説明

第4級アンモニウム化合物の製造方法

第4級アンモニウム化合物を製造するための本発明の方法は、1個のsp3混成窒素原子を含む化合物と、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルを反応させた後、得られたアンモニウム化合物をイオン交換に付すことを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第4級アンモニウム化合物の製造方法であって、1個のsp3混成窒素原子を含む化合物と、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルを反応させた後、得られたアンモニウム化合物をアニオン交換に付すことを含む、上記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第4級アンモニウム化合物は、様々な用途のために大量に用いられている。従って、少なくとも1つの長いアルキル鎖を有する第4級アンモニウム化合物は、界面活性を呈示し、例えば、湿潤剤、帯電防止剤などのカチオン界面活性剤として用いられている。主として、短鎖第4級アンモニウム化合物は、殺菌性を有するため、真菌および細菌の殺菌剤として用いられている。有機合成においては、第4級アンモニウム化合物は、相間移動触媒として用いられる。上記の他にも、個々の具体的第4級アンモニウム化合物について多様な工業的用途がある。第4級アンモニウム化合物イオンと、低温(<100℃)で液体の好適なアニオンとから製造された塩は、現在イオン性液体として一層広範に用いられてきている。
【0003】
電子製品の小型化が進み、性能がさらに優れ、しかも集積度がさらに高いマイクロチップの供給が求められている。これらは、高純度シリコンウエハーからしか製造することができず、該ウエハーの不純物含量は、一般に多くても10 ppbまでの範囲であり、これよりはるかに低い場合もある。このような電子製品の製造は、エッチングおよび洗浄のような処理工程を含み、該工程では、半導体を各種化学薬品で処理する。例えば、高純度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、シリコンウエハー裏面のエッチングのためや、フォトレジストの展開剤として用いられる。
【0004】
ラージスケール集積回路の生産における重要な問題は、用いた化学薬品に存在する無機または有機化合物による半導体表面の汚染である。このために、半導体素子と接触する試薬はすべて、極めて高純度要件(例えば、イオン不純物の含量はごく僅かであること)を満たさなければならない。上記溶液は、総金属含量が、個々の金属種について5ppb以下、場合によっては10ppb以下であるのが好ましい。特定のアニオンによる汚染は、腐敗作用または複合金属イオンのいずれかを有し、意図する半導体のドーピングを変質させる恐れがあるため、防止しなければならない。このようなアニオンの総含量は一般に1ppbを超えてはならない。
【0005】
このため、実質的に不要な有機化合物を含まない高純度の水酸化テトラメチルアンモニウムが求められる。
【0006】
第4級アンモニウム化合物、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムの溶液から不要な不純物を除去する方法は周知であるが、一般に複雑であり、従って費用もかかる。そのため、不要な有機不純物を実質的に含まない第4級アンモニウム化合物の経済的な生産に好適な方法が求められる。
【0007】
硫酸アルキルを用いてアミンをアルキル化することができるのは周知であるが、一般に、硫酸アルキルの1個のアルキル基だけを用いるため、対応するモノアルキル硫酸塩が得られる。従って、米国特許第3,366,663号には、硫酸ジアルキル、例えば、硫酸ジメチルをトリアルキルアミンと反応させる、テトラメチルアンモニウムアルキルスルフェートの製造方法が記載されている。
【0008】
欧州特許出願第1,182,196号には、カチオンのベースとなっているアミン、ホスフィン、イミダゾール、ピリジン、トリアゾールもしくはピラゾールを硫酸ジアルキルによりアルキル化して、対応するモノアルキル硫酸塩アニオンの塩を取得した後、これらを金属塩とのアニオン交換に付す。
【0009】
WO 02/12179には、ヒドロキシ基を有する化合物の硫酸化方法が記載されている。ここで、第3アミンとジオルガニル硫酸塩から形成したモノオルガニル硫酸アンモニウムを硫酸化剤として用いている。
【0010】
J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1992, pp. 965-967, J. S. WilkesおよびM. J. Zaworotkoには、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンをベースとするイオン性液体が記載されている。ヨウ化化合物から出発して、対応する銀塩とのアニオン交換により、さらなるアニオン、例えば、その一水化物の形態の硫酸塩を製造することができる。
【0011】
WO 03/074494は、式[R’-O-SO3]-または[R’-SO3]-のアニオンをベースとする、ハロゲン非含有イオン性液体(上記式中、R’は、一般式R5-[X(-CH2-)n]mの基であり、その際、nは1〜12、mは1〜400、Xは酸素、イオウもしくは一般式-O-Si(CH3)2-O-、-O-Si(CH2CH3)2-O-、-O-Si(OCH3)2-O-もしくは-O-Si(O-CH2CH3)2-O-の基であり、また、R5は随意に官能基化したアルキル基である)を記載している。これらは、ピリジン-SO3 複合体と、R’-OHのエーテルから製造する。
【0012】
ベルギー国特許BE 750 372は、多塩基酸の非荷電第4級アンモニウム塩の製造方法であって、多塩基酸の酸性エステルの第4級アンモニウム塩、例えば、アルキル硫酸テトラアルキルアンモニウムを加水分解した後、水酸化アルカリ金属で処理する、上記方法を記載している。
【0013】
日本国特許出願第126465号は、テトラアルキルアンモニウム塩の製造方法であって、アルキル硫酸テトラアルキルアンモニウム、例えば、エチル硫酸テトラエチルアンモニウムを、OH-アニオンを含むアニオン交換樹脂で処理し、得られた水酸化テトラアルキルアンモニウムを酸で中和する、上記方法を記載している。
【0014】
DE-A-15 43 747(米国特許第3,371,117号)には、硫酸ジアルキルエステルとトリアルキルアミンからビス第4級アンモニウム塩を直接製造する方法が記載され、この方法では、硫酸ジアルキルエステルとトリアルキルアミンを、0〜400℃の温度で、かつ、アミンの蒸発を阻止するのに十分な圧力で反応させる。硫酸エステルの加水分解は高温で起こるため、この文献では、二段階で反応を実施することを教示しており、その際、最初に硫酸エステルの1つのアルキル基が約0〜50℃の範囲の低温でアルキル化に参加し、次に第2のアルキル基が約50〜400℃の範囲の高温で第2工程に参加する。
【0015】
公開されていないドイツ国特許出願番号10 2004 010 662.2には、第4級sp2-混成窒素原子を有するカチオンを含むイオン化合物の製造方法であって、二重結合窒素原子を含む化合物を高温で硫酸ジアルキルと反応させるが、その際、硫酸ジアルキルの両アルキル基を反応に参加させ、必要であれば、得られた硫酸塩アニオン含有イオン化合物をアニオン交換に付す、上記方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、第4級アンモニウム化合物を製造する単純な、従って経済的な方法を提供することである。特に、この方法は、不要な有機不純物を実質的に含まない、高純度の第4級アンモニウム化合物、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムを製造する上で適していると考えられる。特に、この方法で得られた第4級アンモニウム化合物は、ハロゲン、特に塩化物、臭化物、およびヨウ化物を含まない。
【0017】
驚くべきことに、少なくとも1個のsp3-混成窒素原子を含むアミン化合物と、硫酸ジアルキルを反応させることにより、アニオン成分として硫酸塩アニオンを含む第4級アンモニウム化合物を取得した後、硫酸塩アニオンを別のアニオンで置換することを含む方法により、上記目的が達成されることがみいだされた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、以下の工程:
a)少なくとも1個のsp3-混成窒素原子を含むアミン化合物と、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルを反応させることにより、少なくともいくつかの多価アニオンを有する第4級アンモニウム化合物を取得する工程;および
b)工程a)で得た第4級アンモニウム化合物をアニオン交換に付す工程;
を含む、第4級アンモニウム化合物の製造方法を提供する。
【0019】
意外にも、少なくとも1つのsp3-混成窒素原子を含むアミン化合物は、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルにより有利に4級化できることがわかった。少なくとも部分的に多価アニオンを有する、好ましくは多価アニオンだけを有する第4級アンモニウム化合物をこの方法で取得することができる。この方法の第1の好ましい実施形態では、工程a)で、アミン化合物を硫酸ジアルキルと反応させるが、その際、硫酸ジアルキルの両アルキル基を参加させることにより、硫酸塩アニオン(SO42-)を有する第4級アンモニウム化合物を取得する。この方法の第2の好ましい実施形態では、工程a)で、アミン化合物をリン酸トリアルキルと反応させるが、その際、リン酸トリアルキルの2または3個のアルキル基を参加させることにより、リン酸塩アニオン(PO43-)および/またはモノアルキルリン酸塩アニオン(RPO42-R=アルキル)を有する第4級アンモニウム化合物を取得する。
【0020】
このように、アニオン成分として、単一に陰電荷を帯びたアニオン(モノアルキル硫酸塩、ジアルキルリン酸塩)の代わりに、2重および/または3重に陰電荷を帯びたアニオンを有する第4級アンモニウム化合物が有利な様式で得られる。従って、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルのアルキル基当量を第1回および第2回で、効果的に使用することができ、こうして得られる、多価アニオンを有する化合物は、不要な不純物を含まない第4級アンモニウム化合物、特に、ハロゲン化物を含まない第4級アンモニウム化合物を製造する上で優れた中間体である。加水分解は、従来の技術では硫酸ジアルキルによる二重アルキル化の問題点として記載されているが、本発明の方法ではこのようなことが認められないため有利である。従って、複雑な精製工程の使用は一般に必要ない。
【0021】
本発明を説明する目的で用いる「アルキル」という表現は、直鎖および分枝アルキル基を包含する。好ましくは、直鎖または分枝C1-C20-アルキル、好ましくはC1-C10-アルキル基、特に好ましくはC1-C8-アルキル基、ならびに非常に好ましくはC1-C4-アルキル基である。アルキル基の例として、特に以下のものが挙げられる:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、第2ブチル、第3ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、ノニル、デシル。
【0022】
「アルキル」という表現は、一般に、1、2、3、4もしくは5個の置換基、好ましくは1、2もしくは3個の置換基、特に好ましくは1個の置換基を有する置換アルキル基も包含する。これらは、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘタリール、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト(スルフヒドリル、チオール)、アミノ、アルコキシカルボニル、アシル、ニトロ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、カルボン酸塩、チオエステルおよびスルホン酸塩の中から選択される。
【0023】
本発明の目的のために用いる「アルキレン」という表現は、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルカンジル基を意味する。
【0024】
本発明の目的のために用いる「シクロアルキル」という表現は、非置換および置換シクロアルキル基の両方を包含し、好ましくはC5-C8-シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルもしくはシクロヘプチルである。これらが置換されている場合、これらの基は一般に、1、2、3、4もしくは5個の置換基、好ましくは1、2もしくは3個の置換基を有するものでよい。これらの置換基は、例えば、アルキル、および置換アルキル基について上に挙げた置換基から選択される。
【0025】
本発明の目的のために用いる「ヘテロシクロアルキル」という表現は、一般に、4〜7個、好ましくは5または6個の環状原子を有する飽和脂環式基であって、その際、該環状炭素原子の1、2、3もしくは4個が、酸素、窒素およびイオウの元素から選択されるヘテロ原子で置換されている、上記飽和脂環式基を包含し、これらの基は随意に置換することができる。これらが置換されている場合には、これらのヘテロ脂環式基は、例えば、1、2もしくは3個の置換基を有するものでよい。これらの置換基は、例えば、アルキル、ならびに置換アルキル基について上に挙げた置換基の中から選択される。このようなヘテロ脂環式基の例を以下に挙げる:ピロリジニル、ピペリジニル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルフォリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル。
【0026】
本発明の目的のために用いる「アリール」という表現は、非置換および置換アリール基の両方を包含し、好ましくは、フェニル、トリル、キシル、メシチル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニルもしくはナフタセニル、特に好ましくはフェニルまたはナフチルを指す。これらが置換されている場合には、これらのアリール基は、一般に、1、2、3、4もしくは5個の置換基、好ましくは1、2もしくは3個の置換基を有するものでよい。これらの置換基は、例えば、アルキル、ならびに置換アルキル基について上に挙げた置換基の中から選択される。
【0027】
本発明の目的のために用いる「ヘタリール(hetaryl)」という表現は、非置換または置換のヘテロシクロ芳香族基を包含し、好ましくは、ピリジル、キノリニル、アクリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリル、プリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリルおよびカルバゾリルである。これらが置換されている場合には、これらヘテロシクロ芳香族基は、一般に、1、2もしくは3個の置換基を有するものでよい。これらの置換基は、例えば、アルキル、ならびに置換アルキル基について上に挙げた置換基の中から選択される。
【0028】
本発明の目的のために、カルボン酸塩およびスルホン酸塩は、好ましくは、カルボン酸官能基またはスルホン酸官能基の誘導体、特に、カルボン酸またはスルホン酸金属塩、カルボン酸エステルまたはスルホン酸エステル官能基、もしくはカルボキサミドまたはスルホンアミド官能基である。このような基として、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、第2ブタノールおよび第3ブタノールのようなC1-C4-アルカノールを含むエステルが挙げられる。
【0029】
表現:「アルキル」、「シクロアルキル」、「アリール」「ヘテロシクロアルキル」および「ヘタリール」についての以上の説明は、「アルコキシ」、「シクロアルコキシ」、「アリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」および「ヘタリールオキシ」の各表現にも同様に適用される。
【0030】
本発明の目的のために用いる「アシル」という表現は、一般に2〜11個、好ましくは2〜8個の炭素原子有するアルカノイルまたはアロイル基、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、2-エチルヘキサノイル、2-プロピルヘプタノイル、ベンゾイルもしくはナフトイル基を意味する。
【0031】
基NE1E2は、好ましくは、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N,N-ジプロピルアミノ、N,N-ジイソプロピルアミノ、N,N-ジ-n-ブチルアミノ、N,N-ジ-t-ブチルアミノ、N,N-ジシクロヘキシルアミノもしくはN,N-ジフェニルアミノである。
【0032】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素、塩素および臭素である。
【0033】
M+は、カチオン同価物、すなわち、一価カチオンまたは、単一の陽電荷に対応する多価カチオンの一部分である。カチオンM+は単に、COO-またはスルホン酸基のような陰電荷を帯びた置換基の電荷と釣合いを取るための対イオンとして働くにすぎない。従って、アルカリ金属イオン、特にNa+、K+、Li+イオン、もしくはオニウムイオン、例えば、アンモニウム、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、ホスホニウム、テトラアルキルホスホニウムもしくはテトラアリールホスホニウムイオンを使用するのが好ましい。
【0034】
アンモニウム基のような陽電荷を帯びた置換基の対イオンとして働くだけのアニオン同価物A-にも同様のことが言える。これは、随意に、一価アニオン、および単一の陰電荷に対応する多価アニオンの一部分から選択することができ、一般に、ハロゲン化物以外のアニオンが好ましい。
【0035】
本発明の目的のために用いる用語「多環式化合物」は、広義には、環がどのように結合されているかには関係なく、少なくとも2つの環を含む化合物を包含する。これらの環は、炭素環および/または複素環でよい。環は、単一または二重結合による結合(「多核化合物」)、縮合による結合(「縮合環系」)もしくは橋かけ(「橋かけ環系」、「ケージ化合物」)のいずれでもよい。縮合環系は、縮合により結合した(縮合)芳香族、ヒドロ芳香族、ならびに環式化合物でよい。縮合環系は、2個、3個またはそれ以上の環を有する。環が結合される方法に応じて、縮合環系の場合、オルト縮合(各環が1つの末端を共有する、すなわち、2つの原子が各々隣接する環を有する)と、ペリ縮合(炭素原子が2つ以上の環に属する)を区別する。架橋環系には、本発明の目的のために、多核環系および縮合環系に属さないもので、少なくとも2つの環状原子が少なくとも2つの異なる環に属する環系が含まれる。橋かけ環系の場合には、開鎖化合物を得るのに慣例的に必要な開環反応の数に応じて、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ化合物(それぞれ、2、3、4個の環を有する)などと区別する。架橋環系は、所望であれば、サイズに応じて、1、2、3個または3個以上の縮合環をさらに含んでもよい。
【0036】
本発明の方法は、式Iのイオン化合物を製造する上で遍く適している:
bBm+xXn- (I)
(式中、
Bm+は、第4級sp3-混成窒素原子を有するm価のカチオンであり、
Xn-は、n価のアニオンであり、
bおよびxは、(b×m)=(x×n)の条件で、≧1の整数である)。
【0037】
このタイプの化合物として、式B+X-、Bm+Xm-、nB+Xn-およびBm+mX-(式中、nは≧1の整数)の化合物が挙げられる。
【0038】
アニオン成分Xn-は、Cl-、Br-、I-、ならびにモノアルキル硫酸塩およびモノアルキルリン酸塩以外のアニオンであるのが好ましい。アニオンXn-は、以下に挙げるものの中から選択するのが好ましい:水酸化物(OH-)、硫酸塩(SO42-)、硫酸水素(HSO4-)、亜硝酸塩(NO2-)、硝酸塩(NO3-)、シアン化物(CN-)、シアン酸塩(OCN-)、イソシアン酸塩(NCO-)、チオシアン酸塩(SCN-)、イソチオシアン酸塩(NCS-)、リン酸塩(PO43-)、リン酸水素(HPO42-)、リン酸二水素(H2PO4-)、第1亜リン酸塩(H2PO3-)、第2亜リン酸塩(HPO32-)、オルトホウ酸塩(BO33-)、メタホウ酸塩((BO2)33-)、ペンタホウ酸塩(B5O8-)、ペンタホウ酸塩水和物(B5H4O10-)、B5O6-、テトラフルオロホウ酸塩([BF4]-)、テトラクロロホウ酸塩([BCL4]-)、テトラフェニルホウ酸塩([B(C6H5)4]-)、ヘキサフルオロホウ酸塩([PF6]-)、ヘキサフルオロアンチモン酸塩([SbF6]-)、ヘキサフルオロヒ酸塩([AsF6]-)、テトラクロロアルミン酸塩([AlCl4]-)、テトラブロモアルミン酸塩([AlBr4]-)、トリクロロ亜鉛酸塩([ZnCl3]-)、ジクロロクプラート(I)および(II)、炭酸塩(CO32-)、炭酸水素(HCO3-)、ホタル石(F-)、トリオルガニルシラノレート(R´3SiO-)、フルオロスルホン酸塩(R’-COO)- 、スルホン酸塩(R’-SO3)-および [(R’-SO2)2N]-(式中、R’は、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)。R´は、炭素数1〜12の直鎖または分枝脂肪族または脂環式アルキル基か、あるいは、C5-C18-アリール、C5-C18-アリール-C1-C6-アルキルもしくはC1-C6-アルキル-C5-C18-アリール基(ハロゲン原子で置換していてもよい)であるのが好ましい。
【0039】
Xn-は、OH-であるのが特に好ましい。
【0040】
工程a)で用いることのできる、少なくとも1個のsp3-混成窒素原子を含むアミン化合物は、非環式または環式化合物でよい。カチオン成分Bm+は、これらのアミンから4級化により得られる。
【0041】
好適なアミン化合物は、少なくとも1個の第1、第2もしくは第3アミノ官能基を有する。これらは、一般式NR1R2R3の化合物から選択するのが好ましく、上記式中、R1、R2およびR3は、互いに独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘタリールから選択されるが、基R1、R2およびR3の少なくとも2つは、これらが結合するN原子と一緒に、多環式化合物の一部をなすこともできる。
【0042】
基R1、R2およびR3は、互いに独立に、水素、C1-C30-アルキル、C3-C8-シクロアルキル、C3-C8-ヘテロシクロアルキル、C1-C14-アリールおよびC1-C14-ヘテロアリール基から選択する。
【0043】
基R1〜R3の少なくとも1つがアルキルの場合、C1-C20-アルキル基であるのが好ましく、これは、前記のように、1、2、3個もしくは3個以上の非隣接へテロ原子またはヘテロ原子含有基で置換されていても、および/またはこれらの基により分断されていてもよい。へテロ原子およびヘテロ原子含有基は、O、S、NR4およびPR5から選択するのが好ましく、該式中、R4およびR5は各々、互いに独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、COORa、COO-M+、SO3Ra、SO3-M+、スルホンアミド、NE1E2、(NE1E2E3)+A-、ORa、SRa、(CHRbCH2O)yRa、(CH2O)yRa、(CH2CH2NE1)yRa、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、水素、ニトロ、アシルもしくはシアノから選択され、その際、
基Raは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルおよびヘタリールから選択される同じ、または異なる基であり、
E1、E2、E3は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘタリールから選択される同じ、または異なる基であり、
Rbは、水素、メチルもしくはエチルであり、
M+は、カチオンであり、
A-は、アニオンであり、
yは、1〜250の整数である。
【0044】
基R1〜R3の少なくとも1つが、置換されたアルキルの場合、置換基は、ヒドロキシ、メルカプト、エステルおよびチオエステルから選択するのが好ましい。
【0045】
好適な基R1〜R3として、例えば、水素、メチル、エチル、n-プロピル、第2プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、パルミチルおよびステアリルがある。別の好適な基R1〜R3としては、5、6および7員飽和、不飽和もしくは芳香族炭素環および複素環、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、トリル、キシリル、シクロヘプタニル、ナフチル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、ピロリジル、ピペリジル、ピリジルおよびピリミジルが挙げられる。
【0046】
第1アミノ官能基を有する好適なアミンとして、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、第2ブチルアミン、第3ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロペンチシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンおよびベンジルアミンが挙げられる。
【0047】
第1アミノ官能基を有し、かつその基R1〜R3の1つがOで分断されたアルキル基である、好適なアミン化合物としては、例えば、CH3-O-C2H4-NH2、C2H5-O-C2H4-NH2、CH3-O-C3H6-NH2、C2H5-O-C3H6-NH2、n-C4H9-O-C4H8-NH2、HO-C2H4-NH2、HO-C3H7-NH2およびHO-C4H8-NH2が挙げられる。
【0048】
第2アミノ官能基を有する好適なアミン化合物として、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−第2ブチルアミン、ジ−第3ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、およびジフェニルアミンが挙げられる。
【0049】
第2アミノ官能基を有し、かつその基R1〜R3の1つまたは2つがOで分断されたアルキル基である、好適なアミン化合物としては、例えば、(CH3-O-C2H4)2NH、(C2H5-O-C2H4)2NH2、(CH3-O-C3H6)2NH、(C2H5-O-C3H6)2NH、(n-C4H9-O-C4H8)2NH、(HO-C2H4)2NH、(HO-C3H6)2NH2および(HO-C4H8)2NH2が挙げられる。
【0050】
第3アミノ官能基を有する好適なアミン化合物として、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ(n-プロピル)アミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-ブチル)アミン、トリ(n-イソブチル)アミン、トリ(第3ブチル)アミンなどが挙げられる。
【0051】
第3アミノ官能基を有する別の好適なアミン化合物として、ジアルキルアリールアミン、好ましくはジ(C1-C4-)アルキルアリールアミンがあり、そのアルキル基および/またはアリール基をさらに置換したものでもよい。アリール基は好ましくはフェニルである。このようなアミン化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリン、ビス(4-N,N-ジメチルアミノ)フェニル)メチレン、4,4’-ビス(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0052】
第3アミノ官能基を有する別の好適なアミン化合物として、アルキルジアリールアミン、好ましくは(C1-C4-)アルキルジアリールアミンがあり、そのアルキル基および/またはアリール基をさらに置換したものでもよい。このようなアミン化合物として、例えば、ジフェニルメチルアミンおよびジフェニルエチルアミンが挙げられる。
【0053】
第3アミノ官能基を有するさらに別の好適なアミン化合物として、トリアリールアミンがあり、そのアリール基が置換されたもの、例えば、トリフェニルアミンでもよい。その他の好ましいアミンとして、トリシクロヘキシルアミンのようなトリシクロアルキルアミンが挙げられる。
【0054】
基R1、R2およびR3の少なくとも2つが、これらが結合するN原子と一緒に、多環式化合物の一部をなす場合には、結合するN原子と一緒に、随意に置換された5〜7員複素環を形成する基R1、R2およびR3が好ましく、該複素環は、O、S、NR4およびPR5(R4およびR5はすでに定義した通り)から選択される、1、2または3個以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有基を含む。好適な環状アミン化合物は、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジン、ならびにそれらの置換誘導体である。前記窒素含有複素環の好適な誘導体は、例えば、1個以上のC1-C6-アルキル置換基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、第2ブチルなどを有していてもよい。このような誘導体として、例えば、N-C1-C6-アルキル誘導体がある。
【0055】
また、結合するN原子と一緒に、二環式トリアルキレンアミンまたはトリアルキレンジアミン、例えば、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタンまたは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを形成する基R1、R2およびR3も好ましい。
【0056】
さらに別の好適なアミン化合物として、アルキレンジアミン、ジアルキレントリアミン、トリアルキレンテトラアミン、ならびにポリアルキレンポリアミン、例えば、オリゴアルキレンイミンまたはポリアルキレンイミンが挙げられ、特にオリゴエチレンイミンまたはポリエチレンイミン、特に2〜20個、好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜6個のエチレンイミン単位を有するオリゴエチレンイミンが好ましい。このタイプの好適な化合物として、特に、n-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1.6-ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびポリエチレンイミン、ならびにまた、少なくとも1個の第1または第2アミノ官能基を有する、それらのアルキル化生成物、例えば、3-(ジメチルアミノ)-n-プロピルアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、ならびにN,N,N’,N’-トリメチルジエチレントリアミンが挙げられる。エチレンジアミンも同様に好適である。
【0057】
別の好適なアミン化合物は、第1および第2アミンと酸化アルキレン、特に、酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンの反応生成物である。
【0058】
本発明の方法は、アミノアルコール、アミノメルカプタンおよびそのエステルから第4級アンモニウム化合物を製造するのに有利に用いることができる、これらのエステルは、無機酸、特に硫酸、およびリン酸のエステル、もしくはこれらエステルの誘導体である。従って、工程a)に用いるアミン化合物は、アミノ官能基の他に、ヒドロキシ基、メルカプト基、エステル基、チオエステル基、ならびにこれらの組合せの中から選択される少なくとも1つの置換基を有する。従って、本発明の方法により、アミノアルコール、アミノメルカプタンおよびそのエステルから第4級アンモニウム化合物を製造することが初めて可能になり、こうして得られた第4級アンモニウム化合物はCl-、Br-、I-を含まないと同時に、モノアルキル硫酸塩およびモノアルキルリン酸塩アニオンも含まない。
【0059】
好適なアミノアルコールとして、例えば、以下のものが挙げられる:2-アミノエタノール(=モノエタノールアミン)、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-3-フェニルプロパノール、2-アミノ-2メチル-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノイソブタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ブタノール、2-アミノ-3,3-ジメチルブタノール、1-アミノ-1-ペンタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、2-アミノ-1-ペンタノール、2-アミノ-4-メチル-1-ペンタノール、2-アミノ-3-メチル-1-ペンタノール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール、3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-アミノ-1,2-ジフェニルエタノール、2-アミノ-1,1-ジフェニルエタノール、2-アミノ-2-フェニルエタノール、2-アミノ-1-フェニルエタノール、2-(4-アミノフェニル)エタノール、2-(2-アミノフェニル)エタノール、1-(3-アミノフェニル)エタノール、2-アミノ-1-ヘキサノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、6-アミノ-2-メチル-2-ヘプタノール、N-メチルイソプロパノールアミン、N-エチルイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)メチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ジエチルアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)ジエチルアミン、1-エチルアミノブタン-2-オール、4-メチル-4-アミノペンタン-2-オール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-アミノ-2-インダノール、N-(2-ヒドロキシエチル)アニリン、アミノ糖(例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン)、4-アミノ-4,6-ジデソキシ-α-D-グルコピラノース、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、ならびにこれらの混合物。
【0060】
本発明の方法の具体的実施形態を用いて、N-(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアミン、具体的にはN-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアミン(ジメチルアミノエタノール)から、第4級アンモニウム化合物を製造する。N-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアミンの第4級アンモニウム化合物、すなわち、コリン(=(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド)およびその他の塩(コロリニウム塩)は、薬学、動物飼料産業、(栄養)補助食品などで広く用いられるようになっており、それに従い、ハロゲンを含まないコロリニウム塩の需要が高まっている。
【0061】
少なくとも1つのメルカプト基を有する好適なアミン化合物a)として、例えば、2-メルカプトエチルアミン、3-メルカプトプロピルアミン、4-メルカプトブチルアミン、N-(2-メルカプトエチル)メチルアミン、N-(2-メルカプトエチル)ジメチルアミンなどが挙げられる。
【0062】
別の好適なアミン化合物a)として、無機酸とアミノアルコールおよびアミノチオールのエステル、ならびにそれらの誘導体がある。これらは、特に、硫酸、リン酸とジメチルアミノエタノールのエステル、およびそれらの誘導体である。本発明の方法は従って、O-リン酸コリン(ホスホリルコリン)、O-硫酸コリン(スルフリルコリン)およびO-ホスファチジルコリン(レシチン)の製造に特に適している。前記化合物はすべて、ベタイン構築を有する。ホスホリルコリンは、物質の生物適合性を改善することから、コンタクトレンズのコーティングや、最新医療、例えば、インプラント、バイパス(冠動脈ステント)、カニューレなどに用いられる。さらに、前述した化合物およびそれらの誘導体は、食品産業、例えば、ベビーフードおよび(栄養)補助食品、ならびに化粧品にも用いられる。従って、非常に純度が高い、特にハロゲンを含まない形態の前記化合物を製造する方法が強く求められている。
【0063】
前記アミン化合物は個々に用いるのが好ましいが、どんな混合物の形態で用いてもよい。
【0064】
本発明に従う第4級sp3-混成窒素原子を有する少なくとも1つのカチオンを含むイオン化合物を製造するためには、第1の反応工程a)で、sp3-混成窒素原子を含む化合物を硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルと反応させ、少なくともいくつかの多価アニオンを有する第4級アンモニウム化合物を調製し、工程b)において、工程a)で得たイオン化合物をアニオン交換に付す。
【0065】
本発明によれば、工程a)における反応は、高温、すなわち、周囲温度より高い温度で実施する。工程a)での温度は、少なくとも40℃、特に好ましくは少なくとも80℃である。工程a)における反応は、好ましくは、>100〜220℃、特に好ましくは120〜220℃の温度で実施する。
【0066】
好ましい実施形態では、前述のように、最初に、アミン化合物を硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルと30℃以下の温度で接触させた後、得られた混合物を少なくとも40℃の温度に加熱することにより、反応をさらに進行させる。アミン化合物は、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルと20℃以下、特に10℃以下の温度で接触させるのが好ましい。アミン化合物は、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルと少しずつ接触させるのが好ましい。このために、アミンまたは硫酸ジアルキル/リン酸トリアルキルを反応容器に導入した後、他方の成分を少量ずつ添加することができる。両成分を液体、すなわち、水溶液の形態で用いるのが好ましい。本発明の目的のために、水溶液としては、水、および水と水混和性溶媒との混合物がある。
【0067】
工程a)における反応は、一般に過圧下で実施する。反応は、反応条件下、反応混合物の固有圧力下で実施するのが好ましい。揮発性アミンを用いる場合には、工程a)の反応中の圧力は、一般に少なくとも1.5バール、特に少なくとも2バールである。所望であれば、工程a)の反応中の圧力は、300バールまで可能である。好適な定格圧力反応器は当業者には周知であり、例えば、Ullmanns Enzyklopadie der technischen Chemie、第1巻、第3版、1951年、p. 769 ffに記載されている。一般に、本発明の方法には、オートクレーブ(攪拌設備および/または内部ライニングを備えていてもよい)を用いる。
【0068】
少なくとも1つの硫酸ジアルキルをアルキル化剤として用いる場合、アルキル化しようとするアミン化合物と硫酸ジアルキルのモル比は、好ましくは少なくとも2:1である。アミン化合物と硫酸ジアルキルのモル比は1.8:1〜10:1、特に2.05:1〜5:1、特に2.1:1〜3:1の範囲にあるのが特に好ましい。
【0069】
少なくとも1つのリン酸トリアルキルをアルキル化剤として用いる場合、アルキル化しようとするアミン化合物とリン酸トリアルキルのモル比は、好ましくは少なくとも2:1である。アミン化合物とリン酸トリアルキルのモル比は、3:1〜5:1の範囲にあるのが特に好ましい。
【0070】
硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルでアルキル化しようとする化合物の反応は、塊状で、または、好ましくは反応条件下で不活性の溶媒の存在下で実施することができる。好適な溶媒としては、例えば、水、水混和性溶媒、例えば、メタノールおよびエタノールのようなアルコール、ならびにこれらの混合物がある。水、または少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%の水を含む溶媒混合物を溶媒として用いるのが好ましい。
【0071】
工程a)で用いる硫酸ジアルキルは、硫酸ジC1-C10-アルキルであるのが好ましく、特に、以下に挙げるような硫酸ジC1-C10-アルキルである:硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル、硫酸ジイソプロピル、硫酸ジ-n-ブチル、硫酸ジイソブチル、硫酸ジ-第3ブチル、硫酸ジ-n-ペンチル、硫酸ジイソペンチル、硫酸ジネオペンチルならびに硫酸ジ-n-ヘキシル。特に、硫酸ジメチルおよび硫酸ジエチルを使用するのが好ましい。
【0072】
工程a)で用いるリン酸トリアルキルは、リン酸トリC1-C10-アルキルであるのが好ましく、特に、以下に挙げるようなリン酸トリC1-C6-アルキルである:リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ-n-プロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリ-n-ブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸トリ-第3ブチル、リン酸トリ-n-ペンチル、リン酸トリイソペンチル、リン酸トリネオペンチルならびにリン酸トリ-n-ヘキシル。特に、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルを使用するのが好ましい。
【0073】
所望であれば、工程a)での反応は、少なくとも1種の不活性ガスの存在下で実施することができる。好適な不活性ガスとして、例えば、窒素、ヘリウムおよびアルゴンが挙げられる。
【0074】
工程a)での反応は、連続的またはバッチ式のいずれで実施してもよい。
【0075】
当業者には周知の通常の方法により、工程a)で得た反応混合物から第4級アンモニウム塩を単離することができる。特に、工程b)の反応を、工程a)のアルキル化で用いたものとは異なる溶媒で実施しようとするとき、このような単離を実施する。工程a)の反応に溶媒を用いた場合、好ましくは、減圧下で、蒸発によりこの溶媒を除去することができる。得られたイオン化合物は非揮発性であるため、使用する圧力範囲は一般にあまり重要ではない。溶媒のほぼ完全な除去を所望する場合には、例えば、101〜10-5 Paの微真空または10-1〜10-5 Paの高度真空を用いることが可能である。圧力を形成するためには、液体ジェット真空ポンプ、回転弁および回転ピストン真空ポンプ、ダイアフラム真空ポンプ、拡散ポンプなど、通常の真空ポンプを用いることができる。また、溶媒の除去は、150℃以下、好ましくは100℃以下の高温で実施することも可能である。
【0076】
工程a)で得た反応混合物は、事前に単離せずに、工程b)の反応に用いるのが好ましい。
【0077】
工程b)のアニオン交換は、トランスプロトネーション(transprotonation)、金属塩との反応、イオン交換クロマトグラフィー、電解法、もしくはこれら方法の組合せにより実施することができる。
【0078】
第1の実施形態では、本発明の方法の工程a)で得た第4級アンモニウム化合物(少なくともいくつかの多価アニオンを有する)を、プロトン移動により、酸、好ましくは硫酸またはリン酸と反応させる。
【0079】
トランスプロトネーションを実施するためには、硫酸塩アニオンを有する第4級アンモニウム化合物を硫酸と反応させることにより、対応する硫酸水素(Xn- = HSO4-)を取得するのが好ましい。トランスプロトネーションは、100%濃度のH2SO4を用いて実施するのが好ましい。H2SO4とSO42-のモル比は、好ましくは≧1:1、例えば、1:1〜2:1の範囲にある。
【0080】
さらにまた、リン酸塩またはモノアルキルリン酸塩アニオンを有する第4級アンモニウム化合物をリン酸と反応させて、対応するリン酸水素(Xn- = HSO42-)および/またはリン酸二水素(Xn- = H2PO4-)を得ることにより、トランスプロトネーションを実施するのも好ましい。H3PO4と、置換しようとするアニオンとのモル比は、好ましくは≧1:1、例えば、1:1〜2:1の範囲にある。
【0081】
別の実施形態では、工程b)のアニオン交換は、金属塩との反応により実施する。この反応は、溶媒中で実施するのが好ましく、金属塩の金属と硫酸塩アニオンから形成される硫酸金属塩が該溶媒から結晶化する。アニオン交換の変種に前記硫酸水素を用いてもよい。金属塩のカチオンは、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、鉛もしくは銀イオンである。金属塩のアニオンは、前記アニオンXn-、特に、Cl-、Br-、I-、モノアルキル硫酸塩およびモノアルキルリン酸塩以外のアニオンから選択する。好適な方法では、金属塩の溶液を第4級アンモニウム化合物の溶液と接触させる。好適な溶媒として、例えば、水、水混和性溶媒、例えば、メタノールおよびエタノールのようなアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられる。反応温度は、−10〜100℃、特に0〜80℃の範囲にあるのが好ましい。
【0082】
別の実施形態では、工程b)でのアニオン交換を交換クロマトグラフィーにより実施する。当業者には周知であり、固相に固定化した少なくとも1つの塩基を含む塩基性イオン交換樹脂が原則としてこの目的に適している。これら塩基性イオン交換樹脂の固相は、例えば、ポリマーマトリックスを含む。このようなマトリックスとして、例えば、少なくとも1つの架橋モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、また、必要に応じて、コポリマー化した形態のコモノマーと一緒に、スチレンを含むマトリックスが挙げられる。また、少なくとも1つの(メタ)アクリレート、少なくとも1つの架橋モノマー、そして必要に応じて、別のコモノマーの重合により得られるポリアクリルマトリックスも好適である。好適なポリマーマトリックスとしてさらに、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ならびに、例えば、エピクロロヒドリンを用いたポリアミンの縮合により得られるポリアルキルアミン樹脂がある。
【0083】
固相に直接、またはスペーサー基を介して結合するアンカー基(その緩く結合した対イオンは、同じ符号の電荷を帯びたイオンで置換することができる)は、窒素含有基、好ましくは第3および第4アミノ基から選択するのが好ましい。
【0084】
好適な官能基として、例えば、以下のもの(塩基度が高い順に)が挙げられる:
-CH2N+(CH3)3 OH- 例:Duolite A 101
-CH2N+(CH3)2CH2CH2OH OH- 例:Duolite A 102
-CH2N(CH3)2 例:Amberlite IRA 67
-CH2NHCH3
-CH2NH2 例:Duolite A 365
強い塩基性および弱い塩基性イオン交換樹脂のいずれも本発明の方法に適しているが、OH形態の強い塩基性イオン交換樹脂の方が好ましい。弱い塩基性イオン交換樹脂のうち、第3アミノ基を有するものが好ましい。強い塩基性イオン交換樹脂は、一般に、アンカー基として第4アンモニウム基を有する。本発明の方法に適した市販のイオン交換樹脂として、例えば、Amberlyst(登録商標)A21(ジメチルアミノ−官能基化、弱い塩基性)およびAmberlyst(登録商標)A27(第4アンモニウム基、強い塩基性)ならびにAmbersep(登録商標)900 OH(強い塩基性)が挙げられる。イオン交換のためには、まず、イオン交換樹脂に所望のアニオンXn-を充填し、次に、硫酸塩アニオンまたはリン酸塩アニオン(もしくは硫酸水素アニオン、リン酸水素アニオンおよび/またはリン酸二水素アニオン)をベースとするイオン化合物と接触させる。
【0085】
別の実施形態では、工程b)でのアニオン交換を電解(電気透析)により実施する。イオン交換膜を有する電解槽の使用により、例えば、対応する塩からの塩基の調製が可能になる。アニオン交換に適した電気透析槽および膜、ならびにカチオンおよびアニオンの同時交換のための二極膜は周知であり、市販されている(例えば、FuMA-Tech St. Ingbert(ドイツ);Asahi Glass;PCA -Polymerchemie Altmeier GmbHおよびPCCell GmbH、Lebacher Strasse 60, D-66265, Heusweiler(ドイツ))。この実施形態でも、本発明の方法の工程a)で、多価の無腐食性アニオンを有する第4級アンモニウム化合物が形成されるため、用いる電解装置、特に電解膜の寿命に特に有利な影響がもたらされることがわかっている。
【0086】
アニオン交換に適した電解槽の第1群は、電極コンパートメントが互いに膜で仕切られている槽である。好適な膜として、例えば、ペルフルオロポリマーをベースとする膜がある。アニオン交換に適した別の好適な電解槽は、電極コンパートメントが互いに膜で仕切られていない槽である。このような電解槽の例として、例えば、黒鉛または黒鉛改変ポリマーからなる電極ディスクの二極層を含む「キャピラリーギャップセル(CGC)」が挙げられる。追加の電解質を必要としない「固体ポリマー電解質(SPE)槽」も好適である。
【0087】
水酸化第4アンモニウムを製造する方法の実施形態では、本発明の方法の工程a)により生成された硫酸塩アニオン、モノアルキルリン酸塩アニオンもしくはリン酸塩アニオンを含む第4級アンモニウム化合物を、例えば、電解により、対応する水酸化第4アンモニウムに変換することができる。所望であれば、電解アニオン交換の後、イオン交換クロマトグラフィーを実施してもよい。これによって、極めて低濃度の、もしくは検出限界を下回る不要なアニオンしか含まない高純度の第4級アンモニウム化合物を得えることが可能になる。
【0088】
本発明の方法により、Cl-、Br-、I-を含まないと同時に、モノアルキル硫酸塩アニオンおよびモノアルキルリン酸塩アニオンも含まない一般式:b Bm+ x Xn(I)の化合物を製造することが可能になる。ハロゲン化物イオンの残留含有率が極めて低い式Iの化合物を製造するために、工程a)およびb)における反応は、ハロゲン化物イオン、およびこれらを遊離する物質を排除して実施するのが好ましい。従って、ハロゲン化物イオンを実質的に含まない試薬、溶媒、不活性ガスなどを上記反応に用いることができる。このような物質は市販されており、当業者には周知である通常の精製方法により調製することもできる。このような方法として、例えば、吸着、濾過およびイオン交換方法が挙げられる。所望であれば、工程a)およびb)で用いる装置も、例えば、ハロゲン化物を含まない溶媒ですすぐことにより、使用前にハロゲン化物イオンを除去しておくこともできる。本発明の方法により、ハロゲン化物イオンの総含量は100 ppm以下、好ましくは10 ppm以下、特に1ppm以下である、一般式I(Xn-はOH-)の化合物を取得することが可能になる。さらに、モノアルキル硫酸塩アニオンの総含量が100 ppm以下、好ましくは10 ppm以下、特に1ppm以下である、化合物を得ることができる。
【0089】
本発明はさらに、高純度の水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液を調製する方法であって、いずれの場合も、水を用い、ハロゲン化物イオンを含む、またはそれらを遊離する化合物および物質の非存在下で、以下の工程を含む、上記方法を提供する:
a)トリアルキルアミン化合物を硫酸ジアルキルと反応させるが、その際、硫酸ジアルキルの両アルキル基を参加させることにより、高純度のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液を調製し、
b)工程a)で取得したテトラアルキルアンモニウム塩溶液を電解アニオン交換またはイオン交換クロマトグラフィーに付すことにより、硫酸塩アニオンを水酸化物イオンで置換する。
【0090】
前記方法では、トリメチルアミンを硫酸ジメチルと反応させて、高純度の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を調製するのが好ましい。
【0091】
さらに、本発明により、ハロゲン化物イオンの含量が100 ppb以下の高純度水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を電子工業において、電子製品の基板の処理、特に半導体製品の処理のために用いることができる。従って、水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液をシリコンウエハーのエッチングに有利に用いることができる。これらは、エッチング速度がケイ素の結晶方向に左右される異方性エッチングも可能である。ケイ素の除去に際し、個々の結晶面が横方向エッチングストッパーとして作用することができるため、高い構造的精度が達成される。
【0092】
本発明はさらに、電子製品の基板処理のための高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であって、ハロゲン化物イオンを100 ppb以上含まない該溶液を提供する。
【0093】
以下の非制限的実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0094】
実施例1:
a)水中での反応による硫酸N,N-ジメチルピペリジニウムの調製
滴下漏斗、還流冷却器および磁気攪拌機を備えた250 mlフラスコに、172.9 mlの蒸留水と31.7g(0.252モル)のN-メチルピペリジンを導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を30℃以下に維持しながら、15.1g(0.12モル)の硫酸ジメチルを添加した。続いて、オートクレーブ内の固有圧力下で反応混合物を120℃で6時間加熱した。このようにして得られた溶液を冷却後、工程b)または工程c)で直接用いた。
【0095】
b)水酸化バリウムとの反応による水酸化N,N-ジメチルピペリジニウムの調製
滴下漏斗を備えた500 mlの攪拌フラスコに、32.07g(0.1017モル)の水酸化バリウム(オクタヒドレート)と258.3gの水を導入し、混合物を40℃に加熱した。工程a)で調製した硫酸塩の水溶液38.5g(0.1017モル)を滴下漏斗から一滴ずつ30分にわたり添加した。添加開始直後に、硫酸バリウムの真っ白な微粉状の沈殿物が形成された。添加が完了した後、反応混合物を40℃でさらに7時間攪拌し、冷却した後、青色バンドフィルターを介した吸引により沈殿物を濾過した。これにより、274gの透明無色の水酸化N,N-ジメチルピペリジニウム溶液が得られた。0.1HClを用いた溶液の滴定は、水酸化物数8.45%を示したが、これは理論値の89%の収率に相当する。硫酸塩濃度は<1ppmであった。
【0096】
c)OH充填イオン交換樹脂での反応による水酸化N,N-ジメチルピペリジニウムの調製
工程a)で調製した水溶液の脱イオン水の希釈により取得できる、水酸化N,N-ジメチルピペリジニウムの10重量%濃度水溶液70gを、OH形態(充填:0.59 eq/l)の強塩基性イオン交換樹脂60 mlと混合し、混合物を室温で24時間振盪した。次に、イオン交換樹脂を濾過により除去した。これにより、約10重量%濃度の水酸化N,N-ジメチルピペリジニウム水溶液が得られた。硫酸塩の溶液の分析により、溶液基準で、硫酸塩含量<1ppmがわかった。
【0097】
実施例2:
a)硫酸テトラメチルアンモニウムの調製
滴下漏斗および磁気攪拌機を備えた250 mlフラスコに、100 mlの蒸留水と12.6g(0.1モル)の硫酸ジメチルを導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を20℃に維持しながら、50.0g(0.42モル)のトリメチルアミン(濃度50%の水溶液)を30分間にわたって一滴ずつ添加した。次に、この反応混合物を300 mlの攪拌オートクレーブに移し、これを120℃で6時間加熱した。この間に、内部圧力は9.1バールまで上昇した。冷却およびガス抜き後、粗生成混合物を回転蒸発器で蒸発させ、得られた残留物を油ポンプ真空内で50℃にて乾燥させた後、室温で300 mlのアセトンと一緒に2時間攪拌した。次に、アセトンを吸引濾過により除去し、得られた固体を100 mlのアセトンでもう一度洗浄してから、油ポンプ真空内で乾燥させた。これにより、26.56gの硫酸テトラメチルアンモニウムが得られ、その含水率は10.5重量%であった。これは、理論値の97%の収率に相当する。
【0098】
b)イオン交換樹脂を用いた水酸化テトラメチルアンモニウムの調製
アニオン交換樹脂Ambersep(登録商標)900 OHを充填したカラム(長さ:1m、容量:646ml)に、濃度20重量%の硫酸テトラメチルアンモニウム水溶液(1kg当たり79,000 mgの硫酸塩に相当する)を連続的に(680 ml/時)通過させた。溶出液の硫酸塩含有率の最大測定値は<1mg/kgであり、塩化物含有率の最大測定値は7mg/kgであった。アニオン交換樹脂は、高純度NaOHにより再生することができ、アニオン交換に再利用が可能である。
【0099】
c)電解による水酸化テトラメチルアンモニウムの調製
工程a)に記載した方法により得られる1380gの濃度20重量%の硫酸テトラメチルアンモニウムを、3つのチャンバを有する電解装置の中央のチャンバに導入した。中央チャンバは、FT-FAPアニオン交換膜(FuMA-Tech製)により、陽極側の陽極液から仕切られている。また、陰極側では、CMVカチオン交換膜(Asahi-Glass製)により陰極液(生成物)から中央チャンバは仕切られている。陽極としてDSAを使用し;陰極にはステンレス鋼を用いた。5,000gの0.02モル硫酸水溶液を陽極液として導入した。高純度水における1,250gの1重量%濃度水酸化テトラメチルアンモニウム溶液(電子グレード)を陰極回路に導入した。81.2 Ahで6時間電解を実施した。1,592gの11.7重量%濃度水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を陰極液から取り出した。陰極液に基づくこの収率は61.2%であった。陰極液の硫酸塩含量は3ppmであり、鉄濃度は約10 ppmであった。出発材料回路における硫酸テトラメチルアンモニウムの濃度は、0.1重量%であった。陽極液における硫酸の最終濃度は2.2重量%であった。
【0100】
実施例3:
a)リン酸テトラメチルアンモニウムの調製
滴下漏斗および磁気攪拌機を備えた250 mlフラスコに、100 mlの蒸留水と14.0g(0.1モル)のリン酸トリメチルを導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を20℃に維持しながら、60.0g(0.508モル)のトリメチルアミンを一滴ずつ添加した。次に、この反応混合物を300 mlの攪拌オートクレーブに移し、これを攪拌しながら180℃で6時間加熱した。この間に、内部圧力は25バールまで上昇した。冷却およびガス抜き後、粗生成混合物を回転蒸発器で蒸発させ、得られた残留物を油ポンプ真空内で50℃にて乾燥させたところ、部分的に結晶質の物質が得られた。これを500 mlのアセトンと一緒に室温で24時間攪拌した。次に、アセトンを窒素雰囲気下で吸引濾過により除去し、得られた固体を100 mlのアセトンでもう一度洗浄してから、油ポンプ真空内で乾燥させた。これにより、29.51g(理論値の92.3%)の生成物が得られた。工程a)で得た固体を脱イオン水に20重量%の濃度で溶解させた。この溶液を、塩基性アニオン交換樹脂を含むカラムに通過させた。溶液のリン酸塩含量を元素分析により決定したところ、1ppmに満たなかった。
【0101】
実施例4:
水酸化N,N-ジメチルモルホリニウムの調製
滴下漏斗および磁気攪拌機を備えた250 mlフラスコに、100 mlの蒸留水と14.0g(0.1モル)のリン酸トリメチルを導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を20℃以下に維持しながら、60.0g(0.508モル)のトリメチルアミンを添加した。次に、この反応混合物を300 mlの攪拌オートクレーブに移し、これを攪拌しながら180℃で6時間加熱した。この間に、内部圧力は25バールまで上昇した。冷却およびガス抜き後、粗生成混合物を回転蒸発器で蒸発させ、得られた残留物を油ポンプ真空内で50℃にて乾燥させたところ、部分的に結晶質の物質が得られた。これを500 mlのアセトンと一緒に室温で24時間攪拌した。次に、アセトンを窒素雰囲気下で吸引濾過により除去し、得られた固体を100 mlのアセトンでもう一度洗浄してから、油ポンプ真空内で乾燥させた。これにより、29.51gの硫酸N,N-ジメチルモルホリニウムが得られた(理論値の92.3%)。実施例1b)と同様の方法で、上記固体を水に溶解させ、水酸化バリウムと反応させた。これにより、硫酸塩含量(元素分析により決定したイオウ含量から計算)が<270 ppmの水酸化N,N-ジメチルモルホリニウム水溶液が得られた。同様に、溶液のバリウム含量も<1ppmであった。
【0102】
実施例5:
a)硫酸C14-アルキルトリメチルアンモニウムの調製
滴下漏斗および磁気攪拌機を備えた250 mlフラスコに、48.2g(0.2モル)のC14-アルキルジメチルアミンを100 mlの蒸留水と一緒に導入し、氷中で冷却して内部温度を20℃に維持しながら、12.6g(0.1モル)の硫酸ジメチルを添加した。次に、この反応混合物を300 mlの攪拌オートクレーブに移し、これを攪拌しながら180℃で6時間加熱した。この間に、内部圧力は7.6バールまで上昇した。冷却およびガス抜き後、粗生成混合物を回転蒸発器で蒸発させ、得られた残留物を油ポンプ真空内で50℃にて乾燥させた。これにより52.3g(理論値の86%)の生成物が得られた。
【0103】
1H-NMR (ppm, D2O):3.3 (m, 2H)、3.1 (s, 9H)、1.7 (m, 2H)、1.3 - 1.5 (m, 22H)、0.8 (t 3H)
b)水酸化C14-アルキルトリメチルアンモニウムの調製
実施例1b)と同様の方法で水溶液中の水酸化バリウムと反応させるか、または実施例1c)と同様の方法でイオン交換樹脂を用いることにより、上記固体を水酸化C14-アルキルトリメチルアンモニウムに変換することができる。
【0104】
実施例6:
硫酸ビス(トリメチルエタノールアンモニウム)(硫酸ビスコリン)の調製
19.6g(0.22モル)のジメチルアミノエタノールを100 mlのメタノールと一緒に室温で反応容器に導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を30℃以下に維持しながら、12.6g(0.1モル)の硫酸ジメチルを添加した。この反応混合物を30℃でさらに30分攪拌した後、300 mlの攪拌オートクレーブに移し、これを攪拌しながら130℃で10時間加熱した。この間に、内部圧力は16バールまで上昇した。冷却およびガス抜き後、粗生成混合物を回転蒸発器で蒸発させたところ、白色の固体が得られた。これをアセトンで洗浄して、油ポンプ真空内で乾燥させた。これにより27.93g(理論値の93%)の硫酸ビス(トリメチルエタノールアンモニウム)が得られた。
【0105】
実施例7:
a)水中での反応による硫酸ビス(トリメチルエタノールアンモニウム)の調製
滴下漏斗、還流冷却器および磁気攪拌機を備えた反応フラスコに、280.35g(3.15モル)のジメチルアミノエタノールを1,500 mlの水と一緒に室温で導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を30℃以下に維持しながら、189.1g(1.5モル)の硫酸ジメチルを添加した。次に、この反応混合物を固有圧力下のオートクレーブ内で130℃にて10時間加熱した。薄膜蒸発器(T=140℃、540ml/時、過熱温度:99℃)により、反応生成混合物から水を除去した。過剰ジメチルアミノエタノールを減圧(2mバール、80℃)下で除去した。得られた硫酸ビス(トリメチルエタノールアンモニウム)を工程b)でのアニオン交換に直接用いた。
【0106】
b)水酸化バリウムとの反応による水酸化ビス(トリメチルエタノールアンモニウム)の調製
滴下漏斗を備えた攪拌フラスコに、濃度約45%の水溶液状の1190g(1.485モル)の硫酸ビス(トリメチルアンモニウム)を導入し、この溶液に473g(1.5モル)の水酸化バリウムを全部一度に添加した。白色の懸濁液が形成され、これを50℃で5時間攪拌した。45gの活性化炭素を添加した後、懸濁液をさらに2時間攪拌し、青色バンドフィルターを介した吸引により沈殿物を濾過した。これにより、4,361gの水酸化ビス(トリメチルエタノールアンモニウム)溶液が得られた(理論値の87.7%)。硫酸塩に対する溶液の分析から、硫酸塩含量が36 ppmであることがわかった。
【0107】
c)サリチル酸トリメチルエタノールアンモニウムの調製
攪拌フラスコにおいて、2,000g(1.195モル)の水酸化トリメチルエタノールアンモニウム溶液(7.23%のOH-)を164.9g(1.195モル)のサリチル酸と室温で混合した。得られた溶液を50℃に加熱し、この温度で2時間攪拌した。減圧(60℃、2mバール)下での蒸発後、白い固体状のサリチル酸トリメチルエタノールアンモニウムを得た(282.4g=98%収率)。
【表1】

【0108】
a)硫酸ビス(ジメチルジエタノールアンモニウム)の調製
26.62g(0.22モル)のN-メチルジエタノールを100 mlのメタノールと一緒に室温で反応容器に導入し、攪拌すると同時に、氷中で冷却して内部温度を30℃以下に維持しながら、12.6g(0.1モル)の硫酸ジメチルを添加した。この反応混合物を室温でさらに30分攪拌した後、オートクレーブに移した。オートクレーブ内で、温度160℃および内部圧力7バールで10時間反応させた後、オートクレーブを冷却およびガス抜きし、溶媒を減圧(60℃、2mバール)下で除去した。これにより34.2gの硫酸ビス(ジメチルジエタノールアンモニウム)が得られた(理論値の94%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)少なくとも1個のsp3-混成窒素原子を含むアミン化合物と、硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルを反応させることにより、少なくともいくつかの多価アニオンを有する第4級アンモニウム化合物を取得する工程;および
b)工程a)で得た第4級アンモニウム化合物をアニオン交換に付す工程;
を含む、第4級アンモニウム化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程a)で、アミン化合物を硫酸ジアルキルと反応させ、硫酸ジアルキルの両アルキル基を参加させて、硫酸塩アニオンを有する第4級アンモニウム化合物を取得する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程a)で、アミン化合物をリン酸トリアルキルと反応させ、リン酸トリアルキルの少なくとも2個のアルキル基を参加させて、リン酸塩アニオンおよび/またはモノアルキルリン酸塩アニオンを有する第4級アンモニウム化合物を取得する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)で用いるアミン化合物は、一般式NR1R2R3の化合物から選択され、上記式中、R1、R2およびR3は、互いに独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘタリールから選択され、基R1、R2およびR3の少なくとも2つは、これらが結合するN原子と一緒に、多環式化合物の一部をなすこともできる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記工程a)で用いるアミン化合物が、ヒドロキシル基、メルカプト基、エステル基、チオエステル基およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの別の置換基をさらに有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記工程a)で用いるアミン化合物が、アミノアルコール、アミノチオール、ならびに無機酸とそれらのエステル、特に、O-リン酸コリン、O-硫酸コリンおよびO-ホスファチジルコリンから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
得られるイオン化合物が、少なくとも1つのアニオンXn-(nはアニオンの価数に対応する整数である)を含み、以下に挙げるもの:
OH-、HSO4-、NO2-、NO3-、CN-、OCN-、NCO-、SCN-、NCS-、PO43-、HPO42-、(H2PO4-)、H2PO3-、HPO32-、BO33-、(BO2)33-、B5O8-、B5H4O10-、[BF4]-、[BCL4]-、[B(C6H5)4]-、[PF6]-、[SbF6]-、[AsF6]-、[AlCl4]-、[AlBr4]-、[ZnCl3]-、ジクロロクプラート(I)および(II)、CO32-、HCO3-、F-、(R’-COO) -、R´3SiO-、(R’-SO3)-ならびに[(R’-SO2)2N]-(式中、R’は、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)
の中から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記工程a)の反応を少なくとも40℃、好ましくは少なくとも80℃、特に100〜220℃の温度範囲で実施する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記アミン化合物をまず30℃以下の温度で硫酸アルキルまたはリン酸トリアルキルと接触させた後、得られた混合物を少なくとも40℃の温度に加熱する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記工程a)の反応を有機溶媒、水もしくはそれらの混合物において実施する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が少なくとも30容量%の水を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程a)の反応を不活性ガスの存在下で実施する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記工程a)およびb)をハロゲン化物イオンの非存在下で実施する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記工程b)のアニオン交換をトランスプロトネーション(transprotonation)、金属塩との反応、イオン交換クロマトグラフィー、電解、もしくはこれらの組合せにより実施する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
金属塩との反応を溶媒中(該溶媒から、金属塩の金属と硫酸アニオンとから形成される硫酸金属塩が結晶化する)で行なう請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高純度の水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液を製造するための請求項1〜15のいずれかに記載の方法であって、それぞれの場合において、水中で、且つハロゲン化物イオンを含むか又は遊離する化合物及び物質の非存在下で:
a)トリアルキルアミン化合物を硫酸ジアルキルまたはリン酸トリアルキルと反応させることにより、高純度のテトラアルキルアンモニウム塩水溶液を調製し;
b)工程a)で得たテトラアルキルアンモニウム塩溶液を電解アニオン交換またはイオン交換クロマトグラフィーに付すことにより、前記アニオンを水酸化物イオンで置換する;
ことを含む上記方法。
【請求項17】
総ハロゲン化物イオン含量が100 ppm以下の高純度水酸化テトラメチルアンモニウム溶液の、電子工業における、電子製品の基板の処理、特に半導体製品の処理のための使用。
【請求項18】
ハロゲン化物イオンの含量が100 ppm以下の電子製品の基板処理のための高純度水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液。

【公表番号】特表2008−500982(P2008−500982A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513813(P2007−513813)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005727
【国際公開番号】WO2005/115969
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】