、当該履歴に基づいて算出し、算出された前記物標の予想される現在位置と、前記検出された最新の立体物の位置とを比較する第4aのステップと、
この第4aのステップにおいて比較された両者が近いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、当該算出された物標の予想される現在位置に該当する物標の履歴に追記し、前記両者が遠いとみなされる場合には、当該検出された最新の立体物の位置を、これの検出時刻と対応付けた状態で、新たな物標の履歴として前記記憶部に新規記録する第4bのステップと
を含むことを特徴とする請求項10に記載の立体物検出方法。
【請求項12】
前記第4bのステップは、前記検出された最新の立体物の位置に前記算出された物標の予想される現在位置が近いとみなされる物標が複数存在する場合には、前記検出された最新の立体物の位置を、当該複数の物標の履歴のうちの前記算出された物標の予想される現在位置が前記検出された最新の立体物の位置に最も近い物標の履歴に追記するステップであること
を特徴とする請求項11に記載の立体物検出方法。
【請求項13】
前記撮像装置を移動体に配置し、
前記移動体の移動量を取得する第7のステップと、
この第7のステップにおいて取得された前記移動体の移動量に基づいて、前記物標の履歴における前記立体物の位置を補正する第8のステップと
を含むことを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の立体物検出方法。
【請求項14】
前記第6のステップにおいて接近物であると判定された前記物標の衝突余裕時間を、当該物標の前記推定された移動軌跡に基づいて算出し、算出された前記衝突余裕時間が閾値時間以下の場合に、当該物標を対象とした警報を出力する第9のステップを含むこと
を特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の立体物検出方法。
【請求項15】
前記撮像装置を移動体に配置し、
前記第1のステップにおける最新の前記検出対象画像の作成の度毎に、当該最新の検出対象画像とこれの前回に作成された前記検出対象画像との差分面積を算出する第10のステップと、
この第10のステップにおいて算出された前記差分面積に基づいて、前記検出対象画像に対応する前記立体物が接近物であるか否かを判定する第11のステップと
を含み、
前記第11のステップは、次の(a)および(b)の各条件、
(a)前記算出された差分面積の変化に基づいて前記差分面積が増加したとみなされ、かつ、前記移動体が移動中ではないこと
(b)前記算出された差分面積の変化に基づいて前記差分面積が増加したとみなされ、かつ、前記移動体が移動中であり、かつ、前記算出された差分面積の変化量が閾値変化量以上ではないこと
のいずれかが満足される場合には、前記接近物であると判定し、一方、(a)および(b)の各条件のいずれも満足されない場合には、前記接近物ではないと判定するステップであり、
前記第9のステップは、前記第11のステップにおいて前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物については、当該立体物に対応する前記衝突余裕時間が前記閾値時間以下の場合であっても前記警報を出力しないステップであること
を特徴とする請求項14に記載の立体物検出方法。
【請求項16】
前記第9のステップは、前記算出された差分面積の変化量が前記閾値変化量以上であることによって前記第11のステップにおいて前記接近物ではないとの判定がなされた前記立体物についても、これを対象とした前記警報の出力を既に行っている場合には、この警報の出力を継続するステップであること
を特徴とする請求項15に記載の立体物検出方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−174180(P2012−174180A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38284(P2011−38284)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】