説明

端子及びコネクタ

【課題】製造費及び設備費を極力抑えて円滑にハウジングへ組み付けることが可能な端子及びコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタハウジングに保持される導電性材料からなる端子10であって、長手方向及び短手方向のそれぞれに線対称に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングに保持されてコネクタを構成する端子及び端子を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コネクタは、コネクタハウジングに端子を保持させた構成とされている。端子は、コネクタハウジングに形成された挿入孔へ挿し込まれることにより、コネクタハウジングに保持される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、コネクタハウジングに収容される端子として、前後方向に対称に形成されたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−299610号公報
【特許文献2】特開2004−158338号公報
【特許文献3】特開2006−32218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2に記載のコネクタに設けられた端子は、相手方のコネクタの端子との接続側と装置や基板等への接続側とで形状が異なる。このため、コネクタハウジングへの取り付けの際に、前後方向及び上下方向に端子の向きを合わせなければならなかった。
【0006】
また、特許文献3に記載のコネクタに設けられた端子は、前後方向に対称であるため、コネクタハウジングへの取り付けの際に前後方向の向きを合わせる必要はないが、端子の上下方向の向きを合わせなければならなかった。
【0007】
このように、上記のコネクタの端子では、コネクタハウジングへ組み付ける際に、自動機や画像処理装置を用いて端子の向きを合わせなければならず、製造工数の増加によって製造費が嵩んでしまうとともに設備費も嵩んでしまう。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造費及び設備費を極力抑えて円滑にハウジングへ組み付けることが可能な端子及びコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) コネクタハウジングと、該コネクタハウジングを構成する壁部に形成された挿通孔に挿通されて固定される導電性材料からなる端子と、を備え、前記コネクタハウジング内にポッティング材が充填されて前記挿通孔が前記ポッティング材でシールされたコネクタであって、
前記端子は、長手方向の中心点から同距離に同形状の第一の保持部及び第二の保持部を有し、かつ長手方向に線対称に形成されており、
前記第一の保持部又は前記第二の保持部の一方の保持部が前記挿通孔で保持されているとともに、他方の保持部が前記ポッティング材により被覆されていること。
(2) 上記(1)の構成のコネクタにおいて、
前記端子は、短手方向に線対称に形成されていること。
(3) 上記(1)または(2)の構成のコネクタにおいて、
前記第一の保持部及び前記第二の保持部は、他の部分と異なる大きさの断面形状とされていること。
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つの構成のコネクタにおいて、
前記端子は、インサート成形によって前記コネクタハウジングに固定されていること。
【0010】
上記(1)の構成のコネクタでは、一方の保持部を挿通孔で良好に保持させることができるとともに、他方の保持部をポッティング材で良好に保持させてシールさせることができる。また、長手方向の中心点から同距離に同形状の第一の保持部及び第二の保持部を有し、かつ長手方向に線対称に形成された端子を用いるので、コネクタハウジングへ保持させる際に、前後方向に対して向きを選別して合わせる作業を不要とすることができる。これにより、コネクタハウジングに保持させる際の製造工数を低減して製造費を削減することができるとともに、端子の向きを合わせるための自動機や画像処理装置を不要とすることができ、設備費を削減することができる。
上記(2)の構成のコネクタでは、コネクタハウジングに保持させる端子が、短手方向にも線対称に形成されているので、前後方向だけでなく上下方向に対しても向きを選別して合わせる作業を不要とすることができる。これにより、コネクタハウジングに保持させる際の製造工数をさらに低減して製造費を削減することができるとともに、端子の向きを合わせるための自動機や画像処理装置を不要とすることができ、設備費を削減することができる。
上記(3)の構成のコネクタでは、第一の保持部及び第二の保持部が他の部分と異なる大きさの断面形状とされているので、他の部分との間に段部が形成される。したがって、第一の保持部または第二の保持部を段部でコネクタハウジングの壁部へ食い込ませることができ、また、第一の保持部または第二の保持部に対するポッティング材の接着面積を増やすことができ、シール性の向上を図ることができる。
上記(4)の構成のコネクタでは、端子の第一の保持部または第二の保持部を、コネクタハウジングを構成する樹脂に対して確実に食い込ませることができる。したがって、コネクタハウジングの壁部へ端子を強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造費及び設備費を極力抑えて円滑にハウジングへ組み付けることが可能な端子及びコネクタを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る端子の平面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る端子の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るコネクタの装着側から視た斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るコネクタの断面図である。
【図5】図5は、コネクタにおける端子の装着箇所を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る端子の平面図、図2は本発明の実施形態に係る端子の斜視図、図3は本発明の実施形態に係るコネクタの装着側から視た斜視図、図4は本発明の実施形態に係るコネクタの断面図、図5はコネクタにおける端子の装着箇所を示す拡大断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、端子10は、銅または銅合金等の導電性金属材料を、例えば、プレス加工等により棒状に形成したものである。
【0017】
この端子10は、断面視矩形状に形成されて各面における幅寸法が同一にされており、一方の端部が第一の接続部11とされ、他方の端部が第二の接続部12とされている。
【0018】
また、この端子10は、第一の保持部15及び第二の保持部16を有している。これらの第一の保持部15及び第二の保持部16は、長手方向の中心点Oから同距離Aに形成されており、これにより、第一の保持部15から第一の接続部11の端部までの距離及び第二の保持部16から第二の接続部12の端部までの距離が、同距離Bとされている。
【0019】
これらの第一の保持部15及び第二の保持部16は、他の部分よりも一回り外形が小さくされた断面視矩形状に形成されている。これにより、これらの第一の保持部15及び第二の保持部16は、他の部分との境に、段部15a,16aが形成されている。
【0020】
そして、この端子10は、長手方向及び短手方向のそれぞれに線対称に形成されている。
【0021】
また、この端子10の第一の接続部11及び第二の接続部12は、その先端における四辺に面取りが施されており、これにより、この端子10の第一の接続部11及び第二の接続部12の先端は先細り形状とされ、接続相手の端子等との接続の円滑化が図られている。
【0022】
次に、上記の端子10を備えたコネクタについて説明する。
【0023】
図3及び図4に示すように、このコネクタ21は、樹脂から形成された筒状のコネクタハウジング22を有している。このコネクタハウジング22には、軸方向の中間部に、平面視円板状に形成された保持壁部23が一体に成形されている。そして、コネクタハウジング22は、保持壁部23によって内部が分割されており、一方側が接続凹部25とされ、他方側が装着凹部26とされている。このコネクタハウジング22は、一方側の接続凹部25に、相手方のコネクタが接続される。つまり、このコネクタ21は、接続凹部25側が、相手方のコネクタとの接続部21aとされている。また、このコネクタ21は、接続部21aと反対側が、装置の取付孔等へ嵌合されて装着される装着部21bとされている。
【0024】
このコネクタハウジング22の保持壁部23には、軸方向に貫通する複数の挿通孔28が形成されており、これらの挿通孔28のそれぞれに端子10が挿入されて固定されている。
【0025】
図5に示すように、保持壁部23の挿通孔28には、端子10の第一の保持部15が配置されて固定されている。これにより、端子10の第一の接続部11がコネクタハウジング22の接続凹部25側へ突出されて配置され、端子10の第二の接続部12及び第二の保持部16がコネクタハウジング22の装着凹部26側へ突出されて配置されている。
【0026】
また、コネクタハウジング22の装着凹部26には、保持壁部23側に、ポッティング材29が充填されており、このポッティング材29によって挿通孔28がシールされている。このポッティング材29を装着凹部26へ充填することで、端子10の第二の保持部16がポッティング材29に配置されている。
【0027】
このコネクタハウジング22は、その外周に、フランジ部31が形成されている。また、フランジ部31よりも装着部21b側には、周方向にわたって形成された係合溝32が設けられており、この係合溝32には、Oリング33が嵌め込まれて装着されている。
【0028】
コネクタ21は、その装着部21bが装置の取付孔等へ、フランジ部31が装置に当接されるまで嵌合されて装着される。すると、装着部21bに設けられたOリング33が取付孔の内周面に密着し、よって、取付孔とコネクタ21との間がシールされる。そして、このように、装置に装着されたコネクタ21は、端子10の第二の接続部12が装置内の配線と接続される。
【0029】
また、装置に装着されたコネクタ21の接続部21aにおけるコネクタハウジング22の接続凹部25に相手方のコネクタを嵌合させると、コネクタ21の端子10の第一の接続部11に相手方のコネクタの端子が接続されて導通される。
【0030】
以上、説明したように上記実施形態に係る端子は、長手方向及び短手方向のそれぞれに線対称に形成されているので、前後方向及び上下方向のいずれの方向に対しても向きを選別して合わせる作業を不要とすることができる。これにより、コネクタハウジング22に保持させる際の製造工数を低減して製造費を削減することができるとともに、端子10の向きを合わせるための自動機や画像処理装置を不要とすることができ、設備費を削減することができる。
【0031】
例えば、コネクタハウジング22へ取り付ける際に、端子10の前後が逆であっても、挿通孔28に第二の保持部16を固定させ、ポッティング材29に第一の保持部15を保持させることができる。
【0032】
また、第一の保持部15を挿通孔28で良好に保持させることができるとともに、第二の保持部16をポッティング材29で良好に保持させてシールさせることができる。特に、第一の保持部15及び第二の保持部16が、他の部分よりも一回り外形が小さくされた断面視矩形状に形成されて他の部分との境に段部15a,16aを有する形状とされている。したがって、第一の保持部15を段部15aでコネクタハウジング22の保持壁部23へ食い込ませることができ、また、第二の保持部16に対するポッティング材29の接着面積を増やすことができ、シール性の向上を図ることができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、第一の保持部15及び第二の保持部16を、他の部分よりも小さな外形としたが、これらの第一の保持部15及び第二の保持部16を他の部分よりも大きな外形としても良い。
【0034】
また、端子10は、コネクタハウジング22の保持壁部23にインサート成形によって固定しても良い。このように、インサート成形によってコネクタハウジング22の保持壁部23に端子10を固定する場合では、端子10の第一の保持部15がコネクタハウジング22を構成する樹脂に対してさらに確実に食い込むこととなる。したがって、コネクタハウジング22の保持壁部23へ端子10を強固に固定することができる。
【0035】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0036】
10 端子
15 第一の保持部
16 第二の保持部
21 コネクタ
22 コネクタハウジング
23 保持壁部(壁部)
28 挿通孔
29 ポッティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングと、該コネクタハウジングを構成する壁部に形成された挿通孔に挿通されて固定される導電性材料からなる端子と、を備え、前記コネクタハウジング内にポッティング材が充填されて前記挿通孔が前記ポッティング材でシールされたコネクタであって、
前記端子は、長手方向の中心点から同距離に同形状の第一の保持部及び第二の保持部を有し、かつ長手方向に線対称に形成されており、
前記第一の保持部又は前記第二の保持部の一方の保持部が前記挿通孔で保持されているとともに、他方の保持部が前記ポッティング材により被覆されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記端子は、短手方向に線対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第一の保持部及び前記第二の保持部は、他の部分と異なる大きさの断面形状とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記端子は、インサート成形によって前記コネクタハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89387(P2013−89387A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227294(P2011−227294)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】