説明

竹筒内に液体を封入する方法及び液体が封入された竹筒

【課題】 竹筒に穿設等を必要とせず、雑菌や異物の混入をさせずに竹の節間の空洞部分(竹筒)に液体を封入する方法を提供する。
【解決手段】 連続する節3と竹稈2を含む竹筒1に液体Lを封入する方法であって、第1節面4aを液体Lに浸漬させ、第2節面4b側を減圧させることにより、第1節面4aを通じて竹筒1内に液体Lを封入する方法とする。更に、液体が封入された竹筒を更に密封する方法とする。また、液体Lは果汁液、飲料水、日本酒、ワイン、ウイスキーを含む酒類、化粧水のいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹筒に穿設等の加工をすることなく、竹の節間の空洞部分(竹筒)に液体を封入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古代より竹及び笹が様々な用途に使用されている。この中で特に注目される用途は、食料や飲料の保存に使用されていることで、竹は最も簡易な容器や食器として手軽に利用されてきた。これは、先人が竹及び笹の抗菌性を熟知していたと考えられる。
【0003】
また、切断した筒状の青竹の中に酒類を入れて、該青竹を火であぶった後、酒類を飲む習慣がある。あぶられた酒は風味があり、まろやかな味の酒となるとされている。また、笹の葉をすりつぶし、水に溶かした溶液で洗顔すると、皮膚がなめらかになり皮膚のキメが細かくなるともされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、竹筒(竹の節間の空洞部分)内に飲料を注入し保存する場合、竹筒に孔を穿設し、該孔を通じて液体を注入する。その後、該孔に栓をして、竹筒内に保存する方法が採られている。しかし、孔の穿設や液体の注入の際に雑菌や異物が混入するおそれがあり、飲料や化粧水などの保存においては問題となっていた。
【0005】
したがって、本発明の目的は、竹筒に穿設等の加工を必要とせず、雑菌や異物の混入をさせずに竹筒に液体を封入する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、請求項1に記載の発明は、連続する節と竹稈を含む竹筒に液体を封入する方法であって、
第1節面を液体に浸漬させ、第2節面側を減圧させることにより、前記第1節面を通じて前記竹筒内に液体を封入する方法とした。
【0007】
竹筒の節面及び該節面が竹稈に接する部分には、海綿状の箇所が点在するので部分的に通気性及び透水性がある。したがって、第1節面を液体に浸漬させた状態で、第2節面側を減圧させると、まず、節面の通気性により竹筒の空洞部の圧力が低下する。そして、節面の透水性により、第2節面を通じて液体が該空洞部に封入される。その結果、したがって、竹筒に穿設等の加工を必要とせず、雑菌や異物の混入をさせずに液体を封入させることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、連続する節と竹稈稈を含む竹筒に液体を封入する方法であって、
第1節面を通じて気体を圧縮注入し、第1及び/又は第2節面を液体に浸漬させ、前記第1及び/又は第2節面を通じて前記竹筒内に液体を封入する方法とした。
【0009】
同様に、節面の通気性及び透水性を利用したものである。まず、節面の通気性により、竹筒内に炭酸ガスなどの気体を圧縮注入する。その後、節面の透水性により、第1及び/又は第2節面を通じて液体を封入させるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の方法により液体が封入された竹筒を更に密封する方法とした。
【0011】
上述したように、通気性及び透水性のため、経年変化により液体が蒸発することがある。また、衛生上の観点から、防黴処理が必要なこともある。このような場合、液体が封入された竹筒を更に密封することにより、液体の蒸発やカビの発生を防ぐことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記液体は、果汁液、飲料水、日本酒、ワイン、ウイスキーを含む酒類、化粧水のいずれかである請求項1乃至3のいずれかに記載の方法とした。
【0013】
本発明により封入される液体は特に限定されないが、人間が摂取する飲料や人体に直接使用する液体が好ましい。例えば、果汁液、飲料水、日本酒、ワイン、ウイスキーを含む酒類、化粧水が挙げられる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか方法により、液体が封入された竹筒とした。
【0015】
上述したように、竹は抗菌性を有するので、封入された液体を長期保存することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、液体が封入された竹筒から液体を取り出す方法であって、予め竹稈の側面に形成された薄肉部を貫通させて貫通部を形成し、前記貫通部から前記液体を取り出す方法とした。
【0017】
請求項7に記載の発明は、液体が封入された竹筒から液体を取り出す方法であって、いずれかの節面に開口部を形成し、前記開口部から前記液体を取り出す方法とした。
【0018】
請求項8に記載の発明は、液体が封入された竹筒から液体を取り出す方法であって、木口から竹筒長手方向に延びて形成された穴部と、前記穴部に連通する竹稈の側面に形成された貫通孔とにより竹稈の側面に予め形成された薄肉部を貫通させて貫通部を形成し、前記貫通部を通じ前記穴部から前記液体を取り出す方法とした。
【0019】
密封された液体を長期保存ができるが、これらの方法で容易に液体を取り出すことができる。
【0020】
本発明では、竹とは、稈部に連続した節を有する植物であり、竹類及び笹類を含む概念である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、竹の節面の透水性を利用して、竹筒内に液体を封入できる。その結果、穿設や液体の注入時に雑菌や異物の混入がなく、衛生的に液体を保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を用いて、本発明に係る液体封入方法を説明する。図1は、本発明に使用される竹筒を示す。1は竹筒であり、連続した節3を残して切断されたものである。2は竹稈、5は竹稈の断面である木口である。竹筒1の両端には、節面4が露出している。
【0023】
次に、液体の封入方法について説明する。図2(a)は液体の封入方法を示す断面図である。容器20内に封入する液体Lが注がれている。そして、第1節面4aの全面が液体Lに浸漬されている。封入治具10が第2節面4bの全面を覆い、チューブ部10bが真空ポンプ(図示しない)に接続されている。
【0024】
真空ポンプを動作させると封入治具10の内圧が低下するが、節面4bの通気性により、竹筒1の空洞部6内の空気が吸引され、空洞部6内の圧力も低下する。更に、節面4aは透水性も有していることから、節面4bを通じて液体Lが空洞部6に封入される。
【0025】
したがって、竹筒に穿設等をすることなく液体を封入することができるので、竹の抗菌性と相俟って、竹筒に封入された液体を長期保存することができる。
【0026】
なお、図2(b)に示すように、封入治具10と同様の封入治具11で節面4aを覆い、チューブ部11bをポンプ(図示しない)に接続して液体Lを加圧してもよい。また、節面を密着して覆う観点及び形状の異なる節面に対応させる観点から、封入治具10、11はシリコンゴムなどの弾力性のある素材で作られていることが好ましい。
【0027】
通気性及び透水性は竹稈が高いが、竹稈に液体を通過させても、竹筒内に液体を貯めることは困難なため、木口5を塞ぐことにより効果的に液体を封入することができる。
【0028】
竹は乾燥竹でもよいが、通気性及び透水性の観点から生竹が好ましく、封入が容易となる。また、封入する液体は限定されないが、粘度の低い液体が好ましい。例えば、粒子の微細な果実液、飲料水、化粧水、酒類等が好ましい。
【0029】
なお、竹は外面にも節の部分には微細な孔と表皮とは異なる比較的柔らかい肉質の部分がある。乾燥しきっていない生竹の場合は、この部分より、注入と空気抜きを備えた硬質の特殊注射針で、機械装置力によって注射針を竹筒内まで刺しこみ、液体を注入することが出来る。
【0030】
竹は外面にも節の部分には微細な孔と表皮とは異なる比較的柔らかい肉質の部分がある。乾燥しきっていない生竹の場合は、この部分より既成技術の液体に超圧力をかけた特殊装置によって、注射針を幹に刺し通すことなく、液体を筒内に注入することが出来る。
【0031】
封入された液体にもよるが、竹筒の乾燥及び節面の通気性により、経年変化により液体が蒸発することがある。また、通気性の比較的高い部分にはカビ等が発生する場合がある。特に竹筒の内側の節の面の部分はカビが発生し易いので、防黴処置が必要なことがある。また、衛生上からも、竹筒に液体を充填した後は、竹筒全体を密封することが好ましい。
【0032】
竹筒を密封する方法は限定されない。例えば、液体を封入した後、竹筒全体を蝋質の液体、又はポリビニールアルコール系統の液体に浸漬させ、その後加熱又は自然乾燥させて極薄い皮膜処理する方法で密封できる。また、ポリビニール及びポリエチレン系統のフィルム、その他食品で常用される素材のフィルムで真空包装する方法も挙げられる。
【0033】
次に、竹筒から封入された液体を取り出す方法を説明する。図3(a)は、封入された液体を取り出すための穴部を示す。竹稈2の節3の近傍に穴部31を開けている。穴部31は、深穴部32と、深い穴部32より直径が大きく浅穴部33からなる。深穴部32は竹稈2を貫通していないが、竹稈2に薄肉部34を形成している。
【0034】
図3(b)に示すドリル40で穴部31を開けることができる。ドリル40は、深穴部32を開ける刃部41と、浅穴部33を開けるヤスリ部42とを備える。穴部31が貫通しないように、ストッパ43を備えてもよい。なお、穴部31は、液体の封入の前後のいずれでも開けることができる。
【0035】
図3(c)、(d)に示す取り出し治具50により、薄肉部34を貫通させて貫通部を形成させ、貫通部から封入された液体を取り出すことができる。図3(c)は断面図、(d)は斜視図である。取り出し治具50は、薄肉部34を貫通する刃部51、スリット53を備えた排出孔52、液体の漏れを防止するパッキン54を備える。パッキン54は、ゴム、シリコンゴム、コルクなどで作られていることが好ましい。また、ねじ込みのために凹部55を備える。
【0036】
取り出し治具50を穴部31に挿入しねじ込むと、刃部51が薄肉部34を貫通し、貫通部(図示しない)が形成され、該貫通部、排出孔52を通じて液体を取り出すことができる。取り出し治具50を打ち込んでもよい。また、液体の排出を容易にするために、追加の薄肉部を設け、追加の貫通孔を形成してもよい。
【0037】
図4、5は、節面から封入された液体を取り出す方法を示す図である。取り出し治具60は、ねじ部61、ねじ部61と独立に回転可能な刃部62、刃部62に接続された軸部64と把手65を備える。また、安全のため刃部62を覆う保護部63を備える。
【0038】
ねじ部61が節面4bの中央部にねじ込まれる。続いて、把手65を回すと、刃部62が回転するので、節面4bが円形に切断され開口部(図示しない)が形成され、該開口部から液体を取り出すことができる。切断された部分にはねじ部61がねじ込まれているので、竹筒内に落下することはない。また、ばね64の付勢により、刃部62と共に切断された部分が保護部63内に収納される。
【0039】
なお、図5(a)に示すように、予め刃部62が当接する部分に円形の浅溝4cを刻んでおいてもよい。また、切断くずを濾過するために、開口部にフィルタ70を取り付けてもよい。
【0040】
図6(a)、(b)に示すように、木口5に溝100を刻んで、液体を注ぎ易くしてもよい。(a)、(b)では、それぞれ竹を節面4bに対して略平行に、節面4bに対して斜めに切断している。溝100の断面形状は半円、U字、V字が好ましい。
【0041】
図7は、木口から封入された液体を取り出す方法を示す図である。図7(a)において、予め木口5から竹筒1の長手方向に延びる穴部80を穿設する。穴部80の内側には薄肉部84が形成されている。また、竹稈2の節3の近傍に貫通孔81を開けている。貫通孔81は、穴部80と連通するように開けられている。
【0042】
図7(b)において、取り出し治具90を貫通孔81に挿入しねじ込むと、刃部91が薄肉部84を貫通して貫通部(図示しない)が形成される。該貫通部、取り出し治具90のスリット92、穴部80を通って、液体を取り出すことができる。貫通孔81周囲の浅溝と取り出し治具90のパッキン94により、液漏れを防止できる。パッキン94は、ゴム、シリコンゴム、コルクなどで作られていることが好ましい。なお、穴部80には栓85を取り付けることもできる。
【0043】
図8(a)に示すように、取り出し治具90は、ねじ込みのための凹部95を備える。また、孔部96を設けて液体を取り出すこともでき、補助口97と栓98を追加することもできる。図8(b)に示すように、回転治具110により、取り出し治具50、90をねじ込むことができる。回転治具110の突起111を凹部55、95に嵌め、把手112を回して取り出し治具50、90をねじ込む。
【0044】
なお、取り出し治具50、90は耐蝕性のある金属製が好ましい。取り出し治具50、90が、ねじ込みのほか、打ち込みによる取り付けも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に使用される竹筒を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る液体の封入方法を示す図である。
【図3】竹稈から封入された液体を取り出す方法を示す図である。
【図4】節面から封入された液体を取り出す方法を示す図である。
【図5】節面から封入された液体を取り出す方法を示す図である。
【図6】節面から封入された液体を取り出す方法を示す図である。
【図7】木口から封入された液体を取り出す方法を示す図である。
【図8】取り出し治具と回転治具を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 竹筒
2 竹稈
3 節
4 節面
5 木口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する節と竹稈を含む竹筒に液体を封入する方法であって、
第1節面を液体に浸漬させ、第2節面側を減圧させることにより、前記第1節面を通じて前記竹筒内に液体を封入する方法。
【請求項2】
連続する節と竹稈稈を含む竹筒に液体を封入する方法であって、
第1節面を通じて気体を圧縮注入し、第1及び/又は第2節面を液体に浸漬させ、前記第1及び/又は第2節面を通じて前記竹筒内に液体を封入する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により液体が封入された竹筒を更に密封する方法。
【請求項4】
前記液体は、果汁液、飲料水、日本酒、ワイン、ウイスキーを含む酒類、化粧水のいずれかである請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか方法により、液体が封入された竹筒。
【請求項6】
液体が封入された竹筒から液体を取り出す方法であって、予め竹稈の側面に形成された薄肉部を貫通させて貫通部を形成し、前記貫通部から前記液体を取り出す方法。
【請求項7】
液体が封入された竹筒から液体を取り出す方法であって、いずれかの節面に開口部を形成し、前記開口部から前記液体を取り出す方法。
【請求項8】
液体が封入された竹筒から液体を取り出す方法であって、木口から竹筒長手方向に延びて形成された穴部と、前記穴部に連通する竹稈の側面に形成された貫通孔とにより竹稈の側面に予め形成された薄肉部を貫通させて貫通部を形成し、前記貫通部を通じ前記穴部から前記液体を取り出す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−298392(P2006−298392A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118656(P2005−118656)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(505142171)日繊工芸有限会社 (1)
【Fターム(参考)】