説明

立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具

【課題】 高硬度鋼の断続切削加工で、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮する立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具を提供する。
【解決手段】立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具において、立方晶窒化ほう素粒子の平均粒径は0.5〜8μmである。該前記立方晶窒化ほう素粒子の表面は、部分的に切れ間が形成された平均膜厚10〜90nmの酸化アルミニウム膜によって被覆される。前記切れ間の平均形成割合h/Hは、0.02≦h/H≦0.08を満足する。ここで、hは酸化アルミニウム膜の切れ間長、Hは立方晶窒化ほう素粒子の周囲長を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐チッピング性と耐欠損性にすぐれる立方晶窒化ほう素(以下、cBNで示す)基焼結材料製切削工具(以下、cBN工具という)に関する。
本願は、2011年9月12日に、日本に出願された特願2011−198016号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼、鋳鉄等の鉄系被削材の切削加工には、被削材との親和性の低い工具材料としてcBN基焼結材料(以下、cBN焼結体という)を用いたcBN工具が知られている。例えば、特許文献1に示すように、硬質相としてのcBNを20〜80体積%含有し、残部が、周期律表の4a、5a、6aの炭化物、窒化物、ほう化物等のセラミックス化合物を結合相としたcBN工具が知られている。
また、例えば、特許文献2に示すように、cBN粒子の表面に、Al等を被覆した被覆cBN粒子を原料粉として焼結体を作製し、このcBN焼結体を工具基体とするcBN工具も提案されている。このcBN工具によれば、工具の耐摩耗性と靭性が改善されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−77811号公報
【特許文献2】特開昭58−61253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献2に示される従来のcBN工具においては、cBN粒子を被覆するAl膜が、cBN工具の靭性向上に寄与している。しかし、この場合、Al膜が厚い(0.1〜1μm)ために、cBN焼結体の結合相中のAlが増加し、cBN焼結体中の硬質成分であるcBN粒子の含有割合が相対的に低下することから、工具の硬さが低下するという問題があった。さらに、前記従来cBN工具を高硬度鋼の断続切削に用いた場合には、耐チッピング性と耐欠損性が十分でないため、工具寿命が短命であるという問題点もあった。
そこで、本発明は、高硬度鋼の断続切削加工においても、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮し、長期の使用にわたりすぐれた切削性能を発揮するcBN工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決するため、cBN工具の硬質相成分であるcBN粒子に着目し、鋭意研究したところ、次のような知見を得た。
【0006】
特許文献2に示されるような従来のcBN工具のcBN焼結体は、cBN粒子表面に予めAl膜を被覆した被覆cBN粒子を原料粉として使用している。そして、この原料粉を成形した後、55kb、1000℃以上の高温で焼結を行い、次いで室温にまで冷却することにより作製する。この従来のcBN工具では、cBN粒子表面に被覆したAl膜に、熱膨張特性の違いから、引張残留応力が発生する。
この従来のcBN工具を、高硬度鋼の断続切削加工に供した場合には、切削時の断続的・衝撃的な負荷と前記引張残留応力により、特に、すくい面の表面に露出したcBN粒子、及びその表面に被覆したAl膜の界面にクラックが発生する。そして、このクラックが起点となり、チッピング、欠損が生じる。
【0007】
本発明者らは前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下の知見を得た。
まず、cBN粒子表面に、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、薄膜かつ均一なAl膜を被覆する。ALDとは、真空チャンバ内の基材に、原料化合物の分子を一層ごと反応させ、Arや窒素によるパージを繰り返し行うことで成膜する方法で、CVD法の一種である。
次に、ボールミル等により前記Al膜に部分的な切れ間を形成し、切れ間ではcBN粒子表面が露出するcBN粒子を作製する。
最後に、前記cBN粒子を原料粉として、通常の条件で焼結を行ってcBN焼結体を作製し、このcBN焼結体からcBN工具を作製する。
前記の工程により得られたcBN工具は、断続的かつ衝撃的負荷が作用する切削加工条件で用いられた場合でも、チッピングの発生、欠損の発生が抑制され、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する。
【0008】
つまり、前記cBN工具においては、cBN粒子表面がAl膜によって部分的に切れ間をもって被覆されていることから、cBN粒子表面と、該前記粒子表面を部分的に被覆するAl膜との熱膨張特性の違いに起因する界面のクラック発生がない。そのため、このクラックを原因とするチッピング発生、欠損発生が防止されているのである。
【0009】
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、以下に示す態様を持つ。
(1)硬質相成分として立方晶窒化ほう素粒子を含有する立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具において、前記立方晶窒化ほう素粒子の平均粒径は0.5〜8μmであり、前記立方晶窒化ほう素粒子のうちには、その表面、平均膜厚10〜90nmの酸化アルミニウム膜により被覆され、前記酸化アルミニウム膜には部分的に切れ間が形成されている前記立方晶窒化ほう素粒子が含まれることを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具。
(2)酸化アルミニウム膜により被覆されている立方晶窒化ほう素粒子の断面画像を観察し、立方晶窒化ほう素粒子の表面に沿って形成されている酸化アルミニウム膜の切れ間の平均形成割合を求めた場合、0.02≦h/H≦0.08を満足することを特徴とする前記(1)に記載の立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具。
但し、hは酸化アルミニウム膜の切れ間長、Hは立方晶窒化ほう素粒子の周囲長。
(3)表面が、平均膜厚10〜90nmの酸化アルミニウム膜により被覆され、前記酸化アルミニウム膜には部分的に切れ間が形成されている立方晶窒化ほう素粒子数の割合を求めた場合、(Q−q)/Q≧0.85を満足することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具。
但し、qは酸化アルミニウム膜が被覆されていない立方晶窒化ほう素粒子の数、Qは焼結体に含まれる立方晶窒化ほう素粒子の数。

【発明の効果】
【0010】
本発明の態様のcBN工具(以下、本発明のcBN工具と称する)においては、cBN粒子の表面を、部分的に切れ間をもったAl膜で被覆したものを硬質相形成用原料粉末として用いている。これを、例えば、TiNを主たる結合相とする結合相形成用原料粉末と混合し焼結される。そのため、cBN硬質相と結合相との間には、部分的に切れ間が形成されたAl膜が存在し、cBN硬質相が焼結体中で均一に分散分布し、均質な工具特性が得られるばかりか、cBN硬質相と結合相との界面密着強度が改善される。さらに、部分的に切れ間が形成されたAl膜に発生する引張残留応力は、切れ間が無いものと比べて大幅に低減される。そのため、本発明のcBN工具を断続的・衝撃的負荷が作用する高硬度鋼の断続切削加工に用いた場合でも、チッピング、欠損の発生は抑えられ、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明cBN焼結体のcBN粒子周りのAl膜の断面模式図を示す。
【図2A】FIBによる断面加工と、SIMによる断面画像取得の概略説明図を示す。
【図2B】図2Aに示された断面加工において、それぞれの奥行きにおける断面画像を示す。
【図3A】本発明のcBN焼結体における、cBN粒子、及び、該前記cBN粒子表面に存在する部分的に切れ間が形成されたAl膜のSIM断面画像の一例を示す。
【図3B】前記SIM断面画像によるcBN粒の周囲長とAl膜の切れ間長の測定例を示す。
【図4】2値化画像処理前のSIM断面画像、および2値化画像処理後のSIM断面画像を示す。
【図5】2値化画像処理のために作成したヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のcBN工具の実施形態について、以下に説明する。
【0013】
cBN焼結体:
cBN焼結体は、通常、硬質相成分と結合相成分からなるが、本実施形態のcBN工具の基材であるcBN焼結体は、硬質相成分として部分的な切れ間を持つAl膜によって被覆されたcBN粒子を含有する。
また、cBN焼結体中の他の構成成分としては、例えば、Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物及び硼化物、Alの窒化物及び硼化物等、cBN焼結体に通常含有される成分が含有される。
【0014】
cBNの平均粒径:
本実施形態で用いるcBN粒子の平均粒径は、0.5〜8μmの範囲に収まる平均粒径を持つ。
cBN粒子の平均粒径が、0.5μmより小さいと、cBN焼結体としての熱伝導率が低下するため、工具使用中の刃先温度が高くなり、その結果、硬度が低下し耐摩耗性が劣化する。一方、cBN粒子の平均粒径が、8μmを超えると、工具使用中に、工具表面のcBN粒子が脱落した場合、工具の面粗さが大きくなって、被削材表面の面粗さも低下するため望ましくない。
したがって、本実施形態で用いるcBN粒子の平均粒径は、0.5〜8μmの範囲内に収まる。
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合が50容積%未満の場合、工具としての耐欠損性が低下する。一方、cBN粒子の含有割合が80容積%を超える場合、結合相の含有割合が相対的に減少し、焼結性が低下する。以上の理由により、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、50〜80容積%であることが好ましい。
【0015】
Al膜が被覆形成されたcBN粒子の作製:
本実施形態で用いられる、部分的な切れ間を持つAl膜がで被覆されたcBN粒子は、例えば、以下の工程(a)、(b)で作製することができる。
【0016】
(a)まず、cBN粒子表面に、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、均一かつ薄膜のAl膜を被覆形成する。ALD法によれば、cBN粒子表面に、分子単位で一層ずつAlを成膜させていくことができる。そのため、cBN粒子の凝集を引き起こすことなく、均一でかつ薄膜のAl膜を被覆形成することができる。
より具体的にいえば、炉内に、例えば、平均粒径0.5〜8μmのcBN粒子を装入し、炉内を350℃程度に昇温し、Ar+Al(CHガス流入工程、Arガスパージ工程、Ar+HOガス流入工程、Arガスパージ工程を1サイクルとして、このサイクルを目標膜厚になるまで繰り返し行う。例えば、5時間かけて成膜することにより、膜厚50nmのAl膜をcBN粒子表面に被覆形成することができる。
なお、ここで得られたcBN粒子断面をSEM(Scanning Electron Microscopy)観察したところ、cBN粒子の表面には、均一で切れ間のないAl膜で被覆されていることが確認された。
【0017】
(b)次いで、前記(a)で作製した均一で薄膜のAl膜で被覆されたcBN粒子を、超硬合金製容器へ装入し、超硬合金製ボール(直径1mm)とともに所定の条件でボールミル混合を行うことによって、部分的な切れ間を持ち、所定の膜厚のAl膜によって被覆されたcBN粒子を作製することができる。
なお、混合するcBN粒子に対する超硬合金製ボールの重量比が大きくなると切れ間の形成割合は大きくなる。また、cBN粒子と超硬合金製ボールとの混合時間が長くなると切れ間の形成割合は大きくなる。
なお、ここで得られたcBN粒子断面をSEMにて観察したところ、前記(a)で作製したAl膜で被覆されたcBN粒子のAl膜に切れ間が形成されていることが確認された。

【0018】
前記の工程(a)で、まず、均一で切れ間のないAl膜で被覆されたcBN粒子を作製するのは、これに続く前記(b)の工程で、Al膜の膜厚を所望の値に制御することができるようにし、かつ、Al膜の切れ間長hと、cBN粒子の周囲長Hの割合(h/H)を、同様に、所望の値に制御し、かつ、Al膜が被覆されていない立方晶窒化ほう素粒子の数qと、焼結体に含まれる立方晶窒化ほう素粒子の数Qから得られる所定の部分的な切れ間を持った所定の膜厚のAl膜によって被覆されたcBN粒の含有割合(Q−q)/Qを所望の値に制御するようにするという理由による。
【0019】
Al膜の平均膜厚:
本実施形態でcBN粒子表面に被覆形成されるAl膜、即ち、部分的に切れ間が形成され、この切れ間には、cBN粒子表面が露出しているAl膜、の平均膜厚は、10〜90nmとすることが必要である。
Al膜の平均膜厚が10nm未満であると、ALD法で成膜しても均一な膜厚の制御が難しく、クレータ摩耗抑制効果が低減する。一方、Al膜の平均膜厚が90nmを超える場合には、焼結体におけるcBN粒子表面のAl膜内の引張残留応力が大となるため、工具として使用した際に、cBN粒子表面とAl膜の界面にクラックが生じやすくなり、耐チッピング性、耐欠損性を低下させることになる。
したがって、本実施形態では、cBN粒子表面に被覆形成されるAl膜の平均膜厚は、10〜90nmとする。
【0020】
酸化アルミニウム膜に形成する部分的な切れ間:
cBN粒子の表面をAl膜によって覆うことにより、クレータ摩耗抑制効果が得られることから、クレータ摩耗の発達による刃先強度の低下を防止できる。本実施形態において、cBN粒子の表面を覆うAl膜には、部分的に切れ間が形成されていることが必要である。該この切れ間では、cBN粒子表面がcBN焼結体の結合相成分(例えば、Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物及び硼化物、Alの窒化物及び硼化物等)と実質的に接している。
ここで、hは、立方晶窒化ほう素粒子の表面に沿って形成されている酸化アルミニウム膜の切れ間長であり、また、Hは、立方晶窒化ほう素粒子の表面の周囲長を表す。
切れ間の平均形成割合h/Hが0、すなわち切れ間がないと、cBN粒子の表面全体をAl膜で覆った状態になる。そのため、Al膜には引張残留応力が発生し、切削加工時の断続的・衝撃的負荷と前記引張残留応力との相乗作用により、cBN粒子とAl膜の界面にはクラックが発生しやすくなる。一方、切れ間の平均形成割合h/Hが0より大きい、すなわち切れ間があると、cBN粒子の表面を覆うAl膜に生じる引張残留応力が低減される。そのため、断続的かつ衝撃的負荷が作用する切削加工条件で用いた場合、cBN粒子とAl膜の界面にクラックが発生しにくくなり、チッピングの発生、欠損の発生を抑制できる。なお、平均形成割合h/Hが0.02以上0.08以下の範囲であると、クレータ摩耗抑制効果と欠損の発生の抑制効果がより高くなるので望ましい。
【0021】
酸化アルミニウム膜に部分的に切れ間が形成されている立方晶窒化ほう素粒子の割合:
Al膜が被覆されていない立方晶窒化ほう素粒子の数をq、焼結体に含まれる立方晶窒化ほう素粒子の数をQとする。
本実施形態において、部分的に切れ間が形成された酸化アルミニウム膜により被覆されたcBN粒子数の割合(Q−q)/Qが0.85以上、すなわち、焼結体中の全立方晶窒化ほう素粒子中の85%以上であると、クレータ摩耗抑制効果が高くなり望ましい。
【0022】
切れ間の平均形成割合h/H:
本実施形態では、cBN粒子表面に被覆したAl膜に形成した切れ間長hと、cBN粒子の表面の周囲長Hとの割合は、例えば、以下の様な測定法により算出することができる。
即ち、図1に模式図で示す焼結体を作製後、焼結体の断面を研磨し、さらに、図2Aに示すようにFIB(Focused Ion Beam)で断面を加工し、SIM(Scanning Ion Microscopy)により、図2Bに示すような奥行きの異なる複数の断面画像を取得する。
図2Aは、FIBで焼結体を断面加工する場合の例を示す。直方体形状の焼結体の正面の一部であって、縦および横の寸法がそれぞれ19μmの正方形の領域(観察領域)について、SIM観察像を取得する。
FIB加工は、奥行き方向で200nmごとに行い、その都度前記観察領域のSIM像を取得する。これは、奥行き方向で粒全体が前記複数の断面画像に収まっているcBN粒のデータを、後の分析に必要とされる充分数、取得するためである。断面加工する長さ(奥行き)は、(使用したcBN粒子の平均粒径+1μm)以上とする。
図2Bは、断面加工長さ(奥行き)0〜5.2μmにおける、それぞれの奥行きにおける断面画像を示す。
前記上述の手順で得られた断片的かつ複数の断面画像において、1つのcBN粒子の全容が分かるcBN粒子に注目する。ここで、1つのcBN粒子の全容が分かるとは、前記観察領域中に、そのcBN粒子全体像が含まれ、かつ奥行き方向で粒全体が前記複数の断面画像に収まっていることを意味する。そのcBN粒子について、cBN粒子の表面の周囲長Hと、切れ間の合計長さhを測定し、切れ間の形成割合h/Hを求める。さらに、少なくとも10個以上のcBN粒子について、同じく切れ間の形成割合h/Hを測定し、これらの平均値から、切れ間の平均形成割合h/Hの値を算出することができる。但し、cBN粒子表面にAl膜が被覆されていない場合は除く。
【0023】
より具体的に、切れ間の平均形成割合h/Hの測定・算出手順を述べると、以下のとおりである。
N = 測定するcBN粒子総数
n = 測定するcBN粒子の識別番号 ≦ N
M = cBN粒子nにおいて測定に使用する総取得画像数
m = cBN粒子nにおいて測定に使用する取得画像の識別番号 ≦ M
H = cBN粒の周囲長
h = Al膜の切れ間長
と定義した場合、
(a)まず、ある1つのcBN粒子nにおける1断面画像において長さ情報を測定する。
例えば、総取得画像数が25枚、cBN粒子の識別番号=1とする粒子が1画像目から21画像目で全容が分かり、8画像目において長さ情報を測定する場合(n=1、M=21、m=8)、
cBN粒の周囲長 = Hmn = H81 = a+b+c
Al膜の切れ間長 = hmn = h81 =a+b
となる(図3B参照)。
(b)次いで、ある1つのcBN粒子nにおける切れ間の形成割合を算出する。
例えば、総取得画像数が25枚、cBN粒子の識別番号=1とする粒子が1画像目から21画像目で全容が分かり、これらから切れ間の割合を算出する場合(n=1、M=21、m=1〜21)、
cBN粒子の表面の全周平均長さH
= [(H1n+H2n+・・・+Hmn)/M]
であるから、
= [(H11+H21+・・・+ H211)/21]
となる。
また、切れ間の合計平均長さh
= [(h1n+h2n+・・・+hmn)/M]
であるから、
= [(h11+h21+・・・+h211)/21]
となる。
よって、切れ間の形成割合h/Hは、
/H = h/H
となる。
(c)次いで、切れ間の平均形成割合を算出する。
例えば、cBN粒子を15個測定する場合(N=15、n=1〜15)、
切れ間の平均形成割合[h/H]
=[((h/H)+(h/H)+・・・+(h/H))/N]
である。
したがって、切れ間の平均形成割合[h/H]は、
[h/H]
=[((h/H)+(h/H)+・・・+(h15/H15))/15]
から求めることができる。
【0024】
切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合の測定方法:
本実施形態では、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合は、例えば、以下の様な測定法により算出することができる。
即ち、図1に模式図で示す焼結体を作製後、焼結体の断面を研磨し、さらに、図2Aに示すようにFIBで断面を加工し、SIMにより、場所の異なる複数の断面画像を取得する。図2Aは、FIBで焼結体を断面加工する場合の例を示す。取得するSIM像は、直方体形状の焼結体の正面の一部であって、縦および横の寸法がそれぞれ19μmの正方形の領域(観察領域)について、SIM観察像を取得する。
FIB加工は、奥行き方向に200nm行い、観察領域のSIM像を取得する。FIB加工後の観察領域についてSIM像を取得するのは、FIB加工前の試料表面の汚れ等の影響を無くすためである。観察領域は、取得したSIM画像において、画像内で対角線を引いた際、対角線と接するcBN粒の数Qが10個以上とする。また、観察する領域は、場所が異なる領域で5場所以上とする。
前記上述の手順で得られた場所の異なる複数の断面画像において、各断面画像で対角線を引き、接したcBN粒子に注目する。各断面画像において対角線に接したcBN粒子数Qと、その中でAl膜がついていないcBN粒子数qを測定し、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子数の含有割合(Q−q)/Qを求める。さらに少なくとも4枚以上の場所の異なるSIM像について、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子数の含有割合(Q−q)/Qを求め、これらの平均値から、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子数の含有割合(Q−q)/Qを算出することができる。
【0025】
本発明の実施形態のcBN工具を作製するにあたり、前記上述の手順で作製した部分的に切れ間をもったAl膜で被覆されたcBN粒子を硬質相形成用原料粉末として用いる。さらに、主として結合相(バインダー)を構成する成分として、例えば、TiN粉末を少なくとも結合相形成用原料粉末として用いる。これら両原料粉末を所定配合組成になるように配合し、通常の超高圧高温条件下で焼結することにより、本実施形態のcBN焼結体を作製する。このcBN粒子表面は、部分的に切れ間が形成されたAl膜で被覆される。該この切れ間では、cBN粒子表面がcBN焼結体の結合相成分(例えば、Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物及び硼化物、Alの窒化物及び硼化物等)と実質的に接しているので、cBN粒子相互の凝集を防止することができる。その結果、cBN焼結体全体にわたり、cBNが均一に分散したcBN焼結体を作製することができる。
cBN焼結体中の他の構成成分としては、cBN焼結体に通常含有される成分、即ち、周期律表4a、5a、6a族元素の窒化物、炭化物、硼化物、酸化物ならびにこれらの固溶体からなる群の中から選択された少なくとも一種以上、が含有されても良い。
【0026】
図3Aに、本発明の実施形態のcBN焼結体における、cBN粒子、及び、このcBN粒子表面に存在する部分的に切れ間が形成されたAl膜のSIM断面画像の一例を示す。
また以下に、図3Bを参照して、前記画像から測定される[Al膜の切れ間長]、[cBN粒とAl膜が接する長さ]、および[cBN粒の周囲長]の相互関係を示す。
[cBN粒とAl膜が接する長さ]= [cBN粒の周囲長]−(a+b)
[Al膜の切れ間長さ] = a+b
【0027】
立方晶窒化ほう素粒子の断面画像の2値化:
前記断面観察により得られる断面画像は、グレースケール像であり、それぞれの画素が多段階の濃淡情報(画素値)を有している。本実施形態では、前記断面画像は8ビットのグレースケール像であり、それぞれのピクセルは256段階(0から255)の濃淡情報を持つ。
前記Al膜の切れ間長さを測定するためには、前記Al膜の切れ間の形成されている領域と、前記Al膜の切れ間の形成されていない領域を明確に区別する必要がある。そのためには、上記グレースケール像に対して画像処理を行い、2値化された画像を得る必要がある。
図4には、2値化画像処理前のSIM断面画像、および2値化画像処理後のSIM断面画像を示す。
【0028】
この2値化画像処理を行うためには、数学的処理により2値化のために必要な閾値をまず算出し、この閾値を境界値として画像処理を行い、cBN粒子の表面に形成されたAl膜と、このAl膜が形成されていない領域とを区別する。
【0029】
この2値化画像処理は、以下の手順で行われる。まず、取得されたグレースケール画像の外周4辺で、画像の内側へ向けて縦横の各ピクセル数の2%にあたるピクセル分を取り除く。次に、この外側を切り取ったグレースケール画像について、縦軸を画素数、横軸を画像値としてヒストグラムを生成する。このヒストグラム生成時に、画像の画素値255あるいは0が、最大画素数とならないように明るさとコントラストを調整する。ヒストグラムの最大値が50から150の間に入ることが望ましい。
【0030】
上記の手順で得られるヒストグラムの例を図5に示す。図5の上段および下段に示されたヒストグラムは、同じデータに基づいて作成されたヒストグラムである。上段のヒストグラムでは、縦軸である画素数がリニアスケールで表示してある。下段のヒストグラムでは、縦軸がログスケールで示してある。ログスケールのヒストグラムは、後述する最小画素値および最大画素値の説明を容易にするために示した。
【0031】
次に、作成されたヒストグラムを用いて、それぞれの画素値間で比較した場合の、最大画素数を決定する。すなわち、上記ヒストグラムにおいて、最も高さの高い(画素数が多い)バーを決定する。そして、この画素数に0.01を乗じて、最大画素数の1%に相当する値を算出する。
次に、この算出された最大画素数の1%の値を基点として、上記ヒストグラムの横軸に対して平行な線を引く。図5では、この平行線は、水平な点線で示されている。
そして、この平行線と上記ヒストグラムとの交点であって、画素値0から最も近い値を最小画素値とし、画素値255から最も近い値を最大画素値とする。
次に、前記最大画素値から前記最小画素値を減算し、差分値を得る。次に、この差分値に0.75を乗算する。
最後に、前記最大画素値から、この0.75を乗算した差分値を減算し、2値化処理のための閾値を得る。
2値化処理では、前記閾値よりも小さい画素値を持つ画素は黒い画素へと変換され、前記閾値よりも大きい画素値を持つ画素は白い画素へと変換される。
【0032】
以下に、本発明のcBN工具を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0033】
部分的に切れ間を持つAl膜で被覆されたcBN粒子の作製:
(a)平均粒径0.5〜8μmのcBN粒子を基材とし、この粒子表面に、ALD(Atomic Layer Deposition)法により、均一かつ薄膜のAl膜を被覆形成した。
より具体的にいえば、炉内に、例えば、平均粒径3μmのcBN粒子を装入し、炉内を350℃程度に昇温した。次に、その炉内へ、成膜用ガスとして、Al(CHとHOガスを、また、パージ用ガスとしてArガスを使用し、(i)Ar+Al(CHガス流入工程、(ii)Arガスパージ工程、(iii)Ar+HOガス流入工程、(iv)Arガスパージ工程を行った。この(i)から(iv)の工程を1サイクルとして、このサイクルを所望膜厚に応じて繰り返し行った。1〜12時間かけて成膜することにより、各所望の膜厚のAl膜を均一にcBN粒子表面に被覆形成した。
なお、前記上述の手順で得られたAl膜で被覆されたcBN粒子について、断面をSEM(Scanning Electron Microscopy)を用いて観察したところ、cBN粒子表面に均一かつ薄膜のAl膜で被覆されていることが確認された。
(b)次いで、前記(a)で作製した均一かつ薄膜のAl膜がその表面に被覆形成されたcBN粒子を、超硬合金製容器内へ装入した。そこへ有機溶剤を加え、超硬合金製ボール(直径1mm)とともにボールミルの回転数50rpmでボールミル混合を行った。cBN粒子表面には、所定膜厚を有し、所定の切れ間割合の切れ間を有するAl膜が形成された。この切れ間には、cBN粒子表面が露出していた。所定の切れ間を持った所定の膜厚のAl膜によって被覆されたcBN粒を所定の割合含有するcBN粒子粉末を作製した。
なお、混合したcBN粒子と超硬合金製ボールの割合は、重量比で1:10〜20となるように調整した。また、混合時間は、0.25〜1.5時間となるように調整した。
【0034】
原料粉末として、前記上述の手順で作製した、部分的に切れ間が形成されたAl膜で被覆されたcBN粒子粉末と、TiN粉末、Al粉末、TiAl粉末、Al粉末を用意し、これら原料粉末を、cBN粒子粉末の含有量が50容積%となるように配合した。前記TiN粉末、Al粉末、TiAl粉末、Al粉末のいずれも、0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有する。有機溶剤中で超音波撹拌機により混合し、乾燥した後、油圧プレスにて成形圧120MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形した。ついでこの成形体を、圧力:1Pa以下の真空雰囲気中、1000℃で30分間保持して熱処理し、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体とした。次に、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入した。次にこれらを、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1500℃、保持時間:30分間の条件で超高圧高温焼結し、cBN焼結体を得た。こうして得られた円板形状のcBN焼結材を、ワイヤー放電加工機で所定寸法に切断し、Co:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格CNGA120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ag:残りからなる組成を有するAg系ろう材を用いてろう付けした。その後、上下面および外周研磨、ホーニング処理を施すことにより、ISO規格CNGA120408のインサート形状をもった本発明cBN工具1から43を製造した。
【0035】
cBN粒子の平均粒径の測定方法:
前記上述の手順で得た各cBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡にてcBN焼結体組織を観察し、二次電子像を得た。得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析によって各cBN粒子の最長径を求め、各粒子の直径[μm]とした。
画像解析より求めた各粒子の直径を基に各粒子の体積を計算した。体積は、理想球と仮定して体積の計算を行った(体積=(4×π×半径)/3)。
縦軸を体積百分率[%]、横軸を直径[μm]としてグラフを描画させ、体積百分率が50%の値をcBN粒子の平均粒径とした。
画像は、200個程度の粒子が1画像内で分かる倍率が望ましく、3画像を前記方法にて処理し求めた値の平均値を測定結果とした。
表1に、これらの値を、それぞれ示す。
【0036】
なお、前記上述の手順で作製した本発明cBN工具1から43のcBN焼結体について、焼結体の断面を研磨し、さらに、FIBで断面を加工し、SIMにより、断面画像を取得した。画像は、画像に対角線を引いた場合、その対角線にcBN粒が10個以上接触する倍率が望ましい。例えば、平均粒径3μmのcBN粒を用いた場合、倍率は4000倍程度が望ましい。
cBN粒の全体を観察できるようにするために、FIB加工は、200nmごとに行い、また、断面加工する長さ(奥行き)は、使用したcBN粒子の平均粒径に1μmを足した値以上とした。
前記上述の手順で得られた断片的かつ複数の断面画像により、全容が把握できるcBN粒子に注目し、そのcBN粒子について、cBN粒子の周囲長と、切れ間長を測定し、切れ間の形成割合h/Hを求めた。さらに、他の15個のcBN粒子についても、同じくcBN粒子の周囲長と、切れ間長を測定し、それぞれのcBN粒子について切れ間の形成割合を求め、これらの平均値から、切れ間の平均形成割合h/Hの値を算出した。
cBN粒子の表面を被覆する部分的に切れ間が形成されたAl膜の膜厚については、前記で得られた断片的かつ複数の断面画像により、各断面画像に対角線を引き、対角線に接したcBN粒子に注目する。接した各cBN粒子の表面に被覆するAl膜の膜厚を少なくとも1画像当り5ヶ所測定し、その平均値からcBN粒の膜厚を求めた。さらに、他に対角線に接する複数のcBN粒子についても、同じくcBN粒子の表面に被覆するAl膜の膜厚を測定し、これらの平均値を求めることにより、その平均膜厚を求めた。
なお、前記上述の手順で作製した本発明cBN工具1から43のcBN焼結体について、焼結体の断面を研磨し、さらに、FIBで場所の異なる複数の断面を加工し、SIMにより、各断面画像を取得した。画像は、画像に対角線を引いた場合、その対角線にcBN粒が10個以上接触する倍率が望ましい。例えば、平均粒径3μmのcBN粒を用いた場合、倍率は4000倍程度が望ましい。
切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合については、前記上述の手順で得られた場所の異なる複数の断面画像により、各断面画像で対角線を引き、接したcBN粒子に注目する。各断面画像において、対角線に接したcBN粒子数Qと、その中でAl膜がついていないcBN粒子数qを測定し、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合(Q−q)/Qを求める。さらに他の5枚の場所の異なるSIM像についても、同じく切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合を求め、これらの平均値から、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合(Q−q)/Qを算出した。
表1に、これらの値を、それぞれ示す。
【0037】
【表1】



【0038】
比較のため、原料粉末として、Al膜を被覆形成していないcBN粒子粉末を用意した。また、切れ間を有さない本発明範囲外の平均膜厚のAl膜を被覆したcBN粒子粉末を用意した。また、切れ間を有する本発明範囲外の平均膜厚のAl膜を被覆したcBN粒子粉末を用意した。また、本発明範囲外のcBN平均粒径のcBN粉末上に切れ間を有さないAl膜を被覆したcBN粒子粉末を用意した。また、本発明範囲外のcBN平均粒径のcBN粉末上に切れ間を有するAl膜を被覆したcBN粒子粉末を用意した。本発明範囲以外の平均膜厚のAl膜を被覆したcBN粒子への切れ間形成については、平均膜厚が10nmより小さい場合は、混合したcBN粒子と超硬合金製ボールの割合が、重量比で1:10〜20、混合時間が0.08〜0.15時間となるように調整した。平均膜厚が90nmより大きい場合は、混合したcBN粒子と超硬合金製ボールの割合が、重量比で1:20〜40、混合時間が、最大で48時間となるように調整した。また、本発明範囲外のcBN平均粒径のcBN粉末上に厚み10nm〜90nmの範囲内に被覆したAl膜への切れ間形成については、本発明の場合と同様の条件を用いた。また、いずれも0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、Al粉末、TiAl粉末、Al粉末を用意し、これら原料粉末を、cBN粒子粉末の含有量が50容積%となるように配合した後、以降は、本発明の場合と同様な処理操作(混合、乾燥、成形、熱処理、予備焼結、焼結等)を行うことにより、比較例cBN工具44から73を製造した。
【0039】
前記上述の手順で作製した比較例44から73について、本発明cBN工具1から43の場合と同様に、cBN粒子の平均粒径を求めた。
表2に、これらの値を、それぞれ示す。
【0040】
なお、前記上述の手順で作製した比較例cBN工具44から73について、本発明cBN工具1から43の場合と同様にして、cBN粒子の平均粒径、切れ間の平均形成割合h/H、Al膜の平均膜厚、切れ間のあるAl膜で覆われたcBN粒子の含有割合(Q−q)/Qを求めた。
表2に、これらの値を、それぞれ示す。
【0041】
【表2】

【0042】
前記本発明cBN工具1から43、比較例cBN工具44から73について、表3に示す切削条件で、最大加工長7000mまでの切削加工試験を実施し、加工長100m毎にチッピング、欠損発生の有無を確認した。
表4に、前記切削加工試験の結果を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】



【0045】
表1から4に示される結果から、以下が示される。本発明cBN工具1から43では、cBN粒子表面に、部分的に切れ間が形成されたAl膜が被覆形成されている。これにより、cBN硬質相が焼結体中で均一に分散分布し、均質な工具特性が得られるだけでなく、cBN硬質相と結合相との界面密着強度が改善される。さらに、部分的に切れ間が形成されたAl膜に発生する引張残留応力は、切れ間が無いものと比べて大幅に低減される。したがって、断続的・衝撃的負荷が作用する高硬度鋼の断続切削加工に用いた場合でも、チッピング、欠損の発生は抑制され、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する。
これに対して、比較例cBN工具44から73では、cBN粒子表面にAl膜が形成されていないため、あるいは、本発明で規定する範囲外の平均膜厚のAl膜、本発明で規定する範囲外の切れ間の平均形成割合h/Hであるために、耐チッピング性、耐欠損性に劣り、いずれも短命である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述のように、この発明のcBN工具は、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれることから、高硬度鋼の断続切削以外の切削条件でも適用可能であり、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質相成分として立方晶窒化ほう素粒子を含有する立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具において、
前記立方晶窒化ほう素粒子の平均粒径は0.5〜8μmであり、
前記立方晶窒化ほう素粒子のうちには、その表面が、平均膜厚10〜90nmの酸化アルミニウム膜により被覆され、
前記酸化アルミニウム膜には部分的に切れ間が形成されている前記立方晶窒化ほう素粒子が含まれることを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具。
【請求項2】
酸化アルミニウム膜により被覆されている立方晶窒化ほう素粒子の断面画像を観察し、立方晶窒化ほう素粒子の表面に沿って形成されている酸化アルミニウム膜の切れ間の平均形成割合を求めた場合、0.02≦h/H≦0.08を満足することを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具。
但し、hは酸化アルミニウム膜の切れ間長、Hは立方晶窒化ほう素粒子の周囲長。
【請求項3】
表面が、平均膜厚10〜90nmの酸化アルミニウム膜により被覆され、前記酸化アルミニウム膜には部分的に切れ間が形成されている立方晶窒化ほう素粒子数の割合を求めた場合、(Q−q)/Q≧0.85を満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具。
但し、qは酸化アルミニウム膜が被覆されていない立方晶窒化ほう素粒子の数、Qは焼結体に含まれる立方晶窒化ほう素粒子の数。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75357(P2013−75357A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199070(P2012−199070)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【特許番号】特許第5126702号(P5126702)
【特許公報発行日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】