説明

立体画像表示装置及び電気泳動ディスプレイの視差バリア位置設定方法

【課題】立体画像の品質を向上させると共に、コストダウンを実現できると共にリサイクル性の優れた立体画像表示装置を提供する。
【解決手段】単眼用画素パターンが表示される液晶ディスプレイと、前記液晶ディスプレイに貼り合わせされる電気泳動ディスプレイと、前記電気泳動ディスプレイに交流電圧を印加して視差バリアを形成する、交流電源とを備えた立体画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示装置及び立体画像表示装置に使用する電気泳動ディスプレイの視差バリア位置の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
裸眼立体画像表示装置の視差(パララックス)バリアには、固定式バリアと、液晶バリア(特許文献1参照)とが知られている。
【0003】
特許文献1には、液晶バリアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−189455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定式バリアはコストの面で優れているが、2Dへの切替えができず、ガラス板に視差バリアを積層した場合にはガラスの内面反射が生じてクロストークが発生して3D映像品質が悪くなるという問題がある。
また、液晶バリアを有効に作動させるためには液晶を駆動し続ける必要があって、電力の消費が大きくなると共に、液晶バリアを駆動するドライバ等の装置構成にコストがかかるという問題がある。
【0006】
また、固定式バリアと液晶バリアに共通の問題として、液晶の画素ピッチとバリアピッチを事前に計算して精度を確保する必要がある。
その結果、非常に高いバリア作成精度を要するため、設計及び製造設備の投資に伴うコストが増大する。
また、作成された視差バリアを液晶画面に貼り合わせる際にも、非常に高い精度を要するため、そのための製造設備の投資に伴うコストが増大する。
【0007】
更に、視差バリアのリサイクルに対する環境面に対する配慮が問題となっている。
【0008】
本発明の課題(目的)は、上記の種々の問題を解決して、立体画像の品質を向上させると共に、コストダウンを実現できると共にリサイクル性の優れた、立体画像表示装置及び電気泳動ディスプレイのバリア位置の設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の立体画像表示装置は、単眼用画素パターンが表示される液晶ディスプレイと、前記液晶ディスプレイに貼り合わせされる電気泳動ディスプレイと、前記電気泳動ディスプレイに交流電圧を印加して視差バリアを形成する、交流電源とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記電気泳動ディスプレイが貼り合わされた前記液晶ディスプレイの反対側にバックライトが配置されていることを特徴とする。
また、前記電気泳動ディスプレイに形成される視差バリア間隔は、前記液晶ディスプレイの画素ピッチよりも若干小さ目であることを特徴とする。
【0011】
また、前記電気泳動ディスプレイは前記液晶ディスプレイとバックライトの間に配置されていることを特徴とする。
また、前記電気泳動ディスプレイに形成される視差バリア間隔は、前記液晶ディスプレイの画素ピッチよりも若干大き目であることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の立体画像表示装置に液晶ディスプレイとともに使用される電気泳動ディスプレイの視差バリア位置設定方法は、前記電気泳動ディスプレイを前記液晶ディスプレイに貼り合わせるステップと、前記液晶ディスプレイに単眼用画素パターンを表示するステップと、前記電気泳動ディスプレイに交流電圧を印加するステップと、表示された前記単眼用画素パターンを所定の視点から撮像手段で撮像するステップと、撮像された単眼用画素のS/N比が所定の値になるように、前記電気泳動ディスプレイに印加される交流電圧の位相を調整するステップと、印加された交流電圧を除去して、バリアパターンの位置を固定するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記交流電圧の位相を調整するステップでは、交流電圧の位相を調整することに加えて、撮像された単眼用画素のS/N比が所定の値になるように、前記電気泳動ディスプレイに印加される交流電圧の周波数を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、立体画像の品質を向上させると共に、コストダウンを実現できる、リサイクル性の高い立体画像表示装置が実現できると共に、電気泳動ディスプレイの視差バリアの位置を製品毎に簡易に設定できる。
また、電気泳動ディスプレイは、その構造を保持したままで、異なったピッチパターンの液晶ディスプレイにも使い回しが可能であるので、当該電気泳動ディスプレイを細分破壊してリサイクルする場合に比較してリサイクル性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の立体画像表示装置の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の立体画像表示装置において、視差バリア位置設定時の構成を示す図である。
【図3】本発明の立体画像表示装置の視差バリアの位置設定の手順を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の視差バリアの作成例を示す模式図である。
【図5】本願発明の立体画像表示装置の第2の実施例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を用いて、本願発明の立体画像表示装置1の構成を説明する。
図1は、本願発明の第1の実施例の立体画像表示装置1の構成であり、当該立体画像表示装置1は、液晶ディスプレイ2と、バックライト3と、視差バリアとして機能する電気泳動ディスプレイ4とで構成され、交流電源5は視差バリアの設定時に使用される。
液晶デスプレイ2は、左眼用画素(左眼用画像)Lと右眼用画素(右眼用画像)Rが交互に配置されて、立体視用画像が表示される構成となっている。
バックライト3は液晶ディスプレイ2の背面に配置される。電気泳動ディスプレイ4は交流電源5から印加される電圧の位相を調整した後、交流電源5の電圧の印加を遮断してバリアパターンを形成し、視差バリアとして機能する。上記バックライト3,液晶ディスプレイ2及び電気泳動ディスプレイ4が貼り合わされることにより、立体画像表示装置1を構成している。
【0017】
この状態で、ユーザーの右眼に相当する視点1及びユーザーの左眼に相当する視点2から、電気泳動ディスプレイ4(視差バリア)の隙間を介して、液晶ディスプレイ2の左眼用画像L及び右眼用画像Rが分離して立体視が可能となる。
【0018】
図1の例では、電気泳動ディスプレイ4が貼り合わされた液晶ディスプレイ2の反対側にバックライト3が配置されているので、電気泳動ディスプレイに形成される視差バリアの間隔は、液晶ディスプレイの画素ピッチよりも若干小さ目に形成されている。
【0019】
次に、本発明の視差バリアとしての電気泳動ディスプレイ(例えば、電子ペーパ)4のバリア位置設定方法について、図2のバリア位置設定時の構成図及び図3のバリア位置設定のフローチャートを用いて説明する。
【0020】
図2は、液晶ディスプレイ2と電気泳動ディスプレイ4を貼合わせ後立体画像表示装置1とバリア位置設定時使用する撮像手段6との関係を示している。
図2では、図1における立体画像表示装置1の、視点1(若しくは、視点2)の位置に撮像手段6が配置される。
【0021】
次に、図2のバリアの位置設定の手順を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
最初に電気泳動ディスプレイ4を液晶ディスプレイ2に貼り合わせる。(ステップS1)
この時、液晶ディスプレイ2にはバックライト3が貼り合わされ、撮像手段は視点1若しくは視点2の位置に配置される。
また、液晶ディスプレイ2に単眼用サブ画素パターン(左眼用画素Lおよび右眼用画素R)が表示される。(ステップS2)
次に電気泳動ディスプレイ4に交流電源5より電圧を印加して、視差バリアを形成する。(ステップS3)
この時、交流電源5の周波数は、液晶の画素ピッチよりも若干小さ目である。
【0023】
そして、液晶ディスプレイ2に表示されている単眼用サブ画素パターンを、電気泳動ディスプレイ4に形成されたバリアの隙間を介して撮像手段6で撮像する。(ステップS4)
この時、ステップS4で撮像された単眼用サブ画素パターンのS/N比(signal-noise ratio)が所定の値になるように、電気泳動ディスプレイ4に印加されている交流電源5の位相を調整する。(ステップS5)
なお、S/N比が所定の値になるとは、基本的には最大になることであるが、必ずしも最大でなくともある程度以上の数値になれば良い。
次に、ステップS5における交流電圧の位相の調整で、S/N比が所定の値になった時に、電気泳動ディスプレイ4に印加されている交流電源電圧を除去(遮断)して電気泳動ディスプレイ4に形成されたバリアと液晶ディスプレイ2との相対位置を固定する。(ステップS6)
【0024】
上記の手順で、液晶ディスプレイ2と電気泳動ディスプレイ4のバリアの位置関係を固定した後は、交流電源5を遮断してもバリアの位置は固定されたままである(電子ペーパと同じ原理)。したがって、立体視のために電気泳動ディスプレイ4に対して交流電源5の電圧を印加し続ける必要がないので、消費電力を抑えることが出来る。
【0025】
なお、上述の説明では、単願要サブ画素パターンのS/N比が所定の値になるように、電気泳動ディスプレイ4に印加される交流電源5の位相を調整することで、S/N比が所定の値になると説明している。
【0026】
しかし、あくまでもその際の交流電源5の周波数は液晶ディスプレイの画素ピッチよりも若干小さ目であることが前提であり、バリアピッチは理論設計上の計算式と一致する周波数の交流電圧を印加することが望ましいが、現実には理論設計通りの周波数で電気泳動ディスプレイを駆動するだけでは理想的なバリアピッチを得ることは難しい。
【0027】
実際に電気泳動ディスプレイに形成されるバリアピッチは、製造された液晶ディスプレイ毎の実際の画素ピッチ、液晶ディスプレイと電気泳動ディスプレイの間隔、視点1,2の間隔及び、視点と液晶ディスプレイとの間隔等の影響を受けるので、理論計算式通りの周波数で理想的なバリアピッチが形成できるとはいえない。
【0028】
そこで、ステップS5の所定のS/N比とするための操作として、交流電源の位相の調整に加えて、交流電源の周波数を微少に増減することによって、製造された製品毎により所定のS/N比にすることができる。
【0029】
次に、電気泳動ディスプレイ4の作成例について図4を用いて説明する。
図4(a)は、電気泳動ディスプレイ4によるステップバリアの作成例であって、電気泳動ディスプレイ4のX軸及びY軸にそれぞれ交流電源5の電圧を印加することによって、格子状のバリア(ステップバリア)を形成することができる。
【0030】
また、図4(b)は、電気泳動ディスプレイ4によるストライプバリアの作成例であって、電気泳動ディスプレイ4のX軸にのみ交流電源5の電圧を印加することによって、ストライプ状のバリア(ストライプバリア)を形成することができる。
【0031】
上述の如く、本発明では、視差バリアを電気泳動ディスプレイで形成することによって、立体画像の品質を向上させると共に、コストダウンを実現できる立体画像表示装置を実現できると共に、視差バリアを電気泳動ディスプレイで形成していることの優位性について述べる。
【0032】
上述のバリアの位置設定の説明で述べた如く、電気泳動ディスプレイで形成されるバリアは、原理的に電気泳動ディスプレイに印加される交流電圧の周波数を変更すれば、どのようなバリアピッチにでも変更が可能でる。
したがって、そのままの構造で、他の液晶ディスプレイにも適用(リユース)が可能であり、電気泳動ディスプレイはリサイクル性に優れた製品である。
【0033】
また、上述の説明では、立体画像表示装置に特有の視差バリアを形成することを述べているが、立体画像(3D)用に形成された視差バリアを均一のバリアに再形成することによって2D用として使用することも可能である。
【0034】
また、電気泳動ディスプレイの画面全体を立体画像(3D)用又は2D用のバリアに形成するのではなく、画面の一部を立体画像用にそれ以外を2D用のバリアに形成することも可能である。
【0035】
また、上述の説明では、視点の位置を固定(仮定)して当該視点に特有の視差バリアを形成することを述べているが、視点が変動する場合には、変動した視点に特有の視差バリアを形成することも可能である。
【0036】
このように、本願の立体画像表示装置で視差バリアとして使用する電気泳動ディスプレイは、単に立体画像表示装置の視差バリアとして有効であるばかりでなく、電気泳動ディスプレイを細分破壊せずに、その構造を保持したままで、異なったピッチパターンの液晶ディスプレイにも使い回しが可能であるので、リサイクル性が極めて高い。
【0037】
次に本願発明の第2実施例における立体画像表示装置1´について、図面を用いて説明する。
図5は、本願発明の第2の実施例の立体画像表示装置1´の構成を説明する図であって、基本的な構成要素は、実施形態1と同様なので説明を省略する。
第1実施例との違いは、電気泳動ディスプレイ4が、バックライト3と液晶ディスプレイ2との間に配置されている。
そして、バックライト3,電気泳動ディスプレイ4及び液晶ディスプレイ2が貼り合わされて、立体画像表示装置1´を構成している。
この場合は、電気泳動ディスプレイ4に形成される視差バリア間隔は、液晶ディスプレイ2の画素ピッチよりも若干大き目に形成されている。
【0038】
この状態で、ユーザーは、バックライト3の光が照射された液晶ディスプレイ2の左眼用画像L及び右眼用画像Rを、電気泳動ディスプレイ4のバリアの隙間を介して、立体画像として視認することができる。
【0039】
なお、第2実施例においても第1実施例と同様に、立体視のために電気泳動ディスプレイ4に交流電源5の電圧を印加し続ける必要はないので、電力の消費が押さえられる。
【0040】
この際の交流電源5の周波数は、第2実施例の構成の場合は、液晶ディスプレイ2の画素ピッチよりも若干大き目である。
【0041】
また、液晶ディスプレイ2に表示される左眼用画素(左眼用画像L)と右眼用画素(右眼用画像R)は、カラー立体視の場合には、左眼用画素L及び右眼用画素Rには、それぞれの画素毎に光の3原色の(赤)、(緑)、(青)に対応する画素がそれぞれ配置される。
【符号の説明】
【0042】
1:立体画像表示装置、 2:液晶ディスプレイ、 3:バックライト、 4:電気泳動ディスプレイ(視差バリア)、 5:交流電源、 6:撮像手段、 L:左眼用画素(左眼用画像)、 R:右眼用画素(右眼用画像)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単眼用画素パターンが表示される液晶ディスプレイと、
前記液晶ディスプレイに貼り合わせされる電気泳動ディスプレイと、
前記電気泳動ディスプレイに交流電圧を印加して視差バリアを形成する、交流電源とを備えたことを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記電気泳動ディスプレイが貼り合わされた前記液晶ディスプレイの反対側にバックライトが配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記電気泳動ディスプレイに形成される視差バリア間隔は、前記液晶ディスプレイの画素ピッチよりも若干小さ目である、ことを特徴とする請求項2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記電気泳動ディスプレイは、前記液晶ディスプレイとバックライトの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記電気泳動ディスプレイに形成される視差バリア間隔は、前記液晶ディスプレイの画素ピッチよりも若干大き目である、ことを特徴とする請求項4に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
立体画像表示装置に液晶ディスプレイとともに使用される電気泳動ディスプレイの視差バリア位置設定方法であって、
前記電気泳動ディスプレイを前記液晶ディスプレイに貼り合わせるステップと、
前記液晶ディスプレイに単眼用画素パターンを表示するステップと、
前記電気泳動ディスプレイに交流電圧を印加するステップと、
表示された前記単眼用画素パターンを所定の視点から撮像手段で撮像するステップと、
撮像された単眼用画素のS/N比が所定の値になるように、前記電気泳動ディスプレイに印加される交流電圧の位相を調整するステップと、
印加された交流電圧を除去して、視差バリアパターンの位置を固定するステップと、
を含むことを特徴とする電気泳動ディスプレイの視差バリア位置設定方法。
【請求項7】
前記交流電圧の位相を調整するステップでは、交流電圧の位相を調整することに加えて、撮像された単眼用画素のS/N比が所定の値になるように、前記電気泳動ディスプレイに印加される交流電圧の周波数を調整する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電気泳動ディスプレイの視差バリア位置設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159704(P2012−159704A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19522(P2011−19522)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】