説明

端面検査方法および端面検査装置

【課題】より正確に微小な異物の有無を検出することができる端面検査方法および端面検査装置を提供する。
【解決手段】端面検査装置1は、光ファイバ90の端面91を検査する装置であって、プローブ光用光源11、プローブ光用光源12、放射光検出センサ13、観察用光源21、観察用撮像部22、解析部30、レンズ41〜44、および、光フィルタ51,52を備える。プローブ光用光源11またはプローブ光用光源12から出力されたプローブ光は、端面91を通過して光ファイバ90に対して入射または出射するように端面91に照射される。この端面91へのプローブ光の照射に伴って発生する放射光の強度または分布が放射光検出センサ13により検出される。これにより端面91の温度変化が検出され、その温度変化検出結果に基づいて端面91が解析部30により検査される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過または反射させる光学部品の端面を検査する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を透過または反射させる光学部品の端面に異物が付着していると、その端面に高いパワーの光が入射されたときに、その異物が劣化・変性などして、その端面における透過率または反射率が変動したり、或いは、その端面が破損したりする場合がある。したがって、光学部品の端面を検査して異物の有無を検出し、もし異物が付着していると判定された場合には、その端面を清浄化する必要がある。
【0003】
光を透過または反射させる光学部品の端面を検査する技術としては、特許文献1〜5に開示されたものが知られている。これらの文献に開示された技術では、光学部品(例えば光コネクタ)の端面が撮像されて、その撮像により得られた画像が解析されることで、その端面が検査される。
【特許文献1】特公平7−1219号公報
【特許文献2】特許第2509772号公報
【特許文献3】特許第2514288号公報
【特許文献4】特許第2625599号公報
【特許文献5】特許第3797419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜5に開示された技術では、光吸収や反射が小さい異物を検出することは困難であり、また、極微小な異物を検出することも困難である。したがって、実際には端面に異物が付着していても、端面に異物が付着していないとの検査結果が得られる場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、より正確に微小な異物の有無を検出することができる端面検査方法および端面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る端面検査方法は、光を透過または反射させる光学部品の端面を検査する方法であって、端面にプローブ光を照射し、端面の温度変化を検出して、その温度変化検出結果に基づいて端面を検査する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る端面検査方法は、端面へのプローブ光の照射に伴って発生する放射光を検出する放射光検出センサを用いて端面の温度変化を検出するのが好適である。また、本発明に係る端面検査方法は、プローブ光および放射光のうち放射光を選択的に放射光検出センサにより検出するのが好適である。
【0008】
本発明に係る端面検査方法は、端面を通過して光学部品に対して入射または出射するようにプローブ光を端面に照射するのが好適である。
【0009】
本発明に係る端面検査方法は、プローブ光および放射光の何れの波長とも異なる波長の観察光を端面に照射して端面を観察するのが好適である。また、本発明に係る端面検査方法は、観察光を端面に照射して端面を観察することにより端面へのプローブ光の照射の位置を確認するのが好適である。
【0010】
本発明に係る端面検査装置は、光を透過または反射させる光学部品の端面を検査する装置であって、端面に照射すべきプローブ光を出力するプローブ光用光源と、プローブ光が照射された端面の温度変化を検出する温度変化検出部と、温度変化検出部による温度変化検出結果に基づいて端面を検査する解析部と、を備えることを特徴とする端面検査装置。
【0011】
本発明に係る端面検査装置は、温度変化検出部が、端面へのプローブ光の照射に伴って発生する放射光を検出する放射光検出センサを含むのが好適である。また、本発明に係る端面検査装置は、プローブ光および放射光のうち放射光を選択的に放射光検出センサに入射させる選択部を更に備えるのが好適である。
【0012】
本発明に係る端面検査装置は、プローブ光用光源が、端面を通過して光学部品に対して入射または出射するようにプローブ光を端面に照射するのが好適である。
【0013】
本発明に係る端面検査装置は、プローブ光および放射光の何れの波長とも異なる波長の観察光を端面に照射する観察用光源と、観察用光源により観察光が照射された端面を観察する観察用撮像部と、を更に備えるのが好適である。また、本発明に係る端面検査装置は、解析部が、観察用撮像部による観察結果に基づいて端面へのプローブ光の照射の位置を確認するのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る端面検査方法または端面検査装置は、より正確に微小な異物の有無を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る端面検査装置1の構成を示す図である。この図に示される端面検査装置1は、光学部品90の端面91を検査する装置である。以下では、光学部品90として光ファイバを想定し、その光ファイバ90の一方の端面91を検査する場合について説明する。光ファイバ90は、外部から端面91に到達した光を内部へ透過させて導波させ、内部から導波して来て端面91に到達した光を外部へ透過させ、また、何れの場合にも端面91に到達した光の一部を端面91で反射させる。端面検査装置1は、プローブ光用光源11、プローブ光用光源12、放射光検出センサ13、観察用光源21、観察用撮像部22、解析部30、レンズ41〜44、および、光フィルタ51,52を備える。
【0017】
プローブ光用光源11およびプローブ光用光源12それぞれは、端面91に照射すべきプローブ光を出力する。プローブ光用光源11から出力されるプローブ光は、レンズ41,光フィルタ52および光フィルタ51を通過して、光ファイバ90の端面91へ照射される。プローブ光用光源12から出力されるプローブ光は、レンズ42を経て、光ファイバ90の他方の端面92を通過して光ファイバ90内に入力され、光ファイバ90内を導波した後に端面91へ照射される。
【0018】
すなわち、プローブ光用光源11およびプローブ光用光源12それぞれは、端面91を通過して光ファイバ90に対して入射または出射するようにプローブ光を端面91に照射する。なお、端面91を検査する際には、プローブ光用光源11およびプローブ光用光源12のうち一方が用いられる。
【0019】
プローブ光用光源11およびプローブ光用光源12それぞれから出力されるプローブ光は、赤外域の波長であってもよいし、可視域の波長であってもよい。想定される異物による吸収率が高い波長を用いることで測定の感度を高く維持することができる。また、放射光として検出する波長とプローブ光の波長との差を大きくとることによって、フィルタ51によるプローブ光と放射光との分離が容易となる。例えば、赤外波長領域の放射光を検出する場合、プローブ光は可視波長領域が好適である。なお、フィルタ51によるプローブ光と放射光との分離が不十分な場合、さらに、プローブ光を遮断するフィルタを検出器13の手前に配置しても良い。また、端面91に照射されるプローブ光のパワーは、例えばコア径100μmの面積当たり1W程度以上であるのが好適である。端面91に異物が付着している場合に、端面91にプローブ光が照射されると、異物が光エネルギーを吸収して発熱して、その発熱した異物から放射光が発生する。
【0020】
放射光検出センサ13は、プローブ光が照射された端面91の温度変化を検出する温度変化検出部として作用する。すなわち、放射光検出センサ13は、端面91へのプローブ光の照射に伴って発生し光フィルタ51で反射されレンズ43を経て到達した放射光を検出する。放射光検出センサ13が検出する放射光の波長は、プローブ光の波長と異なり、例えば1.55μm帯または1.3μm帯である。なお、このような温度変化検出部としては、非接触式のものが用いられるのが好適であるが、熱電対や測温抵抗体などの接触式のものが用いられてもよい。
【0021】
放射光検出センサ13は、到達する放射光の強度を検出するものであってもよい。この場合、端面91に異物が付着していないときと比較して、端面91に異物が付着しているときには、端面91から放射される放射光の強度が大きいので、放射光検出センサ13により検出される放射光強度に基づいて、端面91における異物付着の有無が検査され得る。この際、プローブ光の強度を時間的に変化させながら、放射光強度の時間変化、即ち、プローブ光の強度の時間変化に呼応する放射光強度の時間変化を解析することにより、異物付着をより正確に検出することが出来る。
【0022】
また、放射光検出センサ13は、端面91において発生する放射光の強度分布を撮像するものであってもよい。この場合、端面91に異物が付着しているときには、その異物および近傍における放射光強度が他の領域における放射光強度より大きいので、放射光検出センサ13により検出される放射光強度分布に基づいて、端面91における異物付着の有無が検査され得る。より具体的には、放射光強度の面内分布関数の微分値、あるいは、放射光強度の面内ばらつきと、プローブ光の強度との相関を解析することで、微小な異物付着を正確に検出することが出来る。
【0023】
観察用光源21は、プローブ光および放射光の何れの波長とも異なる波長の観察光を端面91に照射する。この観察光は、赤外域の波長であってもよいし、可視域の波長であってもよい。観察用撮像部22は、観察用光源21により観察光が照射された端面21を観察する。すなわち、観察用光源21から出力された観察光は、端面91に照射されて反射または散乱され、光フィルタ51を通過し、光フィルタ52で反射され、レンズ44を経て、観察用撮像部22に到達する。これにより、端面21における観察光の反射・散乱の分布が観察用撮像部22により撮像されて、端面21が観察用撮像部22により観察される。
【0024】
解析部30は、放射光検出センサ13による温度変化検出結果に基づいて端面91を検査する。すなわち、放射光検出センサ13が放射光強度を検出するものである場合には、解析部30は、その放射光検出センサ13により検出された放射光強度に基づいて端面91における異物の有無を検査する。また、放射光検出センサ13が放射光強度分布を検出するものである場合には、解析部30は、その放射光検出センサ13により検出された放射光強度分布に基づいて端面91における異物の有無および位置を検査する。また、解析部30は、観察用撮像部22による端面91の観察結果に基づいて、端面91へのプローブ光の照射の位置を確認する。
【0025】
光フィルタ51は、プローブ光および観察光を透過させ、放射光を反射させる。また、光フィルタ52は、プローブ光を透過させ、観察光を反射させる。なお、光フィルタ51は、プローブ光および放射光のうち放射光を選択的に放射光検出センサ13に入射させる選択部として作用する。このような選択部としては、端面91へのプローブ光の照射方向および反射方向が、放射光検出センサ13により検出可能な放射光の到来方向とを、互いに異ならせることによってもよい。
【0026】
次に、本実施形態に係る端面検査装置1の動作について説明するとともに、本実施形態に係る端面検査方法について説明する。この検査に際しては、プローブ光源11およびプローブ光源12の何れか一方が用いられる。プローブ光用光源11またはプローブ光用光源12から出力されたプローブ光は、端面91を通過して光ファイバ90に対して入射または出射するように端面91に照射される。この端面91へのプローブ光の照射に伴って発生する放射光の強度または分布が放射光検出センサ13により検出される。このとき、プローブ光および放射光のうち放射光が選択的に放射光検出センサ13により検出される。これにより端面91の温度変化が検出される。そして、その温度変化検出結果に基づいて端面91が解析部30により検査される。
【0027】
特許文献1〜5に開示された技術では、端面を撮像して得られた画像が解析されることで該端面が検査されるものであることから、光吸収や反射が小さい異物を検出することは困難であり、また、極微小な異物を検出することも困難である。これに対して、本実施形態では、端面91へのプローブ光の照射に伴って生じる端面91における異物の温度変化が放射光検出センサ13により検出されて、この温度変化検出結果に基づいて端面91が解析部30により検査されることから、光吸収や反射が小さい異物であっても容易に検出することが可能である。また、本実施形態では、異物で生じた熱が周囲に拡散して、異物より大きな範囲で温度変化が生じるので、極微小な異物であっても容易に検出することが可能である。
【0028】
また、本実施形態では、プローブ光および放射光の何れの波長とも異なる波長の観察光が観察用光源21から出力されて、この観察光が端面91に照射される。そして、この観察光が照射された端面21が観察用撮像部22により観察される。また、観察光が端面91に照射されて端面91が観察されることにより、端面91へのプローブ光の照射の位置が確認される。これにより、より確実に端面91の検査が行われ得る。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明に係る端面検査方法または端面検査装置による検査の対象である光学部品は、光ファイバに限られるものではなく、平面導波路であってもよいし、レンズ、ミラー、フィルタ、等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る端面検査装置1の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…端面検査装置、11,12…プローブ光用光源、13…放射光検出センサ、21…観察用光源、22…観察用撮像部、30…解析部、41〜44…レンズ、51,52…光フィルタ、90…光学部品(光ファイバ)、91…端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過または反射させる光学部品の端面を検査する方法であって、
前記端面にプローブ光を照射し、前記端面の温度変化を検出して、その温度変化検出結果に基づいて前記端面を検査する、ことを特徴とする端面検査方法。
【請求項2】
前記端面への前記プローブ光の照射に伴って発生する放射光を検出する放射光検出センサを用いて前記端面の温度変化を検出することを特徴とする請求項1記載の端面検査方法。
【請求項3】
前記プローブ光および前記放射光のうち前記放射光を選択的に前記放射光検出センサにより検出することを特徴とする請求項2記載の端面検査方法。
【請求項4】
前記端面を通過して前記光学部品に対して入射または出射するように前記プローブ光を前記端面に照射することを特徴とする請求項1記載の端面検査方法。
【請求項5】
前記プローブ光および前記放射光の何れの波長とも異なる波長の観察光を前記端面に照射して前記端面を観察することを特徴とする請求項1記載の端面検査方法。
【請求項6】
前記観察光を前記端面に照射して前記端面を観察することにより前記端面への前記プローブ光の照射の位置を確認することを特徴とする請求項5記載の端面検査方法。
【請求項7】
光を透過または反射させる光学部品の端面を検査する装置であって、
前記端面に照射すべきプローブ光を出力するプローブ光用光源と、
前記プローブ光が照射された前記端面の温度変化を検出する温度変化検出部と、
前記温度変化検出部による温度変化検出結果に基づいて前記端面を検査する解析部と、
を備えることを特徴とする端面検査装置。
【請求項8】
前記温度変化検出部が、前記端面への前記プローブ光の照射に伴って発生する放射光を検出する放射光検出センサを含む、ことを特徴とする請求項7記載の端面検査装置。
【請求項9】
前記プローブ光および前記放射光のうち前記放射光を選択的に前記放射光検出センサに入射させる選択部を更に備えることを特徴とする請求項8記載の端面検査装置。
【請求項10】
前記プローブ光用光源が、前記端面を通過して前記光学部品に対して入射または出射するように前記プローブ光を前記端面に照射する、ことを特徴とする請求項7記載の端面検査装置。
【請求項11】
前記プローブ光および前記放射光の何れの波長とも異なる波長の観察光を前記端面に照射する観察用光源と、
前記観察用光源により前記観察光が照射された前記端面を観察する観察用撮像部と、
を更に備えることを特徴とする請求項7記載の端面検査装置。
【請求項12】
前記解析部が、前記観察用撮像部による観察結果に基づいて前記端面への前記プローブ光の照射の位置を確認する、ことを特徴とする請求項11記載の端面検査装置。

【図1】
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