説明

端子打機

【課題】電線の端部処理が不良の場合において、電線端部を切断したときに、この切断状態を適切に判定できる端子打機を提供する。
【解決手段】端子打機100は、電線20の端部20Rの被覆材21を除去することにより電線20の芯材22を露出させて、芯材22と導通する端子25を電線20の端部20Rに圧着するように構成されている。また、端子打機100は、電線20に対して、刃による切込み処理を行う加工器17と、制御器30と、を備える。制御器30は、端部20Rの処理状態を示す信号に基づいて端部20Rの処理の良否を判定し、処理不良の場合、加工器17を用いて端部20Rの切断を行い、端部20Rの切断状態を示す信号に基づいて加工器17による端部20Rの切断の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は端子打機に関する。特に、本発明は端子打機に用いる電線端部の切断技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の処理装置として端子打機が良く知られている。この端子打機では、例えば、電線のくせ取り、電線の切断、電線の被覆材剥ぎ取り、電線の端部の芯材への金具(端子)圧着などの一連の電線処理が連続的に行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、端子打機によって行われる一連の電線処理では、電線端部に何等かの処理不良が起こった場合、後工程において、不良電線を容易に識別できると便利である。
【0004】
例えば、電線への端子圧着不良が検知された場合、このような不良電線の端部を切断カッタによって切断することによって、不良電線とそうでない電線とを容易に識別できる技術がすでに提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−204229号公報
【特許文献2】特開2000−123654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2では、不良電線の端部切断において、切断ミス発生を全く想定していないという問題がある。例えば、切断刃の摩耗などの切断カッタ側の要因、電線端部の湾曲などの電線側の要因によって、電線端部の切断ミスが発生する場合がある。この状態で、仮に不良電線とそうでない電線とが混在した場合、後工程において、不良電線の識別が極めて困難になる。よって、従来の不良電線の識別には、未だ改善の余地があると考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電線の端部処理が不良の場合において、電線端部を切断したときに、この切断状態を適切に判定できる端子打機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、電線の端部の被覆材を除去することにより前記電線の芯材を露出させて、前記芯材と導通する端子を前記電線の端部に圧着する端子打機において、
前記電線に対して、刃による切込み処理を行う加工器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記端部の処理状態を示す信号に基づいて前記端部の処理の良否を判定し、前記処理が不良の場合、前記加工器を用いて前記端部の切断を行い、前記端部の切断状態を示す信号に基づいて前記加工器による前記端部の切断の良否を判定する端子打機を提供する。
【0009】
以上の構成により、本発明の端子打機では、電線端部を切断したときに、この切断状態を適切に判定できるので、切断ミスが起こった不良品が、良品と混在する可能性がなくなる。よって、後工程において、不良品の識別が容易となり、不良品の外部流出という問題を適切に解消できる。
【0010】
また、本発明の端子打機では、前記端部の被覆材の除去状態をモニタするセンサを備えてもよい。そして、前記センサが、前記端部の切断状態を示す信号を前記制御器に出力してもよい。
【0011】
以上の構成により、本発明の端子打機において、専用の切断状態指示センサの設置が不要となり、端子打機のコストアップを抑制できる。
【0012】
また、本発明の端子打機では、前記端部の処理状態が、前記端部の被覆材の除去状態であってもよい。
【0013】
また、本発明の端子打機は、前記電線の端部への前記端子の圧着状態をモニタするセンサを備えてもよい。そして、前記端部の処理状態が、前記端部への前記端子の圧着状態であってもよい。
【0014】
また、本発明の端子打機は、前記電線の端部への防水シールの装着状態をモニタするセンサを備えてもよい。そして、前記端部の処理状態が、前記端部への前記防水シールの装着状態であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電線の端部処理が不良の場合において、電線端部を切断したときに、この切断状態を適切に判定できる端子打機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の端子打機の一例を模式的に示したレイアウト図である。
【図2】図1の端子打機の電線加工工程の一例を模式的に示した図である。
【図3】図1の不良切断カッタによる電線端部の切断の一例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態の端子打機による電線加工処理フローの一例を示したフローチャートである。
【図5】電線端部の切断の良否判定に用いるストリップセンサの、検知動作の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
なお、全ての図面を通じて、同一ないし相当する構成要素には同じ参照番号を付し、以下、このような構成要素の重複的記載を省略する場合がある。
【0019】
また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。つまり、以下の具体的な説明は、本発明の「端子打機」の特徴を例示しているに過ぎない。よって、本発明の「端子打機」を特定した構成要素に対応する用語に適宜の参照符号を付して以下の具体例を説明する場合、当該具体的な装置は、これに対応する本発明の「端子打機」の構成要素の一例である。例えば、以下の「不良切断カッタ17」は、本発明の「電線に対して、刃による切込み処理を行う加工器」の一例である。このような加工器の他の例として、例えば、「カッタユニット16」を用いてもよい。
【0020】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態の端子打機の一例を模式的に示したレイアウト図である。図2は、図1の端子打機の電線加工工程の一例を模式的に示した図である。
【0021】
図1に示すように、端子打機100には、電線20(例えば、自動車ハーネス用電線)の両端側の処理を連続的に行える様々な機器(後述)がベース100A上に配されている。
【0022】
なお、図1の図示および以下の説明の便宜上、電線20の巻き取りロール(図示せず)側を「前」段とし、電線20の先端側を「後」段としている。そして、前者の電線20の処理に用いる装置のそれぞれには、参照番号に「F」を付与し、後者の電線20の処理に用いる装置のそれぞれには、参照番号に「R」を付与している。
【0023】
まず、端子打機100の電線供給機構の概要を述べる。
【0024】
端子打機100は、図1に示すように、伸線機10と、測長ユニット11と、制御器30と、を備える。
【0025】
伸線機10は、複数本(ここでは、5本)のくせ取りロール10Aからなり、これらのくせ取りロール10Aを用いて、束状に巻かれた電線20の巻きくせが矯正される。
【0026】
測長ユニット11は、伸線機10の後段側に配され、電線20を後方に引き出しながら電線20の送り長を測長する。これにより、電線20は、ノズル12を通ってカッタユニット16(後述)に送られる。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の測長ユニット11では、電線20の送り機構として、電線20を広範囲に挟むことができるベルト方式が採用されている。また、この測長ユニット11では、エンコーダ(図示せず)を用いて電線20の送り長が計測されている。そして、この送り長を制御器30にフィードバックすることにより、測長ユニット11のベルト駆動用の測長サーボモータ(図示せず)をフィードバック制御することができる。これにより、電線20の切断長L1(後述)が適切に制御される。
【0028】
制御器30は、例えば、CPUやメモリなどを備えるプロセッサによって構成されており、端子打機100の各種のセンサの信号に基づいて端子打機100の各種の制御対象機器の動作を制御する。制御器30は単独でも複数でもよい。
【0029】
次に、端子打機100の電線加工機構の概要を述べる。
【0030】
端子打機100は、図1に示すように、カッタユニット16と、一対のストリップセンサ15F、15Rと、一対の圧着機14F、14Rと、電線加工完了後の電線20を一時的に保管する製品トレイ18と、を備える。
【0031】
カッタユニット16は、電線20の切断(図2(a)の切断工程200参照)および電線20の端部20F、20Rの被覆材21の剥ぎ取り(図2(b)の被覆材剥ぎ取り工程201参照)に用いられる。よって、カッタユニット16は、ノズル12の近傍に配されて電線20を切断できる電線切断刃16Cと、電線切断刃16Cの両側に配されて電線20の被覆材21を剥ぎ取ることができる一対の剥ぎ取り刃16F、16Rとを備える。
【0032】
詳しくは、切断工程200において、図1および図2(a)に示すように、電線20は、測長ユニット11によって、電線切断刃16Cから切断長L1分、後方に送られ、電線切断刃16Cの両側に位置する電線20の部分が、一対のクランプ部13F、13Rによってクランプされる。そして、この状態で、カッタユニット16の電線切断刃16Cによって電線20が切断される。これにより、図1に示す如く、先行(一回前)の電線加工工程において端子25が一方の片端部(端部20R)に圧着されている切断長L1の電線20、および、端部20Fに電線加工が施されていない、巻き取りロールから連続的に延びている電線20を形成できる。
【0033】
また、被覆材剥ぎ取り工程201において、図1および図2(b)に示すように、一対の電線20のそれぞれを、クランプ部13F、13Rによってクランプした状態で、電線20の端部20F、20Rをそれぞれ、剥ぎ取り刃16F、16Rで挟み、電線20を矢印方向(図2(b)参照)に引っ張る。すると、端部20F、20Rの絶縁性の被覆材21のそれぞれが同時に除去され(剥ぎ取られる)、その結果、端部20F、20Rの導電性の芯材22のそれぞれが同時に露出する。
【0034】
また、上記ストリップセンサ15F、15Rは、電線20の端部20F、20Rの被覆材剥ぎ取りの良否判定(図2(c)の被覆材剥ぎ取りの良否判定工程202参照)に用いられ、投光部23と受光部24とからなる光センサである。
【0035】
詳しくは、被覆材剥ぎ取りの良否判定工程202において、図1および図2(c)に示すように、ストリップセンサ15F、15Rの投光部23と受光部24との間を結ぶ光軸上に、電線20の端部20F、20Rを通過させる。すると、ストリップセンサ15F、15Rの投射光が遮断される。投射光の遮断域は、電線20の端部20F、20R(芯材22)の直径に対応するので、この遮光域のデータに基づき被覆材剥ぎ取り状態がストリップセンサ15F、15Rによって検知される。よって、ストリップセンサ15F、15Rは、端部20F、20Rでの被覆材21の剥ぎ取り状態をモニタできる。なお、ストリップセンサ15F、15Rは、以上の光センサに限定されない。例えば、ストリップセンサは、端部20F、20Rでの被覆材21の画像を用いて被覆材21の剥ぎ取り状態をモニタできる画像処理センサであってもよい。
【0036】
また、上記圧着機14F、14Rは、電線20の端部20F、20Rへの端子25の圧着および端子圧着良否の判定に用いられる(図2の端子圧着/良否判定工程203参照)。
【0037】
詳しくは、端子圧着/良否判定工程203において、図1および図2(c)に示すように、電線20の端部20F、20Rがそれぞれ、圧着機14F、14Rのプレス部に同時に装着される。これにより、電線20の端部20F、20Rの芯材22と導通する端子25のそれぞれが同時に端部20F、20Rに圧着される。
【0038】
このとき、端子25の圧着荷重が圧着機14F、14R内の荷重センサ(例えば、ロードセル;図示せず)によって検知され、端部20F、20Rへの端子25の圧着状態が、ロードセルに与えられる荷重の経時変化として検知される。よって、これらのロードセルは、端部20F、20Rへの端子25の圧着状態をモニタできる。
【0039】
このようにして、端子打機100による一連の電線加工が行われ、両方の端部20Rに電線加工が適切に施された電線20(以下、「良品20G」と略す場合がある)は、製品トレイ18に運ばれる。また、一方の端部20Fにのみ電線加工が施された電線20は、後続(次回)の電線加工工程において、他方の端部に電線加工が施される。
【0040】
次に、端子打機100の電線加工不良発生時の処理機構の概要を述べる。
【0041】
端子打機100は、図1に示すように、不良切断カッタ17(電線20に対して、刃による切込み処理を行う加工器)と、電線加工不良の電線20(以下、「不良品20B」と略す場合がある)を一時的に保管する不良品トレイ19と、を備える。
【0042】
なお、ここでは、後段側の電線20の端部20Rに、端子25を圧着する場合の端子圧着不良を例示するが、これに限らない。他の例は、後述の変形例1で述べる。
【0043】
不良切断カッタ17は、図1および図3に示すように、電線20の端部20Rでの端子圧着不良が生じた場合、不良品20Bの端部20Rの切断に用いる一対の不良切断刃17Sを備える。これにより、切断位置Cにおいて、不良品20Bの端部20Rを切断でき、その結果、不良品20Bから端子25を分離できるので、後工程において、不良品20Bを目視により容易に識別できる。
【0044】
ところで、本件発明者は、不良品20Bの端部20Rが不良切断カッタ17によって必ず切断できるとは限らないと考えている。例えば、不良切断刃17Sの取り付け不良や不良切断刃17Sの摩耗などの不良切断カッタ17側の要因、または、端部20Rの湾曲などの不良品20B側の要因によって、端部20Rの切断ミスが発生する場合があると考えられる。この場合、切断ミスが起こった不良品20Bが、仮に良品20Gと混在すると、後工程において、最早、不良品20Bの識別が極めて困難となり、不良品20Bの外部流出という問題を招く可能性もある。
【0045】
そこで、本実施形態の端子打機100は、このような電線20の端部20Rの端子圧着不良の場合において、不良品20Bの端部20Rを切断したときに、この切断状態を適切に判定できる手法が組み込まれていることを特徴とする。
【0046】
よって、以下、上記手法が組み込まれた端子打機100による電線加工の処理について述べる。
【0047】
図4は、本発明の実施形態の端子打機100による電線加工処理フローの一例を示したフローチャートである。
【0048】
なお、ここでは、後段側の電線20の端部20Rに、端子25を圧着する場合の処理フローが例示されているが、これに限らない。後述の変形例1でも同様の処理フローが行われる。
【0049】
図4に示した各処理フローは、予めプログラムされて、制御器30のメモリに記憶されている。また、制御器30のCPUからの指令に基づいて、上記プログラムが、制御器30のCPUに読み出され、このプログラムが、以下の処理を端子打機100の各部を制御しながら遂行する。
【0050】
まず、圧着機14Rを用いて、後段側の電線20の端部20Rに、端子25が圧着される(ステップS1)。
【0051】
このとき、電線20の端部20Rへの端子25の圧着良否も判定される(ステップS2)。
【0052】
端子25の圧着が「良」と判定された場合(ステップS2において「Yes」の場合)、電線20(良品20G)は、製品トレイ18に排出される(ステップS3)。
【0053】
一方、端子25の圧着が「不良」と判定された場合(ステップS2において「No」の場合)、電線20(不良品20B)の端部20R(端子25)は、図3に示す如く、不良切断カッタ17の不良切断刃17Sによって切断される(ステップS4)。なお、「不良」と判定された電線20(不良品20B)の切断は、不良切断カッタ17で切断する形態に限定されない。例えば、カッタユニット16の電線切断刃16Cや剥ぎ取り刃16F、16Rを用いて、電線20(不良品20B)を切断してもよい。これにより、不良切断カッタ17の設置が不要となり、端子打機100のコストアップを抑制できる。
【0054】
次いで、ステップS4の電線20(不良品20B)の端部20R(端子25)の切断良否について、適宜の切断状態指示センサを用いて判定される(ステップS5)。
【0055】
ここで、本実施形態の端子打機100では、図5に示すように、上述のストリップセンサ15Rを切断状態指示センサとしても用いている。これにより、端子打機100において、専用の切断状態指示センサの設置が不要となり、端子打機100のコストアップを抑制できる。
【0056】
具体的には、図5(a)に示すように、端部20Rの切断位置Cが、ストリップセンサ15Rの光軸(投光部23および受光部24の位置)から距離L2(例えば、L2=2mm〜5mm)分、離れるようにして、図5(a)の端部20Rをストリップセンサ15R内に通す。すると、端部20Rは、ストリップセンサ15Rの光軸と交差せずに、ストリップセンサ15Rの投射光を遮断しない。よって、ストリップセンサ15Rは、何等の検知信号も制御器30に出力しない。この場合、電線20(不良品20B)の端部20R(端子25)の切断が「良」と判定され(ステップS5において「Yes」の場合)、電線20(不良品20B)は、不良品トレイ19に排出される(ステップS7)。
【0057】
一方、図5(b)の如く、不良切断刃17Sの摩耗や不良切断刃17Sの取り付けミスなどの要因により、切断位置Cにおいて端部20Rの切断ミス(部分的な切断)が発生する場合に、端部20Rをストリップセンサ15R内に通すと、端部20Rは、ストリップセンサ15Rの光軸と交差して、ストリップセンサ15Rの投射光を遮断する。よって、ストリップセンサ15Rは、投射光を遮断と同期して検知信号を制御器30に出力できる。
【0058】
また、図5(c)の如く、端部20Rの湾曲などの要因により、切断位置Cにおいて端部20Rの切断ミス(切断空振り)が発生する場合に、端部20Rをストリップセンサ15R内に通すと、端部20Rは、ストリップセンサ15Rの光軸と交差して、ストリップセンサ15Rの投射光を遮断する。よって、ストリップセンサ15Rは、投射光を遮断と同期して検知信号を制御器30に出力できる。
【0059】
このような2通りの切断ミスの場合、電線20(不良品20B)の端部20R(端子25)の切断が「不良」と判定され(ステップS5において「No」の場合)、操作画面(図示せず)に不良品切断ミスについてのエラーメッセージが表示され、端子打機100は自動的に停止する(ステップS6)。
【0060】
以上のとおり、本実施形態の端子打機100は、電線20の端部20F、20Rの被覆材21を除去する(剥ぎ取る)ことにより、一対の電線20の芯材22を露出させて、芯材22と導通する端子25を電線20の端部20F、20Rに圧着するように構成されている。また、制御器30は、電線20の端部20Rの端子圧着状態を示す信号に基づいて端部20Rの端子圧着の良否を判定する。なお、この場合、圧着機14R内のロードセルによって電線20の端部20Rの端子圧着状態を示す信号が検知され、この信号が、制御器30に出力される。
【0061】
そして、制御器30は、電線20の端部20Rの端子圧着不良の場合、不良切断カッタ17を用いて電線20の端部20Rの切断を行い、この端部20Rの切断状態を示す信号に基づいて不良切断カッタ17による端部20Rの切断の良否を判定している。
【0062】
以上の構成により、本実施形態の端子打機100では、不良品20Bの端部20Rを切断したときに、この切断状態を適切に判定できるので、切断ミスが起こった不良品20Bが、良品20Gと混在する可能性がなくなる。よって、後工程において、不良品20Bの識別が容易となり、不良品20Bの外部流出という問題を適切に解消できる。
【0063】
また、本実施形態の端子打機100は、電線20の端部20Rの被覆材21の剥ぎ取り(除去)状態をモニタするストリップセンサ15Rを備える。そして、このストリップセンサ15Rが、端部20Rの切断状態を示す信号を制御器30に出力している。
【0064】
以上の構成により、端子打機100において、専用の切断状態指示センサの設置が不要となり、端子打機100のコストアップを抑制できる。
【0065】
(変形例1)
本実施形態の端子打機100では、電線20の端部20Rの処理状態の一例として、後段側の電線20の端部20Rに、端子25を圧着する場合の端子圧着状態を述べた。
【0066】
しかし、端子打機では、電線の端部の端子圧着状態に限らず、他の様々な端部の処理状態に基づいて端部の処理の良否が判定されている。
【0067】
例えば、上述のとおり、端子打機100は、電線20の端部20F、20Rの被覆材21の剥ぎ取り(除去)状態をモニタするストリップセンサ15F、15Rを備えている。
【0068】
よって、このようなストリップセンサ15F、15Rが、電線20の端部20F、20Rの処理状態の一例である被覆材剥ぎ取り状態を示す信号を制御器30に出力し、制御器30は、この信号に基づいて端部20F、20Rの被覆材剥ぎ取りの良否判定、および、端部20F、20Rの被覆材剥ぎ取り不良の場合の、不良切断カッタ17を用いた端部20F、20Rの切断、並びに、端部20F、20Rの切断の良否判定を行ってもよい。
【0069】
また、端子打機において、電線端部への端子圧着前に、チューブ状のゴム製の防水シール(図示せず)を電線端部に装着する場合がある(例えば、特開平11−345668号公報参照)。この場合、適宜のセンサ(図示せず)が、電線端部への防水シールの装着状態をモニタしている。
【0070】
よって、このようなセンサが、電線端部の処理状態の一例である防水シールの装着状態を示す信号を制御器30に出力し、制御器30は、この信号に基づいて電線端部の防水シール装着の良否判定、および、電線端部の防水シール装着不良の場合の、不良切断カッタ17を用いた電線端部の切断、並びに、電線端部の切断の良否判定を行ってもよい。
【0071】
(変形例2)
本実施形態の端子打機100では、電線20(不良品20B)の端部20R(端子25)の切断が「不良」と判定された場合、端子打機100は自動的に停止している。
【0072】
以上の場合、不良切断カッタ17での機械トラブルの可能性が高いので、不良品20Bと良品20Gとの混在に対する予防保全向上の観点から、オペレータが直ぐに端子打機100の停止を解除できない何等かの措置を講ずる方が好ましい。例えば、端子打機100の停止解除のためのパスワード設定などの措置によって、この停止解除を一時的にロックさせ、不良品20Bの排除およびメンテナンス作業の終了後に、当該ロックの解除が行えるようにするとよい。
【0073】
(変形例3)
本実施形態の端子打機100では、電線20(不良品20B)の端部20R(端子25)の切断が「不良」と判定された場合、操作画面に不良品切断ミスについてのエラーメッセージが表示されているが、この表示に加え、エラー履歴および故障診断の機能強化を図ってもよい。
【0074】
例えば、不良品切断ミス発生時に、エラー履歴情報として、切断ミス発生時刻、切断ミスの内容、および、切断ミス発生時のロット番号などを、操作部のメモリに記録するとよい。これにより、万一不良品が外部流出した際の不良品の追跡作業や、故障の原因究明(故障診断)が迅速に行える。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、電線の端部処理が不良の場合において、電線端部を切断したときに、この切断状態を適切に判定できる端子打機が得られる。
【0076】
よって、本発明は、例えば、ハーネス用の電線を連続的に処理できる端子打機に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
10 伸線機
10A くせ取りロール
11 測長ユニット
12 ノズル
13F、13R クランプ部
14F、14R 圧着機
15F、15R ストリップセンサ
16 カッタユニット
16C 電線切断刃
16F、16R 剥ぎ取り刃
17 不良切断カッタ(電線に対して、刃による切込み処理を行う加工器)
17S 不良切断刃
18 製品トレイ
19 不良品トレイ
20 電線
20F、20R 電線の端部
20G 良品
20B 不良品
21 被覆材
22 芯材
23 投光部
24 受光部
25 端子
30 制御器
100 端子打機
100A ベース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端部の被覆材を除去することにより前記電線の芯材を露出させて、前記芯材と導通する端子を前記電線の端部に圧着する端子打機において、
前記電線に対して、刃による切込み処理を行う加工器と、
制御器と、を備え、
前記制御器は、前記端部の処理状態を示す信号に基づいて前記端部の処理の良否を判定し、前記処理が不良の場合、前記加工器を用いて前記端部の切断を行い、前記端部の切断状態を示す信号に基づいて前記加工器による前記端部の切断の良否を判定する端子打機。
【請求項2】
前記端部の被覆材の除去状態をモニタするセンサを備え、
前記センサが、前記端部の切断状態を示す信号を前記制御器に出力する請求項1に記載の端子打機。
【請求項3】
前記端部の処理状態は、前記端部の被覆材の除去状態である請求項2に記載の端子打機。
【請求項4】
前記電線の端部への前記端子の圧着状態をモニタするセンサを備え、
前記端部の処理状態は、前記端部への前記端子の圧着状態である請求項1または2に記載の端子打機。
【請求項5】
前記電線の端部への防水シールの装着状態をモニタするセンサを備え、
前記端部の処理状態は、前記端部への前記防水シールの装着状態である請求項1または2に記載の端子打機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−210460(P2011−210460A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75585(P2010−75585)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】