端子、端子付ガラス板及び移動体用端子付ガラス板
【課題】短時間で容易に取付けることのできる端子の提供を課題とする。
【解決手段】板状体12の表面に接触する脚部14と、この脚部14の端部から延ばされる基部15と、この基部15と板状体12との間の空隙に接着剤25を供給する接着剤供給部22が設けられている端子10において、接着剤供給部22は、板状体12に向かって凹ませた凹部18と、この凹部18に開けられ接着剤25を流し込むための穴部21とからなることを特徴とする。
【効果】凹部18に設けられた穴部21から接着剤25を注入する。細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤25の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤25の注入が短時間で行うことができることで、端子10の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【解決手段】板状体12の表面に接触する脚部14と、この脚部14の端部から延ばされる基部15と、この基部15と板状体12との間の空隙に接着剤25を供給する接着剤供給部22が設けられている端子10において、接着剤供給部22は、板状体12に向かって凹ませた凹部18と、この凹部18に開けられ接着剤25を流し込むための穴部21とからなることを特徴とする。
【効果】凹部18に設けられた穴部21から接着剤25を注入する。細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤25の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤25の注入が短時間で行うことができることで、端子10の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体に接着させて用いる端子の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両の窓ガラスに、ラジオやテレビ用のアンテナがプリントされている。これらのアンテナに給電を行う端子が、アンテナに接触するようにして、窓ガラスの表面に接着される(例えば、特許文献1(図7)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、端子100は、窓ガラスの表面に接着剤101を介して接着される略L字形状の基部102と、この基部102の両端から一体的に延ばされ窓ガラスに接触する脚部103、103とからなる。
【0004】
基部102を押し付けるようにして窓ガラスの表面上に配置し、押し付けた状態で接着剤101を流し込むことで、端子100は窓ガラスに接着される。押し付けながら接着させることで、脚部103、103を窓ガラスに付勢させた状態で接着させることができる。脚部103、103が窓ガラスに向かって付勢することで、端子100をアンテナに強く接触させることができる。
【0005】
ところで、(b)に示すように、端子100を接着させるには、基部102に開けられたスリット104、104から接着剤を流し込む。スリット104、104が細いため、接着剤を注入するのが困難であり、時間がかかる。
【0006】
この対策の一つとして、スリット104、104の幅を広げ、接着剤を注入する部位の面積を広げることが考えられる。
しかし、端子の大きさを変えずに接着剤を注入する部位の面積を広げると、接着剤と端子との接着面積が少なくなる。接着面積が少なくなることで、端子の接着力が弱くなる。即ち、図面白抜き矢印で示すように、引っ張り方向へ力が加わった場合に、容易に窓ガラスの表面から剥離するようになる。
【0007】
所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることができる端子の提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−105036公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることのできる端子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る端子は、板状体の表面に接触する脚部と、この脚部の端部から板状体の表面に対して略平行に延ばされる基部と、この基部と板状体との間の空隙に接着剤を供給する接着剤供給部が設けられている端子において、
接着剤供給部は、基部を板状体に向かって凹ませた凹部と、この凹部に開けられ接着剤を流し込むための穴部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る端子は、凹部は、球面形状であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係るガラス板は、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る移動体用端子付ガラス板は、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、接着剤供給部は、板状体に向かって凹ませた凹部と、この凹部に開けられ接着剤を流し込むための穴部とからなる。凹部に設けられた穴部から接着剤を注入する。細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤の注入が短時間で行うことができることで、端子の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【0015】
一方、凹部が設けられることで、接着剤と端子との接触面積を大きくすることができる。大きな穴部を設けた場合であっても、接着剤と端子との接触面積を所定の大きさ以上に保つことができる。接着剤と端子とが所定の大きさ以上の接触面積を有することで、接着強度を所定の強度に保つことができる。
即ち、本発明に係る端子によれば、所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることができる。
【0016】
加えて、凹部を設けることで、端子と接着剤との接触面積を広くすることができる。接触面積を広くできるため、大きな穴部を設けた場合であっても、十分な接触面積を得ることができる。穴部を大きくすることで、穴部近傍での接着剤の折れや剥離を防止することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、凹部は、球面形状である。穴部から注入される接着剤は、球面形状に沿って広がる。球面形状に沿って広がるため、接着剤を凹部の周りに均一に配置させることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、窓ガラスに、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されている。端子は、凹部を有し、この凹部に向かって接着剤が注入される。凹部内に接着剤を収めることで、基部から接着剤が突出することを防ぐことができる。基部から接着剤が突出しないことで、外観性が高まる。
加えて、基部から接着剤が突出しないことで、接着剤が給電部に繋がれたハーネスに干渉しなくなる。
【0019】
請求項4に係る発明では、移動体用窓ガラスに、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されている。移動体用窓ガラスは、外部からの影響で振動を頻繁に受けるため、特に高い強度で端子を接着させる必要がある。加えて、移動体用窓ガラスには、環境を汚染しない手段で、端子を接着させることが望まれている。本発明に係る移動体用窓ガラスによれば、半田を用いることなく、高い強度で端子を接着させており、望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る端子をガラス板の表面に設置した状態を説明する図である。
【図2】実施例1に係る端子の断面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】ガラス板への端子の接着方法を説明する図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る端子の作用説明図である。
【図7】実施例2に係る端子を説明する図である。
【図8】実施例3に係る端子を説明する図である。
【図9】実施例4に係る端子を説明する図である。
【図10】参考例に係る端子を説明する図である。
【図11】変更例に係る端子を説明する図である。
【図12】更なる変更例に係る端子を説明する図である。
【図13】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0022】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、端子10は、表面に給電対象物である導電体11がプリントされた自動車用の窓ガラス12に接着される。
【0023】
端子10は、自動車用の窓ガラスの他、建築用ガラス板等、任意の板状体に用いることができる。
また、導電体としては、アンテナの他、ヒータ等、任意のものを用いることができる。
以下、自動車用窓ガラスに導電体がプリントされている場合を例に説明する。
端子10の詳細を次図以降で説明する。
【0024】
図2に示すように、端子10は、窓ガラス(図1、符号12)の表面に接触する脚部14、14と、これらの脚部14、14の端部から窓ガラスの表面に対して略平行に延ばされる基部15と、この基部15に溶接され車内の給電部材に繋がれる給電部16とからなる。
【0025】
基部15に溶接された給電部16の下面に、位置決め部材としての両面テープが接着される位置決め部材接触部17が設けられる。位置決め部材接触部17を挟むようにして、球面形状の凹部18、18が設けられ、これらの凹部18、18のそれぞれの中心に接着剤を注入するための穴である穴部21、21が設けられる。
凹部18と穴部21とから、接着剤を供給するための接着剤供給部22はなる。
【0026】
図3に示すように、脚部14は、平面視でフォーク状に形成され、穴部21の直径D1は、基部15の幅Wの0.25倍とされる。即ち、D1=0.25Wである。
【0027】
穴部21の直径D1は、基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍であることが望ましい。
穴部21の直径D1が、基部15の幅Wの0.1倍よりも小さいと、端子に振動や引張り荷重が加わった場合に、穴部近傍で接着剤の折れや剥離が生じやすくなる。
一方、穴部21の直径D1が、基部15の幅Wの0.8倍を超えると、基部15と接着剤との接触面積を十分に確保することが困難になる。接触面積が小さくなることで、接着強度が弱まる。
【0028】
穴部21の直径D1が、基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍であれば、接着剤を注入する作業が行いやすく、基部15の強度を十分に保つことができる。
【0029】
穴部21を囲う凹部18の直径D2は、穴部21の直径D1より大きく、且つ基部15の幅Wに対して0.2倍〜0.9倍であることが望ましい。
【0030】
なお、穴部21の直径D1は、0.15mm以上である必要がある。穴部21の直径D1が基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍の範囲に入る場合であっても、穴部21の直径D1が1.5mm未満であると接着剤が注入し難くなるからである。
即ち、穴部21の直径D1は、1.5mm以上であり、且つ基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍であることが望ましい。
端子の窓ガラスへの接着方法を次図で説明する。
【0031】
図4(a)に示すように、まず、位置決め部材接触部17に両面テープ24を接着させる。
次に、(b)に示すように、導電体11がプリントされた窓ガラス12の上面に端子10を移動させ、給電部16を押さえつけるようにして両面テープ24を窓ガラス12の上面に接着させる。
【0032】
(c)に示すように、窓ガラス12の上面に接着させた端子10の穴部21に接着剤25を注入する。両面テープ24と共に接着剤25を用いて端子10を窓ガラス12の上面に接着させることで、端子10の窓ガラス12への取付作業が終了する。
窓ガラス12へ接着された端子10について詳細を次図で説明する。
【0033】
図5に示すように、端子10は、両面テープ24及び接着剤25、25を介して窓ガラス12の上面に接着される。両面テープ24を接着させる際に、端子10を押し付けながら接着させたことで、脚部14、14は導電体11に向かって付勢した状態で接着される。付勢した状態で接着されることで、高い強度で脚部14、14が導電体11に接触する。
【0034】
凹部18に設けられた穴部21から接着剤25を注入するため、細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤25の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤25の注入が短時間で行うことができることで、端子10の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
このようにして取り付けられる端子10の作用について次図で詳細に説明する。
【0035】
図6(a)の比較例に示すように、端子110に対して、引張り方向(白抜き矢印参照)に向かって力が加わることがある。基部111の上面に接着剤113aが配置されることで、特に穴部112及び穴部112近傍の基部111aでは、接着剤113aが端子110の抜けを防ぐように作用する(矢印参照)。
【0036】
穴部112の直径が大きいほど、端子110の抜けを防止しやすくなる。即ち、端子110の接着強度を上げることができる。しかし、穴部112の直径を大きくしすぎると、基部111と接着剤113との接触面積が減少し、却って接着強度が弱まる。
【0037】
一方、穴部112の直径を小さくすると、接触面積を増加させることができる。しかし、穴部112が小さいと、引張り方向に力が加わった場合に、穴部112近傍で接着剤113の折れや剥離が生じやすくなる。
【0038】
(b)に示すように、実施例に係る端子10によれば、凹部18を設けて、この凹部18に開けられた穴部21から接着剤25を注入する。凹部18が設けられることで、接着剤25と端子10との接触面積を大きくすることができる。大きな穴部21を設けた場合であっても、接着剤25と端子10との接触面積を所定の大きさ以上に保つことができる。接着剤25と端子10とが所定の大きさ以上の接触面積を有することで、接着強度を所定の強度に保つことができる。
即ち、本発明に係る端子10によれば、所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることができる。
【0039】
加えて、本発明による端子10によれば、大きな穴部21を設けることができる。大きな穴部21を設けることができることで、より確実に端子10の抜け、即ち接着剤25からの剥離を防ぐことができる。
【0040】
さらに、凹部18内に接着剤25aを収めることで、基部15から接着剤25aが突出することを防ぐことができる。基部15から接着剤25aが突出しないことで、外観性が高まる。
【0041】
加えて、凹部18を設けることで、端子10と接着剤25との接触面積を広くすることができる。接触面積を広くできるため、大きな穴部21を設けた場合であっても、十分な接触面積を得ることができる。穴部21を大きくすることで、穴部21近傍での接着剤25の折れや剥離を防止することができる。
【0042】
さらに、凹部18を設けることで端子10の接着に必要な接着剤25の量が減る。接着剤25の量が減ることで、端子付窓ガラス(図1、符号12)の製造コストの低減を図ることができる。また、接着剤25の量が減ることで、接着剤25を注入するのに必要な時間や接着剤25が硬化するのに必要な時間を短縮でき、端子付き窓ガラス(端子付ガラス板又は移動体用端子付ガラス板)の製造時間を短縮することができる。
【0043】
加えて、凹部18は、球面形状である。穴部21から注入される接着剤25は、球面形状に沿って広がる。球面形状に沿って広がるため、接着剤25を凹部18の周りに均一に配置させることができる。
本発明に係る端子の別実施例について次図以降で説明する。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7に示すように、実施例2に係る端子30では、接着剤供給部31は、基部32に接着剤を供給するために開けられた方形の穴部33と、この穴部33を中心に略X字状に切欠き34が設けられ、これらの切欠き34に挟まれた部位を窓ガラス側(図面裏面)に押し込むことで形成された凹部35とからなる。
穴部33が方形である場合は、各辺が1.5mm以上であると、接着剤の注入が容易である。
【0045】
このような形状に接着剤供給部31を形成した場合も、細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤の注入が短時間で行うことができることで、端子の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【0046】
なお、予め穴部33を設けておく他に、後から穴部を設けることもできる。
即ち、まず、切欠きを略X字状に設け、これらの切欠きに挟まれた略三角形の部位を窓ガラス側に押し込むことで斜面を形成する。これらの斜面で囲われた部位が凹部である。また、略三角形の部位を押し込むことで、三角形の頂点で囲われた隙間が生じる。この隙間を接着剤を注入するための穴部とすることができる。このような方法で製造した場合も、同様の効果を得ることができる。
実施例3に係る端子を次図で説明する。
【実施例3】
【0047】
図8(a)に示すように、実施例3に係る端子40では、接着剤供給部41は、窓ガラスに向かって(図面裏面側)球面状に凹まされる凹部18と、この凹部18の底部に設けられ接着剤を供給する穴部21と、この穴部21を囲うようにして開けられた複数(この例では4つ)の補強穴部42とからなる。
【0048】
(b)に示すように、穴部21から接着剤25を注入する。球面形状に沿って広がった接着剤25は、(c)に示すように、補強穴部42を通過して凹部18の上面に流入する。
【0049】
所定の高さまで達した接着剤25が、補強穴部42から凹部18の上面に流入するため、凹部18と窓ガラス12との間に均一に接着剤25を塗布することができる。
また、補強穴部42から接着剤25が凹部18に流入するため、所定の量の接着剤25が注入されたことを容易に確認することができる。
【0050】
さらに、補強穴部42が設けられることで、より確実に端子40の抜けを防ぐことができる。
実施例4に係る端子を次図で説明する。
【実施例4】
【0051】
図9に示すように、実施例4に係る端子50では、凹部51は、球面状に凹せ、且つ絞り加工が施された。即ち、凹部51は、全体として球面状とされつつ、表面が波形状に形成されている。
【0052】
表面が波形状とされることで、接着剤25との接触面積をさらに大きく取ることができ、端子50の接着強度をより高めることができる。
【0053】
なお、凹部51には、断面視波形状の他、ポンチを押付けることで形成される窪み(ディンプル)形状、薬品を塗布することで形成される粗面等、凹部51と接着剤25との接触面積を増加させるためのあらゆる手段を講じることができる。
【0054】
図10(a)に示すように、参考例に係る端子60は、ガラス((b)、符号70)の表面に接触する脚部61、61と、これらの脚部61、61の端部から窓ガラスの表面に対して略平行に延ばされる基部62と、この基部62に溶接され車内の給電部材に繋がれる給電部63とからなる。
【0055】
基部62に溶接された給電部63の下面に、両面テープが接着される位置決め部材接触部64が設けられる。基部62に開けられた窓状開口部65と、この窓状開口部65の近傍から基部62の幅方向に向かって延ばされる延長部66、66とを有する。
【0056】
延長部66、66の先端66a、66aは、それぞれ半円形状に形成されている。
端子60は、延長部66、66を基部62の裏面側(図面裏面側)に向かって折曲げることで形成される。
【0057】
(b)に示すように、先端66a、66aが接触するように延長部66、66を折り曲げ、折曲げ形状部68を形成する。
先端66a、66aが接触することで、接着剤を注入するための小孔69が形成される。即ち、折曲げ形状部68に小孔69が形成される。窓状開口部65から接着剤をガラス70に向かって注入することで、端子60がガラス70に接着される。ガラス70の表面には、被給電部71がプリントされている。端子60の接着剤供給部72は、折曲げ形状部68と、小孔69とからなる。
【0058】
(b)のc−c線断面図である(c)に示すように、窓状開口部65から小孔69を介して接着剤73を注入する。細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤73の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤73の注入が短時間で行うことができることで、端子60の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【0059】
さらに、折曲げ形状部68内に接着剤73を収めることで、基部62から接着剤73が突出することを防ぐことができる。基部62から接着剤73が突出しないことで、外観性が高まる。
【0060】
さらに、折曲げ形状部68を設けることで端子60の接着に必要な接着剤73の量が減る。接着剤73の量が減ることで、端子付ガラス板の製造コストの低減を図ることができる。また、接着剤73の量が減ることで、接着剤73を注入するのに必要な時間や接着剤73が硬化するのに必要な時間を短縮でき、端子付窓ガラスの製造時間を短縮することができる。
なお、接着剤73を注入する前の工程については、図4を参照。
【0061】
図11及び図12に示すように、位置決めを行うためには、両面テープ(図4、符号24)の他、スペーサ81、81を用いることもできるし、給電部16の底部82を窓ガラス12に向かって突出させ、突起部83、83を形成することによってもできる。突起部83、83は、底部82に例えば4つ設けられる。
【0062】
位置決め部材としてスペーサ81、81を用いる場合は、以下のような手順で端子10を窓ガラス12へ接着させる。即ち、窓ガラス12側へ向かって、基部15を押し付ける。押付けることで、窓ガラス12とスペーサ81及びスペーサ81と位置決め部材接触部17とが接触する。これらが接触した状態で、接着剤25を注入する。接着剤25を注入し硬化させることで、窓ガラス12へ端子10を接着させることができる。
【0063】
給電部16の底部82に突起部83、83を形成する場合も同様の方法により、ガラス板12に端子10を接着させることができる。
スペーサ81と位置決め部材接触部17とは、予め両面テープ等によって接着させておいてもよい。
【0064】
スペーサ81や突起部83を用いた場合には、高さ方向への位置決めを行うことができる。
水平方向及び高さ方向の両方へ正確に位置決めを行う場合には、スペーサ81の底面に両面テープを接着させ、両面テープを介してスペーサ81を窓ガラス12に接着させることもできる。
【0065】
尚、本発明に係る端子は、移動体用窓ガラスの他、建築用窓ガラス、曇りガラスと透明なガラスとを切り替えることのできるパーテーションガラス、スクリーンとして用いるガラス、冷蔵ショーケース用ガラス等、種々のガラス板に適用可能であり、これらのものに用途は限定されない。
【0066】
即ち、端子付ガラス板とは、本発明に係る端子を接着させたガラス板をいう。移動体用端子付ガラス板とは、端子付きガラス板のうち、特に車両、電車、飛行機等の移動体に搭載されるものをいう。
【0067】
ただし、移動体用ガラス板は、外部からの影響で振動を頻繁に受けるため、特に高い強度で端子を接着させる必要がある。加えて、移動体用ガラス板は、環境を汚染しない手段で、端子を接着させることが望まれている。本発明に係る端子を移動体用ガラス板に用いることで、半田を用いることなく、高い強度で端子を接着させることができ、移動体用ガラス板に用いることが特に望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の端子は、車両の窓ガラスにプリントされた導電体への給電に好適である。
【符号の説明】
【0069】
10、30、40、50…端子、12…窓ガラス(板状体)、14…脚部、15、32…基部、18、35、51…凹部、21、33…穴部、22、31、41…接着剤供給部、24…両面テープ、25…接着剤。
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体に接着させて用いる端子の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両の窓ガラスに、ラジオやテレビ用のアンテナがプリントされている。これらのアンテナに給電を行う端子が、アンテナに接触するようにして、窓ガラスの表面に接着される(例えば、特許文献1(図7)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図13(a)に示すように、端子100は、窓ガラスの表面に接着剤101を介して接着される略L字形状の基部102と、この基部102の両端から一体的に延ばされ窓ガラスに接触する脚部103、103とからなる。
【0004】
基部102を押し付けるようにして窓ガラスの表面上に配置し、押し付けた状態で接着剤101を流し込むことで、端子100は窓ガラスに接着される。押し付けながら接着させることで、脚部103、103を窓ガラスに付勢させた状態で接着させることができる。脚部103、103が窓ガラスに向かって付勢することで、端子100をアンテナに強く接触させることができる。
【0005】
ところで、(b)に示すように、端子100を接着させるには、基部102に開けられたスリット104、104から接着剤を流し込む。スリット104、104が細いため、接着剤を注入するのが困難であり、時間がかかる。
【0006】
この対策の一つとして、スリット104、104の幅を広げ、接着剤を注入する部位の面積を広げることが考えられる。
しかし、端子の大きさを変えずに接着剤を注入する部位の面積を広げると、接着剤と端子との接着面積が少なくなる。接着面積が少なくなることで、端子の接着力が弱くなる。即ち、図面白抜き矢印で示すように、引っ張り方向へ力が加わった場合に、容易に窓ガラスの表面から剥離するようになる。
【0007】
所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることができる端子の提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−105036公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることのできる端子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る端子は、板状体の表面に接触する脚部と、この脚部の端部から板状体の表面に対して略平行に延ばされる基部と、この基部と板状体との間の空隙に接着剤を供給する接着剤供給部が設けられている端子において、
接着剤供給部は、基部を板状体に向かって凹ませた凹部と、この凹部に開けられ接着剤を流し込むための穴部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る端子は、凹部は、球面形状であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係るガラス板は、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る移動体用端子付ガラス板は、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、接着剤供給部は、板状体に向かって凹ませた凹部と、この凹部に開けられ接着剤を流し込むための穴部とからなる。凹部に設けられた穴部から接着剤を注入する。細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤の注入が短時間で行うことができることで、端子の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【0015】
一方、凹部が設けられることで、接着剤と端子との接触面積を大きくすることができる。大きな穴部を設けた場合であっても、接着剤と端子との接触面積を所定の大きさ以上に保つことができる。接着剤と端子とが所定の大きさ以上の接触面積を有することで、接着強度を所定の強度に保つことができる。
即ち、本発明に係る端子によれば、所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることができる。
【0016】
加えて、凹部を設けることで、端子と接着剤との接触面積を広くすることができる。接触面積を広くできるため、大きな穴部を設けた場合であっても、十分な接触面積を得ることができる。穴部を大きくすることで、穴部近傍での接着剤の折れや剥離を防止することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、凹部は、球面形状である。穴部から注入される接着剤は、球面形状に沿って広がる。球面形状に沿って広がるため、接着剤を凹部の周りに均一に配置させることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、窓ガラスに、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されている。端子は、凹部を有し、この凹部に向かって接着剤が注入される。凹部内に接着剤を収めることで、基部から接着剤が突出することを防ぐことができる。基部から接着剤が突出しないことで、外観性が高まる。
加えて、基部から接着剤が突出しないことで、接着剤が給電部に繋がれたハーネスに干渉しなくなる。
【0019】
請求項4に係る発明では、移動体用窓ガラスに、請求項1又は請求項2記載の端子が接着されている。移動体用窓ガラスは、外部からの影響で振動を頻繁に受けるため、特に高い強度で端子を接着させる必要がある。加えて、移動体用窓ガラスには、環境を汚染しない手段で、端子を接着させることが望まれている。本発明に係る移動体用窓ガラスによれば、半田を用いることなく、高い強度で端子を接着させており、望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る端子をガラス板の表面に設置した状態を説明する図である。
【図2】実施例1に係る端子の断面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】ガラス板への端子の接着方法を説明する図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る端子の作用説明図である。
【図7】実施例2に係る端子を説明する図である。
【図8】実施例3に係る端子を説明する図である。
【図9】実施例4に係る端子を説明する図である。
【図10】参考例に係る端子を説明する図である。
【図11】変更例に係る端子を説明する図である。
【図12】更なる変更例に係る端子を説明する図である。
【図13】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0022】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、端子10は、表面に給電対象物である導電体11がプリントされた自動車用の窓ガラス12に接着される。
【0023】
端子10は、自動車用の窓ガラスの他、建築用ガラス板等、任意の板状体に用いることができる。
また、導電体としては、アンテナの他、ヒータ等、任意のものを用いることができる。
以下、自動車用窓ガラスに導電体がプリントされている場合を例に説明する。
端子10の詳細を次図以降で説明する。
【0024】
図2に示すように、端子10は、窓ガラス(図1、符号12)の表面に接触する脚部14、14と、これらの脚部14、14の端部から窓ガラスの表面に対して略平行に延ばされる基部15と、この基部15に溶接され車内の給電部材に繋がれる給電部16とからなる。
【0025】
基部15に溶接された給電部16の下面に、位置決め部材としての両面テープが接着される位置決め部材接触部17が設けられる。位置決め部材接触部17を挟むようにして、球面形状の凹部18、18が設けられ、これらの凹部18、18のそれぞれの中心に接着剤を注入するための穴である穴部21、21が設けられる。
凹部18と穴部21とから、接着剤を供給するための接着剤供給部22はなる。
【0026】
図3に示すように、脚部14は、平面視でフォーク状に形成され、穴部21の直径D1は、基部15の幅Wの0.25倍とされる。即ち、D1=0.25Wである。
【0027】
穴部21の直径D1は、基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍であることが望ましい。
穴部21の直径D1が、基部15の幅Wの0.1倍よりも小さいと、端子に振動や引張り荷重が加わった場合に、穴部近傍で接着剤の折れや剥離が生じやすくなる。
一方、穴部21の直径D1が、基部15の幅Wの0.8倍を超えると、基部15と接着剤との接触面積を十分に確保することが困難になる。接触面積が小さくなることで、接着強度が弱まる。
【0028】
穴部21の直径D1が、基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍であれば、接着剤を注入する作業が行いやすく、基部15の強度を十分に保つことができる。
【0029】
穴部21を囲う凹部18の直径D2は、穴部21の直径D1より大きく、且つ基部15の幅Wに対して0.2倍〜0.9倍であることが望ましい。
【0030】
なお、穴部21の直径D1は、0.15mm以上である必要がある。穴部21の直径D1が基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍の範囲に入る場合であっても、穴部21の直径D1が1.5mm未満であると接着剤が注入し難くなるからである。
即ち、穴部21の直径D1は、1.5mm以上であり、且つ基部15の幅Wの0.1倍〜0.8倍であることが望ましい。
端子の窓ガラスへの接着方法を次図で説明する。
【0031】
図4(a)に示すように、まず、位置決め部材接触部17に両面テープ24を接着させる。
次に、(b)に示すように、導電体11がプリントされた窓ガラス12の上面に端子10を移動させ、給電部16を押さえつけるようにして両面テープ24を窓ガラス12の上面に接着させる。
【0032】
(c)に示すように、窓ガラス12の上面に接着させた端子10の穴部21に接着剤25を注入する。両面テープ24と共に接着剤25を用いて端子10を窓ガラス12の上面に接着させることで、端子10の窓ガラス12への取付作業が終了する。
窓ガラス12へ接着された端子10について詳細を次図で説明する。
【0033】
図5に示すように、端子10は、両面テープ24及び接着剤25、25を介して窓ガラス12の上面に接着される。両面テープ24を接着させる際に、端子10を押し付けながら接着させたことで、脚部14、14は導電体11に向かって付勢した状態で接着される。付勢した状態で接着されることで、高い強度で脚部14、14が導電体11に接触する。
【0034】
凹部18に設けられた穴部21から接着剤25を注入するため、細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤25の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤25の注入が短時間で行うことができることで、端子10の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
このようにして取り付けられる端子10の作用について次図で詳細に説明する。
【0035】
図6(a)の比較例に示すように、端子110に対して、引張り方向(白抜き矢印参照)に向かって力が加わることがある。基部111の上面に接着剤113aが配置されることで、特に穴部112及び穴部112近傍の基部111aでは、接着剤113aが端子110の抜けを防ぐように作用する(矢印参照)。
【0036】
穴部112の直径が大きいほど、端子110の抜けを防止しやすくなる。即ち、端子110の接着強度を上げることができる。しかし、穴部112の直径を大きくしすぎると、基部111と接着剤113との接触面積が減少し、却って接着強度が弱まる。
【0037】
一方、穴部112の直径を小さくすると、接触面積を増加させることができる。しかし、穴部112が小さいと、引張り方向に力が加わった場合に、穴部112近傍で接着剤113の折れや剥離が生じやすくなる。
【0038】
(b)に示すように、実施例に係る端子10によれば、凹部18を設けて、この凹部18に開けられた穴部21から接着剤25を注入する。凹部18が設けられることで、接着剤25と端子10との接触面積を大きくすることができる。大きな穴部21を設けた場合であっても、接着剤25と端子10との接触面積を所定の大きさ以上に保つことができる。接着剤25と端子10とが所定の大きさ以上の接触面積を有することで、接着強度を所定の強度に保つことができる。
即ち、本発明に係る端子10によれば、所定の強度を保ちつつ、短時間で容易に取付けることができる。
【0039】
加えて、本発明による端子10によれば、大きな穴部21を設けることができる。大きな穴部21を設けることができることで、より確実に端子10の抜け、即ち接着剤25からの剥離を防ぐことができる。
【0040】
さらに、凹部18内に接着剤25aを収めることで、基部15から接着剤25aが突出することを防ぐことができる。基部15から接着剤25aが突出しないことで、外観性が高まる。
【0041】
加えて、凹部18を設けることで、端子10と接着剤25との接触面積を広くすることができる。接触面積を広くできるため、大きな穴部21を設けた場合であっても、十分な接触面積を得ることができる。穴部21を大きくすることで、穴部21近傍での接着剤25の折れや剥離を防止することができる。
【0042】
さらに、凹部18を設けることで端子10の接着に必要な接着剤25の量が減る。接着剤25の量が減ることで、端子付窓ガラス(図1、符号12)の製造コストの低減を図ることができる。また、接着剤25の量が減ることで、接着剤25を注入するのに必要な時間や接着剤25が硬化するのに必要な時間を短縮でき、端子付き窓ガラス(端子付ガラス板又は移動体用端子付ガラス板)の製造時間を短縮することができる。
【0043】
加えて、凹部18は、球面形状である。穴部21から注入される接着剤25は、球面形状に沿って広がる。球面形状に沿って広がるため、接着剤25を凹部18の周りに均一に配置させることができる。
本発明に係る端子の別実施例について次図以降で説明する。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7に示すように、実施例2に係る端子30では、接着剤供給部31は、基部32に接着剤を供給するために開けられた方形の穴部33と、この穴部33を中心に略X字状に切欠き34が設けられ、これらの切欠き34に挟まれた部位を窓ガラス側(図面裏面)に押し込むことで形成された凹部35とからなる。
穴部33が方形である場合は、各辺が1.5mm以上であると、接着剤の注入が容易である。
【0045】
このような形状に接着剤供給部31を形成した場合も、細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤の注入が短時間で行うことができることで、端子の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【0046】
なお、予め穴部33を設けておく他に、後から穴部を設けることもできる。
即ち、まず、切欠きを略X字状に設け、これらの切欠きに挟まれた略三角形の部位を窓ガラス側に押し込むことで斜面を形成する。これらの斜面で囲われた部位が凹部である。また、略三角形の部位を押し込むことで、三角形の頂点で囲われた隙間が生じる。この隙間を接着剤を注入するための穴部とすることができる。このような方法で製造した場合も、同様の効果を得ることができる。
実施例3に係る端子を次図で説明する。
【実施例3】
【0047】
図8(a)に示すように、実施例3に係る端子40では、接着剤供給部41は、窓ガラスに向かって(図面裏面側)球面状に凹まされる凹部18と、この凹部18の底部に設けられ接着剤を供給する穴部21と、この穴部21を囲うようにして開けられた複数(この例では4つ)の補強穴部42とからなる。
【0048】
(b)に示すように、穴部21から接着剤25を注入する。球面形状に沿って広がった接着剤25は、(c)に示すように、補強穴部42を通過して凹部18の上面に流入する。
【0049】
所定の高さまで達した接着剤25が、補強穴部42から凹部18の上面に流入するため、凹部18と窓ガラス12との間に均一に接着剤25を塗布することができる。
また、補強穴部42から接着剤25が凹部18に流入するため、所定の量の接着剤25が注入されたことを容易に確認することができる。
【0050】
さらに、補強穴部42が設けられることで、より確実に端子40の抜けを防ぐことができる。
実施例4に係る端子を次図で説明する。
【実施例4】
【0051】
図9に示すように、実施例4に係る端子50では、凹部51は、球面状に凹せ、且つ絞り加工が施された。即ち、凹部51は、全体として球面状とされつつ、表面が波形状に形成されている。
【0052】
表面が波形状とされることで、接着剤25との接触面積をさらに大きく取ることができ、端子50の接着強度をより高めることができる。
【0053】
なお、凹部51には、断面視波形状の他、ポンチを押付けることで形成される窪み(ディンプル)形状、薬品を塗布することで形成される粗面等、凹部51と接着剤25との接触面積を増加させるためのあらゆる手段を講じることができる。
【0054】
図10(a)に示すように、参考例に係る端子60は、ガラス((b)、符号70)の表面に接触する脚部61、61と、これらの脚部61、61の端部から窓ガラスの表面に対して略平行に延ばされる基部62と、この基部62に溶接され車内の給電部材に繋がれる給電部63とからなる。
【0055】
基部62に溶接された給電部63の下面に、両面テープが接着される位置決め部材接触部64が設けられる。基部62に開けられた窓状開口部65と、この窓状開口部65の近傍から基部62の幅方向に向かって延ばされる延長部66、66とを有する。
【0056】
延長部66、66の先端66a、66aは、それぞれ半円形状に形成されている。
端子60は、延長部66、66を基部62の裏面側(図面裏面側)に向かって折曲げることで形成される。
【0057】
(b)に示すように、先端66a、66aが接触するように延長部66、66を折り曲げ、折曲げ形状部68を形成する。
先端66a、66aが接触することで、接着剤を注入するための小孔69が形成される。即ち、折曲げ形状部68に小孔69が形成される。窓状開口部65から接着剤をガラス70に向かって注入することで、端子60がガラス70に接着される。ガラス70の表面には、被給電部71がプリントされている。端子60の接着剤供給部72は、折曲げ形状部68と、小孔69とからなる。
【0058】
(b)のc−c線断面図である(c)に示すように、窓状開口部65から小孔69を介して接着剤73を注入する。細いスリットに向かって注入するのに比べ、接着剤73の注入が容易であり、短時間で注入することができる。接着剤73の注入が短時間で行うことができることで、端子60の取付作業にかかる時間が短くてすむ。
【0059】
さらに、折曲げ形状部68内に接着剤73を収めることで、基部62から接着剤73が突出することを防ぐことができる。基部62から接着剤73が突出しないことで、外観性が高まる。
【0060】
さらに、折曲げ形状部68を設けることで端子60の接着に必要な接着剤73の量が減る。接着剤73の量が減ることで、端子付ガラス板の製造コストの低減を図ることができる。また、接着剤73の量が減ることで、接着剤73を注入するのに必要な時間や接着剤73が硬化するのに必要な時間を短縮でき、端子付窓ガラスの製造時間を短縮することができる。
なお、接着剤73を注入する前の工程については、図4を参照。
【0061】
図11及び図12に示すように、位置決めを行うためには、両面テープ(図4、符号24)の他、スペーサ81、81を用いることもできるし、給電部16の底部82を窓ガラス12に向かって突出させ、突起部83、83を形成することによってもできる。突起部83、83は、底部82に例えば4つ設けられる。
【0062】
位置決め部材としてスペーサ81、81を用いる場合は、以下のような手順で端子10を窓ガラス12へ接着させる。即ち、窓ガラス12側へ向かって、基部15を押し付ける。押付けることで、窓ガラス12とスペーサ81及びスペーサ81と位置決め部材接触部17とが接触する。これらが接触した状態で、接着剤25を注入する。接着剤25を注入し硬化させることで、窓ガラス12へ端子10を接着させることができる。
【0063】
給電部16の底部82に突起部83、83を形成する場合も同様の方法により、ガラス板12に端子10を接着させることができる。
スペーサ81と位置決め部材接触部17とは、予め両面テープ等によって接着させておいてもよい。
【0064】
スペーサ81や突起部83を用いた場合には、高さ方向への位置決めを行うことができる。
水平方向及び高さ方向の両方へ正確に位置決めを行う場合には、スペーサ81の底面に両面テープを接着させ、両面テープを介してスペーサ81を窓ガラス12に接着させることもできる。
【0065】
尚、本発明に係る端子は、移動体用窓ガラスの他、建築用窓ガラス、曇りガラスと透明なガラスとを切り替えることのできるパーテーションガラス、スクリーンとして用いるガラス、冷蔵ショーケース用ガラス等、種々のガラス板に適用可能であり、これらのものに用途は限定されない。
【0066】
即ち、端子付ガラス板とは、本発明に係る端子を接着させたガラス板をいう。移動体用端子付ガラス板とは、端子付きガラス板のうち、特に車両、電車、飛行機等の移動体に搭載されるものをいう。
【0067】
ただし、移動体用ガラス板は、外部からの影響で振動を頻繁に受けるため、特に高い強度で端子を接着させる必要がある。加えて、移動体用ガラス板は、環境を汚染しない手段で、端子を接着させることが望まれている。本発明に係る端子を移動体用ガラス板に用いることで、半田を用いることなく、高い強度で端子を接着させることができ、移動体用ガラス板に用いることが特に望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の端子は、車両の窓ガラスにプリントされた導電体への給電に好適である。
【符号の説明】
【0069】
10、30、40、50…端子、12…窓ガラス(板状体)、14…脚部、15、32…基部、18、35、51…凹部、21、33…穴部、22、31、41…接着剤供給部、24…両面テープ、25…接着剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の表面に接触する脚部と、この脚部の端部から前記板状体の表面に対して略平行に延ばされる基部と、この基部と前記板状体との間の空隙に接着剤を供給する接着剤供給部が設けられている端子において、
前記接着剤供給部は、前記基部を前記板状体に向かって凹ませた凹部と、この凹部に開けられ前記接着剤を流し込むための穴部とを備えていることを特徴とする端子。
【請求項2】
前記凹部は、球面形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする端子付ガラス板。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする移動体用端子付ガラス板。
【請求項1】
板状体の表面に接触する脚部と、この脚部の端部から前記板状体の表面に対して略平行に延ばされる基部と、この基部と前記板状体との間の空隙に接着剤を供給する接着剤供給部が設けられている端子において、
前記接着剤供給部は、前記基部を前記板状体に向かって凹ませた凹部と、この凹部に開けられ前記接着剤を流し込むための穴部とを備えていることを特徴とする端子。
【請求項2】
前記凹部は、球面形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の端子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする端子付ガラス板。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の端子が接着されていることを特徴とする移動体用端子付ガラス板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−113840(P2012−113840A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259398(P2010−259398)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】
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