説明

第2の流体の流れから第1の流体の粒子を分離するための分離システム

【課題】第2の流体の流れから第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を分離するための分離システムを提供する。
【解決手段】第2の流体の流れから第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を分離するための分離システム250が、ホルダ手段252および分離チャンバ254を備えている。分離チャンバ254のための蓋256が設けられている。ガス流中に分散した液体の粒子を合体するための複数の装置200が、ホルダ手段252内に配設されるように構成され、前記装置の出口210が分離チャンバ254に入るガス流中の合体した液体の粒子を方向付ける。分離チャンバ254は、ガス出口258と、分離チャンバ内でガスから分離された固体または液体の粒子が分離チャンバ254から排出可能とするように配置されたドレイン260と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第2の流体の流れから第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を分離するための分離システムと、第2の流体の流れの中に混入された第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を合体させるための装置とに関する。本発明は詳細には、内燃機関のブローバイガス内に分散したオイル粒子を分離するための装置に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃焼プロセスの炭化水素およびその他の誘導体の大気への放出を制限する法律によって管理される。内燃機関の製造者が直面する問題の1つは、エンジン動作中にピストンを超えてクランクケース内に漏れるガスをどのように処理するかということである。このようなガスは、ブローバイガスとして知られており、圧力上昇を防止するために、クランクケースから通気しなければならない。しかし、一部の法律では、ブローバイガスをエンジンの吸気マニホールドに再循環させることも要求している。
【0003】
この再循環は、ピストンリング、クランクベアリングおよびクランクからの風から、ブローバイガスがオイル粒子を捕集してしまうため、望ましくない。オイルが吸気マニホールドに入る前に、このオイルのできるだけ多くをブローバイガスから除去する必要がある。過剰なオイルが吸気マニホールドへ送られると、許容できない排気ガスが生じ、入口弁が詰まり、エンジン・オイルの消費が増大する。したがって、ブローバイガス内に分散したオイル粒子を分離するためにオイルセパレータが必要となる。
【0004】
図1には、内燃機関のシリンダのクランクケース2に連結された周知のタイプのオイルセパレータが図示されている。クランクケース2は、エンジンに注油するためにオイルを入れるオイルサンプ4を備えている。ブローバイ燃焼ガスは、矢印Aの方向にピストン6を超えて漏れる。しかし、クランクケース2内の圧力は大気圧以下に保たなければならないため、ブローバイガスを逃がすことができるようにクランクケースを通気しなければならない。その結果、クランクケースは通路8により通気されている。オイル分離チャンバ10は、ブローバイガスが矢印Bの方向においてオイル分離チャンバ10に入るように通路8に連結されている。
【0005】
オイルは、重力下における単なる空中からの落下によって分離することができる。あるいは、(図示しない)複数のバッフルにオイルが衝突して収集されてから落下できるように、当該バッフルがチャンバ10に設けられる。このとき、オイルはサンプ4に戻されているか、別個の油溜めに収集されている。分離チャンバ10は、シリンダの吸気マニホールド14に戻される出口12を有する。したがって、吸気マニホールド14に再流入されている空気が燃焼での使用に適するように、チャンバ10でオイルの一部が除去される。
【0006】
図1に示されるオイルセパレータには以下の欠点がある。単にブローバイガスをチャンバに送り、重力下でオイルを分離させることは、特に効率的ではあるとは言えない。排気ガス規制がますます厳しくなっているため、オイルセパレータをより効率化し、オイルセパレータによって除去するオイルの割合をより大きくする必要がある。その一方で、商業上および市場からは、製造コストを最小限することが要求されている。また、多くのオイルは、1〜2ミクロンという範囲の非常に微細な粒子の形で存在し、空気流からの除去が非常に困難である。図1の例において、このタイプのオイルセパレータは、5ミクロンを超えるサイズの粒子を除去する場合に限って効果的であり、それでは不十分なことが判明している。
【0007】
図2には、周知のセパレータの別のタイプとして、サイクロン20が図示されている。サイクロン20は吸気ポート22を備え、その吸気ポート22に入った空気がサイクロンチャンバ24内に送られる。この空気は回転しながら下降し、遠心力によって油滴がチャンバ24の壁に付着する。さらに大きなオイル粒子も重力下で落下する。チャンバに集まったオイルは、チャンバ24の下端にあるバッフル28を有するドレイン26によって除去される。清浄な空気は渦の形で出口30へ上昇する。
【0008】
図2に示される例のようなサイクロンは、およそ2ミクロンの直径を有するオイル粒子の除去に効果的であると思われる。しかし、かかるサイクロンには以下の欠点がある。複数の小型のサイクロンを備える場合、同じ圧力降下および空気流量であれば、単一の大型サイクロンよりも小さい粒子の分離に効果的であることが分かっている。しかし、入口、出口およびドレインをそれぞれ備える複数のサイクロンの設計および製造は複雑で費用がかかる。また、このようなサイクロンは、エンジン内で利用可能な空間に嵌め込むのが困難である。コスト上の理由から、オイルセパレータはしばしばカムカバーに組み込まれる。つまり、セパレータは理想的には高さを比較的小さくする必要があり、浅い空間に取り付けられるべきである。しかし、サイクロンは一般に、この要件に適合しない。
【0009】
特許文献1に軸方向ガス出口を有するマルチセルサイクロンが記載されている。
【0010】
特許文献2および3には、ガスから固体を分離するための軸方向ガス出口を有するサイクロンセパレータの他の例が記載されている。これらの文献に記載されたサイクロンセパレータは浄化されたガスを排出するための軸方向ガス出口を有している。ガスが塵あるいはその他の固体とともに接線方向に排出されると分離が達成できない可能性がある。
【0011】
特許文献4に、サイクロンの代替方法が記載されている。ウォーム状部品と呼ばれるものが配設された流通管を有する分離装置が示されている。反時計回りのピッチを有するウォーム状部品が、各流路において時計回りのピッチを有するウォーム状部品の隣に配置されている。したがって、このウォーム状部品は、流路を通過する空気流を一方の方向に90度にねじり、次いでもう一方の方向に90度にねじるように配置されている。空気の回転を逆転させるのは、油滴を空気から分離し、より大きな粒子に合体させるためである。この粒子が、下流のセパレータおよびバッフルプレートによって分離される。
【0012】
特許文献4の装置には以下の欠点がある。環境によっては、時計回りウォーム状部品と反時計回りウォーム状部品の間に高速の空気流の反転を引き起こすことによって、オイルを分離するのではなくオイルを空気流に取り込まれたままにする傾向の乱流が生じる可能性がある。このウォーム状部品はまた、望ましくない圧力降下を引き起こす可能性がある。最後に、ウォーム状部品のような微細な形状の成形は難しい。
【0013】
前記の問題に対する別の解決策が特許文献5に提案されている。本文献には、ブローバイガスから油滴を分離する3段階セパレータが示されている。第1段階は、単にバッフルプレート付きのチャンバである予備セパレータである。第2段階は螺旋状の管であって、この螺旋状経路に空気を流して、その外側表面に油滴を衝突させる。第3段階は、フィルタ部品である。
【0014】
特許文献5の装置には、製造が複雑で、フィルタも必要であるという欠点がある。フィルタの使用は、フィルタの目詰まりが生じ、周期的な交換が必要になることから望ましくない。
【0015】
特許文献6には分離用サイクロンチャンバ内に屑が入る前に屑を集積させるために用いられる一次回転チャンバを有するサイクロン装置が記載されている。この装置には大きな容量が必要で効率が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願第2003/0057151号公報
【特許文献2】米国特許第6110242号
【特許文献3】国際特許出願WO00/49933号公報
【特許文献4】欧州特許第1747054号
【特許文献5】米国特許第6860915号
【特許文献6】欧州特許第1767276号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、従来技術の前記の不利な点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によると、第2の流体の流れから前記第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を分離するための分離システムにおいて、
前記第2の流体の流れから前記第1の流体の粒子を分離するための分離チャンバと、
前記第2の流体の流れの中に混入された前記第1の流体の粒子を合体させるための複数の装置と、を備えるシステムであって、
前記装置がそれぞれ、
ハウジングと、
該ハウジングに形成され、第1の長手方向の軸を規定し、少なくとも1つの曲面壁を有し、該少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成された筐体と、
第1の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための、前記筐体への第1の入口と、
前記第1の位置から離隔された第2の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを排出可能とするための前記筐体からの出口と、を備え、
前記筐体が、前記第2の流体の流れに混入された前記第1の流体の粒子を合体させ、前記出口から排出するように、該流体の流れを、前記第1の入口と前記出口の間にある前記少なくとも1つの曲面壁に沿って方向付けるように構成され、
前記装置のそれぞれの出口が、前記流体の流れの中の合体した前記第1の流体の粒子を前記分離チャンバへ流入させて前記第2の流体から分離するために方向付けるように前記各装置が構成されている分離システムが提供されている。
【0019】
これにより、熱可塑性材料の射出成形によって比較的単純な形で製造でき、第2の流体から前記第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を合体してから分離するのに使用できるという利点がある。詳細には、この装置は、エアロゾル内に分散した小さな液体の粒子、特に1ミクロン程度の直径を有する小さな油滴を、内燃機関内のブローバイガス流から容易に除去できるより大きな粒子に合体させるのに使用することができる。
【0020】
前記装置は、油滴を筐体の少なくとも1つの湾曲した表面に付着させ、ガス流と共に出口への湾曲した表面に押しやるということが判明している。したがって、この出口は、ガス流と安定した大きな油滴の流れを発生させる。
【0021】
また、前記システムにより、そのシステムが整備を必要としない、すなわちフィルタを交換しなくてよいという利点がある。このシステムはまた、内燃機関で使用する場合に、クランクケースの過大な圧力の危険を最小限にするために、最小限の圧力降下を生じさせる。さらに、このシステムは、油滴を合体して分離するのにエンジンからの動力を必要としない。
【0022】
また、前記システムにより、様々なサイズと出力のエンジンに適合するように拡張可能であり、カムカバーおよび他のエンジン構成部品内に容易にパッケージ化することもできるという利点がある。
【0023】
第2の流体に混入された第1の流体の粒子を合体させるための、少なくとも1つの前記装置はさらに、
第3の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第2の入口を備え、
前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って前記筐体内に流入するすべての流体を排出するための前記筐体からの前記出口が、第2の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記第2の位置が前記第1の位置と第3の位置の間にあり、
前記筐体が、前記第2の流体の流れの中に混入された前記第1の流体の粒子を合体させ、前記出口から排出するように、流体の流れを、前記第1の入口と前記出口の間と前記第2の入口と前記出口の間とにある前記少なくとも1つの曲面壁に沿って方向付けるように構成されていてもよい。
【0024】
筐体への2つの入口と前記2つの入口の間に、筐体の長手方向の軸に沿って出口を設けることにより、空気を同一空間内で2つの湾曲した経路上に流すことができ、単一の筐体内で2倍の合体能力が得られるという利点がある。この構成は、射出成形からの製造が非常に単純であることから特に有利である。また、出口が単一であることにより、その後の分離チャンバへの都合の良い非乱流のガス流がもたらされる。
【0025】
前記出口は、前記第1の入口と前記第2の入口の間にある中間点に前記第1の長手方向の軸に沿って配置されていてもよい。
【0026】
これにより、自動車エンジン部品の製造に共通して使用されている熱可塑性材料の射出成形による製造が単純であるという利点がある。また、中央の出口により、筐体に沿った空気流において乱流が低減されるという利点がある。
【0027】
前記少なくとも1つの曲面壁の一部分は実質的に円筒であってもよい。
【0028】
好ましい実施形態においては、前記部分を画成する前記円筒の直径は20ミリメートル未満である。
【0029】
このような小径にすることより、およそ1ミクロンという大きさまでの小さな固体または流体の粒子を空気流から除去するのに十分な湾曲した空気流を発生できるということが判明している。
【0030】
上記の各装置は、積層された構成においてホルダ手段に取り付け可能となるように構成されていてもよい。
【0031】
これにより、前記システムは分離チャンバ内に設けられる装置の数を変化させることにより様々なサイズのエンジンに適合するように拡張あるいは縮小可能となる。
【0032】
前記少なくとも1つの装置の前記ハウジングに形成された前記筐体の少なくとも一方の端部は、開放構造で形成され、前記ホルダ手段の少なくとも1つの壁によって閉鎖されるように構成されていてもよい。
【0033】
これにより、製造、特に熱可塑性材料の射出成形が簡略化されるという利点がある。
【0034】
前記システムは、さらに、前記ホルダ手段に配設された付勢手段を備え、該付勢手段は前記少なくとも1つの装置を前記ホルダ手段の少なくとも1つの壁に対して付勢するように構成されていてもよい。
【0035】
これにより、密閉性が向上されるという利点がある。
【0036】
好ましい実施形態では、前記分離チャンバがさらに、
該分離チャンバに配置された流体出口と、
前記分離チャンバ内の前記第2の流体から分離された前記第1の流体の粒子が前記分離チャンバから排出可能となるように配置されたドレインと、を備える。
【0037】
前記分離チャンバは、第2の長手方向の軸と、少なくとも1つの第2の曲面壁と、を有し、前記第2の流体から前記第1の流体の粒子を少なくとも部分的に分離させるように、前記少なくとも1つの第2の曲面壁に沿って流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成されていてもよい。
【0038】
これにより、フィルタを使用せずに燃焼エンジンのブローバイガスからオイルを除去するのに特に効果的な装置が提供される。
【0039】
少なくとも1つの前記装置の出口は、前記少なくとも1つの第2の曲面壁の湾曲に整合するように輪郭形成されていてもよい。
【0040】
これにより、粒子は、輪郭形成された出口の縁部に沿って流れてから、分離チャンバの壁上へ直行する傾向を有し、その粒子が空気流に再び取り込まれる機会が最小限になるという利点がある。
【0041】
本発明の他の態様によれば、第2の流体の流れに混入された前記第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を合体させるための装置であって、
ハウジングと、
該ハウジングに形成され、第1の長手方向の軸を規定し、少なくとも1つの曲面壁を有し、該少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成された筐体と、
第1の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第1の入口と、
第2の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って前記筐体に流入するすべての流体を排出するための前記筐体からの出口と、
第3の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第2の入口と、を備え、前記第2の位置が前記第1の位置と第3の位置の間にあり、
前記筐体が、前記第2の流体の流れの中に混入された第1の流体の粒子を合体させ、前記出口から排出するように、前記第1の入口と前記出口の間と前記第2の入口と前記出口の間とにある前記少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを方向付けるように構成されている装置が提供されている。
【0042】
これにより、筐体への2つの入口と前記2つの入口の間に出口を筐体の長手方向の軸に沿って設けることによって、空気を同一空間内で2つの湾曲した経路上に流すことができ、単一の筐体内で2倍の合体能力が得られるという利点がある。この構成は、射出成形による製造が非常に単純であることから特に有利である。また、単一の出口は、その後の分離チャンバへの好適な非乱流の流体の流れを提供する。
【0043】
前記出口は、前記第1の入口と前記第2の入口の間にある中間点に前記第1の長手方向の軸に沿って位置されていてもよい。
【0044】
前記少なくとも1つの曲面壁の一部分は実質的に円筒であってもよい。
【0045】
前記部分を画成する前記円筒の直径は20ミリメートル未満であってもよい。
【0046】
前記装置の前記ハウジングに形成された前記筐体の少なくとも一方の端部は、開放構造で形成され、ホルダ手段の少なくとも1つの壁によって閉鎖されるように構成されていてもよい。
【0047】
前記装置の前記出口は分離チャンバの壁の湾曲に整合するように輪郭形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照して説明する。この実施形態は単に例として説明するのであって、限定的な意味はない。
【図1】従来技術のオイルセパレータを備える内燃機関のシリンダの断面図である。
【図2】従来技術のサイクロンオイルセパレータの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の分離システムの、第2の流体の流れに混入された第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を合体させるための複数の装置の部分断面斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の分離システムの、第2の流体の流れに混入された第1の流体の粒子を合体させるための装置の部分断面斜視図である。
【図5】図4の複数の装置を備える、第2の流体の流れに混入された第1の流体の粒子を分離するための分離システムの分解斜視図である。
【図6】図5に対応する組立斜視図である。
【図7】図6に対応する背面図である。
【図8】ホルダ手段に組み込まれ、付勢手段によって付勢されている、図4の第2の流体の流れに混入された第1の流体の粒子を合体させるための装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図3に示すように、第2の流体の流れに混入された第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を分離するための分離システムは、ハウジング102をそれぞれ有する複数の装置100を備えている。積層構造に組み立てられた前記装置が示されており、視認性のため左上の装置の内部部品のみが示されている。
【0050】
ここで説明される合体/分離装置は第2の流体の流れから第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体を合体および分離させることを目的としてものである。例えば、この装置は、空気流に含まれるオイルの粒子を合体させて、空気流からオイルを分離させるために用いられる。
【0051】
装置100は、ホルダ手段252(図5〜8)内に配設されるように構成され、各装置は、ハウジング102内に形成された筐体104を備えている。筐体は、第1の長手方向の軸A−Aを規定し、流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成された少なくとも1つの曲面壁106を有している。曲面壁106の接線に実質的に沿って流体を導入可能とするための筐体104への第1の入口108が、第1の位置に第1の長手方向の軸に沿って設けられている。筐体104内に流入したすべての流体を曲面壁106の接線に実質的に沿って排出可能とするための筐体からの出口110が、第2の位置に第1の長手方向の軸A−Aに沿って設けられている。出口110は筐体からの唯一の出口であるため、筐体内に流入したすべての流体が出口110から排出される必要がある。
【0052】
筐体104は、流体の流れを、矢印で示されているように第1の入口108と出口110の間の曲面壁106に沿ってほぼ螺旋状の経路に方向付けるように構成され、より密度の低い流体の流れの中にある流体の粒子を合体させ、出口から排出する。例えば、遠心力によって粒子が曲面壁106に衝突し、そこで合体してもよい。次いで、その粒子は流体によって出口110まで運ばれ、より大きな合体粒子の流れが流体と共に排出される。
【0053】
図示されている実施形態では、曲面壁106は円筒を画成する。好ましい実施形態では、この円筒は20mm以下の直径を有する。この直径は、自動車エンジンへ組み込みできる程度に小さく、自動車エンジン部品の形成に通常使用されている熱可塑性材料の射出成形から形成できる程度に十分大きいと同時に、およそ1ミクロン以下のサイズを有するオイル粒子を内燃機関のブローバイガスから分離するのに特に適しているということが判明している。
【0054】
円筒形ではなくその他の筐体の形状も可能である。例えば、筐体は、第1の入口108と出口110の間の形状が円錐であってもよい。あるいは、筐体は、合体させる粒子の性質に応じて、楕円形または不規則な断面を有することもできる。筐体は、様々な曲率を有する各種断面の壁を有してもよい。
【0055】
ガス中に分散した液体のような第2の流体に流入する第1の流体の粒子を合体させるための装置の第2の実施形態が、図4に示されている。図3の実施形態に共通の部品は、同じ番号に100を加えた参照番号で示されている。
【0056】
装置200が、少なくとも1つの曲面壁206を有する筐体204を画成するハウジング202を備えている。筐体204は、長手方向の軸A−Aを規定し、第1の位置に長手方向の軸に沿って設けられた第1の入口208と、第2の位置に長手方向の軸に沿って設けられた出口210と、第3の位置に長手方向の軸に沿って設けられた第2の入口212とを備えている。入口208および212により、前記少なくとも1つの曲面壁206の接線にほぼ沿って流体の流れが導入可能となり、出口210により、曲面壁206の接線で流体が排出可能となる。出口210は筐体からの唯一の出口であるため、筐体内に流入したすべての流体が出口210から排出される必要がある。
【0057】
筐体204は、流体の流れを、第1の入口208と出口210の間と第2の入口212と出口210の間の曲面壁206に沿って螺旋状の経路に方向付けるように構成され、より密度の高い第2の流体の流れの中に分散された第1の流体の粒子を合体させ、出口から排出する。例えば、オイル粒子が、曲面壁206に衝突し、次いで大きな液滴および空気流からなる流れの中で曲面壁に沿って運ばれ、出口210から排出される。図4の実施形態と図3の実施形態との違いは、図4実施形態では2本の螺旋状のガス流が可能である点である。
【0058】
2つの入口208、212と共通の出口210を有することによって、2つの空気流を分離する中心の壁の必要がなくなり、好適な非乱流の空気流が出口210から排出されるということが判明している。あるいは、中心の壁を必要に応じて設けてもよい。この構成においても射出成形による製造が特に容易である。
【0059】
次に、図5〜8を参照して、第2の流体の流れから第2の流体よりも密度の高い第1の流体の粒子を分離するためのシステムについて説明する。図5に示されているシステムは図4の実施形態の装置を使用するが、図3に示されている装置もまた、図5〜8に示されているシステムで使用することができる。
【0060】
分離システム250が、ホルダ手段252および分離チャンバ254を備えている。分離チャンバ254用の蓋256が設けられている。分離チャンバ254はフィルタレスであることが好ましい。複数の装置200がホルダ手段252内に配設されているように構成されている。この構成においては、前記装置の出口210が、分離チャンバ254に入るガス流中の合体した固体または液体の粒子を方向付けるようになっている。例えば、装置200をホルダ手段252内に保持するために、弾性手段(図示せず)を設けてもよい。あるいは、接着剤または溶接を使用することもできる。
【0061】
したがって、流体は、各装置200の入口208、212に入り、出口210から出て分離チャンバ254に入ることができる。分離チャンバ254は、蓋256に配設されたガス出口258と、分離チャンバ内で第2の流体から分離された第1の流体の粒子が分離チャンバ254から排出可能とするように構成されたドレイン260とを備える。分離チャンバはまた、流体の粒子をそれに衝突させることによって簡単に分離できるように、バッフル(図示せず)を備えてもよい。粒子はまた、分離チャンバ254内で重力を受けて分離されてもよい。
【0062】
図示されている実施形態では、分離チャンバ254は、少なくとも1つの第2の曲面壁262と、ドレイン260およびガス出口258を貫いて全般に垂直に延びる第2の長手方向の軸B−Bと、を備えている。第2の曲面壁262により、流体を湾曲した経路上に流して、密度の低い流体中に分散した流体の粒子を遠心力によって外向きに移動させ、ガス流から分離させることが可能となる。図面に示されている例では、分離チャンバはサイクロン分離を用い、ガス流が第2の曲面壁262に沿って流れ、粒子が遠心力または重力によって分離し、ドレイン260から排出される一方、浄化されたガスが上向きに渦を巻き、出口258から排出される。
【0063】
次に、図5〜7に示されている装置の動作について、オイル粒子を内燃機関のブローバイガスから分離する際の用例を具体的に引用することによって説明する。ブローバイガスは、内燃機関のシリンダ内における空気/燃料混合物の燃焼生成物である。このようなガスは、ピストン6(図1)を超えてクランクケース2(図1)内に漏れる可能性がある。ブローバイガスは、ピストンリング、クランクベアリングおよびクランクからの風より多数のオイル粒子を捕集する。このようなオイル粒子は、一般に大きなオイル飛沫からミクロン以下の直径を有する液滴まで大きさが様々である。
【0064】
図5および6を参照すると、オイル粒子が取り込まれたブローバイガスは、入口208、212に送られ、曲面壁206によって湾曲した経路上を移動させられる。この湾曲した経路は、図4の矢印で示されているように、全般に螺旋状であってもよい。遠心力は、より大きなオイル粒子を、筐体204の曲面壁206上に収集させる傾向がある。その後、空気流がオイルを出口210へ引き込み、そこでオイルは大きな液滴の流れとなって出ていく。したがって、出口210から排出されるオイルは合体してより大きな粒子になっている。
【0065】
なお、図5に示すように、装置200の出口210は、第2の曲面壁262の湾曲に整合するように輪郭形成されている。その結果、大きな合体油滴は輪郭形成された出口の縁部に沿って流れてから、分離チャンバ254の壁上へ直行する傾向がある。その後、空気流が曲面壁262の周囲を移動し、オイルをサイクロン式に分離する。オイルはドレイン260から排出される一方、清浄な空気が上向きに渦を巻きガス出口258から排出される。その結果、分離チャンバ254は、圧力降下が小さい低速の大型サイクロンの形で機能する。
【0066】
前記装置は、装置200の数を変更することによって、様々なサイズのエンジンで使用することができる。なお、図5〜8に示されている実施形態においては、図4の2つの入口を備える装置構成を使用している。しかし、図3の単一の入口/出口を備える構成も使用することができる。
【0067】
図8には、ホルダ手段252に組み込まれた3つの装置200が図示されている。図4の例では、筐体204の両端が開放構造で形成されている。しかし、図8の例では、各装置200の一方の端部200aが、熱可塑性材料からなる閉鎖部分で形成されている。対向する端部200bは、図4に示されているように開放されている。弾性を有するタブ270などの付勢手段がホルダ手段252に形成され、装置200の閉端部200aを押して、開端部200bをホルダ252の壁253に対して付勢し、シールを形成する。この構成により、追加の封止材または溶接を用いずに、両端にほぼ漏れが無いシールが確保され、従来通りに通常の製造交差が許容されている。
【0068】
したがって、システム250に組み込まれる装置100または200の組合せにより、理想的なオイルセパレータの以下の要件が満たされている。
i)ブローバイガス内のおよそ1ミクロンの大きさのオイル粒子を分離する。
ii)整備の必要がない。すなわちフィルタを交換しなくてよい。
iii)クランクケースの圧力が過大になる可能性を最小限にするために、最小限の圧力降下を生じさせる。
iv)分離を行うのにエンジンからの動力を必要としない。
v)エンジン開発時間とコストを最小限にするために、性能が予想可能である。
vi)様々な大きさおよび出力を有するエンジンを適合させるのに適している。すなわち、装置100または200をいくつかホルダ手段252に組み込んで、様々なエンジンサイズおよび出力に適合させることができる。
vii)カムカバーおよびその他のエンジン構成部品に簡単にパッケージ化することができる。
viii)エンジン構成部品に使用されている典型的な熱可塑性材料で製造することが容易である。
【0069】
上述の実施形態は単に例として説明したのであって、限定的な意味はなく、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な改造および変更形態が可能であることが当分野の技術者には理解されよう。例えば、前記装置は、任意のタイプのガス内に分散した任意のタイプの固体または液体の粒子で使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 装置
102 ハウジング
104 筐体
106 曲面壁
108 第1の入口
110 出口
200 装置
202 ハウジング
204 筐体
206 曲面壁
208 第1の入口
210 出口
212 第2の入口
250 分離システム
252 ホルダ手段
253 ホルダ252の壁
254 分離チャンバ
256 蓋
258 ガス出口
260 ドレイン
262 第2の曲面壁
270 タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の流体から前記第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を分離するための分離システムにおいて、
前記第2の流体の流れから前記第1の流体の粒子を分離するための分離チャンバと、
前記第2の流体の流れの中に混入された前記第1の流体の粒子を合体させるための複数の装置と、を備えるシステムであって、
前記装置がそれぞれ、
ハウジングと、
該ハウジングに形成され、第1の長手方向の軸を規定し、少なくとも1つの曲面壁を有し、該少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成された筐体と、
第1の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第1の入口と、
前記第1の位置から離隔された第2の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられた、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れが排出可能とするための前記筐体からの出口と、を備え、
前記筐体が、前記第2の流体の流れに混入された前記第1の流体の粒子を合体させ、前記出口から排出するように、前記第1の入口と前記出口の間にある前記少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを方向付けるように構成され、
前記各装置のそれぞれの出口が、前記流体の流れの中の合体した前記第1の流体の粒子を前記分離チャンバへ流入させて前記第2の流体から分離するために方向付けるように前記各装置が構成されている、分離システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記第2の流体の流れの中に混入された前記第1の流体の粒子を合体させるための少なくとも1つの前記装置がさらに、
第3の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第2の入口を備え、
前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って前記筐体内に流入するすべての流体を排出するための前記筐体からの前記出口が、第2の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記第2の位置が前記第1の位置と第3の位置の間にあり、
前記筐体が、前記第2の流体の流れの中に混入された前記第1の流体の粒子を合体させ、前記出口から排出するように、前記第1の入口と前記出口の間と前記第2の入口と前記出口の間とにある前記少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを方向付けるように構成されているシステム。
【請求項3】
前記出口が、前記第1の入口と前記第2の入口の間にある中間点に前記第1の長手方向の軸に沿って位置されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの曲面壁の一部分が実質的に円筒である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記一部分を画成する前記円筒の直径が20ミリメートル未満である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記各装置は、積層された構成においてホルダ手段に取り付け可能となるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの装置の前記ハウジングに形成された前記筐体の少なくとも一方の端部は、開放構造で形成され、前記ホルダ手段の少なくとも1つの壁によって閉鎖されるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
さらに、前記ホルダ手段に配設された付勢手段を備え、該付勢手段は、前記少なくとも1つの装置を前記ホルダ手段の少なくとも1つの壁に対して付勢するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記分離チャンバがさらに、
該分離チャンバに配置された流体出口と、
前記分離チャンバ内の前記第2の流体から分離された前記第1の流体の粒子が前記分離チャンバから排出可能となるように配置されたドレインと、を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記分離チャンバが、第2の長手方向の軸と、少なくとも1つの第2の曲面壁と、を有し、前記第2の流体から前記第1の流体の粒子を少なくとも部分的に分離させるように、前記少なくとも1つの第2の曲面壁に沿って流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの装置の出口が、前記少なくとも1つの第2の曲面壁の湾曲に整合するように輪郭形成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
第2の流体の流れの中に混入された前記第2の流体よりも高い密度を有する第1の流体の粒子を合体させるための装置であって、
ハウジングと、
該ハウジングに形成され、第1の長手方向の軸を規定し、少なくとも1つの曲面壁を有し、該少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを湾曲した経路に方向付けるように構成された筐体と、
第1の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第1の入口と、
第2の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って前記筐体に流入するすべての流体を排出するための前記筐体からの出口と、
第3の位置に前記第1の長手方向の軸に沿って設けられ、前記少なくとも1つの曲面壁の接線に実質的に沿って流体の流れを導入可能とするための前記筐体への第2の入口と、を備え、前記第2の位置が前記第1の位置と第3の位置の間にあり、
前記筐体が、前記第2の流体内に混入された前記第1の流体の粒子を合体させ、前記出口から排出するように、前記第1の入口と前記出口の間と前記第2の入口と前記出口の間とにある前記少なくとも1つの曲面壁に沿って流体の流れを方向付けるように構成されている、装置。
【請求項13】
前記出口が、前記第1の入口と前記第2の入口の間にある中間点に前記第1の長手方向の軸に沿って位置されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの曲面壁の一部分が実質的に円筒である、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記一部分を画成する前記円筒の直径が20ミリメートル未満である、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記装置の前記ハウジングに形成された前記筐体の少なくとも一方の端部は、開放構造で形成され、ホルダ手段の少なくとも1つの壁によって閉鎖されるように構成されている、請求項12から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記装置の前記出口は分離チャンバの壁の湾曲に整合するように輪郭形成されている、請求項12から16のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−512102(P2013−512102A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541509(P2012−541509)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068740
【国際公開番号】WO2011/067336
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512143224)ニフコ ユーケー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】