説明

竹繊維織編物及び繊維製品

【課題】染色堅牢度に優れると共に任意の色彩に染められた天然竹繊維織編物と、その天然竹繊維織編物を用いた繊維製品とを提供することを技術的な課題とする。
【解決手段】天然竹繊維を含む紡績糸を用いてなる織編物であって、反応染料又はバット染料を用いて染色されてなる竹繊維織編物及びそれを用いてなる繊維製品。当該繊維製品としては、例えば、カジュアル衣料、ユニフォーム衣料、フォーマル衣料、寝装品、生活用品、インテリア用品などがあげられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の染料で染色された天然竹繊維使いの織編物及びこれを用いてなる繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然繊維を用いて、風合い、吸放湿性、保温性などを有する繊維製品の開発が進められている。天然繊維としては、綿、麻、羊毛、絹などが知られている。近年、環境への負荷を軽減することや、資源を再利用することを目的としてケナフ、ヘンプ、砂糖きびなど、従来は廃材とされるものを原料とし、独自の紡績技術で得られた紡績糸が知られている。
【0003】
しかし、上記の紡績糸は、細くしたり、均整度を高めたりすることが非常に難しいため、製品開発が制限されるという問題がある。
【0004】
一方、特許文献1には、竹そのものを細かく分繊化して得た天然竹繊維を使用した紡績糸や繊維製品が提案されている。この竹繊維は、所謂竹レーヨン繊維のように竹を薬品で化学的処理して繊維化するものではないため、製造時の環境負荷が小さいという利点がある。
【特許文献1】特開2006−169666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に天然竹繊維は、セルロース分子が高度に配向し結晶性が高いため、染料分子が繊維内部へ入り難いという欠点がある。その結果、該竹繊維を含む織編物においては、特に鮮やかな色彩や濃い色彩に染めるのが困難であると共に染色堅牢度を向上させ難いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決し、染色堅牢度に優れると共に任意の色彩に染められた天然竹繊維織編物と、その天然竹繊維織編物を用いた繊維製品とを提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、竹そのものを細かく分繊化して得た天然竹繊維を用いて、特定の染料で染色すればよいことを知見して本発明に到達した。
【0008】
すなわち、第一の発明は、天然竹繊維を含む紡績糸を用いてなる織編物であって、反応染料又はバット染料を用いて染色されてなることを特徴とする竹繊維織編物を要旨とするものである。
【0009】
また、第二の発明は、上記の天然竹繊維織編物を用いてなる繊維製品を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、染色堅牢度に優れると共に任意の色彩に染められた天然竹繊維織編物を提供することができる。本発明の竹繊維織編物は、広範囲の用途に供することができ、一般衣料品に限らず生活用品、インテリア用品などにも適用しうる。
【0011】
また、本発明の竹繊維織編物を製造するにあたり、採用しうる染色方法としては、所謂先染めによる方法や後染めによる方法などが採用でき、中でも連続式の後染めによる方法が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の竹繊維織編物は、天然竹繊維を含む紡績糸を用いてなる織編物である。
【0014】
本発明に用いる天然竹繊維は、真竹、孟宗竹など天然に生育する竹を分繊して得られるもので、断面中央長手方向に中空部を有しており、織編物に吸湿性や軽量感を付与することができる。天然竹繊維の単糸繊度としては、0.9〜20.0dtexであることが好ましく、2.0〜10.0dtexであることがより好ましい。単糸繊度が0.9dtex未満であると、分繊の過程で物理的影響を受け繊維の強度が低下する傾向にあり、さらに織編物の張り・腰感も低下する傾向にあるため好ましくない。一方、20.0dtexを超えると、紡績性が著しく低下し、さらに織編物の風合いも硬くなる傾向にあるため好ましくない。また、天然竹繊維の平均繊維長としては、20〜200mmであることが好ましく、30〜150mmであることがより好ましい。平均繊維長がこの範囲であると、紡績性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0015】
本発明の竹繊維織編物は、上記の天然竹繊維を含む紡績糸を用いてなるものである。この紡績糸に含まれる天然竹繊維以外の繊維としては、綿、麻、羊毛、カシミヤ、絹などの天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、ジアセテート、トリアセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタンなどの合成繊維などがあげられ、特に、植物由来のポリ乳酸繊維などの生分解性合成繊維を採用すると、環境負荷を抑えることができる。また、これら天然竹繊維以外の繊維の形態としては、短繊維、長繊維の何れであってもよい。
【0016】
上記の紡績糸における天然竹繊維の質量比率としては、任意でよいが、一般的に30質量%以上、好ましくは50質量%以上がよい。
【0017】
また、紡績糸の撚数としては、200〜2000回/mが好ましく、500〜1200回/mがより好ましい。撚数がこの範囲であると、織編物の張り・腰感が増す傾向にあるので好ましい。
【0018】
本発明の竹繊維織編物は、基本的に上記の紡績糸を主体にして構成されるものであるが、必要に応じて他の糸条が併用されていてもよい。他の糸条としては、どのような糸条でもよく、上記した繊維からなる紡績糸、フィラメント糸、仮撚糸、エア混繊糸、カバリング糸などが採用できる。
【0019】
また、本発明の竹繊維織編物は、反応染料又はバット染料で染色されている。
【0020】
反応染料とは、繊維分子と共有結合を形成しうる染料である。一方、バット染料とは、1分子当り2個以上のカルボニル基を有し水不溶性であるが、アルカリ浴で還元すると水溶性のロイコ塩となり、水溶性となる染料である。
【0021】
染色方法としては、何れの染料を用いる場合であっても特に限定されるものでなく、例えば、所謂先染めによる方法や後染めによる方法などが採用できる。本発明では、中でも後染めによる方法が好ましく、バッチ式による方法、連続式による方法の何れも採用しうるが、特にコスト面を考慮し、連続式による方法を採用するのが好ましい。
【0022】
具体的に、反応染料を用いて連続式による方法を実施する場合、通常、2段式の染色方法を採用する。まず、第1段目の染色に使用する染浴を準備する。この場合、染浴として、反応染料を1〜150g/L含有させるのが好ましく、必要に応じて助剤を含ませてもよい。助剤としては、例えば、アルギン酸ソーダやポリ酢酸ビニルなどのマイグレーション防止剤を20〜80g/L、還元防止剤を3〜30g/L含有させるのがよい。また、染色性の向上を望む場合には、助剤として併せて浸透剤を15g/L以下含有させるのが好ましい。
【0023】
染浴を準備した後、第1段目の染色として、連続染色機の染浴槽に染浴を注入し、液温を10℃以上に設定する。そして、織編物を0.05〜5.00秒間浸染し、マングルを用いて絞り率30〜70%で織編物を絞る。次いで、中間乾燥として、表面温度が500〜1200℃に設定された赤外線乾燥機にて2〜40秒間乾燥し、織編物中に含まれる水分の5〜30質量%を蒸発させることが好ましい。この第1段目の染色により、染料が繊維に付着する。
【0024】
その後、予備乾燥として、室内温度が30〜150℃に設定されたドライヤー乾燥機を1〜3回通過させた後、表面温度が80〜150℃に設定されたシリンダー乾燥機を通過させる。
【0025】
次に、第2段目の染色を行う。この場合の染浴として、芒硝濃度40%の芒硝溶液を100〜900g/L、ソーダ灰を10〜80g/L含有させるのが好ましく、必要に応じて助剤を含ませてもよい。助剤としては、例えば、還元防止剤を3〜50g/L含有させるのがよい。また、染めムラの抑制を望む場合には、助剤として併せて分散剤を15g/L以下含有させるのが好ましい。なお、濃染染色の場合は、芒硝溶液及びソーダ灰に加えて18%苛性ソーダ水溶液を3〜30g/L含有させるのが好ましい。
【0026】
第2段目の染色では、上記染浴を使用して50〜80℃で織編物を0.05〜5.00秒間浸染し、マングルを用いて絞り率40〜80%で織編物を絞った後、飽和蒸気を充満させた室に織編物を導入することにより、織編物をスチーミングする。スチーミングとしては、70〜130℃で20〜120秒間行うのが好ましい。この第2段目の染色により、染料が繊維に固着する。
【0027】
第2段目の染色後、10〜80℃に設定された水浴を用いて、織編物を10〜120秒間洗浄した後、中和処理する。中和処理には、例えば、過酸化水素や酢酸などを用いる。そして、40〜98℃に設定された水浴を用いて、織編物を100〜500秒間再洗浄することにより、未反応の染料を除去する。この場合、再洗浄に用いる水浴として、染色堅牢度を向上させる目的で、ソーピング剤を0.01〜4.00g/L含有させるのが好ましい。
【0028】
再洗浄後、表面温度が80〜150℃に設定されたシリンダー乾燥機を用いて、30〜300秒間乾燥し、本発明の竹繊維織編物を得ることができる。
【0029】
一方、バット染料を用いて連続式による方法を実施する場合も、通常、2段式の染色方法を採用する。まず、第1段目の染色に使用する染浴を準備する。この場合、染浴として、バット染料を1〜70g/L含有させるのが好ましく、必要に応じて助剤を含ませてもよい。助剤としては、例えば、マイグレーション防止剤を20〜80g/L含有させるのがよい。また、染色性の向上を望む場合には、助剤として併せて消泡剤、浸透剤、キレート剤、分散剤又はロール付着染料再付着防止剤の少なくとも1種を20g/L以下含有させるのが好ましい。
【0030】
染浴を準備した後、第1段目の染色として、連続染色機の染浴槽に染浴を注入し、液温を5℃以上に設定する。そして、織編物を0.05〜5.00秒間浸染し、マングルを用いて絞り率30〜70%で織編物を絞る。次いで、中間乾燥として、表面温度が500〜1200℃に設定された赤外線乾燥機にて2〜40秒間乾燥し、織編物中に含まれる水分の5〜30質量%を蒸発させることが好ましい。この第1段目の染色により、染料が繊維に付着する。
【0031】
その後、予備乾燥として、室内温度が30〜150℃に設定されたドライヤー乾燥機を1〜3回通過させた後、80〜150℃に設定されたシリンダー乾燥機を通過させる。
【0032】
次に、第2段目の染色を行う。この場合の染浴として、18%苛性ソーダ水溶液及びハイドロサルファイトをそれぞれ10〜100g/L含有させるのが好ましく、必要に応じて塩化ナトリウムを60g/L以下含ませてもよい。また、この染浴に助剤を含ませてもよく、例えば、過還元防止剤を30g/L含有させるのがよい。この第2段目の染色に使用する染浴は、十分に攪拌させていることが好ましく、調合の際に10〜400秒間攪拌することが好ましい。
【0033】
第2段目の染色では、上記染浴を使用して5〜50℃で織編物を0.05〜5.00秒間浸染し、マングルを用いて絞り率40〜80%で織編物を絞った後、飽和蒸気を充満させた室に織編物を導入することにより、織編物をスチーミングする。スチーミングとしては、70〜130℃で20〜120秒間行うのが好ましい。この第2段目の染色により、染料が繊維に固着する。
【0034】
第2段目の染色後、1〜60℃に設定された水浴を用いて、織編物を10〜120秒間洗浄した後、酸化処理する。酸化処理には、例えば、酢酸などを用いる。そして、40〜98℃に設定された水浴を用いて、織編物を100〜500秒間再洗浄することにより、未反応の染料を除去する。この場合、再洗浄に用いる水浴として、ソーピング剤を0.01〜4.00g/L含有させるのが好ましい。
【0035】
再洗浄後、表面温度が80〜150℃に設定されたシリンダー乾燥機を用いて、30〜300秒間乾燥し、本発明の竹繊維織編物を得ることができる。
【0036】
本発明の竹繊維織編物は、以上のような構成を有するものであり、さらに所望の特性を付与したい場合は、公知の手段で付帯加工すればよい。例えば、吸水性を望む場合には、公知の手段で吸水加工すればよいし、柔軟性を望む場合には、公知の手段で柔軟加工すればよい。
【0037】
また、本発明の竹繊維織編物は、種々の繊維製品に加工することができる。すなわち、本発明の竹繊維織編物を用いてなる繊維製品としては、ズボン、オーバーオール、ジャケット、ジャンパー、ブルゾン、スカートなどのカジュアル衣料、スポーツウエア、学生服、作業服、事務用制服、ブラウス、Yシャツなどのユニフォーム衣料、Tシャツ、下着、靴下などのインナー衣料、スーツ、礼服などのフォーマル衣料、パジャマ、浴衣、手袋、帽子などの各種衣料品、枕カバー、布団カバー、シーツ、側地などの寝装品、タオル、ハンカチ、ワイピングクロス、便座カバーなどの生活用品、カーテン、テーブルクロス、壁紙などのインテリア用品などがあげられる。
【実施例】
【0038】
次に本発明を実施例により説明する。
【0039】
(実施例1)
天然竹繊維からなる紡績糸を用いたツイル組織の織物を、反応染料を用いて連続式の後染めによる方法で染色し、本発明の竹繊維織編物を得た。
【0040】
すなわち、まず、第1段目の染色に使用する染浴として、反応染料を90g/L、マイグレーション防止剤を60g/L、還元防止剤を5g/L含む染浴を準備し、連続染色機の染浴槽にこの染浴を注入し、液温を40℃に設定した。そして、織物を0.80秒間浸染し、マングルを用いて絞り率62%で織物を絞った。次いで、表面温度が780℃に設定された赤外線乾燥機にて6秒間中間乾燥した。そして、予備乾燥として、まず、室内温度がそれぞれ100℃、130℃に設定されたドライヤー乾燥機に60秒間ずつ導入し、続いて表面温度が115〜125℃に設定されたシリンダー乾燥機に12秒間導入した。
【0041】
次に、第2段目の染色に使用する染浴として、芒硝濃度40%の芒硝溶液を800g/L、ソーダ灰を40g/L、18%苛性ソーダ水溶液を10g/L、還元防止剤を10g/L及び分散剤を10g/L含有する染浴を使用し、織物を60℃で0.70秒間浸染し、マングルを用いて絞り率76%で織物を絞った。その後、飽和蒸気を充満させた室に織物を導入して102℃で45秒間スチーミングした。
【0042】
そして、液温がそれぞれ40℃、60℃に設定された水浴を用いて織物を31秒間ずつ洗浄した後、過酸化水素及び酢酸を用いてpHが3.6〜4.0に調整され、液温がそれぞれ40℃、60℃に設定された浴を使用して、31秒間ずつ中和処理した。次いで、再洗浄として、まず、ソーピング剤を0.04g/L含有し、液温が95℃に設定された浴に織物を52秒間導入し、続いて液温が95℃に設定された水浴に織物を155秒間導入した。
【0043】
再洗浄後、表面温度が115〜125℃に設定されたシリンダー乾燥機を通過させて、本発明の竹繊維織編物を得た。
【0044】
(実施例2)
天然竹繊維からなる紡績糸を用いたツイル組織の織物を、バット染料を用いて連続式の後染めによる方法で染色し、本発明の竹繊維織編物を得た。
【0045】
すなわち、まず、第1段目の染色に使用する染浴として、バット染料を8g/L、マイグレーション防止剤を40g/L、消泡剤を8g/L、浸透剤を2g/L、キレート剤を1g/L、分散剤を1g/L及びロール付着染料再付着防止剤を1g/L含む染浴を準備し、連続染色機の染浴槽にこの染浴を注入し、液温を25℃に設定した。そして、織物を0.80秒間浸染し、マングルを用いて絞り率58%で織物を絞った。次いで、表面温度が780℃に設定された赤外線乾燥機にて6秒間中間乾燥した。そして、予備乾燥として、まず、室内温度がそれぞれ100℃、130℃に設定されたドライヤー乾燥機に60秒間ずつ導入し、続いて表面温度が115〜125℃に設定されたシリンダー乾燥機にて12秒間乾燥した。
【0046】
次に、第2段目の染色に使用する染浴として、18%苛性ソーダ水溶液を40g/L、ハイドロサルファイトを40g/L及び塩化ナトリウムを30g/L含有する染浴を使用し、織物を25℃で0.70秒間浸染し、マングルを用いて絞り率77%で織物を絞った。なお、上記第2段目の染色に使用する染浴は、調合の際に120秒間攪拌したものである。
【0047】
その後、飽和蒸気を充満させた室に織物を導入して102℃で45秒間スチーミングした。
【0048】
そして、液温がそれぞれ30℃、40℃に設定された水浴を用いて織物を31秒間ずつ洗浄した後、酢酸を用いてpHが3.6〜4.0に調整され、液温がそれぞれ40℃、60℃に設定された浴を使用して、31秒間ずつ酸化処理した。次いで、再洗浄として、ソーピング剤を0.04g/L及び染色助剤を0.02g/L含有し、液温がそれぞれ90℃、60℃に設定された浴を使用して、前者に織物を52秒間導入した後、後者に織物を155秒間導入した。
【0049】
再洗浄後、表面温度が115〜125℃に設定されたシリンダー乾燥機に180秒間導入して、本発明の竹繊維織編物を得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然竹繊維を含む紡績糸を用いてなる織編物であって、反応染料又はバット染料を用いて染色されてなることを特徴とする竹繊維織編物。
【請求項2】
請求項1記載の竹繊維織編物を用いてなる繊維製品。


【公開番号】特開2008−214772(P2008−214772A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49551(P2007−49551)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(599089332)ユニチカテキスタイル株式会社 (53)
【Fターム(参考)】