説明

端子金具及び端子金具付き電線

【課題】本発明は、電線との電気抵抗が低減された端子金具及び端子金具付き電線を提供する。
【解決手段】ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面には複数の凹部18が形成されており、凹部18の孔縁は互いに平行な一対の第1孔縁19を備え、複数の凹部18は、第1孔縁19の延びる方向に沿う方向に沿って間隔を空けて並んで配されると共に、電線11の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されている。第1孔縁19は電線11の延びる方向についてオーバーラップして配されており、ワイヤーバレル16には電線11の延びる方向について第1孔縁19が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具、及び端子金具付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の端末に接続される端子金具として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この端子金具は、金属板材をプレス加工してなると共に電線の端末から露出する芯線に外側から圧着される圧着部を備える。
【0003】
上記した芯線の表面に酸化膜が形成されると、芯線と圧着部との間に酸化膜が介在することにより、芯線と圧着部との間の電気抵抗が大きくなることが懸念される。
【0004】
そこで、従来技術においては、圧着部の内側(芯線側)には、電線の延びる方向と交差する方向に連続して延びる凹部(セレーション)が形成されている。この凹部は、電線の延びる方向に並んで複数形成されている。凹部は、金型で金属板材をプレス成形することにより形成される。
【0005】
電線の芯線に圧着部を圧着すると、芯線は圧着部に押圧されて電線の延びる方向に塑性変形する。すると、芯線の表面に形成された酸化膜が、凹部の孔縁と摺接することにより、剥離される。すると、芯線の新生面と、圧着部とが接触する。これにより、電線と端子金具との間の電気抵抗を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、芯線の材料としてアルミニウム又はアルミニウム合金の使用が検討されている。このアルミニウム又はアルミニウム合金の表面には酸化膜が比較的に形成されやすい。このため、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を電線の芯線に用いた場合には、凹部を形成した場合でも、芯線と圧着部との間の電気抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。
【0008】
そこで、複数の凹部を、電線の延びる方向に並べて配すると共に、電線の延びる方向と交差する方向にも並べて配することが考えられる。これにより、単に凹部を電線の延びる方向に並べて配する場合に比べて、凹部の孔縁の面積が大きくなるので、芯線に形成された酸化膜を確実に剥ぎ取ることができると期待された。
【0009】
しかしながら上記の構成によると、以下のような理由により、凹部を形成するための金型の製造コストが上昇することが懸念される。すなわち、金型には、圧着部の凹部に対応する位置に、凸部が形成される。この凸部は、金属部材を削り出すことにより形成される。このとき、複数の凹部の配置によっては、金属部材を放電加工によって削り出さなければならない場合がある。すると、金型の製造コストが上昇してしまうのである。
【0010】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線との電気抵抗が低減されると共に、金型製造コストが低減された端子金具及び端子金具付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯線を含む電線から露出する前記芯線に巻き付くように圧着される圧着部を備えた端子金具であって、前記圧着部が前記芯線に圧着される前の状態において、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面には複数の凹部が形成されており、前記凹部の孔縁は平行四辺形状をなしており、前記凹部の孔縁は互いに平行な一対の第1孔縁と、前記第1孔縁とは異なる互いに平行な一対の第2孔縁と、からなり、複数の前記凹部は、前記第1孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されると共に、前記第2孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されており、前記第1孔縁は前記電線の延びる方向に対して85°以上95°以下の角度をなしており、前記第2孔縁は前記電線の延びる方向に対して25°以上35°以下の角度をなしており、前記凹部の孔縁と前記凹部の底面とは、四つの傾斜面によって接続されており、前記傾斜面のうち前記一対の第1孔縁と前記凹部の底面とを接続する一対の第1傾斜面は、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面であって且つ前記凹部が形成されていない部分の面に対して、90°以上110°以下の角度をなして形成されており、前記傾斜面のうち前記一対の第2孔縁と前記底面とを接続する一対の第2傾斜面は、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面であって、且つ凹部が形成されていない部分の面に対して、115°以上140°以下の角度で形成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯線の外周に絶縁被覆を有する電線と、前記電線から露出する前記芯線に圧着される端子金具と、を備えた端子金具付き電線であって、前記端子金具は、前記芯線に巻き付くように圧着される圧着部を備え、前記圧着部が前記芯線に圧着される前の状態において、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面には複数の凹部が形成されており、前記凹部の孔縁は平行四辺形状をなしており、前記凹部の孔縁は互いに平行な一対の第1孔縁と、前記第1孔縁とは異なる互いに平行な一対の第2孔縁と、からなり、複数の前記凹部は、前記第1孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されると共に、前記第2孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されており、前記第1孔縁は前記電線の延びる方向に対して85°以上95°以下の角度をなしており、前記第2孔縁は前記電線の延びる方向に対して25°以上35°以下の角度をなしており、前記凹部の孔縁と前記凹部の底面とは、四つの傾斜面によって接続されており、前記傾斜面のうち前記一対の第1孔縁と前記凹部の底面とを接続する一対の第1傾斜面は、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面であって且つ前記凹部が形成されていない部分の面に対して、90°以上110°以下の角度をなして形成されており、前記傾斜面のうち前記一対の第2孔縁と前記底面とを接続する一対の第2傾斜面は、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面であって、且つ凹部が形成されていない部分の面に対して、115°以上140°以下の角度で形成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、凹部の孔縁に形成されたエッジによって芯線の表面に形成された酸化膜が剥がされて新生面が露出し、この新生面と圧着部とが接触することにより芯線と端子金具とが電気的に接続される。これにより電線と端子金具との電気抵抗が低減される。
【0014】
また、本発明によれば、圧着部の凹部を形成するための金型は、金属材料の表面に、凹部の第1孔縁に沿う方向の複数の溝と、凹部の第2孔縁に沿う方向の複数の溝と、を切削加工することにより製造できる。これにより、金型の製造コストを削減できる。
【0015】
芯線がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、芯線の表面には酸化膜が比較的に形成されやすい。本発明によれば、芯線がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合であっても、電線と端子金具との間の電気抵抗を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、第1孔縁は芯線の延び方向に85°以上95°以下の角度で交差して配されているので、圧着部に圧着された状態の電線に対して、電線の延び方向に沿う力が加えられた場合に、第1孔縁に形成されるエッジによって、芯線の動きが抑制される。これにより、凹部の孔縁と摺接することにより形成された芯線の新生面は、凹部の近傍に位置する圧着部の表面と確実に接触することができる。この結果、電線と端子金具との間の電気抵抗を確実に低減させることができる。
【0017】
一方、第1孔縁と芯線の延び方向とのなす角度が85°未満である場合、及び95°を超える場合には、電線に対して電線の延び方向に沿う力が加えられた場合に、第1孔縁に形成されたエッジによっては芯線の動きを十分に保持することができなくなることが懸念される。すると、芯線が圧着部の表面から離間する方向に移動してしまうおそれがある。これにより、芯線の新生面において、圧着部との電気的な接続に寄与しない部分が生じる結果、電線と圧着部との間の電気抵抗を十分に小さくすることができなくなるおそれがあるので好ましくない。
【0018】
また、本発明においては、第1傾斜面と、圧着部のうち芯線が配される側の面であって且つ前記凹部が形成されていない部分の面と、の間に形成される角度は、90°以上110°以下と、比較的に小さい。このため、凹部の第1孔縁に形成されるエッジは、比較的に鋭いものとなっている。この結果、第1孔縁に形成されたエッジにより、芯線に形成された酸化膜を確実に剥がすことができる。第1傾斜面と、圧着部のうち芯線が配される側の面であって且つ前記凹部が形成されていない部分の面と、の間に形成される角度が90°未満であると、凹部をプレス成形する際に、金型が抜けにくくなるので好ましくない。また、上記の角度が110°を超える場合には、芯線に形成された酸化膜を十分に剥がすことができないので好ましくない。
【0019】
また、本発明によれば、第2孔縁は、電線の延びる方向に対して25°以上35°以下の角度をなしているので、電線の延びる方向について隣り合う凹部同士の第1孔縁が、電線の延びる方向についてオーバーラップして配される。これにより、圧着部による芯線の保持力が一層向上する。第2孔縁と電線の延びる方向とのなす角度が25°未満である場合、及び35°を超える場合には、電線の延びる方向について隣り合う凹部同士の第1孔縁が、電線の延びる方向についてオーバーラップしない領域が形成されるので、好ましくない。
【0020】
また、圧着部は、芯線の外側から巻くように圧着される。このため、凹部の孔縁は、芯線の延び方向と交差する方向について閉じる方向に変形する。
【0021】
このため、第2傾斜面と、凹部の底面とのなす角度が、過度に大きいと、凹部の孔縁が芯線の延び方向と交差する方向について閉じて塞がってしまい、第2孔縁が芯線と摺接できなくなることが懸念される。
【0022】
上記の点に鑑み、第2傾斜面と、圧着部のうち芯線が配される側の面であって、且つ凹部が形成されていない部分の面との間に形成される角度は、115°以上140°以下の角度とすることが好ましい。これにより、圧着部を芯線に圧着した場合でも、凹部の孔縁が芯線の延び方向と交差する方向に閉じて塞がることを抑制できる。この結果、第2孔縁が、芯線とが摺接することにより、芯線の酸化膜を剥がすことができる。
【0023】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記圧着部に形成される複数の前記凹部の、前記芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔は0.3mm以上0.8mm以下としてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、0.3mm以上0.8mm以下という比較的に小さなピッチ間隔を空けて凹部が並んで配される。これにより、単位面積当たりの凹部の数が増加する。すると、単位面積当たりにおける、凹部の孔縁に形成されたエッジの領域が増大する。これにより、単位面積当たりにおいて、凹部の孔縁に形成されたエッジが芯線に食い込む領域が比較的に大きくなるから、圧着部による芯線の保持力を向上させることができる。
【0025】
なお、ピッチ間隔とは、延び方向について、一の凹部における対角線の交点と、一の凹部の隣に位置する他の凹部における対角線の交点と、の間隔をいう。
【0026】
前記圧着部に形成される複数の前記凹部の、前記第1孔縁の延びる方向についての第2のピッチ間隔は0.3mm以上0.8mm以下としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、0.3mm以上0.8mm以下という比較的に小さなピッチ間隔を空けて凹部が並んで配される。これにより、単位面積当たりの凹部の数が増加する。すると、単位面積当たりにおける、凹部の孔縁に形成されたエッジの領域が増大する。これにより、単位面積当たりにおいて、凹部の第1孔縁に形成されたエッジが芯線に食い込む領域が比較的に大きくなるから、圧着部による芯線の保持力を向上させることができる。
【0028】
前記凹部の孔縁を構成する前記第1孔縁の長さ寸法は、0.2mm以上0.4mm以下に設定されていてもよい。
【0029】
圧着部が芯線に圧着されると、第1孔縁のエッジが芯線の外周面に食い込む。この結果、圧着部によって芯線が確実に保持される。第1孔縁の長さ寸法が0.2mmよりも短いと、圧着部による芯線の保持力が減少するので好ましくない。また、第1孔縁の長さ寸法が0.4mmを超えると、第1孔縁の延びる方向について隣り合う凹部同士の間隔が狭くなる。すると、凹部を形成するための金型が欠けることが懸念されるので好ましくない。
【0030】
前記第1孔縁の延びる方向について隣り合う前記凹部同士の間隔は、前記電線の延びる方向について隣り合う前記凹部同士の間隔よりも狭く設定されていてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、第1孔縁の延びる方向について隣り合う凹部の間に位置する領域は、圧着部が芯線に圧着されたときに芯線に食い込みやすくなっている。これにより、芯線に形成された酸化膜が剥がれて、芯線の新生面が露出する。この結果、芯線と端子金具との間の電気抵抗を低減させることができる。
【0032】
更に、第2孔縁は電線の延びる方向に対して25°以上35°以下の角度をなしているので、第1孔縁の延びる方向について隣り合う凹部の間に位置する領域も、電線の延びる方向に対して25°以上35°以下の角度をなして形成されている。この結果、芯線に対して上記の領域が食い込んだとしても、芯線に対して25°以上35°以下の角度を有しているので、芯線が破断されることが抑制される。この結果、電線と端子金具との間の固着力を向上させることができる。
【0033】
前記圧着部により圧着された前記芯線の圧縮率を、前記圧着部が圧着された後の前記芯線の断面積の、前記圧着部が圧着される前の前記芯線の断面積に対する百分率としたとき、前記圧縮率は、40%以上70%以下である構成としてもよい。
【0034】
圧縮率を上記のように定義した場合、圧縮率を小さくすることは、芯線を大きな圧力で圧縮すること(高圧縮)を意味し、圧縮率を大きくすることは、芯線を小さな圧力で圧縮すること(低圧縮)を意味する。
【0035】
芯線の表面に形成された酸化膜を破って電気抵抗を小さくするためには、小さな圧縮率で圧着部を芯線に圧着する必要がある。上記の構成によれば、圧着部は、圧縮率が40%以上70%以下であるような、比較的に小さな圧縮率で電線に圧着される。これにより、芯線の表面に形成された酸化膜を効果的に剥ぎ取ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、電線と端子金具との電気抵抗を低減できると共に、金型製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る端子金具付き電線を示す側面図
【図2】雌端子金具を示す斜視図
【図3】展開状態における雌端子金具を示す要部拡大平面図
【図4】ワイヤーバレルに形成された凹部を示す要部拡大斜視図
【図5】図7におけるV−V線断面図
【図6】図7におけるVI−VI線断面図
【図7】ワイヤーバレルに形成された凹部を示す要部拡大平面図
【図8】雌端子金具をプレス成形する金型の要部拡大斜視図
【図9】芯線にワイヤーバレルを圧着した状態を示す要部拡大断面図
【図10】実施形態2に係る雌端子金具の展開状態を示す要部拡大平面図
【図11】ワイヤーバレルに形成された凹部を示す要部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の一実施形態を図1ないし図9を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態は、電線11の端末から露出する芯線13に雌端子金具12が圧着された端子金具付き電線10である。
【0039】
(電線11)
図1に示すように、電線11は、複数の金属細線を撚り合せてなる芯線13と、この芯線13の外周を包囲する絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14と、を備える。金属細線としては、アルミニウム、又はアルミニウム合金を用いることができる。本実施形態においてはアルミニウム合金が用いられている。図1に示すように、電線11の端末においては絶縁被覆14が剥がされて、芯線13が露出している。
【0040】
(雌端子金具12)
雌端子金具12は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。雌端子金具12は、電線11の絶縁被覆14の外周に巻き付けられるように圧着されるインシュレーションバレル15と、このインシュレーションバレル15に連なって、芯線13に外側から巻き付けられるように圧着されるワイヤーバレル16(特許請求の範囲に記載の圧着部に相当)と、このワイヤーバレル16に連なって、図示しない雄端子金具と接続する接続部17と、を備える。図3に示すように、インシュレーションバレル15は、上下方向にそれぞれ突出する一対の板状をなす。
【0041】
図2に示すように、接続部17は、雄端子金具の雄タブ(図示せず)が挿入可能な筒状をなしている。接続部17の内部には、弾性接触片26が形成されており、この弾性接触片26と、雄端子金具の雄タブとが弾性的に接触することにより、雄端子金具と雌端子金具12とが電気的に接続されるようになっている。
【0042】
本実施形態においては、雌端子金具12は筒状の接続部17を有する雌端子金具12としたが、これに限られず、雄タブを有する雄端子金具としてもよいし、また金属板材に貫通孔が形成されたいわゆるLA端子としてもよく、必要に応じて任意の形状の端子金具とすることができる。
【0043】
(ワイヤーバレル16)
図3に、展開状態のおけるワイヤーバレル16の要部拡大平面図を示す。図3に示すように、ワイヤーバレル16は、図3おける上下方向に突出する一対の板状をなす。ワイヤーバレル16は、電線を圧着する前の状態において、図3の紙面を貫通する方向から見て、略矩形状をなしている。
【0044】
図3に示すように、ワイヤーバレル16には、電線11が圧着されたときに電線11が配される側の面(図3において紙面を貫通する方向手前側に位置する面)に、複数の凹部18が形成されている。各凹部18の孔縁は、電線11を圧着する前の状態において、図3の紙面を貫通する方向から見て、平行四辺形状をなしている。
【0045】
各凹部18の孔縁を形成する平行四辺形は、ワイヤーバレル16が芯線13に圧着された状態で芯線13が延びる方向(図3における矢線Aで示す方向)に対して85°以上95°以下の角度で交差する一対の第1孔縁19と、芯線13の延び方向(図3における矢線Aで示す方向)に対して25°以上35°以下の角度で交差する一対の第2孔縁20と、を有する。本実施形態では、第1孔縁19は、芯線13の延び方向に対して直交して形成されている。本実施形態では、第1孔縁19の長さ寸法は0.25mmとされる。また、第2孔縁20は、芯線13の延び方向に対して30°の角度をなして形成されている。
【0046】
図3に示すように、複数の凹部18は、第1孔縁19の延びる方向、すなわち、芯線13の延び方向(図3における矢線Aで示す方向)に対して直交する方向(図3における矢線Bで示す方向)に沿って間隔を空けて並んで配されている。隣り合う凹部18の第1孔縁19同士は、第1孔縁19の延びる方向に沿う直線上に並んで配されている。
【0047】
図3に示すように、複数の凹部18は、第2孔縁20の延びる方向、すなわち、芯線13の延び方向(図3における矢線Aで示す方向)に対して25°以上35°以下の角度αをなす方向に沿って間隔を空けて並んで配されている。本実施形態では、複数の凹部18は、芯線13の延び方向に対して30°の角度αをなす方向(図3における矢線Cで示す方向)に沿って間隔を空けて並んで配されている。隣り合う凹部18の第2孔縁20同士は、第2孔縁20の延びる方向に沿う直線上に並んで配されている。
【0048】
図3に示すように、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面には、芯線13の延び方向(図3における矢線Aで示す方向)について、少なくとも一つの第1孔縁19が位置するように形成されている。
【0049】
図3及び図4に示すように、凹部18の底面は、凹部18の孔縁と相似形をなしており、且つ、凹部18の孔縁に比べてやや小さく形成されている。これにより、凹部18の底面と、凹部18の孔縁とは、凹部18の底面から凹部18の孔縁に向かうに従って、拡開する四つの傾斜面21によって接続されている。
【0050】
図5に示すように、傾斜面21のうち、一対の第1孔縁19と凹部18の底面とを接続する第1傾斜面22は、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面であって、且つ凹部18が形成されていない部分の面に対して、90°以上110°以下の角度βを有して形成されている。本実施形態では、第1傾斜面22は、105°の角度βを有して形成されている。
【0051】
また、図6に示すように、傾斜面21のうち、一対の第2孔縁20と凹部18の底面とを接続する第2傾斜面23は、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面であって、且つ凹部18が形成されていない部分の面に対して、115°以上140°以下の角度γを有して形成されている。本実施形態では、第2傾斜面は、120°の角度γを有して形成されている。
【0052】
また、図7に示すように、複数の凹部18のうち、芯線13の延び方向(図7における矢線Aで示す方向)と30°の角度をなす方向(矢線Cで示す方向)に間隔を空けて列をなす凹部18同士の、芯線13の延び方向(矢線Aで示す方向)についての第1のピッチ間隔(図7におけるP1)は、0.3mm以上0.8mm以下に設定されており、本実施形態では0.4mmに設定されている。また、芯線13の延び方向(矢線Aで示す方向)と直交する方向(矢線Bで示す方向)に間隔を空けて列をなす凹部18同士の、芯線13の延び方向(矢線Aで示す方向)と直交する方向(矢線Bで示す方向)についての第2のピッチ間隔(図7におけるP2)は、0.3mm以上0.8mm以下に設定されており、本実施形態では0.5mmに設定されている。
【0053】
本実施形態においては、ワイヤーバレル16により圧着された芯線13の圧縮率を、ワイヤーバレル16により圧着された後の芯線13の断面積の、ワイヤーバレル16が圧着される前の芯線13の断面積に対する百分率としたとき、圧縮率は、40%以上70%以下とされる。本実施形態においては、60%とされる。
【0054】
次に、本実施形態の作用、効果について説明する。以下に、電線11に対する雌端子金具12の取付け工程の一例を示す。まず、金属板材をプレス成形することで所定の形状に形成する。このとき、凹部18を同時に形成してもよい。
【0055】
その後、所定形状に形成された金属板材を曲げ加工することで接続部17を形成する(図2参照)。このときに凹部18を形成してもよい。
【0056】
図8に示すように、雌端子金具12をプレス成形する際の金型24には、ワイヤーバレル16の凹部18に対応する位置に複数の凸部25が形成されている。
【0057】
図4に示すように、ワイヤーバレル16に形成された凹部18は、第1孔縁19の延びる方向(矢線Bで示す方向)に沿って間隔を空けて並んで形成され、且つ、第2孔縁20の延びる方向(矢線Cで示す方向)に沿って間隔を空けて並んで形成されている。このため、図8に示すように、金型24のうち凹部18と対応する位置に形成された複数の凸部25は、第1孔縁19の延びる方向(矢線Bで示す方向)に沿って間隔を空けて並んで形成され、且つ、芯線13の延び方向と30°の角度αを有する方向(矢線Cで示す方向)に沿って間隔を空けて並んで形成されている。更に、各凹部18の第1孔縁19は、第1孔縁19の延びる方向(矢線Bで示す方向)に沿う直線上に並んで配されており、且つ、各凹部18の第2孔縁20は、第2孔縁20の延びる方向(矢線Cで示す方向)に沿う直線上に並んで配されている。
【0058】
このため、図7に示すように、ワイヤーバレル16の電線11が配された面には、凹部18に対応する領域と異なる領域が、第1孔縁19の延びる方向(矢線Bで示す方向)に帯状に延びて複数形成されると共に、第2孔縁20の延びる方向(矢線Cで示す方向)に帯状に延びて複数形成されている。
【0059】
従って、複数の凸部25が間隔を空けて並ぶように形成するためには、凸部25を残すようにして、金属部材に、第1孔縁19の延びる方向に沿って帯状に延びる複数の溝を切削加工により形成すると共に、第2孔縁20の延びる方向沿って帯状に延びる複数の溝を切削加工により形成することにより製造できる。このように、本実施形態に係る雌端子金具12をプレス成形するための金型24は、切削加工により製造することができる。
【0060】
続いて、電線11の絶縁被覆14を剥がして芯線13を露出させる。芯線13をワイヤーバレル16の上に載置し、且つ、絶縁被覆14をインシュレーションバレル15の上に載置した状態で、図示しない金型により、両バレル15,16を電線11に対して外側から圧着させる。
【0061】
図9に示すように、ワイヤーバレル16を芯線13に圧着すると、芯線13はワイヤーバレル16に押圧されて、芯線13の延び方向(図9における矢線Aで示す方向)に塑性変形して延びる。すると、芯線13の外周面が、各凹部18の孔縁と摺接する。これにより、芯線13の外周面に形成された酸化膜が剥がされて、芯線13の新生面が露出する。この新生面とワイヤーバレル16とが接触することにより、芯線13とワイヤーバレル16とが電気的に接続される。
【0062】
また、本実施形態によれば、ワイヤーバレル16のうち複数の凹部18の間に位置する領域においては、芯線13に対して比較的に大きな応力が集中する。これにより、各凹部18の孔縁において、確実に芯線13の表面に形成された酸化膜を剥離して、芯線13の新生面を露出させることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第1孔縁19は芯線13の延び方向に85°以上95°以下の角度で交差して配されているので、ワイヤーバレル16に圧着された状態の芯線13に対して、電線11の延び方向に沿う力が加えられた場合に、第1孔縁19に形成されるエッジによって、芯線13の動きが抑制される。これにより、凹部18の第1孔縁19及び第2孔縁20と摺接することにより形成された芯線13の新生面は、凹部18の近傍に位置するワイヤーバレル16の表面と確実に接触することができる。この結果、電線11と雌端子金具12との間の電気抵抗を確実に低減させることができる。
【0064】
一方、第1孔縁19と芯線13の延び方向とのなす角度が85°未満である場合、及び95°を超える場合には、芯線13に対して電線11の延び方向に沿う力が加えられた場合に、第1孔縁19に形成されたエッジによっては芯線13の動きを十分に保持することができなくなることが懸念される。すると、芯線13がワイヤーバレル16の表面から離間する方向に移動してしまうおそれがある。これにより、芯線13の新生面において、ワイヤーバレル16との電気的な接続に寄与しない部分が生じる結果、電線11と雌端子金具12との間の電気抵抗を十分に小さくすることができなくなるおそれがあるので好ましくない。
【0065】
また、凹部18の第1孔縁19と凹部18の底面とを接続する第1傾斜面22は、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面であって、且つ凹部18が形成されていない部分の面に対して90°以上110°の角度βで形成されている。上述したように凹部18は金型24に形成された凸部25を金属板材に押圧することにより形成される。このため、押圧後、金型24の凸部25を容易に離脱させるために、凹部18の孔縁と凹部18の底面との間には、凹部18の底面から凹部18の孔縁に向かうに従って拡開する傾斜面21が形成される。すなわち、傾斜面21と、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面との間には直角又は鈍角が形成される。
【0066】
傾斜面21と、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面との間に形成される角度が大きいことは、凹部18の孔縁に形成されたエッジが緩やかになることを意味する。本実施形態においては、第1傾斜面22とワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面との間に形成される角度βは、90°以上110°(本実施形態では105°)と、直角又は鈍角としては比較的に小さい。このため、凹部18の第1孔縁19に形成されるエッジは、比較的に鋭いものとなっている。この結果、第1孔縁19に形成されたエッジが、芯線13に食い込むことにより、芯線13に形成された酸化膜を確実に剥がすことができる。
【0067】
一方、第2孔縁20は、芯線13の延び方向に対して25°以上35°以下の角度α(本実施形態では30°)を有して形成されている。これにより、電線11の延びる方向について隣り合う凹部18同士の第1孔縁19が、電線11の延びる方向についてオーバーラップして配される。これにより、ワイヤーバレル16による芯線13の保持力が一層向上する。第2孔縁20と電線11の延びる方向とのなす角度αが25°未満である場合、及び35°を超える場合には、電線11の延びる方向について隣り合う凹部18同士の第1孔縁19が、電線11の延びる方向についてオーバーラップしない領域が形成されるので、好ましくない。
【0068】
また、ワイヤーバレル16は、芯線13の外側から巻くように圧着される。このため、凹部18の孔縁は、芯線13の延び方向と直交する方向(図3の矢線Bに示す方向)について閉じる方向に変形する。
【0069】
このため、第2傾斜面23と、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される面とのなす角度γが、過度に小さいと、凹部18の孔縁が芯線13の延び方向と直交する方向について閉じて塞がれてしまい、第2孔縁20が芯線13と摺接できなくなることが懸念される。
【0070】
しかし一方で、第2傾斜面23と、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される面であって、且つ凹部18が形成されてない部分の面とのなす角度γを大きくすると、第2孔縁20に形成されるエッジが緩やかになり、芯線13に食い込みにくくなり、芯線13に形成された酸化膜が除去されにくくなることが懸念される。
【0071】
上記の点に鑑み、本実施形態では、第2傾斜面23と、ワイヤーバレル16のうち芯線13が配される側の面であって、且つ凹部18が形成されてない部分の面との間に形成される角度γを、120°とした。これにより、ワイヤーバレル16を芯線13に圧着した場合でも、凹部18の孔縁が芯線13の延び方向と直交する方向に閉じて塞がれることを抑制できると共に、第2孔縁20に形成されるエッジを比較的に鋭いものとすることができる。この結果、第2孔縁20に形成されたエッジが、芯線13に食い込むことにより、芯線13の酸化膜を剥がすことができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、複数の凹部18は、電線11の延び方向について、0.3mm以上0.8mm以下という比較的に小さな第1のピッチ間隔P1を空けて並んで配される。これにより、単位面積当たりの凹部18の数が増加する。すると、単位面積当たりにおける、凹部18の孔縁に形成されたエッジの領域が増大する。これにより、単位面積当たりにおいて、凹部18の孔縁に形成されたエッジが芯線13に食い込む領域が比較的に大きくなるから、ワイヤーバレル16による芯線13の保持力を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、電線11の延び方向と直交する方向(第1孔縁19の延び方向)について、0.3mm以上0.8mm以下という比較的に小さな第2のピッチ間隔P2を空けて凹部18が並んで配される。これにより、単位面積当たりの凹部18の数が増加する。すると、単位面積当たりにおける、凹部18の孔縁に形成されたエッジの領域が増大する。これにより、単位面積当たりにおいて、凹部18の孔縁に形成されたエッジが芯線13に食い込む領域が比較的に大きくなるから、ワイヤーバレル16による芯線13の保持力を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、金型24を切削加工により形成できるので、金型24を放電加工により形成する場合に比べて、製造コストを低減できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、第1孔縁の長さ寸法は0.25mmとなっており、0.2以上0.4mm以下となっている。これにより、ワイヤーバレル16に形成された凹部18の第1孔縁19が芯線13の外周面に食い込む。これにより芯線13がワイヤーバレル16に確実に保持される。第1孔縁19の長さ寸法が0.2mmよりも短いと、ワイヤーバレル16による芯線13の保持力が減少するので好ましくない。また、第1孔縁19の長さ寸法が0.4mmを超えると、第1孔縁19の延びる方向について隣り合う凹部18同士の間隔が狭くなる。すると、金型24において、凹部18を形成するための凸部25が欠けることが懸念されるので好ましくない。
【0076】
本実施形態においては、芯線13はアルミニウム合金からなる。このように、芯線13がアルミニウム合金からなる場合、芯線13の表面には酸化膜が比較的に形成されやすい。本実施形態は、芯線13がアルミニウム合金からなる場合であっても、電線11と雌端子金具12との間の電気抵抗を小さくすることができる。
【0077】
さらに、芯線13の表面に形成された酸化膜を破って電気抵抗を小さくするためには、比較的に小さな圧縮率でワイヤーバレル16を芯線13に圧着する必要がある。本実施形態によれば、ワイヤーバレル16は、圧縮率が40%以上70%以下であるような、比較的に小さな圧縮率で電線11に圧着される。これにより、芯線13の表面に形成された酸化膜を効果的に剥ぎ取ることができる。上記の圧縮率は、上記範囲内で適宜変更することができ、例えば50%以上60%以下にすることや、電線11の芯線13の断面積が大きい場合には40%以上50%以下にすることもできる。なお、圧縮率は、{(圧縮後芯線面積)/(圧縮前芯線面積)}×100 で定義される。
【0078】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
【0079】
<実施例1−1>
まず、金属部材に対して複数本の溝を切削加工することにより、所定の形状の凸部が形成された金型を作製した。この金型を用いて、表面にスズメッキが施された銅合金製の金属板材をプレス加工し、更に曲げ加工することにより端子金具を作製した。金属板材の厚さ寸法は0.25mmであった。
【0080】
端子金具のワイヤーバレルに形成された凹部の形状等は、以下のようであった。電線の延びる方向に対して第1孔縁のなす角度は85°、電線の延び方向に対して第2孔縁のなす角度は30°、第1傾斜面とワイヤーバレルのうち芯線が配される側の面であって且つ凹部が形成されていない部分の面とのなす角度は105°、第2傾斜面とワイヤーバレルのうち芯線が配される側の面であって且つ凹部が形成されていない部分の面とのなす角度は120°、隣り合う凹部同士のピッチ間隔は、電線(芯線)の延びる方向については、0.4mm、第1孔縁の延び方向については0.5mmであった。
【0081】
一方、電線の端末において絶縁被覆を剥がして、アルミニウム合金製の芯線を露出させた。芯線の断面積は、0.75mm2であった。その後、露出した芯線に対して、ワイヤーバレルを圧着させた。芯線の圧縮率は60%であった。
【0082】
<実施例1−2、1−3>
実施例1−2では、電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度を90°とした。また、実施例1−3では、電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度を95°とした。上記以外は、実施例1−1と同様にして、実施例1−2、及び実施例1−3に係る端子金具付き電線を作製した。
【0083】
<比較例1−1乃至1−4>
比較例1−1乃至1−4に係る端子金具付き電線については、電線の延び方向に対する第1孔縁のなす角度を、それぞれ表1に示す値に設定した。上記以外は、実施例1−1と同様にして端子金具付き電線を作製した。
【0084】
上記のようにして作製した端子金具付き電線に対して、電線と端子金具との間の固着力(保持力)、及び、芯線と端子金具との間の電気抵抗を測定した。
【0085】
(電気抵抗測定、および固着力測定)
端子金具付き電線に対して、125℃、0.5時間で加熱する加熱工程と、−40℃、0.5時間で冷却する冷却工程と、を
250サイクル、繰り返し実行し、芯線とワイヤーバレルの接続部に熱膨張による負荷を繰り返しかけた。
【0086】
上記試験品について、端子金具と芯線との間の電気抵抗を測定した。20個のサンプルに対して測定を行い、平均値を表1に記載した。
その後、端子金具と電線とをそれぞれ治具で把持し、引っ張り試験を実行した。引っ張り速度は100mm/secであった。端子金具のワイヤーバレルから、電線が離脱した時の応力を固着力の値とした。10個のサンプルに対して試験を行い、平均値を表1に記載した。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すように、電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度が85°未満である比較例1−1,及び1−2については、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.2mΩであった。また、電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度が95°より大きな比較例1−3,及び1−4については、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.2mΩであった。
【0089】
これに対して電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度が85°以上95°以下である実施例1−1乃至1−3においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗は0.5mΩであった。このように実施例1−1乃至1−3に係る端子金具付き電線においては、比較例1−1乃至1−4に係る端子金具付き電線に対して、芯線と端子金具との間の電気抵抗を約58%も低減させることができた。
【0090】
実施例1−1乃至1−3においては、第1孔縁は芯線の延び方向に対して85°以上95°以下の角度で交差して配されている。これにより、電線を屈曲させることにより、ワイヤーバレルに圧着された状態の芯線に対して、電線の延び方向に沿う力が加えられた場合に、第1孔縁に形成されるエッジによって、芯線の動きが抑制される。これにより、凹部の第1孔縁と摺接することにより形成された芯線の新生面は、凹部の近傍に位置するワイヤーバレルの表面と確実に接触することができる。この結果、電線(芯線)と端子金具との間の電気抵抗を確実に低減できたと考えられる。
【0091】
一方、比較例1−1及び1−2においては、第1孔縁と芯線の延び方向とのなす角度は85°未満であり、比較例1−3及び1−4においては第1孔縁と芯線の延び方向とのなす角度は95°を超えている。このため、芯線に対して電線の延び方向に沿う力が加えられた場合に、第1孔縁に形成されたエッジによっては芯線の動きを十分に保持することができなくなったと考えられる。すると、芯線がワイヤーバレルの表面から離間する方向に移動してしまい、この結果、芯線の新生面において、ワイヤーバレルとの電気的な接続に寄与しない部分が生じてしまう。これにより、電線と端子金具との間の電気抵抗を十分に小さくすることができなかったと考えられる。
【0092】
一方、固着力については、比較例1−1乃至1−4における電線と端子金具との間の固着力は55N以下であった。
【0093】
これに対して実施例1−1乃至1−3においては、電線と端子金具との間の固着力は、63N以上であった。このように、電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度を85°以上95°以下とすることにより、電線と端子金具との間の固着力を、約15%も向上させることができた。特に、電線の延び方向に対して第1孔縁のなす角度が90°である実施例1−2においては、固着力は65Nであった。この結果から、電線の延び方向に対する第1孔縁のなす角度は、90°が好ましい。
【0094】
実施例1−1乃至1−3においては、第1孔縁は芯線の延び方向に対して85°以上95°以下の角度で交差して配されている。これにより、ワイヤーバレルに圧着された状態の芯線に対して電線の延び方向に沿う力が加えられたときに、第1孔縁に形成されるエッジによって芯線が保持され、芯線の動きが抑制される。この結果、電線と端子金具との間の固着力を向上させることができたと考えられる。
【0095】
<実施例2−1乃至2−3、及び比較例2−1>
電線の延びる方向に対する第1孔縁のなす角度を90°とすると共に、電線の延び方向に対する第2孔縁のなす角度を表2に記載した値とした以外は、実施例1と同様にして、端子金具付き電線を作製した。
【0096】
<比較例2−2>
電線の延び方向に対して第2孔縁のなす角度が45°となるように金型を作製し、金属板材をプレス加工したところ、金型の凸部が欠けたために、端子金具を作製することができなかった。
【0097】
実施例2−1乃至2−3、及び比較例2−1について、実施例1と同様にして固着力を測定し、また、電気抵抗を測定した。結果を表2にまとめた。
【0098】
【表2】

【0099】
表2に示すように、電線の延び方向と第2孔縁とのなす角度が0°である比較例2−1に係る端子金具付き電線においては、電線と端子金具との間の固着力(保持力)は、45Nであった。
【0100】
これに対し、電線の延び方向と第2孔縁とのなす角度が25°以上35°以下である実施例2−1乃至2−3に係る端子金具付き電線においては、電線と端子金具との間の固着力は62N以上であった。このように、実施例2−1乃至2−3に係る端子金具付き電線においては、比較例2−1に係る端子金具付き電線に対して、電線と端子金具との間の固着力を約38%も向上させることができた。
【0101】
電線の延びる方向と第2孔縁とのなす角度が25°以上35°以下である実施例2−1乃至2−3に係る端子金具付き電線においては、電線の延びる方向について隣り合う凹部同士の第1孔縁が、電線の延び方向についてオーバーラップして配されるようになっている(図7参照)。これにより、凹部の第1孔縁に形成されたエッジが芯線に食い込む領域が、電線の延び方向について必ず存在するようになっている。これにより、ワイヤーバレルによる芯線の保持力を一層向上させることができたと考えられる。
【0102】
これに対して、第2孔縁と電線の延び方向とのなす角度が0°である比較例2−1においては、電線の延び方向について隣り合う凹部同士の第1孔縁が、電線の延び方向についてオーバーラップしない領域が形成されたと考えられる。このため、電線と端子金具との間の固着力が45Nという比較的に低い値になったと考えられる。
【0103】
また、第2孔縁と電線の延び方向のなす角度が45°に設定された凹部を形成することは、金属板材をプレス加工する際に金型が欠けてしまうため作製不可能であった。
【0104】
また、比較例2−1に係る端子金具付き電線における、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.5mΩであったのに対し、実施例2−1乃至2−3に係る端子金具付き電線における、芯線と端子金具との間の電気抵抗は、0.5mΩとなっており、比較例2−1に比べて約67%も低減させることができた。
【0105】
<実施例3−1乃至3−3、並びに比較例3−1及び3−2>
電線の延びる方向に対する第1孔縁のなす角度を90°とすると共に、第1傾斜面とワイヤーバレルのうち芯線が配される側の面であって且つ凹部が形成されていない部分の面とのなす角度(以下、第1傾斜面のなす角度ともいう)を表3に記載した値とした以外は、実施例1と同様にして、端子金具付き電線を作製した。
【0106】
なお、第1傾斜面のなす角度が90°未満となる場合は、第1傾斜面のなす角度がオーバーハングとなるため、プレス加工によっては端子金具を作成することができなかった。
【0107】
実施例3−1乃至3−3、並びに比較例3−1及び3−2について、実施例1と同様にして固着力を測定し、また、電気抵抗を測定した。結果を表3にまとめた。
【0108】
【表3】

【0109】
表3に示すように、第1傾斜面のなす角度が110°を超える比較例3−1及び3−2においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.2mΩであったのに対し、第1傾斜面のなす角度が90°以上110°以下である実施例3−1乃至3−3においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗は0.5mΩであった。このように、実施例3−1乃至3−3に係る端子金具付き電線においては、比較例3−1及び3−2に係る端子金具付き電線に対して、芯線と端子金具との間の電気抵抗を約58%も低減させることができた。
【0110】
上述したように凹部は金型に形成された凸部を金属板材に押圧することにより形成される。このため、押圧後、金型の凸部を用意に離脱させるために、第1傾斜面のなす角度は直角又は鈍角とされる。
【0111】
実施例3−1乃至3−3においては、第1傾斜面のなす角度は90°以上110°以下とされており、直角又は鈍角としては比較的に小さいものとなっている。このため、凹部の第1孔縁に形成されるエッジは比較的に鋭いものとなっている。この結果、第1孔縁に形成されたエッジが芯線に食い込むことにより、芯線に形成された酸化膜が確実に剥がされ、芯線の新生面と端子金具とが接触したと考えられる。これにより、芯線と端子金具との間の電気抵抗が低減されたと考えられる。
【0112】
これに対して比較例3−1及び3−2においては、第1孔縁のなす角度はそれぞれ、120°、及び125°となっており、鈍角として比較的に大きなものとなっている。このため、第1孔縁に形成されたエッジが芯線に十分に食い込むことができなかったために、芯線と端子金具との間の電気抵抗が十分に低下しなかったと考えられる。
【0113】
更に、比較例3−1及び3−2においては、電線と端子金具との間の固着力は55N以下であったのに対し、実施例3−1乃至3−3においては、電線と端子金具との間の固着力は62N以上であった。このように、第1傾斜面のなす角度を90°以上110°以下とすることにより、電線と端子金具との間の固着力を約13%向上させることができた。
【0114】
<実施例4−1乃至4−4、並びに比較例4−1及び4−2>
電線の延びる方向に対する第1孔縁のなす角度を90°とすると共に、第2傾斜面とワイヤーバレルのうち芯線が配される側の面であって且つ凹部が形成されていない部分の面とのなす角度(以下、第2傾斜面のなす角度ともいう)を表4に記載した値とした以外は、実施例1と同様にして、端子金具付き電線を作製した。
【0115】
実施例4−1乃至4−4、並びに比較例4−1及び4−2について、実施例1と同様にして固着力を測定し、また、電気抵抗を測定した。結果を表4にまとめた。
【0116】
【表4】

【0117】
表4に示すように、芯線と端子金具との間の電気抵抗は、第2傾斜面のなす角度が105°である比較例4−1においては1.4mΩであり、第2傾斜面のなす角度が150°である比較例4−2においては、1.5mΩであった。
【0118】
これに対して、第2傾斜面のなす角度が115°以上140°以下である実施例4−1乃至4−4においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗は0.7mΩ以下であった。このように、第2傾斜面のなす角度を115°以上140°以下とすることにより、芯線と端子金具との間の電気抵抗を約50%も低減させることができた。また、実施例4−1乃至4−3において芯線と端子金具との間の電気抵抗が0.5mΩであることから、第2傾斜面のなす角度は115°以上130°以下が好ましい。
【0119】
ワイヤーバレルは、芯線の外側から巻くように圧着される。このため、ワイヤーバレルの内周面に形成された凹部は、ワイヤーバレルが芯線に巻くように圧着されると、その孔縁部の開口面積が縮小するように変形する。このとき、第2傾斜面のなす角度が過度に小さいと、凹部の孔縁部の開口面積が過度に小さくなり、場合によっては閉じてしまうことが懸念される。すると、凹部の第2孔縁が芯線と摺接できなくなってしまい、芯線の新生面を露出させることが困難になることが考えられる。上記のような理由により、比較例4−1においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.4mΩと比較的に大きくなったと考えられる。
【0120】
一方、第2傾斜面のなす角度を過度に大きくすると、第2孔縁に形成されるエッジが緩やかになることが懸念される。このため、第2孔縁のエッジが芯線に食い込みにくくなり、芯線に形成された酸化膜が除去されにくくなり、芯線の新生面を露出されることが困難になることが懸念される。上記のような理由により、比較例4−2においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.5mΩと比較的に大きくなったと考えられる。
【0121】
第2傾斜面のなす角度が115°以上140°以下である実施例4−1乃至4−4においては、ワイヤーバレルを芯線に圧着した場合でも、凹部の孔縁部の開孔面積が過度に小さくなり、又は凹部の孔縁部が閉じてしまうことを抑制できる。更に、第2孔縁に形成されるエッジを比較的に鋭いものとすることができる。この結果、第2孔縁に形成されたエッジが、芯線に食い込むことにより、芯線の酸化膜を剥がし、芯線の新生面と端子金具とを接触させることができる。これにより、芯線との端子金具との間の電気抵抗を低減させることができたと考えられる。
【0122】
<実施例5−1乃至5−4、並びに比較例5−2>
電線の延び方向に対する第1孔縁のなす角度を90°とすると共に、複数の凹部の、芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔を表5に記載した値とした以外は、実施例1と同様にして、端子金具付き電線を作製した。
【0123】
<比較例5−1>
第1のピッチ間隔が0.2mmとなるように金型を作製し、金属板材をプレス加工したところ、金型の凸部が欠けたために、端子金具を作製することができなかった。
【0124】
実施例5−1乃至5−4、並びに比較例5−2について、実施例1と同様にして固着力を測定し、また、電気抵抗を測定した。結果を表5にまとめた。
【0125】
【表5】

【0126】
表5に示すように、複数の凹部の、芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔を1.5mmとした比較例5−2においては、電線と端子金具との間の固着力は38Nであった。これに対して、芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔を0.3mm以上0.8mm以下とした実施例5−1乃至5−4においては、電線と端子金具との間の固着力は60Nであった。このように、芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔を0.3mm以上0.8mm以下とすることにより、電線と端子金具との間の固着力を約58%も向上させることができた。
【0127】
実施例5−1乃至5−4においては、複数の凹部は、電線の延び方向について0.3mm以上0.8mm以下という比較的に小さな第1のピッチ間隔を空けて並んで配されている。これにより単位面積あたりの凹部の数が増加する。すると、単位面積当たりにおける凹部の孔縁に形成されたエッジの領域が増大する。これにより、単位面積あたりにおいて、凹部の孔縁に形成されたエッジが、芯線に食い込む領域を増大させることができる。この結果、ワイヤーバレルによる芯線の保持力が向上するので、電線と端子金具との間の固着力を増大させることができたと考えられる。
【0128】
更に、比較例5−2においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.2mΩであったのに対し、実施例5−1乃至5−4では、芯線と端子金具との間の電気抵抗は0.8mΩであった。このように、第1のピッチ間隔を0.3mm以上0.8mm以下とすることにより、芯線と端子金具との間の電気抵抗を約33%も低減させることができた。また、実施例5−1乃至5−3における電線と端子金具との間の電気抵抗が0.5mΩであることから、第1のピッチ間隔は0.3mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0129】
<実施例6−1乃至6−4、並びに比較例6ー2>
第1孔縁の延び方向に対して第1孔縁のなす角度を90°とすると共に、複数の凹部の、芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔を表6に記載した値とした以外は、実施例1と同様にして、端子金具付き電線を作製した。
【0130】
<比較例6−1>
第1のピッチ間隔が0.2mmとなるように金型を作製し、金属板材をプレス加工したところ、金型の凸部が欠けたために、端子金具を作製することができなかった。
【0131】
実施例6−1乃至6−4、並びに比較例6−2について、実施例1と同様にして固着力を測定し、また、電気抵抗を測定した。結果を表6にまとめた。
【0132】
【表6】

【0133】
表6に示すように、複数の凹部の、第1孔縁の延び方向についての第2のピッチ間隔を1.5mmとした比較例6−2においては、電線と端子金具との間の固着力は43Nであった。これに対して、芯線の延び方向についての第2のピッチ間隔を0.3mm以上0.8mm以下とした実施例6−1乃至6−4においては、電線と端子金具との間の固着力は62Nであった。このように、芯線の延び方向についての第1のピッチ間隔を0.3mm以上0.8mm以下とすることにより、電線と端子金具との間の固着力を約44%も向上させることができた。
【0134】
実施例6−1乃至6−4においては、複数の凹部は、電線の延び方向について0.3mm以上0.8mm以下という比較的に小さな第1のピッチ間隔を空けて並んで配されている。これにより単位面積あたりの凹部の数が増加する。すると、単位面積当たりにおける凹部の孔縁に形成されたエッジの領域が増大する。これにより、単位面積あたりにおいて、凹部の孔縁に形成されたエッジが、芯線に食い込む領域を増大させることができる。この結果、ワイヤーバレルによる芯線の保持力が向上するので、電線と端子金具との間の固着力を増大させることができたと考えられる。
【0135】
更に、比較例6−2においては、芯線と端子金具との間の電気抵抗が1.2mΩであったのに対し、実施例6−1乃至6−4では、芯線と端子金具との間の電気抵抗は0.7mΩであった。このように、第2のピッチ間隔を0.3mm以上0.8mm以下とすることにより、芯線と端子金具との間の電気抵抗を約42%も低減させることができた。また、実施例6−1乃至6−3における電線と端子金具との間の電気抵抗が0.5mΩであることから、第2のピッチ間隔は0.3mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0136】
<実施形態2>
続いて、実施形態2について図10及び図11を参照しつつ説明する。本実施形態においては、第1孔縁19の長さ寸法は0.38mmに設定されている。また、第1孔縁19の延び方向(図11において矢線Bで示す方向)について隣り合う凹部18同士の間隔L1は、芯線13の延び方向(図11において矢線Aで示す方向)について隣り合う凹部18同士の間隔L2よりも狭く設定されている。本実施形態においては、間隔L1は0.12mmに設定されており、間隔L2は0.19mmに設定されている。
【0137】
また、第1孔縁19の延び方向について隣り合う凹部18の間に位置する第1領域40は、第2孔縁20の延び方向(図11における矢線Cで示す方向)について延びている。上述したように、第2孔縁20の延び方向は、芯線13の延び方向に対して30°の角度をなしている。
【0138】
また、芯線13の延び方向について隣り合う凹部18の間に位置する第2領域41は、第1孔縁19の延び方向(芯線13の延び方向と直交する方向)に延びて形成されている。
【0139】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0140】
芯線13にワイヤーバレル16を圧着すると、ワイヤーバレル16のうち複数の隣り合う凹部18の間に位置する第1領域40、及び第2領域41が、芯線13の外周面に押圧される。すると、芯線13の外周面に形成された酸化膜が破壊されて、芯線13の新生面が露出する。この新生面とワイヤーバレル16とが接触することにより、芯線13とワイヤーバレル16とが電気的に接続される。
【0141】
本実施形態においては、第1孔縁19の延び方向について隣り合う凹部18同士の間隔L1は、芯線13の延び方向について隣り合う凹部18同士の間隔L2よりも狭く設定されている。このため、第1孔縁19の延び方向について隣り合う凹部18の間に位置する第1領域40は、芯線13の延び方向について隣り合う凹部18の間に位置する第2領域41よりも、幅狭に形成されている。
【0142】
このように第1領域40は比較的に幅狭に形成されているので、芯線13に食い込みやすくなっている。この結果、芯線13の外周面に第1領域が食い込むことにより、芯線13と雌端子金具12との間の電気抵抗を低減させることができる。
【0143】
上記の第1領域40は芯線13の延び方向に対して30°の角度をなして延びている。このため、第1領域40は芯線13に対して、芯線13の延び方向について傾斜した姿勢で食い込む。従って、第1領域40が芯線13の延び方向について直交して形成されている場合に比べて、第1領域40が芯線13に食い込むことによって芯線13が破断されることが抑制される。これにより、電線11と雌端子金具12との間の保持力(固着力)が低下することを抑制できる。
【0144】
なお、芯線13の延び方向と直交して延びる第2領域40も、ワイヤーバレル16が芯線13に圧着されると、芯線13の外周面に食い込む。しかし、第2領域は比較的に幅広に形成されているので、芯線13を破断することが抑制されるようになっている。
【0145】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態においては、ワイヤーバレル16に形成される複数の凹部18の、芯線13の延び方向についての第1のピッチ間P1は0.4mmであり、且つ、芯線13の延び方向に対して直交する方向についての第2のピッチ間隔P2は0.5mmとされていたが、これに限られず、両ピッチ間隔は必要に応じて任意に設定できる。また、両ピッチ間隔は、お互いに異なる値としてもよいし、同じ値としてもよい。
(2)実施形態1においては、凹部18の孔縁を構成する第1孔縁19の長さは、0.25mmに設定されており、また、実施形態2に係る第1孔縁19の長さは0.38mmに設定されていたが、これに限られず、凹部18の孔縁を構成する第1孔縁19の長さは、必要に応じて任意に設定しうる。
(3)本実施形態においてはアルミ電線を用いたが、銅電線を用いた場合でも凝着力等により電線と端子金具との間の固着力について、アルミ電線ほど大きくはないが効果があり、かつ従来技術と比して電線と端子金具との間の電気抵抗などで欠点が生じることはない。このため、銅電線用に本発明を用いることもできるし、銅電線、アルミ電線両方に適用可能な端子金具に本発明を用いることもできる。
【符号の説明】
【0146】
10...端子金具付き電線
11...電線
12...雌端子金具(端子金具)
13...芯線
16...ワイヤーバレル(圧着部)
17...接続部
18...凹部
19...第1孔縁
20...第2孔縁
22...第1傾斜面
23...第2傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯線を含む電線から露出する前記芯線に巻き付くように圧着される圧着部を備えた端子金具であって、
前記圧着部が前記芯線に圧着される前の状態において、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面には複数の凹部が形成されており、前記凹部の孔縁は互いに平行な一対の第1孔縁を備え、
複数の前記凹部は、前記第1孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されると共に、前記電線の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されており、
前記第1孔縁は前記電線の延びる方向に対して85°以上95°以下の角度をなしており、
前記第1孔縁は前記電線の延びる方向についてオーバーラップして配されており、前記圧着部には前記電線の延びる方向について前記第1孔縁が存在する端子金具。
【請求項2】
前記凹部は平行四辺形状をなしており、前記第1孔縁とは異なる互いに平行な一対の第2孔縁を有し、複数の前記凹部は、前記第2孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されている請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記第1孔縁の延びる方向について隣り合う前記凹部同士の間隔は、前記電線の延びる方向について隣り合う前記凹部同士の間隔よりも狭く設定されている請求項1または請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる芯線の外周に絶縁被覆を有する電線と、前記電線から露出する前記芯線に圧着される端子金具と、を備えた端子金具付き電線であって、
前記端子金具は、前記芯線に巻き付くように圧着される圧着部を備え、前記圧着部が前記芯線に圧着される前の状態において、前記圧着部のうち前記芯線が配される側の面には複数の凹部が形成されており、前記凹部の孔縁は互いに平行な一対の第1孔縁を備え、
複数の前記凹部は、前記第1孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されると共に、前記電線の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されており、
前記第1孔縁は前記電線の延びる方向に対して85°以上95°以下の角度をなしており、
前記第1孔縁は前記電線の延びる方向についてオーバーラップして配されており、前記圧着部には前記電線の延びる方向について前記第1孔縁が存在する端子金具付き電線。
【請求項5】
前記凹部は平行四辺形状をなしており、前記第1孔縁とは異なる互いに平行な一対の第2孔縁を有し、複数の前記凹部は、前記第2孔縁の延びる方向に沿って間隔を空けて並んで配されている請求項4に記載の端子金具付き電線。
【請求項6】
前記第1孔縁の延びる方向について隣り合う前記凹部同士の間隔は、前記電線の延びる方向について隣り合う前記凹部同士の間隔よりも狭く設定されている請求項4または5に記載の端子金具付き電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−138376(P2012−138376A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93018(P2012−93018)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2009−291042(P2009−291042)の分割
【原出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】