説明

競技用計時システム、および、タイム特定方法

【課題】 競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム等を提供する。
【解決手段】 (a)に示すように、競技者RNa〜RNc(集団)が連なって計時ラインL上に到達すると、審判員JGによりグリップスイッチが押し下げられたままとなる。競技者RNaのグリップタイムG1は、グリップ信号がONとなったタイミングにて計測されるが、競技者RNb,RNcのグリップタイムが未計測となる。この場合、処理装置は、(b)に示すように、グリップタイムG1に、無線タグタイムT2と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定し、また、グリップタイムG1に、無線タグタイムT3と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNcの競技タイムOT3を算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム、および、タイム特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技等において、競技者個々のゴールタイムを計測(計時)する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のゴールタイムを計測する計測システムも実用化されている。
最近では、各計時ポイントにおける通過タイムも含めた競技タイムを計測可能とするために、非接触にて競技者個々の競技タイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者にタグ送信機を保持させ、このタグ送信機から送られる情報により、競技タイムを計測する計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。
【0003】
より具体的には、方形ループコイル等から競技トラック上の計測エリア内にトリガ信号を送信するようにしておき、タグ送信機を保持する競技者がその計測エリア内を走行すると、このトリガ信号に応答してタグ送信機からID(識別番号等)が送信される。そして、ID受信ユニットがこのIDを受信することにより、各競技者の周回数や競技タイム等を計測する(例えば、特許文献1参照)。
この他にも、タグ送信機がUHF帯の微弱無線電波等にてIDを送出することにより、タグ送信機の通信距離の拡大を図る技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−141497号公報 (第2−4頁、第2図)
【特許文献2】特開2004−125765号公報 (第3−4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公式なマラソン競技等では、プリンタ付きのストップウオッチ等を使用した手動によるタイム計測がルールによって定められている。それでも、上述した計測システム等の普及に伴い、タグ送信機(無線タグ等)を用いて計測したタイムを、公式タイムとして採用することについて検討がなされている。
しかしながら、タグ送信機を用いたシステムでは、無線技術が基盤となっているため、無線通信の妨害や干渉等の不測の事態により、タイムの計測が行えない場合も起こり得る。
そのため、手動によるタイム計測を継続すべきという意見も多いが、そもそも、手動であることから、スイッチの押し忘れや押し損じ等のヒューマンエラーの発生が懸念されていた。
【0005】
このような現状から、手動によるタイム計時と、タグ送信機を用いたシステムとを融合させ、互いの欠点を補い得るシステムの開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム、および、タイム特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技用計時システムは、
複数の競技者にそれぞれ保持される送信機器と、当該各送信機器から送信される情報を受信する処理装置と、を含む競技用計時システムであって、
前記各送信機器には、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出手段と、
前記電磁場検出手段により検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する計時ライン検出手段と、
前記計時ライン検出手段が前記計時ラインを検出した際に、所定の情報を前記処理装置に向けて送信する情報送信手段と、が設けられ、
前記処理装置には、
基準となる基準時刻を計時する時刻計時手段と、
競技者の前記計時ライン上への到達に伴い、所定機器から供給される到達タイミングを示す信号を取得する信号取得手段と、
前記各送信機器から送信される前記情報をそれぞれ受信する情報受信手段と、
前記信号取得手段が前記信号を取得した際に、前記時刻計時手段にて計時された時刻を手動タイムとして計測し、前記情報受信手段が前記情報を受信した際に、前記時刻計時手段にて計時された時刻を自動タイムとして計測するタイム計測手段と、
前記タイム計測手段がそれぞれ計測した前記手動タイムと前記自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する競技タイム特定手段と、が設けられている、
ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、各送信機器において、電磁場検出手段は、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する。また、計時ライン検出手段は、検出された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する。そして、情報送信手段は、計時ライン検出手段が計時ラインを検出した際に、所定の情報(例えば、タグID等)を処理装置に向けて送信する。
一方、処理装置において、時刻計時手段は、基準となる基準時刻を計時する。また、信号取得手段は、競技者の計時ライン上への到達に伴い、所定機器(例えば、グリップスイッチ等)から供給される到達タイミングを示す信号を取得する。情報受信手段は、各送信機器から送信される情報をそれぞれ受信する。タイム計測手段は、信号取得手段が信号を取得した際に、時刻計時手段にて計時された時刻を手動タイムとして計測し、情報受信手段が情報を受信した際に、時刻計時手段にて計時された時刻を自動タイムとして計測する。そして、競技タイム特定手段は、タイム計測手段がそれぞれ計測した手動タイムと自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する。
【0009】
このように、処理装置では、それぞれ計測した手動タイムと自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する。このため、例えば、競技者が集団で計時ラインに到達し、信号がONのまま維持されて、後着の競技者の手動タイムが計測されなかった場合でも、その競技者の競技タイムが特定可能となる。
この結果、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0010】
前記処理装置には、
計測された前記手動タイムと前記自動タイムとの関係から、未計測の手動タイムの有無を判別する第1の判別手段が更に設けられ、
前記第1の判別手段により未計測の手動タイムがあると判別された場合に、前記競技タイム特定手段が、計測された前記手動タイムと、複数の前記自動タイムにおける時刻差とに基づいて、前記競技タイムを特定してもよい。
【0011】
前記処理装置には、
計測された前記手動タイムと前記自動タイムとの関係から、未計測の自動タイムの有無を判別する第2の判別手段が更に設けられ、
前記第2の判別手段により未計測の自動タイムがあると判別された場合に、前記競技タイム特定手段が、当該未計測の自動タイムに対応する前記手動タイムと、計測された前記自動タイム及び対応する前記手動タイムにおける時刻差と、に基づいて、前記競技タイムを特定してもよい。
【0012】
前記処理装置には、
前記計時ラインを通過する競技者の映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された競技者の映像を記録する映像記録手段と、
前記第2の判別手段により未計測の自動タイムがあると判別された場合に、対応する競技者の映像を、前記映像記録手段から検索する検索手段と、が更に設けられてもよい。
【0013】
前記各送信機器には、
前記計時ライン検出手段が前記計時ラインを検出してから、前記情報送信手段が前記情報を送信するまでの所要時間を算出する所要時間算出手段が更に備えられ、
前記情報送信手段が、前記所要時間を含んだ前記情報を前記処理装置に向けて送信し、
前記処理装置においては、
前記情報受信手段により、前記所要時間を含む前記情報を受信し、
前記タイム計測手段により、前記自動タイムを計測する際に、前記所要時間に基づいて補正した前記自動タイムを計測してもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る競技用計時システムは、
複数の競技者にそれぞれ保持される送信機器と、当該各送信機器から送信される情報を受信する処理装置と、を含む競技用計時システムであって、
前記各送信機器には、
基準となる基準時刻を計時する計時手段と、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出手段と、
前記電磁場検出手段により検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する計時ライン検出手段と、
前記計時ライン検出手段が前記計時ラインを検出した際に、前記計時手段にて計時された時刻を自動タイムとして計測する自動タイム計測手段と、
計測された前記自動タイムを含む情報を前記処理装置に向けて送信する情報送信手段と、が設けられ、
前記処理装置には、
基準となる基準時刻を計時する時刻計時手段と、
競技者の前記計時ライン上への到達に伴い、所定機器から供給される到達タイミングを示す信号を取得する信号取得手段と、
前記各送信機器から送信される前記自動タイムを含む前記情報をそれぞれ受信する情報受信手段と、
前記信号取得手段が前記信号を取得した際に、前記時刻計時手段にて計時された時刻を手動タイムとして計測する手動タイム計測手段と、
前記手動タイム計測手段が計測した前記手動タイムと、前記情報受信手段が受信した前記自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する競技タイム特定手段と、が設けられている、
を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、各送信機器において、計時手段は、基準となる基準時刻を計時する。また、電磁場検出手段は、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する。計時ライン検出手段は、検出された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する。自動タイム計測手段は、計時ライン検出手段が計時ラインを検出した際に、計時手段にて計時された時刻を自動タイムとして計測する。そして、情報送信手段は、計測された自動タイムを含む情報を処理装置に向けて送信する。
一方、処理装置において、時刻計時手段は、基準となる基準時刻を計時する。また、信号取得手段は、競技者の計時ライン上への到達に伴い、所定機器(例えば、グリップスイッチ等)から供給される到達タイミングを示す信号を取得する。情報受信手段は、各送信機器から送信される情報をそれぞれ受信する。手動タイム計測手段は、信号取得手段が信号を取得した際に、時刻計時手段にて計時された時刻を手動タイムとして計測する。そして、競技タイム特定手段は、手動タイム計測手段が計測した手動タイムと、情報受信手段が受信した自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する。
【0016】
このように、処理装置では、自己が計測した手動タイムと送信機器にて計測された自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する。このため、例えば、競技者が集団で計時ラインに到達し、信号がONのまま維持されて、後着の競技者の手動タイムが計測されなかった場合でも、その競技者の競技タイムが特定可能となる。
この結果、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るタイム特定方法は、
複数の競技者にそれぞれ保持される送信機器と、当該各送信機器から送信される情報を受信する処理装置とを含むシステムにおけるタイム特定方法であって、
前記各送信機器において、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出ステップと、
前記各送信機器において、前記電磁場検出ステップにて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する計時ライン検出ステップと、
前記各送信機器において、前記計時ライン検出ステップにて前記計時ラインが検出された際に、所定の情報を前記処理装置に向けて送信する情報送信ステップと、
前記処理装置において、基準となる基準時刻を計時する時刻計時ステップと、
前記処理装置において、競技者の前記計時ライン上への到達に伴い、所定機器から供給される到達タイミングを示す信号を取得する信号取得ステップと、
前記処理装置において、前記各送信機器から送信される前記情報をそれぞれ受信する情報受信ステップと、
前記処理装置において、前記信号取得ステップにて前記信号が取得された際に、前記時刻計時ステップにて計時された時刻を手動タイムとして計測し、前記情報受信ステップにて前記情報が受信された際に、前記時刻計時ステップにて計時された時刻を自動タイムとして計測するタイム計測ステップと、
前記処理装置において、前記タイム計測ステップにてそれぞれ計測された前記手動タイムと前記自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する競技タイム特定ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、各送信機器において、電磁場検出ステップは、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する。また、計時ライン検出ステップは、検出された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する。そして、情報送信ステップは、計時ライン検出ステップにて計時ラインを検出した際に、所定の情報(例えば、タグID等)を処理装置に向けて送信する。
一方、処理装置において、時刻計時ステップは、基準となる基準時刻を計時する。また、信号取得ステップは、競技者の計時ライン上への到達に伴い、所定機器(例えば、グリップスイッチ等)から供給される到達タイミングを示す信号を取得する。情報受信ステップは、各送信機器から送信される情報をそれぞれ受信する。タイム計測ステップは、信号取得ステップにて信号を取得した際に、時刻計時ステップにて計時された時刻を手動タイムとして計測し、情報受信ステップにて情報を受信した際に、時刻計時ステップにて計時された時刻を自動タイムとして計測する。そして、競技タイム特定ステップは、タイム計測ステップにてそれぞれ計測した手動タイムと自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する。
【0019】
このように、処理装置において、それぞれ計測した手動タイムと自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する。このため、例えば、競技者が集団で計時ラインに到達し、信号がONのまま維持されて、後着の競技者の手動タイムが計測されなかった場合でも、その競技者の競技タイムが特定可能となる。
この結果、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態にかかる競技用計時システムについて、以下、図面を参照して説明する。なお、一例として、競技用計時システムがマラソン競技等の陸上競技に適用された場合について説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施の形態に適用される競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
図示するように、この競技用計時システムは、競技走路及びその周辺に配置される磁場発生装置10、ループコイル11、グリップスイッチ20、受信機30、処理装置40、及び、写真判定装置50と、競技者RNに携帯される無線タグ60とを含んで構成される。
【0023】
磁場発生装置10は、競技走路の沿道に配置され、ループコイル11上に電磁場を発生させる。具体的に磁場発生装置10は、所定周波数に同期した正弦波を発生させる正弦波発生回路と、発生させた正弦波を増幅してループコイル11に供給する電力増幅回路とを含んで構成される。
【0024】
ループコイル11は、略「8の字」形状に形成されたコイルであり、競技者RNが走行する走路(具体的には、計時ラインLにより規定される計時ポイント)に適宜配置される。
ループコイル11は、一例として、図2(a)に示すように、矩形(方形)のコイル部を競技者RNの走行方向(矢印A方向)に2つ連ねたような8の字に形成されている。より詳細には、ループコイル11は8の字順方向巻きとなっており、8の字の中心(中点)、すなわち交差部に給電点sを有するように形成され、この給電点sを通って競技者RNの走行方向に対して直交する方向に延びる直線bを中心線として、略平行に所定距離だけ隔てた直線a,bに沿って、8の字の上下部が形成されている。なお、ループコイル11は、この直線bが計時を行うための計時ラインLに重なるように配置される。
【0025】
そして、ループコイル11は、図2(a)の給電点sから矢印方向に電流が流れるようになっており、磁場発生装置10から正弦波が供給されると、コイル上に交流電磁場を生成する。具体的には、図2(b)に示すように、一方のコイル部上に第1の電磁場110aを生成するとともに、他方のコイル部上に第1の電磁場110aに対して競技者RNの走行方向(矢印A方向)に隣接し且つ第1の電磁場110aと電磁力を打ち消しあう第2の電磁場110bを生成する。
つまり、直線b上の電磁場の磁界強度は、第1の電磁場110aと第2の電磁場110bとの電磁場の磁力の打ち消しにより、その両側の電磁界強度よりも極めて小さくなっている(例えば、電磁界強度が”0”となっている)。
【0026】
図示するような電磁場中を、電磁場の検出方向(検出コイル面Dに対して直角な方向)が競技走路と垂直(つまり、検出コイル面Dが走路に対して平行方向)に配置された電磁場検出コイルC(後述する無線タグ60のLFアンテナ61)が矢印B方向に移動すると、図2(c)に示すような電磁界強度分布が得られる。つまり、電磁場検出コイルCは、競技走路に対して垂直方向の磁束をコイル面Dにて捉えることになるため、丁度中心にて、電磁界強度が極めて小さくなる(例えば、電磁界強度が”0”となる)図2(c)に示すような電磁界強度分布を検出する。
このため、競技者RNがループコイル11上を、矢印B方向に沿って通過した場合に、無線タグ60は、計時ライン上(直線b上)を、第1の電磁場110aと第2の電磁場110bとの間の電磁場の変極点(後述するトリガポイント)として検出することができる。
【0027】
図1に戻って、グリップスイッチ20は、審判員JGにより操作され、競技者RNが計時ラインL上に到達したタイミングを示す信号(グリップ信号)を生成して、処理装置40に供給する。
つまり、審判員JGは、走行する競技者RNが計時ラインL上に到達したことを視認すると、グリップスイッチ20を押下する(押し下げて、直ぐに戻す)。これにより、処理装置40には、押し下げ時にONとなり、戻り時にOFFとなる普通の(通常のパルス幅の)グリップ信号が供給される。
なお、複数の競技者RN(集団)が同時期に連なって計時ラインL上に到達する場合もある。この場合、集団の密集度によっては、審判員JGによるグリップスイッチ20の押下が、全ての競技者RNの到達タイミングに追随できない(操作が間に合わない)ことになる。
このような場合、審判員JGは、集団先頭の競技者RNが計時ラインL上に到達するタイミングで、グリップスイッチ20を押し下げ、そのまま押下状態を維持し、集団後尾の競技者RNが計時ラインL上に到達した後に、グリップスイッチ20を戻す(押下状態を解除する)。
これにより、処理装置40には、押下開始時にONとなり、そのまま維持され、押下解除時にOFFとなるパルス幅の長いグリップ信号が供給される。
【0028】
受信機30は、上述したループコイル11の近傍に配置され、ループコイル11上を通過した無線タグ60から送られるタグID等を受信する。そして、受信したタグID等を処理装置40に供給する。
【0029】
処理装置40は、グリップスイッチ20から供給されるグリップ信号に基づいて、手動計測によるグリップタイム(手動タイム)を計時する。また、受信機30から供給されるタグID等に基づいて、自動計測による無線タグタイム(自動タイム)を計時する。
そして、これらグリップタイムと無線タグタイムとの何れを優先するかが、処理装置40に設定可能となっており、処理装置40は、この優先設定に応じて、競技タイムを特定する。
なお、複数の競技者RNが同時期に連なって計時ラインL上に到達する場合等では、後述するように、これらグリップタイム及び無線タグタイムに基づいて、適宜競技タイムを特定する。
【0030】
具体的に、処理装置40は、時刻計時手段としての時刻計時部41と、信号取得手段としてのグリップ信号取得部42と、情報受信手段としてのタグ情報取得部43と、タイム計測手段及び競技タイム特定手段としての制御部44と、記憶部45と、を含んで構成される。
【0031】
時刻計時部41は、所定のタイマ回路等からなり、システムにおいて基準となる基準時刻を計時する。一例として、時刻計時部41は、正確な現在時刻等を計時する。なお、時刻計時部41は、例えば、高安定水晶発振器等を備えており、基準時刻の計時を安定して維持することが可能となっている。
【0032】
グリップ信号取得部42は、グリップスイッチ20から供給されるグリップ信号を取得する。つまり、グリップ信号がONとなったタイミングにて、競技者RNが計時ラインL上へ到達したことを検出する。
より詳細には、図3(a)に示すように、競技者RNが計時ラインL上に到達した際に、審判員JGによりグリップスイッチ20が押下される(押し下げて、直ぐに戻される)。これにより、グリップ信号取得部42は、通常のパルス幅のグリップ信号を取得する。
一方、図3(b)に示すように、複数の競技者RNa〜RNc(集団)が連なった状態で計時ラインL上に到達する場合もある。この場合、集団先頭の競技者RNaが計時ラインL上に到達した際に、審判員JGによりグリップスイッチ20が押し下げられ、そのまま押下状態が維持されて、集団後尾の競技者RNcが計時ラインL上に到達した後に、審判員JGによりグリップスイッチ20が戻される。これにより、グリップ信号取得部42は、パルス幅の長いグリップ信号を取得する。
【0033】
図1に戻って、タグ情報取得部43は、受信機30を介して、ループコイル11上を通過した無線タグ60から送られるタグID等を取得する。そして、取得したタグID等を制御部44に供給する。
【0034】
制御部44は、処理装置40全体を制御する。
具体的に、制御部44は、グリップ信号取得部42がグリップ信号を取得したタイミング(グリップ信号がONとなったタイミング)で、時刻計時部41が計時した基準時刻をグリップタイムとして計測する。また、タグ情報取得部43がタグID等を取得したタイミングで、時刻計時部41が計時した基準時刻を無線タグタイムとして計測する。計測されたグリップタイム及び無線タグタイムは、記憶部45に格納される。
そして、優先設定(グリップタイムと無線タグタイムとの何れを優先するかの設定)に応じて、競技タイムを特定する。
【0035】
例えば、グリップタイムが優先設定されている状態で、複数の競技者RN(集団)が連なって計時ラインL上に到達する場合に、制御部44は、集団先頭の競技者RNのグリップタイムと、複数の無線タグタイムにおける時刻差とに基づいて、集団後着の競技者RNの競技タイム等を算定する。
より詳細に説明すると、まず、図4(a)に示すように、競技者RNa(集団先頭)が計時ラインL上に到達すると、審判員JGによりグリップスイッチ20が押し下げられ、グリップ信号がONとなる。この信号ONに応答して、制御部44は、時刻計時部41が計時した基準時刻をグリップタイムG1として計測する。
また、無線タグ60aからは、タグID等が送信される。このタグIDの取得(受信)に応答して、制御部44は、時刻計時部41が計時した基準時刻を無線タグタイムT1として計測する。
なお、グリップタイムが優先設定されているため、図4(b)に示すように、競技者RNaの競技タイムOT1は、グリップタイムG1がそのまま適用される。
【0036】
続いて、競技者RNbが計時ラインL上に到達した際、審判員JGによりグリップスイッチ20が押下状態に維持されており、グリップ信号がONのままであるため、競技者RNbのグリップタイムは計測されない。それでも、無線タグ60bからは、タグID等が送信される。このタグIDの取得に応答して、制御部44は、時刻計時部41が計時した基準時刻を無線タグタイムT2として計測する。
この場合、制御部44は、図4(b)に示すように、グリップタイムG1に、無線タグタイムT2と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
【0037】
更に、競技者RNcが計時ラインL上に到達した際、審判員JGによりグリップスイッチ20が押下状態に維持されており、グリップ信号がONのままであるため、競技者RNcのグリップタイムは計測されない。なお、競技者RNcが計時ラインL上に到達した後に、審判員JGによりグリップスイッチ20が戻され、グリップ信号がOFFになる。
そして、無線タグ60cからタグID等が送信され、このタグIDの取得に応答して、制御部44は、時刻計時部41が計時した基準時刻を無線タグタイムT3として計測する。
この場合、制御部44は、図4(b)に示すように、グリップタイムG1に、無線タグタイムT3と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNcの競技タイムOT3を算定する。
【0038】
なお、無線タグタイムが優先設定されている場合には、図4(c)に示すように、競技者RNa〜RNcの競技タイムOT1〜OT3は、無線タグタイムT1〜T3がそのまま適用される。
【0039】
この他にも、グリップタイムが優先設定されている状態で、審判員JGによるグリップスイッチ20の押し忘れや押し遅れ等が生じた場合に、制御部44は、先着の競技者RNのグリップタイムと、複数の無線タグタイムにおける時刻差とに基づいて、後着の競技者RNの競技タイムを算定する。
例えば、図5(a)に示すように、競技者RNbに対するグリップスイッチ20の押し忘れが生じた場合でも、制御部44は、図5(b)に示すように、グリップタイムG1に、無線タグタイムT2と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
なお、無線タグタイムが優先設定されている場合には、図5(c)に示すように、競技者RNa〜RNcの競技タイムOT1〜OT3は、無線タグタイムT1〜T3がそのまま適用される。
【0040】
一方、無線タグが優先設定されている状態で、無線タグ60から送られるタグID等を受信できなかった場合に、制御部44は、その競技者RNのグリップタイムと、先着の競技者RNのグリップタイム及び無線タグタイムにおける時刻差とに基づいて、当該競技者RNの競技タイムを算定する。
例えば、図6(a)に示すように、タグID60bからのタグID等を受信できず、競技者RNbの無線タグタイムを計測できなかった場合に、制御部44は、図6(b)に示すように、グリップタイムG2に、グリップタイムG1と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
なお、グリップタイムが優先設定されている場合には、図6(c)に示すように、競技者RNa〜RNcの競技タイムOT1〜OT3には、グリップタイムG1〜G3がそのまま適用される。
【0041】
ところで、タグID等が受信できていない場合、処理装置40では、競技者RNb(タグID)を特定できていないため、後述する写真判定装置50に、競技タイムを特定した競技者RNの検証等を指示する。例えば、処理装置40は、特定した競技タイムOT2を含む指示情報を写真判定装置50に供給して、対応する競技者RNの識別情報の返信を依頼する。
【0042】
図1に戻って、記憶部45は、制御部44が計測したタイム(グリップタイムや無線タグタイム)及び、制御部44が特定(適用)した競技タイムを、タグIDと対応付けて記憶する。
【0043】
写真判定装置50は、計時ラインLに沿って配置されたカメラCAを備えたラインセンサを使用したビデオ装置等からなり、カメラCAが撮影した競技者RNの映像(画像)に、基準時刻を合成して(同期させて)、記録する。
また、写真判定装置50は、無線タグ60から送られるタグID等を処理装置40が受信できなかった場合に、処理装置40から供給される指示情報(競技タイムを含む)を受信する。そして、指示情報に含まれる競技タイムでの計時ライン上の画像を切り出し、審判員により判定された競技者RNの識別情報(選手番号等)を処理装置40に返信する。
すなわち、写真判定装置50は、カメラCAの他に、カメラCAにより撮影された競技者の映像を記録する映像記録手段と、処理装置40による指示情報に基づいて、競技者の映像を、当該映像記録手段から検索する検索手段と、備えていることになる。
【0044】
一方、競技者RNに保持される無線タグ60は、競技者RNと共に走路上を移動する。そして、無線タグ60は、計時ラインL上にて、ループコイル11にて生成される電磁場の変極点を検出すると、タグID等のタグ情報を受信機30に向けて送信する。
【0045】
具体的に、無線タグ60は、磁場検出手段としてのLFアンテナ61と、増幅回路62と、電計時ライン検出手段としての検出回路63と、制御部64と、記憶部65と、情報送信手段としての通信回路66と、を含んで構成される。
【0046】
LF(Low Frequency)アンテナ61は、上述したループコイル11から発生される電磁場を検出する。つまり、磁場発生装置10によりループコイル11上に生成された電磁場を検出する。
そして、LFアンテナ61は、検出した電磁界強度を示す検出信号を増幅回路62に供給する。
【0047】
増幅回路62は、LFアンテナ61から供給される検出信号を適宜増幅して、検出回路63に供給する。
【0048】
検出回路63は、増幅回路62から供給される検出信号に従って、ループコイル11上における電磁場の変極点(計時ラインL)を検出する。
より詳細に説明すると、検出回路63は、一例として、図7(a)に示すような抵抗R1〜R3、コンデンサC、及び、オペアンプOPから構成される。この検出回路63は、入力される検出信号の電圧の増加時に所定電圧の信号を出力し、また、入力される検出信号の電圧の減少時には信号を出力しない。
そのため、ループコイル11上において、検出回路63は、図7(b)に示すように、生成された電磁場の電磁界強度の増加を検出し、2回目の電磁界強度の増加時に電磁場の変極点として検出する。つまり、図7(b)に示す2回目の立ち上がりを、ループコイル11上におけるトリガポイントとして特定する。
【0049】
図1に戻って、制御部64は、無線タグ60全体を制御する。
具体的に、制御部64は、検出回路63がループコイル11上における電磁場の変極点を検出すると、記憶部65に記憶されるタグID等を読み出し、通信回路66を制御して送信させる。
【0050】
記憶部65は、例えば、不揮発性メモリからなり、例えば、無線タグ60毎(競技者RN毎)に異なる固有の識別情報(タグID)等を予め記憶している。
【0051】
通信回路66は、所定の通信アンテナを介して、制御部64が記憶部65から読み出したタグID等を、上述した受信機30に向けて送信する。
【0052】
以下、上述した構成による競技用計時システムの動作について、図8及び図9等を参照して説明する。これら図8及び図9は、処理装置40が競技中に繰り返し実行されるタイム特定処理を説明するためのフローチャートであり、図8が、グリップタイムが優先設定されている場合の処理を示し、また、図9が、無線タグタイムが優先設定されている場合の処理を示す。
最初に、図8を参照して、グリップタイムが優先設定されている場合のタイム特定処理について説明する。
【0053】
まず、処理装置40は、グリップ信号を取得したか否かを判別する(ステップS11)。なお、競技者RNが計時ラインL上に到達し、審判員JGにより、グリップスイッチ20が押下されると、処理装置40は、グリップ信号取得部42にて、ONとなったグリップ信号を取得する。
【0054】
処理装置40は、グリップ信号を取得していないと判別すると、後述するステップS13に処理を進める。
一方、グリップ信号を取得したと判別した場合に、処理装置40は、グリップタイムを計測する(ステップS12)。つまり、グリップ信号を取得したタイミング(信号ONのタイミング)で、制御部44は、時刻計時部41にて計時された基準時刻をグリップタイムとして計測する。なお、計測したグリップタイムは、記憶部45に記憶される。
【0055】
処理装置40は、タグID等を取得したか否かを判別する(ステップS13)。すなわち、タグ情報取得部43が、受信機30を介して、ループコイル11上を通過した無線タグ60から送られたタグID等を取得したか否かを判別する。
【0056】
処理装置40は、タグID等を取得していないと判別すると、後述するステップS15に処理を進める。
一方、タグID等を取得したと判別すると、処理装置40は、無線タグタイムを計測する(ステップS14)。つまり、タグ情報取得部43がタグID等を取得したタイミングで、制御部44は、時刻計時部41にて計時された基準時刻を無線タグタイムとして計測する。なお、計測した無線タグタイムは、記憶部45に記憶される。
【0057】
処理装置40は、何れも未計測であるか否かを判別する(ステップS15)。つまり、グリップタイム及び無線タグタイムの何れも計測していない状態であるか否かを判別する。
処理装置40は、何れも未計測であると判別すると、上述したステップS11に処理を戻す。
【0058】
一方、少なくとも一方を計測済であると判別した場合に、処理装置40は、グリップタイムが未計測の状態であるか否かを判別する(ステップS16)。すなわち、グリップタイムを計測することなく、無線タグタイムだけを計測した状態であるか否かを判別する。
なお、グリップタイムが未計測の一例として、上述した図4(a)に示すように、複数の競技者RNが連なって計時ラインL上に到達する場合が挙げられる。つまり、競技者RNb,RNcが計時ラインL上に到達した際に、審判員JGによりグリップスイッチ20が押下状態に維持されており、グリップ信号がONのままであるため、競技者RNb,RNcのグリップタイムは計測されない。それでも、無線タグ60b,60cからは、タグID等が送信されることになる。
この他にも、上述した図5(a)に示すように、審判員JGによるグリップスイッチ20の押し忘れが生じた場合が挙げられる。つまり、押し忘れにより競技者RNbのグリップタイムが計測されないまま、無線タグ60bからタグID等が送信されることになる。
【0059】
処理装置40は、グリップタイムが未計測でない(計測済である)と判別すると、当該グリップタイムを競技タイムに適用する(ステップS17)。すなわち、グリップタイムが優先設定されているため、グリップタイムがそのまま競技タイムに適用される。
【0060】
一方、グリップタイムが未計測であると判別すると、処理装置40は、先着のグリップタイムに、無線タグタイムの時間差を加算して、競技タイムを特定する(ステップS18)。
例えば、上述した図4(b)及び図5(b)に示すように、グリップタイムG1に、無線タグタイムT2と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
【0061】
このように、競技タイムを特定(適用)すると処理装置40は、タイム特定処理を終える。なお、このタイム特定処理は、繰り返し、実行される。
【0062】
次に、図9を参照して、無線タグタイムが優先設定されている場合のタイム特定処理について説明する。なお、ステップS11〜S15の処理は、上述した図8のタイム特定処理と同じである。
【0063】
つまり、処理装置40は、グリップ信号を取得すると、グリップタイムを計測し、また、タグID等を取得すると、タグIDを取得する(ステップS11〜S14)。そして、何れも未計測であるか否かを判別し(ステップS15)、少なくとも一方を計測済であると判別した場合に、処理装置40は、無縁タグタイムが未計測の状態であるか否かを判別する(ステップS26)。すなわち、グリップタイムだけを計測し、無線タグタイムを計測していない状態であるか否かを判別する。
なお、無線タグタイムが未計測の一例として、上述した図6(a)に示すように、タグIDからのタグID等を受信できなかった場合が挙げられる。つまり、タグID60bからのタグID等を受信できず、競技者RNbのグリップタイムG2だけが計測される場合である。
【0064】
処理装置40は、無線タグタイムが未計測でない(計測済である)と判別すると、当該無線タグタイムを競技タイムに適用する(ステップS27)。すなわち、無線タグタイムが優先設定されているため、無線タグタイムがそのまま競技タイムに適用される。
【0065】
一方、無線タグタイムが未計測であると判別すると、処理装置40は、その競技者RNのグリップタイムと、先着の競技者RNのグリップタイム及び無線タグタイムにおける時刻差とに基づいて、当該競技者RNの競技タイムを算定する(ステップS28)。
例えば、上述した図6(b)に示すように、グリップタイムG2に、グリップタイムG1と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
【0066】
このように、競技タイムを特定(適用)すると処理装置40は、タイム特定処理を終える。なお、このタイム特定処理は、繰り返し、実行される。
【0067】
上述した図8及び図9に示すタイム特定処理により、処理装置40は、それぞれ計測したグリップタイムと無線タグタイムとの関係に基づいて、競技者RNの競技タイムを特定する。このため、例えば、競技者RNが集団で計時ラインLに到達し、信号がONのまま維持されて、後着の競技者RNの手動タイムが計測されなかった場合でも、その競技者RNの競技タイムが特定可能となる。
この結果、競技者RN個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0068】
上記の実施の形態では、処理装置40が、無線タグ60からタグID等を受信したタイミングで、無線タグタイムを計測する場合について説明した。
しかしながら、無線タグ60における処理時間等を考慮して、処理装置40にて、より正確な無線タグタイムを計測するようにしてもよい。
例えば、無線タグ60は、計時ラインLを検出してから、タグID等を読み出し、そして、処理装置40に当該タグID等を送信するまでの所要時間Δtを算出する手段(所要時間算出手段)を更に備えるようにする。この所要時間Δtの算出は、予め行っておく様にしてもよく、また、毎回算出するようにしてもよい。
そして、無線タグ60は、タグID等と共に、算出した所要時間Δtを処理装置40に送信する。
一方、処理装置40は、これらタグID等の受信に応答して無線タグタイムを計測する際に、所要時間Δtを用いて、無線タグタイムを適宜補正する。
この場合、処理装置40は、より正確な無線タグタイムを計測することになり、ひいては、より正確な競技タイムを特定することができる。
【0069】
上記の実施の形態では、無線タグタイムを処理装置40にて計測する場合について説明した。
しかしながら、無線タグタイムを処理装置40側ではなく、無線タグ60側で計測するようにしてもよい。以下、無線タグ60側で無線タグタイムを計測する競技用計時システムについて、図面を参照して説明する。
【0070】
図10は、この発明の実施の形態に適用される競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
図示するように、この競技用計時システムは、競技走路及びその周辺に配置される磁場発生装置10、ループコイル11、グリップスイッチ20、受信機30、処理装置140、及び、写真判定装置50と、競技者RNに携帯される無線タグ160とを含んで構成される。
なお、磁場発生装置10、ループコイル11、グリップスイッチ20、受信機30、及び、写真判定装置50は、上述の図1に示す競技用計時システムと同じ構成となっている。
【0071】
処理装置140は、時刻計時手段としての時刻計時部41と、信号取得手段としてのグリップ信号取得部42と、情報受信手段としてのタグ情報取得部143と、手動タイム計測手段及び競技タイム特定手段としての制御部144と、記憶部45と、を含んで構成される。
なお、時刻計時部41、グリップ信号取得部42、及び、記憶部45は、上述した図1に示す処理装置40と同じ構成となっている。
【0072】
タグ情報取得部143は、受信機30を介して、ループコイル11上を通過した無線タグ160から送られる無線タグタイム及びタグIDを取得する。そして、取得した無線タグタイム等を制御部144に供給する。
なお、タグ情報取得部143は、受信機30を制御し、任意の無線タグ160を指定して無線タグタイム等をポーリング受信するようにしてもよい。
【0073】
制御部144は、タグ情報取得部143が取得した無線タグタイム等を記憶部45に格納する。また、上記の制御部44と同様に、グリップ信号取得部42がグリップ信号を取得したタイミングで、時刻計時部41が計時した基準時刻をグリップタイムとして計測する。
そして、制御部144は、グリップタイム及び無線タグタイムの何れかの優先設定に応じて、競技タイムを特定する。
【0074】
一方、無線タグ160は、磁場検出手段としてのLFアンテナ61と、増幅回路62と、電計時ライン検出手段としての検出回路63と、自動タイム計測手段としての制御部164と、記憶部65と、情報送信手段としての通信回路166と、計時手段としての計時部167と、を含んで構成される。
なお、LFアンテナ61、増幅回路62、検出回路63、及び、記憶部65は、上述した図1に示す無線タグ60と同じ構成となっている。
【0075】
制御部164は、検出回路63が計時ラインLを検出した際に、計時部167にて計時された時刻を無線タグタイム(自動タイム)として計測する。
【0076】
計時部167は、所定のタイマ回路等からなり、処理装置140(時刻計時部41)にて計時される時刻と同期した時刻(基準時刻)を計時する。一例として、計時部167は、正確な現在時刻等を計時する。
【0077】
そして、通信回路166は、無線タグタイムが計測されると、タグID等と共に、処理装置140に送信する。
【0078】
このような構成の競技用計時システムは、優先設定に応じて、競技者RNの競技タイムを適宜特定する。
すなわち、制御部144は、グリップタイムが優先設定され、グリップタイムが計測されなかった場合に、計測したグリップタイムと受信した無線タグタイムとの関係に基づいて、競技者RNの競技タイムを特定する。
例えば、上述した図4(b)及び図5(b)に示すように、グリップタイムG1に、無線タグタイムT2と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
一方、無線タグタイムが優先設定され、無線タグタイムが計測されなかった場合に、先着の競技者RNのグリップタイム及び無線タグタイムにおける時刻差とに基づいて、当該競技者RNの競技タイムを特定する。
例えば、上述した図6(b)に示すように、グリップタイムG2に、グリップタイムG1と無線タグタイムT1との時刻差を加算して、競技者RNbの競技タイムOT2を算定する。
【0079】
このように、無線タグ160側にて無線タグタイムを計測する場合でも、処理装置140は、自己が計測したグリップタイムと受信した無線タグタイムとの関係に基づいて、競技者RNの競技タイムを特定する。このため、例えば、競技者RNが集団で計時ラインLに到達し、信号がONのまま維持されて、後着の競技者RNの手動タイムが計測されなかった場合でも、その競技者RNの競技タイムが特定可能となる。
この結果、競技者RN個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0080】
上記の実施の形態では、無線タグタイムが優先設定され、無線タグタイムが計測(受信)されなかった場合に、処理装置40(140)が、写真判定装置50に競技者RNの検証等を指示する場合について説明した。
しかしながら、ループコイル11のサイズと、競技者RNのスピードから判断して、所定の閾値αを設け、競技者RNの前後のタイム差が、その閾値α以内である場合に、処理装置40(140)が、写真判定装置50に対して着順判定(競技者RNの検証等)を指示する様にしてもよい。
この場合、着順判定作業への移行が迅速に指示されるため、正確な着順がより早く確定させることができる。
【0081】
上記の実施の形態では、陸上競技を一例として説明したが、適用対象となる競技(計時対象物)は任意である。
例えば、オートバイ、自動車、車いす等の他の競技(計時対象物)にも、適宜適用可能である。
【0082】
以上説明したように、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態に係る競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a)がループコイルの形状の一例を示す模式図であり、(b)が生成される電磁場を説明するための模式図であり、(c)が電磁場の強度分布を説明するための模式図である。
【図3】(a),(b)共に、グリップ信号の一例を説明するための模式図である。
【図4】(a)〜(c)共に、複数の競技者が連なって計時ライン上に到達する場合における、各競技者の競技タイムを特定(適用)する様子を説明するための模式図である。
【図5】(a)〜(c)共に、グリップスイッチの押し忘れが生じた場合における、各競技者の競技タイムを特定(適用)する様子を説明するための模式図である。
【図6】(a)〜(c)共に、タグID等の未受信が生じた場合における、各競技者の競技タイムを特定(適用)する様子を説明するための模式図である。
【図7】(a)が検出回路の一例を示す回路図であり、(b)が電磁場の検出の様子を説明するための模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るタイム特定処理(グリップタイムが優先設定)を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に係るタイム特定処理(無線タグタイムが優先設定)を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
10 磁場発生装置
11 ループコイル
20 グリップスイッチ
30 受信機
40,140 処理装置
50 写真判定装置
60,160 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の競技者にそれぞれ保持される送信機器と、当該各送信機器から送信される情報を受信する処理装置と、を含む競技用計時システムであって、
前記各送信機器には、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出手段と、
前記電磁場検出手段により検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する計時ライン検出手段と、
前記計時ライン検出手段が前記計時ラインを検出した際に、所定の情報を前記処理装置に向けて送信する情報送信手段と、が設けられ、
前記処理装置には、
基準となる基準時刻を計時する時刻計時手段と、
競技者の前記計時ライン上への到達に伴い、所定機器から供給される到達タイミングを示す信号を取得する信号取得手段と、
前記各送信機器から送信される前記情報をそれぞれ受信する情報受信手段と、
前記信号取得手段が前記信号を取得した際に、前記時刻計時手段にて計時された時刻を手動タイムとして計測し、前記情報受信手段が前記情報を受信した際に、前記時刻計時手段にて計時された時刻を自動タイムとして計測するタイム計測手段と、
前記タイム計測手段がそれぞれ計測した前記手動タイムと前記自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する競技タイム特定手段と、が設けられている、
ことを特徴とする競技用計時システム。
【請求項2】
前記処理装置には、
計測された前記手動タイムと前記自動タイムとの関係から、未計測の手動タイムの有無を判別する第1の判別手段が更に設けられ、
前記第1の判別手段により未計測の手動タイムがあると判別された場合に、前記競技タイム特定手段が、計測された前記手動タイムと、複数の前記自動タイムにおける時刻差とに基づいて、前記競技タイムを特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技用計時システム。
【請求項3】
前記処理装置には、
計測された前記手動タイムと前記自動タイムとの関係から、未計測の自動タイムの有無を判別する第2の判別手段が更に設けられ、
前記第2の判別手段により未計測の自動タイムがあると判別された場合に、前記競技タイム特定手段が、当該未計測の自動タイムに対応する前記手動タイムと、計測された前記自動タイム及び対応する前記手動タイムにおける時刻差と、に基づいて、前記競技タイムを特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技用計時システム。
【請求項4】
前記処理装置には、
前記計時ラインを通過する競技者の映像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された競技者の映像を記録する映像記録手段と、
前記第2の判別手段により未計測の自動タイムがあると判別された場合に、対応する競技者の映像を、前記映像記録手段から検索する検索手段と、が更に設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の競技用計時システム。
【請求項5】
前記各送信機器には、
前記計時ライン検出手段が前記計時ラインを検出してから、前記情報送信手段が前記情報を送信するまでの所要時間を算出する所要時間算出手段が更に備えられ、
前記情報送信手段が、前記所要時間を含んだ前記情報を前記処理装置に向けて送信し、
前記処理装置においては、
前記情報受信手段により、前記所要時間を含む前記情報を受信し、
前記タイム計測手段により、前記自動タイムを計測する際に、前記所要時間に基づいて補正した前記自動タイムを計測する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の競技用計時システム。
【請求項6】
複数の競技者にそれぞれ保持される送信機器と、当該各送信機器から送信される情報を受信する処理装置と、を含む競技用計時システムであって、
前記各送信機器には、
基準となる基準時刻を計時する計時手段と、
競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出手段と、
前記電磁場検出手段により検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する計時ライン検出手段と、
前記計時ライン検出手段が前記計時ラインを検出した際に、前記計時手段にて計時された時刻を自動タイムとして計測する自動タイム計測手段と、
計測された前記自動タイムを含む情報を前記処理装置に向けて送信する情報送信手段と、が設けられ、
前記処理装置には、
基準となる基準時刻を計時する時刻計時手段と、
競技者の前記計時ライン上への到達に伴い、所定機器から供給される到達タイミングを示す信号を取得する信号取得手段と、
前記各送信機器から送信される前記自動タイムを含む前記情報をそれぞれ受信する情報受信手段と、
前記信号取得手段が前記信号を取得した際に、前記時刻計時手段にて計時された時刻を手動タイムとして計測する手動タイム計測手段と、
前記手動タイム計測手段が計測した前記手動タイムと、前記情報受信手段が受信した前記自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する競技タイム特定手段と、が設けられている、
ことを特徴とする競技用計時システム。
【請求項7】
複数の競技者にそれぞれ保持される送信機器と、当該各送信機器から送信される情報を受信する処理装置とを含むシステムにおけるタイム特定方法であって、
前記各送信機器において、競技者が走行する走路上に生成された電磁場を検出する電磁場検出ステップと、
前記各送信機器において、前記電磁場検出ステップにて検出された前記電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め規定された計時ラインを検出する計時ライン検出ステップと、
前記各送信機器において、前記計時ライン検出ステップにて前記計時ラインが検出された際に、所定の情報を前記処理装置に向けて送信する情報送信ステップと、
前記処理装置において、基準となる基準時刻を計時する時刻計時ステップと、
前記処理装置において、競技者の前記計時ライン上への到達に伴い、所定機器から供給される到達タイミングを示す信号を取得する信号取得ステップと、
前記処理装置において、前記各送信機器から送信される前記情報をそれぞれ受信する情報受信ステップと、
前記処理装置において、前記信号取得ステップにて前記信号が取得された際に、前記時刻計時ステップにて計時された時刻を手動タイムとして計測し、前記情報受信ステップにて前記情報が受信された際に、前記時刻計時ステップにて計時された時刻を自動タイムとして計測するタイム計測ステップと、
前記処理装置において、前記タイム計測ステップにてそれぞれ計測された前記手動タイムと前記自動タイムとの関係に基づいて、競技者の競技タイムを特定する競技タイム特定ステップと、
を備えることを特徴とするタイム特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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