説明

竪型噴流メッキ装置

【課題】竪型噴流メッキ装置の電極交換を簡単にできるようにし、電極交換に伴う設備停止期間を短縮して生産性の向上を図ることができる、竪型噴流メッキ装置の上部給液装置及び上部排液装置を提供する。
【解決手段】電極2が配置された電極ボックス1内に電解液を供給する給液装置を受液部とノズル部に分割し、受液部を電極ボックスへ連通させて取り付けるとともに、給液配管と接続して水密構造とし、受液部の内部に幅方向の液供給を均一化するノズル部を着脱自在かつ位置決め可能に配置した構造とする。さらに、電解液を排液する排液装置も給液ノズルと同様に、電極ボックス1から電解液を排液する給液装置を受液部5と整流堰部に分割し、受液部5を電極ボックスへ連通させて取り付けるとともに、排液配管19と接続して水密構造とし、受液部5の内部に整流堰部を着脱自在かつ位置決め可能に配置した構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップ表面を電解処理する竪型噴流メッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極間を走行する金属ストリップの表面を電解処理することにより連続的に錫、クロム等を電解メッキするメッキ装置として、竪型噴流メッキ装置が利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図3に示す竪型噴流メッキ装置は、所定の間隔をおいて対向して配設した電極2間にストリップSを走行させて電解メッキを行うメッキ装置であって、電極ボックス1は、電極2の幅方向の両端部にサイドシールを配設するとともに、電極2の背面側に各々均圧室21を設け、かつ電極2にストリップ走行部11と均圧室21とを導通する多数の貫通穴を設けた電極2が配置される。
【0004】
電極ボックス1の上部には、電極2間へ電解液を供給する給液ノズル23と、電極2間から排出される電解液を集積し排出する排液ボックス24が固定されている。
竪型噴流メッキ装置の最下部には電解液の流出を防止するダムロール25とシール板26とから構成されるシール装置が設けられている。
【0005】
図4(a)に示すように、給液ノズル23は、上下方向に1次ノズル室27と2次ノズル室28とに仕切り壁29で分割し、1次ノズル室27のそれぞれに給液口30をそれぞれ設け、各ノズル室27,28間の仕切り壁29に中央から両側へ漸増する隙間を有するスリット31が設けられている。給液ノズル23は、給液ボックス32内に固定され、給液ボックス31は電極ボックス1の上部のフランジにボルトでパッキンを介して水密に固定されている。給液ノズル23の各給液口30には電解液を供給する給液配管が接続されている。
【0006】
図4(b)に示すように、排液ボックス24内には整流堰33が固定されている。排液ボックス24は電極ボックス1の上部のフランジにパッキンを介してボルトで水密に固定されている。排液ボックス24の排液口34には電解液を排出する排液配管34が接続されている。
【0007】
前記構成からなる竪型噴流メッキ装置は、電極間の電解液に強制的に流速を与えるとともに、電極間でのストリップのバタツキ・吸着を防止し高い電解電流密度を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−171495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載されている竪型噴流メッキ装置では、電極の消耗にともない電極の交換が行われる。電極の交換作業に際しては、電極を電極ボックス内から上方へ抜き取る必要があるために、上部の給液ノズル及び排液ボックスの取り外し・取り付け作業が必要となる。合わせて給液ボックスの給液口と給液配管との接続部の分解・接続作業、排液ボックスの排液口と排液配管との接続部の分解・接続作業が生じる。これらの分解・接続作業のため、電極の交換作業に長い期間を要することから、メッキ設備の停止期間が長くなって生産性の低下を招いている。
【0010】
そこで、本発明は、竪型噴流メッキ装置の電極交換を簡単にできるようにし、電極交換に伴う設備停止期間を短縮して生産性の向上を図ることができる、竪型噴流メッキ装置の上部給液装置及び上部排液装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は電極が配置された電極ボックス内に電解液を供給する給液装置を受液部とノズル部に分割し、受液部を電極ボックスへ連通させて取り付けるとともに、給液配管と接続して水密構造とし、受液部の内部に幅方向の液供給を均一化するノズル部を着脱自在かつ位置決め可能に配置した構造とする。
【0012】
さらに、電解液を排液する排液装置も給液ノズルと同様に、電極ボックスから電解液を排液する給液装置を受液部と整流堰部に分割し、受液部を電極ボックスへ連通させて取り付けるとともに、排液配管と接続して水密構造とし、受液部の内部に整流堰部を着脱自在かつ位置決め可能に配置した構造とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電極交換に際して、給液ノズル又は整流堰部分のみを分解・再組み立てし、外部からの接続配管の分解・再接続及び給液ノズル及び排液装置の分解・再組立作業を省略することで作業時間を大幅に短縮することが可能となりめっき設備の稼働時間の向上が図れる。
【0014】
また、本発明により、液漏洩を起こす接続部の分解をなくすことで液漏れの防止が可能であり、従来の電極交換後の再稼働時の液漏れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の上部給液装置の断面図、(b)は本発明の上部排液装置の断面図である。
【図2】本発明において給液ノズル又は整流堰を外した状態を示す斜視図である。
【図3】従来の竪型噴流メッキ装置の概略図である。
【図4】(a)は図3に示す給液ノズルの断面図、(b)は図3に示す排液装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明が適用される竪型噴流メッキ装置は、図3に示す従来の竪型噴流メッキ装置の給液ノズルと排液装置を除いた部分は実質的に同一であり、電極ボックスは電極の幅方向の両端部にサイドシールを配設するとともに、電極の背面側に各々均圧室を設け、かつ電極にストリップ走行部と均圧室とを導通する多数の貫通穴を設けた電極が配置される電極ボックスを備えている。竪型噴流メッキ装置の最下部には電解液の流出を防止するダムロール25とシール板26とから構成されるシール装置が設けられている。
【0018】
図1〜図2において、竪型噴流メッキ装置内に配置されている複数の電極ボックス1の上部には、電極2の間へ電解液を供給する上部給液装置3と、電極2の間から排出される電解液を排出する上部排液装置4が、ストリップSの下降ラインと上昇ラインに交互に固定されている。
【0019】
上部給液装置3は、四角形筒からなる電解液を受ける受液部5の下端が電極ボックス1の上部にパッキン6を介してボルト7により水密状態で支持され、電極ボックス1と連通している。受液部5は、側壁に形成された給液口8に給液用配管9が接続されている。受液部5内には給液ノズル10が着脱自在に嵌め込まれている。
【0020】
給液ノズル10は、上下方向にストリップ走行部11を挟んで一対の1次ノズル室12と一対の2次ノズル室13とが仕切り壁14で分割され、各1次ノズル室12に電解液が流入する液流入口16がそれぞれ設けられる。各ノズル室12,13の間の仕切り壁14には両側へ漸増する隙間を有するスリット15が設けられている。
液流入口16から流入した電解液は、ストリップ通路11、1次ノズル室12、スリット15、2次ノズル室13から噴流口17を通じて電極ボックス1内の電極2へ給液される。
【0021】
上部排液装置4は、上部給液装置3と同様に、四角形筒からなる電解液を受ける受液部5の下端が電極ボックス1の上部にパッキン6を介してボルト7により水密状態で支持され、電極ボックス1と連通している。
【0022】
受液部5は、側壁に形成された排液口18に排液用配管19が接続されている。受液部5内には、ストリップと対面して多数の孔を有する整流堰20が着脱自在に嵌め込まれている。
【0023】
なお、給液ノズル10又は整流堰20の受液部5への固定方法としては、例えば図示していない固定用ピンやボルト等で両者を固定する。
電極ボックス1から受液部5に流入した電解液は、整流堰20で整流されながら液流出口22から受液部5内へ流出し、受液部5の排液口18に接続された給液用配管19から排出される。
【0024】
前記構成において、電極2を交換する際には、上部給液装置3の受液部5から給液ノズル10を引き出す。給液ノズル10の引き出しにより、受液部5内において電極ボックス1の上部が開放されるので、電極2の抜き取りが可能となり、また、電極抜き取り後の電極の挿入が可能となる。受液部5の給液口8に接続されている給液用配管19は接続を外すことなくそのままの状態で電極交換作業ができるので、電極交換作業時間を短縮することができる。
【0025】
また、上部排液装置4についても、電極2を交換する際には、上部給液装置3と同様に、受液部5内から整流堰20を引き出すことにより、受液部5において電極ボックス1の上部が開放されるので、電極2の抜き取りが可能となり、また、電極抜き取り後の電極挿入が可能となる。受液部5の排液口18に接続されている排液用配管19は接続を外すことなくそのままの状態で電極交換作業ができるので、電極交換作業時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:電極ボックス 2:電極
3:上部給液装置 4:上部排液装置
5:受液部 6:パッキン
7:ボルト 8:給液口
9:給液用配管 10:給液ノズル
11:ストリップ走行部 12:1次ノズル室
13:2次ノズル室 14:仕切り壁
15:スリット 16:液流入口
17:噴流口 18:排液口
19:排液用配管 20:整流堰
21:均圧室 22:液流出口
23:供給ノズル 24:排液ボックス
25:ダムロール 26:シール板
27:1次ノズル室 28:2次ノズル室
29:仕切り壁 30:給液口
31:スリット 32:給液ボックス
33:整流堰 34:排液口
S:ストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極ボックス内に所定の間隔をおいて電極を対向して配設し、前記電極間へ電解液を供給する上部給液装置及び電極間から電解液を排液する上部排液装置が、それぞれ筒状の受液部を備え、それぞれの受液部が前記電極ボックスの上部と連通して水密状態で固定され、前記電極間にストリップを走行させて電解メッキを行う竪型噴流メッキ装置において、
前記上部給液装置の受液部の給液口が給液配管に接続されるとともに受液部内に給液ノズルが着脱自在に配置され、給液ノズルが受液部内に固定された時、給液ノズルの液流入口と給液口とが同位置に配設され、
前記上部排液装置の受液部の排液口が排液配管に接続されるとともに受液部内にストリップを包囲する多数の貫通穴を有する整流堰が着脱自在に配置されていることを特徴とする竪型噴流メッキ装置。
【請求項2】
受液部が電極ボックスの上部にパッキンを介してボルトにより固定されていることを特徴とする請求項1記載の竪型噴流メッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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