説明

立体画像表示装置および立体画像表示方法

【課題】複数のユーザに適した立体画像を同時に提供することができる立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】複数の画像を時分割で順に表示する表示手段と、前記表示手段における表示と同期して同期信号を出力する同期手段と、前記同期手段から前記同期信号を受信し、前記同期信号に応じて右目または左目を遮蔽して前記複数の画像を選択的に右目および左目に透過させる遮蔽手段と、前記遮蔽手段の傾きを検出する傾き検出手段とを備え、前記遮蔽手段は、前記傾き検出手段が検出した傾きに応じて、前記複数の画像から右目および左目に透過させる画像の組を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、一定の間隔を持つ2つの目の各々により得られる画像の違いから空間を把握する能力を持つ。左右の目による互いに異なる視点から得られる画像中の対応点のずれを視差と呼び、視差を手掛かりの一つとして対象物の位置関係を立体的に把握している。このことを利用して、右目用画像を右目に表示し、左目用画像を左目に表示する手段を設けて、右目用画像、左目用画像として視差を付けた画像を提供することにより、立体視が可能であることが知られている。ここでは、立体視を意図して視差を付けた複数の画像のことを立体画像と称する。
【0003】
立体視において、人間は、視差に応じた両眼の光軸のなす角、すなわち輻輳の大きさを対象物までに対応付けていると言われている。よって、右目用画像を右に、左目用画像を左に、相対的にずらし、視差を付けた画像を見せると、実際の表示面より遠くに表示物を知覚させることができる。しかし、この時に視差を付けすぎて、ユーザの目の間隔、正確には無限遠を見ているときの瞳孔間の距離を超えた視差とすると、自然界では起き得ない状態となり、立体視が不可能となるか、立体視できたとしても人体に強い負担を強いることになる。同様に、実際の表示面より近距離側でも、極端な視差は不自然な位置関係を生じるうえ、極度な寄り目をユーザに強いることとなり、快適な立体視ができなくなる。また、視差が大きくなるほど輻輳と目の焦点の調節との乖離が大きくなり、不自然な状態となるので、違和感を生じる。このように、立体画像の視差量がある一定の範囲では快適に立体視が可能であるが、視差量が大きくなると両目の画像が融合しなくなり、立体視が不可能となる。
【0004】
ここで、立体画像は、立体画像表示装置に対して水平に観察することを前提として制作されるのが一般的であり、人間の目が左右に離れた位置に配置されていることから、水平に視差を付けた画像が立体画像として制作される。しかし、実際の視聴環境では、必ずしも立体画像表示装置に対して水平に画像を観察するとは限らず、立体画像表示装置に対して水平でなく画像を観察する場合、左右の目には自然界では起き得ない不自然な視点からの画像が入力され、立体視が不可能になったり、人体に負担を強いたりするおそれがある。
【0005】
そこで、ユーザの傾きに合わせて視点画像を提供する立体画像表示装置が、特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−84963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法によれば、ユーザの傾きに合わせた視点画像を提供することができる。しかしながら、1系統のシステムでは、傾きに対応できるユーザは一人に限定され、複数のユーザに対応できなかった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、複数のユーザに適した立体画像を同時に提供することができる立体画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の立体画像表示装置は、複数の画像を時分割で順に表示する表示手段と、前記表示手段における表示と同期して同期信号を出力する同期手段と、前記同期手段から前記同期信号を受信し、前記同期信号に応じて右目または左目を遮蔽して前記複数の画像を選択的に右目および左目に透過させる遮蔽手段と、前記遮蔽手段の傾きを検出する傾き検出手段とを備え、前記遮蔽手段は、前記傾き検出手段が検出した傾きに応じて、前記複数の画像から右目および左目に透過させる画像の組を選択することを特徴とする。
【0010】
前記複数の画像は、被写体をそれぞれ異なる視点からとらえた画像から成り、前記右目および左目に透過させる画像の組を2組以上含んでもよい。
【0011】
前記右目および左目に透過させる画像の組は、それぞれ異なる傾きに対応する視差が付けられていてもよい。
【0012】
前記右目および左目に透過させる画像の組は、それぞれ異なる縦方向の視差が付けられていてもよい。
【0013】
前記複数の画像のうち少なくとも1つは、複数の前記右目および左目に透過させる画像の組に含まれてもよい。
【0014】
前記複数の画像は、2次元表示用画像を含んでもよい。
【0015】
前記複数の画像は、それぞれ前記表示手段において時分割で表示される際の表示タイミングを考慮して生成されたものであってもよい。
【0016】
前記傾き検出手段から前記遮蔽手段の傾きが得られない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における予め決められた画像の組を右目および左目に透過させてもよい。
【0017】
前記傾き検出手段から前記遮蔽手段の傾きが得られない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における同一の画像を右目および左目に透過させてもよい。
【0018】
前記傾き検出手段によって検出された前記遮蔽手段の傾きに対応する前記右目および左目に透過させる画像の組がない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における予め決められた画像の組を右目および左目に透過させてもよい。
【0019】
前記傾き検出手段によって検出された前記遮蔽手段の傾きに対応する前記右目および左目に透過させる画像の組がない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における同一の画像を右目および左目に透過させてもよい。
【0020】
前記同期信号は、前記傾き検出手段により検出される前記遮蔽手段の傾きと前記右目および左目に透過させる画像の組との対応を示す信号を含んでもよい。
【0021】
前記同期信号は、前記傾き検出手段から前記遮蔽手段の傾きが得られない場合に前記遮蔽手段が右目および左目に透過させる画像の組を表す信号を含んでもよい。
【0022】
前記同期信号は、前記傾き検出手段によって検出された前記遮蔽手段の傾きに対応する前記右目および左目に透過させる画像の組がない場合に前記遮蔽手段が右目および左目に透過させる画像の組を表す信号を含んでもよい。
【0023】
前記複数の画像の各々における前記異なる視点は、それぞれ予め設定された前記遮蔽手段の傾きに対応付けて設定されてもよい。
【0024】
前記複数の画像の各々における前記異なる視点は、ユーザにより選択された前記遮蔽手段の傾きに対応付けて設定されてもよい。
【0025】
前記複数の画像の各々における前記異なる視点は、前記複数の画像の各々に関連付けられた設定値にしたがって設定されてもよい。
【0026】
前記同期信号は赤外線で出力されてもよい。
前記同期信号は電波で出力されてもよい。
【0027】
前記遮蔽手段はメガネ型であってもよい。
前記遮蔽手段はヘルメット型であってもよい。
前記遮蔽手段はユーザの顔を覆う面形であってもよい。
【0028】
ある視点の画像の画面領域の全面または一部を縦方向に相対的にずらすことによって縦方向の視差を調節し、前記複数の画像を生成する画像調整手段を備えてもよい。
【0029】
ある視点の画像から、被写体をそれぞれ異なる視点からとらえた画像とみなせる画像を生成し、前記複数の画像を生成する画像調整手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数のユーザに適した立体画像を同時に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態による立体画像表示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】視差調整部101の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】シャッタメガネ107の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】(a)〜(d)は視差と奥行き表示との関係を説明する図である。
【図5】(a)〜(c)は立体画像表示装置とユーザの視点の相対的な傾きによる視差の違いを説明する図である。
【図6】複数の視点を説明する図である。
【図7】複数の視点を説明する図である。
【図8】視点画像の提示方法の一例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による視差調整部101の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施形態による立体画像表示装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】円筒形の物体から点状の物体が発射されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>(ずらし処理による複数視差生成)
以下に、本発明の第1の実施形態による立体画像表示装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態による立体画像表示装置の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態による立体画像表示装置は、画像データを受け付ける入力部10と、入力された画像データを処理し、立体表示が可能な表示データ(以下、立体視用画像データ)を生成するための画像処理を行う立体画像処理部100と、画像の視差を調節する視差調整部101と、画像を表示部に合わせ表示制御を行う表示制御部102と、画像を表示する表示部103と、システム全体を制御するシステム制御部104と、ユーザが入力を行うユーザ入力部105と、シャッタメガネ107の同期を行うメガネ同期部106と、ユーザが装着するシャッタメガネ107とを備える。
【0033】
図2は、視差調整部101の構成の一例を示すブロック図である。視差調整部101は、通信・制御部1011と、視差算出部1012と、ずらし処理部1013a〜1013cとを備える。
【0034】
図3は、シャッタメガネ107の構成の一例を示すブロック図である。シャッタメガネ107は、メガネ同期受信部1071と、シャッタ制御部1072と、傾き検出部1073と、シャッタ部1074aおよび1074bとを備える。シャッタ部1074aおよび1074bは、それぞれ右目用シャッタおよび左目用シャッタに対応する。
【0035】
次に、各部の動作を説明する。入力部10は、立体画像表示装置に入力される画像データを立体画像処理部100に伝送し、立体画像処理部100は、入力形式に合わせて左目用データと右目用データとに展開する。ここで、入力される画像データは、放送波によるもの、記録メディアから電子的に読み出されたもの、通信により取得されたものなど、どのようなものでも構わない。すなわち、入力部10は、半導体メモリ読出し装置であってもよいし、光ディスクや磁気ディスクの読み出し装置、電波の受信機や、ネットワークとの通信機能を持つものであってもよい。要するに、立体画像として解釈可能なデータを入力できるものであればよい。また、右目用画像データ、左目用画像データは、1枚の画像データから作成されたものでも構わない。すなわち、画像データと奥行きデータもしくは視差データから合成された複数視点画像、または、奥行き情報を推定して作成された複数視点画像であってもよい。多眼表示用の多視点画像であってもよい。立体画像処理部100は、入力された画像データに付加情報がある場合は付加情報を抽出し、システム制御部104に伝送する。付加情報は、撮影時のパラメータや視差情報、視差量補正情報や奥行きデータ等であってもよい。
【0036】
立体画像処理部100は、展開した左目用画像データおよび右目用画像データを視差調整部101に伝送し、視差調整部101は、左目用画像データおよび右目用画像データを複数の視点画像に再合成する。視差調整部101内では、システム制御部104と通信する通信・制御部1011が各部を制御している。視差算出部1012は、視差調整部101に入力された画像データにおける左右画像の対応点のずれから視差を算出し、算出された視差データを、通信・制御部1011を経由してシステム制御部104に伝送する。前述のように奥行きデータが入力されるもの、あるいは奥行きデータが作成されるものでは、それを視差データとして用いてもよい。視差データは、例えば画像内の視差の最大量および最小量であってもよい。なお、ここでは表示画面より遠景側の視差を正の値、近景側を負の値で表現するので、視差の最大値は画面内の最も遠い点の視差、最小値は画面内の最もユーザに近い点の視差を表す。
【0037】
システム制御部104は、視差調整部101から受信した視差データをもとに各視点画像に適切な画像ずらし量を求め、視差調整部101に送信する。
【0038】
視差調整部101の画像ずらし処理部1013a〜1013cは、システム制御部104から通信・制御部1011を経由して画素ずらし量をそれぞれ受信し、右目用画像全面を上下及び左右にずらす処理をそれぞれ行い、視差を調整して出力する。視差調整部101は、視差を調整していない右目用データと、画像ずらし処理部1013a〜1013cの各々により視差を調整された右目用画像データと、視差を調整していない左目用画像データとを、複数(この例では4つ)の視点画像として出力する。
【0039】
なお、ここでは右目用画像のみずらして視差を調整したが、左目用画像をずらしても、左右目用画像両方をずらしてもよい。要するに、複数の視点画像の対応点同士を相対的に上下及び左右にずらすことによって視差を調整できるようにしてあればよい。
【0040】
また、予め視差範囲が想定できる場合には、視差算出部1012による算出結果を用いず、画像ずらし量を予め算出した値としてもよい。この場合、視差算出部1012を省略でき、さらにシステム制御部104の処理量も軽減できる。視差範囲は画像データに付随するものでも、取り決めによるものでも構わない。
【0041】
表示制御部102は、視差調整101が出力した視差を調整された複数の視点画像を受信し、表示部103に合わせた表示制御をすると同時に、メガネ同期部106に対し、前記複数の視点画像を表示するタイミング、およびそれぞれの右目用画像および左目用画像を表示するタイミングを示す信号を送る。
【0042】
メガネ同期部106は、表示制御部102から受信した信号に基づいて、ユーザの装着するシャッタメガネ107に対し同期信号を送り、表示部103との同期処理を行う。具体的には、例えば、表示部103に液晶表示パネルを用いて4視点の視点画像を時分割で表示し、ユーザの装着したシャッタメガネ107と同期して立体視を行う方式の場合、表示制御部102は、表示部103に対し、4視点の視点画像を順に出力する。出力の頻度は、例えば各視点に対応する画像をそれぞれ毎秒60枚とする。表示部103は表示制御部102から送られる画像を随時表示し、その際、表示部103とシャッタメガネ107は同期し、表示部103に順に表示される4視点の視点画像のいずれかに左目用シャッタ、右目用シャッタを同期して開とすることにより、それぞれ対応する視点画像を左目及び右目に提示して、立体視を実現する。具体的には、シャッタメガネ107は、メガネ同期受信部1071がメガネ同期部106から受信する同期信号と、傾き検出部1073がシャッタメガネ107の傾きを検出して出力する傾き検出信号とに基づいて、シャッタ制御部1072がシャッタの開閉信号のタイミングを制御し、シャッタ部1074aおよび1074bを駆動することによって、表示部103と同期してユーザに視点画像を提示する。
【0043】
なお、メガネ同期部106とシャッタメガネ107とを有線接続せず、同期信号を無線で伝達することによりユーザの負担を軽減することができる。同期信号を赤外線で伝送する場合、表示部103付近のユーザから見える位置にメガネ同期部106を設けることにより、ユーザが表示画面を観察できる位置にいれば、メガネ同期部106とメガネ同期受信部1071の間には障害物がなく、かつ適切な距離を保つことになり、シャッタメガネ107は同期信号を受信することができる。同期信号を電波で伝送する場合、表示部103付近のユーザから見える位置にメガネ同期部103を設ける必要がなく、シャッタメガネ107がメガネ同期部103を向いている必要もないので、メガネ同期部103とシャッタメガネ107の間に障害物があった場合でも同期が可能である。
【0044】
図4は、視差と奥行き表示との関係を説明する図である。図4は、ユーザとディスプレイを上から見た図である。
【0045】
図4(a)は、立体画像表示時に右目用画像と左目用画像の対応点がディスプレイ上で同じ位置にある状態であり、通常の2次元表示状態の場合と同様である。この場合、対応点はディスプレイ上にあるように知覚される。
【0046】
図4(b)は、ディスプレイ上で、右目用画像の対応点が右に、左目用画像の対応点が左にずれた状態である。この状態では、ユーザには対応点はディスプレイ面よりも奥に知覚される。
【0047】
図4(c)は、ディスプレイ上で、右目用画像の対応点が左に、左目用画像の対応点が右にずれた状態である。この状態では、ユーザには対応点はディスプレイ面よりも手前に知覚される。
【0048】
図4(d)は、図4(A)〜図4(c)をまとめた図である。前述したとおり、ディスプレイ上で、右目用画像の対応点が右、左目用画像の対応点が左にずれて表示され、かつ左右目用画像の対応点間の距離が両眼距離に等しい場合、対応点は無限遠に知覚されるが、対応点間の距離が両眼距離を超えた場合、視線は開散方向には向かず、融合できなくなる。同様に、ディスプレイ上で、右目用画像の対応点が左に、左目用画像の対応点が右に大きくずれた状態では、視線は極端な寄り目状態となり、融合できなくなる。従って、快適に立体視できる奥行きの範囲、すなわち、図4(d)に示した快適融合範囲は、これらの融合範囲よりもディスプレイ面に対し内側となる。これらを応用し、左右目用画像を相対的に左右にずらし、左右目用画像中の対応点のずれを大きくしたり小さくしたりすることによって、立体画像の奥行き感を全体的により奥にしたり、より手前にしたりすることができる。
【0049】
図5は、立体画像表示装置とユーザの視点の相対的な傾きによる視差の違いを説明する図である。図5(a)に示すように、立体画像表示装置に対してユーザの視点が傾いていない状態で立体視に必要な左右方向の視差がdであったとする。立体画像表示装置に対してユーザが傾くと、図5(b)に示すように、傾きに応じて、本来視差がつくべきでない、ユーザにとって上下方向の視差dv’がつき、ユーザにとって左右方向の視差がdからdh’に減少してしまい、自然な立体視の効果が低減してしまう。そこで、図5(c)に示すように、立体画像表示装置とユーザの視点の相対的な傾きに合わせて表示画像に縦方向の視差dvをつけ、横方向の視差をdhに調整し、ユーザにとって左右方向の視差d’がdと等しくなるようにすることにより、自然な立体視を妨げないようにすることができる。具体的には、右目用画像と左目用画像とを相対的に上下及び左右にずらすことによって、必要な上下左右方向の視差をつける。
【0050】
なお、傾きの角度が小さい範囲では、横方向の視差の変位量が大きくないゆえ、横方向の視差を調節する処理は省略してもよい。また、縦方向の視差も、被写体までの距離が縦方向の変位量に対して十分に大きい時は、視点の移動による視界の変位の方が、視点の移動による個別の被写体との相対的な視差変化よりも大きいので、縦方向の画像のずらし処理で簡易的に実現できる。
【0051】
次に、シャッタメガネ107について説明する。シャッタメガネ107は、メガネ同期部106から送られる同期信号に同期して、複数の視点画像からシャッタメガネ107で測定された傾き角度に合う組み合わせを選択し、適切な視差量の視点画像をユーザに提示することにより立体視を可能とする。図6および図7は複数の視点を説明する図である。複数の視点画像は、例えば図6のように、角度別の組み合わせをそれぞれ持ってもよいが、図7のように、いずれかの視点を共通化してそれらの視点を組み合わせることにより複数の立体画像を得るようにすると、視点画像数を削減できる。このとき、厳密には左右の目の傾きの変位と画像の変位が対応しないが、表示されている画像との距離が離れているときには大きく影響しない。本実施形態では、図7のa〜dに示す視点位置を採用することにより、4つの視点画像から3つの異なる左右画像の組を得ることができ、左右の傾きに応じた視差をもつ立体画像を提示することができる。なお、前述の通り、縦方向の視差はずらし処理により簡易的に実現しているため、視点の傾き、すなわち図7における視点のなす角度である角cadおよび角bdaは小さい方がよい。
【0052】
ユーザの視点の傾きは装着しているシャッタメガネ107の傾きで近似できるので、シャッタメガネ107の傾きに応じて縦方向の視差を選択することにより自然な立体視を可能とすることができる。シャッタメガネ107の傾きは、圧電式ジャイロセンサなどの小型のデバイスで容易に検知することができる。なお、傾き検出部1073は必ずしもシャッタメガネ107に内蔵されている必要はなく、表示部103側からシャッタメガネ107を画像で認識して傾きを検出するなどの方法でもよい。要するに表示部103と個々のシャッタメガネ107との相対的な傾きを検出し、個々のシャッタメガネ107に伝達すればよい。
【0053】
傾きと視点画像の組み合わせの対応は予め決めておいてもよいが、メガネ同期部106から送られる同期信号に重畳して伝送するとよい。これにより、種々の立体画像や観察環境、目的に対応した適切な画像の組をユーザに提示することができる。なお、ユーザの動きが激しい時や、姿勢が適切でない場合は、正しい傾きを検知できない場合がある。傾き自体は正しく検知できていても、対応可能な傾きの範囲を超えていることもある。このような時には、予め規定された組み合わせの画像を提示することによって、ユーザに不自然な視差の付いた画像を提示しないようにできる。また、傾きを検知できない場合や、対応可能な傾きの範囲を超えている場合に提示する画像の組み合わせを表す信号を、メガネ同期部から送られる同期信号に重畳して伝送してもよい。シーンや目的に合わせて提示する画像の組を変更することもできる。なお、このような時には、2次元の画像を提示すると、傾きと視差の対応を取らずに済み、ユーザに不自然な視差の付いた画像を提示しないようにすることができる。
【0054】
このようにして、複数の傾き角度に対応する複数の画像の組を、ユーザの装着するシャッタメガネ107の傾きに応じて提示することができる。すなわち、それぞれの視点画像の組み合わせから、想定した傾きに対応した視差量の立体画像を得ることができ、複数のユーザに対し適切な視差量で立体画像を提示することができる。それぞれのユーザが用いるシャッタメガネ107がそれぞれの傾きに応じて適切な視点画像の組み合わせを選択しているため、1台の立体画像表示装置に対してユーザをいくらでも増やすことができる。それぞれのユーザの装着するシャッタメガネ107は一般的なサングラスと大きな違いはなく、見た目の違和感も大きくはないゆえ、ユーザ同士のコミュニケーションを阻害する要因にもなりにくい。
【0055】
なお、本実施形態では、図2に示す通り、ずらし処理部1013a〜1013cによる処理を経ない画像、すなわち、入力画像に改変を加えずに表示部103に送られる画像がある。ずらし処理部1013a〜1013cによる処理を経ると、画像は視差調整の影響により上下左右に移動される。従って、ずらし処理を経た画像のうち、同じ画像を左右の目で観察すると、視差が付加されていないゆえ2次元画像として観察されるが、画像は視差調整に伴い上下左右に移動することとなり好ましくない。よって、ずらし処理部1013を経ない画像を両眼に提示することによって、入力された画像そのものを2次元画像として良好に観察することができる。シャッタメガネが選択する視点画像の組にはこのように左右同一の視点画像を提示する組み合わせがあってもよい。
【0056】
また、2次元表示する画像として立体表示用の画像とは異なる画像を予め用意してもよい。立体画像は両目で観察することを前提に制作されるので、立体画像のうちの1枚を抽出すると、必ずしも適切な視点となっていない場合がある。特に基線長に対し被写体までの距離が近い場合に顕著である。この現象を避けるために、2次元表示することを前提とした画像を用意すると、良好な2次元画像を提示することができる。
【0057】
図8は、2次元表示用の画像を含む4つの視点画像の提示方法の一例を示す図である。視点画像1−3は、互いに異なる視点からの画像である。視点画像1を左目に提示し視点画像2を右目に提示する画像の組1と、視点画像2を左目に提示し視点画像3を右目に提示する画像の組2と、視点画像1を左目に提示し視点画像3を右目に提示する画像の組3は、互いに異なる視差が付加された視差画像となる。2次元表示する場合、例えば、画像の組4のように、視差画像にも含まれる視点画像1を左目および右目に提示することもできるが、2次元表示用の画像である視点画像4を左目および右目に提示することもできる。
【0058】
<第2の実施形態>(画素ごとずらしによる複数視差生成)
以下に、本発明の第2の実施形態による立体画像表示装置について、図面を参照して説明する。本実施形態による立体画像表示装置の構成例は、第1の実施形態と同様に図1で示される。図1に示すように、本実施形態による立体画像表示装置は、入力部10と、入力された画像データを処理し、立体視用画像データを生成するための画像処理を行う立体画像処理部100と、画像の視差を調整する視差調整部101と、画像を表示部103に合わせ表示制御を行う表示制御部102と、画像を表示する表示部103と、システム全体を制御するシステム制御部104と、ユーザが入力を行うユーザ入力部105と、シャッタメガネ107の同期を行うメガネ同期部106と、ユーザが装着するシャッタメガネ107とを備える。
【0059】
図9は、本実施形態による視差調整部101の構成の一例を示すブロック図である。視差調整部101は、通信・制御部1011と、視差算出部1012と、視差補正部1014と、遮蔽補償部1015と、画像加工部1016a〜1016eとを備える。
【0060】
シャッタメガネ107の構成は、第1の実施形態の図3に示したものと同様なので、説明を省略する。
【0061】
次に、各部の動作を説明する。入力部10は、立体画像表示装置に入力される画像データを立体画像処理部100に伝送し、立体画像処理部100は、入力形式に合わせて左目用データと右目用データとに展開する。同時に、立体画像処理部100は、入力された画像データに付加情報がある場合は付加情報を抽出し、システム制御部104に伝送する。ここで、入力される画像データは、放送波によるもの、記録メディアから電子的に読みだされたもの、通信により取得されたものなど、どのようなものでも構わない。また、右目用画像データ、左目用画像データは、1枚の画像データから作成されたものでも構わない。すなわち、画像データと奥行きデータもしくは視差データから合成された複数視点画像、または、奥行き情報を推定して作成された複数視点画像であってもよい。多視点画像データとして入力された複数視点画像であってももちろんよい。
【0062】
立体画像処理部100は、展開した左目用画像データおよび右目用画像データを視差調整部101に送り、視差調節部101は、受信した左目用画像データおよび右目用画像データを複数の視点画像に再合成する。視差調整部101内部では、システム制御部104と通信する通信・制御部1011が各部を制御している。
【0063】
視差算出部1012は、視差調整部101に入力された画像データにおける左右画像の対応点のずれから視差を算出し、算出した視差データを視差補正部1014に送る。視差データは、例えば画素ごとに視差を表した、いわゆる視差マップであってもよい。
【0064】
視差補正部1014は、受信した視差データのうち、システム制御に必要なパラメータを選択して、通信・制御部1011を経由してシステム制御部104に送信する。
【0065】
システム制御部104は、視差調整部101から受信したパラメータと、設定された視点位置とに基づいて、各視点画像に適切な補正パラメータを求め、視差調整部101に送信する。ここで、各視点位置は、想定された傾きに応じて設定される。想定された傾きは、予め特定の値に設定しておいてもよいが、予め画像情報に記録しておいた設定値から得る方法、ユーザが入力する方法などを用いてもよい。予め画像情報に記録しておくと、場面に応じた傾きを設定することができる。また、ユーザが入力する方法だと、ユーザそれぞれの特徴、例えば画像に合わせて体を傾ける癖の強さなどに合わせて傾き画像を準備することができる。
【0066】
通信・制御部1011は、システム制御部104から視差調整部101に送信される補正パラメータを視差補正部1014に伝送する。視差補正部1014は、通信・制御部1011から受信した補正パラメータと、視差算出部1012から受信した視差データとに基づいて、それぞれ想定された視点位置に対応する、補正された複数の視差データを算出し、遮蔽補償部1015と、各視点画像に対応する画像加工部1016とに出力する。この時の補正された複数の視差データも、いわゆる視差マップであってもよい。
【0067】
遮蔽補償部1015は、視差補正部1014により補正された複数の視差データに基づき画像を再合成する際、視点が変わることによって遮蔽関係が変化して画像データがなくなってしまう部分に関し、画像データを補償する補償画像データを生成する。補償画像データは、例えば入力された画像のうち遮蔽関係の異なる他の視点の画像を用いて生成できる。補償画像データは、画像加工部1016の数に対応して複数出力される。
【0068】
画像加工部1016a〜1016eは、前記補正された複数の視差データおよび前記補償画像データを用いて、それぞれ想定された視点位置に合わせた新たな視点画像を再合成する。より具体的には、前記補正された複数の視差データに基づいて、対象領域の画素データを移動させ、移動によって対応する画素がなくなった領域には前記補償画像データの対応部分の画素データを補う。このようにして、入力された立体視用データに含まれていない視点の画像を生成する。
【0069】
なお、ここでは左右画像から視差を求めて演算したが、入力が画像データと奥行きデータの組み合わせである場合は、入力された奥行きデータを視差データに変換して用いてもよい。また、図9では画像加工部1016a〜1016eに対し左右の画像を入力しているが、右または左のうち一方の画像でも構わない。このようにすることによって、仮想的にカメラ位置をずらした視点画像を生成し、視点の傾きに対応して画像の視差を調整することができる。
【0070】
視差調整部101は、生成した複数の視点画像を表示制御部102に送る。表示制御部102は、表示部103に合わせた表示制御をすると同時に、メガネ同期部106に対し信号を送る。
【0071】
メガネ同期部106は、表示制御部102から受信した信号に基づいて、ユーザの装着するシャッタメガネ107に対し同期信号を送り、表示部103との同期処理を行う。具体的には、例えば、表示部103に液晶表示パネルを用いて5視点の視点画像を時分割で表示し、ユーザの装着したシャッタメガネ107と同期して立体視を行う方式の場合、表示制御部102は、表示部103に対し、5視点の視点画像を順に出力する。出力の頻度は、例えば各視点に対応する画像をそれぞれ毎秒60枚とする。表示部103は表示制御部102から送られる画像を随時表示し、その際、表示部103とシャッタメガネ107は同期し、表示部103に順に表示される5視点の視点画像のいずれかに左目用シャッタ、右目用シャッタを同期して開とすることにより、それぞれ対応する視点画像を左目及び右目に提示して、立体視を実現する。
【0072】
前述の通り、視差は左右の視点の相対的なずれにより生ずるので、傾きに対応して視差を付ける必要がある。従って、図6に示すように、複数の視点からの画像のうち、相対的に視点のずれ量が適切な画像を2枚抽出し、それぞれ右目用画像及び左目用画像として用いれば傾きに対応した視差のついた画像の組を選択する。また、この時のそれぞれの視点の相対的なずれ量を調節することにより、組み合わせの選び方を変えることによって複数の視点画像を得ることができる。図7に5視点からの視点画像から5通りの視差のついた画像を得る例を示す。要素となる視点画像が多いほど多くの組み合わせを得ることができるのは言うまでもない。
【0073】
シャッタメガネ107はこれら複数の視点画像から、それぞれのシャッタメガネ107の傾きに対応した視点画像の組み合わせを選択し、提示する。このようにして、複数のユーザに対し適切な視差量で立体画像を提示することができる。
【0074】
なお、ここでは2点の視点画像から5点の視点画像を変換により得る方法を示したが、当然のことながら実際のカメラを5視点分用いて画像を取得しても構わない。視点の配置は、光軸を平行に設置したものでも、光軸が輻輳するものでもよいし、同一直線上に視点を配置したものでも、光軸の輻輳点までが等距離になるよう配置したものでも構わない。また、5視点での例を示したが、視点数は5に限定されるものではなく、画像のフレームレートや表示デバイスの応答速度に応じて加減されるべきものである。
【0075】
また、本実施形態では仮想的にカメラ位置を移動した5視点の画像を表示したが、このほかに2次元画像として表示する視点画像を追加し、左右の目で同じ画像を2次元画像として観察できるようにしてもよい。立体画像は、両目で観察することを前提に制作されるので、立体画像のうちの1枚を抽出すると、必ずしも適切な視点となっていない場合がある。このような不適切な視点は、特に基線長に対し被写体までの距離が近い場合に顕著である。また、2次元画像として表示する視点画像を追加すると、視点の合成に伴う画像の変質を避けることができる。2次元表示により、体質・体調により立体画像の鑑賞に適さないユーザも含めて安全に画像を観察することができる。2次元画像も3次元画像と同様に、シャッタメガネを用いて提示することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、画素ごとに視差を表した視差マップを例にシステムを説明したが、必ずしも画素ごとの視差である必要はなく、縮小画像に対しての視差マップであってもよい。この場合、実際に処理する際に、低い解像度の視差マップのまま用いてもよいが、フィルタ処理等により解像度を高めた視差マップを用いてもよい。
【0077】
<第3の実施形態>(CGによる複数視差生成)
以下に、本発明の第3の実施形態による立体画像表示装置について、図面を参照して説明する。図10は、本実施形態による立体画像表示装置の構成の一例を示すブロック図である。図10に示すように、本実施形態による立体画像表示装置は、ユーザ操作部20と、ゲーム制御部201と、表示制御部202と、表示部203と、メガネ同期部206と、シャッタメガネ207とを備える。ゲーム制御部201は、システム制御部2011と、プログラム蓄積部2012と、立体画像生成部2013とを備える。
【0078】
ユーザ操作部20は、ゲームコントローラであってもよい。システム制御部2011は、ユーザ操作部20、プログラム蓄積部2012、立体画像生成部2013および表示制御部202のそれぞれとのI/Oや、CPUや、メモリ等を備えてもよい。プログラム蓄積部2012は、ゲームソフト等を蓄積するハードディスクや光ディスクなどであってもよい。立体画像生成部2013は、GPU(Graphic Processing Unit)およびメモリ等を備えてもよい。
【0079】
表示部203は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどであってもよいが、応答速度が高速な表示デバイスであることが望ましい。例えば、LEDディスプレイ等を用いれば高速な応答が得られる。メガネ同期部206は、シャッタメガネ207に対し、赤外線や電波などで同期信号を送る。ユーザ操作部20やシャッタメガネ207は複数あっても構わない。
【0080】
シャッタメガネ207の構成は、第1の実施形態及び図3に示したシャッタメガネ107の構成と同様である。
【0081】
次に、各部の動作を説明する。システム制御部2011は、ユーザ操作部20からの操作を受け、プログラム蓄積部2012からプログラムを読み出して実行する。前述の通り、プログラムは、光ディスクやハードディスクであるプログラム蓄積部2012に蓄積されていてもよい。プログラム蓄積部2012は、固体メモリ等の他の記憶装置であってももちろん構わない。プログラム蓄積部2012がハードディスクである場合、ハードディスクへのプログラムの蓄積は、光ディスクから読み出す方法、ネットワークから取得する方法、固体メモリから読み出す方法など、どのような形態でもよい。
【0082】
システム制御部2011は、プログラムの実行に伴い、立体画像生成部2013に対し、立体画像モデルを出力する。ここで、立体画像モデルとは、表示すべき物体の形状や配置、照明となる光源の位置、および仮想的な視点位置等を3次元座標上に表現したものである。3次元座標は、直交座標系でも極座標系でも構わない。また、表示すべき物体の表面の模様や状態等が記述されていてもよい。立体画像生成部2013は、システム制御部2011から入力された立体画像モデルを展開して、個々の視点画像を生成する。より具体的には、立体画像モデルに含まれる物体の配置図を立体画像モデルに含まれる複数の仮想カメラの位置から見た図を生成することによって、複数の視点画像を得る。複数の仮想カメラの位置は、複数の視点に対応する位置とし、例えば図7に示すような配置とする。図7は5台のカメラによる5つの視点画像から5通りの視差のついた画像を得るようすを示している。なお、複数の仮想カメラの位置は、想定する傾きによって決定される。想定する傾きは、ユーザが入力してもよいし、プログラムに予め設定されたものを用いてもよい。ユーザが入力する場合は、ユーザの好みや癖に応じた傾きに対応する視差画像を提示できるし、プログラムに予め設定されたものを用いる場合は、プログラムの想定する場面に合った画像を提示できる。
【0083】
立体画像生成部2013は、生成した複数の視点画像を表示制御部202に送る。表示制御部202は、立体画像生成部2013から複数の視点画像を受信し、表示部203に合わせた表示制御をすると同時に、メガネ同期部206に対し信号を送る。メガネ同期部206は、表示制御部202から受信した信号に基づいて、ユーザの装着するシャッタメガネ207に対し同期信号を送り、表示部203との同期処理を行う。具体的には、例えば、表示部203に液晶表示パネルを用いて5視点の視点画像を表示し、ユーザの装着したシャッタメガネ207と同期して立体視を行う方式の場合、表示制御部202は、表示部203に対し、5視点の視点画像を順に出力する。出力の頻度は、例えば各視点に対応する画像をそれぞれ毎秒60枚とする。表示部203は表示制御部202から送られる画像を随時表示するが、表示部203とシャッタメガネ207は同期し、表示部に順に表示される5視点の視点画像のいずれかに左目用シャッタ、右目用シャッタを同期して開とすることにより、それぞれ対応する視点画像を左目及び右目に提示して、立体視を実現する。
【0084】
この際、複数の視点画像は順に表示されるので、立体画像生成部2013では、各視点画像に関し、表示部203において実際に時分割で表示されるタイミングを考慮して画像を生成すると、ユーザに時間軸に沿った滑らかな動きを知覚させることができ、好適である。図11は、この際の様子を説明する図である。図11は、円筒形の物体から点状の物体が発射されている様子を表している。このとき、円筒形の物体は視点に合わせて見え方が変化し、点状の物体は時間の経過に合わせて表示位置が変化している。点状の物体も視点に合わせて見え方が変化するが、図11は小さいため、図の表現上、視点変化は省略されている。時間軸に沿った画像は、時系列画像の補間により生成してもよい。
【0085】
前述のとおり、シャッタメガネ107は、これら複数の視点画像から、それぞれのシャッタメガネ107の傾きに対応した視点画像の組み合わせを選択し、提示する。このようにして、複数のユーザに、各々のユーザの頭の傾きに対応する視点画像を提示することができる。すなわち、想定した傾きに対応した視差量の立体画像を得ることができ、それぞれの視点画像の組み合わせから、複数のユーザに対しそれぞれ適切な視差量で立体画像を提示することができるので、複数のユーザが同時に同じ表示画面に向かって立体表示のゲームを楽しむことができる。また、それぞれのユーザが用いるシャッタメガネがそれぞれ適切な視点画像の組み合わせを選択しているので、1台の立体画像表示装置に対して画面を観察するユーザをいくらでも増やすことができる。
【0086】
なお、上記では立体画像表示装置に同期して画像を選択する遮蔽手段としてシャッタメガネを採用しているが、遮蔽手段の形状はメガネに限定されない。例えば、面のようなものやヘルメットの目を覆う部分に遮蔽素子、例えば液晶シャッタを設けた遮断手段としてもよい。この場合、球技や格闘技等に用いる防護面や、モータスポーツ等に用いるヘルメットを模したものとすることにより、メガネを用いた場合のメガネと顔の隙間から入る外光の影響を軽減でき、立体画像表示装置を用いた、より没入感のあるゲーム装置を構成することができる。また、メガネの場合にありがちなメガネのずり落ちや傾きなどを軽減でき、頭部への密着度もメガネより高いので、より正確な顔の傾きを測定することができ、適切な視差を推定することができる。さらに、公共空間に設置されるゲーム装置では個々の構成装置は有線接続されることが好ましいが、メガネと比較して面やヘルメットでは接続線の重量等を頭全体で支えることになり、接続線によるわずらわしさを軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、立体画像表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 入力部
20 ユーザ操作部
100 立体画像処理部
101 視差調整部
102、202 表示制御部
103、203 表示部
104、2011 システム制御部
105 ユーザ入力部
106、206 メガネ同期部
107、207 シャッタメガネ
201 ゲーム制御部
1011 通信・制御部
1012 視差算出部
1013a〜c ずらし処理部
1071 メガネ同期受信部
1072 シャッタ制御部
1073 傾き検出部
1074a、b シャッタ部
1014 視差補正部
1015 遮蔽補償部
1016a〜e 画像加工部
2012 プログラム蓄積部
2013 立体画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を時分割で順に表示する表示手段と、
前記表示手段における表示と同期して同期信号を出力する同期手段と、
前記同期手段から前記同期信号を受信し、前記同期信号に応じて右目または左目を遮蔽して、前記複数の画像を選択的に右目および左目に透過させる遮蔽手段と、
前記遮蔽手段の傾きを検出する傾き検出手段とを備え、
前記遮蔽手段は、前記傾き検出手段が検出した傾きに応じて、前記複数の画像から右目および左目に透過させる画像の組を選択することを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記複数の画像は、被写体をそれぞれ異なる視点からとらえた画像から成り、前記右目および左目に透過させる画像の組を2組以上含むことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記右目および左目に透過させる画像の組は、それぞれ異なる傾きに対応する視差が付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記右目および左目に透過させる画像の組は、それぞれ異なる縦方向の視差が付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記複数の画像のうち少なくとも1つは、複数の前記右目および左目に透過させる画像の組に含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記複数の画像は、2次元表示用画像を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記複数の画像は、それぞれ前記表示手段において時分割で表示される際の表示タイミングを考慮して生成されたものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記傾き検出手段から前記遮蔽手段の傾きが得られない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における予め決められた画像の組を右目および左目に透過させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
前記傾き検出手段から前記遮蔽手段の傾きが得られない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における同一の画像を右目および左目に透過させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項10】
前記傾き検出手段によって検出された前記遮蔽手段の傾きに対応する前記右目および左目に透過させる画像の組がない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における予め決められた画像の組を右目および左目に透過させることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項11】
前記傾き検出手段によって検出された前記遮蔽手段の傾きに対応する前記右目および左目に透過させる画像の組がない場合、前記遮蔽手段は前記複数の画像における同一の画像を右目および左目に透過させることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項12】
前記同期信号は、前記傾き検出手段により検出される前記遮蔽手段の傾きと前記右目および左目に透過させる画像の組との対応を示す信号を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項13】
前記同期信号は、前記傾き検出手段から前記遮蔽手段の傾きが得られない場合に前記遮蔽手段が右目および左目に透過させる画像の組を表す信号を含むことを特徴とする請求項8に記載の立体画像表示装置。
【請求項14】
前記同期信号は、前記傾き検出手段によって検出された前記遮蔽手段の傾きに対応する前記右目および左目に透過させる画像の組がない場合に前記遮蔽手段が右目および左目に透過させる画像の組を表す信号を含むことを特徴とする請求項10に記載の立体画像表示装置。
【請求項15】
前記複数の画像の各々における前記異なる視点は、それぞれ予め設定された前記遮蔽手段の傾きに対応付けて設定されることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項16】
前記複数の画像の各々における前記異なる視点は、ユーザにより選択された前記遮蔽手段の傾きに対応付けて設定されることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項17】
前記複数の画像の各々における前記異なる視点は、前記複数の画像の各々に関連付けられた設定値にしたがって設定されることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項18】
前記同期信号は赤外線で出力されることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項19】
前記同期信号は電波で出力されることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項20】
前記遮蔽手段はメガネ型であることを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項21】
前記遮蔽手段はヘルメット型であることを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項22】
前記遮蔽手段はユーザの顔を覆う面形であることを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項23】
ある視点の画像の画面領域の全面または一部を縦方向に相対的にずらすことによって縦方向の視差を調節し、前記複数の画像を生成する画像調整手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の立体画像表示装置。
【請求項24】
ある視点の画像から、被写体をそれぞれ異なる視点からとらえた画像とみなせる画像を生成し、前記複数の画像を生成する画像調整手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項25】
表示手段が、複数の画像を時分割で順に表示する表示ステップと、
同期手段が、前記表示ステップにおける表示と同期して同期信号を出力する同期ステップと、
遮蔽手段が前記同期信号を受信し、前記同期信号に応じて右目または左目を遮蔽して前記複数の画像を選択的に右目および左目に透過させる遮蔽ステップと、
傾き検出手段が前記遮蔽手段の傾きを検出する傾き検出ステップとを含み、
前記遮蔽ステップにおいて、前記遮蔽手段が、前記傾き検出手段が検出した前記遮蔽手段の傾きに応じて、前記複数の画像から右目および左目に透過させる画像の組を選択することを特徴とする立体画像表示方法。
【請求項26】
請求項25に記載の立体画像表示方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−255820(P2012−255820A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127292(P2011−127292)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【特許番号】特許第5037713号(P5037713)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】