説明

第1のレーザー感光層と第2のレーザー感光層とを備えた多層体、およびそのような多層体に多層画像を作成する方法

2つのレーザー感光層4,32を有する多層体が記載されている。多層体は、オーバーレイフィルム30,32、インレット90,90、および別のオーバーレイフィルム30,30を貼り合わせた物体である。上方オーバーレイフィルム30は下側に層構造を有し、この層構造は、ホットスタンプ用フィルムの付着によってそこに付着させられている。層構造は、ラッカー層50、反射層5r、レーザー感光層4、背景層5、および接着層6を含んでいる。ラッカー層5c、反射層5r、およびレーザー感光層4には、回折および/またはホログラム構造5bが形成されている。第2のレーザー感光層は、カーボンを添加したオーバーレイフィルム32によって形成されている。
レーザー処理によって、好ましくはカラーのレーザー誘発画像コンポーネントを上方レーザー感光層4に作成し、好ましくはグレースケール画像の形態を有する別のレーザー誘発画像コンポーネントを、隣接するカーボン添加レーザー感光層32に作成することできる。このようにしてレーザー誘発多層画像が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、好ましくは転写フィルムまたはラミネートフィルム、の形態か、または少なくとも1つのオーバーレイフィルムおよび好ましくはインレットを貼り合わせた層状複合体の形態を有するとともに、レーザー感光層を備えている多層体に関する。本発明は、そのような多層体に多層画像を作成する方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
レーザー感光材料を含む物体は公知である。例えば、特許文献1は、さまざまな顔料の混合物をそれぞれ含む、具体的には固体またはコーティングの形態を有する種々形状の塑性体を開示している。レーザー処理によって塑性体またはコーティングにカラーマーキングが施される。
【0003】
特許文献2は、第1の工程で紫外線によって活性化され、それに続く第2の工程で脱色処理だけが施される、特殊なイエロー、マゼンタ、およびシアン顔料を用いて処理する方法を記載している。
【0004】
特許文献3もまた、シアン顔料、マゼンタ顔料、およびイエロー顔料の混合物の使用時に、これらの顔料を赤色レーザー光、緑色レーザー光、および青色レーザー光により選択的に脱色するレーザー処理によってカラーマークを作成する方法を開示している。この方法は、当該顔料混合物を含む材料から作られる塑性体を使用することに関して記載されている。
【0005】
特許文献4から、異なる波長を用いたレーザー処理によって、顔料混合物を含み且つ固体またはコーティングの形態を取り得る塑性体に、多色マークを形成することも公知である。レーザー処理における変色のために色が変わる顔料によって彩色作用が起こる。特許文献5は、レーザー感受性のある染料Aとレーザー感受性のない染料Bを、互いに重ね合わせた別々の層か、または共通層に含み、レーザー処理によって染料Aを脱色するという方法を開示している。このように、このレーザー処理によって提供されるカラーマーキングは染料Aの色変化を伴うカラーマーキングのみであり、したがって最大2色の画像しか得られない。
【0006】
特許文献6は、金属プレート上の被覆物の形態を取るプラスチック層か、またはプラスチックプレートが、レーザー処理を受けたときに、具体的にはある色から別の色への変色または黒色化によって、色を変化させることを目的とする添加剤を含んでいる方法を開示している。
【0007】
特許文献7は、表面顔料コーティングに対して用いるレーザー刻印方法であって、顔料コーティングの複数の顔料が異なる温度で内部分子構造を変化させて異なる色彩を呈するレーザー刻印方法を開示している。レーザー照射効果によって特定の表面温度を局所的に達成することにより、カラーレーザーマークが得られる。
【0008】
特許文献8もまた、IDカードのレーザー刻印を開示している。ここでは、レーザー刻印は、さまざまなカラー層を取り除くことによって行われる。この場合に得られるレーザーマークは、カラーマークの形態に見える。
【0009】
特許文献9は、金属層とホログラム構造とを備えた多層フィルムに対するレーザー刻印を記載している。この刻印方法は、ホログラムを担持している金属層を局部的に破壊することによって実施される。
【0010】
特許文献10は、偽造対策を目的としてレーザー処理による個別化を図ったホログラム構造を備えたホットスタンプ用フィルムを開示している。材料または色の変化もしくはフィルムの層構造の一部領域の除去をレーザー光線によって実施する。
【0011】
特許文献11は、IDカードにレーザー刻印するための特殊な方法を記載している。この方法では、レーザーによって、IDカードのさまざまな透明層に黒色のマークが形成される。このようにして、相互に協働する透明層に視差像が形成される。
【特許文献1】国際公開第96/35585号パンフレット
【特許文献2】国際公開第98/19868号パンフレット
【特許文献3】独国特許発明第19955338号明細書
【特許文献4】国際公開第94/12352号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第0327508号明細書
【特許文献6】欧州特許第0190997号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第3738330号明細書
【特許文献8】英国特許出願公開第2240948号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第4131964号明細書
【特許文献10】欧州特許第0420261号明細書
【特許文献11】欧州特許第0219011号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、偽造に対して特に高レベルの安全保護を保障し、詳細には、レーザーによって誘発される(以下、「レーザー誘発」という)マークをレーザー処理によって作成できる多層体を提供することである。本発明の別の目的は、新規かつ複雑なレーザー誘発マークを作成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を、請求項1に記載されている多層体と、方法のクレームである請求項9に記載されている、レーザー誘発多層画像をこのような多層体に作成する方法によって達成する。
【0014】
多層体が、第1のレーザー感光層と第2のレーザー感光層を有し、第1および第2のレーザー感光層に、異なる形状のレーザー誘発画像コンポーネントを作成できることにより、複雑に構成されたレーザー誘発多層画像を形成できる可能性がもたらされる。レーザー感光性着色剤を備えているレーザー感光層では、脱色可能な着色剤成分を2〜3種類含む適切なレーザー感光性混合着色剤を使用すると、多色画像またはフルカラー画像の形態を取ることができる色鮮やかなレーザー誘発画像コンポーネントを作成できるようになる。他方のレーザー感光層には、レーザー処理で別のカラーマーク、好ましくは多色カラー画像または黒色のマーク(好ましくグレースケール画像)、を作成できる別のレーザー感光材料、すなわち別の混合着色剤もしくはカーボンまたはブラックドープト材料をも使用できる。
【0015】
さまざまなレーザー感光層は、局部的に重なり合う重ね合わせ関係でのみ配置できることが事実上好ましく、また、場合によっては局部的にのみ事実上透明であることも可能である。さまざまなレーザー感光層のそれぞれに対して、それぞれ特定のレーザー処理コントロールを施すことによって、協働してどんなに複雑な多層画像でも形成できる種々の特定画像コンポーネントをレーザー誘発プロセスによって作成できる。
【0016】
層構造における複数のレーザー感光層に加え、異なる視覚で異なる光学効果を奏する回折および/またはホログラム構造が設けられ、さまざまな層に配置された種々のレーザー誘発画像コンポーネントとともに種々の視覚効果が提供されれば、特に魅力的な光学効果を備えた多層画像が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
添付の図面を参照しながら、好適な実施形態を以下に詳述する。
【0018】
レーザー照射時に個々のレーザー感光層にできる限り選択的に所望のレーザー誘発マークを作成できるようにするために、レーザー感光層は、例えば特定のレーザー波長または照射角度だけなど、特定のレーザー条件下でのみ感光性を示すようなものとすることができる。また、例えば、レーザー波長、照射角度等に基づいて、特定のレーザー照射に対してバリヤ層のように作用する特殊な背景層を、両レーザー感光層間に中間層として配置することも可能である。好適な実施形態では、バリヤ層として作用する背景層を、局部的にのみ、すなわち、上に配置されているレーザー感光層の一部領域の下にだけ、好ましくはレーザー誘発マークの下の領域にのみ設けてもよい。このようなバリヤおよび中間層を局部的にしか配置しないことによって特殊な別効果を達成することも可能である。具体的には、例えばレーザー照射時に、上方レーザー感光層の、中間層を備えた領域内にのみレーザー誘発マークを作成することが可能となり、また、中間層を備えない領域においては、相互に重なり合った異なるレーザー誘発マークが、両レーザー感光層の複合マークの形態で得られる両層のレーザー感光材料が異なっており、そのため、例えば、一方の層にカラーマークが作成され、他方の層には黒色マーク、好ましくはグレースケール画像、が作成される場合には、特に魅力的な光学的効果が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示されているホットスタンプ用フィルムは、2つのレーザー感光層4を反射層5rの両側に設けた多層体である。この多層体をレーザー処理することにより、異なるレーザー誘発マークを両レーザー感光層に生じさせることができ、それによって複合的なレーザー誘発多層画像が形成される。層構造が図1の転写フィルムに対応している図2記載のラミネートフィルムに関しても同様に考えることができる。また、変更された層構造であるが2つのレーザー感光層4,4aも有する、図3に示されているホットスタンプ用フィルムに関しても同様に考えることができる。図4に示されている積層体もまた、2つのレーザー感光層、すなわち、ホットスタンプ用フィルムの上方オーバーレイフィルム30の下側に配置され、そこに付着させられている層4と、別個のドープトオーバーレイフィルムの形態を有する層32、を有している。
【0020】
以下、個々の多層体の構造について、図面を参照して詳細に説明するとともに、フルカラー画像の形態のレーザー誘発画像コンポーネントを作成できるレーザー処理について詳細に説明する。また、別のレーザー感光層に関し、レーザー誘発画像コンポーネントの形態のグレースケール画像を作成する方法について説明する。
【0021】
図1に示されるフィルムには、キャリア層1、剥離層2、保護層3、レーザー感光層4、反射層5r、レーザー感光層4、付加的なラッカー層7、および接着層6の順序で層が存在している。反射層5rの両側に設けられるレーザー感光層4は全く同じものとすることができ、すなわち、このとき反射層はレーザー感光層全体にわたって配置される。しかしながら、両レーザー感光層は互いに異なっていてもよい。両レーザー感光層4および反射層5rとが相互に隣接する領域に回折構造5bが設けられている。あるいは、回折構造5bはホログラム構造の形態にすることもできる。示されている実施形態では、2つのレーザー感光層が回折またはホログラム構造に隣接していることによって偽造防止レベルが強化されている。レーザー感光層は同一のものにすることも、異なるものにすることも可能である。この事例では、ラッカー層5は透明層または淡色の補助層の形態を有している。あるいは、ラッカー層5および接着層6を省くこともできるし、図1の反射層5rの下に示されている第2のレーザー感光層4がレーザー感受性の接着層の形態を有することもできる。
【0022】
図2は、ホットスタンプ用フィルムの構造に対応している一連の層を有するラミネートフィルムの実施形態を示す。このラミネートフィルムは、いわゆるオーバーレイフィルム30と、レーザー感光層40と、背景層を形成する、省略可能な中間層50と、やはり省略可能な接着層60とを含んでいる。レーザー感光層40は、レーザー感光層4と同様に、反射層50rの両側に配置されている。但し、これに関しては、図1と同様に、2つのレーザー感光層が同じでものであるか、または異なるものであることを条件とするものである。図1のホットスタンプ用フィルムの場合と同様に、図2のラミネートフィルムの場合にも回折および/またはホログラム構造50bが、具体的には2つのレーザー感光層40およびその間の反射層50rの領域に設けられている。
【0023】
図1のホットスタンプ用フィルムまたは図2のラミネートフィルムのレーザー処理時に、相互に重ね合わされたレーザー感光層にそれぞれのレーザー誘発画像コンポーネントが作成され、これらの画像コンポーネントは異なる層に存在する。レーザー処理は、該当のフィルムが支持体に付着させられた後、したがって支持体に付着させられたフィルムが外部から照射される限りにおいて、実施されることが好ましい。あるいは、付着前のフィルムにレーザー処理を施すことも可能である。したがって、この場合、フィルムの両側からレーザー照射を行うことができる。
【0024】
レーザー感光層が異なるレーザー感光材料を有し、したがって、異なる材料別レーザー条件で異なるレーザー感光層にレーザー誘発画像コンポーネントを作成できる場合には、相互に重ね合わされたレーザー感光層内に別々のレーザー誘発画像コンポーネントが得られる。あるいは、照射角度を変化させることによって、上側または下側のレーザー感光層だけを処理することも可能である。この可能性は、反射層5rがレーザー光線に対して、直角関係をなす照射時には透過性を示すが、鋭角の照射時には透過性を示さないか、または透過性が少なくなることによって実現される。回折構造を通過する透過放射線にも差が生じる。したがって、レーザー光線の照射角度を適切に調節することによって、特定のレーザー誘発画像コンポーネントを作成するための上方レーザー感光層の処理を、レーザー光線が下側のレーザー感光層を通過することなく行うことができる。したがって、このようにして、レーザー感光層が同一のレーザー感光材料で作られたとしても、相互に重ね合わされた層を別々に処理することも可能である。
【0025】
図3のホットスタンプ用フィルムの実施形態も、2つのレーザー感光層4,4aを有している。しかしながら、両層は、介在する背景層5によって互いに隔離されている。背景層は、レーザー処理に使用されるレーザー光線を高度に反射させる層である。また、背景層は、レーザー光線の非反射成分に対して非透過で吸収性があり、したがって、上方レーザー感光性4にレーザー誘発マークを作成するレーザー処理の際に、下にあるレーザー感光層4aにレーザー光線が通ることはない。背景層5は、レーザー感光層4の下の、レーザー誘発画像コンポーネントがレーザー感光層4に作成される領域だけに配置される。その外側の領域には背景層5が形成されず、すなわち、背景層は、レーザー光線に対して透過性を示す材料、好ましくは下方レーザー感光層4aのレーザー感光材料の領域に配置される。したがって、背景層が形成されないこれらの領域では、レーザー光線によってレーザー誘発画像コンポーネントを下方レーザー感光層4aに形成できる。
【0026】
2つのレーザー感光層4,4aは、異なる材料別レーザー処理条件が適用される別々のレーザー感光材料から作られることが好ましい。このように、下方レーザー感光層4aにレーザー誘発マークを形成中に、レーザー誘発変化を上方レーザー感光性4に同時に生じさせないことも可能である。
【0027】
レーザー光を支持体に入射させないために、別の背景層5aが下方レーザー感光層4aの下側に配置される。この背景層5aは、レーザー処理中にレーザー光線が支持体に達するのを妨げる。
【0028】
図4の実施形態は、さまざまなオーバーレイフィルムとインレットから貼り合わされた物体である。上方オーバーレイフィルムは、その下側に、ラッカー層5c、反射層5r、レーザー感光層4、背景層5、および接着層6を含む層構造を有している。ラッカー層5c、反射層5r、およびレーザー感光層4に、回折および/またはホログラム構造5bが形成されている。
【0029】
オーバーレイフィルム30の下側に付着させられるこれらの層は、オーバーレイフィルムの下側に付着させるホットスタンプ用フィルムの層である。オーバーレイフィルム30の下側に配置されるオーバーレイフィルム32は、レーザー感光フィルムの形態を有している。したがって、第2のレーザー感光層を形成する。図示の実施形態では、レーザー感光材料がカーボンおよび/またはブラックドープト材料の形態を有している。これは、レーザーの作用を受けて炭化する材料であり、したがって、オーバーレイフィルム32によって形成されるこの層内を黒色化することによってレーザー誘発画像コンポーネントが作成される。レーザー条件の変更、例えばレーザー出力および/またはレーザー波長の変更によってグレースケール画像を作成できる。
【0030】
ドープトオーバーレイフィルム32の下に配置されているのはインレット90で、その下に別のインレット90が配置されている。これらのインレットは、好ましくはインレットフィルムの形態に、紙材料またはプラスチック材料から形成できることが好ましい。下側インレット90の下側にはオーバーレイフィルム30が配設されており、その表面には別のオーバーレイフィルム30が配設されている。
【0031】
レーザー感光層4および32に異なるレーザー誘発画像コンポーネントを作成するレーザー処理は、図1〜図3に対応するように実施形態に施される。
【0032】
レーザー感光性の3種類の着色剤成分からなる混合着色剤を含むレーザー感光層にフルカラーの画像コンポーネントをレーザー誘発脱色によって作成できる方法についても以下に詳細に説明する。レーザー感光材料は、シアン顔料、マゼンタ顔料、およびイエロー顔料を含む3成分の混合物である。
【0033】
脱色作業では、第1段階で、特定の顔料成分が脱色される特定のレーザー波長で対象の場所を照射されることによって、青色または緑色または赤色のカラーマークを作成する。
【0034】
青色を生成するためにイエロー顔料の成分だけを脱色してもよい。この目的のために青色レーザー光が使用される。脱色手順には、特定の最小レーザー強度が必要とされる。また、あるパルス幅を越えるべきではない。第1段階で緑色のカラーマークを得るためにマゼンタ顔料の成分だけを脱色してもよい。この目的のために緑色レーザー光が使用される。第1段階で赤色のマークを得るために、シアン顔料の成分だけを脱色してもよい。この目的のために赤色レーザー光が使用される。
【0035】
シアン色またはマゼンタ色またはイエロー色のカラーマークをこの位置に作成するためには、第2段階で、具体的には、この位置にある未脱色の顔料成分を脱色するレーザー波長を使用して、この位置にレーザー処理を施す。第1段階で青色のカラーマークが作成された場合、この位置のシアンの顔料成分とマゼンタの顔料成分は脱色されていない。この位置にシアン色を出すためには、この第2段階でマゼンタの顔料成分を脱色する必要がある。これは、緑色レーザー光によって行われる。その結果、シアン色のマークがこの位置に作成される。
【0036】
この第2段階で、シアン色のマークではなく、マゼンタ色のマークを得ようとするならば、第1段階で作成された青色のカラーマークを赤色レーザー光で処理しなくてはならない。
【0037】
すなわち、この位置のシアンの顔料が脱色されるため、この位置のマゼンタの顔料は脱色されずに残る。その結果、マゼンタ色のマークがこの位置に作成される。
【0038】
同様に、シアン色のマークまたはイエロー色のマークは、具体的には青色レーザー光と赤色レーザー光でそれぞれ処理することによって、第1段階で作成された、脱色されないまま残っているシアン顔料およびイエロー顔料で構成された緑色のカラーマークから作成できる。
【0039】
同様に、第1段階で作成された赤色のカラーマークは、第2段階でイエロー色またはマゼンタ色のマークに変換できる。具体的には緑色レーザー光と青色レーザー光を用いて第2段階でレーザー処理することによって変換される。
【0040】
第1および第2段階で処理された位置に透明な場所を得る、すなわち背景層5が白色の場合は白色の場所を得るためには、第2段階の後に脱色されずにその場所に残っている顔料成分を脱色するように波長設定したレーザービームを用いて、第3段階でこの位置を処理する必要がある。すなわち、イエロー色のマークは青色レーザー光で、マゼンタ色のマークは緑色レーザー光で、およびシアン色のマークは赤色レーザー光で脱色する必要がある。
【0041】
次に、別のカラーマークをスタンプ用フィルムのレーザー感光層4に作成するために、レーザー感光層4内の、隣接する別の場所に同様の処理が施される。このようにして、フルカラー画像を作成することができる。
【0042】
レーザー処理は、変色によってレーザー感光層の着色剤にカラーマークまたはフルカラー画像を作成するために使用することも可能である。連続的な処理工程によって同様にレーザー処理を実行できる。顔料は、着色剤、すなわち色を付与する物質として関与する。顔料は一般に不溶性で、通常、無機物質である。しかしながら、概して可溶性の有機着色剤を着色剤として使用することも可能である。レーザー処理の各段階で適用される特定のレーザー条件を備えたそれぞれの場合に変色が生じる。
【0043】
前述の脱色およびカラー変換方法は、レーザー感光材料が1種類または2種類の着色剤成分しか含まない場合にも同様に使用できる。他の着色剤成分や、レーザー処理における他のレーザー条件、詳細には他のレーザー波長範囲をも使用できる。
【0044】
レーザー処理は、フィルムを支持体に付着させた時点で一般に実施される。しかしながら、別の選択肢として、詳細には、特に保護層3または、例えば背景層5などのいずれか他の層がレーザー光線に対して透明でないか、または半透明でしかない層の形態を有するか、もしくは、特定の波長範囲のレーザー光線に対して透明でない層の形態を有するとき、あるいは、付加的な紫外線吸収保護層が設けられている場合には、フィルムを照射する手順によって、フィルム付着前にレーザー処理を実施することも可能である。次に、フィルムの裏側、すなわち背景層5または接着層6に誘導されるレーザービームによって、好ましくはフィルムを付着させる前に、レーザー処理が行われる。したがって、これにより、その内部にカラーマークを形成するために、レーザー感光層4に対して反対側から同様の処理が施される。このように使用される背景層5と接着層6は、当該レーザー放射線に対して透明であるか、または少なくとも半透明である。
【0045】
具体的な実施形態で使用される層の構成は次の通りである。
【0046】
剥離層(分離層
トルエン 99.5部
エステルワックス(滴点90℃) 0.5部
保護層3(保護ラッカー層)
メチルエチルケトン 61.0部
ジアセトンアルコール 9.0部
メタクリル酸メチル(Tg: 122℃) 18.0部
ポリエチレン分散剤(キシレン中23%)(軟化点140℃) 7.5部
高分子分散添加剤(40%、アミノナンバー(amino number)20) 0.5部
増量剤(ケイ酸アルミニウム) 4.0部
レーザー感光層4(第1のカラーラッカー層):
メチルエチルケトン 34.0部
トルエン 26.0部
酢酸エチル 13.0部
硝酸セルロース(低粘度、アルコール中65%) 20.0部
線状ポリウレタン(Fp>200℃) 3.5部
高分子分散添加剤(40%、アミノナンバー20) 2.0部
例: 顔料ブルー15:4 0.5部
顔料レッド57:1 0.5部
顔料イエロー155 0.5部
背景層5(第2のカラーラッカー層)
メチルエチルケトン 40.0部
トルエン 22.0部
エチレン酢酸ビニルターポリマー(Fp=60℃) 2.5部
ポリ塩化ビニル(Tg:89℃) 5.5部
ポリ塩化ビニル(Tg:40℃) 3.0部
分散添加剤(50%, 酸価51) 1.0部
二酸化チタン(d=3.8〜4.2g/cm) 26.0部
接着層6
メチルエチルケトン 55.0部
トルエン 12.5部
エタノール 3.5部
ポリ酢酸ビニル(軟化点80℃) 6.0部
ブチル/メタクリル酸メチル(Tg:80℃) 8.0部
メタクリル酸エチル樹脂(Tg:63℃) 3.0部
メタクリレートコポリマー(Tg:80℃) 5.0部
不飽和ポリエステル樹脂(軟化点103℃) 3.5部
二酸化ケイ素 3.5部
最後に、図5〜7を参照しながら、本発明の主題を、その本質的特徴と機能に関連させて、もう1度簡単に説明する。
【0047】
少なくとも2つの異なるレーザー感光層を含み、一方のレーザー感光層1が多色式にレーザーパーソナライゼーション可能であることが好ましく、別のレーザー感光層2がモノクローム式にレーザーパーソナライゼーション可能であることが好ましい、多層データキャリアが提供される。
【0048】
この目的のために、レーザー感光材料は、定められた波長および強度で両材料にマークが作成されるように調整できる。
【0049】
両レーザー感光層は、その面積の一部分が相互に重ね合わされる関係に配設される。
【0050】
レーザー光線に対して不透明な層3が、これらレーザー感光層間の上記面積の一部分に配置されている。この光学的バリヤ層3は反射層であり、好適な構成では拡散反射層である。バリヤ層は白色顔料を適切な割合で含み、したがってレーザー光が隣接する層に入射しないようにすることが好ましい。このことは、本発明による、レーザーパーソナライゼーション可能層の別配置についても不可欠である。多色式にレーザーパーソナライゼーション可能な層1を、光学的バリヤ層によって分離させた状態で、モノクローム式にレーザーパーソナライゼーション可能な層2の上に配置することができ、これによってモノクローム式にレーザーパーソナライゼーション可能な隣接層2に意図しない炭化を生じさせずにすむ。
【0051】
光学的バリヤ層は、付加的な層としてさまざまな方法で組み込むことができる。装飾プリント手順では、光学的バリヤ層をカバー層の1つに付着させることが好ましい。
【0052】
前述の多層データキャリアは下記方法のうちの1つにしたがって作成できる。
【0053】
多部品射出成形または型内装飾であることが好ましい射出成形法、
フィルム複合材の貼り合わせ、
混成構造物、好ましくは紙およびプラスチックフィルム、の貼り合わせ、
コーティングペーパーキャリアまたはプラスチックキャリア、
ペーパーキャリアまたはプラスチックキャリア表面への印刷、
ペーパーキャリアまたはプラスチックキャリアに対するフィルム転写プロセス、
前記方法の組み合わせ。
【0054】
図1は、データキャリアの好適な構造を示す。
【0055】
光学的バリヤ層をレーザー感光層の上方に配置し、したがってレーザー感光層の面積の関係部分を覆うようにすることもできる。したがって、光学的バリヤ層は装飾プリントの形態を有することが好ましく、例えば編み縄飾り模様などの線模様の形態を有することが好ましい。次に、装飾プリントの画像情報はレーザーパーソナライゼーション作業後に、光学的バリヤ層の画像情報がレーザーパーソナライゼーション画像情報を遮る範囲で、レーザーパーソナライゼーション可能層に転写される。
【0056】
カラーレーザーパーソナライゼーション作業によって生成されるグラフィックエレメントは、書類の一部として表示されるので、カラー画像という点で、偽造に対する防衛を講じなくてはならない。カラー画像を書類から分離して別のものに交換できる場合には、偽造の危険が生じる。レーザーパーソナライゼーション効果のグラフィックエレメントによって、写真組込み型背景の意味で、カラー画像を書類の他のエレメントと組み合わせれば、偽造に対して高度な防護を享受できる。
【0057】
データキャリア内での異なる特徴、すなわち、カラーのレーザーパーソナライゼーションおよびグレースケールレーザーのレーザーパーソナライゼーション、の統合は、異なるレーザーパーソナライゼーション可能層が、その面積の関係部分だけが相互に重ね合わされる関係に配置される形態などで行われる。これにより、統合型カラーレーザーパーソナライゼーションに関する、さまざまな可能選択肢が提供される。
【0058】
図6は、データキャリアの好適な構造の上にレーザーマークを形成するという可能選択肢を示す。
【0059】
モノクロームレーザーパーソナライゼーション可能層2だけしかない位置でレーザーパーソナライゼーションを実行すると、モノクロームのマーク9が作成される。
【0060】
レーザー光線に対して不透明な層3およびモノクロームレーザーパーソナライゼーション可能層2の上に多色レーザーパーソナライゼーション可能層1が配設されている位置で、レーザーパーソナライゼーションが行われると、多色マーク8が作成される。
【0061】
光学的バリヤ層3で分離されずに、モノクロームレーザーパーソナライゼーション可能層2の上に多色レーザーパーソナライゼーション可能層1だけが配設され位置で、レーザーパーソナライゼーションが行われると、多色マーク9とモノクロームの黒色マーク8の重なり合ったものが作成される。このマークは、脱色および黒色化の相反効果によっても多色化されるが、その場合は、純粋な多色マークよりも暗く見える。
【0062】
図7は、カラーのレーザーパーソナライゼーションと従来のグレースケールレーザー処理とを組み合わせることにより、画像エレメントをどのように統合できるかを示すものである。この目的のため、脱色手順に必要なレーザー出力が、書類に付加的に使用されるモノクロームレーザーパーソナライゼーション可能層の炭化に十分なものであるように、レーザーパーソナライゼーション可能層の吸収を調整する。モノクロームレーザーパーソナライゼーション可能層2が多色レーザーパーソナライゼーション可能層1の下にあり、同の面積の一部分が光学的バリヤ層3で覆われていれば、この構造により、光学的バリヤ層3の境界を越えてレーザー照射される、例えば線または英数字などの画像エレメントを、バックグラウンドで炭化させることができる。このように、エレメント内のマークの性質を変更させながら連続的な画像エレメントを作成できる。光学的バリヤ層3の境界が多色レーザーパーソナライゼーション可能層1の境界と一致していれば、カラフルから非カラフルへ変化する。画像情報のこれらの連続項目は、統合作用を有する。
【0063】
カラーのレーザーパーソナライゼーションを別のグラフィックエレメントと組み合わせることによって達成される画像エレメントの統合も可能である。多色レーザーパーソナライゼーション可能層の透明度は、脱色が増すほど増大する。これにより、例えば、多色レーザーパーソナライゼーション可能層の真下の層、例えばカラー材料の上、に印刷される編み縄飾り模様などのレイアウト要素が、カラー画像のカラーレーザー作業後に表示される。したがって、例えば、その面積の関係部分だけが多色レーザーパーソナライゼーション層1に被覆されている、印刷されたラインのような画像エレメントが、カラーレーザーパーソナライゼーション作業後に統合エレメントとして表示される。パーソナライズされた構成の縁部に延在するこのような統合エレメントにより、データキャリアの偽造は困難さを増す。
【0064】
本発明の別の特徴は、付加層により、使用されているキャリア材料とは無関係に、背景の明るさを明確かつ目標通り調整できることである。したがって、例えば、光学的増白剤を使用するか、または顔料添加剤を使用することによって付加的な効果を達成できる。
【0065】
以上のことから、本発明の主題は、一方のレーザー感光層が多色レーザーパーソナライゼーション可能であり、他方のレーザーパーソナライゼーション可能層がモノクロームレーザーパーソナライゼーション可能である、少なくとも2つのレーザー感光層を含む多層データキャリアである、ということになる。これらのレーザー感光層は、その面積の関係部分が相互に重ね合わされる関係にあり、多色レーザーパーソナライゼーション可能層がモノクロームレーザーパーソナル化可能層の上方に位置することが好ましい。レーザー感光層は、同じ波長および同じレーザー光線エネルギーを使用したレーザーマーキング工程において、多色レーザーパーソナライゼーション可能層とモノクロームレーザーパーソナル化可能層の両方にそれぞれのマーキングが達成できるようにすることも可能である。
【0066】
これらレーザー感光層間の、少なくともその面積の関係部分に配置されているのは、レーザー光線に対して不透明な層であることが好ましい。
【0067】
レーザー光線に対して不透明な層は、好適な実施形態では拡散反射層であり、レーザー光を反射または散乱させる添加剤を適切な割合で含む反射層である。
【0068】
レーザー感光層が、レーザー光線に対して不透明な層によって、互いに光学的に分離されている場合には、その真下にあるレーザーパーソナライゼーション可能層を変化させることなく、上方レーザーパーソナライゼーション可能層、好ましくは多色レーザーパーソナライゼーション可能層、にレーザーパーソナライゼーションを施すことができる。
【0069】
また、レーザー感光層が、レーザー光線に対して不透明な層によって、互いに光学的に分離されていない場合には、レーザービームによって上方レーザーパーソナライゼーション可能層、好ましくは多色レーザーパーソナライゼーション可能層、およびこの層の真下にあるレーザーパーソナライゼーション可能層の両方にレーザーパーソナライゼーションを施すことができる
また、グラフィック画像エレメントが各レーザーパーソナライゼーション可能層、好ましくは多色レーザーパーソナライゼーション可能層、の表面部分を越えて配置される場合には、レーザービームによって上方レーザーパーソナライゼーション可能層、好ましくは多色レーザーパーソナライゼーション可能層、およびこの層の真下にあるレーザーパーソナライゼーション可能層の両方にレーザーパーソナライゼーションを施すことができ、したがって、画像エレメント内において多色表現からモノクローム表現へ変化する。
【0070】
グラフィック画像エレメントが、レーザーパーソナライゼーション可能層の上方に位置する光学的バリヤ層の表面部を越えて配置され、そのため、このように作成されたグラフィック画像エレメントが、レーザーパーソナライゼーション可能層内で中断される場合には、レーザーによってレーザーパーソナライゼーション可能層にレーザーパーソナライゼーションを施すことができる。光学的バリヤ層の意味での中断エレメント、好ましくは、例えば編み縄飾り模様などのプリントエレメント、をレーザーパーソナライゼーション可能層上方に配置できる。
【0071】
レーザービームを用いて、多色レーザーパーソナライゼーション可能層にレーザーパーソナライゼーションを施すことができ、したがって、多色レーザーパーソナライゼーション可能層の透明度がレーザーマーキングプロセスによって増大する場合には、カラーレーザー照射作業後に、多色レーザーパーソナライゼーション可能層の真下の層(例えばキャリア材料)上にプリントされる独創的なエレメント(好ましくは、例えば編み縄飾り模様などのプリントエレメント)がカラー画像で表示される。
【0072】
本発明の本質的な利点は、公知であるグレースケールのレーザーパーソナライゼーションと、新方法であるカラーのレーザーパーソナライゼーションが組み合わせられることである。前述のように組み合わせることによって、実質的に書類の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】2つのレーザー感光層を備えた転写フィルムの実施形態の断面図である。
【図2】図1の転写フィルムに対応する構造を備えたラミネートフィルムの実施形態の断面図である。
【図3】層の順序を変更した2つのレーザー感光層を備えた転写フィルムの別実施形態の断面図である。
【図4】複数のオーバーレイフィルムとインレットとを備え、2つのレーザー感光層も有する積層体の分解図である。
【図5】さらに別の実施形態の断面図である。
【図6】レーザー処理を説明するための、図5の実施形態の断面図である。
【図7】図5および6の実施形態のレーザー誘発画像の平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 レーザー感光層
2 レーザー感光層
3 保護層
4 レーザー感光層
4a レーザー感光層
5 ラッカー層
5b ホログラム構造/回折構造
5c ラッカー層
5r 反射層
6 接着層
7 ラッカー層
8 マーク
9 マーク
30 オーバーレイフィルム
32 オーバーレイフィルム/感光層
40 レーザー感光層
50b ホログラム構造
50 ラッカー層
50r 反射層
60 接着層
90 インレット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写フィルムまたはラミネートフィルムであることが好ましい多層フィルムの形態か、もしくは、少なくとも1つのオーバーレイフィルムおよび好ましくはインレットを貼り合わせた層状複合体の形態を有し、
レーザー感光材料を有する第1の層(以下、第1のレーザー感光層と呼ぶ)と、レーザー感光材料を有する第2の層(以下、第2のレーザー感光層と呼ぶ)とを備え、前記第1および第2のレーザー感光層が少なくとも局部的に相互に重なり合う関係に配置されている多層体において、
a)前記第1のレーザー感光層の前記レーザー感光材料が、レーザー光線の作用によって脱色可能な着色剤か、またはレーザー光線の作用によって変色により色が変化する着色剤を有すること、および
b)前記第2のレーザー感光層の前記レーザー感光材料が、レーザー光線の作用によって脱色可能な着色剤、またはレーザー光線の作用によって変色により色が変化する着色剤を有するか、もしくは、前記第2のレーザー感光層の前記レーザー感光材料が、レーザー光線の作用によって黒色化可能なドープト材料を有すること、
を特徴とする多層体。
【請求項2】
使用されるレーザー光線に対して、反射性、および/または不透明性または実質的不透明性、および/または吸光性である背景層が、前記両レーザー感光層の少なくとも一方の、支持体に面している側の少なくとも一部領域上に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の多層体。
【請求項3】
前記背景層が前記第1のレーザー感光層と前記第2のレーザー感光層との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の多層体。
【請求項4】
前記背景層が可視スペクトル域の光に対して透明であり、および/または特定のレーザー条件、具体的には特定のレーザー波長範囲および/または照射角度、だけを満たすレーザー光線に対して透明または不透明であり、好ましくは、レーザー感光層にレーザー誘発マークを形成するために使用されるレーザー光線に対して透明または不透明であることを特徴とする、請求項2または3に記載の多層体。
【請求項5】
前記第1のレーザー感光層の前記レーザー感光材料と前記第2のレーザー感光層の前記レーザー感光材料は、好ましくは前記2材料の固有のレーザー処理条件が異なるものとなるように、異なっていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項6】
前記レーザー感光材料が、少なくとも2種類、好ましくは3種類のレーザー感光着色剤成分の混合物の形態を有し、
前記2または3種類のレーザー感光着色剤成分のそれぞれは、ある着色剤成分用のレーザー条件下では他の着色剤成分は変化、好ましくは脱色、し得ない、または実質的に変化、好ましくは脱色、し得ないことを条件とするものである特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項7】
前記混合物が、シアン着色剤、マゼンタ着色剤、およびイエロー着色剤の着色剤成分のうちの2または3種類を有することを特徴とする、請求項6に記載の多層体。
【請求項8】
レーザー光線の作用を受けて黒色化され得る前記ドープト材料が、カーボンおよび/またはブラックドープト材料の形態を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項9】
好ましくは請求項1〜8のいずれか1項に記載されている多層体に多層画像作成する方法において、
第1のレーザー誘発画像コンポーネントを第1のレーザー条件下のレーザー光線の作用によって前記多層体の第1のレーザー感光層に作成し、第2のレーザー誘発画像コンポーネントを第2のレーザー条件下のレーザー光線の作用によって前記多層体の第2のレーザー感光層に作成する限りにおいて、前記多層画像が複数のレーザー誘発画像コンポーネントで構成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1のレーザー条件と前記第2のレーザー条件が異なるものであり、好ましくはレーザー波長および/またはレーザー光線の強さおよび/または照射角度に関して異なるものであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のレーザー誘発画像コンポーネントと前記第2のレーザー誘発画像コンポーネントが、同時に、または互いに時間的にずれた関係で、作成されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザー誘発画像コンポーネントのうちの少なくとも1つがカラーマークの形態を有することを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザー誘発画像コンポーネントのうちの少なくとも1つが黒色マーク、好ましくはグレースケールマーク、の形態を有することを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザー誘発画像コンポーネントは、使用されるレーザー光線に対して反射性であり、および/または前記レーザー光線の反射されない部分に対して不透明性および/または吸光性である背景層の上方に位置する、前記レーザー感光層の領域に生成されることを特徴とする、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザー誘発画像コンポーネントが、レーザー誘発脱色またはレーザー誘発変色によって、多色画像、好ましくはフルカラー画像、の形態で作成されることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザー誘発画像コンポーネントが、レーザー誘発黒色化によって、好ましくはグレースケール画像の形態で作成されることを特徴とする、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザー感光材料が少なくとも2種類、好ましくは3種類のレーザー感光着色剤成分の混合物の形態を有し、前記2または3種類の着色剤成分のそれぞれは、ある着色剤成分用のレーザー条件下では他の一方または両方の着色剤成分が変化、好ましくは脱色、不可能か、または実質的に変化、好ましくは脱色、脱色不可能であることを条件として、前記各成分用のそれぞれのレーザー条件下のレーザーによって変化、好ましくは脱色、させることができることを特徴とする、請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
着色剤成分であるシアン着色剤、マゼンタ着色剤、およびイエロー着色剤のうちの2または3種類を含む混合着色剤が使用され、好ましくは、前記シアン着色剤を脱色するために赤色レーザー光が使用され、前記マゼンタ着色剤を脱色するために緑色レーザー光が使用され、前記イエロー着色剤を脱色するために青色レーザー光が使用されることを条件とすることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層フィルムの形態か、もしくは、少なくとも1つのオーバーレイフィルムおよびインレットを貼り合わせた層状複合体の形態を有し、
レーザー感光材料を有する第1のレーザー感光層と、レーザー感光材料を有する第2のレーザー感光層とを備え、前記第1および第2のレーザー感光層が少なくとも局部的に相互に重なり合う関係に配置されており、前記第1のレーザー感光層の前記レーザー感光材料が、レーザー光線の作用によって脱色可能な着色剤か、またはレーザー光線の作用によって変色により色が変化する着色剤を有し、および前記第2のレーザー感光層の前記レーザー感光材料が、レーザー光線の作用によって脱色可能な着色剤、またはレーザー光線の作用によって変色により色が変化する着色剤を有するか、もしくは、前記第2のレーザー感光層の前記レーザー感光材料が、レーザー光線の作用によって黒色化可能なドープト材料を有する多層体において、
さらに、複雑に構成されたレーザー誘発多層画像が、
A)多色のレーザー誘発画像コンポーネントが前記第1のレーザー感光層に形成され、且つ黒色マークが前記第2のレーザー感光層に形成される、
および/または
B)特殊な背景層が少なくとも局部的に前記第1と第2のレーザー感光層間に中間層として配置され、前記レーザー感光層にレーザー誘発マークを形成するのに用いられるレーザー光線に対して透明ではないバリヤ層として作用する、
方法により形成されることを特徴とする多層体。
【請求項2】
前記多層フィルムが転写フィルムまたはラミネートフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の多層体。
【請求項3】
前記黒色マークがグレースケール画像であることを特徴とする、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項4】
使用されるレーザー光線に対して、反射性、および/または不透明性または実質的不透明性、および/または吸光性である別の背景層が、前記両レーザー感光層の少なくとも一方の、支持体に面している側の少なくとも一部領域上に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項5】
前記背景層が可視スペクトル域の光に対して透明であり、および/または特定のレーザー条件、具体的には特定のレーザー波長範囲および/または照射角度、だけを満たすレーザー光線に対して透明または不透明であり、好ましくは、レーザー感光層にレーザー誘発マークを形成するために使用されるレーザー光線に対して透明または不透明であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項6】
前記第1のレーザー感光層の前記レーザー感光材料と前記第2のレーザー感光層の前記レーザー感光材料は、好ましくは前記2材料の固有のレーザー処理条件が異なるものとなるように、異なっていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項7】
前記レーザー感光材料が、少なくとも2種類、好ましくは3種類のレーザー感光着色剤成分の混合物の形態を有し、
前記2または3種類のレーザー感光着色剤成分のそれぞれは、ある着色剤成分用のレーザー条件下では他の着色剤成分は変化、好ましくは脱色、し得ない、または実質的に変化、好ましくは脱色、し得ないことを条件とするものである特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項8】
前記混合物が、シアン着色剤、マゼンタ着色剤、およびイエロー着色剤の着色剤成分のうちの2または3種類を有することを特徴とする、請求項に記載の多層体。
【請求項9】
レーザー光線の作用を受けて黒色化され得る前記ドープト材料が、カーボンおよび/またはブラックドープト材料の形態を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項10】
層体に多層画像作成する方法において、
第1のレーザー誘発画像コンポーネントを第1のレーザー条件下のレーザー光線の作用によって前記多層体の第1のレーザー感光層に作成し、前記第1の層は多色でマークされ、第2のレーザー誘発画像コンポーネントを第2のレーザー条件下のレーザー光線の作用によって前記多層体の第2のレーザー感光層に作成し、前記第2の層はモノクロームの黒色でマークされ、前記第1と第2のレーザー感光層はその面積の一部分が相互に重ね合わされる関係にあり、該第1と第2のレーザー感光層間にはレーザー光に対して不透明の層が配置されている限りにおいて、前記多層画像が複数のレーザー誘発画像コンポーネントで構成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第2のレーザー感光層だけしかない位置でモノクロームの黒色マークを形成し、および/または、前記レーザー光線に対し不透明な層および前記第2のレーザー感光層の上に前記第1のレーザー感光層が配設されている位置で多色マークを形成することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のレーザー条件と前記第2のレーザー条件が異なるものであり、好ましくはレーザー波長および/またはレーザー光線の強さおよび/または照射角度に関して異なるものであることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のレーザー誘発画像コンポーネントと前記第2のレーザー誘発画像コンポーネントが、同時に、または互いに時間的にずれた関係で、作成されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザー誘発画像コンポーネントは、使用されるレーザー光線に対して反射性であり、および/または前記レーザー光線の反射されない部分に対して不透明性および/または吸光性である背景層の上方に位置する、前記レーザー感光層の領域に生成されることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記レーザー誘発画像コンポーネントが、レーザー誘発脱色またはレーザー誘発変色によって、多色画像、好ましくはフルカラー画像、の形態で作成されることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザー誘発画像コンポーネントが、レーザー誘発黒色化によって、好ましくはグレースケール画像の形態で作成されることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザー感光材料が少なくとも2種類、好ましくは3種類のレーザー感光着色剤成分の混合物の形態を有し、前記2または3種類の着色剤成分のそれぞれは、ある着色剤成分用のレーザー条件下では他の一方または両方の着色剤成分が変化、好ましくは脱色、不可能か、または実質的に変化、好ましくは脱色、脱色不可能であることを条件として、前記各成分用のそれぞれのレーザー条件下のレーザーによって変化、好ましくは脱色、させることができることを特徴とする、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
着色剤成分であるシアン着色剤、マゼンタ着色剤、およびイエロー着色剤のうちの2または3種類を含む混合着色剤が使用され、好ましくは、前記シアン着色剤を脱色するために赤色レーザー光が使用され、前記マゼンタ着色剤を脱色するために緑色レーザー光が使用され、前記イエロー着色剤を脱色するために青色レーザー光が使用されることを条件とすることを特徴とする、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−500238(P2006−500238A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−541954(P2003−541954)
【出願日】平成14年5月8日(2002.5.8)
【国際出願番号】PCT/DE2002/001675
【国際公開番号】WO2003/039888
【国際公開日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(398058348)レオナード クルツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (9)
【出願人】(504412679)オルガ ジステームス ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】ORGA Systems GmbH
【Fターム(参考)】