端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材
【課題】キャリアと圧着端子の連結部を所望する長さに切除する作業と、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が正確且つ安定して行える端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材を提供する。
【解決手段】アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12に形成したガイド面12c,12cを押し当てて、圧着端子A全体を水平分力により水平方向へ移動する。圧着端子AのインシュレーションバレルAbをスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てて位置決めした後、キャリアBと圧着端子Aの連結部Aaをスライドカッタ6で剪断して、キャリアBから圧着端子Aを分離する。且つ、圧着端子Aの各バレルAb,Acを、アンビル部3の各アンビル7,8と協働して、クリンパー部4の各クリンパー12,13により加締めて、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続する。
【解決手段】アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12に形成したガイド面12c,12cを押し当てて、圧着端子A全体を水平分力により水平方向へ移動する。圧着端子AのインシュレーションバレルAbをスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てて位置決めした後、キャリアBと圧着端子Aの連結部Aaをスライドカッタ6で剪断して、キャリアBから圧着端子Aを分離する。且つ、圧着端子Aの各バレルAb,Acを、アンビル部3の各アンビル7,8と協働して、クリンパー部4の各クリンパー12,13により加締めて、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば導電性を有する金属製の圧着端子を電線の端部に圧着接続する際に用いられる端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の圧着端子を電線の端部に圧着接続する方法としては、例えば図12に示すように、端子帯CのキャリアBを端子案内部26に形成したガイド溝26aに挿入しながら、キャリアBに連結された各圧着端子A…をプレス部20のアンビル部23上に1個ずつ供給する。アンビル部23上に供給された圧着端子Aを、アンビル部23の前部(図中の左側)に配置した端子案内部26と、後部(図中の右側)に配置した端子案内部27で保持して位置決めした後、端子案内部26のガイド溝26aに挿入された連結部Aaを端子案内部26により剪断して、キャリアBから圧着端子Aを分離する。且つ、圧着端子AのインシュレーションバレルAbとワイヤーバレルAcを、アンビル部23のインシュレーションアンビル23a及びワイヤーアンビル23bと協働して、クリンパー部24のインシュレーションクリンパー24a及びワイヤークリンパー24bにより加締めて、圧着端子Aを、図示しない電線の端部に圧着接続する特許文献1の端子圧着用アプリケータがある。
【特許文献1】特許第3440849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記圧着端子Aを、アンビル部23上に対して変形させることなく1個ずつ供給するには、アンビル部23上に供給される圧着端子Aと各端子案内部26,27の間に適度な隙間が必要であるが、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをクリンパー部24のインシュレーションクリンパー24aにより垂直方向に加締める際に、前記隙間分だけ、各端子案内部26,27のいずれか一方に向けて押し当てられる方向へ圧着端子Aの位置が変位しやすく、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続する作業が安定して行えない。圧着端子Aの位置が安定しないと、連結部Aaの剪断時において、圧着端子Aの連結側端部に残される連結部Aaのカットオフタブ長にばらつきが生じる。また、カットオフタブである連結部Aaが圧着端子Aの連結側端部に残ってしまうと、例えばコネクタ等の端子挿入部に圧着端子Aを挿入した際に、損傷や欠損等が端子挿入部内に起きやすく、接続不良の原因となる。
【0004】
この発明は前記問題に鑑み、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業と、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が正確且つ安定して行える端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、帯状のキャリアに対して幅方向に突出する状態に連結され、該キャリアの長さ方向に対して並列に配列された各圧着端子を端子受け部材上に1個ずつ供給し、該キャリアと圧着端子を連結する連結部を剪断手段により剪断して、キャリアから圧着端子を分離するとともに、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子付き電線の製造方法であって、前記端子圧着部材を下降させて前記圧着端子のバレル部を加締める際に、該圧着端子のバレル部に前記端子圧着部材に形成したガイド面を押し当てて、前記圧着端子全体を水平移動させ、所定の部材に押し当てて位置決めするか、押し当てられる直前に位置決めすることを特徴とする。
【0006】
この発明によると、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部に端子圧着部材のガイド面を押し当てて、圧着端子全体を水平移動させ、所定の部材に押し当てて位置決めするか、押し当てられる直前に位置決めした後、キャリアと圧着端子を連結する連結部を剪断手段により剪断して、キャリアから圧着端子を分離する。且つ、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、圧着端子を電線の端部に圧着接続するものである。
【0007】
つまり、端子圧着部材に対する圧着端子の相対的な位置が決められるので、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が安定して行える。また、連結部の剪断時において、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業が安定して行える。例えばカットオフタブである連結部が不要な場合は、連結部が残らない状態に剪断することもできる。また、例えば圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めした状態で、圧着端子のバレル部にベルマウスを形成すれば、ベルマウスの位置が安定する。
【0008】
前記圧着端子は、例えばカットオフタブである連結部を介して、帯状に形成されたキャリアの一側縁部に対して幅方向に突出又は直交する方向に連結され、該キャリアの長さ方向に対して所定等間隔に隔てて並列に配列している。また、圧着端子のバレル部は、例えばインシュレーションバレル、ワイヤーバレル等で構成することができる。また、端子受け部材は、例えばアンビル部のインシュレーションアンビル、ワイヤーアンビル等で構成することができる。また、端子圧着部材は、例えば端子圧着部材のインシュレーションクリンパー、ワイヤークリンパー等で構成することができる。また、端子圧着部材のガイド面は、例えばテーパー面、滑らかな曲面等で構成することができる。また、剪断手段は、例えばスライドカッタ、カットホルダ、インシュレーションクリンパー等の剪断力を生じさせるもので構成することができる。また、所定の部材は、例えば端子案内部、押し当て部等で構成することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1に記載の構成と併せて、前記圧着端子全体を、前記バレル部と対向する位置に配置された所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、該圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めすることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、圧着端子全体を、所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めするので、キャリアと圧着端子の連結部を残らない状態に切除する作業が正確に行える。
【0011】
請求項3に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1又は2に記載の構成と併せて、前記圧着端子のバレル部をインシュレーションバレルとワイヤーバレルで構成するとともに、前記ガイド面を、前記端子圧着部材の前記インシュレーションバレルに押し当てられる部分に形成したことを特徴とする。
【0012】
この発明によると、端子圧着部材のガイド面を、圧着端子のインシュレーションバレルに押し当てて、圧着端子全体を所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させる。つまり、圧着端子のインシュレーションバレルは、通常、電線の導体が接続される圧着端子のワイヤーバレルよりも高い。詳述すると、電線を構成する導体よりも該導体に被覆された被覆部の径が大きいので、圧着端子のインシュレーションバレルも必然的に高くなる。よって、位置決めする際に、端子圧着部材のガイド面を最初に押し当てるのにワイヤーバレル側よりインシュレーションバレル側が好適である。前記位置決めを圧着端子のワイヤーバレル側で行うには、インシュレーションバレルとワイヤーバレルの高低差だけ、端子圧着部材の一部を多く突出させることになり、実施例において端子圧着部材を構成するインシュレーションクリンパーやワイヤークリンパー等を配置する位置精度や、調整の面においてインシュレーションバレルで行う場合よりは多少難しいものとなる。
【0013】
請求項4に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1〜3のいずれか一つに記載の構成と併せて、前記ガイド面を、前記端子圧着部材に形成したバレル加締め部の下端側開放部よりも外側であって、前記圧着端子のバレル部に押し当てられる前記端子圧着部材の両側下縁部に形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によると、端子圧着部材の両側下縁部に形成したガイド面を圧着端子のバレル部に押し当てて、圧着端子全体を、所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させるが、ガイド面を、圧着端子のバレル部が直接加締められる端子圧着部材のバレル加締め部に形成すると、端子圧着時において、圧着端子は電線の端部に圧着されながら所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動することになり、圧着端子の位置が不安定となる。これらを考慮すると、ガイド面は、圧着端子のバレル部を直接加締めるバレル加締め部よりも、端子圧着部材の両側下縁部のみに形成したほうがよい。しかも、圧着端子のバレル部が端子圧着部材のバレル加締め部に押し当てられた際に、所定の部材に対して圧着端子のバレル部が押し当てられる位置か、近接される程度の位置に移動されるのがよい。前記近接した状態からは、ガイド面以外の部分(例えば平面部分)が圧着端子のバレル部に押し当てられ、端子圧着部材の全圧力が上方から下方に向けて加えられるのがよい。
【0015】
請求項5に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1〜4のいずれか一つに記載の構成と併せて、前記圧着端子のバレル部に端子圧着部材のガイド面を押し当て終った時点で、前記圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられる位置か、該所定の部材に押し当てられる直前の位置に水平移動されるように前記端子受け部材及び端子圧着部材を構成したことを特徴とする。
【0016】
この発明によると、端子圧着部材のガイド面を圧着端子のバレル部に押し当てられた状態から、圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられると、その押し当て時に生じる力が圧着端子に加えられるため、例えば変形、歪み、破損等が圧着端子に生じる可能性が大きくなる。よって、圧着端子のバレル部に端子圧着部材のガイド面を押し当て終った時点で、圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられる位置か、押し当てられる直前の位置に水平移動される程度が好ましい(図8参照)。圧着端子全体が所定の部材に向けて押し当てられる方向へ移動されず、所定の部材から必要以上に離れすぎないようにすれば、圧着端子のバレル部が所定の部材に対して強く押し当てられたり、所定の部材から必要以上に離間されることを防止することができる。
【0017】
請求項6に記載した発明の端子圧着部材は、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子圧着部材であって、前記端子圧着部材の前記圧着端子のバレル部に押し当てられる部分に、前記圧着端子全体が前記バレル部と対向する位置に配置された所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させるガイド面を形成したことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部に、端子圧着部材に形成したガイド面を下方に向けて垂直に押し当てて、その垂直方向の押し当て力に対して、圧着端子全体が所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動される水平分力を生じさせるので、請求項1に記載の端子付き電線の製造方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、端子受け部材上に供給された圧着端子を所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて、端子圧着部材に対する圧着端子の相対的な位置を決めるので、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業が正確に行える。また、端子圧着時において、圧着端子の位置が水平方向へ変位することがなく、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が安定して行える。また、所定の部材の位置を調整する手間及び作業が省けるだけでなく、所定の部材における端子詰りが発生するのを防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明は、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業と、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が正確且つ安定して行えるという目的を、端子受け部材上に供給された圧着端子を所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、該圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めすることで達成することができる。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
【0022】
図面は、圧着端子を電線の端部に圧着接続する際に用いられる端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材を示し、図1、図2、図3に於いて、この端子付き電線の製造方法は、端子帯CのキャリアBをスライドカッタ6の端子案内部6bに形成したガイド溝6cに挿入しながら、キャリアBに連結された各圧着端子A…を端子受け部材であるアンビル部3上に1個ずつ供給する。
【0023】
アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、端子圧着部材であるクリンパー部4のインシュレーションクリンパー12に形成したガイド面12c,12cを押し当てて、圧着端子A全体を、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動する。
【0024】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbを端子案内部6bに押し当てて位置決めした後、端子案内部6bのガイド溝6cに挿入された連結部Aaをスライドカッタ6により剪断して、キャリアBから圧着端子Aを分離する。且つ、圧着端子AのインシュレーションバレルAbとワイヤーバレルAcを、アンビル部3のインシュレーションアンビル7及びワイヤーアンビル8と協働して、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12及びワイヤークリンパー13により加締めて、導電性を有する金属製の圧着端子Aを、図示しない電線の端部に圧着接続するものである。
【0025】
圧着端子Aは、連結部Aaを介して、帯状に形成されたキャリアBの一側縁部に対して幅方向に突出又は直交する方向に連結され、該キャリアBの長さ方向に対して所定等間隔に隔てて並列に配列している(図3参照)。通常、多数の各圧着端子A…を帯状に連鎖してなる端子帯Cはリール状に巻回している。
【0026】
前記端子付き電線の製造に用いられる端子付き電線製造装置1は、図示しないプレス装置に載置される装置本体2に、キャリアBの一側縁部に連結された圧着端子Aを略水平に支持するアンビル部3と、その圧着端子Aをアンビル部3と協働して加締めるクリンパー部4を上下に設けている(図1、図2参照)。
【0027】
図6に示すように、下側に設けたアンビル部3は、装置本体2下部に配置された基台5に、圧着端子Aの連結部Aa近傍を支持するスライドカッタ6と、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを支持するインシュレーションアンビル7と、圧着端子AのワイヤーバレルAcを支持するワイヤーアンビル8と、圧着端子Aの差込み部Adを支持するアンビルホルダ9を、後述する端子搬送装置18の搬送方向と直交して図6中の左端から前記の順に配置している。
【0028】
上側に設けたクリンパー部4は、装置本体2上部に配置されたシャンク10に、圧着端子Aの連結部Aaをスライドカッタ6と協働して剪断するカットオフパンチ11と、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをアンビル部3のインシュレーションアンビル7と協働して加締めるインシュレーションクリンパー12と、圧着端子AのワイヤーバレルAcをワイヤーアンビル8と協働して加締めるワイヤークリンパー13と、圧着端子Aの差込み部Adをアンビルホルダ9と協働して略水平に支持するスペーサー14,15を、後述する端子搬送装置18の搬送方向と直交して図6中に示す左端から前記の順に配置している。
【0029】
スライドカッタ6は、圧着端子AのインシュレーションバレルAbと対向する位置に配置され、基台5上に配置されたカットホルダ16の保持溝16aに対して上下摺動自在に保持され、後述するカットオフパンチ11と対向して下方に配置している。また、基台5とスライドカッタ6の間に圧縮装填したコイルバネ17,17(図1参照)の復元力により、スライドカッタ6上部に形成した端子案内部6b(端子案内部6bに形成したガイド溝6cを含む)がカットホルダ16の保持溝16aよりも上方へ突出される方向に常時付勢している。
【0030】
スライドカッタ6の端子案内部6bは、通常、カットオフパンチ11により下方へ押し下げられるまで、端子案内部6bのガイド溝6c底面と、インシュレーションアンビル7上面とが略一致(又は略水平となる高さ)する高さに突出されている(図6参照)。また、スライドカッタ6の一側上端部には、カットオフパンチ11の当接部11aが当接される受け部6aを形成している。
【0031】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbが押し当てられる端子案内部6bの案内面には、図6にも示すように、端子帯CのキャリアBが搬送方向に向けてガイドされるガイド溝6cを、後述する端子搬送装置18の搬送方向と平行して水平に形成している。また、ガイド溝6cの高さHは、キャリアBの厚み全体が挿入許容される寸法に形成され、ガイド溝6cの奥行Wは、キャリアBの横幅全体(連結部Aaを含む)が挿入許容される寸法に形成している。なお、ガイド溝6cの高さH及び奥行Wは、端子帯Cの搬送がスムースに行えるように若干余裕を持たせている。
【0032】
つまり、クリンパー部4のカットオフパンチ11を垂直に下降させ、カットオフパンチ11の当接部11aをスライドカッタ6の受け部6aに当接して、スライドカッタ6をカットホルダ16の保持溝16aに沿って下方へ垂直に押し下げる。端子帯CのキャリアBが搬送方向に挿入されたスライドカッタ6の端子案内部6bを、少なくともガイド溝6c全体がカットホルダ16の保持溝16a内に没入される高さまで下降(図9参照)させると、ガイド溝6cの搬送方向と平行する長手側角部と、インシュレーションクリンパー12の角部に剪断力が発生し、ガイド溝6c内に挿入された連結部Aaが、端子案内部6bに押し当てられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断される。
【0033】
また、ガイド溝6cの搬送方向と直交する短手側角部と、カットホルダ16の保持溝16aの搬送方向と直交する短手側角部にも剪断力が発生し、ガイド溝6cの搬入側及び搬出側に突出されたキャリアBが幅方向に剪断(図3参照)される。
【0034】
シャンク10は、装置本体2上部に対して上下摺動自在に保持され、図示しないプレス装置により、カットオフパンチ11と、インシュレーションクリンパー12と、ワイヤークリンパー13を一体的に上下動する。
【0035】
カットオフパンチ11は、シャンク10前部に対して上下摺動自在に保持され、前記スライドカッタ6と対向して上方に配置している。また、図示しないコイルバネの復元力により、シャンク10下端部よりも下方へ突出される方向に常時付勢している。また、カットオフパンチ11の一側下端部には、スライドカッタ6の受け部6aに当接される当接部11aを突設している。
【0036】
インシュレーションクリンパー12の下端側中央部には、図4、図5にも示すように、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを内側に向けて加締めるための凹状のバレル加締め部12aを形成している。
【0037】
バレル加締め部12aの両側内壁面は、下端側開放部から上端側閉塞部に向けて徐々に幅狭となる平面形状に形成され、圧着端子AのインシュレーションバレルAbが内側に向けて徐々に幅寄せされる角度に傾斜している。
【0038】
また、下端側開放部の内壁面は、圧着端子AのインシュレーションバレルAbよりも若干幅狭に形成され、後述するガイド面12c,12cに押し当てられた圧着端子AのインシュレーションバレルAbをバレル加締め部12aの両側内壁面に沿って挿入が許容される幅寄せ状態に矯正する。上端側閉塞部の内壁面は、圧着端子AのインシュレーションバレルAbが内側に向けて加締められる滑らかな曲面形状に形成している。
【0039】
また、バレル加締め部12aの下端側開放部よりも外側であって、圧着端子AのインシュレーションバレルAbに押し当てられるインシュレーションクリンパー12の両側下縁部に形成したスカート部12b,12bには、圧着端子AのインシュレーションバレルAb上端に押し当てられた際に、その垂直方向の押し当て力に対して水平分力を生じさせるガイド面12c,12cを形成している。
【0040】
ガイド面12c,12cは、バレル加締め部12aの下端側開放部に連続して形成され、インシュレーションクリンパー12の前面側から後面側に向けて徐々に低くなる角度に傾斜するテーパー面に形成している。
【0041】
底面から見たガイド面12c,12cは、図5に示すように、インシュレーションクリンパー12の前面側(図5の上方)から後面側(図5の下方)に向けて徐々に幅狭となる角度に傾斜している。また、側面から見ると、図6に示すように、インシュレーションクリンパー12の前面側(図6の左側)から後面側(図6の右側)に向けて徐々に低くなる角度に傾斜している。
【0042】
つまり、クリンパー部4を、図6に示す矢印のように、垂直に下降させると、アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、インシュレーションクリンパー12のスカート部12b,12bに形成したガイド面12c,12cが垂直に押し当てられ、図7中の矢印で示す水平分力が発生する。
【0043】
アンビル部3上に供給された圧着端子Aは、前記水平分力により、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて、圧着端子AのインシュレーションバレルAbが押し当てられる方向へ水平移動(図7中の矢印で示す左方向)される。
【0044】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbがスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当ててられるため、クリンパー部4に対する圧着端子Aの相対的な位置が決定される。なお、相対的な位置とは、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残さない場合(すなわち、カットオフタブ長が略ゼロの場合)、端子帯Cの連結部Aaを含むキャリアBがカットホルダ16の保持溝16a内に挿入され、ガイド溝6c内に挿入された連結部Aaが、スライドカッタ6の端子案内部6bに押し当ててられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断される位置である。なお、ガイド面12c,12cを、例えば円弧、楕円等の滑らかな曲面で構成してもよい。
【0045】
一方、ワイヤークリンパー13の下端側中央部にも、圧着端子AのワイヤーバレルAcを内側に向けて加締めるための凹状のバレル加締め部13aを形成している。なお、バレル加締め部13aの構造は、前記バレル加締め部12aと略同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0046】
アンビル部3側部(図1に示す左側)には、端子帯Cの各圧着端子A…をアンビル部3上に供給するための端子搬送装置18を配置している。端子搬送装置18は、クリンパー部4を昇降動作する図示しないプレス機構の動作と連動して、端子帯Cの各圧着端子A…を、インシュレーションアンビル7と、ワイヤーアンビル8と、アンビルホルダ9からなるアンビル部3上に対して1個ずつ間欠的に供給する。
【0047】
アンビル部3のアンビルホルダ9上部には、図6に示すように、端子搬送装置18により搬送される圧着端子Aをアンビル部3上にガイドするための端子案内部19を配置している。端子案内部19は、圧着端子AのワイヤーバレルAcと差込み部Adの谷間部分に対して係止が許容される形状に形成され、端子搬送装置18により搬送される圧着端子Aがアンビル部3上に供給されるようにガイドする。なお、端子案内部19は、圧着時においてアンビルホルダ9上から退避される。
【0048】
図示実施例は前記の如く構成するものにして、以下、端子付き電線製造装置1による端子付き電線の製造方法を説明する。
【0049】
先ず、図1〜図3、図6に示すように、端子搬送装置18を駆動して、リール状に巻回された端子帯Cの各圧着端子A…をアンビル部3上に対して1個ずつ間欠的に供給するとともに、端子帯CのキャリアBを、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに形成したガイド溝6cに対して搬送方向へ挿入する。
【0050】
次に、圧着端子Aを加締める前に、図示しない接続側端部の被覆材が除去された電線を、アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに電線の被覆材が除去された導体部分が位置し、ワイヤーバレルAc上に電線の被覆部分が位置するようにセットする。
【0051】
次に、図7に示すように、クリンパー部4を、図示しないプレス機構により下降させ、アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、インシュレーションクリンパー12のスカート部12b,12bに形成したガイド面12c,12cを押し当てて、図7中の矢印で示す水平分力を発生させる。
【0052】
次に、図8に示すように、アンビル部3上に供給された圧着端子Aを、前記水平分力により、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動(図8中の矢印で示す左方向)させる。
【0053】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbにインシュレーションクリンパー12のガイド面12c,12cを押し当て終った時点で、圧着端子AのインシュレーションバレルAbがスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てられる位置か、押し当てられる直前の位置に水平移動させて、クリンパー部4に対する圧着端子Aの相対的な位置を決める。すなわち、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残さないようにする場合、連結部Aaが、ライドカッタ6の端子案内部6bに押し当ててられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断される位置に規制する。
【0054】
次に、図9に示すように、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てたまま、クリンパー部4のカットオフパンチ11を下降させ、カットオフパンチ11の当接部11aをスライドカッタ6の受け部6aに当接して、スライドカッタ6を下方へ垂直に押し下げる。
【0055】
端子帯CのキャリアBが挿入された端子案内部6bを、少なくともガイド溝6c全体がカットホルダ16の保持溝16a内に没入される高さまで下降(図9参照)させ、ガイド溝6cの長手側角部と、インシュレーションクリンパー12の角部により、ガイド溝6c内に挿入された連結部Aaを、端子案内部6bに押し当てられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断する。
【0056】
また、ガイド溝6cの短手側角部と、カットホルダ16の保持溝16aの短手側角部により、ガイド溝6cの搬入側及び搬出側に突出されたキャリアBを幅方向に剪断(図3参照)して、圧着端子AをキャリアBから1個ずつ分離する。
【0057】
剪断時において、クリンパー部4を、図示しないプレス機構により圧着位置まで下降させ、図示しない電線がセットされた圧着端子AのインシュレーションバレルAbとワイヤーバレルAcを、アンビル部3のインシュレーションアンビル7及びワイヤーアンビル8と協働して、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12及びワイヤークリンパー13により加締めて、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続するので、端子付き電線を連続して製造することができる。
【0058】
以上のように、アンビル部3上に供給された圧着端子Aを、スライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを端子案内部6bに押し当てて、クリンパー部4に対する圧着端子Aの相対的な位置を決めるので、キャリアBと圧着端子Aの連結部Aaを所望するカットオフタブ長に切除する作業が正確に行える。また、端子圧着時において、圧着端子Aの位置が水平方向へ変位することがなく、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続する作業が安定して行える。また、端子案内部6bの位置を調整する手間及び作業が省けるだけでなく、端子案内部6bにおける端子詰りが発生するのを防止することもできる。
【0059】
また、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てて位置決めした状態で、圧着端子AのワイヤーバレルAcにベルマウスを形成するので、ベルマウスを所定位置に形成する作業が正確且つ容易に行えるとともに、ベルマウスの位置が安定するため、ワイヤーバレルAc付近に亀裂や割れ等が発生する圧着不良が起きるのを防止することができる。
【0060】
図10は、ワイヤークリンパー13のスカート部13b,13bにガイド面13c,13cを形成した他の例を示し、アンビル部3上に供給された圧着端子AのワイヤーバレルAcに、ワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cを垂直に押し当てて、圧着端子A全体を、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動させる。圧着端子AのインシュレーションバレルAbを、スライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てて位置決めするので、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。この場合、圧着端子AのワイヤーバレルAcがインシュレーションバレルAbよりも先に加締められるように、インシュレーションクリンパー12とワイヤークリンパー13を高さ調整している。
【0061】
図11は、図10とは逆向きのガイド面13c,13cを、ワイヤークリンパー13のスカート部13b,13bに形成した他の例を示し、アンビル部3上に供給された圧着端子AのワイヤーバレルAcに、ワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cを図10とは逆向きに押し当てて、圧着端子A全体を、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bから圧着端子AのインシュレーションバレルAbが離間される方向(図中の右方向)へ水平移動させて押し当て部20に押し当てる。こうして、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをスライドカッタ6の端子案内部6bに対して所定間隔に離間した位置に規制した後、端子案内部6bのガイド溝6cから突出された連結部Aaをスライドカッタ6により剪断するので、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残す場合に用いることができる。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の剪断手段は、実施例のスライドカッタ6、インシュレーションクリンパー12に対応し、
以下同様に、
端子受け部材は、アンビル部3のインシュレーションアンビル7と、ワイヤーアンビル8に対応し、
端子圧着部材は、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12と、ワイヤークリンパー13に対応し、
所定の部材は、端子案内部6b、押し当て部20に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0063】
例えば図10とは逆向きのガイド面13c,13cが形成されたワイヤークリンパー13を、前記実施例のガイド面12c,12cが形成されたインシュレーションクリンパー12と併用してもよい。
【0064】
また、本発明の製造方法は、例えば圧着端子AのワイヤーバレルAcに図示しないベルマウスを形成しない場合と、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残す場合にも用いることができる。
【0065】
また、実施例の製造方法は、インシュレーションクリンパー12のガイド面12c,12cを圧着端子AのインシュレーションバレルAbに押し当てるか、ワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cを、圧着端子AのワイヤーバレルAcに押し当てるものであるが、例えばインシュレーションクリンパー12のガイド面12c,12c及びワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cが、圧着端子AのインシュレーションバレルAb及びワイヤーバレルAcに対して同時に押し当てられるように、インシュレーションクリンパー12とワイヤークリンパー13を高さ調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】端子付き電線を製造する端子付き電線製造装置の構成を示す斜視図。
【図2】端子付き電線製造装置による端子付き電線の製造方法を示す正面図。
【図3】スライドカッタによるキャリア及び連結部の剪断状態を示す平面図。
【図4】クリンパーのスカート部にガイド面を形成した例を示す斜視図。
【図5】クリンパーのスカート部に形成したガイド面を示す底面図。
【図6】アンビル部上に圧着端子を載置した状態を示す側面図。
【図7】圧着端子のバレル部にガイド面を押し当てた状態を示す側面図。
【図8】圧着端子のバレル部を端子案内部に押し当てた状態を示す側面図。
【図9】キャリアと圧着端子を連結する連結部の剪断状態を示す側面図。
【図10】ワイヤークリンパーにガイド面を形成した他の例を示す側面図。
【図11】図10とは逆向きにガイド面を形成した他の例を示す側面図。
【図12】従来例の端子付き電線の製造方法を示す側面図。
【符号の説明】
【0067】
A…圧着端子
Aa…連結部
Ab…インシュレーションバレル
Ac…ワイヤーバレル
B…キャリア
C…端子帯
1…端子付き電線製造装置
2…装置本体
3…アンビル部
4…クリンパー部
6…スライドカッタ
6b…端子案内部
6c…ガイド溝
7…インシュレーションアンビル
8…ワイヤーアンビル
11…カットオフパンチ
12…インシュレーションクリンパー
13…ワイヤークリンパー
12a,13a…バレル加締め部
12b,13b…スカート部
12c,13c…ガイド面
16…カットホルダ
16a…保持溝
20…押し当て部
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば導電性を有する金属製の圧着端子を電線の端部に圧着接続する際に用いられる端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述の圧着端子を電線の端部に圧着接続する方法としては、例えば図12に示すように、端子帯CのキャリアBを端子案内部26に形成したガイド溝26aに挿入しながら、キャリアBに連結された各圧着端子A…をプレス部20のアンビル部23上に1個ずつ供給する。アンビル部23上に供給された圧着端子Aを、アンビル部23の前部(図中の左側)に配置した端子案内部26と、後部(図中の右側)に配置した端子案内部27で保持して位置決めした後、端子案内部26のガイド溝26aに挿入された連結部Aaを端子案内部26により剪断して、キャリアBから圧着端子Aを分離する。且つ、圧着端子AのインシュレーションバレルAbとワイヤーバレルAcを、アンビル部23のインシュレーションアンビル23a及びワイヤーアンビル23bと協働して、クリンパー部24のインシュレーションクリンパー24a及びワイヤークリンパー24bにより加締めて、圧着端子Aを、図示しない電線の端部に圧着接続する特許文献1の端子圧着用アプリケータがある。
【特許文献1】特許第3440849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記圧着端子Aを、アンビル部23上に対して変形させることなく1個ずつ供給するには、アンビル部23上に供給される圧着端子Aと各端子案内部26,27の間に適度な隙間が必要であるが、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをクリンパー部24のインシュレーションクリンパー24aにより垂直方向に加締める際に、前記隙間分だけ、各端子案内部26,27のいずれか一方に向けて押し当てられる方向へ圧着端子Aの位置が変位しやすく、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続する作業が安定して行えない。圧着端子Aの位置が安定しないと、連結部Aaの剪断時において、圧着端子Aの連結側端部に残される連結部Aaのカットオフタブ長にばらつきが生じる。また、カットオフタブである連結部Aaが圧着端子Aの連結側端部に残ってしまうと、例えばコネクタ等の端子挿入部に圧着端子Aを挿入した際に、損傷や欠損等が端子挿入部内に起きやすく、接続不良の原因となる。
【0004】
この発明は前記問題に鑑み、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業と、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が正確且つ安定して行える端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、帯状のキャリアに対して幅方向に突出する状態に連結され、該キャリアの長さ方向に対して並列に配列された各圧着端子を端子受け部材上に1個ずつ供給し、該キャリアと圧着端子を連結する連結部を剪断手段により剪断して、キャリアから圧着端子を分離するとともに、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子付き電線の製造方法であって、前記端子圧着部材を下降させて前記圧着端子のバレル部を加締める際に、該圧着端子のバレル部に前記端子圧着部材に形成したガイド面を押し当てて、前記圧着端子全体を水平移動させ、所定の部材に押し当てて位置決めするか、押し当てられる直前に位置決めすることを特徴とする。
【0006】
この発明によると、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部に端子圧着部材のガイド面を押し当てて、圧着端子全体を水平移動させ、所定の部材に押し当てて位置決めするか、押し当てられる直前に位置決めした後、キャリアと圧着端子を連結する連結部を剪断手段により剪断して、キャリアから圧着端子を分離する。且つ、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、圧着端子を電線の端部に圧着接続するものである。
【0007】
つまり、端子圧着部材に対する圧着端子の相対的な位置が決められるので、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が安定して行える。また、連結部の剪断時において、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業が安定して行える。例えばカットオフタブである連結部が不要な場合は、連結部が残らない状態に剪断することもできる。また、例えば圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めした状態で、圧着端子のバレル部にベルマウスを形成すれば、ベルマウスの位置が安定する。
【0008】
前記圧着端子は、例えばカットオフタブである連結部を介して、帯状に形成されたキャリアの一側縁部に対して幅方向に突出又は直交する方向に連結され、該キャリアの長さ方向に対して所定等間隔に隔てて並列に配列している。また、圧着端子のバレル部は、例えばインシュレーションバレル、ワイヤーバレル等で構成することができる。また、端子受け部材は、例えばアンビル部のインシュレーションアンビル、ワイヤーアンビル等で構成することができる。また、端子圧着部材は、例えば端子圧着部材のインシュレーションクリンパー、ワイヤークリンパー等で構成することができる。また、端子圧着部材のガイド面は、例えばテーパー面、滑らかな曲面等で構成することができる。また、剪断手段は、例えばスライドカッタ、カットホルダ、インシュレーションクリンパー等の剪断力を生じさせるもので構成することができる。また、所定の部材は、例えば端子案内部、押し当て部等で構成することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1に記載の構成と併せて、前記圧着端子全体を、前記バレル部と対向する位置に配置された所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、該圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めすることを特徴とする。
【0010】
この発明によると、圧着端子全体を、所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めするので、キャリアと圧着端子の連結部を残らない状態に切除する作業が正確に行える。
【0011】
請求項3に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1又は2に記載の構成と併せて、前記圧着端子のバレル部をインシュレーションバレルとワイヤーバレルで構成するとともに、前記ガイド面を、前記端子圧着部材の前記インシュレーションバレルに押し当てられる部分に形成したことを特徴とする。
【0012】
この発明によると、端子圧着部材のガイド面を、圧着端子のインシュレーションバレルに押し当てて、圧着端子全体を所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させる。つまり、圧着端子のインシュレーションバレルは、通常、電線の導体が接続される圧着端子のワイヤーバレルよりも高い。詳述すると、電線を構成する導体よりも該導体に被覆された被覆部の径が大きいので、圧着端子のインシュレーションバレルも必然的に高くなる。よって、位置決めする際に、端子圧着部材のガイド面を最初に押し当てるのにワイヤーバレル側よりインシュレーションバレル側が好適である。前記位置決めを圧着端子のワイヤーバレル側で行うには、インシュレーションバレルとワイヤーバレルの高低差だけ、端子圧着部材の一部を多く突出させることになり、実施例において端子圧着部材を構成するインシュレーションクリンパーやワイヤークリンパー等を配置する位置精度や、調整の面においてインシュレーションバレルで行う場合よりは多少難しいものとなる。
【0013】
請求項4に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1〜3のいずれか一つに記載の構成と併せて、前記ガイド面を、前記端子圧着部材に形成したバレル加締め部の下端側開放部よりも外側であって、前記圧着端子のバレル部に押し当てられる前記端子圧着部材の両側下縁部に形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によると、端子圧着部材の両側下縁部に形成したガイド面を圧着端子のバレル部に押し当てて、圧着端子全体を、所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させるが、ガイド面を、圧着端子のバレル部が直接加締められる端子圧着部材のバレル加締め部に形成すると、端子圧着時において、圧着端子は電線の端部に圧着されながら所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動することになり、圧着端子の位置が不安定となる。これらを考慮すると、ガイド面は、圧着端子のバレル部を直接加締めるバレル加締め部よりも、端子圧着部材の両側下縁部のみに形成したほうがよい。しかも、圧着端子のバレル部が端子圧着部材のバレル加締め部に押し当てられた際に、所定の部材に対して圧着端子のバレル部が押し当てられる位置か、近接される程度の位置に移動されるのがよい。前記近接した状態からは、ガイド面以外の部分(例えば平面部分)が圧着端子のバレル部に押し当てられ、端子圧着部材の全圧力が上方から下方に向けて加えられるのがよい。
【0015】
請求項5に記載した発明の端子付き電線の製造方法は、前記請求項1〜4のいずれか一つに記載の構成と併せて、前記圧着端子のバレル部に端子圧着部材のガイド面を押し当て終った時点で、前記圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられる位置か、該所定の部材に押し当てられる直前の位置に水平移動されるように前記端子受け部材及び端子圧着部材を構成したことを特徴とする。
【0016】
この発明によると、端子圧着部材のガイド面を圧着端子のバレル部に押し当てられた状態から、圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられると、その押し当て時に生じる力が圧着端子に加えられるため、例えば変形、歪み、破損等が圧着端子に生じる可能性が大きくなる。よって、圧着端子のバレル部に端子圧着部材のガイド面を押し当て終った時点で、圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられる位置か、押し当てられる直前の位置に水平移動される程度が好ましい(図8参照)。圧着端子全体が所定の部材に向けて押し当てられる方向へ移動されず、所定の部材から必要以上に離れすぎないようにすれば、圧着端子のバレル部が所定の部材に対して強く押し当てられたり、所定の部材から必要以上に離間されることを防止することができる。
【0017】
請求項6に記載した発明の端子圧着部材は、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子圧着部材であって、前記端子圧着部材の前記圧着端子のバレル部に押し当てられる部分に、前記圧着端子全体が前記バレル部と対向する位置に配置された所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させるガイド面を形成したことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部に、端子圧着部材に形成したガイド面を下方に向けて垂直に押し当てて、その垂直方向の押し当て力に対して、圧着端子全体が所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動される水平分力を生じさせるので、請求項1に記載の端子付き電線の製造方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、端子受け部材上に供給された圧着端子を所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて、端子圧着部材に対する圧着端子の相対的な位置を決めるので、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業が正確に行える。また、端子圧着時において、圧着端子の位置が水平方向へ変位することがなく、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が安定して行える。また、所定の部材の位置を調整する手間及び作業が省けるだけでなく、所定の部材における端子詰りが発生するのを防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明は、キャリアと圧着端子の連結部を所望するカットオフタブ長に切除する作業と、圧着端子を電線の端部に圧着接続する作業が正確且つ安定して行えるという目的を、端子受け部材上に供給された圧着端子を所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、該圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めすることで達成することができる。
【実施例】
【0021】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
【0022】
図面は、圧着端子を電線の端部に圧着接続する際に用いられる端子付き電線の製造方法及び端子圧着部材を示し、図1、図2、図3に於いて、この端子付き電線の製造方法は、端子帯CのキャリアBをスライドカッタ6の端子案内部6bに形成したガイド溝6cに挿入しながら、キャリアBに連結された各圧着端子A…を端子受け部材であるアンビル部3上に1個ずつ供給する。
【0023】
アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、端子圧着部材であるクリンパー部4のインシュレーションクリンパー12に形成したガイド面12c,12cを押し当てて、圧着端子A全体を、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動する。
【0024】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbを端子案内部6bに押し当てて位置決めした後、端子案内部6bのガイド溝6cに挿入された連結部Aaをスライドカッタ6により剪断して、キャリアBから圧着端子Aを分離する。且つ、圧着端子AのインシュレーションバレルAbとワイヤーバレルAcを、アンビル部3のインシュレーションアンビル7及びワイヤーアンビル8と協働して、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12及びワイヤークリンパー13により加締めて、導電性を有する金属製の圧着端子Aを、図示しない電線の端部に圧着接続するものである。
【0025】
圧着端子Aは、連結部Aaを介して、帯状に形成されたキャリアBの一側縁部に対して幅方向に突出又は直交する方向に連結され、該キャリアBの長さ方向に対して所定等間隔に隔てて並列に配列している(図3参照)。通常、多数の各圧着端子A…を帯状に連鎖してなる端子帯Cはリール状に巻回している。
【0026】
前記端子付き電線の製造に用いられる端子付き電線製造装置1は、図示しないプレス装置に載置される装置本体2に、キャリアBの一側縁部に連結された圧着端子Aを略水平に支持するアンビル部3と、その圧着端子Aをアンビル部3と協働して加締めるクリンパー部4を上下に設けている(図1、図2参照)。
【0027】
図6に示すように、下側に設けたアンビル部3は、装置本体2下部に配置された基台5に、圧着端子Aの連結部Aa近傍を支持するスライドカッタ6と、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを支持するインシュレーションアンビル7と、圧着端子AのワイヤーバレルAcを支持するワイヤーアンビル8と、圧着端子Aの差込み部Adを支持するアンビルホルダ9を、後述する端子搬送装置18の搬送方向と直交して図6中の左端から前記の順に配置している。
【0028】
上側に設けたクリンパー部4は、装置本体2上部に配置されたシャンク10に、圧着端子Aの連結部Aaをスライドカッタ6と協働して剪断するカットオフパンチ11と、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをアンビル部3のインシュレーションアンビル7と協働して加締めるインシュレーションクリンパー12と、圧着端子AのワイヤーバレルAcをワイヤーアンビル8と協働して加締めるワイヤークリンパー13と、圧着端子Aの差込み部Adをアンビルホルダ9と協働して略水平に支持するスペーサー14,15を、後述する端子搬送装置18の搬送方向と直交して図6中に示す左端から前記の順に配置している。
【0029】
スライドカッタ6は、圧着端子AのインシュレーションバレルAbと対向する位置に配置され、基台5上に配置されたカットホルダ16の保持溝16aに対して上下摺動自在に保持され、後述するカットオフパンチ11と対向して下方に配置している。また、基台5とスライドカッタ6の間に圧縮装填したコイルバネ17,17(図1参照)の復元力により、スライドカッタ6上部に形成した端子案内部6b(端子案内部6bに形成したガイド溝6cを含む)がカットホルダ16の保持溝16aよりも上方へ突出される方向に常時付勢している。
【0030】
スライドカッタ6の端子案内部6bは、通常、カットオフパンチ11により下方へ押し下げられるまで、端子案内部6bのガイド溝6c底面と、インシュレーションアンビル7上面とが略一致(又は略水平となる高さ)する高さに突出されている(図6参照)。また、スライドカッタ6の一側上端部には、カットオフパンチ11の当接部11aが当接される受け部6aを形成している。
【0031】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbが押し当てられる端子案内部6bの案内面には、図6にも示すように、端子帯CのキャリアBが搬送方向に向けてガイドされるガイド溝6cを、後述する端子搬送装置18の搬送方向と平行して水平に形成している。また、ガイド溝6cの高さHは、キャリアBの厚み全体が挿入許容される寸法に形成され、ガイド溝6cの奥行Wは、キャリアBの横幅全体(連結部Aaを含む)が挿入許容される寸法に形成している。なお、ガイド溝6cの高さH及び奥行Wは、端子帯Cの搬送がスムースに行えるように若干余裕を持たせている。
【0032】
つまり、クリンパー部4のカットオフパンチ11を垂直に下降させ、カットオフパンチ11の当接部11aをスライドカッタ6の受け部6aに当接して、スライドカッタ6をカットホルダ16の保持溝16aに沿って下方へ垂直に押し下げる。端子帯CのキャリアBが搬送方向に挿入されたスライドカッタ6の端子案内部6bを、少なくともガイド溝6c全体がカットホルダ16の保持溝16a内に没入される高さまで下降(図9参照)させると、ガイド溝6cの搬送方向と平行する長手側角部と、インシュレーションクリンパー12の角部に剪断力が発生し、ガイド溝6c内に挿入された連結部Aaが、端子案内部6bに押し当てられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断される。
【0033】
また、ガイド溝6cの搬送方向と直交する短手側角部と、カットホルダ16の保持溝16aの搬送方向と直交する短手側角部にも剪断力が発生し、ガイド溝6cの搬入側及び搬出側に突出されたキャリアBが幅方向に剪断(図3参照)される。
【0034】
シャンク10は、装置本体2上部に対して上下摺動自在に保持され、図示しないプレス装置により、カットオフパンチ11と、インシュレーションクリンパー12と、ワイヤークリンパー13を一体的に上下動する。
【0035】
カットオフパンチ11は、シャンク10前部に対して上下摺動自在に保持され、前記スライドカッタ6と対向して上方に配置している。また、図示しないコイルバネの復元力により、シャンク10下端部よりも下方へ突出される方向に常時付勢している。また、カットオフパンチ11の一側下端部には、スライドカッタ6の受け部6aに当接される当接部11aを突設している。
【0036】
インシュレーションクリンパー12の下端側中央部には、図4、図5にも示すように、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを内側に向けて加締めるための凹状のバレル加締め部12aを形成している。
【0037】
バレル加締め部12aの両側内壁面は、下端側開放部から上端側閉塞部に向けて徐々に幅狭となる平面形状に形成され、圧着端子AのインシュレーションバレルAbが内側に向けて徐々に幅寄せされる角度に傾斜している。
【0038】
また、下端側開放部の内壁面は、圧着端子AのインシュレーションバレルAbよりも若干幅狭に形成され、後述するガイド面12c,12cに押し当てられた圧着端子AのインシュレーションバレルAbをバレル加締め部12aの両側内壁面に沿って挿入が許容される幅寄せ状態に矯正する。上端側閉塞部の内壁面は、圧着端子AのインシュレーションバレルAbが内側に向けて加締められる滑らかな曲面形状に形成している。
【0039】
また、バレル加締め部12aの下端側開放部よりも外側であって、圧着端子AのインシュレーションバレルAbに押し当てられるインシュレーションクリンパー12の両側下縁部に形成したスカート部12b,12bには、圧着端子AのインシュレーションバレルAb上端に押し当てられた際に、その垂直方向の押し当て力に対して水平分力を生じさせるガイド面12c,12cを形成している。
【0040】
ガイド面12c,12cは、バレル加締め部12aの下端側開放部に連続して形成され、インシュレーションクリンパー12の前面側から後面側に向けて徐々に低くなる角度に傾斜するテーパー面に形成している。
【0041】
底面から見たガイド面12c,12cは、図5に示すように、インシュレーションクリンパー12の前面側(図5の上方)から後面側(図5の下方)に向けて徐々に幅狭となる角度に傾斜している。また、側面から見ると、図6に示すように、インシュレーションクリンパー12の前面側(図6の左側)から後面側(図6の右側)に向けて徐々に低くなる角度に傾斜している。
【0042】
つまり、クリンパー部4を、図6に示す矢印のように、垂直に下降させると、アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、インシュレーションクリンパー12のスカート部12b,12bに形成したガイド面12c,12cが垂直に押し当てられ、図7中の矢印で示す水平分力が発生する。
【0043】
アンビル部3上に供給された圧着端子Aは、前記水平分力により、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて、圧着端子AのインシュレーションバレルAbが押し当てられる方向へ水平移動(図7中の矢印で示す左方向)される。
【0044】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbがスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当ててられるため、クリンパー部4に対する圧着端子Aの相対的な位置が決定される。なお、相対的な位置とは、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残さない場合(すなわち、カットオフタブ長が略ゼロの場合)、端子帯Cの連結部Aaを含むキャリアBがカットホルダ16の保持溝16a内に挿入され、ガイド溝6c内に挿入された連結部Aaが、スライドカッタ6の端子案内部6bに押し当ててられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断される位置である。なお、ガイド面12c,12cを、例えば円弧、楕円等の滑らかな曲面で構成してもよい。
【0045】
一方、ワイヤークリンパー13の下端側中央部にも、圧着端子AのワイヤーバレルAcを内側に向けて加締めるための凹状のバレル加締め部13aを形成している。なお、バレル加締め部13aの構造は、前記バレル加締め部12aと略同一であるので、その詳細な説明を省略する。
【0046】
アンビル部3側部(図1に示す左側)には、端子帯Cの各圧着端子A…をアンビル部3上に供給するための端子搬送装置18を配置している。端子搬送装置18は、クリンパー部4を昇降動作する図示しないプレス機構の動作と連動して、端子帯Cの各圧着端子A…を、インシュレーションアンビル7と、ワイヤーアンビル8と、アンビルホルダ9からなるアンビル部3上に対して1個ずつ間欠的に供給する。
【0047】
アンビル部3のアンビルホルダ9上部には、図6に示すように、端子搬送装置18により搬送される圧着端子Aをアンビル部3上にガイドするための端子案内部19を配置している。端子案内部19は、圧着端子AのワイヤーバレルAcと差込み部Adの谷間部分に対して係止が許容される形状に形成され、端子搬送装置18により搬送される圧着端子Aがアンビル部3上に供給されるようにガイドする。なお、端子案内部19は、圧着時においてアンビルホルダ9上から退避される。
【0048】
図示実施例は前記の如く構成するものにして、以下、端子付き電線製造装置1による端子付き電線の製造方法を説明する。
【0049】
先ず、図1〜図3、図6に示すように、端子搬送装置18を駆動して、リール状に巻回された端子帯Cの各圧着端子A…をアンビル部3上に対して1個ずつ間欠的に供給するとともに、端子帯CのキャリアBを、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに形成したガイド溝6cに対して搬送方向へ挿入する。
【0050】
次に、圧着端子Aを加締める前に、図示しない接続側端部の被覆材が除去された電線を、アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに電線の被覆材が除去された導体部分が位置し、ワイヤーバレルAc上に電線の被覆部分が位置するようにセットする。
【0051】
次に、図7に示すように、クリンパー部4を、図示しないプレス機構により下降させ、アンビル部3上に供給された圧着端子AのインシュレーションバレルAbに、インシュレーションクリンパー12のスカート部12b,12bに形成したガイド面12c,12cを押し当てて、図7中の矢印で示す水平分力を発生させる。
【0052】
次に、図8に示すように、アンビル部3上に供給された圧着端子Aを、前記水平分力により、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動(図8中の矢印で示す左方向)させる。
【0053】
圧着端子AのインシュレーションバレルAbにインシュレーションクリンパー12のガイド面12c,12cを押し当て終った時点で、圧着端子AのインシュレーションバレルAbがスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てられる位置か、押し当てられる直前の位置に水平移動させて、クリンパー部4に対する圧着端子Aの相対的な位置を決める。すなわち、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残さないようにする場合、連結部Aaが、ライドカッタ6の端子案内部6bに押し当ててられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断される位置に規制する。
【0054】
次に、図9に示すように、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てたまま、クリンパー部4のカットオフパンチ11を下降させ、カットオフパンチ11の当接部11aをスライドカッタ6の受け部6aに当接して、スライドカッタ6を下方へ垂直に押し下げる。
【0055】
端子帯CのキャリアBが挿入された端子案内部6bを、少なくともガイド溝6c全体がカットホルダ16の保持溝16a内に没入される高さまで下降(図9参照)させ、ガイド溝6cの長手側角部と、インシュレーションクリンパー12の角部により、ガイド溝6c内に挿入された連結部Aaを、端子案内部6bに押し当てられた圧着端子AのインシュレーションバレルAb端面に沿って剪断する。
【0056】
また、ガイド溝6cの短手側角部と、カットホルダ16の保持溝16aの短手側角部により、ガイド溝6cの搬入側及び搬出側に突出されたキャリアBを幅方向に剪断(図3参照)して、圧着端子AをキャリアBから1個ずつ分離する。
【0057】
剪断時において、クリンパー部4を、図示しないプレス機構により圧着位置まで下降させ、図示しない電線がセットされた圧着端子AのインシュレーションバレルAbとワイヤーバレルAcを、アンビル部3のインシュレーションアンビル7及びワイヤーアンビル8と協働して、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12及びワイヤークリンパー13により加締めて、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続するので、端子付き電線を連続して製造することができる。
【0058】
以上のように、アンビル部3上に供給された圧着端子Aを、スライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、圧着端子AのインシュレーションバレルAbを端子案内部6bに押し当てて、クリンパー部4に対する圧着端子Aの相対的な位置を決めるので、キャリアBと圧着端子Aの連結部Aaを所望するカットオフタブ長に切除する作業が正確に行える。また、端子圧着時において、圧着端子Aの位置が水平方向へ変位することがなく、圧着端子Aを電線の端部に圧着接続する作業が安定して行える。また、端子案内部6bの位置を調整する手間及び作業が省けるだけでなく、端子案内部6bにおける端子詰りが発生するのを防止することもできる。
【0059】
また、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをスライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てて位置決めした状態で、圧着端子AのワイヤーバレルAcにベルマウスを形成するので、ベルマウスを所定位置に形成する作業が正確且つ容易に行えるとともに、ベルマウスの位置が安定するため、ワイヤーバレルAc付近に亀裂や割れ等が発生する圧着不良が起きるのを防止することができる。
【0060】
図10は、ワイヤークリンパー13のスカート部13b,13bにガイド面13c,13cを形成した他の例を示し、アンビル部3上に供給された圧着端子AのワイヤーバレルAcに、ワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cを垂直に押し当てて、圧着端子A全体を、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bに向けて押し当てられる方向へ水平移動させる。圧着端子AのインシュレーションバレルAbを、スライドカッタ6の端子案内部6bに押し当てて位置決めするので、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。この場合、圧着端子AのワイヤーバレルAcがインシュレーションバレルAbよりも先に加締められるように、インシュレーションクリンパー12とワイヤークリンパー13を高さ調整している。
【0061】
図11は、図10とは逆向きのガイド面13c,13cを、ワイヤークリンパー13のスカート部13b,13bに形成した他の例を示し、アンビル部3上に供給された圧着端子AのワイヤーバレルAcに、ワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cを図10とは逆向きに押し当てて、圧着端子A全体を、カットホルダ16の保持溝16aよりも上方に突出するスライドカッタ6の端子案内部6bから圧着端子AのインシュレーションバレルAbが離間される方向(図中の右方向)へ水平移動させて押し当て部20に押し当てる。こうして、圧着端子AのインシュレーションバレルAbをスライドカッタ6の端子案内部6bに対して所定間隔に離間した位置に規制した後、端子案内部6bのガイド溝6cから突出された連結部Aaをスライドカッタ6により剪断するので、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残す場合に用いることができる。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の剪断手段は、実施例のスライドカッタ6、インシュレーションクリンパー12に対応し、
以下同様に、
端子受け部材は、アンビル部3のインシュレーションアンビル7と、ワイヤーアンビル8に対応し、
端子圧着部材は、クリンパー部4のインシュレーションクリンパー12と、ワイヤークリンパー13に対応し、
所定の部材は、端子案内部6b、押し当て部20に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0063】
例えば図10とは逆向きのガイド面13c,13cが形成されたワイヤークリンパー13を、前記実施例のガイド面12c,12cが形成されたインシュレーションクリンパー12と併用してもよい。
【0064】
また、本発明の製造方法は、例えば圧着端子AのワイヤーバレルAcに図示しないベルマウスを形成しない場合と、圧着端子Aの連結側端部にカットオフタブである連結部Aaを残す場合にも用いることができる。
【0065】
また、実施例の製造方法は、インシュレーションクリンパー12のガイド面12c,12cを圧着端子AのインシュレーションバレルAbに押し当てるか、ワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cを、圧着端子AのワイヤーバレルAcに押し当てるものであるが、例えばインシュレーションクリンパー12のガイド面12c,12c及びワイヤークリンパー13のガイド面13c,13cが、圧着端子AのインシュレーションバレルAb及びワイヤーバレルAcに対して同時に押し当てられるように、インシュレーションクリンパー12とワイヤークリンパー13を高さ調整してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】端子付き電線を製造する端子付き電線製造装置の構成を示す斜視図。
【図2】端子付き電線製造装置による端子付き電線の製造方法を示す正面図。
【図3】スライドカッタによるキャリア及び連結部の剪断状態を示す平面図。
【図4】クリンパーのスカート部にガイド面を形成した例を示す斜視図。
【図5】クリンパーのスカート部に形成したガイド面を示す底面図。
【図6】アンビル部上に圧着端子を載置した状態を示す側面図。
【図7】圧着端子のバレル部にガイド面を押し当てた状態を示す側面図。
【図8】圧着端子のバレル部を端子案内部に押し当てた状態を示す側面図。
【図9】キャリアと圧着端子を連結する連結部の剪断状態を示す側面図。
【図10】ワイヤークリンパーにガイド面を形成した他の例を示す側面図。
【図11】図10とは逆向きにガイド面を形成した他の例を示す側面図。
【図12】従来例の端子付き電線の製造方法を示す側面図。
【符号の説明】
【0067】
A…圧着端子
Aa…連結部
Ab…インシュレーションバレル
Ac…ワイヤーバレル
B…キャリア
C…端子帯
1…端子付き電線製造装置
2…装置本体
3…アンビル部
4…クリンパー部
6…スライドカッタ
6b…端子案内部
6c…ガイド溝
7…インシュレーションアンビル
8…ワイヤーアンビル
11…カットオフパンチ
12…インシュレーションクリンパー
13…ワイヤークリンパー
12a,13a…バレル加締め部
12b,13b…スカート部
12c,13c…ガイド面
16…カットホルダ
16a…保持溝
20…押し当て部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のキャリアに対して幅方向に突出する状態に連結され、該キャリアの長さ方向に対して並列に配列された各圧着端子を端子受け部材上に1個ずつ供給し、該キャリアと圧着端子を連結する連結部を剪断手段により剪断して、キャリアから圧着端子を分離するとともに、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子付き電線の製造方法であって、
前記端子圧着部材を下降させて前記圧着端子のバレル部を加締める際に、該圧着端子のバレル部に前記端子圧着部材に形成したガイド面を押し当てて、前記圧着端子全体を水平移動させ、所定の部材に押し当てて位置決めするか、押し当てられる直前に位置決めすることを特徴とする
端子付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記圧着端子全体を、前記バレル部と対向する位置に配置された所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、該圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めする
請求項1に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記圧着端子のバレル部をインシュレーションバレルとワイヤーバレルで構成するとともに、
前記ガイド面を、前記端子圧着部材の前記インシュレーションバレルに押し当てられる部分に形成した
請求項1又は2に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記ガイド面を、前記端子圧着部材に形成したバレル加締め部の下端側開放部よりも外側であって、前記圧着端子のバレル部に押し当てられる前記端子圧着部材の両側下縁部に形成した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項5】
前記圧着端子のバレル部に前記端子圧着部材のガイド面を押し当て終った時点で、該圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられる位置か、押し当てられる直前の位置に水平移動されるように前記端子受け部材及び端子圧着部材を構成した
請求項1〜4のいずれか一つに記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項6】
端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を該端子受け部材と協働して加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子圧着部材であって、
前記端子圧着部材の前記圧着端子のバレル部に押し当てられる部分に、前記圧着端子のバレル部に対して垂直に押し当てた際に、該垂直方向の押し当て力に対して水平分力を生じさせるガイド面を形成したことを特徴とする
端子圧着部材。
【請求項1】
帯状のキャリアに対して幅方向に突出する状態に連結され、該キャリアの長さ方向に対して並列に配列された各圧着端子を端子受け部材上に1個ずつ供給し、該キャリアと圧着端子を連結する連結部を剪断手段により剪断して、キャリアから圧着端子を分離するとともに、端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を、該端子受け部材と協働して端子圧着部材により加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子付き電線の製造方法であって、
前記端子圧着部材を下降させて前記圧着端子のバレル部を加締める際に、該圧着端子のバレル部に前記端子圧着部材に形成したガイド面を押し当てて、前記圧着端子全体を水平移動させ、所定の部材に押し当てて位置決めするか、押し当てられる直前に位置決めすることを特徴とする
端子付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記圧着端子全体を、前記バレル部と対向する位置に配置された所定の部材に向けて押し当てられる方向へ水平移動させ、該圧着端子のバレル部を所定の部材に押し当てて位置決めする
請求項1に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項3】
前記圧着端子のバレル部をインシュレーションバレルとワイヤーバレルで構成するとともに、
前記ガイド面を、前記端子圧着部材の前記インシュレーションバレルに押し当てられる部分に形成した
請求項1又は2に記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記ガイド面を、前記端子圧着部材に形成したバレル加締め部の下端側開放部よりも外側であって、前記圧着端子のバレル部に押し当てられる前記端子圧着部材の両側下縁部に形成した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項5】
前記圧着端子のバレル部に前記端子圧着部材のガイド面を押し当て終った時点で、該圧着端子のバレル部が所定の部材に押し当てられる位置か、押し当てられる直前の位置に水平移動されるように前記端子受け部材及び端子圧着部材を構成した
請求項1〜4のいずれか一つに記載の端子付き電線の製造方法。
【請求項6】
端子受け部材上に供給された圧着端子のバレル部を該端子受け部材と協働して加締めて、該圧着端子を電線の端部に圧着接続する端子圧着部材であって、
前記端子圧着部材の前記圧着端子のバレル部に押し当てられる部分に、前記圧着端子のバレル部に対して垂直に押し当てた際に、該垂直方向の押し当て力に対して水平分力を生じさせるガイド面を形成したことを特徴とする
端子圧着部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−234925(P2008−234925A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70917(P2007−70917)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
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