説明

端子付き電線およびその製造方法

【課題】接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】端子付き電線10は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線14を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線12を、絶縁被覆13で覆った電線11と、電線11の端末11Aにおいて絶縁被覆13の剥離により露出した露出芯線12が接続される電線接続部30、および、相手方端子と接続される端子接続部21を有する端子20と、を備える。端子接続部21は導電性の板材からなる。電線接続部30は、導電性材料からなる筒体31に露出芯線12を挿通させて板状に成形することにより設けられるとともに、露出芯線12の先端12Aが配置された端部30Aが、端子接続部21の端面21Aと接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の金属素線を撚り合わせた撚り線からなる芯線を絶縁被覆で被覆するとともに、端末において芯線が露出する電線と、この電線の端末に接続される端子と、を備える端子付き電線としては、例えば、特許文献1に記載のものなどが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の端子付き電線においては、電線の端末において露出する芯線に端子のワイヤーバレルが圧着されて電気的に接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−72053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているようなタイプの端子付き電線においては、芯線とワイヤーバレルの内面が接触することで、端子と電線とが電気的に接続される。
したがって、このようなタイプの端子付き電線では、芯線を構成する素線が細くて撚り本数が多い場合に、接続抵抗を小さくするために、ワイヤーバレルを高圧縮で圧着すると、素線切れが発生して接続性能が低下することがある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決する方法として、電線の芯線を、端子に直接接合することで接続抵抗を小さくすることが考えられる。しかしながら、電線の芯線を構成する素線がバラけてしまうことがあり、芯線を直接端子に接合するのは困難である。
【0008】
そこで、さらなる検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が接続される電線接続部、および、相手方端子と接続される端子接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線であって、前記端子接続部は導電性の板材からなり、前記電線接続部は、導電性材料からなる筒体に前記露出芯線を挿通させて板状に成形することにより設けられるとともに、当該電線接続部の、前記露出芯線の先端が配置された端部が、前記端子接続部の端面と接合されていることことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が接続される電線接続部、および、相手方端子と接続される端子接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、導電性材料からなる筒体に前記露出芯線を挿通させて板状に成形することにより前記電線接続部を作製する工程と、前記電線接続部の前記露出芯線の先端が配置される端部と、導電性板材からなる前記端子接続部の端面とを接合する接合工程と、を経ることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、露出芯線を筒体に挿通させて板状に成形することで設けられた電線接続部の、露出芯線の先端が配置される端部と、端子接続部の端面とが接合されることで芯線と端子とが接続される。したがって、本発明によれば、芯線を構成する複数の素線の全てを、端子(端子接続部)と接合することが可能であるので、接続抵抗を小さくすることができる。
【0011】
また、本発明では板状の電線接続部が、板材から成る端子接続部(端子)の端面に接合されており、端子および端子と電線との接続部(電線接続部)が全体として平板状をなすので省スペースである(図1を参照)。
【0012】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記筒体がアルミニウム製またはアルミニウム合金製であってもよい。
筒体と芯線を構成する素線の材料が異種金属である場合、筒体の内部では異種金属が接触することになるため、ここに塩分などの電解質を含む水が浸入すると電食の発生が懸念される。そこで、上記のような構成とすると、筒体とアルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線からなる芯線とが同じ金属からなるので、筒体と芯線との接触部分において、異種金属間に発生する腐食が生じにくくなる。
【0013】
前記筒体と前記端子接続部とが同じ材料からなる構成であってもよい。
このような構成とすると、筒体と端子接続部とが同じ材料からなるので、筒体と端子接続部との接合部における異種金属間に発生する腐食が生じにくくなる。さらに、筒体と端子接続部との接合をレーザー溶接により行うことができるので、精密な接合が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続抵抗を小さくした端子付き電線およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1の端子付き電線の斜視図
【図2】端子付き電線の断面を模式的に示した模式図
【図3】電線に筒体を挿通させる様子を示す斜視図
【図4】筒体を挿通させた電線の斜視図
【図5】図4の電線を成形金型に配置した様子を示す斜視図
【図6】図4の電線の電線接続部を作製する様子を示す斜視図
【図7】電線接続部を作製する工程を経た電線の斜視図
【図8】電線接続部の端部を研磨した後の電線の斜視図
【図9】電線接続部の端部に端子接続部の端面をつきあわせた様子を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9によって説明する。実施形態1の端子付き電線10は、図1に示すように、電線11と電線11の端末11Aにおいて露出する芯線12(露出芯線12)が接続される電線接続部30と、相手方端子(図示せず)と接続される端子接続部21を有する端子20とからなる。以下の説明において、上下方向については、図2を基準とし、前後方向については、図2の左方を前方、右方を後方として説明する。
【0017】
電線11は、図1に示すように、芯線12の周囲が合成樹脂の絶縁被覆13で覆われている。電線11の端末11Aにおいては図3に示すように、絶縁被覆13が剥ぎ取られ芯線12が露出している。
【0018】
芯線12は、多数(複数)の金属素線14が撚り合わされた撚り線である。金属素線14は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製である。
【0019】
電線11は、断面が円形であるが、筒体31に挿通される端末11A部分の露出芯線12の一部は方形状に変形している。
【0020】
端子20は、全体として平板状をなしており、相手側の端子と接続される端子接続部21を有する。端子接続部21には、相手側の端子を接続する円形の端子接続孔22が設けられている。端子20の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、およびアルミニウム合金などの導電性の板材があげられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。本実施形態において、端子20は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の上面視方形状の平板である。
【0021】
なお、本実施形態の端子20を構成する金属板材の表面は、メッキ層が形成されていてもよい。メッキ層を構成する金属としては、例えば、スズ、ニッケル等が挙げられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。
【0022】
さて、本実施形態において、電線接続部30は、全体として平板状をなしており、その前端部30Aが平板状をなす端子20の端面21A(端子接続部21の端面21A)と接合されている。
【0023】
詳しくは、電線接続部30は、内部に電線11の芯線12を挿通可能な筒体31を、内部に電線11の露出芯線12を挿通させた状態で平板状に成形することにより設けられている。電線接続部30の前側の端部30Aの厚み寸法は、端子接続部21の端面21Aの厚みと、概ね同じ寸法に設定されている。筒体31内において、露出芯線12の一部は方形状をなしており、露出芯線12の先端12Aは、図8に示すように、筒体31の前端部30A(電線接続部30の前端部30A)に配されており、端子接続部21の端面21Aと接合されている。
【0024】
筒体31の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、およびアルミニウム合金などの導電性材料があげられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。本実施形態において、筒体31は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製である。なお、本実施形態の筒体31を構成する金属材料の表面は、メッキ層が形成されていてもよい。メッキ層を構成する金属としては、例えば、スズ、ニッケル等が挙げられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。
【0025】
次に、本実施形態の端子付き電線10の製造方法について説明する。
図3に示すように円筒状の筒体31を用意し、電線11の端末11Aの絶縁被覆13を剥離除去して芯線12を露出させておく。次に、図4に示すように、電線11の端末11Aにおいて露出している芯線12(露出芯線12)を筒体31に挿入する。
【0026】
電線11の露出芯線12を挿入した筒体31を、図5および図6に示す成形金型40を用いて成形する。成形の際には、露出芯線12を挿入した筒体31を、下側に配置される成形金型42と、上側に配置される成形金型41との間に形成される方形状の成形部43に挟んだ状態として加圧する(図5および図6を参照)。電線11の露出芯線12を挿入した筒体31を加圧することにより、筒体31の前端部30Aを含む領域31Aが方形状(成形部43の形状)に成形され、図7に示すような電線接続部30が設けられた電線11が得られる。
【0027】
次に、電線接続部30の前端部30Aをエンドミルで研磨し、図8に示すように、電線11の芯線12の先端12Aが電線接続部30の前端部30Aに配置されるように成形する。
【0028】
次に、図9に示すように、平板状をなし円形の端子接続孔22が形成された端子接続部21の端面21Aを、電線接続部30の前端部30Aにつき合わせる。次に、端子接続部21の端面21Aと電線接続部30の前端部30Aとを接合すると、図1に示す形状の端子付き電線10が得られる。
【0029】
電線接続部30の端部30Aと端子接続部21の端面21Aとを接合する方法としては、レーザー溶接、TIG溶接、摩擦撹拌溶接などの溶接、ろう付け、冷間圧接などの方法があげられる。本実施形態では、電線接続部30(筒体31)の材料と端子20の材料がともに同じ金属材料であるのでレーザー溶接による接合が可能である。
【0030】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態においては、露出芯線12を筒体31に挿通させて板状に成形することで設けられた電線接続部30の、露出芯線12の先端12Aが配置される端部30Aと、端子接続部21の端面21Aとが接合されることで芯線12と端子20とが接続される。したがって、本実施形態によれば、芯線12を構成する複数の素線14の全てを、端子20(端子接続部21)と接合することが可能であるので、接続抵抗を小さくすることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、板状の電線接続部30が、板材から成る端子接続部21(端子20)の端面21Aに接合されており、端子20および電線接続部30が、図1に示すように全体として平板状をなすので省スペースである。
【0032】
また、本実施形態によれば、筒体31がアルミニウム製またはアルミニウム合金製であるから、筒体31と芯線12とが同じ金属からなるので、筒体31と芯線12との接触部分において、異種金属間に発生する腐食が生じにくくなる。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、筒体31と端子接続部21とが同じ材料からなるので、筒体31と端子接続部21との接合部32における異種金属間に発生する腐食が生じにくくなるうえに、筒体31と端子接続部21との接合をレーザー溶接により行うことができるので、精密な接合が可能である。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では筒体31がアルミニウム製またはアルミニウム合金製の筒体31を示したが、筒体31は銅製または銅合金製などであってもよい。
(2)上記実施形態では、筒体31と端子接続部21とが同じ材料からなるものを示したが、筒体31と端子接続部21が相違する材料からなるものであってもよい。
(3)上記実施形態ではエンドミルで電線接続部30の前端部30Aを研磨する方法を示したが、エンドミル以外の研磨機を用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…端子付き電線
11…電線
11A…端末
12…芯線
13…絶縁被覆
14…素線
20…端子
21…端子接続部
21A…端子接続部の端面
22…端子接続孔
30…電線接続部
30A…(露出芯線の先端が配置される)端部
31…筒体
40…成形金型
41…上側の成形金型
42…下側の成形金型
43…成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、
前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が接続される電線接続部、および、相手方端子と接続される端子接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線であって、
前記端子接続部は導電性の板材からなり、
前記電線接続部は、導電性材料からなる筒体に前記露出芯線を挿通させて板状に成形することにより設けられるとともに、当該電線接続部の、前記露出芯線の先端が配置された端部が、前記端子接続部の端面と接合されていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記筒体がアルミニウム製またはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記筒体と前記端子接続部とが同じ材料からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
アルミニウム製またはアルミニウム合金製の素線を複数本撚り合わせた撚り線からなる芯線を、絶縁被覆で覆った電線と、
前記電線の端末において前記絶縁被覆の剥離により露出した露出芯線が接続される電線接続部、および、相手方端子と接続される端子接続部を有する端子と、を備えた端子付き電線の製造方法であって、
導電性材料からなる筒体に前記露出芯線を挿通させて板状に成形することにより前記電線接続部を作製する工程と、
前記電線接続部の前記露出芯線の先端が配置される端部と、導電性板材からなる前記端子接続部の端面とを接合する接合工程と、
を経ることを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【請求項5】
前記筒体がアルミニウム製またはアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項4に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項6】
前記筒体と前記端子接続部とが同じ材料からなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の端子付き電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30337(P2013−30337A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165097(P2011−165097)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】