説明

端子圧着方法および端子圧着装置

【課題】外導体端子に設けられた一対のバレルをシールドケーブルの編組反転部に圧着した後において、スプリングバックによるバレルの開きを抑制することができる端子圧着方法を提供すること。
【解決手段】外導体端子の一端に設けられた一対のバレルを、クリンパの加圧面とアンビルの受圧面により上下に挟み込んでかしめることにより、シールドケーブルの編組反転部の外周に圧着させる端子圧着方法であって、クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端に段差部を介して繋がったテーパ部を有した形状に形成されると共に、アンビルの受圧面はその断面形状が半円よりも円弧角度が小さい円弧部と該円弧部の両円弧端の外側が凹設された逃げ部を有した形状に形成され、加圧面と受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を加圧面の段差部と受圧面の逃げ部の間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号線を一本有する同軸ケーブルや信号線を複数本有するシールドツイストペアケーブルなどのシールドケーブルの端末部に接続されるシールドコネクタの接続に関し、更に詳しくは、シールドケーブルが備える編組にシールドコネクタが備える外導体端子のバレルをかしめて圧着接続する端子圧着方法および端子圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションシステム等の自動車の電気装置に内蔵される電子部品やIC(集積回路)等が実装された制御用のプリント基板へ伝送される電気信号は高速化(高周波化)され、また、そのプリント基板に形成された回路パターンも密集し高密度化されてきている。一般的に、このような高周波の電気信号を伝送するためにシールドケーブルが用いられるが、伝送される電気信号の更なる高周波化に伴って、このシールドケーブルに接続されるシールドコネクタにも更なる高周波化対応の要求が高まっている。
【0003】
シールドケーブルの例として、いわゆる同軸ケーブルと呼ばれるものがある。一般的に用いられている同軸ケーブルは、電気信号等の伝送路として銅線などの複数の素線を束ねた信号導体を絶縁体により覆った信号線と、同じく複数の素線を編んだ導電性の編組と、この編組の外周を覆う絶縁性のシースとが同軸状に配された構造になっており、編組が信号導体の外周を隙間なく覆うことで電磁的にシールドしている。
【0004】
通常、このような高周波信号を伝送する同軸ケーブルの端末部分に接続されるシールドコネクタには、高周波信号を伝達する信号導体と接続される内導体端子と、編組と接続される共に内導体端子の外周を覆う外導体端子と、これら内導体端子と外導体端子の間に介在される所定の比誘電率を有する誘電体とが備えられており、同軸ケーブルの端末部分の絶縁体とシースが剥ぎ取られて露出された信号導体と編組にそれぞれ内導体端子と外導体端子が接続される。
【0005】
このようなシールドコネクタの例としては、例えば下記特許文献1に開示されているものがある。図13(a)はこのシールドコネクタの縦断面を示している。図示されるように、同軸ケーブルWの絶縁体WbとシースWeが剥ぎ取られて信号導体Waと編組Wdが露出した部分にシールドコネクタ100が接続されている。内導体端子101はバレル101aを介して信号導体Waと圧着接続され、外導体端子103は編組バレル103a,103bを介して編組Wdと圧着接続されており、これら両端子を絶縁状態にする誘電体102が両端子間に介在して設けられている。図13(b)は外導体端子103の編組バレル103a,103b部分の断面図を示している。
【0006】
図示されるように外導体端子103の編組バレル103a,103bは、露出された編組Wdを折り返してシースWe端部外周に被せた編組反転部Wf上にかしめられて編組Wdと圧着されている。この場合、一方の編組バレル103aの上に他方の編組バレル103bがオーバーラップするようにかしめられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−173725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように先端同士がオーバーラップするようにかしめられた編組バレル103a,103bは、スプリングバック(材料に荷重を加えて塑性変形させた後除荷すると、材料のもつ弾性のために原形に戻ろうとする現象)が発生することによって編組バレル103a,103bが開いてしまい、編組バレル103a,103bによる編組反転部Wfへの締め付け力が低下する結果、シールドコネクタ100に対する同軸ケーブルWの引き抜き強度が低下するという問題がある。
【0009】
そこで本発明が解決する課題は、外導体端子に設けられた一対のバレルをシールドケーブルの編組反転部に圧着した後において、スプリングバックによるバレルの開きを抑制することができる端子圧着方法および端子圧着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着方法であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端に段差部を介して繋がったテーパ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円よりも円弧角度が小さい円弧部と該円弧部の両円弧端の外側が凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の段差部と前記受圧面の逃げ部の間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにしたことを要旨とするものである。
【0011】
このような構成の端子圧着方法によれば、編組反転部の外周に圧着された外導体端子の一対のバレルは、その断面形状が略円形の左右端位置よりも下方の部位に外側に膨らんだ屈曲部を有した形状に形成されるので、屈曲部より上側部分のバレルには、屈曲部によって内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これにより従来のようなスプリングバックによるバレルの圧着後の開きが抑制されるので、バレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。
【0012】
また、上記課題を解決するため別の本発明は、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着方法であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の逃げ部と前記受圧面の逃げ部との間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにことを要旨とするものである。
【0013】
このような構成の端子圧着方法によれば、編組反転部の外周に圧着された外導体端子の一対のバレルは、その断面形状が円形の左右端部位に外側に膨らんだ屈曲部を有した形状に形成されるので、屈曲部より上側部分のバレルには、屈曲部によって内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これによりバレルの圧着後の開きが抑制されるので、バレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。
【0014】
この場合、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されている構成にすれば、簡便に各バレルの途中部位に屈曲部を形成することができる。つまりクリンパとアンビルによる圧着の前に、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、予め仮かしめ等により円形になるように形成しておけば、上記構成を有する加圧面が形成されたクリンパと受圧面が形成されたアンビルによってバレルの途中部位に屈曲部を形成するのが容易になる。また、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されると共に、該一対バレルの先端同士が係止されている構成にすれば、同様に簡便に各バレルの途中部位に屈曲部を形成することができると共に、圧着後のバレルの開きを確実に防止することができる。
【0015】
また、上記課題を解決するため更に別の本発明は、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着方法であって、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されており、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位には前記加圧面および前記受圧面の各頂点位置において屈曲部が形成されると共に、各屈曲部間には内側に湾曲した湾曲部が形成されるようにしたことを要旨とするものである。
【0016】
このような構成の端子圧着方法によれば、編組反転部の外周に圧着された外導体端子の一対のバレルは、その断面形状が六角形の各頂点に外側に膨らんだ屈曲部と、各頂点間が内側に湾曲した湾曲部を有した形状に形成されるので、各屈曲部によって各湾曲部が内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これによりバレルの圧着後の開きが抑制されるので、バレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。また、クリンパとアンビルによる圧着に先立って一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されているので、簡便に一対のバレルをその断面形状を六角形に形成することができる。つまりクリンパとアンビルによる圧着の前に、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、予め仮かしめ等により円形になるように形成しておけば、上記構成を有する半六角形の加圧面が形成されたクリンパと、半六角形の受圧面が形成されたアンビルによって一対のバレルをその断面形状が六角形になるように形成することが可能になる。
【0017】
この場合、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって円形状に形成された前記一対のバレルの先端同士が係止されている構成にすれば、圧着後のバレルの開きを確実に防止することができる。
【0018】
そして、上記課題を解決するため本発明は、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着装置であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端に段差部を介して繋がったテーパ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円よりも円弧角度が小さい円弧部と該円弧部の両円弧端の外側が凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の段差部と前記受圧面の逃げ部の間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにしたことを要旨とするものである。
【0019】
このような構成の端子圧着装置によれば、編組反転部の外周に圧着された外導体端子の一対のバレルは、その断面形状が略円形の左右端位置よりも下方の部位に外側に膨らんだ屈曲部を有した形状に形成されるので、屈曲部より上側部分のバレルには、屈曲部によって内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これによりバレルの圧着後の開きが抑制されるので、バレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。
【0020】
また、上記課題を解決するため別の本発明は、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着装置であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の逃げ部と前記受圧面の逃げ部との間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにことを要旨とするものである。
【0021】
このような構成の端子圧着装置によれば、編組反転部の外周に圧着された外導体端子の一対のバレルは、その断面形状が円形の左右端部位に外側に膨らんだ屈曲部を有した形状に形成されるので、屈曲部より上側部分のバレルには、屈曲部によって内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これにより一対の編組バレルのかしめ後の開きが抑制されるので、一対のバレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。
【0022】
この場合、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されている構成にすれば、簡便に各バレルの途中部位に屈曲部を形成することができる。つまりクリンパとアンビルによる圧着の前に、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、予め仮かしめ等により円形になるように形成しておけば、上記構成を有する加圧面が形成されたクリンパと受圧面が形成されたアンビルによってバレルの途中部位に屈曲部を形成するのが容易になる。また、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先立って前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されると共に、該一対バレルの先端同士が係止されている構成にすれば、同様に簡便に各バレルの途中部位に屈曲部を形成することができると共に、圧着後のバレルの開きを確実に防止することができる。
【0023】
また、上記課題を解決するため更に別の本発明は、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着装置であって、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先立って前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されており、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位には前記加圧面および前記受圧面の各頂点位置において屈曲部が形成されると共に、各屈曲部間には内側に湾曲した湾曲部が形成されるようにしたことを要旨とするものである。
【0024】
このような構成の端子圧着装置によれば、編組反転部の外周に圧着された外導体端子の一対のバレルは、その断面形状が六角形の各頂点に外側に膨らんだ屈曲部と、各頂点間が内側に湾曲した湾曲部を有した形状に形成されているので、各屈曲部によって各湾曲部が内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これによりバレルの圧着後の開きが抑制されるので、バレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。また、クリンパとアンビルによる圧着に先立って一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されているので、簡便に各バレルの途中部位に屈曲部と湾曲部を形成することができる。つまりクリンパとアンビルによる圧着の前に、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、予め仮かしめ等により円形になるように形成しておけば、上記構成を有する加圧面が形成されたクリンパと受圧面が形成されたアンビルによってバレルの途中部位に屈曲部と湾曲部を形成するのが容易になる。
【0025】
この場合、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先立って円形状に形成された前記一対のバレルの先端同士が係止されている構成にすれば、圧着後のバレルの開きを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る端子圧着方法および端子圧着装置によれば、外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、クリンパとアンビルによって挟み込んでかしめることにより、シールドケーブルの編組反転部に圧着させた後においては、各バレルの途中部位には屈曲部が形成されるので、この屈曲部によって各バレルには内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)が発生する。これによりバレルの開きが抑制されるので、バレルによる編組反転部への締め付け力の低下を抑制することができ、バレルに対するシールドケーブルの引き抜き強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る端子圧着方法および端子圧着装置が適用されるシールドコネクタを側方から見た断面図、(b)は(a)を反対側から見た断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る編組バレルを編組反転部に圧着する手順を示した図である。
【図3】第2実施形態に係る編組バレルを編組反転部に圧着する手順を示した図である。
【図4】第3の実施形態に係る編組バレルを円形に仮かしめする手順を示した図である。
【図5】第3の実施形態に係る編組バレルを編組反転部に圧着する手順を示した図である。
【図6】第1の実施形態の変形例に係る編組バレルを編組反転部に圧着する手順を示した図である。
【図7】第2の実施形態の変形例に係る編組バレルを編組反転部に圧着する手順を示した図である。
【図8】(a)は図1(a)のシールドコネクタの変形例を示した断面図、(b)は(a)を反対側から見た断面図である。
【図9】図8の編組バレルを円形に仮かしめするクリンパとアンビルの概略構成を示した図である。
【図10】図9の押圧型が下降した状態を示した図である。
【図11】図9のクリンパとアンビルを用いて編組バレルを円形に仮かしめする手順を示した図である。
【図12】図11の次の手順を示した図である。
【図13】(a)は従来用いられてきたシールドコネクタの概略構成を示した断面図、(b)は(a)の編組バレル部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る端子圧着方法および端子圧着装置の実施の形態について図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る端子圧着方法および端子圧着装置が適用されるシールドコネクタについて説明する。
【0029】
図1に示されるようにシールドコネクタ1は、同軸ケーブルWの端末において、同軸ケーブルWの信号導体Waに内導体端子2が接続され、この内導体端子2を誘電体5が収容保持し、この誘電体5を外導体端子6が内装し、外導体端子6が同軸ケーブルWのシールド導体Wdに接続されたもので構成されている。
【0030】
同軸ケーブルWは、電気信号等の伝送路として銅線などの複数の素線を撚り合わせて束ねられた信号導体Waと、同じく複数の素線を編んだ編組Wdと、これら導体の間に介在される絶縁体Wbと、編組Wdの外周を覆う絶縁性のシースWeとが同軸状に配された構造になっており、編組Wdが信号導体Waの外周を隙間なく覆うことで信号導体Waが電磁的にシールドされている。
【0031】
図示されるように同軸ケーブルWは、シースWeが所定長さ皮剥されて編組Wdが露出され、露出された編組Wdが所定長さ皮剥されて絶縁体Wbが露出され、露出された絶縁体Wbが所定長さ皮剥されて信号導体Waが露出されている。この場合、露出された編組Wdは折り返されてシースWe端末部に被せられた編組反転部Wfが形成されている。
【0032】
信号導体Waに接続されるシールドコネクタ1の内導体端子2は、導電性の板材が折り曲げ加工されて一体的に成形されたもので、いわゆるメス型の端子形状を有しており、図示しない相手側コネクタのオス型内導体端子に接続される端子部3を前方に備え、同軸ケーブルWの信号導体Waに接続される圧着部4を後方に備えている。
【0033】
図1に示されるように内導体端子2の端子部3は略筒形状を有しており、端子部3の内部に折り返されることにより形成された上下一対の弾性接触片3a,3aが設けられている。これら弾性接触片3a,3aは弾性的に撓み変形可能となっており、図示しない相手側コネクタのオス型内導体端子のタブ部が弾性接触片3a,3aの間に挿入されると弾性的に接触して信号の受け渡しができるようになる。また、端子部3の上面には、係止片3bが上方に向けて弾性的に撓み変形可能に突設されている。内導体端子2の圧着部4には、断面円弧状の底板の円弧端から上方に延設された左右一対のバレル5,6が設けられており、同軸ケーブルWの信号導体Waの外周にはバレル5,6がかしめられて圧着接続されている。
【0034】
このような内導体端子2を収容保持する誘電体7は、所定の比誘電率を有する絶縁性の合成樹脂により略円柱形状に一体的に成形されており、この誘電体7によって内導体端子2と外導体端子8との間が絶縁状態にされる。この誘電体7の内部には、前後方向に開口した端子収容室7aが貫通形成されており、この端子収容室7a内に内導体端子2が収容保持される。
【0035】
この端子収容室7aの後方の天井面には、内導体端子2の係止片3bが係止される係止孔7bが形成されており、この係止孔7bに内導体端子2の係止片3bが係止されると、内導体端子2は端子収容室7aから容易に抜けないように保持される。そして、誘電体7の後方の下面には、ロック突部7cが下方に向けて突設されている。
【0036】
このような誘電体7が内装される外導体端子8は、導電性の板材が折り曲げ加工されて一体的に成形されたもので、誘電体7が内装される略円筒状のシェル部9を前方に備え、同軸ケーブルWの編組Wd(編組反転部Wf)と接続される圧着部10を後方に備えている。
【0037】
シェル部9の前方側下面には、図示しないコネクタハウジングの収容部に外導体端子8が収容される際に、コネクタハウジングの収容部の底面に形成されているスリットに挿入されるスタビライザー9aが下方に突出して形成されている。このスタビライザー9aにより外導体端子8のコネクタハウジング内への挿入方向が規制される。また、スタビライザー9aの形成により生じた開口部9bの先端には、外導体端子8がコネクタハウジング内に挿入される際に、スタビライザー9aがコネクタハウジングの収容部の底面スリットに案内される案内片9cがテーパ形状に形成されている。
【0038】
そして、シェル部9の後方側下面には、誘電体7の後方側下面に突設されたロック突部7cと係合するロック片9dが上方に向けて撓み変形可能に形成されており、誘電体7が外導体端子8のシェル部9内に前方から挿入されると、誘電体7は容易に抜けないように保持される。尚、シェル部9の左右両側壁には、相手側コネクタの外導体端子の外壁と弾性的に接触する図示しない舌片状の接触片が形成されている。
【0039】
外導体端子8の圧着部10には、断面円弧形状を有する底板10aの左右端から上方に向かって延設された帯形状を有する一対の編組バレル11,12が設けられている。この場合、図中の編組バレル11,12は編組反転部Wfにかしめられて圧着される前の状態を示しており、これら編組バレル11,12は後述する圧着方法によって編組反転部Wfの外周にかしめられて圧着されるようになっている。また、編組反転部Wfが載置される圧着部10の底板10aの中央には突起部10bが内側に向かって突出するように形成されており、編組反転部Wfへの編組バレル11,12の圧着後においては、突起部10bの先端が編組反転部WfおよびシースWeに食い込むようになっている。
【0040】
次に、このような外導体端子8の圧着部10に設けられた編組バレル11,12を、同軸ケーブルWの編組反転部Wfの外周にかしめにより圧着させる第1の実施形態について図2を用いて説明する。図示されるように外導体端子8の圧着部10は、圧着装置20が備える上方に配置されたクリンパ21と下方に配置されたアンビル23とにより挟み込まれてかしめられると、編組反転部Wfの外周に圧着されるようになっている。
【0041】
この場合、クリンパ21には、断面形状が下方に開いた半円形状の半円部22aとこの半円部22aの両円弧端に段差部22b,22bを介して繋がると共に下方に延びたテーパ部22c,22cを有する加圧面22が形成されている。また、アンビル23には、断面形状が上方に開いた半円より円弧角度が小さい形状の円弧部24aとこの円弧部24aの両円弧端の外側が凹設された逃げ部24b,24bを有する受圧面24が形成されている。
【0042】
図2(a)に示されるように、編組反転部Wfが底板10aの上面に載置された圧着部10の上方からクリンパ21が下降すると、編組バレル11,12の先端11a,12aが半円部22aに沿って内側に折れ曲がり始める。そして、半円部22aの最上点で、編組バレル11,12の先端11a,12a同士が突き当たり、その突き当たったときの円形状態を維持したまま、クリンパ21が更に下降することで、編組バレル11,12は内側に圧縮される。
【0043】
このとき、図2(b)に示されるように、円形状に形成された編組バレル11,12の径方向内側への圧縮により編組バレル11,12の肉厚の余った分が、加圧面22の段差部22b,22bと受圧面24の逃げ部24b,24bとの間に屈曲部25,26としてはみ出るようになる。この場合、屈曲部25,26は、略円形状にかしめられた編組バレル11,12の左右端位置よりも下方の位置に形成される。
【0044】
このように、編組バレル11,12を円形状にかしめつつ、編組バレル11,12の途中部位に屈曲部25,26が形成されるように編組反転部Wに圧着させることで、図2(c)に示されるように、屈曲部25,26より上側部分の編組バレル11,12には、屈曲部25,26によって内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)F1,F1が発生する。これにより編組バレル11,12の圧着後の開きが抑制されるので、編組バレル11,12による編組反転部Wfへの締め付け力の低下を抑制することができ、バレル11,12に対する同軸ケーブルWの引き抜き強度を向上させることができる。
【0045】
次に、外導体端子8の圧着部10に設けられた編組バレル11,12を、同軸ケーブルWの編組反転部Wfの外周にかしめにより圧着させる第2の実施形態について図3を用いて説明する。
【0046】
図示されるように、この場合、圧着装置30が備えるクリンパ31には、断面形状が下方に開いた半円形状の半円部32aとこの半円部32aの両円弧端の外側部分が凹設された逃げ部32b,32bを有する加圧面32が形成されている。また、圧着装置30が備えるアンビル33には、断面形状が上方に開いた半円形状の半円部34aとこの半円部34aの両円弧端の外側部分が凹設されたに逃げ部34b,34bを有する受圧面34が形成されている。
【0047】
図3(a)に示されるように、編組反転部Wfが底板10aの上面に載置された圧着部10の上方からクリンパ31が下降すると、最初に編組バレル11,12の先端11a,12aが加圧面32の半円部32aに沿って内側に折れ曲がり始める。そして、半円部32aの最上点で、編組バレル11,12の先端11a,12a同士が突き当たり、その突き当たったときの円形状態を維持したまま、クリンパ31が更に下降することで、編組バレル11,12は内側に圧縮される。
【0048】
このとき、図3(b)に示されるように円形状に形成された編組バレル11,12の径方向内側への圧縮により編組バレル11,12の肉厚の余った分が、加圧面32の逃げ部32b,32bと受圧面34の逃げ部34b,34bとの間に屈曲部35,36としてはみ出るようになる。この場合、屈曲部35,36は、円形状にかしめられた編組バレル11,12の左右端位置に形成される。
【0049】
このように編組バレル11,12を円形状にかしめつつ、編組バレル11,12の途中部位に屈曲部35,36が形成されるように編組反転部Wfに圧着させることで、図3(c)に示されるように屈曲部35,36より上側部分の編組バレル11,12には、屈曲部35,36によって内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)F2,F2が発生する。これにより編組バレル11,12の圧着後の開きが抑制されるので、編組バレル11,12による編組反転部Wfへの締め付け力の低下を抑制することができ、バレル11,12に対する同軸ケーブルWの引き抜き強度を向上させることができる。
【0050】
次に、外導体端子8の圧着部10に設けられた編組バレル11,12を、同軸ケーブルWの編組反転部Wfの外周にかしめにより圧着させる第3の実施形態について図4および図5を用いて説明する。この場合、編組バレル11,12は、図4に示される仮かしめ装置40が備えるクリンパ41とアンビル43によって円形状に仮かしめされた後、図5に示される圧着装置50が備えるクリンパ51とアンビル53によって略六角形状に本かしめされて編組反転部Wfに圧着されるようになっている。
【0051】
図4に示される仮かしめ装置40が備えるクリンパ41には、断面形状が下方に開いた半円形状の半円部42aとこの半円部42aの両円弧端に緩やかに繋がる下方に延びたテーパ部42b,42bを有する加圧面42が形成されている。また、仮かしめ装置40が備えるアンビル43には、断面形状が上方に開いた半円よりも円弧角度が小さい円弧部44aを有する受圧面44が形成されている。
【0052】
図4(a)に示されるように、編組反転部Wfが底板10aの上面に載置された圧着部10の上方からクリンパ41が下降すると、最初に編組バレル11,12の先端11a,12aが加圧面42のテーパ部42b,42bに沿って内側に折れ曲がり始める。そして、図4(b)に示されるように半円部42aの最上点で、編組バレル11,12の先端11a,12a同士が突き当たると、図4(c)に示されるような編組バレル11,12は円形状(円筒状)にかしめられる。このとき、円形状に形成された編組バレル11,12の内径は、編組反転部Wfの外径よりも大きい状態になっている。
【0053】
図5に示されるクリンパ51には、断面形状が半六角形(台形)の各頂点52a間が内側に膨らむように湾曲された湾曲面52b,52b,52bを有した加圧面52が形成されている。この場合、加圧面52は半六角形の対向する頂点52a,52aを水平線に一致させた形状になっている。また、アンビル53には、断面形状が半六角形(逆台形)の各頂点54a間が内側に膨らむように湾曲した湾曲面54b,54b,54bを有した受圧面54が形成されている。この場合も、受圧面54は半六角形の対向する頂点54a,54aを水平線に一致させた形状となっている。
【0054】
図5(a)に示されるように、図4に示したクリンパ41とアンビル43によって円形状にかしめられた編組バレル11,12をその先端11a,12aが水平線と一致するように右側に90度回転させて、アンビル53の受圧面54の上に載置し、その上方からクリンパ51を下降させると、クリンパ51の加圧面52とアンビル53の受圧面54によって図5(b)に示されるように編組バレル11,12はその径方向内側へ圧縮される。これにより図5(c)に示されるように、編組バレル11,12は、その断面が六角形の各頂点に外側に膨らんだ屈曲部55,55,55,・・・が形成された形状になると共に、各頂点間が内側に湾曲された湾曲部56,56,56,・・・が形成された形状になる。
【0055】
このように編組バレル11,12の途中部位に6つの屈曲部55を形成しつつ、各屈曲部55間に湾曲部56を形成するように編組反転部Wfに圧着させることで、図5(c)に示されるように編組バレル11,12には、底板10aよりも上側の屈曲部55,55,55,55によって湾曲部56,56,56,56が内側へ倒れ込むような弾性力(スプリングバック力)F3,F3,F3,F3が発生する。これにより、圧着後の編組バレル11,12の開きが抑制されるので、編組バレル11,12による編組反転部Wfへの締め付け力の低下を抑制することができ、バレル11,12に対する同軸ケーブルWの引き抜き強度を向上させることができる。
【0056】
次に、上述した第1の実施形態の変形例について図6を用いて説明する。尚、図示されるようにクリンパ21とアンビル23は、図2で説明したものと同じものであるので、同一の構成について同符号を付して説明は省略し、異なる点を中心に説明する。この場合、編組バレル11,12は、図4に示される仮かしめ装置40が備えるクリンパ41とアンビル43によって円形状に仮かしめされた後、図6に示される圧着装置20が備えるクリンパ21とアンビル23によって屈曲部25,26を形成するように本かしめされて編組反転部Wfに圧着されるようになっている。
【0057】
図6(a)に示されるように、図4に示した仮かしめ装置40のクリンパ41とアンビル43によって円形状にかしめられた編組バレル11,12の上方から圧着装置20のクリンパ21が下降すると、クリンパ21の加圧面22とアンビル23の受圧面24によって図6(b)に示されるように編組バレル11,12はその径方向内側へ圧縮され、編組バレル11,12の肉厚の余った分が、加圧面22の段差部22b,22bと受圧面24の逃げ部24b,24bとの間にはみ出た屈曲部25,26として形成される。
【0058】
このように圧着装置20が備えるクリンパ21とアンビル23による圧着(本かしめ)に先だって、編組バレル11,12を仮かしめ装置40が備えるクリンパ41とアンビル43によって円形状に仮かしめしておくことで、簡便に編組バレル11,12の途中部位に屈曲部25,26を形成することができる。
【0059】
次に、上述した第2の実施形態の変形例について図7を用いて説明する。尚、図示されるようにクリンパ31とアンビル33は、図3で説明したものと同じものであるので、同一の構成について同符号を付して説明は省略し、異なる点を中心に説明する。この場合、編組バレル11,12は、図4に示される仮かしめ装置40が備えるクリンパ41とアンビル43によって円形状に仮かしめされた後、図7に示される圧着装置30が備えるクリンパ31とアンビル33によって屈曲部35,36を形成するように本かしめされて編組反転部Wfに圧着されるようになっている。
【0060】
図7(a)に示されるように、図4に示した仮かしめ装置40のクリンパ41とアンビル43によって円形状にかしめられた編組バレル11,12の上方から圧着装置30のクリンパ31が下降すると、クリンパ31の加圧面32とアンビル33の受圧面34によって図7(b)に示されるように編組バレル11,12はその径方向内側へ圧縮され、編組バレル11,12の肉厚の余った分が、加圧面32の逃げ部32b,32bと受圧面34の逃げ部34b,34bとの間にはみ出て屈曲部35,36として形成される。
【0061】
このように圧着装置30が備えるクリンパ31とアンビル33による圧着(本かしめ)に先だって、編組バレル11,12を仮かしめ装置40が備えるクリンパ41とアンビル43によって円形状に仮かしめしておくことで、簡便に編組バレル11,12の途中部位に屈曲部35,36を形成することができる。
【0062】
次に、上述した第3の実施形態において図4を用いて説明した編組バレル11,12を円形状(円筒状)に仮かしめする場合の変形例について図8〜図12を用いて説明する。尚、上述した実施形態と同一の構成については同符号を付して説明は省略し異なる点を中心に説明する。
【0063】
図8に示されるように圧着部10に設けられた編組バレル11,12は、図1に示される編組バレル11,12とは先端の形状が異なっている。図8(b)に示されるように、一方の編組バレル11の先端11aには逆台形状の係止片11bが突出形成され、図8(a)に示されるように、他方の編組バレル12の先端12aには台形状の係止孔12bが切欠形成されている。
【0064】
この場合、編組バレル12が仮かしめされたときにその係止孔12bが編組反転部Wfの最上部の上方に位置するようにするために、かしめ前の状態においては、図8(a),(b)に示されるように、係止孔12bが設けられた編組バレル12の先端12aは、係止片11bが設けられた編組バレル11の先端11aよりも上方に位置している。
【0065】
図9は、このような係止片11bが設けられた編組バレル11と係止孔12bが設けられた編組バレル12を円形状にかしめつつ、係止片11bを係止孔12bに嵌り込ませて編組バレル11,12の先端同士を係止させる仮かしめ装置90の概略構成を示している。
【0066】
図示されるように仮かしめ装置90が備えるクリンパ91は、断面形状が下方に開いた半円形状の半円部92aと、この半円部92aの両円弧端に緩やかに繋がる下方に延びたテーパ部92b,92bを有した加圧面92が形成されている。この場合、右側のテーパ部92bは、左側のテーパ部92bよりも下方に位置している。
【0067】
また、加圧面92の半円部92aの中心のやや左側から右側のテーパ部92bの途中部位までの領域には、上下に貫通した型挿通孔91bが形成されており、この型挿通孔91bには押圧型95が入れ子式に設けられている。押圧型95はこの型挿通孔91bに上下にスライド可能に挿通されている。この場合、押圧型95の下端の押圧面96は、加圧面92の半円部92aの一部と一致する形状に形成されている。
【0068】
このようなクリンパ91の上端部および押圧型95の上端部はクリンパホルダ97の内部に形成された収容部97aに保持されている。
【0069】
図示されるようにクリンパ91は、クリンパホルダ97の下面から収容部97aに連通したクリンパ挿通孔97bに上下にスライド可能に挿通されており、クリンパ91の上端に形成された一対のフランジ部91a,91aが収容部97aの下面に載置されている。この場合、収容部97aの上面の左右両側には、その収容室97a内に断面下半分が臨むように2本のシャフト98,98が回転自在に挿入されている。このシャフト98は、上側に平面部98aを有する切欠円形の断面形状を有している。したがって、クリンパ91のフランジ部91aの上面と下面は、シャフト98の上側の平面部98aとは反対側の外周面と、収容部97aの下面との間に挟まれて位置決め固定されているので、クリンパホルダ97の昇降動に伴って、クリンパ91は上下に移動することが可能になっている。尚、クリンパホルダ97は、図示しない加圧手段に連結されている。
【0070】
また、押圧型95の上端に形成された一対のフランジ部95a,95aは、クリンパホルダ97の収容部97aの上面に固定されており、クリンパホルダ97の昇降動に伴って上下に移動することが可能になっている。
【0071】
この場合、図10に示されるように、図9に示される状態からシャフト98を180度回転させて、平面部98aを下側にすると、クリンパホルダ97によって押圧型95だけをクリンパ91よりも更に下方に所定ストローク下降させることができるようになっている。
【0072】
また、仮かしめ装置90が備えるアンビル93には、断面形状が上方に開いた半円よりも円弧角度が小さい円弧部94aを有する受圧面94が形成されている。
【0073】
次に、図11および図12を用いて、係止片11bが設けられた編組バレル11と係止孔12bが設けられた編組バレル12を、クリンパ91とアンビル93によって円形状に仮かしめする手順について説明する。
【0074】
図11(a)に示されるように、編組反転部Wfが底板10aの上面に載置された圧着部10の上方からクリンパ91が下降すると、係止片11bが設けられた編組バレル11の先端11aが、右側のテーパ部92bに沿って内側に折り曲げられると共に、係止孔12bが設けられた編組バレル12の先端12aが、左側のテーパ部92bに沿って内側に折り曲げられる。このとき、編組バレル11の係止片11bは型挿通孔91b内に臨んだ状態にされる。
【0075】
次に、図11(b)に示されるように、更にクリンパ91が下降すると、編組バレル11の先端11aは、右側のテーパ部92bの上方の半円部92aには至らない位置でほぼ直立状態に折り曲げられると共に、編組バレル12の先端12aは、半円部92aに到達してその半円部92aに沿って直立状態から更に内側に折り曲げられる。このときも、編組バレル11の係止片11bは型挿通孔91b内に臨んだ状態のままである。
【0076】
次に、図12(a)に示されるように、クリンパ91が最下点位置まで下降すると、編組バレル11の先端11aは半円部92aの中央より右側位置にまで導かれると共に、編組バレル12の先端12aは半円部92aの中央を越えて更に右側位置にまで導かれる。このとき、編組バレル11の係止片11bは、押圧型95の押圧面96の下方の型挿通孔91b内に臨むと共に、編組バレル12の係止孔12bの右斜め上方でその係止孔12bに嵌り込ませられることができるように配置されている。
【0077】
そして、シャフト98を180度回転させて、平面部98aを下側した状態で、クリンパホルダ97によって押圧型95だけをクリンパ91よりも更に下方に下降させると、図12(b)に示されるように、押圧面96によって係止片11bが下方に押圧されて係止孔11bに嵌り込まれることになる。これにより、編組バレル11,12は円形状に仮かしめされると共に、先端11a,12a同士が係止片11bと係止孔12bによって係止された状態にされる。このとき、円形状に形成された編組バレル11,12の内径は、編組反転部Wfの外径よりも大きい状態になっている。
【0078】
このように円形状に仮かしめされた編組バレル11,12を、図5〜図7で説明したように圧着装置50,20,30で本かしめして径方向内側に圧縮することで、図5(c),図6(c)および図7(c)に示されるように、各屈曲部55,25(26),35(36)によって編組バレル11,12を内側に倒れ込ませる弾性力(スプリングバック力)F3,F1,F2を発生させつつ、係止片11bと係止孔12bによって先端11a,12a同士が係止された状態で編組反転部Wfに圧着されることになる。これにより、圧着後の編組バレル11,12の開きを確実に防止することができる。したがって、編組バレル11,12による編組反転部Wfへの締め付け力の低下を抑制されて、バレル11,12に対する同軸ケーブルWの引き抜き強度を向上させることができる。
【0079】
また、図5〜7で説明した圧着装置50,20,30による圧着(本かしめ)に先だって、編組バレル11,12を仮かしめ装置90によって先端11a,12a同士が係止された状態で円形状に仮かしめしておくことで、簡便に編組バレル11,12の途中部位に屈曲部55,25(26),35(36)を形成することができる。
【0080】
以上、本発明に係る端子圧着方法および端子圧着装置の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、上記実施の形態では、信号線を一本有する同軸ケーブルに本発明を適用した場合について説明したが、信号線を複数本有するシールドツイストペアケーブルなどのシールドケーブルにも本発明を適用することができ、シールドケーブルが備える信号線の数は限定されない。また、シールドコネクタはオス型、メス型いずれの場合であっても適用可能なのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1:シールドコネクタ 2:内導体端子 7:誘電体 8:外導体端子 9:シェル部 10:圧着部 10a:底板 11,12:編組バレル 11a,12a:先端 11b:係止片 12b:係止孔 20:圧着装置 21:クリンパ 22:加圧面 22a:半円部 22b:段差部 22c:テーパ部 23:アンビル 24:受圧面 24a:円弧部 24b:逃げ部 25,26:屈曲部 30:圧着装置 31:クリンパ 32:加圧面 32a:半円部 32b:逃げ部 33:アンビル 34:受圧面 34a:半円部 34b:逃げ部 35,36:屈曲部 40:仮かしめ装置 41:クリンパ 42:加圧面 42a:半円部 42b:テーパ部 43:アンビル 44:受圧面 44a:円弧部 50:圧着装置 51:クリンパ 52:加圧面 52a:頂点 52b:湾曲面 53:アンビル 54:受圧面 54a:頂点 54b:湾曲面 55:屈曲部 56:湾曲部 90:仮かしめ装置 91:クリンパ 91b:型挿通孔 92:加圧面 92a:半円部 92b:テーパ部 93:アンビル 94:受圧面 94a:円弧部 95:押圧型 96:押圧面 97:クリンパホルダ 97a:収容部 97b:クリンパ挿通孔 98:シャフト 98a:平面部 W:同軸ケーブル Wa:信号導体 Wb:絶縁体 Wd:編組 We:シース Wf:編組反転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着方法であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端に段差部を介して繋がったテーパ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円よりも円弧角度が小さい円弧部と該円弧部の両円弧端の外側が凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の段差部と前記受圧面の逃げ部の間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにしたことを特徴とする端子圧着方法。
【請求項2】
外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着方法であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の逃げ部と前記受圧面の逃げ部との間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにことを特徴とする端子圧着方法。
【請求項3】
前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の端子圧着方法。
【請求項4】
前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されると共に、該一対バレルの先端同士が係止されていることを特徴とする請求項1または2に記載の端子圧着方法。
【請求項5】
外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着方法であって、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されており、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位には前記加圧面および前記受圧面の各頂点位置において屈曲部が形成されると共に、各屈曲部間には内側に湾曲した湾曲部が形成されるようにしたことを特徴とする端子圧着方法。
【請求項6】
前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって円形状に形成された前記一対のバレルの先端同士が係止されていることを特徴とする請求項5に記載の端子圧着方法。
【請求項7】
外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着装置であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端に段差部を介して繋がったテーパ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円よりも円弧角度が小さい円弧部と該円弧部の両円弧端の外側が凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の段差部と前記受圧面の逃げ部の間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにしたことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項8】
外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着装置であって、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半円部と該半円部の両円弧端の外側に凹設された逃げ部を有した形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位を前記加圧面の逃げ部と前記受圧面の逃げ部との間にはみ出させて該途中部位に外側に膨らんだ屈曲部が形成されるようにことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項9】
前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先だって前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の端子圧着装置。
【請求項10】
前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先立って前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されると共に、該一対バレルの先端同士が係止されていることを特徴とする請求項7または8に記載の端子圧着装置。
【請求項11】
外導体端子の一端に設けられた底板の左右端部から上方に向かって延設された一対のバレルを、上方に配されたクリンパの加圧面と下方に配されたアンビルの受圧面により挟み込んでかしめることにより、信号線を導電性の編組と絶縁性のシースにより被覆してなるシールドケーブルのシース端末部に編組を折り返して被せた編組反転部の外周に前記一対のバレルを圧着させる端子圧着装置であって、前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先立って前記一対のバレルはその断面形状が円形になるように形成されており、前記クリンパの加圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成されると共に、前記アンビルの受圧面はその断面形状が半六角形の各頂点間が内側に湾曲された形状に形成され、前記加圧面と前記受圧面による挟み込みによって各バレルの途中部位には前記加圧面および前記受圧面の各頂点位置において屈曲部が形成されると共に、各屈曲部間には内側に湾曲した湾曲部が形成されるようにしたことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項12】
前記クリンパと前記アンビルによる圧着に先立って円形状に形成された前記一対のバレルの先端同士が係止されていることを特徴とする請求項11に記載の端子圧着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate