説明

立体画像表示装置、立体画像表示方法、立体画像表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、及びそのプログラムを記録した記録媒体

【課題】奥行き方向の画像位置変動に対して観察者の違和感や3D酔いを避け、快適な立体視を実現する。
【解決手段】右目用画像を右目に、左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体視画像生成装置であって、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力部と、前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替部と、を備え、前記立体視用画像データ出力部が、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替部が、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、知覚できる長さの別の画像を表示させるように切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を表示する装置に関し、特に立体画像を連続して切り替え表示する際の表示方法、立体画像表示プログラム、及びこれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間は一定の間隔を持つ2つの目により得られる画像の違いから空間を把握する能力を持つ。左右の眼による異なる視点から得られる画像中の対応点のずれを視差と呼び、視差を手掛かりの一つとして対象物の位置関係を立体的に把握している。このことを利用して、右目用画像を右目に表示し、左目用画像を左目に表示する手段を設けて、右目用画像、左目用画像として視差を設けた画像を提示することにより立体視が可能であることが知られている。ここでは、立体視を意図して視差を設けた複数の画像のことを立体画像と称する。
【0003】
立体視において、人間は視差に応じた両眼の光軸のなす角度、すなわち輻輳の大きさを対象物までの距離に対応付けていると言われている。よって、右目用画像を右に、左目用画像を左に相対的にずらし、視差を付けた画像を見せると、実際の表示面より遠くに表示物を知覚させることができる。同様に、前述とは逆向きの視差を付けることにより近距離側でも実際の表示面より近くに表示物を知覚させることができる。これらの原理に基づき、右目用画像、左目用画像をそれぞれ右目、左目に、例えばシャッタメガネを用いて時分割で表示することにより、立体画像の立体視が可能となる。
【0004】
また、従来から、複数の画像、主に静止画を連続して表示する、スライドショーなどと呼ばれる画像表示が行われている。スライドショーでは画像の切り替えに工夫を凝らし、特殊な効果を実現しているものなども多くみられ、画像切り替えに面白味を持たせている。
【0005】
しかし、立体画像に対しスライドショーを実施する際、立体画像を連続的に切り替えると、それぞれの画像の奥行き表現も同時に切り替えられることになる。前述のとおり、この奥行き感は立体画像の視差によりもたらされるものであるので、これらの画像を切り替えることにより画像の奥行き感が突然変更されると、立体視を行うユーザに違和感を与え、連続的に画像を切り替えながら呈示することにより疲労感が残るものとなる。
【0006】
この現象を改善するものとして、特許文献1には、切り替え前の立体画像と切り替え後の立体画像の視差を徐々に変更するような補間画像を生成し、切り替え時の視差をスムーズに変更する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−239389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法によれば、急激に視差が変更されることによる違和感や疲労感を軽減することができる。しかしながら、2つの画像の視差を補間する画像を表示することにより、2つの画像の間の切り替え時には、奥行き感が連続的に変更される画像が表示され、観察者には画像と画像の間で表示物が近寄ってきたり、遠ざかったりするように知覚される。
【0009】
特に観察者の視界に占める表示画面の大きさが大きい場合や、集中して画面を観察している場合には、観察者は視差量の変化に伴い、観察者自身があたかも奥行き方向、すなわち観察者にとっては前後方向に移動したかのような感覚を得る。移動を伴わないにもかかわらず移動した感覚があると、感覚の不一致(Sensory Conflict)として違和感を覚え、条件によっては乗り物酔いに近い状態である映像酔い、特に立体視に固有の奥行き方向の移動に関しての問題である、いわゆる3D酔いを生ずることがある。
【0010】
3D酔いを避けるために、画像転換を人間に知覚できないほどゆっくり行う方法がある。しかしながら、一般的に船酔いの起きやすい振動周期は6秒といわれる。映像酔いと乗り物酔いは必ずしも同じメカニズムによるものとはいえないが、仮にこの6秒周期より十分に長い周期で、移動を知覚できないほどゆっくりと画像転換を行うとすると、かなりの長時間が必要となってしまう。前述の特許文献1の方法ではこの3D酔いを避けることに関して考慮されていない。また、切り替えの前後の画像が大きく異なると適切な補間画像を生成することができない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、立体画像を切り替えて表示することに伴う観察者の不快感や3D酔いを避け、快適な立体視を実現する立体画像表示装置、立体画像表示方法、その方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体視画像表示装置であって、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力部と、前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替部と、前記立体視用画像データの前記右目用画像及び前記左目用画像をそれぞれ右目及び左目に呈示し、立体画像を表示する表示部と、を備え、前記立体視用画像データ出力部が、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替部が、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、知覚できる長さの前記別の画像を表示させるように切り替えることを特徴とする立体画像表示装置が提供される。前記別の画像は、前記立体視用画像データに基づく画像の一部を覆い隠す画像であることを特徴とする。これにより、視聴者に違和感なく画像切り替えすることができる。
【0013】
前記別の画像は、模様のない一様な画像であることが好ましい。これにより、簡単なハードウェアで実現することができる。前記別の画像は、一様な視差を持つ画像で構成されていることが好ましい。これにより、画像転換中の観察者の輻輳角を意図した角度に設定することができる。前記別の画像の視差は、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の画像の視差と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の画像の視差の間の値を取ることが好ましい。これにより、視差をスムーズに変更することができる。前記別の画像は、連続的に視差が変更される複数の画像であっても良い。これにより、画像転換中の観察者の輻輳角を意図的に制御することができる。
【0014】
前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像において、視差が変更される部分が画面の一部であっても良い。視差が変更される領域を小さくするとともに、そこを見なくても良いため、3D酔いを避けることができる。前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像のうち、前記視差が変更される部分は、前記立体視用画像データに基づく画像の特徴部分を含む部分であることが好ましい。特徴部分の視差を変更することで、視差を違和感なく変更することができる。同様に、前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像のうち、前記視差が変更される部分は、前記立体視用画像データに基づく画像の主要被写体の画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存するようにしても良い。
【0015】
前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像は、前記調整前の画像の視差から前記調整後の画像の視差へと連続的に視差が変更されるように選択しても良い。これにより、視差をスムーズに変更することができる。
【0016】
前記別の画像を表示する時間は0.3秒以上であることを特徴とする。前記別の画像を表示する時間は、前記切り替え前の表示画面と前記切り替え後の表示画面の、それぞれの主要被写体画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存して変化することを特徴とする。0.3秒以上にすることで、映像酔いを防ぐことができる。
【0017】
前記切り替え前の表示画面から前記別の画像への転換時、及び前記別の画像から前記切り替え後の画像への転換時の表示画面のうち、少なくともいずれか一方にクロスフェード処理を施すようにしても良い。これにより、映像の刺激を弱め、疲労を軽減することができる。
【0018】
前記切り替え前の表示画面から前記別の画像への転換時、及び前記別の画像から前記切り替え後の画像への転換時の表示画面のうち、少なくともいずれか一方にワイプ処理を施しても良い。これにより、映像の刺激を弱め、疲労を軽減することができる。
【0019】
また、本発明は、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体視画像生成装置であって、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力部と、前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替部と、を備え、前記立体視用画像データ出力部が、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替部が、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、知覚できる長さの前記別の画像を表示させるように切り替えることを特徴とする立体画像生成装置である。
【0020】
本発明の他の観点によれば、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体画像生成装置における立体視画像調整方法であって、右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力ステップと、前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替ステップと、を含み、前記立体視用画像データ出力ステップにおいて、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替ステップにおいて、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、知覚できる長さの前記別の画像を表示させるように切り替えることを特徴とする立体画像調整方法が提供される。前記別の画像として、前記立体視用画像データに基づく画像の一部を覆い隠す画像を表示させることが好ましい。
【0021】
本発明は、上記の立体視用画像表示方法をコンピュータに実行させるプログラムであっても良く、また、当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、立体画像を切り替えて表示することに伴う観察者の不快感や3D酔いを避け、快適な立体視を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による立体画像表示装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施形態による画像転換部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】視差と奥行き表示との関係を上から見た図である。
【図4】本実施形態による表示画面例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態による立体画像表示における画像転換処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】発明の第1の実施の形態による立体画像表示における画像転換処理に沿う表示例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による立体画像表示における画像転換処理の流れを示すフローチャート図である。
【図8】発明の第2の実施の形態による立体画像表示における画像転換処理に沿う表示例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態による画像転換部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態による立体画像表示における画像転換処理の流れを示すフローチャート図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態による立体画像表示における画像転換処理に沿う表示例を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態による立体画像表示装置における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態による立体画像表示装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態による立体画像表示装置の構成例を示すブロック図である。図1が示すように、本実施形態による立体画像表示装置Aは、画像データの入力を受け付ける入力部10と、入力された画像データを処理し、立体表示が可能な表示データ(以下、「立体視用画像データ」と称する。)を生成するための画像処理を行う立体画像処理部100と、画像の転換を行う画像転換部101と、画像を表示部に合わせ表示制御を行う表示制御部102と、画像を表示する表示部103と、システム全体を制御するシステム制御部104と、ユーザが入力を行うユーザ入力部105と、シャッタメガネの同期を行うメガネ同期部106と、ユーザが装着するシャッタメガネ107から構成される。
【0025】
図2は画像転換部101の構成例を示す図である。画像転換部101は、立体視用画像データと、立体画像データとは別の画像とを切り替える切替部を構成する。図2に示すように、画像転換部101は、画像転換処理部1013及び1014、転換画像記録部1015、通信・制御部1016から構成される。
【0026】
次に、各構成部の動作について説明する。立体画像表示装置Aにおいて、入力部10を経由して入力された画像データは、立体画像処理部100にて入力形式に合わせて左目用画像データと右目用画像データに展開されるとともに、入力された画像データに付加情報がある場合は付加情報を抽出し、システム制御部104に伝送する。ここで、入力される画像データは、記録メディアから電子的に読みだされたもの、ネットワークから伝送されたもの、放送波によるものなど、どのようなものでも良い。すなわち、入力部10は、半導体メモリ読み出し装置であっても良いし、光ディスクや磁気ディスクの読み出し装置、電波の受信機や、ネットワークとの通信機能を持つものであっても良い。要するに、立体画像として解釈可能なデータを入力できるものであればよい。また、右目用画像データ、左目用画像データは、1枚の画像データから作成されたものでも良い。すなわち、画像データと奥行きデータから合成された複数視点画像、2次元画像から奥行き情報を推定して作成された複数視点画像であってもよい。
【0027】
展開された左目用画像データと右目用画像データは、画像転換部101に送られ、画像転換処理をされる。画像転換部101の内部では、システム制御部104と通信する通信・制御部1016が各部を制御している。転換画像記録部1015は通信・制御部1016を経由してシステム制御部104からの指示を受け、転換画像となる別の画像を画像転換処理部1013及び1014に出力する。画像転換処理部1013及び1014は、システム制御部104の指示を、通信・制御部1016を経由して受け、入力された左右目用画像及び転換画像の間で画像を転換する処理を行う。
【0028】
画像転換処理された左目用画像と右目用画像は表示制御部102に送られる。表示制御部102は、表示部103に合わせた表示制御をするとともに、メガネ同期部106に対し信号を送る。メガネ同期部106は、ユーザの装着するシャッタメガネに対し同期信号を送り、表示部103と同期処理が行われる。
【0029】
より具体的には、例えば、表示部103に液晶表示パネルを用い、左目用画像と右目用画像を交互に表示し、観察者の装着したシャッタメガネ107と同期して立体視を行う方式の場合、表示制御部102は表示部103に対し、左目用画像と右目用画像を交互に出力する。出力の頻度は、例えば左目用画像と右目用画像をそれぞれ毎秒120枚とする。表示部103は表示制御部102から送られる画像を随時表示するが、表示部103に左目用画像が表示されているときはシャッタメガネ107の左目用シャッタを開、右目用シャッタを閉とすることにより左目用画像を左目に表示し、右目用画像が表示されているときには左目用シャッタを閉、右目用シャッタを開とすることにより右目用画像を右目に表示して、立体視を実現する。
【0030】
観察者は、ユーザ入力部105を用いて、表示する立体画像を選択し、表示を実行する。ユーザ入力部105は、例えば筐体に備えた操作ボタンやリモコンなどで実現できるが、キーボードやマウス、タッチパネル、ダイヤルなど、いろいろな手段により実現することができ、その形式を問わず、ジェスチャ認識などであっても良い。入力された操作データは、システム制御部104を経由して立体画像処理部100及び画像転換部101に伝達される。立体画像処理部100では、選択された画像を展開し、システム制御部104の発する画像転換タイミングに合わせて出力する。画像転換部101では、画像転換タイミングに合わせて、立体画像処理部の展開した立体画像と転換画像、及び転換画像と立体画像の転換を行う。ユーザ入力部から入力中の表示部103における表示画面はユーザインタフェース画面であるとよい。この場合は、システム制御部から表示制御部102を利用してユーザインタフェース画面を実現するとよい。
【0031】
次に、視差と奥行き表示との関係を図3に示す。図3は観察者とディスプレイを上から見た図である。図3(a)は、通常の2次元表示状態であり、立体画像表示時には、右目用画像と左目用画像の対応点がディスプレイ(表示面)上で同じ位置Pにある状態である。この場合、この対応点Pはディスプレイ上にあるように知覚される。図3(b)は、ディスプレイ上で、右目用画像と左目用画像との対応点P、Pが、右目用画像は右に、左目用画像は左にずれた状態である。この状態では、観察者にはこの点はディスプレイ面よりも奥に知覚される(P)。
【0032】
図3(c)は、ディスプレイ上で、右目用画像と左目用画像の対応点P、Pが、右目用画像は左に、左目用画像は右にずれた状態である。この状態では、観察者にはこの点はディスプレイ面よりも手前に知覚される(P)。
【0033】
図3(d)は、これらをまとめた図である。前述したとおり、右目用画像と左目用画像の対応点が、右目用画像が右、左目用画像が左にずれて表示され、かつ対応点間の距離が両眼距離に等しい場合、この点は無限遠に知覚されるが、対応点間の距離が両眼距離を超えた場合、視線は開散方向にはならず、融合できなくなる。同様に、ディスプレイ上で、右目用画像と左目用画像の対応点が、右目用画像は左に、左目用画像は右に大きくずれた状態では(P、P)、視線は極端な寄り目状態となり、融合できなくなる。従って、快適に立体視できる奥行きの範囲、すなわち、図3(d)に示した快適融合範囲は、これらの融合範囲よりもディスプレイ面に対し内側となる。
【0034】
これらの原理を応用し、左右目用画像を相対的に左右にずらすことによって、立体画像の奥行き感を全体的に奥や手前に移動することができる。
【0035】
ここで、観察者の実際の操作例を示す。観察者は、ユーザ入力部105を操作して、表示する画像を選択する。図4は、立体画像表示装置Aにおける表示部103の表示例を示す図である。図4に示す状態では、表示部103には複数の画像103xと、複数の画像103xをスライドして表示領域を操作するスライドバーSと、操作ボタンOBとが表示されており、操作ボタンOBの「開始」ボタンに操作用のカーソルが当たっている状態である。この状態でユーザはユーザ入力部105を操作してカーソルを移動させ、画像や操作ボタンOBなどを選択してスライドショー表示する画像を選択したり、スライドショーを開始したりする。画像の選択の仕方は、画像を個別に指定する方法でもよいし、まとめて選択しても良い。画像をリスト化しておいて、リスト単位で表示するようにしても良い。また、画像選択中は表示部103を用いて画像を選択するとよいが、それ以外に画像選択手段を設けても良い。選択中の画面は二次元表示でも立体表示でも良い。画像を選択すると、表示を開始する操作を行う。
【0036】
観察者による上記の操作により画像表示が開始されると、システム制御部104は画像転換部101に対して現在の表示を転換画像に転換するよう指示するとともに、立体画像処理部100に対して表示すべき画像を指示する。画像転換部101は、システム制御部104からの指示を受けると、表示中のユーザインタフェース画面を転換画像に転換する処理を行う。立体画像処理部100は、指示に合わせて入力部10からデータを読み出し、立体画像を展開する。展開された立体画像は、システム制御部104からのタイミングに合わせて画像転換部101に出力される。画像転換部101では、同様にシステム制御部104からのタイミングに合わせて、立体画像処理部100から送られた立体画像と画像転換部101内の転換画像記録部1015から読み出された立体画像を転換する処理を行う。このとき、画像転換処理部1013及び1014が転換画像記録部1015から読み出した立体画像を選択しているタイミングで立体画像処理部100は立体画像の展開・切り替えを行なうことにより、立体画像処理部100の立体画像切り替えの瞬間は立体画像処理部100の出力は表示部103では表示されていない状態とすることができる。このことにより、立体画像処理部100は画像切り替えの様子が観察者に表示されず、素早い画像切り替えをする必要がないので、ハードウェアの構成を簡略化することができる。
【0037】
画像転換部101では、画像転換の指示を受けると、以下の3ステップに従って画像転換を行う。
【0038】
図5は、本実施の形態による画像転換処理に流れを示すフローチャート図である。図6は、処理の流れに沿った表示例を示す図である。
【0039】
処理を開始し(Start:ステップS1)、第1ステップとして、左目用及び右目用の画像転換処理部1013及び1014において、図4に示す現在の画像表示を、クロスフェード、すなわち、徐々に薄くしていき(図5のステップS2、図6の(a)から(b))、最終的には、転換画像記録部1015に記録された「別の画像」とする処理を行う(図5のステップS3、図6の(c))。この処理はディゾルブ等と称されることもある。ここで、「別の画像」は光刺激の少ないものが好ましく、一例として黒画面でもよい。図6(c)では、黒画像を表示させている。なお、一般的に画像を徐々に暗くしていき、最終的に黒画面とする処理をフェード処理あるいはフェードアウトと称するが、ここではこれらの処理も黒画面への転換処理とみなし、クロスフェードの一種として扱うこととする。
【0040】
また、「別の画像」によって、意図的に目の光軸のなす角度である輻輳と目のピントを表す調節の状態を意図した状態に設定し直すことも可能であり、それに合わせた画像を用意しておくとよい。
【0041】
例えば、奥行きを持つ立体画像を観察している時、観察者は画面上のどの位置を見ているかによって輻輳と調節の関係が異なり、より具体的には、調節は画面との距離に対応している状態で、輻輳は観察している物体の視差に合わせ、奥行きを知覚している状態にある。この状態で画面が転換されると、画面上の見ていた位置の視差は急激に転換されることになる。この現象を避けるために、例えば模様のない一様な背景画面の小領域に意図した視差の画像を表示すると、視線は表示した視差画像に誘導され、画像に合わせた輻輳に設定される。この状態で次の画面に転換すれば、画面の転換前後の視差変化を意図した状態を経由して行うことができ、例えば転換後の画像のうち、融像しやすい視差のない領域に視線を誘導することにより立体視を容易にすることができる。画像としては認識しやすいものが好ましいが、例えば文字などでもよい。
【0042】
次に、第2ステップとして、画像転換部101は、別の画像の表示を0.3秒以上保持する処理を行う(図5のステップS4、図6の(c)−(d))。
【0043】
人間は、光の明滅など、強い光刺激を受けると光感受性発作(PSS)を起こすことがある。光感受性発作を避ける目的で、強い光刺激となりうる1秒間に3回以上の明滅を避けるよう勧告されている。また、一般的に人間が物体に対しピントを調節するのにおよそ0.2秒かかると言われている。従って、立体視により輻輳とピント位置の調節が不一致の状態から、輻輳と調節が一致した状態に一旦戻すのにも同程度かかると推測される。これらのことから、第2ステップの継続時間は0.3秒以上とするのが望ましい。
【0044】
第3ステップとして、画像転換部101は、左目用及び右目用の画像転換処理部1013及び1014において、表示を転換画像記録部1015に記録された「別の画像」から画像転換後の画像へクロスフェードさせる処理を行う(図5のステップS5、図6の(d)−(e))。次いで、画像転換後の画像を表示させる(図5のステップS6、図6の(f)。これにより、画像転換処理を終了する(図5のステップS7)。
【0045】
図5、図6に示す処理を行うことにより、画像転換部101は、観察者の輻輳と調節の状態を一旦意図した状態に設定し直し、更に画像転換を行った画面を観察者に呈示する。また、図6では別の画像として一様な黒画像を用いている。一様な黒画面は左右の目に入力される対応点を持たないため、輻輳は自然な状態に戻るものと考えられる。
【0046】
これらのステップを踏むことにより、画像転換部は、観察者の輻輳と調節の状態を一旦意図した状態に設定し直し、更に次の立体画像を観察者に呈示する。それにより観察者が、急激に視差が変更される違和感や、徐々に視差が変更されることに伴う移動の感覚を感じることなく、画像転換を行うことができる。上記の理由で、別の画像は一様な視差を持つ画像であるとよりよく、さらに調整前と調整後の画像の、例えば主要被写体などの持つ視差の中間の視差を持つとなお良い。
【0047】
なお、第1のステップと第3のステップでは、それぞれの画像をクロスフェード処理で転換しているが、これは画像の移動を抑え、かつ光刺激を低減させるための処理である。従って、この処理はクロスフェード処理に限定されるものではなく、例えばワイプ処理などでも目的を果たすことができる。
【0048】
また、立体画像として右目用画像と左目用画像の2つを挙げたが、画像は2つに限定されるものではなく、多視点画像用の画像データであっても良い。
【0049】
また、立体視可能な表示システムとしてシャッタメガネを用いた時分割方式の立体表示手段を示したが、立体表示システムは時分割方式に限定するものではなく、パララクスバリアによるもの、レンチキュラレンズを用いるもの、プロジェクタによるものなど、立体視が可能な表示システムなら形式を問わない。前述のとおり、多視点画像を対象としたディスプレイであっても良い。
【0050】
さらに、転換画像となる別の画像を挿入する処理ブロックを画像転換部101の中に画像転換処理部1013及び1014として構成したが、転換画像挿入処理は画像転換部と表示部の間で行われればどこで実行されても良い。そのほか、ハードウェア構成はあくまでも一例であり、構成の仕方はどのようなものでもよく、要するに前述の一連の処理が実現できればよい。
【0051】
<第2の実施形態>マスクパターン
以下に、本発明の第2の実施形態による立体画像表示装置について説明する。第2の実施形態においては、第1の実施形態の中の画像転換のステップの内容のみが第1の実施形態の内容と異なる。それ以外のハードウェア構成やユーザインタフェースの実現の仕方は第1の実施形態において説明したもので実現可能であり、その詳細な説明を省略する。
【0052】
本実施の形態においては、図1の画像転換部101は、表示開始の指示を受けると、以下の3ステップに従って画像転換を行う。図7は、本実施の形態における処理の流れを示すフローチャート図である。
【0053】
処理を開始すると、(Start:ステップS11)、第1のステップとして、画像転換部101は、現在の表示に予め用意したマスクパターンを重畳して表示する(図7:ステップS12、図8:(a)−(b))。ここで、マスクパターンとは、画像の一部領域を遮蔽する画像であり、本実施形態では画像の一部の領域のみ透過する、窓のようなパターンWPを用いている。なお、本マスクパターンは半透明であっても良いが、模様があり、パターン自体に視線を誘導できるものの方が望ましい。パターン自体に視線を誘導することにより、パターンの持つ視差に合わせて観察者の輻輳を変化させることができる。マスクパターンの表示は、マスクパターン自体を動かさず、かつクロスフェード等により徐々に遮蔽するような処理を行った方が好ましい。
【0054】
第2のステップとして、画像転換部101は、マスクパターンを0.3秒以上表示する処理を行う(図7のステップS13、図8の(c)−(d))。この間に画像転換部101は、入力された転換前の立体画像を段階的に転換後の立体画像に切り替える(図7のステップS14、図8の(c)−(d))。すなわち、マスクパターンの透過領域から、入力された立体画像が徐々に転換していくさまが観察されるような形とする。入力された立体画像同士の転換はクロスフェードやワイプ処理で行うのが良いが、光刺激をやわらげるような処理とするのがよい。
【0055】
第3のステップとして、画像転換部101は、マスクパターンを取り除く表示処理を行う(図7のステップS15、図8の(e)−(f))。マスクパターン自体を動かさず、かつ徐々にクロスフェードで取り除くような処理を行った方が好ましい。
【0056】
尚、図8に示す透過領域(窓のようなパターン)WPは、画像の背景部分などではなく、主要被写体が入っているような画像の特徴部分を選択することが好ましい。透過領域WP、すなわち表示画像の転換に伴い視差が変更される部分の画面上の位置及び視差量は、立体視用画像データに基づく画像の主要被写体の画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存する。すなわち、図8に示すように、画像中の中心に配置される家の屋根の部分が主要被写体である家を含んでおり、画像の転換に伴ってこの部分の視差を変更する。
【0057】
画像の転換前後の視差の差が大きい場合、主要被写体の部分を窓とすると、その主要被写体部分の転換前後の視差の差が大きくても、表示されている部分の持つ視差範囲は限定され、輻輳を変更しやすくなるうえ、主要被写体の視差に予め目を慣らすことができるので、画像の転換前後の視差変化の影響を緩和できる。また、画像転換を行う画像のうち観察できる領域は画像の一部であることから、観察者は自分が移動しているのではなく、窓から変化する物体を観察する感覚を得る。それにより観察者が、奥行きのある画像が入れ替わる違和感や、移動の感覚を感じることなく、画像転換を行うことができる。また、主要被写体の転換前後の視差の差が小さい場合でも、その部分を窓とすると、画像の転換中は窓から見える画像の視差の変化は小さく、転換後にクロスフェードやワイプ処理で画像のその他の部分が徐々に見えてくることから、やはり観察者にとって違和感が少なくなる。要するに、画像の転換前後の視差の変化が、観察者にとって違和感の少なくなるように、主要被写体の画面上の位置及び視差量の少なくとも一方を手掛かりに窓の位置を選択し、画像転換を行うようにするとよい。
【0058】
なお、マスクパターンの透過領域は画像の一部としたが、透過領域の大きさは、観察者が移動感覚を感じない程度の大きさであればよい。
【0059】
<第3の実施形態>主要被写体位置を検出し、視差を連続的に変化
以下に、本発明の第3の実施形態による立体画像表示装置について説明する。第3の実施形態においては、第1の実施形態の中の画像転換部101の構成及び画像転換の内容が第1の実施形態の内容と異なる。それ以外のハードウェア構成やユーザインタフェースの実現の仕方は第1の実施形態に準ずる。すなわち、第1の実施形態と同様に図1が全体の構成を表す。
【0060】
図9に画像転換部101の構成を示す。画像転換部101は、画像バッファ部1011及び1012、画像転換処理部1013及び1014、転換画像記録部1015、通信・制御部1016、視差取得部1017から構成される。
【0061】
次に、各構成部の動作を説明する。
【0062】
立体画像表示装置Aに入力部10を経由して入力された画像データは、立体画像処理部100にて入力形式に合わせて左目用画像データと右目用画像データに展開される。同時に、入力された画像データに付加情報がある場合は付加情報を抽出し、システム制御部に伝送する。ここで、入力される画像データは、記録メディアから電子的に読みだされたもの、ネットワークから伝送されたもの、放送波によるものなど、どのようなものでも良い。すなわち、入力部10は、半導体メモリ読み出し装置であっても良いし、光ディスクや磁気ディスクの読み出し装置、電波の受信機や、ネットワークとの通信機能を持つものであっても良い。要するに、立体画像として解釈可能なデータを入力できるものであればよい。また、右目用画像データ、左目用画像データは、1枚の画像データから作成されたものでも構わない。すなわち、画像データと奥行きデータから合成された複数視点画像、奥行き情報を推定して作成された複数視点画像であってもよい。
【0063】
展開された左目用画像データと右目用画像データは画像転換部101に送られる。画像転換部101内部では、システム制御部104と通信する通信・制御部1016が各部を制御している。画像バッファ部1011及び1012は、通信・制御部1016を経由してシステム制御部104からの指示を受け、画像転換部101に対して入力された左目用画像データ及び右目用画像データをそれぞれ一時的に保持し、システム制御部104からの指示を受けて画像転換処理部1013及び1014に出力するとともに、システム制御部104からの指示を受けて視差取得部1017に対して出力する。視差取得部1017では、画像バッファ部1011及び1012からデータを読み込み、左右画像の視差を計算する。
【0064】
具体的には、ブロックマッチング等の手法により左右画像の対応点同士のずれ量を求めて視差を求め、画像上の画素と対応付けて視差量を表した視差マップの形で通信・制御部1016を経由してシステム制御部104に出力する。システム制御部104では、取得された視差マップを分析処理し、観察者が注視すると予測される主要被写体の位置と視差を取得する。より具体的には、視差マップから得られる視差値をヒストグラム処理し、出現頻度の高い視差値のうち一番遠いものを背景画像、近いものを主要被写体とみなし、対応する主要被写体の画面上の位置と視差を取得する。取得された主要被写体の位置と視差はシステム制御部104で管理され、画像転換の前と後の主要被写体の位置と視差が通信・制御部1016を経由して転換画像記録部1015に伝送される。
【0065】
転換画像記録部1015は、入力された立体画像と転換画像を転換しつつ、伝送された主要被写体の位置と視差に基づき、転換前の主要被写体の画面上の位置に、主要被写体と同じ視差を持つ別の物体を表示する。表示する別の物体や背景画像は転換画像記録部1015に記録されているものでよい。別の物体は認識しやすく、大きさはあまり大きくない方が良い。例えば、画面の面積の1/100程度のものである。その後、転換画像記録部は、転換後の主要被写体の位置及び視差に向かって別の物体を移動させる。移動の仕方は直線的でも曲線的でも良いが、連続的で激しい動きを伴わないのが好ましい。この移動時に、別の物体の大きさが大きすぎると、観察者に移動感を感じさせるため、映像酔いの原因となり得る。
【0066】
画像転換処理された左目用画像と右目用画像は表示制御部102に送られる。表示制御部102は、表示部103に合わせた表示制御をすると同時に、メガネ同期部106に対し信号を送る。メガネ同期部106はユーザの装着するシャッタメガネに対し同期信号を送り、表示部と同期処理が行われる。具体的には、例えば、表示部103に液晶表示パネルを用い、左目用画像と右目用画像を交互に表示し、観察者の装着したシャッタメガネ107と同期して立体視を行う方式の場合、表示制御部102は表示部103に対し、左目用画像と右目用画像を交互に出力する。出力の頻度は、例えば左目用画像と右目用画像をそれぞれ毎秒120枚とする。表示部103は表示制御部102から送られる画像を随時表示するが、表示部103に左目用画像が表示されているときはシャッタメガネ107の左目用シャッタを開、右目用シャッタを閉とすることにより左目用画像を左目に表示し、右目用画像が表示されているときには左目用シャッタを閉、右目用シャッタを開とすることにより右目用画像を右目に表示して、立体視を実現する。
【0067】
観察者は、ユーザ入力部105を用いて、表示する立体画像を選択し、表示を実行する。ユーザ入力部105は、例えば筐体に備えた操作ボタンやリモコンなどで実現できるが、キーボードやマウス、タッチパネル、ダイヤルなど、いろいろな手段により実現でき、その形式を問わず、ジェスチャ認識などであっても良い。入力された操作データは、システム制御部104を経由して立体画像処理部100及び画像転換部101に伝達される。立体画像処理部では、選択された画像を展開し、システム制御部104の発する画像転換タイミングに合わせて出力する。画像転換部101では、画像転換タイミングに合わせて、立体画像処理部の展開した立体画像と転換画像、及び転換画像と立体画像の転換を行う。ユーザ入力部から入力中の画面はユーザインタフェース画面であるとよい。この場合は、システム制御部から表示制御部102を利用してユーザインタフェース画面を実現するとよい。
【0068】
画像転換部101では、画像転換の指示を受けると、以下の3ステップに従って画像転換を行う。図10は、本実施の形態における処理の流れを示すフローチャート図である。
【0069】
処理を開始すると、(Start:ステップS21)、第1ステップとして、画像転換処理部1013及び1014において現在の表示をクロスフェード、すなわち、徐々に暗くしていき、最終的には転換画像記録部1015の生成する別の画像とする処理を行う(ステップS22)。この処理はディゾルブ等と称されることもある。別の画像は光刺激の少ないものが好ましい。更に別の画像上に別の物体を重畳して表示する(ステップS23)。別の物体は前述の通りの方法で取得した、画像転換前の主要被写体の画面上の位置と視差を持つものとする。別の物体の大きさは、画面の一部、例えば面積にして1%以下とする。図11では別の物体として十字パターンを表示している。別の画像は視差を持ち、画像転換前及び画像転換後の背景画像の視差の間の視差量としてもよい。
【0070】
第2ステップとして、画像転換部101は、別の画像の表示を0.3秒以上行う。人間は、光の明滅など、強い光刺激を受けると光感受性発作(PSS)を起こすことがある。光感受性発作を避ける目的で、強い光刺激となりうる1秒間に3回以上の明滅を避けるよう勧告されている。また、一般的に人間が物体に対しピントを調節するのにおよそ0.2秒かかると言われている。従って、立体視により輻輳とピント位置の調節が不一致の状態から、輻輳と調節が一致した状態に一旦戻すのにも同程度かかると推測される。これらのことから、第2ステップの継続時間は0.3秒以上とするのが望ましい。この継続時間の間に、画像転換部101は、前述の通り別の物体(十字パターン)を転換前の主要被写体の位置(家の位置)及び視差から転換後の主要被写体の位置(猫の位置)及び視差まで連続的に移動させる表示処理を行う(ステップS23〜ステップS24)。この移動距離に従って、第2ステップの継続時間を延長しても良い。この場合、画像転換に伴う主要被写体の画面上の表示位置や奥行きの変化による別の物体の移動速度を一定以下に保つことができ、観察者に対する刺激を軽減することができる。
【0071】
第3ステップとして、画像転換部101は、画像転換処理部1013及び1014にて、表示を転換画像記録部1015の生成した別の画像から立体画像処理部100の展開した次の立体画像へクロスフェードさせる処理を行う(ステップS25)。これにより処理が終了する(ステップS26:end)。
【0072】
図11は、一連の流れを示す図である。図11では、別の画像を構成する別の物体として十字パターン(画面において白抜きで示されている)を、背景画像として一様な黒画像を、用いている。一連の流れにおいて、主要被写体(特徴部分:家)は別の物体(十字パターン)に置き換えられ(b)、十字パターンが徐々に移動され、転換後の画像の主要被写体(猫)に置き換えられる(e)。
【0073】
尚、図11に示す別の物体(十字パターン)は、画像の背景部分などではなく、主要被写体の位置に対応する画像の特徴部分の位置を選択することが好ましい。この視差が変更される部分は、立体視用画像データに基づく画像の主要被写体の特徴部分の画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存する。すなわち、図11(b)に示すように、画像中の中心付近に配置される家の屋根の部分に対応する十字パターンが主要被写体である家の位置と対応している。別の画像への切換に伴う十字パターンの猫の位置への移動に伴い、十字パターンの視差も変更される。また、別の画像を表示する時間は、切り替え前の表示画面(図11(a))と切り替え後の表示画面(図11(f))の、それぞれの主要被写体画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存して変化するようにするとよい。すなわち、十字パターンの移動速度が一定以上、例えば表示画面上で秒速20cmを超えないよう、十字パターンの移動距離が長い場合は別の画像を表示する時間を長くとる。なお、十字パターンの移動距離には、表示画面上の平面位置のほか、奥行き方向つまり視差の変化も含まれる。すなわち、両目で十字パターンを観察した時の知覚位置が平面上で同じであったとしても、奥行きの変化を伴う場合はその視差変化量を考慮して別の画像を表示する時間を長くとる。立体画像の奥行き距離を定義するのは困難であるので、標準視距離(例えば画面高の3倍の距離)から観察した時の観察者の目の輻輳角の変化を奥行き方向の移動速度として奥行き方向の制限を設けるなどの方法を取っても良い。
【0074】
これらのステップを踏むことにより、画像転換部101は、観察者の輻輳と調節の状態を無理なく連続的に設定し、更に次の立体画像を観察者に呈示することができる。それにより観察者は、急激に視差が変更される違和感や、徐々に視野のうち広い範囲の視差が変更されることに伴う移動の感覚を感じることなく、画像転換を行うことができる。この場合、立体画像の視差は左右画像から得られ、視差を得る方法はブロックマッチングなど、いくつかの公知の方法がある。
【0075】
<第4の実施形態>パーソナルコンピュータ(PC)を用いた形態
本発明の第4の実施形態においては、パーソナルコンピュータ(PC)を用いて立体画像処理を行い、立体表示可能な表示デバイスを用いて立体表示する。PC上では、ユーザがPCの操作デバイス、例えばマウスやキーボード、タッチパネル等を用いて、GUIアプリケーションを操作して立体画像処理を行う。すなわち、PCに供えられたCPUが記憶装置、例えばハードディスクやCD−ROMに記録されている立体表示アプリケーションソフトに従って、動画や静止画に対し処理を行い、立体表示デバイスに立体表示をする。
【0076】
図12は、本発明の第4の実施形態による立体表示デバイスの表示画面を説明する図であり、立体表示デバイス上に立体画像表示アプリケーションによる画面103が表示されている。ユーザは図示しないマウスやキーボード等の操作デバイスを用いて、GUI上のファイル選択画面201や設定ボタン203等を操作することにより、立体画像によるスライドショーを実施することができる。ここでは、調整タブに、画面選択ボタン、表示時間ボタン、転換時間、ループ再生ボタンなどが設けられており、また、開始ボタン205を押すことで、スライドショーを表示させることができる。また、本発明は、携帯電話などの情報端末に応用することも可能である。
【0077】
尚、上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0078】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0079】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0080】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また前記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、立体画像表示装置、例えば3Dテレビジョンや3Dデジタルフォトフレーム等に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 入力部
100 立体画像処理部
101 画像転換部
102 表示制御部
103 表示部
104 システム制御部
105 ユーザ入力部
106 メガネ同期部
107 シャッタメガネ
1011 画像バッファ部
1012 画像バッファ部
1013 画像転換処理部
1014 画像転換処理部
1015 転換画像記録部
1016 通信・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体視画像表示装置であって、
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力部と、
前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替部と、
前記立体視用画像データの前記右目用画像及び前記左目用画像をそれぞれ右目及び左目に呈示し、立体画像を表示する表示部と、
を備え、
前記別の画像は、画面の一部の視差が連続的に変更される複数の画像であって、知覚できる長さであり、
前記立体視用画像データ出力部が、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替部が、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、前記別の画像を表示させるように切り替え、
前記別の画像が、観察者の視線および/または輻輳を誘導するために表示されるガイドパターンであることを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記ガイドパターンは、主要被写体の全体または一部を透過する開口窓とするマスクパターンであることを特徴とする、請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記ガイドパターンは、前記第1の立体視用画像データおよび前記第2の立体視用画像データのそれぞれの主要被写体の画面上の位置と視差位置に、観察者の視線および/または輻輳を誘導するためのマーカを有するガイドパターンであることを特徴とする、請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記別の画像の視差は、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の画像の視差と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の画像の視差の間の値であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像のうち、前記視差が変更される部分は、前記立体視用画像データに基づく画像の特徴部分を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像のうち、前記視差が変更される部分は、前記立体視用画像データに基づく画像の主要被写体の画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記視差が変更される部分に、前記主要被写体とは別の物体を表示することを特徴とする、請求項6に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記連続的に視差が変更される複数の画像からなる前記別の画像は、前記切り替え前の画像の視差から前記切り替え後の画像の視差へと連続的に視差が変更されるように選択されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
前記別の画像を表示する時間は0.3秒以上であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項10】
前記別の画像を表示する時間は、前記切り替え前の表示画面と前記切り替え後の表示画面の、それぞれの主要被写体画面上の位置及び視差量のうち、少なくとも一方に依存して変化することを特徴とする、請求項1から9までのいずれかに1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項11】
前記切り替え前の表示画面から前記別の画像への転換時、及び前記別の画像から前記切り替え後の画像への転換時の表示画面のうち、少なくともいずれか一方にクロスフェード処理を施すことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項12】
前記切り替え前の表示画面から前記別の画像への転換時、及び前記別の画像から前記切り替え後の画像への転換時の表示画面のうち、少なくともいずれか一方にワイプ処理を施すことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項13】
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体視画像生成装置であって、
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力部と、
前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像であって、画面の一部の視差が連続的に変更される複数の画像であって、知覚できる長さである別の画像、とを切り替える切替部と、を備え、
前記立体視用画像データ出力部が、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替部が、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、前記別の画像を表示させるように切り替え、
前記別の画像が、観察者の視線および/または輻輳を誘導するために表示されるガイドパターンであることを特徴とする立体画像生成装置。
【請求項14】
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体画像生成装置における立体視画像調整方法であって、
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力ステップと、
前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像であって、画面の一部の視差が連続的に変更される複数の画像であって、知覚できる長さである別の画像、とを切り替える切替ステップと、
を含み、
前記立体視用画像データ出力ステップにおいて、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替ステップにおいて、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、前記別の画像を表示させるように切り替え、前記別の画像が、観察者の視線および/または輻輳を誘導するために表示されるガイドパターンであることを特徴とする立体画像調整方法。
【請求項15】
請求項14に記載の立体画像調整方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項17】
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体視画像表示装置であって、
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力部と、
前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替部と、
前記立体視用画像データの前記右目用画像及び前記左目用画像をそれぞれ右目及び左目に呈示し、立体画像を表示する表示部と、
を備え、
前記立体視用画像データ出力部が、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替部が、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、知覚できる長さの前記別の画像を表示させるように切り替え、前記調整前の表示画面から前記別の画像への転換時、及び、前記別の画像から前記調整後の画像への転換時の表示画面のうち、少なくともいずれか一方に色の濃さに関するクロスフェード処理を施すことを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項18】
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像を表示し、前記右目用画像を右目に、前記左目用画像を左目に呈示することにより立体視を可能とする立体画像生成装置における立体視画像調整方法であって、
右目用画像と左目用画像からなる立体視用画像データを出力する立体視用画像データ出力ステップと、
前記立体視用画像データと、前記立体画像データとは別の画像とを切り替える切替ステップと、
を含み、
前記立体視用画像データ出力ステップにおいて、前記立体視用画像データとして、第1の立体視用画像データを、前記第1の立体視用画像データとは異なる第2の立体視用画像データに切り替えて出力する際に、前記切替ステップにおいて、前記第1の立体視用画像データに基づく切り替え前の表示画面と前記第2の立体視用画像データに基づく切り替え後の表示画面との間に、知覚できる長さの前記別の画像を表示させるように切り替え、前記調整前の表示画面から前記別の画像への転換時、及び、前記別の画像から前記調整後の画像への転換時の表示画面のうち、少なくともいずれか一方に色の濃さに関するクロスフェード処理を施すことを特徴とする立体画像調整方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−257252(P2012−257252A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149017(P2012−149017)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2010−253162(P2010−253162)の分割
【原出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】