第VII因子遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法
本発明は、第VII因子遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)に関する。本発明は、また、それをコードするdsRNAまたは核酸分子またはベクターを薬学的に許容される担体と一緒に含む薬学的組成物;該薬学的組成物を用いて、第VII因子遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を処置するための方法;および細胞における第VII因子の発現を阻害するための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、および第VII因子遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉を仲介することにおける、特に肝臓での第VII因子チモーゲンの発現阻害における、続いて第VII因子チモーゲンの血漿レベルを低下させることにおけるそれらの使用に関する。さらに、動脈および静脈血栓症のような第VIIa、IXa、Xa、XIIa凝固因子、トロンビンの活性化に関連する広範囲の血栓塞栓性疾患/障害、炎症、動脈硬化症ならびにガンを治療/予防するための該dsRNAの使用は、本発明の一部である。
【0002】
第VII因子(FVII)は、血液凝固の外因性経路の開始に関与するビタミンK依存性糖タンパク質である。FVIIは、肝臓で合成され、主に血漿中で不活性一本鎖チモーゲンとして循環する。FVIIは、血管損傷により露出した組織因子(TF)に結合すると、1個のペプチド結合の切断によって切断されてその2本鎖活性型(FVIIa)となり、20kDaの軽鎖および30kDaの重鎖を生じる。FVIIaの軽鎖は、二つの上皮増殖因子様(EGF−1、EGF−2)ドメインおよびγ−カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを含み、Glaドメインは、カルシウムを結合可能にし、分子内にコンフォメーション変化を起こし、新規なエピトープを露出させ、それが続いてTFに結合するのを容易にする。重鎖は、他の凝固のセリンプロテアーゼに構造的に相同な触媒ドメインを有する。TF:FVIIa複合体は、今度はタンパク質限定加水分解性切断によってFIXおよびFXを活性化し、トロンビンの形成および最終的にフィブリンクロットに導く。
【0003】
ヒトFVII遺伝子は、肝細胞に発現しているが、FVII mRNAの定常状態レベルは非常に低い。ヒトFVIIの完全配列は、全長cDNAクローンから推論されている(Hagen F. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83:2412-2416)。高レベルのFVIIは、心血管疾患の発生についての独立したリスク因子に関連している。高コレステロール血症の患者では、FVIIレベルは、C反応性タンパク質(CRP)またはサイトカイン(IL−6)などの炎症促進性可変因子と独立して相関した。しかし、全ての研究がFVIIを冠動脈心疾患における独立リスク因子として確認したわけではない(Lowe G. D. O. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. (2004) 24:1529-1534)。
【0004】
TF:FVIIa複合体は、凝固と炎症反応の間の複雑なクロストークに重大な役割を果たす。それが凝固に果たす十分に確立された役割に加えて、TF:FVIIa複合体は、炎症、血管形成などの細胞過程ならびにガンおよびアテローム性動脈硬化症の病態生理に影響するシグナル伝達などの細胞内変化もまた誘導する。
【0005】
動物モデルにおける概念実証実験から、FVIIaの特異的阻害またはFVIIチモーゲンの血漿中濃度の減少が、出血傾向を高めずに抗血栓および抗炎症効果を招くことが実証されている(Xu H., et al., J. Pathol. (2006) 210:488-496)。敗血症モデルにおいて、エンドトキシン誘導性凝固活性化の阻害、炎症性メディエーターであるインターロイキン−6(Il−6)、IL−8の発現減少、および死亡率の抑制が、活性部位を不活性化されたFVIIa(Taylor F. et al., Blood. (1998) 91:1609-1615)またはFVII/VIIaに対するモノクローナルFabフラグメント(Biemond B. J. et al., Thromb. Haemost. (1995) 73:223-230)のいずれかで処置されたサルにおいて観察された。活性部位を不活性化されたFVIIaは、また、実験的急性膵炎において、肺、回腸および結腸における好中球の組織浸潤を抑制し、IL−6およびマクロファージ炎症性タンパク質−2(MIP−2)などの炎症マーカーを減少させて、強力な抗炎症性を示した(Andersson E. et al., Scand. J. Gastroenterology (2007) 42: 765-770)。
【0006】
さらに、マウスへのTF:FVIIa複合体の関節内注射により、滑膜組織への単球浸潤が誘導され、続いて軟骨および骨が破壊される。TF突然変異マウスでは関節炎の重症度が有意に低下したが、これは、関節リウマチ患者の関節の関節内にしばしば見られるTF/FVII複合体が、慢性破壊性関節炎の誘導と進行の両方に重要な成分であることを示している。(Yang Y. H. et al., Am. J. Pathol. (2004) 164:109-117)。
【0007】
抗TFモノクローナル抗体(Mueller B. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:11832-11836)、組織因子経路阻害剤(Amirkhosravi A. et al., Semin. Thromb. Hemost. (2007) 33:643-652)または特異的TF siRNAによるTF発現のノックダウンのいずれかによるTF:FVIIa複合体の遮断により、実験的肺転移が阻害され(Amarzguioui M. et al., Clin. Cancer Res. (2006) 12:4055-4061)、これは、TF:FVIIa複合体が、腫瘍の成長および転移の促進にも関与することを示唆し、さらに、TF:FVIIa複合体の阻害が、ガンの処置のための臨床的に実行可能な戦略であることを示唆している。
【0008】
血栓および炎症障害の処置における著しい進歩にかかわらず、例えば冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、ガン/転移のような増殖障害の現在の理解によると、抗血栓性と抗炎症性の両方を有する治療的に活性で安全な物質が、標準的な治療法より改良されたものであることが示唆される。
【0009】
二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られている高度に保存された調節メカニズムで遺伝子発現を遮断することが示されている。本発明は、FVIIの発現を選択的かつ効率的に減少させることができる二本鎖リボ核酸分子(dsRNA)を提供する。FVII RNAiの使用は、FVIIa、TF−FVIIa複合体、IXa、Xa、XIIaおよびトロンビンのような凝固因子、FVIIaおよびTFによって直接または間接的に活性化される、サイトカインおよびC反応性タンパク質(CRP)のような炎症因子の形成に関連する疾患/障害の治療的および/または予防的処置のための方法を提供する。特定の疾患/障害状態には、動脈および静脈血栓症、深部静脈血栓症、不安定狭心症、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、心房細動による発作、肺塞栓、脳塞栓、腎塞栓、重症肢虚血、急性肢虚血、播種性血管内凝固(例えば細菌、ウイルス疾患、ガン、敗血症、多発外傷によって起こるもの)、壊疽、鎌状赤血球症、結節性動脈周囲炎(periateritis nodosale)、川崎病、バージャー病、抗リン脂質症候群、非限定的に急性または慢性アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、ガン/転移のような増殖障害、膵炎を含めた炎症反応の治療的および/または予防的処置が含まれ、その方法は、ヒトまたは動物にFVIIをターゲティングするdsRNAを投与することを含む。本発明の化合物は、また、血液が体内の医療機器(例えば機械および生体人工心臓弁、血管ステント、血管カテーテル、代用血管)または体外の医療機器(例えば血液透析、人工心肺)に接触している場合の血栓症の予防に使用することができる。
【0010】
本発明は、FVII遺伝子をサイレンシングすることによって肝細胞でのFVIIの発現を選択的かつ効率的に減少させ、そのことにより肝臓で合成されるFVIIタンパク質のレベルを減少させ、最終的に血漿中のFVII活性を低下させることのできる二本鎖リボ核酸分子(dsRNA)を提供する。好ましい一態様では、記載されたdsRNA分子は、FVII遺伝子の発現を少なくとも70%阻害することができる。本発明は、また、FVII遺伝子の発現によって引き起こされる上記を含めた病状および疾患を処置するために、肝臓をFVII dsRNAで特異的にターゲティングするための組成物および方法を提供する。
【0011】
一態様では、本発明は、第VII因子の発現、特に哺乳動物またはヒト第VII因子遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、相互に相補的な少なくとも二つの配列を含む。dsRNAは、第1の配列を含むセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は第2の配列を含むことがあり、添付の表1、4、6および7における特異的dsRNA対の提供も参照されたい。一態様では、センス鎖は、FVIIをコードするmRNAの少なくとも一部に少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。該配列は、アンチセンス鎖に対するセンス鎖の相補的領域に位置する。好ましい一態様では、dsRNAは、特にヒト第VII因子遺伝子をターゲティングし、なお別の好ましい態様では、dsRNAは、モルモット(Cavia porcellus)またはラット(Rattus norvegicus)第VII因子遺伝子をターゲティングする。
【0012】
一態様では、アンチセンス鎖は、該第VII因子遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、相補的領域は、最も好ましくは30ヌクレオチド長未満である。さらに、本明細書に記載の本発明のds分子の長さ(二重鎖長)は、約16〜30個のヌクレオチドの範囲、特に約18〜28個のヌクレオチドの範囲であることが好ましい。本発明に関して特に有用なのは、約19、20、21、22、23または24個のヌクレオチドの二重鎖長である。最も好ましいのは、19、21または23個のヌクレオチドの二重鎖ストレッチである。そのdsRNAは、第VII因子遺伝子を発現している細胞と接触すると、in vitroで第VII因子遺伝子の発現を少なくとも70%阻害する。
【0013】
選択されたdsRNA分子を添付の表6および7に提供するが、配列番号413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437および438のヌクレオチド第1〜19位を含むdsRNA分子が好ましい。
【0014】
一態様では、該dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するアンチセンス鎖を含む。好ましくは、アンチセンス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%相補的なヌクレオチドを含む。
【0015】
別の好ましい態様では、該dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するセンス鎖を含む。好ましくは、センス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%同一なヌクレオチドを含む。
【0016】
別の好ましい態様では、該dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するセンス鎖、および1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するアンチセンス鎖を含む。好ましくは、センス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%同一なヌクレオチド含み、アンチセンス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%相補的なヌクレオチドを含む。
【0017】
好ましいdsRNA分子において、とりわけ好ましくはセンス鎖は、配列番号413、415、417、419、421、423、425、427、429、431、433、435、および437に示される核酸配列から成る群より選択され、アンチセンス鎖は、配列番号414、416、418、420、422、424、426、428、430、432、434、436および438に示される核酸配列から成る群より選択される。したがって、本発明のdsRNA分子は、とりわけ、配列番号413/414、415/416、417/418、419/420、421/422、423/424、425/426、427/428、429/430、431/432、433/434、435/436および437/438から成る群より選択される配列対を含んでもよい。本明細書に提供される特異的dsRNA分子に関連して、配列番号の対は、添付の表にも示されるような、対応するセンス鎖およびアンチセンス鎖配列(5’から3’)に関する。
【0018】
また、改変されたdsRNA分子が本明細書に提供され、特に添付の表1および4に開示され、本発明の改変されたdsRNA分子の説明に役立つ実例を提供している。
【0019】
表2および3は、本発明の特定のdsRNA分子の選択的な生物学的、臨床的および薬学的に関連するパラメーターを提供するものである。
【0020】
本明細書上記に指摘したように、表1は、本発明の改変されたdsRNAsの説明に役立つ実例を提供する(対応するセンス鎖およびアンチセンス鎖をこの表に提供する)。なお、本発明のdsRNAのこれらの構成成分の例示的改変は、改変例として本明細書に提供される。これらのdsRNA(およびその構成成分)のさらなる改変もまた、本発明の一態様として含まれる。対応する例を、本発明のさらに詳細な説明に提供する。
【0021】
添付の表4および7は、また、本発明に関連して有用なさらなるsiRNA分子/dsRNAを提供し、ここで、表4は、表7に示されるような本発明の改変されたsiRNA分子/dsRNA分子の、特定の生物学的および/または臨床的に関連する驚くべき特徴を提供する。これらのRNA分子は、例示的なヌクレオチド改変を含む。
【0022】
最も好ましいdsRNA分子は、添付の表1および4に提供され、ここで、とりわけ好ましくは、センス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23および25に示される核酸配列から成る群より選択され、アンチセンス鎖は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に示される核酸配列から成る群より選択される。したがって、本発明のdsRNA分子は、とりわけ、配列番号1/2、3/4、5/6、7/8、9/10、11/12、13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24および25/26から成る群より選択される配列対を含んでもよい。最も好ましいdsRNA分子は、配列対19/20および11/12を含む。本明細書に提供される特異的dsRNA分子に関連して、配列番号の対は、添付および包含される表にも示されるような、対応するセンスおよびアンチセンス鎖配列(5’から3’)に関する。
【0023】
一態様では、本発明のdsRNA分子は、センスおよびアンチセンス鎖から成り、ここで、該鎖の少なくとも一方は、少なくとも24時間の半減期を有する。別の態様では、本発明のdsRNA分子は、非免疫刺激性であり、例えばin vitroでINF−αおよびTNF−αを刺激しない。
【0024】
本発明のdsRNA分子は、天然ヌクレオチドから成ることがあるか、または2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチドなどの少なくとも1個の改変ヌクレオチドから成ることがある。2’改変ヌクレオチドは、本発明のdsRNA分子がin vivoで、例えば医学的状況で使用される場合に、特定の免疫刺激因子またはサイトカインが抑制されるというさらなる利点を有しうる。または、そして非限定的に、改変ヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロ改変ヌクレオチド、2’−デオキシ改変ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ改変ヌクレオチド、2’−アルキル改変ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、および非天然塩基を含むヌクレオチドの群より選択してもよい。好ましい一態様では、dsRNA分子は、以下の改変ヌクレオチド:2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびデオキシチミジンの少なくとも一つを含む。改変ヌクレオチドを含む好ましいdsRNA分子を表1および4に示す。
【0025】
本発明は、また、本発明の少なくとも一つのdsRNAを含む細胞を提供する。細胞は、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。さらに、本明細書に定義されるdsRNA分子を含む組織および/または非ヒト生物もまた、本発明に含まれ、ここで、該非ヒト生物は、特に研究目的にまたは研究ツールとして、例えば薬物の試験にも有用である。
【0026】
さらに、本発明は、以下の段階:
(a)本明細書において定義の二本鎖リボ核酸(dsRNA)を細胞、組織または生物に導入すること;
(b)段階(a)で作製した該細胞、組織または生物を、FVII遺伝子のmRNA転写物が分解されるために十分な時間維持することによって、所与の細胞におけるFVII遺伝子の発現を阻害すること
を含む、細胞、組織または生物におけるFVII遺伝子、特に哺乳動物またはヒトFVII遺伝子の発現を阻害するための方法に関する。
【0027】
本発明は、また、本発明のdsRNAを含む薬学的組成物に関する。これらの薬学的組成物は、特に、細胞、組織または生物におけるFVII遺伝子の発現の阻害に有用である。本発明の一つまたは複数のdsRNAを含む薬学的組成物は、また、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、凝固因子の活性化、炎症または増殖障害に関連する血栓障害を治療、予防または管理するための方法であって、そのような治療、予防または管理の必要のある対象に治療または予防有効量の本発明の一つまたは複数のdsRNAを投与することを含む方法を提供する。好ましくは、該対象は、哺乳動物であり、最も好ましくはヒト患者である。
【0029】
一態様では、本発明は、第VII因子遺伝子の発現により仲介される病状を有する対象を処置するための方法を提供する。そのような状態は、血栓塞栓障害、望まれない炎症イベントまたは増殖障害および上記のような障害を含む。この態様では、dsRNAは、第VII因子遺伝子の発現をコントロールするための治療剤として作用する。その方法は、第VII因子遺伝子の発現がサイレンシングされるように、患者(例えばヒト)に本発明の薬学的組成物を投与することを含む。それらの高い特異性が原因で、本発明のdsRNAは、第VII因子遺伝子のmRNAを特異的にターゲティングする。好ましい一態様では、記載されたdsRNAは、FVII mRNAレベルを特異的に減少させ、細胞中のオフターゲット遺伝子の発現および/またはmRNAレベルに直接には影響しない。
【0030】
好ましい一態様では、記載されたdsRNAは、肝臓中の第VII因子mRNAレベルをin vivoで少なくとも80%減少させ、血漿中の第VII因子チモーゲンレベルをin vivoで少なくとも95%減少させる。別の態様では、記載されたdsRNAは、プロトロンビン時間を延長し、トロンビン生成および血栓形成をin vivoで阻害する。なお別の好ましい態様では、記載されたdsRNA分子によって仲介されるこれらの抗血栓効果は、減少したin vivo血漿FVIIレベルおよび減少したin vivo肝臓FVII mRNAレベルに関連する。
【0031】
一態様では、記載されたdsRNA分子は、血液凝固時間をin vivoで少なくとも2倍に増加させる。
【0032】
治療用dsRNAに関して特に有用なのは、モルモットまたは細胞培養モデルで個別のdsRNAについての毒性、治療有効性および有効薬用量およびin vivo半減期を推定するために使用することができる、モルモット第VII因子をターゲティングするdsRNAセットである。
【0033】
別の態様では、本発明は、細胞における第VII因子遺伝子の発現、特に本発明のdsRNAの一つの少なくとも1本の鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む第VII因子遺伝子の発現を阻害するためのベクターを提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、細胞における第VII因子遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。該ベクターは、本発明のdsRNAの一つの少なくとも1本の鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む。なお、該ベクターが、該調節配列以外に本発明のdsRNAの少なくとも1本の「センス鎖」および該dsRNAの少なくとも1本の「アンチセンス鎖」をコードする配列を含むことが好ましい。請求された細胞が、該調節配列以外に本発明のdsRNAの一つの少なくとも1本の鎖をコードする、本明細書に定義される配列を含む二つ以上のベクターを含むことも予想される。
【0035】
一態様では、その方法は、dsRNAを含む組成物を投与することを含み、ここで、そのdsRNAは、処置される哺乳動物の第VII因子遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。上に指摘したように、本明細書に定義されるdsRNA分子の少なくとも1本の鎖をコードする核酸分子を含むベクターおよび細胞もまた、薬学的組成物として使用することができ、したがって、本明細書に開示された医学的介入の必要のある対象を処置する方法に使用することもできる。薬学的組成物および対応する(ヒト)対象を処置する方法に関するこれらの態様が、また、遺伝子治療アプローチのようなアプローチに関することも注目すべきである。本明細書に提供されるような第VII因子特異的dsRNA分子または本発明のdsRNA分子の個別の鎖をコードする核酸分子を、また、ベクターに挿入し、ヒト患者のための遺伝子治療ベクターとして使用してもよい。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)または定位注射(例えばChen et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057参照)によって対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことがあるか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている徐放マトリックスを含むことがある。または、リコンビナント細胞から完全な遺伝子送達ベクター、例えばレトロウイルスベクターをインタクトに産生できる場合、その医薬製剤は、遺伝子送達システムを産生する一つまたは複数の細胞を包含してもよい。
【0036】
本発明の別の局面では、第VII因子遺伝子の発現活性をモデュレーションする第VII因子特異的dsRNA分子は、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写ユニットから発現される(例えば、Skillern, A.ら、PCT国際公開公報第00/22113号参照)。これらの導入遺伝子は、直鎖構築物、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入することができ、それらは、ホストゲノムに組込まれる導入遺伝子として組入れおよび遺伝することができる。導入遺伝子は、また、それが染色体外プラスミドとして遺伝可能なように構築することができる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
【0037】
dsRNAの個別の鎖を、二つの別々の発現ベクター上のプロモーターによって転写させて、ターゲット細胞に同時トランスフェクションすることができる。または、dsRNAの各個別の鎖を、どちらも同じ発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写させることができる。好ましい態様では、dsRNAは、ステムアンドループ構造を有するようにリンカーポリヌクレオチド配列によって結合した逆方向反復配列として発現される。
【0038】
リコンビナントdsRNA発現ベクターは、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。dsRNAを発現しているウイルスベクターは、非限定的にアデノ随伴ウイルス(総説についてはMuzyczka, et al., Curr. Topics Micro. Immunol. (1992) 158:97-129)参照);アデノウイルス(例えば、Berkner, et al., BioTechniques (1998) 6:616)、Rosenfeld et al. (1991, Science 252:431-434)、およびRosenfeld et al. (1992), Cell 68:143-155)参照);またはアルファウイルスおよび当技術分野で公知の他のウイルスに基づき構築することができる。レトロウイルスは、上皮細胞を含めた多数の異なる種類の細胞に、in vitroおよび/またはin vivoで多様な遺伝子を導入するために使用されている(例えば、Danos and Mulligan, Proc. NatI. Acad. Sci. USA (1998) 85:6460-6464参照)。細胞のゲノムに挿入された遺伝子をトランスダクションおよび発現することができるリコンビナント−レトロウイルスベクターは、PA317およびPsi−CRIPなどの適切なパッケージング細胞系にリコンビナント−レトロウイルスゲノムをトランスフェクションすることによって産生することができる(Comette et al., 1991, Human Gene Therapy 2:5-10; Cone et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349)。リコンビナント−アデノウイルスベクターは、感受性ホスト(例えばラット、ハムスター、イヌおよびチンパンジー)の多種多様な細胞および組織に感染させるために使用することができ(Hsu et al., 1992, J. Infectious Disease, 166:769)、感染に有糸分裂活性細胞を必要としないという利点ももつ。
【0039】
本発明のDNAプラスミドまたはウイルスベクターのいずれかにおけるdsRNA発現を駆動するプロモーターは、真核生物RNAポリメラーゼIプロモーター(例えばリボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼIIプロモーター(例えばCMV初期プロモーターまたはアクチンプロモーターまたはU1 snRNAプロモーター)または好ましくはRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば U6 snRNAまたは7SK RNAプロモーター)または原核生物プロモーター、例えばT7プロモーター(発現プラスミドが、T7プロモーターからの転写に必要なT7 RNAポリメラーゼもまたコードする場合)でありうる。プロモーターは、また、膵臓に導入遺伝子の発現を指令することができる(例えば膵臓についてのインスリン調節配列参照(Bucchini et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2511-2515))。
【0040】
加えて導入遺伝子の発現は、例えば、特定の生理学的レギュレーターに、例えば循環グルコースレベルまたはホルモンに、感受性の調節配列などの誘導性調節配列および発現システムを使用することによって正確にレギュレーションすることができる(Docherty et al., 1994, FASEB J. 8:20-24)。細胞または哺乳動物における導入遺伝子発現のコントロールに適した、そのような誘導性発現システムには、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体形成の化学誘導因子、およびイソプロピル−β−D1−チオガラクトピラノシド(EPTG)によるレギュレーションが含まれる。当業者は、意図されるdsRNA導入遺伝子の使用に基づいて適切な調節/プロモーター配列を選択できよう。
【0041】
好ましくは、dsRNA分子を発現することができるリコンビナントベクターは、下記のように送達され、ターゲット細胞中に長く残る。または、dsRNA分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。必要に応じてそのようなベクターを繰り返し投与することができる。dsRNAは、いったん発現したならばターゲットRNAに結合し、その機能または発現をモデュレーションする。dsRNA発現ベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与による、患者から外植されたターゲット細胞に投与後にその患者に再導入することによる、または所望のターゲット細胞への導入を可能にする他の手段によるなどの、全身的でありうる。
【0042】
dsRNA発現DNAプラスミドは、典型的には陽イオン性脂質担体(例えばオリゴフェクタミン)または非陽イオン性脂質系担体(例えばTransit-TKO(商標))との複合体としてターゲット細胞にトランスフェクションされる。単一のA第VII因子遺伝子または複数のA第VII因子遺伝子の異なる領域をターゲティングするdsRNA介在性ノックダウンのための1週間以上にわたる複数回の脂質トランスフェクションもまた、本発明によって考えられている。本発明のベクターがホスト細胞にうまく導入されたことは、様々な公知の方法を使用してモニタリングすることができる。例えば、一過性トランスフェクションは、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーのようなレポーターを用いてシグナルを発生させることができる。エックスビボ細胞の安定トランスフェクションは、トランスフェクションされた細胞に、ハイグロマイシンB耐性などの特異的環境因子(例えば抗生物質および薬物)に対する耐性を有することを示すマーカーを使用して確認することができる。
【0043】
以下の詳細な説明は、dsRNAを製造および使用する方法、ならびにターゲット第VII因子遺伝子の発現を阻害するdsRNAを含有する組成物、加えて該第VII因子遺伝子の発現によって引き起こされる疾患および障害を処置するための組成物および方法を開示する。
【0044】
定義
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲に使用される特定の用語および語句の意味を下記に提供する。この明細書の他の部分での用語の使用と本節に提供されたその定義との間に明らかな矛盾がある場合は、本節の定義が優先されるものとする。
【0045】
それぞれ「G」、「C」、「A」、「U」および「T」または「dT」は、それぞれ一般的に、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、ウラシルおよびデオキシチミジンを有するヌクレオチドを意味する。しかし、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、また、下記にさらに詳述するような改変ヌクレオチドまたは代替置換部分を表わすことがある。そのような置換部分を含む配列は、本発明の態様である。下記に詳述するように、本明細書に記載されたdsRNA分子は、また「オーバーハング」、すなわち対になっていない、突出したヌクレオチドであって、本明細書において定義された「センス鎖」および「アンチセンス鎖」の対によって通常形成されるRNA二重らせん構造に直接には関与しないヌクレオチドを含むことがある。多くの場合に、そのような突出したストレッチは、3’末端にデオキシチミジンヌクレオチドを、大部分の態様では2個のデオキシチミジンを含む。そのようなオーバーハングを下記に説明および例示する。
【0046】
本明細書に使用されるような「第VII因子」または「FVII」という用語は、特に第VII凝固因子(以前は「プロコンバーチン」または「血清プロトロンビン転化促進因子」とも記載された)に関し、該用語は、対応する遺伝子、コードされるmRNA、コードされるタンパク質/ポリペプチドに加えて、その機能的フラグメントに関する。「第VII因子遺伝子/配列」という用語は、野生型配列だけでなく、該遺伝子/配列に含まれうる突然変異および変化にも関する。したがって、本発明は、本明細書に提供される特異的dsRNA分子に限定されない。本発明は、また、そのような突然変異/変化を含む第VII因子遺伝子のRNA転写物の対応するヌクレオチドストレッチに少なくとも85%相補的なアンチセンス鎖を含むdsRNA分子に関する。
【0047】
本明細書に使用されるような「ターゲット配列」は、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを含めた、第VII因子遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続する部分を表す。
【0048】
本明細書に使用されるような「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチドの命名法を使用して表される配列によって記載されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを表す。しかし、本明細書に詳述されるような「配列を含む鎖」は、また、改変ヌクレオチドのように改変を含んでもよい。
【0049】
本明細書に使用されるように、そして特に指摘しない限り、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列に比較して記載するために使用される場合の「相補的」という用語は、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定の条件で第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションして二重鎖構造を形成する能力を表す。本明細書に使用されるような「相補的」配列は、それらがハイブリダイゼーションする能力に関する上記要件が満たされる限り、非Watson-Crick塩基対ならびに/または非天然および改変ヌクレオチドから形成された塩基対を含むか、またはそれらから完全に形成されていてもよい。
【0050】
「完全に相補的」と称される配列は、第1および第2のヌクレオチド配列の全長にわたり、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドへの、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの塩基対形成を含む。
【0051】
しかし、本明細書において第1の配列が第2の配列に対して「実質的に相補的」と称される場合に、これら二つの配列は、完全に相補的でありうるか、またはハイブリダイゼーションしたときに一つまたは複数の、しかし好ましくは4、3または2個以下の、ミスマッチ塩基対を形成しうる。
【0052】
本明細書における「相補的」「完全に相補的」および「実質的に相補的」という用語は、その使用の状況から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、またはdsRNAのアンチセンス鎖とターゲット配列との間の塩基のマッチングに関して使用することができる。
【0053】
本明細書に使用されるような「二本鎖RNA」または「dsRNA」という用語は、2本の逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子、またはリボ核酸分子複合体を表す。二重鎖構造を形成している2本の鎖は、一つのより大きなRNA分子の異なる部分であってもよいか、またはそれらは、別々のRNA分子であってもよい。これらの2本の鎖が一つのより大きな分子の一部であるために、一方の鎖の3’末端と対する他方の鎖の5’末端との間で分断されないヌクレオチド鎖によって連結されて二重鎖構造を形成している場合に、その連結をしているRNA鎖を「ヘアピンループ」と呼ぶ。2本の鎖が、一方の鎖の3’末端と対する他方の鎖の5’末端との間で、分断されないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合されて二重鎖構造を形成している場合に、その連結している構造を「リンカー」と呼ぶ。RNA鎖は、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有してもよい。二重鎖構造に加えて、dsRNAは、一つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含んでもよい。該「オーバーハング」中のヌクレオチドは、0〜5個のヌクレオチドを含んでもよく、ここで、「0」は、「オーバーハング」を形成する追加的なヌクレオチドがないことを意味し、一方で「5」は、dsRNA二重鎖の個別の鎖に5個の追加的なヌクレオチドがあることを意味する。これらの任意の「オーバーハング」は、個別の鎖の3’末端に位置する。下記に詳述するように、2本の鎖の1本だけに「オーバーハング」を含むdsRNA分子も、本発明に関連して有用であり、有利でさえありうる。「オーバーハング」は、好ましくは0〜2個のヌクレオチドを含む。最も好ましくは、2個の「dT」(デオキシチミジン)ヌクレオチドが、dsRNAの両方の鎖の3’末端に見られる。したがって、「ヌクレオチドオーバーハング」は、dsRNAの1本の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を超えて伸長するか、またはその逆の場合に、dsRNAの二重鎖構造から突出する一つまたは複数の不対ヌクレオチドを表す。「平滑」または「平滑末端」は、dsRNAのその末端に不対ヌクレオチドがないこと、すなわちヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。「平滑末端の」dsRNAは、その全長にわたり二本鎖であるdsRNAであり、すなわちその分子のどちらの末端にもヌクレオチドオーバーハングがないdsRNAである。
【0054】
「アンチセンス鎖」という用語は、ターゲット配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNA鎖を表す。本明細書に使用されるような「相補的領域」という用語は、配列、例えばターゲット配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を表す。相補的領域がターゲット配列に完全には相補的でない場合に、ミスマッチは、末端領域で最も許容され、存在する場合は好ましくは一つまたは複数の末端領域にあり、例えば5’および/または3’末端から6、5、4、3、または2個のヌクレオチド以内にある。
【0055】
本明細書に使用されるような「センス鎖」という用語は、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を表す。「実質的に相補的」は、好ましくは、センスおよびアンチセンス鎖におけるオーバーラップしているヌクレオチドの少なくとも85%が相補的であることを意味する。
【0056】
dsRNAに関して使われる場合の「細胞に導入する」は、当業者に理解されているように、細胞への取込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取込みは、受動(unaided)拡散過程もしくは能動細胞過程を介して、または補助剤もしくは装置によって行うことができる。この用語の意味は、in vitroの細胞に限定されず、dsRNAを、生物の一部である「細胞に導入」してもよい。その場合、細胞への導入は、生物への送達を含むであろう。例えば、in vivo送達について、dsRNAは、組織部位に注射することができるか、または全身投与することができる。例えば、医学的介入を必要とする対象に本発明のdsRNA分子が投与されることが予想されている。そのような投与は、該対象の罹患部に、例えば肝臓組織/細胞に、または肝ガン組織のようなガン組織/細胞に、本発明のdsRNA、ベクターまたは細胞を注射することを含んでもよい。しかし、罹患組織近傍への注射も予想されている。細胞へのin vitro導入には、エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの当技術分野で公知の方法が含まれる。
【0057】
「サイレンシングする」、「発現を阻害する」および「ノックダウンする」という用語は、それらが第VII因子遺伝子に言及するかぎり、本明細書において、第1の細胞または細胞群(第VII因子遺伝子が転写される細胞であって、第VII因子遺伝子の発現が阻害されるように処理されたもの)から単離することができる、第VII因子遺伝子から転写されたmRNAの量が、第2の細胞または細胞群(第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処理されなかったもの(対照細胞))に比べて減少したことを表す、第VII因子遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を表す。阻害度は、通常次式により表される。
【0058】
【数1】
【0059】
または、阻害度は、第VII因子遺伝子の転写に機能的に関連しているパラメーター(例えば細胞によって分泌される、第VII因子遺伝子によってコードされるタンパク質の量、または特定の表現型を提示している細胞数)の減少によって示してもよい。
【0060】
添付の実施例および本明細書に提供される添付の表に例示されるように、本発明のdsRNA分子は、in vitroアッセイにおいて、すなわちin vitroで、ヒト第VII因子の発現を少なくとも約70%阻害することができる。別の態様では、本発明のdsRNA分子は、モルモット第VII因子の発現を少なくとも70%阻害することができ、このことは顕著なin vivo抗血栓効果にも導く。当業者は、特に本明細書に提供されるアッセイを考慮に入れて、そのような阻害速度および関連効果を容易に決定することができる。特に好ましいdsRNAを、例えば添付の表1の、特に順位1〜13に提供する(そこに提供されるセンス鎖およびアンチセンス鎖の配列は、5’から3’方向である)。
【0061】
本明細書に使用されるような「オフターゲット」という用語は、in silico法によって、記載されたdsRNAに配列相補性に基づきハイブリダイゼーションすると予測されるトランスクリプトームの全ての非ターゲットmRNAを表す。本発明のdsRNAは、好ましくは、第VII因子の発現を特異的に阻害し、すなわちどのオフターゲットの発現も阻害しない。
【0062】
本明細書に使用されるような「半減期」という用語は、化合物または分子の安定性の尺度であって、特に本明細書に提供されるアッセイを考慮に入れて、当業者に公知の方法によって評価することができる。
【0063】
本明細書に使用されるような「非免疫刺激性」という用語は、本発明のdsRNA分子による免疫反応の任意の誘導がないことを表す。免疫反応を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば実施例の節に記載されているようにサイトカインの放出を評価することによる。
【0064】
「処置する」、「処置」などの用語は、本発明に関連して血栓塞栓障害/疾患、炎症または増殖障害のような、第VII因子の発現に関係する障害の軽減または緩和を意味する。
【0065】
本明細書に使用されるような「薬学的組成物」は、薬理学的有効量のdsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む。しかし、そのような「薬学的組成物」は、また、そのようなdsRNA分子の個別の鎖、または本発明のdsRNAに含まれるセンスもしくはアンチセンス鎖の少なくとも1本をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む、本明細書に記載されたベクターを含んでもよい。本明細書に定義されたdsRNAを発現するか、または含む細胞、組織または単離された器官を「薬学的組成物」として使用してもよいことも予想される。本明細書に使用されるような「薬理学的有効量」、「治療有効量」または単に「有効量」は、意図される薬理学的、治療的または予防的結果を生じるために有効なRNAの量を表す。
【0066】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤の投与のための担体を表す。そのような担体には、非限定的に、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組合せが挙げられる。具体的には、この用語に細胞培養用培地は入らない。経口投与される薬物について、薬学的に許容される担体には、非限定的に、当業者に公知のような不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、香味料、着色料および保存料などの薬学的に許容される賦形剤が挙げられる。
【0067】
薬学的に許容される担体が本発明のdsRNA、ベクターまたは細胞の全身投与を可能にすることが、特に予想される。経腸投与も予想されるが、非経口投与および経皮または経粘膜(例えば吹入、口内、膣、肛門)投与に加えて、薬物の吸入が、医学的介入を必要とする患者に本発明の化合物を投与する実現可能な方法である。非経口投与を採用する場合に、これは、罹患組織または少なくともその近傍への本発明の化合物の直接注射を含むことがある。しかし、本発明の化合物の静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、皮内、くも膜下腔内および他の投与もまた、技術者、例えば担当医師の技術の範囲内である。
【0068】
筋肉内、皮下および静脈内使用のために、本発明の薬学的組成物は、一般に、滅菌水溶液または懸濁物中に提供され、適切なpHおよび等張性に緩衝化されるであろう。好ましい態様では、担体は、水性緩衝液のみから成る。これに関連して、「のみ」は、第VII因子遺伝子を発現する細胞におけるdsRNAの取込みに影響または取込みを仲介しうる補助剤も封入物質もないことを意味する。本発明による水性懸濁剤は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびトラガカントゴムなどの懸濁化剤、ならびにレシチンなどの湿潤剤を含みうる。水性懸濁剤用の適切な保存料には、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよびp−ヒドロキシ安息香酸プロピルが挙げられる。本発明による有用な薬学的組成物には、また、インプラントおよび微小封入デリバリーシステムを含めた徐放剤などの、身体からdsRNAが急速に排泄されるのを防ぐ封入製剤が挙げられる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。リポソーム懸濁剤もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法により、例えば参照により本明細書に組入れられるPCT国際公開公報第91/06309号に記載されているように調製することができる。
【0069】
本明細書に使用されるような「トランスフォーメーションされた細胞」は、dsRNA分子またはそのようなdsRNA分子の少なくとも1本の鎖を発現させることができる、少なくとも一つのベクターが導入された細胞である。そのようなベクターは、好ましくは、本発明のdsRNAに含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むベクターである。
【0070】
表1および4の配列の一つの一方または両方の末端から少数のヌクレオチドだけを除いた短いdsRNAが、上記dsRNAと同様に有効でありうると合理的に予想することができる。上に指摘したように、本発明の大部分の態様では、本明細書に提供されたdsRNA分子は、約16〜約30個のヌクレオチドの二重鎖長(すなわち「オーバーハング」なし)を含む。特に有用なdsRNA二重鎖長は、約19〜約25個のヌクレオチドである。最も好ましいのは、19ヌクレオチド長の二重鎖構造である。本発明のdsRNA分子では、アンチセンス鎖は、センス鎖に少なくとも部分的に相補的である。
【0071】
本発明のdsRNAは、ターゲット配列に1個または複数個のミスマッチを有しうる。好ましい態様では、本発明のdsRNAは、最大3個のミスマッチを有する。dsRNAのアンチセンス鎖がターゲット配列に対するミスマッチを有する場合に、ミスマッチ領域が相補的領域の中心に位置しないことが好ましい。dsRNAのアンチセンス鎖がターゲット配列に対するミスマッチを有する場合に、そのミスマッチが、末端領域に、好ましくは5’および/または3’末端から6、5、4、3または2個のヌクレオチド以内に、限られることが好ましい。例えば、第VII因子遺伝子の領域に相補的な23個のヌクレオチドのdsRNA鎖について、dsRNAは、好ましくは中央の13個のヌクレオチド内に全くミスマッチを有さない。
【0072】
上述のように、dsRNAの少なくとも一つの末端/鎖は、1〜5個、好ましくは1または2個のヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを有してもよい。少なくとも一つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、その平滑末端の対応物よりも予想外に優れた阻害性を有する。さらに、本発明者らは、1個のヌクレオチドオーバーハングの存在のみが、dsRNAの干渉活性を強化するが、その全体的な安定性には影響しないことを発見した。オーバーハングを1個だけ有するdsRNAがin vivoで、ならびに様々な細胞、細胞培養用培地、血液および血清中で特に安定で有効なことが証明された。好ましくは、一本鎖オーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端またはその代わりにセンス鎖の3’末端に位置する。dsRNAは、また、好ましくはアンチセンス鎖の5’末端に位置する平滑末端を有してもよい。好ましくは、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑である。別の態様では、オーバーハング中の一つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオシドチオリン酸エステルと置換されている。
【0073】
また、安定性を高めるために、本発明のdsRNAを化学的に改変してもよい。本発明の核酸は、参照により本明細書に組入れられる"Current protocols in nucleic acid chemistry", Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているような、当技術分野で十分に確立された方法により合成および/または改変してもよい。化学的改変には、非限定的に、2’改変、非天然塩基の導入、リガンドへの共有結合、およびリン酸結合からチオリン酸結合への置換を挙げることができる。この態様では、二重鎖構造の完全性は、少なくとも一つ、好ましくは二つの化学結合によって強化される。化学結合形成は、多様な周知の技法のいずれかによって、例えば共有結合、イオン結合または水素結合;疎水性相互作用、ファンデルワールスまたはスタッキング相互作用によって;金属イオン配位によって、またはプリンアナログの使用を介して達成してもよい。好ましくは、dsRNAを改変するために使用することのできる化学基には、非限定的にメチレンブルー;二官能基、好ましくはビス−(2−クロロエチル)アミン;N−アセチル−N’−(p−グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4−チオウラシル;およびソラレンが挙げられる。好ましい一態様では、リンカーは、ヘキサエチレングリコールリンカーである。この場合、dsRNAは、固相合成により生成され、ヘキサエチレングリコールリンカーは、標準法により組入れられる(例えばWilliams, D.J., and K.B. Hall, Biochem. (1996) 35:14665-14670)。特定の態様では、アンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖の3’末端とは、ヘキサエチレングリコールリンカーを介して化学結合している。別の態様では、dsRNAの少なくとも1個のヌクレオチドは、ホスホロチオエート基またはホスホロジチオエート基を含む。dsRNA末端の化学結合は、好ましくは三重らせん結合によって形成される。
【0074】
特定の態様では、化学結合は、1個または数個の結合基によって形成されてもよく、ここで、そのような結合基は、好ましくはポリ−(オキシホスフィニコオキシ−1,3−プロパンジオール)鎖および/またはポリエチレングリコール鎖である。他の態様では、化学結合は、また、プリンの代わりに二本鎖構造に導入されたプリンアナログによって形成されてもよい。さらなる態様では、化学結合は、二本鎖構造に導入されたアザベンゼン−ユニットによって形成されてもよい。なおさらなる態様では、化学結合は、二本鎖構造に導入されたヌクレオチドの代わりに分岐ヌクレオチドアナログによって形成されてもよい。特定の態様では、化学結合は、紫外線によって誘導されてもよい。
【0075】
なお別の態様では、二つの1本鎖の一方または両方のヌクレオチドを改変して、細胞酵素、例えば特定のヌクレアーゼの活性化を抑制または阻害してもよい。細胞酵素の活性化を阻害するための技法は、当技術分野で公知であり、例えば非限定的に2’−アミノ改変、2’−アミノ糖改変、2’−F糖改変、2’−F改変、2’−アルキル糖改変、非荷電骨格改変、モルホリノ改変、2’−O−メチル改変、およびホスホルアミデートである(例えばWagner, Nat. Med. (1995) 1:1116-8参照)。したがって、dsRNA上のヌクレオチドの少なくとも一つの2’−ヒドロキシル基が、化学基、好ましくは2’−アミノ基または2’−メチル基により置換される。また、少なくとも1個のヌクレオチドを改変して、ロックされたヌクレオチドを形成させてもよい。そのようなロックされたヌクレオチドは、リボースの2’−酸素とリボースの4’−炭素を連結するメチレン架橋を有する。オリゴヌクレオチドへのロックされたヌクレオチドの導入により、相補的配列に対する親和性が向上し、融解温度が数度増加する。
【0076】
本明細書に提供されたdsRNA分子の改変は、in vivoに加えてin vitroでその安定性にプラスの影響を与え、(罹患した)ターゲット部へのその送達も向上しうる。さらに、そのような構造的および化学的改変は、投与時のdsRNA分子に対する生理学的反応に、例えばサイトカイン放出(好ましくは抑制される)に、プラスの影響を与えうる。そのような化学的および構造的改変は、当技術分野において公知であり、とりわけNawrot (2006) Current Topics in Med Chem, 6, 913-925に例示されている。
【0077】
dsRNAにリガンドをコンジュゲーションすることで、その細胞吸収に加えて特定組織へのターゲティングを高めることができる。場合によっては、細胞膜の直接透過性を促進するために疎水性リガンドがdsRNAにコンジュゲーションされる。または、dsRNAにコンジュゲーションしたリガンドは、レセプター介在性エンドサイトーシスについての基質である。これらのアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞透過を促進するために使用されている。例えば、コレステロールが、様々なアンチセンスオリゴヌクレオチドとコンジュゲーションされて、コンジュゲーションしていないアナログよりも実質的に活性な化合物を生じた。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103参照。オリゴヌクレオチドとコンジュゲーションされた他の親油性化合物には、1−ピレン酪酸、1,3−ビス−O−(ヘキサデシル)グリセロール、およびメントールが挙げられる。レセプター介在性エンドサイトーシスについてのリガンドの一例は、葉酸である。葉酸は、葉酸レセプター介在性エンドサイトーシスにより細胞に進入する。葉酸と結合したdsRNA化合物は、葉酸レセプター介在性エンドサイトーシスにより細胞に効率的に輸送されるであろう。オリゴヌクレオチドの3’末端への葉酸の結合は、オリゴヌクレオチドの細胞取込みの増加を招く(Li, S.; Deshmukh, H. M.; Huang, L. Pharm. Res. 1998, 15, 1540)。オリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされた他のリガンドには、ポリエチレングリコール、糖質クラスター、架橋剤、ポルフィリンコンジュゲート、および送達ペプチドが挙げられる。
【0078】
場合によっては、オリゴヌクレオチドへの陽イオン性リガンドのコンジュゲーションは、多くの場合にヌクレアーゼ耐性の改善を招く。陽イオン性リガンドの代表例は、プロピルアンモニウムおよびジメチルプロピルアンモニウムである。興味深いことに、陽イオン性リガンドがアンチセンスオリゴヌクレオチド全体に分散した場合に、そのオリゴヌクレオチドは、mRNAに対するその高い結合親和性を保持することが報告された。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103および本明細書における参考文献を参照されたい。
【0079】
リガンドとコンジュゲーションした本発明のdsRNAは、dsRNAへの連結分子の結合から誘導されるような反応性ペンダント官能基を有するdsRNAの使用によって合成することができる。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する、合成されたリガンド、または連結部分が結合したリガンドと直接反応させてもよい。本発明の方法は、リガンドとコンジュゲーションしたdsRNAの合成を、いくつかの好ましい態様においてリガンドと適切にコンジュゲーションされたヌクレオシドモノマーであって、固体支持材料にさらに結合されてもよいヌクレオシドモノマーの使用により、容易にする。場合により固体支持材料に接着した、そのようなリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートは、選択された血清結合性リガンドと、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’位に位置する連結部分との反応を介して、本発明の方法のいくつかの好ましい態様により調製される。場合によっては、dsRNAの3’末端に結合したアラルキルリガンドを有するdsRNAは、長鎖アミノアルキル基を介して多孔性(controlled-pore)ガラス支持体にモノマー構成要素を最初に共有結合させることによって調製される。次に、標準的な固相合成技法により、固体支持体に結合したモノマー構成要素にヌクレオチドを結合させる。モノマー構成要素は、固相合成に適したのヌクレオシドまたは他の有機化合物であってもよい。
【0080】
本発明のコンジュゲートに使用されるdsRNAは、周知の固相合成技法により簡便かつ日常的に製造することができる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの、他のオリゴヌクレオチドを調製する類似の方法を使用することも公知である。
【0081】
特に改変されたオリゴヌクレオチドの合成に関する教示は、以下の米国特許に見出すことができる:ポリアミンとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,218,105号;改変された骨格を有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,541,307号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドの調製方法に関して記載された米国特許第5,521,302号;ペプチド核酸に関して記載された米国特許第5,539,082号;β−ラクタム骨格を有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドを合成するための方法および材料に関して記載された米国特許第5,571,902号;アルキルチオ基(そのような基は、ヌクレオシドの多様な位置のいずれかに結合した他の部分へのリンカーとして使用することができる)を有するヌクレオシドに関して記載された米国特許第5,578,718号;高キラル純度のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,587,361号;2’−O−アルキルグアノシンおよび2,6−ジアミノプリン化合物を含めた関連化合物の調製方法に関して記載された米国特許第5,506,351号;N−2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,587,469号;3−デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,587,470号;共にコンジュゲーションした4’−デスメチルヌクレオシドアナログに関して記載された米国特許第5,608,046号;骨格改変オリゴヌクレオチドアナログに関して記載された米国特許第5,610,289号;とりわけ2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドの合成方法に関して記載された米国特許第6,262,241号。
【0082】
本発明のリガンドとコンジュゲーションしたdsRNAおよびリガンド分子を有する配列特異的連結ヌクレオシドにおいて、標準的なヌクレオチドもしくはヌクレオシド前駆体、または連結部分を既に有するヌクレオチドまたはヌクレオシドコンジュゲート前駆体、リガンド分子を既に有するリガンド−ヌクレオチドもしくはヌクレオシド−コンジュゲート前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを有する構成要素を利用して、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドを適切なDNA合成装置で作製することができる。
【0083】
典型的に連結部分を既に有するヌクレオチド−コンジュゲート前駆体を使用する場合に、配列特異的連結ヌクレオシドの合成は、完了し、次に、リガンド分子が連結部分と反応し、リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドを形成する。ステロイド、ビタミン、脂質およびレポーター分子などの多様な分子を有するオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、以前に記載されている(Manoharanら、PCT国際公開公報第93/07883号参照)。好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは連結ヌクレオシドは、市販のホスホルアミダイトに加えて、リガンド−ヌクレオシドコンジュゲート由来のホスホルアミダイトを使用して自動合成装置により合成される。
【0084】
オリゴヌクレオシドのヌクレオシドへの2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アリル、2’−O−アミノアルキルまたは2’−デオキシ−2’−フルオロ基の導入は、そのオリゴヌクレオチドに高いハイブリダイゼーション性を付与する。さらに、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドは、高いヌクレアーゼ安定性を有する。したがって、本発明の官能基化された連結ヌクレオシドは、ホスホロチオエート骨格または2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アミノアルキル、2’−O−アリルもしくは2’−デオキシ−2’−フルオロ基のいずれかまたは両方を含むように強化することができる。
【0085】
いくつかの好ましい態様では、5’末端にアミノ基を有する本発明の官能化ヌクレオシド配列は、DNA合成装置を使用して調製し、次に、選択されたリガンドの活性エステル誘導体と反応する。活性エステル誘導体は、当業者に周知である。代表的な活性エステルには、N−ヒドロスクシンイミドエステル、テトラフルオロフェノールエステル、ペンタフルオロフェノールエステルおよびペンタクロロフェノールエステルが挙げられる。アミノ基と活性エステルとの反応により、選択されたリガンドが連結基を介して5’位に結合しているオリゴヌクレオチドが生成する。5’末端のアミノ基は、5’−アミノ改変剤であるC6試薬を使用して調製することができる。好ましい態様では、リガンド分子を、リガンドがリンカーを介して5’−ヒドロキシ基に直接または間接的に連結しているリガンド−ヌクレオシドホスホルアミダイトの使用によって5’位でオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションさせてもよい。そのようなリガンド−ヌクレオシドホスホルアミダイトは、典型的には自動化合成手順の最後に使用されて、5’末端にリガンドを有する、リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドを提供する。
【0086】
本発明の方法の好ましい一態様では、リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの調製は、上にリガンド分子を構築する適切な前駆体分子の選択することから始まる。典型的には、前駆体は、通例使用されるヌクレオシドの適切に保護された誘導体である。例えば、本発明のリガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの合成のための合成前駆体には、非限定的に、分子の核酸塩基部分で保護されていてもよい2’−アミノアルコキシ−5’−ODMT−ヌクレオシド、2’−6−アミノアルキルアミノ−5’−ODMT−ヌクレオシド、5’−6−アミノアルコキシ−2’−デオキシ−ヌクレオシド、5’−6−アミノアルコキシ−2−保護−ヌクレオシド、3’−6−アミノアルコキシ−5’−ODMT−ヌクレオシド、および3’−アミノアルキルアミノ−5’−ODMT−ヌクレオシドが挙げられる。そのような保護されたアミノ連結ヌクレオシド前駆体の合成方法は、当業者に公知である。
【0087】
多くの場合に、本発明の化合物の調製時に保護基が使用される。本明細書に使用されるような「保護」という用語は、表示された部分に保護基が付属されていることを意味する。本発明のいくつかの好ましい態様では、化合物は、一つまたは複数の保護基を有する。多種多様な保護基を本発明の方法に使用することができる。一般に保護基は、化学官能基を特定の反応条件下で不活性にし、分子の残りを実質的に損傷することなしに分子中のそのような官能基に付属させ、そしてその官能基から除去することができる。
【0088】
代表的なヒドロキシル保護基に加えて他の代表的な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Chapter 2, 2d ed., John Wiley & Sons, New York, 1991、およびOligonucleotides And Analogues A Practical Approach, Ekstein, F. Ed., IRL Press, N.Y, 1991に開示されている。
【0089】
酸処理に安定なアミノ保護基は、塩基処理で選択的に除去され、反応性アミノ基を置換に選択的に利用可能にするために使用される。そのような基の例は、Fmoc(E. Atherton and R. C. Sheppard、出典:The Peptides, S. Udenfriend, J. Meienhofer, Eds., Academic Press, Orlando, 1987, volume 9, p.1)およびNsc基により例示される様々な置換スルホニルエチルカルバメートである(Samukov et al., Tetrahedron Lett., 1994, 35:7821。
【0090】
追加的なアミノ保護基には、非限定的に2−トリメチルシリルエトキシカルボニル(Teoc)、1−メチル−1−(4−ビフェニリル)エトキシカルボニル(Bpoc)、t−ブトキシカルボニル(BOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)などのカルバメート保護基;ホルミル、アセチル、トリハロアセチル、ベンゾイル、およびニトロフェニルアセチルなどのアミド保護基;2−ニトロベンゼンスルホニルなどのスルホンアミド保護基;ならびにフタルイミドおよびジチアスクシノイルなどのイミンおよび環状イミド保護基が挙げられる。これらのアミノ保護基の等価体もまた、本発明の化合物および方法に包含される。
【0091】
多数の固体支持体が市販されており、当業者は、固相合成段階に使用される固体支持体を容易に選択することができる。特定の態様では、ユニバーサル支持体が使用される。ユニバーサル支持体は、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置する特異なヌクレオチドまたは改変ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドの調製を可能にする。ユニバーサル支持体に関するさらなる詳細については、Scott et al., Innovations and Perspectives in solid-phase Synthesis, 3rd International Symposium, 1994, Ed. Roger Epton, Mayflower Worldwide, 115-124]を参照されたい。加えて、より容易に塩基性加水分解を受けるsyn−1,2−アセトキシリン酸基を介してオリゴヌクレオチドが固体支持体に結合している場合に、より温和な反応条件でオリゴヌクレオチドをユニバーサル支持体から切断することができることが報告されている。Guzaev, A. I.; Manoharan, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2380を参照されたい。
【0092】
ヌクレオシドは、リン含有またはリン不含のヌクレオシド間共有結合によって結合している。同定のために、そのようなコンジュゲーションしたヌクレオシドは、リガンド結合ヌクレオシドまたはリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートとして特徴づけることができる。配列内にヌクレオシドにコンジュゲーションしたアラルキルリガンドを有する、連結ヌクレオシドは、コンジュゲーションしていない同様のdsRNA化合物と比べた場合に、高いdsRNA活性を実証するであろう。
【0093】
本発明のアラルキル−リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドには、また、オリゴヌクレオチドおよび連結ヌクレオシドのコンジュゲートが含まれ、ここで、リガンドは、中間にリンカー基を挟まずにヌクレオシドまたはヌクレオチドに直接結合している。リガンドは、好ましくはリガンドのカルボキシル、アミノまたはオキソ基で連結基を介して結合してもよい。典型的な連結基は、エステル、アミドまたはカルバメート基でありうる。
【0094】
本発明のリガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに使用するために想定される、好ましい改変オリゴヌクレオチドの具体例には、改変された骨格および非天然ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。改変された骨格またはヌクレオシド間結合を有する、本明細書において定義するようなオリゴヌクレオチドには、骨格にリン原子を保持するものおよび骨格にリン原子を有さないものが含まれる。本発明のために、糖間骨格にリン原子を有さない改変オリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドと見なすことができる。
【0095】
特定のオリゴヌクレオチドの化学的改変を、下記に説明する。所与の化合物の全位置が一様に改変される必要はない。逆に、一つを超える改変を単一のdsRNA化合物に、またはその単一のヌクレオチドにさえも導入することができる。
【0096】
好ましい改変されたヌクレオシド間結合または骨格には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含めたメチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含めたホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’結合アナログ、および隣接するヌクレオシドユニットの対が3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2’に結合している逆極性を有するものが挙げられる。様々な塩、混合された塩および遊離酸形態もまた含まれる。
【0097】
上記リン原子含有結合の調製に関する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第4,469,863号;第5,023,243号;第5,264,423号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号および第5,466,677号が挙げられ、そのそれぞれは、参照により本明細書に組入れられる。
【0098】
中にリン原子を含まない好ましい改変されたヌクレオシド間結合または骨格(すなわちオリゴヌクレオシド)は、短鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間結合、混合されたヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキル糖間結合、または一つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間結合によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(部分的にヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、SおよびCH2の混合成分部分を有するその他を有するものが含まれる。
【0099】
上記オリゴヌクレオシドの調製に関係する代表的な米国特許には、非限定的に米国特許第5,034,506号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,264,562号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,602,240号および第5,663,312号が含まれ、そのそれぞれは、参照により本明細書に組入れられる。
【0100】
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣体では、ヌクレオシドユニットの糖およびヌクレオシド間結合、すなわち骨格の両方が、新規な基に置換される。核酸塩基ユニットは、適切な核酸ターゲット化合物とのハイブリダイゼーションのために保持される。優れたハイブリダイゼーション性を有することが示されている、そのようなオリゴヌクレオチドの一つであるオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格に置換される。核酸塩基は保持され、その骨格のアミド部分の原子に直接または間接的に結合する。PNA化合物の教示は、例えば米国特許第5,539,082号に見いだすことができる。
【0101】
本発明のいくつかの好ましい態様は、ホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオシド、特に、上記に参照した米国特許第5,489,677号の−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格としても知られている]、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2−、および−O−N(CH3)−CH2−CH2−[式中、ネイティブなホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH2−として表される]、および上記に参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格を使用する。同様に好ましいのは、上記に参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0102】
本発明のリガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに使用されたオリゴヌクレオチドは、追加的または代替的に核酸塩基(当技術分野において単に「塩基」と呼ばれることが多い)の改変または置換を含んでもよい。本明細書に使用されるような「非改変」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。改変された核酸塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどの他の合成および天然核酸塩基が挙げられる。
【0103】
さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されたもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されたもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613によって開示されたもの、およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993によって開示されたものが挙げられる。これらの特定の核酸塩基は、本発明のオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびに2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含めたN−2、N−6およびO−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示され(同上、276〜278頁)、現在好ましい塩基置換であるが、なおさらに2’−メトキシエチル糖改変と組合せた場合に、特に好ましい。
【0104】
特定の上記改変核酸塩基に加えて、他の改変核酸塩基の調製に関係する代表的な米国特許には、非限定的に、上記の米国特許第3,687,808号に加えて、米国特許第5,134,066号;第5,459,255号;第5,552,540号;第5,594,121号および第5,596,091号が挙げられ、それらの全ては、参照により本明細書に組入れられる。
【0105】
特定の態様では、本発明のリガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに使用されるオリゴヌクレオチドは、追加的または代替的に、一つまたは複数の置換糖部分を含んでもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の一つを含む:OH;F;O−、S−、もしくはN−アルキル、O−、S−、もしくはN−アルケニル、またはO、S−もしくはN−アルキニル(ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC1〜C10のアルキルまたはC2〜C10のアルケニルおよびアルキニルであってもよい)。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2であり、ここで、nおよびmは、1〜約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の一つを含む:C1〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2 CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基。好ましい改変には、2’−メトキシエトキシ[2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られている]、すなわちアルコキシアルコキシ基が挙げられる。さらに好ましい改変には、1998年1月30日に出願された米国特許第6,127,533号に記載されているような2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基(2’−DMAOEとしても知られている)が挙げられ、その内容は、参照により組入れられる。
【0106】
他の好ましい改変には、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。類似の改変を、また、オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に、3’末端ヌクレオチド上または2’−5’結合オリゴヌクレオチド中の糖の3’位に行ってもよい。
【0107】
本明細書に使用されるような「糖置換基」または「2’−置換基」という用語には、酸素原子と共にまたは酸素原子なしにリボフラノシル部分の2’位に結合した基が含まれる。糖置換基には、非限定的に、フルオロ、O−アルキル、O−アルキルアミノ、O−アルキルアルコキシ、保護されたO−アルキルアミノ、O−アルキルアミノアルキル、O−アルキルイミダゾールおよび式(O−アルキル)mのポリエーテル(式中、mは1〜約10である)が挙げられる。これらのポリエーテルの中で好ましいのは、直鎖および環状ポリエチレングリコール(PEG)、およびクラウンエーテルなどの(PEG)−含有基、とりわけDelgardoら(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1992, 9:249、参照によりその全体が本明細書に組入れられる)によって開示されたものである。さらなる糖の改変は、Cook(Anti-fibrosis Drug Design, 1991, 6:585-607)によって開示されている。フルオロ、O−アルキル、O−アルキルアミノ、O−アルキルイミダゾール、O−アルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノ置換は、その全体が参照により本明細書に組入れられる「Oligomeric Compounds having Pyrimidine Nucleotide(s) with 2' and 5' Substitutions」という名称の米国特許第6,166,197号に記載されている。
【0108】
本発明に受け入れられる追加的な糖置換基には、2’−SRおよび2’−NR2基(式中、各Rは、独立して水素、保護基または置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルである)が挙げられる。2’−SRヌクレオシドは、その全体が参照により本明細書に組入れられる米国特許第5,670,633号に開示されている。2’−SRモノマー出発材料の組入れは、Hammら(J. Org. Chem., 1997, 62:3415-3420)に開示されている。2’−NRヌクレオシドは、Goettingen, M., J. Org. Chem., 1996, 61, 6273-6281;およびPolushin et al., Tetrahedron Lett., 1996, 37, 3227-3230によって開示されている。本発明に受け入れられるさらなる代表的な2’−置換基には、式IまたはII:
【0109】
【化1】
[式中、
Eは、C1−C10アルキル、N(Q3)(Q4)またはN=C(Q3)(Q4)であり;各Q3およびQ4は、独立してH、C1−C10アルキル、ジアルキルアミノアルキル、窒素保護基、テザーもしくは非テザーコンジュゲート基、固体支持体へのリンカーであるか;またはQ3およびQ4は、一緒になって窒素保護基もしくは場合によりNおよびOより選択される少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を含む環構造を形成し;
q1は、1〜10の整数であり;
q2は、1〜10の整数であり;
q3は、0または1であり;
q4は、0、1または2であり;
各Z1、Z2およびZ3は、独立して、C4−C7シクロアルキル、C5−C14アリールまたはC3−C15ヘテロシクリルであり、ここで、該ヘテロシクリル基のヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄より選択され;
Z4は、OM1、SM1、またはN(M1)2であり;各M1は、独立してH、C1−C8アルキル、C1−C8ハロアルキル、C(=NH)N(H)M2、C(=O)N(H)M2またはOC(=O)N(H)M2であり;M2は、HまたはC1−C8アルキルであり;
Z5は、C1−C10アルキル、C1−C10ハロアルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C6−C14アリール、N(Q3)(Q4)、OQ3、ハロ、SQ3またはCNである]の一つを有するものが挙げられる。
【0110】
式Iで示される代表的な2’−O−糖置換基は、その全体が参照により本明細書に組入れられる「Capped 2'-Oxyethoxy Oligonucleotides」という名称の米国特許第6,172,209号に開示されている。式IIで示される代表的な環状2’−O−糖置換基は、その全体が参照により本明細書に組入れられる「RNA Targeted 2'-Modified Oligonucleotides that are Conformationally Preorganized」という名称の米国特許第6,271,358号に開示されている。
【0111】
リボシル環にO−置換を有する糖もまた、本発明に受け入れられる。環Oについての代表的な置換には、非限定的にS、CH2、CHF、およびCF2が挙げられる。
【0112】
オリゴヌクレオチドは、また、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。そのような改変された糖の調製に関する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第5,359,044号;第5,466,786号;第5,519,134号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,646,265号および第5,700,920号が挙げられ、それらの全ては、参照により本明細書に組入れられる。
【0113】
追加的な改変は、オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位に行ってもよい。例えば、本発明のリガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの追加的な一改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを高める一つまたは複数の追加的な非リガンド部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学結合させることを伴う。そのような部分には、非限定的に、コレステロール部分などの脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4, 1053)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923)が挙げられる。
【0114】
本発明には、また、オリゴヌクレオチド内の特定の位置に関して実質的にキラル純粋なオリゴヌクレオチドを使用している組成物が含まれる。実質的にキラル純粋なオリゴヌクレオチドの例には、非限定的に、少なくとも75%SpまたはRpのホスホロチオエート結合を有するもの(Cookら、米国特許第5,587,361号)および実質的にキラル純粋な(SpまたはRp)アルキルホスホネート、ホスホルアミデートまたはホスホトリエステル結合を有するもの(Cook、米国特許第5,212,295号および第5,521,302号)が挙げられる。
【0115】
場合によっては、オリゴヌクレオチドを、非リガンド基により改変してもよい。いくつかの非リガンド分子は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを高めるためにオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされており、そのようなコンジュゲーションを行う手順は、科学文献から利用することができる。そのような非リガンド部分には、コレステロールなどの脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)が含まれた。典型的なコンジュゲーションプロトコールは、配列の一つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するオリゴヌクレオチドの合成を伴う。次に、適切なカップリング試薬または活性化試薬を使用して、コンジュゲーションされる分子とアミノ基を反応させる。コンジュゲーション反応は、まだ固体支持体に結合しているオリゴヌクレオチドと共に、または液相中の切断後のオリゴヌクレオチドのいずれかで行ってもよい。HPLCによるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの精製により、典型的には純粋なコンジュゲートが得られる。コレステロールコンジュゲートの使用は、そのような部分が第VII因子タンパク質産生部位である肝臓中の組織へのターゲティングを増加させることができることから、特に好ましい。
【0116】
または、コンジュゲーションされる分子は、分子に存在するアルコール基を介して、またはリン酸化されうるアルコール基を有するリンカーの結合によって、ホスホルアミダイトなどの構成要素に変換してもよい。
【0117】
重要なことには、リガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドを合成するために、これらのアプローチのそれぞれを使用することができる。アミノ連結オリゴヌクレオチドを、カップリング試薬の使用によりリガンドと直接カップリングさせてもよく、またはリガンドをNHSもしくはペンタフルオロフェノレート(pentfluorophenolate)エステルとして活性化後に、カップリングさせてもよい。リガンドのホスホルアミダイトは、カルボキシル基の一つにアミノヘキサノールリンカーを結合させ、続いて末端アルコール官能基を亜リン酸エステル化することによって合成してもよい。システアミンなどの他のリンカーを、また、合成されたオリゴヌクレオチド上に存在するクロロアセチルリンカーへのコンジュゲーションに利用してもよい。
【0118】
本発明の主な要旨の一つは、本発明のdsRNA分子を含む薬学的組成物の提供である。そのような薬学的組成物は、また、本発明のdsRNA分子に含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む、そのようなdsRNA分子またはベクターの個別の鎖を含んでもよい。また、本明細書に定義されたdsRNA分子を発現するか、または含む細胞および組織を、薬学的組成物として使用してもよい。そのような細胞または組織は、特に移植アプローチに有用でありうる。これらのアプローチは、また、異種移植を含んでもよい。
【0119】
一態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなdsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。dsRNAを含む薬学的組成物は、血栓塞栓障害などのFVII遺伝子の発現または活性に関連する疾患または障害を処置するために有用である。
【0120】
本発明の薬学的組成物は、FVII遺伝子の発現を阻害するために十分な薬用量で投与される。本発明者らは、それらの改善された有効性のおかげで、本発明のdsRNAを含む組成物を低薬用量で投与できることを見出した。
【0121】
一般に、dsRNAの適切な用量は、1日にレシピエントの体重1kgあたり0.01〜5.0ミリグラム、好ましくは1日に体重1kgあたり0.1〜200マイクログラム、さらに好ましくは1日に体重1kgあたり0.1〜100マイクログラム、いっそうさらに好ましくは1日に体重1kgあたり1.0〜50マイクログラム、最も好ましくは1日に体重1kgあたり1.0〜25マイクログラムであろう。薬学的組成物は、1日1回投与してもよいか、またはdsRNAは、2、3、4、5、6またはそれを超える分割用量として1日を通して適切な間隔で、またはさらに連続注入も利用して、投与してもよい。その場合、総1日薬用量に達するように、各分割用量に含有されるdsRNAは、それに応じて少量でなければならない。単位薬用量は、また、例えば数日間かけてdsRNAを徐放する従来の徐放製剤を使用して、数日間かけて送達するために配合することができる。徐放製剤は、当技術分野において周知である。この態様では、単位薬用量は、1日用量の倍数に対応する量を含有する。
【0122】
熟練者は、非限定的に疾患または障害の重症度、過去の処置、対象の全身の健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含めたある種の要因が、対象を効果的に処置するために必要な薬用量およびタイミングに影響するおそれがあることを認識しているであろう。さらに、治療有効量の組成物を用いた対象の処置には、単回処置または一連の処置が含むことができる。本発明により包含される個別のdsRNAについての有効薬用量およびin vivo半減期の推定は、従来の方法を用いて、または適切な動物モデルを使用したin vivo試験に基づいて行うことができる。
【0123】
そのような化合物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果の間の用量比は治療指数であり、それを比LD50/ED50で表わすことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0124】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための様々な薬用量の処方に使用することができる。本発明の組成物の薬用量は、好ましくはほとんどまたは全く毒性を有さない、ED50を含む様々な循環濃度範囲にある。薬用量は、使用される剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。本発明の方法に使用される任意の化合物について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初推定することができる。化合物の、または適切であればターゲット配列のポリペプチド産物(例えば減少した濃度のポリペプチドを得る)の、循環血漿濃度範囲を達成する動物モデルで、用量を設定してもよいが、その範囲は、細胞培養で決定されたようなIC50(すなわち症状の最大半値阻害を達成する被験化合物濃度)を含む。そのような情報は、ヒトに有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0125】
前述のように個別にまたは複数でそれらを投与することに加えて、本発明のdsRNAは、他の公知の薬剤と組合せて投与することができる。いずれにしても、投与を行う医師は、当技術分野で公知の、または本明細書に記載された標準的な有効性尺度を利用して、観察された結果に基づきdsRNAを投与する量およびタイミングを調整することができる。
【0126】
本発明により包含される薬学的組成物は、非限定的に、経口経路、または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、鼻腔、直腸、膣および局所(口腔および舌下を含む)投与、ならびに硬膜外投与を含めた非経口経路などの、当技術分野で公知の任意の手段によって投与することができる。好ましい態様では、薬学的組成物は、注入または注射によって静脈内投与される。
【0127】
特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の通常の技術者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を下に記載する。本明細書に言及された全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照は、その全体が参照により本明細書に組入れられる。相反する場合、定義を含め本明細書に基づくものとする。加えて、材料、方法および実施例は、例示だけを目的とし、限定を意図しない。
【0128】
上に提供された態様および本発明の項目をこれから以下の非限定的な実施例を用いて例示する。
【図面の簡単な説明】
【0129】
図および添付の表の説明:
【図1a】配列番号対259/260を含む、FVII dsRNA(図1a)および配列番号対253/254を含むdsRNA(図1b)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に4mg/kgでi.v.注射後のモルモットにおけるFVII血漿濃度に及ぼすFVIIをターゲティングするdsRNA(「FVII dsRNA」)の効果。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)/LNP01およびPBSは、対照である。結果は個別の動物からのものである。
【図1b】配列番号対259/260を含む、FVII dsRNA(図1a)および配列番号対253/254を含むdsRNA(図1b)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に4mg/kgでi.v.注射後のモルモットにおけるFVII血漿濃度に及ぼすFVIIをターゲティングするdsRNA(「FVII dsRNA」)の効果。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)/LNP01およびPBSは、対照である。結果は個別の動物からのものである。
【図2a】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII siRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、肝臓FVII mRNAレベル(2a)および血漿FVIIレベル(2b)に及ぼすモルモットにおけるFVII dsRNAの効果。全ての測定は、注射後48時間または72時間に行った。mRNAの結果は、PBS処置群に対するパーセントで表し;FVIIチモーゲンの結果は、処置前値に対するパーセントで表す。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc siRNA」)/LNP01およびPBSは対照である。統計:平均±sem;*はANOVA、事後Dunnett検定;‡は多重t検定。
【図2b】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII siRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、肝臓FVII mRNAレベル(2a)および血漿FVIIレベル(2b)に及ぼすモルモットにおけるFVII dsRNAの効果。全ての測定は、注射後48時間または72時間に行った。mRNAの結果は、PBS処置群に対するパーセントで表し;FVIIチモーゲンの結果は、処置前値に対するパーセントで表す。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc siRNA」)/LNP01およびPBSは対照である。統計:平均±sem;*はANOVA、事後Dunnett検定;‡は多重t検定。
【図3】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII siRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後のモルモットのプロトロンビン時間(PT)に及ぼすFVII dsRNAの効果。FVII dsRNAのi.v.注射直前(ベースライン)および注射の48時間後または72時間後に血液を採取した。処置前値に対する延長倍率で結果を表す(平均±sem)。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc siRNA」)/LNP01およびPBSは、対照である。
【図4】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII dsRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、モルモット動脈血栓症モデルにおけるFVII dsRNAの抗血栓効果。全ての測定は、麻酔した動物において注射の48時間後または72時間後に行った(方法参照)。結果をPBS処置群に対するパーセントで表す。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc dsRNA」)/LNP01およびPBSは対照である。統計:平均±sem;*はANOVA、事後Dunnett検定;‡は多重t検定。
【図5】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「siFVII」)をSNALP−L製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、肝臓FVII mRNAレベル(a)および血漿FVIIレベル(b)に及ぼすモルモットにおけるFVII dsRNAの効果。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「siLuc」)/SNALP−LおよびPBSは対照である。
【図6a】SNALP−L製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNAのi.v.注射後のモルモットにおける(a)外科的失血および(b)爪上皮出血時間に及ぼすFVII dsRNAの効果。結果は、PBS処置群に対する増加倍率(外科的失血)および延長倍率(上皮出血時間)で表した。全ての測定は、注射後72時間に行った。SNALP−L製剤中のルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)(Luc dsRNA)およびPBSは対照である。最大95%のFVIIのダウンレギュレーションで(0.05mg/kg〜2mg/kgのFVII dsRNA)、両モデルにおいて出血傾向の増加は観察されなかった。
【図6b】SNALP−L製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNAのi.v.注射後のモルモットにおける(a)外科的失血および(b)爪上皮出血時間に及ぼすFVII dsRNAの効果。結果は、PBS処置群に対する増加倍率(外科的失血)および延長倍率(上皮出血時間)で表した。全ての測定は、注射後72時間に行った。SNALP−L製剤中のルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)(Luc dsRNA)およびPBSは対照である。最大95%のFVIIのダウンレギュレーションで(0.05mg/kg〜2mg/kgのFVII dsRNA)、両モデルにおいて出血傾向の増加は観察されなかった。
【図7】−血漿中FVII活性とPT延長の間の相関。FVII dsRNAのiv注射後のFVII活性の減少(LNP01およびSNALP−L中に製剤化されたFVII dsRNAからのデータを合同したもの)は、FVII依存性凝固パラメーターPTとよく相関した。
【図8】ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)またはFVII dsRNA(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に発色アッセイによって3回測定された、カニクイザル血漿中のFVII活性。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示す。N=2匹の雌性カニクイザル。各個別のサルの投薬前FVII活性値の平均に対して値を標準化し、標準偏差を示すエラーバーを付ける。
【図9】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に3回測定された、カニクイザル血漿中のプロトロンビン時間(PT)。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示す。N=2匹の雌性カニクイザル。各個別のサルの投薬前PTの平均に対して標準化した変化倍率として値を示し、標準偏差を示すエラーバーを付ける。
【図10】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に発色アッセイによって3回測定された、カニクイザル血漿中のFVII活性。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示した。N=2匹の雄性カニクイザル、1mg/kgのFVII dsRNA群(n=3匹の雄性カニクイザル)および3mg/kgのルシフェラーゼdsRNA群(n=2匹の雌性カニクイザル)を例外とする。100%に設定した各個別のサルの投薬前FVII活性値の平均に対して値を標準化した。エラーバーは、各群におけるサルの最小/最大値を示す。
【図11】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に3回測定されたカニクイザル血漿中のプロトロンビン時間(PT)。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示す。N=2匹の雄性カニクイザル、1mg/kgのFVII dsRNA群(n=3匹の雄性カニクイザル)および3mg/kgのルシフェラーゼdsRNA群(n=2匹の雌性カニクイザル)を例外とする。1に設定した各個別のサルの投薬前PT値の平均に対して標準化したPT変化倍率として値を示す。エラーバーは、各群におけるサルの最小/最大値を示す。
【図12】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射前後に経時的に、カニクイザル血清中のFVII活性を追跡した。FVII活性は、投薬前および投薬後の表示時点に3回発色アッセイによって測定した。dsRNAに関する用量は、各動物についてmg/kgで表し、数字は、試験における個別の動物の番号を示す。注射した日に100%に設定した各動物の投薬前の平均に対して曲線を標準化する。
【図13】カニクイザル血漿中のプロトロンビン時間(PT)を、SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射前後に経時的に追跡した。PTは、投薬前および投薬後の表示時点に3回測定した。dsRNAに関する用量は、各動物についてmg/kgで示し、数字は、試験における個別の動物の番号を表示する。値はPTの変化倍率として示し、曲線は、注射の日に1に設定した各動物の投薬前の平均に対して標準化する。
【図14】カニクイザル血漿中のFVII活性を、SNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)を3mg/kgで反復ivボーラス注射前後に経時的に追跡した。FVII活性を、投薬前および投薬後の表示時点に3回発色アッセイによって測定した。最初に注射した日に100%に設定した各動物の投薬前の平均に対して曲線を標準化する。
【図15】カニクイザル血漿におけるプロトロンビン時間(PT)を、SNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の反復ivボーラス注射前後に経時的に追跡した。3mg/kgを投薬前および投薬後の表示時点に3回PTを測定した。値をPT変化倍率として示し、曲線を、注射した日に1に設定した各動物の投薬前の平均に対して標準化する。
【図16】オフターゲット配列のサイレンシングに及ぼす、配列番号対13/14を含むFVII dsRNAの効果。FVII mRNAの19塩基長ターゲット部位(「on」)またはin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off1」〜「off10」;「off1」〜「off8」はアンチセンス鎖オフターゲットであり、「off9」〜「off10」はセンス鎖オフターゲットである)のいずれかを表わすデュアルルシフェラーゼ構築物を発現しているCOS7細胞に50nMのFVII dsRNAをトランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAは、対応するターゲット部位の機能的サイレンシングについての陽性対照である。
【図17】オフターゲット配列のサイレンシングに及ぼす、配列番号対19/20を含むFVII dsRNAの効果。FVII mRNAの19塩基長ターゲット部位(「on」)またはインシリコで予測されたオフターゲット配列(「off1」〜「off17」;「off1」〜「off14」はアンチセンス鎖オフターゲットであり、「off15」〜「off17」はセンス鎖オフターゲットである)のいずれかを表わすデュアルルシフェラーゼ構築物を発現しているCOS7細胞に50nMのFVII dsRNAをトランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAは、対応するターゲット部位の機能的サイレンシングについての陽性対照である。off11と同じ10個のヌクレオチドを上流および下流に有する、第VII因子mRNAのターゲット部位をクローニングし、機能的ターゲット部位を作製した。
【図18】オフターゲット配列のサイレンシングに及ぼす、配列番号対11/12を含むFVII dsRNAの効果。FVII mRNAの19塩基長ターゲット部位(「on」)またはin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off1」〜「off16」;「off1」〜「off13」はアンチセンス鎖オフターゲットであり、「off14」〜「off16」は、センス鎖オフターゲットである)のいずれかを表わすデュアルルシフェラーゼ構築物を発現しているCOS7細胞に50nMのFVII dsRNAをトランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAは、対応するターゲット部位の機能的サイレンシングについての陽性対照である。配列番号対19/20についてoff11と同じ10個のヌクレオチドを上流および下流に有する第VII因子mRNAのターゲット部位をクローニングし、機能的ターゲット部位を作製した。
【0130】
表1 − ヒト第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は、2’−O−メチル−改変ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを、そして「dT」はデオキシチミジンを表す。
表2 − ヒト第VII因子をターゲティングするdsRNAの特徴付け:Huh7細胞における用量反応についての活性試験。IC50:50%阻害濃度。
表3 − ヒト第VII因子をターゲティングするdsRNAの特徴づけ:安定性およびサイトカイン誘導。t1/2:実施例において同義の鎖半減期、PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
表4 − モルモット第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は、2’−O−メチル−改変ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを、そして「dT」はデオキシチミジンを表す。「f」は、前述のヌクレオチドの2’−フルオロ改変を表す。
表5 − モルモット第VII因子をターゲティングするdsRNAの特徴づけ。IC50:50%阻害濃度、PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
表6 − ヒト第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、「T」はデオキシチミジンを表す。
表7 − モルモット第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、「T」はデオキシチミジンを表す。
表8 − 配列番号対13/14を含む、ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAの選択されたオフターゲット。
表9 − 配列番号対19/20を含む、ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAの選択されたオフターゲット。
表10 − 配列番号対11/12を含む、ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAの選択されたオフターゲット。
【0131】
実施例
治療用途のdsRNAの同定
ヒト第VII因子を特異的にターゲティングする治療用途のdsRNAを同定するために、dsRNAの設計を実施した。まず、ヒト(Homo sapiens)第VII因子の既知のmRNA配列(配列番号406および配列番号407として記載されたNM_019616およびNM_000131.3)をコンピューター解析によって調査し、これらの配列の間で交差反応性のRNA干渉(RNAi)作用物質を生成する19個のヌクレオチドの相同配列を同定した。
【0132】
RNAi作用物質の同定にあたり、fastAアルゴリズムを用いて、ヒトRefSeqデータベース(リリース25)(広範なヒトトランスクリプトームを表わすと仮定した)における任意の他の配列に対して少なくとも2個のミスマッチを有する19塩基長配列に限って選択を行った。
【0133】
16匹のサルからRT−PCR増幅後に、カニクイザル(Macaca fascicularis)第VII因子遺伝子のCDS(コード配列)を配列決定した。この配列をNCBI EST/EMBL BB885059 EST(配列番号408)の逆相補体と一緒に使用して、カニクイザル第VII因子についての代表的なコンセンサス配列(配列番号409参照)を作製させた。
【0134】
ヒトに加えてカニクイザルの第VII因子に交差反応性のdsRNAを、治療用途に最も好ましいと決定した。4個以上の連続するG’(ポリ−G配列)を有する全ての配列を合成から除外した。
【0135】
このように同定された配列は、表1および6におけるRNAi作用物質を合成するための基礎とした。
【0136】
in vivo概念実証研究のためのdsRNAの同定
in vivo概念実証実験のための、モルモット(Cavia porcellus)第VII因子に加えて、前述のin vitroスクリーニング目的のヒト第VII因子をターゲティングするdsRNAを同定するために、dsRNAの設計を実施した。まず、モルモット第VII因子について予測される転写物ENSEMBL(ENSCPOT00000005353、配列番号410)およびヒト第VII因子のどちらも既知のmRNA配列(配列番号406および配列番号407として記載されたNM_019616およびNM_000131.3)を、コンピューター解析によって調査し、これらの配列の間で交差反応性のRNAi作用物質を生成する19個のヌクレオチドの相同配列を同定した。
【0137】
4個以上の連続するG(ポリ−G配列)を有する全ての配列を合成から除外した。このように同定された配列は、表4および7におけるRNAi作用物質を合成するための基礎とした。
【0138】
dsRNAの合成
本明細書において試薬の入手源を具体的に示さない場合、そのような試薬は、分子生物学適用基準の品質/純度の分子生物学用試薬を供給する任意の供給業者から得ることができる。
【0139】
Expedite 8909合成装置(Applied Biosystems、Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)および固体支持体として多孔質ガラス(CPG、500Å、Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を使用して、1μmolスケールの固相合成によって1本鎖RNAを作製した。RNAおよび2’−O−メチルヌクレオチドを有するRNAを、それぞれ対応するホスホルアミダイトおよび2’−O−メチルホスホルアミダイトを用いた固相合成に(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)によって作製した。Current protocols in nucleic acid chemistry, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているような標準的なヌクレオシドホスホルアミダイト化学反応を用いて、オリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択された部位にこれらの構成要素を導入した。ヨウ素酸化剤溶液をBeaucage試薬(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)のアセトニトリル溶液(1%)に交換することによって、ホスホロチオエート結合を導入した。さらなる補助試薬をMallinckrodt Baker(Griesheim, Germany)から得た。
【0140】
確立された手順により、陰イオン交換HPLCによる粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護および精製を実施した。分光光度計(DU 640B, Beckman Coulter GmbH, Unterschleissheim, Germany)を使用して波長260nmでそれぞれのRNAの溶液のUV吸収によって収量および濃度を決定した。アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中で等モルの相補鎖溶液を混合し、水浴中、85〜90℃で3分間加熱し、3〜4時間室温に冷却することによって二本鎖RNAを作製した。アニーリングしたRNA溶液を使用まで−20℃で保存した。
【0141】
活性試験
上記第VII因子−dsRNAの活性をHuh7細胞で試験した。
【0142】
第VII因子特異的dsRNAと共にインキュベーションした細胞から得られた総mRNA中の分岐DNAによる第VII因子mRNAの定量のために培養Huh7細胞を使用した。
【0143】
Huh7細胞をAmerican Type Culture Collection(Rockville, Md.、カタログ番号HB-8065)から入手し、5%ウシ胎児血清(FCS)(Gibco Invitrogen、カタログ番号16250-078)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco Invitrogen、カタログ番号15140-122)を含有するように補充したフェノールレッド不含DMEM/F−12(Gibco Invitrogen, Germany、カタログ番号11039-021)中、37℃の加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)中で5% CO2雰囲気中で培養した。
【0144】
細胞の接種およびdsRNAのトランスフェクションを同時に行った。dsRNAをトランスフェクションするために、96ウェルプレートにHuh7細胞を2.5×104個細胞/ウェルの密度で蒔いた。製造業者によって記載されたように、リポフェクトアミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany、カタログ番号11668-019)を用いてdsRNAのトランスフェクションを実施した。最初の単回投与実験において、dsRNAをHuh7細胞に30nMの濃度でトランスフェクションした。各データ点を4連実施で決定した。2回の独立した実験を行った。30nMの単用量選別により70%を超えるmRNAノックダウンを示す最も有効なdsRNAを用量反応曲線によってさらに特徴づけた。用量反応曲線に関して、上記単用量選別について記載されたようにトランスフェクションを行ったが、dsRNA濃度(nM)は、以下:24、6、1.5、0.375、0.0938、0.0234、0.0059、0.0015、0.0004および0.0001nMとした。トランスフェクション後に細胞を加湿インキュベーター(Heraeus GmbH, Hanau, Germany)中で37℃および5% CO2で24時間インキュベーションした。第VII因子mRNAを測定するために、mRNAのbDNA定量にはより高感度のQuantiGene 2.0 Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA、カタログ番号QS0011)を使用し、一方、GAP−DH mRNAの測定にはQuantiGene 1.0 Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA、カタログ番号:QG0004)を使用した。トランスフェクションされたHuh7細胞を回収し、製造業者が勧める手順により53℃で溶解させた。50μlの溶解液をそれぞれヒト第VII因子mRNAまたはモルモット第VII因子に特異的なプローブセット(プローブセットの配列は下記参照)と共にインキュベーションし、QuantiGeneについての製造業者のプロトコールに従い処理した。GAP−DH mRNAの測定のために、GAP−DH特異的プローブセットを用いて10μlの細胞溶解液を分析した。Victor2-Light(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)でRLU(相対発光量)として化学発光を測定し、ヒト第VII因子プローブセットで得られた値を、各ウェルについてのそれぞれのヒトGAPDH値に対して標準化した。無関係の対照dsRNAを陰性対照として使用した。表2および5に阻害データを示す。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
dsRNAの安定性
各1本鎖の半減期を測定することによってヒト血清またはカニクイザル血漿のいずれかを用いたin vitroアッセイでdsRNAの安定性を決定した。
【0148】
30μlのヒト血清またはカニクイザル血漿(Sigma Aldrich)と混合した3μlの50μM dsRNA試料を用いて、各時点について3連で測定を実施した。混合物を37℃で0分間、30分間、1時間、3時間、6時間、24時間、または48時間のいずれかの時間インキュベーションした。非特異的分解についての対照として、dsRNAを30μlの1×PBS(pH6.8)と共に48時間インキュベーションした。4μlのプロテイナーゼK(20mg/ml)、25μlの「Tissue and Cell Lysis Solution」(Epicentre)および38μlのMillipore水を65℃で30分間添加して反応を停止させた。その後、1400rpmで8分間、0.2μmの96ウェルフィルタープレートで試料を遠心濾過し、55μlのMillipore水で2回洗浄し、再度遠心濾過した。
【0149】
1本鎖の分離および残りの全長産物(FLP)の分析のために、溶出液Aとして10% ACN中の20mM Na3PO4(pH=11)および溶出液Bについて溶出液A中の1M NaBrを使用して、変性条件でイオン交換Dionex Summit HPLCに試料を流した。
【0150】
以下の勾配を加えた:
【0151】
【表3】
【0152】
各注入について、クロマトグラムをDionex Chromeleon 6.60 HPLCソフトウェアで自動的に積分し、必要に応じて手動で調整した。全てのピーク面積を内部標準(IS)のピークに対して補正し、t=0分でのインキュベーションに対して標準化した。ピーク下面積および残留FLPを各一本鎖および3連実施について別々計算した。3連実施についてFLPの半分が分解した平均時点[h]により鎖半減期(t1/2)を定義した。結果を表3および5に示す。
【0153】
サイトカイン誘導
in vitroPBMCアッセイにおけるINF−αおよびTNF−αの放出を測定することによってdsRNAの潜在的サイトカイン誘導を決定した。
【0154】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、トランスフェクションした日に2人のドナーの血液バフィーコートからFicoll遠心分離によって単離した。細胞にdsRNAを4連でトランスフェクションし、Gene Porter 2(GP2)またはDOTAPのいずれかをOpti−MEM中で130nMの終濃度で使用して37℃で24時間培養した。このアッセイにおいてINF−αおよびTNF−αを誘導することが知られているdsRNA配列およびCpGオリゴを陽性対照として使用した。サイトカイン誘導にトランスフェクション試薬を必要としない、化学コンジュゲーションしたdsRNAまたはCpGオリゴヌクレオチドを培地中に500nMの濃度でインキュベーションした。インキュベーションの終了時に、4連で培養上清をプールした。
【0155】
次に、これらのプールした上清中のINF−αおよびTNF−αを、標準的なサンドイッチELISAによってプール1個あたり2個のデータ点で測定した。サイトカイン誘導度は、0〜5の評点を利用して陽性対照と比較して表し、5は最大誘導を示した。結果を表3及び5に示す。
【0156】
FVIIをターゲティングするdsRNAのin vivo効果(モルモット)
抗血栓効果
新規な抗血栓薬のin vivo効力を評価するために以前に開発された検証済みモルモット動脈血栓症モデルで上記FVII dsRNAの活性を試験した(Himber J. et al., Thromb Haemost. (2001); 85:475-481)。
【0157】
雄性モルモット(350〜450g、CRL:(HA)BR、Charles River(Germany)を、ケタミン−HCl 90mg/kgおよびキシラジン2% 10mg/kgによるi.m.誘導に続く連続ガス麻酔によって麻酔した。吸入器を介し、麻酔薬を供給し、同時に過剰の蒸気を除去するダブル吸入マスクからO2/空気40:60中に1〜3Vol%のイソフルランを注入した(Provet AG, Switzerland)。体温をサーモスタットで38℃に保った。
【0158】
モルモットを仰臥位にし、採血用に右大腿動脈にカテーテル(TriCath In 22G、0.8mm×30mm, Codan Steritex ApS, Espergaerde, Denmark)を留置した。右頸動脈を解剖して露出させ、Transit Time流量計モジュール(TS420, Transonic Systems Inc. Ithaca, NY,USA)に連結された血管周囲超音波流量プローブ(Transonic 0.7 PSB 232)を頸動脈周辺に配置し、血流速度をモニタリングした。頸動脈血流速度をGraphtec LinearレコーダーVII(Model WR 3101, Hugo Sachs, March-Hugstetten, Germany)で記録した。
【0159】
5〜15分間の血流を安定させた後で、ゴム被覆鉗子を用いて、解剖された頸動脈の1mm部分を10秒間ピッチングすることによって流量プローブから2mm遠位に内皮下層の損傷を起こした。損傷後に、血流の緩徐な減少が起こり、完全な血管閉塞が起こった。流量がゼロに達した場合は、損傷領域の頸動脈を軽く揺り動かし、閉塞性血栓を除去し、流量を回復させ、周期的流量変化(CFV)を生じさせた。CFVが8分間観察されなかった場合、最初の損傷部位でピンチングを繰り返した。CFVが起こらなかった場合は、同じ手順を8分毎に繰り返した。最終的に、CFVが起こるために必要なピンチの回数を40分の観察時間にわたり計数した。このプロトコールを用いて、各CFVの平均周期は、対照動物において約3〜5分/サイクルであった。ピンチの回数に対するCFV数の比として血栓症指数を計算した。
【0160】
血管壁損傷の48または72時間前に、麻酔したモルモットの頸静脈に上記FVII dsRNAを注射した。採取した血液を108mMクエン酸ナトリウム溶液に(1:10の容量で)加えてから、薬物の注射を開始し、血管壁を損傷させた。
【0161】
出血時間および失血
以前に記載されたように爪上皮出血時間(NCBT)の試験を行った(Himber J. et al., Thromb Haemost. (1997) 78:1142-1149)。機械的損傷によって誘導した動脈血栓症の試験を行ったのと同じ動物でNCBTを評価した。麻酔したモルモットにおいて、爪切りを用いて前肢の爪上皮頂端に標準的な切断を行い、足を37℃の水面と接触させたままにし、水中に流血させた。出血時間は、出血が完全に停止した上皮切断後の時間として定義した。2分以内に再度出血した場合は、出血時間を初回出血時間と合計した。40分の実験的血栓症時間の直後にこの操作を同時に3回行った。結果を対照群の値に対する延長倍率で表す。
【0162】
外科的失血(SBL)もまた、NCBTの直後に同じ動物から測定した。麻酔したモルモットを背臥位にし、頸を剃毛し、外科用メス(AESCULAP BB 524)で耳から肩甲骨まで正中切開(長さ40〜50mm、深さ5mm)を行った。切開の直後に、傷に縦にあてた歯科用ガーゼロール(No.1-14 111 00, φ8mm、長さ40mm、Internationale Verbandstoff Fabrik, Neuhausen, Switzerland)に血液を染みこませた。歯科用ロールを傷に5分間あてる前後に秤量し、重量差を5分あたりの失血量(mg)と定義した。1時間評価した総失血量は、1時間の測定時間内に傷にあてられた12個の歯科用ロールに染みこんだ血液の合計量に対応する。
【0163】
続いてペントバルビタール(100mg/kg)のi.v.注射により動物を安楽死させ、肝臓を素早く取り出した。肝臓1gを液体窒素中でショック凍結し、下記のようにFVII mRNAを測定した。
【0164】
血漿のアッセイ
市販の発色アッセイ(BIOPHEN FVII kit; ref 221304, HYPHEN BioMed, France)を使用して、モルモット血漿中のFVIIレベルを決定した。処置前レベルに対するパーセントでFVIIレベルを表した。凝固傾向および出血傾向のマーカーとして使用されるプロトロンビン時間(PT)は、活性化因子としてヒトリコンビナント−ヒト組織因子(Dade Innovin, Dade Behring, Marburg, Germany)を使用して決定し、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、活性化因子としてリン脂質を使用することにより決定した(Dade Actin, Dade Behring, Marburg, Germany)。ACL3000plus Coagulation Systems Analyzerを使用してPTおよびaPTTを測定し、処置前値に対する延長倍率で表す。Hitachi 912 Automatic Analyser(Boehringer Mannheim, Germany)およびALT Kit No. 10851132216、AST(Asat/Got) Kit No. 10851124216, Roche Diagnostics, Switzerland)を使用してアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を測定した。
【0165】
血球数、血小板およびヘマトクリットを測定するために、採取した血液試料を、EDTAの中にも加えた(Cobas Helios VET, F. Hoffmann-La Roche, Basel, Switzerland)。
【0166】
以前に記載されたように、dsRNAをLNP01に入れて製剤化した(Akinc, A. et al., Nature Biotech 2008, 26(5):561-9)。加えて、SNALP−Lに入れて製剤化されたdsRNAを試験した(Judge A.D. et al., J. Clinic. Invest. 2009, 119(3):661-73)。
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
モルモット肝臓組織中のFVII mRNAの測定:
QuantiGene 1.0 branched DNA (bDNA) Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA、カタログ番号:QG0004)を使用して肝臓組織からのFVII mRNAの測定を行った。
【0170】
剖検時に1〜2gの肝臓組織を液体窒素中で急速凍結した。乳鉢および乳棒を用いて凍結組織をドライアイス上で粉末化した。冷却した1.5ml反応チューブに15〜25mgの組織を移し、Lysis Mixtureを1:3でMilliQ水に予備希釈したもの1mlおよび3.3μl プロテイナーゼK(50μg/μl)を添加し、30〜50%出力の超音波処理(HD2070, Bandelin, Berlin, Germany)を数秒間行うことによって組織を溶解した。分析まで溶解物を−80℃で保存した。mRNA分析のために、溶解物を解凍し、1000rpmおよび65℃で15分間プロテイナーゼKで消化した(Thermomixer comfort, Eppendorf, Hamburg, Germany)。FVIIおよびGAPDHのmRNAレベルをQuantiGene 1.0 bDNA Assay Kit試薬を使用して製造業者の推奨により決定した。20μlの溶解物およびモルモット(cavia porcellus)FVIIプローブセットを使用してFVIIの発現を分析し、GAPDHの発現を、40μlの溶解物およびモルモットと交差反応することが示されたラット(rattus norwegicus)プローブセット(プローブセットの配列は下記参照)を使用して分析した。アッセイ終了時の化学ルミネセンスシグナルは、Victor 2 Light luminescence counter(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)で相対発光量(RLU)として測定した。FVIIシグナルを同じ溶解物のGAPDHシグナルで除算し、GAPDHに対して標準化したFVIIの発現として値を示した。
【0171】
例として(図1)、LNP01リポソーム製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNAおよび配列番号対253/254を含むFVII dsRNA[脂質:dsRNA比(w/w)14:1、96%の封入率、サイズ80〜85nm]を4mg/kgでモルモット頸静脈に注射後に、FVIIの血漿レベルの経時変化を3および5日間追跡した。最大のFVIIノックダウンは、注射後24時間で達成され、少なくとも72時間継続した。
【0172】
モルモット動脈血栓症モデルにおいて、配列番号対259/260を含むFVII dsRNA/LNP01(1:14)を1、2、3、4、5mg/kg、単回i.v.投与で試験した。リン酸緩衝食塩水(PBS)およびルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)/LNP01(1:14)を対照として使用した。肝臓のFVII mRNAレベル(図2a)および血漿FVIIチモーゲンレベル(図2b)は、用量依存的に減少し、一方PTは延長した(図3)。
【0173】
血漿のFVIIの80%を超えるノックダウンは、モルモット動脈血栓症モデルにおいて血栓形成の有意な阻害に関連した。観察されたIC50は、配列番号対259/260を含むFVII dsRNA/LNP01(1:14)で1〜2mg/kgであった。配列番号対259/260を含む3、4、5mg/kgのFVII dsRNA/LNP01(1:14)でFVII血漿ノックダウン(約95%)と肝臓mRNAのノックダウン(約80%)とが類似していることは、抗血栓効果が類似していることに関連した(血栓形成の約90%阻害)(図4)。
【0174】
・ 1mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの56%のノックダウン、血漿においてFVIIの62%のノックダウンを誘導し、PTを1.3倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を4%阻害し、血栓形成を約26%阻害した。
・ 2mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの73%のノックダウン、血漿においてFVIIの84%のノックダウンを誘導し、PTを1.6倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を22%阻害し、血栓形成を約62%阻害した。
・ 3mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの81%のノックダウン、血漿においてFVIIの93%のノックダウンを誘導し、PTを2.0倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を27%阻害し、血栓形成を約82%阻害した。
・ 4mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの80%のノックダウン、血漿においてFVIIの93%のノックダウンを誘導し、PTを2.3倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を43%阻害し、血栓形成を約91%阻害した。
・ 5mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの80%のノックダウン、血漿においてFVIIの95%のノックダウンを誘導し、PTを2.4倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を40%阻害し、血栓形成を約92%阻害した。
【0175】
爪上皮出血時間および外科的失血によって評価した出血は、配列番号対259/260の被験FVII dsRNA/LNP01(1:14)の用量(1、2、3、4、5mg/kg)で有意には影響されず、これは、血漿中で正常な止血が最大約95%のFVIIノックダウンまで維持されたことを示唆している。
【0176】
図5は、配列番号対259/260を含むFVII dsRNAをSNALP−Lに入れて製剤化した場合の、肝臓のFVII mRNAレベル(図5a)および血漿のFVII チモーゲンレベル(図5b)を示す。
【0177】
図6は、SNALP−L製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(siFVII)をi.v.注射後のモルモットにおける(a)外科的失血および(b)爪上皮出血時間に及ぼすFVII dsRNAの効果を示す。
【0178】
図7は、血漿のFVII活性とPT延長との相関を示す。FVII活性は、FVII dsRNAのiv注射後に減少し(LNP01およびSNALP−L中で製剤化したFVII dsRNAからの合併データ)、それは、FVII依存性凝固パラメーターPTとよく相関する。
【0179】
FVIIをターゲティングするdsRNAのin vivo効果(Macaca fascicularis)
以下の研究のために、等張緩衝液中の脂質粒子中のdsRNAの滅菌製剤(「安定核酸−脂質粒子」(SNALP)技法、Tekmira Pharmaceuticals Corporation, Canada)を使用した。
【0180】
サル(Macaca fascicularis)における単回用量設定研究
0.3mg/kg〜10mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射をサルに行った。対照群には、脂質粒子によって起こる作用とRNAi介在性作用を識別するために、10mg/kgの高用量のルシフェラーゼdsRNA(配列番号411/412)を投与した。注射の48時間後にサルを屠殺した。
【0181】
血漿および肝臓において薬理効果をモニタリングした。注射の24時間後および48時間後の血漿のFVII活性およびPT値を測定した。注射の48時間後の屠殺時に肝臓のFVII mRNAレベルを測定した。
【0182】
FVII dsRNA(配列番号19/20)処置群は、1mg/kgのdsRNAでFVII活性の約50%の用量依存的減少を示し、3mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)でiv注射の24および48時間後にFVII活性が>90%の減少に達した(図8)。6mg/kgおよび10mg/kgの用量で、FVII活性の減少は、3mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)で見られたものと同様であった。PTの延長は、3mg/kgから観察された(図9)。PTにおける追加的な延長は、用量が6mg/kgおよび10mg/kgに増加したときに観察された。PTの延長は、3mg/kgで1.2倍から10mg/kgで1.4倍までの間であった。
【0183】
有効時間および反復投薬を評価するためのサルにおける探索研究
FVII dsRNA(配列番号19/20)を使用して雄性カニクイザルにおける単回および反復投与を研究した。研究の目的は、FVII dsRNA(配列番号19/20)の薬理効果の持続時間および動態についてさらに洞察することに加えて、多回投与の安全性および有効性を評価することであった。
【0184】
サルにFVII dsRNA(配列番号19/20)を単回または反復投与した。単回投与の目的は、効果の持続時間を検討することであった。単回投与群のサルに3mg/kgおよび6mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)のボーラス注射を行った。6mg/kgのルシフェラーゼdsRNA(配列番号411/412)群をdsRNA配列依存性サイレンシングに関する対照とするために、そして脂質粒子関連作用を評価するために使用した。反復投薬の目的は、用量加算性を研究すること、および脂質粒子の毒性の問題または薬理効果の過剰発現(exaggerated pharmacology)による潜在的出血問題のいずれかにより定義されるような最大耐用量を同定することであった。2種の反復投薬群のサルに1週間に1回FVII dsRNA(配列番号19/20)のボーラス注射を3mg/kgおよび10mg/kgで3回行うことを計画した。
【0185】
上記サルの単回投与研究における結果のフォローアップとして、低用量での脂質粒子介在性効果の特徴をさらに調べるために3mg/kgのルシフェラーゼdsRNA(配列番号411/412)の雌性サル群を含めた。研究の間および屠殺時の複数の時点で採取した血漿試料から薬理効果(FVII活性およびPT)をモニタリングした。
【0186】
24時間および48時間でのFVII活性についてまとめたデータは、上記単回投与研究からのデータに類似していた(図10)。FVII dsRNA(配列番号19/20)は、1mg/kg用量で約50%、3、6および10mg/kg用量で約85%〜95%、FVII活性を減少させた。3および6mg/kgのルシフェラーゼdsRNA対照群から、dsRNA脂質粒子が24時間でFVII活性に一過性の非特異的な影響を及ぼすことが確認された。48時間で値は正常に戻った。したがって、3および6mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)群において48時間に認められた活性は、完全にFVII dsRNAの薬理活性に原因があるとすることができる。
【0187】
PT値を図11に示す。1.2倍のPT延長が3mg/kgで観察され、10mg/kgでは用量依存的に1.7倍に増加した。
【0188】
サルにおける薬理効果の持続時間は、1か月超にわたり追跡した血漿のFVII活性レベルからの外挿に基づくと、約6週間であった(図12)。FVII活性の全減少は約1週間持続し、その後FVII活性が徐々に回復した。類似のサイレンシング動態が3および6mg/kgで観察され、これは、デポー効果がなかったこと、および単なるFVII活性の全阻害に必要な用量よりも高い用量で与えられたFVII dsRNAが、必ずしも薬理効果を延長しないことを示唆している。
【0189】
PT延長は、4週間認められ、処置後1週間で最高値となり、続いて2〜4週間目に直線的に減少した(図13)。データは、このFVII依存性バイオマーカーに及ぼす効果を認めるために、>70%のFVII活性減少が必要であったことを示している。
【0190】
3mg/kgで1週間に1回の多回投与を図14に示す。定常状態の状況を調査するために、そして効力の過剰発現および有毒作用を避けるために、2回目と3回目の投与の間隔を1週間から2週間に広げた。FVIIの活性データは、定常状態の間にFVIIレベルを固定することが実行可能であったことを示した。
【0191】
80%〜95%のFVII活性減少を維持するために、3mg/kgで2または3週間間隔で投与することが最適と思われた。PT値は、1.2〜1.8倍の延長に保つことができる。
【0192】
80%〜95%のFVII活性減少を維持するために、3mg/kgで2または3週間の間隔で投与することが最適と思われた。PT値を、1.2〜1.8倍の延長時間に保つことができ(図15)、注射の数日後に顕著なPTピークが認められた。これらのピークは、おそらくFVII dsRNAの薬理活性と、脂質粒子からの非特異的作用との相加的作用が原因であった。
【0193】
ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAのin vitroのオフターゲット分析
psiCHECK(商標)ベクター(Promega)は、RNAi活性をモニタリングするための二つのレポーター遺伝子、すなわち合成版ウミシイタケルシフェラーゼ(hRluc)遺伝子および合成ホタルルシフェラーゼ遺伝子(hluc+)を有する。ホタルルシフェラーゼ遺伝子は、ホタルルシフェラーゼの発現に対するウミシイタケルシフェラーゼの発現の変化の標準化を可能にする。ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼの活性を、Dual-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)を使用して測定した。本発明のdsRNAのオフターゲット効果を分析するためにpsiCHECK(商標)ベクターを使用するために、予測されるオフターゲット配列を、合成ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子およびその翻訳終止コドンの3’に位置するマルチクローニング領域にクローニングした。クローニング後に、そのベクターを哺乳動物細胞系にトランスフェクションし、続いてFVIIをターゲティングするdsRNAを共トランスフェクションする。dsRNAが予測されるオフターゲットのターゲットRNAに対して効果的にRNAi過程を開始するならば、融合されたウミシイタケターゲット遺伝子のmRNA配列は分解し、ウミシイタケルシフェラーゼ活性の減少を招くであろう。
【0194】
in silicoオフターゲット予測
本発明のdsRNAに相同な配列についてヒトゲノムをコンピューター解析により検索した。本発明のdsRNAと5個未満のミスマッチを示した相同配列を、可能性のあるオフターゲットとして定義した。in vitroのオフターゲット分析のために選択されたオフターゲットを、添付の表8、9および10に示す。
【0195】
予測されたオフターゲット配列を有するpsiCHECKベクターの産生
siRNA有力候補についてのオフターゲット効果を分析するための戦略は、予測されたオフターゲット部位をXhoIおよびNotI制限部位を介してpsiCHECK2ベクターシステム(Dual Glo(登録商標)-system, Promega, Braunschweig, Germany、カタログ番号C8021)にクローニングすることを含む。したがって、siRNAターゲット部位の上流および下流の10個のヌクレオチドをオフターゲット部位から伸長させる。さらに、フラグメントの挿入を制限分析により確認するために、NheI制限部位を組込む。1本鎖オリゴヌクレオチドを標準プロトコール(例えばMetabionによるプロトコール)によりMastercycler(Eppendorf)でアニーリングさせ、次に予めXhoIおよびNotIで消化しておいたpsiCHECK(Promega)にクローニングした。挿入の有無はNheIを用いた制限分析に続く陽性クローンの配列決定により検証した。配列決定のための選択されたプライマー(配列番号761)は、ベクターpsiCHECKの1401位に結合する。クローン産生後に、配列決定によりプラスミドを分析し、次に細胞培養実験に使用した。
【0196】
dsRNAのオフターゲット効果の分析
細胞培養:
Cos7細胞は、Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ、Braunschweig, Germany、カタログ番号ACC-60)から得られ、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号S0115)、ペニシリン100U/ml、およびストレプトマイシン100μg/ml(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号A2213)および2mM L−グルタミン(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号K0283)さらに12μg/ml重炭酸ナトリウムを含有するように補充されたDMEM(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号F0435)に入れて、加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)中、37℃で5% CO2雰囲気中で培養した。
【0197】
トランスフェクションおよびルシフェラーゼの定量:
プラスミドのトランスフェクションのために、Cos−7細胞を96ウェルプレート中、2.25×104個細胞/ウェルの密度で蒔き、そのままトランスフェクションした。プラスミドのトランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany、カタログ番号11668-019)を50ng/ウェルの濃度で用いて製造業者の説明に従い実施した。トランスフェクションの4時間後に、培地を捨て、新鮮培地を添加した。ここで、上記リポフェクトアミン2000を使用してsiRNAを50nMの濃度でトランスフェクションした。siRNAのトランスフェクションの24時間後に、製造業者(Dual-GloTM Luciferase Assay system, Promega, Mannheim, Germany、カタログ番号E2980)の説明に従いルシフェラーゼ試薬を使用して細胞を溶解させ、製造業者のプロトコールによりホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼを定量した。ウミシイタケルシフェラーゼのタンパク質レベルをホタルルシフェラーゼのレベルに対して標準化した。各siRNAについて12個の個別のデータ点を3回の独立した実験で収集した。全てのターゲット部位に関係しないsiRNAを、siRNA処理細胞におけるウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の相対レベルを決定するための対照として使用した。
【0198】
結果を図16、17および18に示す。
【0199】
【表6】
【0200】
【表7】
【0201】
【表8】
【0202】
【表9】
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
【表12】
【0206】
【表13】
【0207】
【表14】
【0208】
【表15】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、および第VII因子遺伝子の発現を阻害するためのRNA干渉を仲介することにおける、特に肝臓での第VII因子チモーゲンの発現阻害における、続いて第VII因子チモーゲンの血漿レベルを低下させることにおけるそれらの使用に関する。さらに、動脈および静脈血栓症のような第VIIa、IXa、Xa、XIIa凝固因子、トロンビンの活性化に関連する広範囲の血栓塞栓性疾患/障害、炎症、動脈硬化症ならびにガンを治療/予防するための該dsRNAの使用は、本発明の一部である。
【0002】
第VII因子(FVII)は、血液凝固の外因性経路の開始に関与するビタミンK依存性糖タンパク質である。FVIIは、肝臓で合成され、主に血漿中で不活性一本鎖チモーゲンとして循環する。FVIIは、血管損傷により露出した組織因子(TF)に結合すると、1個のペプチド結合の切断によって切断されてその2本鎖活性型(FVIIa)となり、20kDaの軽鎖および30kDaの重鎖を生じる。FVIIaの軽鎖は、二つの上皮増殖因子様(EGF−1、EGF−2)ドメインおよびγ−カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインを含み、Glaドメインは、カルシウムを結合可能にし、分子内にコンフォメーション変化を起こし、新規なエピトープを露出させ、それが続いてTFに結合するのを容易にする。重鎖は、他の凝固のセリンプロテアーゼに構造的に相同な触媒ドメインを有する。TF:FVIIa複合体は、今度はタンパク質限定加水分解性切断によってFIXおよびFXを活性化し、トロンビンの形成および最終的にフィブリンクロットに導く。
【0003】
ヒトFVII遺伝子は、肝細胞に発現しているが、FVII mRNAの定常状態レベルは非常に低い。ヒトFVIIの完全配列は、全長cDNAクローンから推論されている(Hagen F. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83:2412-2416)。高レベルのFVIIは、心血管疾患の発生についての独立したリスク因子に関連している。高コレステロール血症の患者では、FVIIレベルは、C反応性タンパク質(CRP)またはサイトカイン(IL−6)などの炎症促進性可変因子と独立して相関した。しかし、全ての研究がFVIIを冠動脈心疾患における独立リスク因子として確認したわけではない(Lowe G. D. O. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. (2004) 24:1529-1534)。
【0004】
TF:FVIIa複合体は、凝固と炎症反応の間の複雑なクロストークに重大な役割を果たす。それが凝固に果たす十分に確立された役割に加えて、TF:FVIIa複合体は、炎症、血管形成などの細胞過程ならびにガンおよびアテローム性動脈硬化症の病態生理に影響するシグナル伝達などの細胞内変化もまた誘導する。
【0005】
動物モデルにおける概念実証実験から、FVIIaの特異的阻害またはFVIIチモーゲンの血漿中濃度の減少が、出血傾向を高めずに抗血栓および抗炎症効果を招くことが実証されている(Xu H., et al., J. Pathol. (2006) 210:488-496)。敗血症モデルにおいて、エンドトキシン誘導性凝固活性化の阻害、炎症性メディエーターであるインターロイキン−6(Il−6)、IL−8の発現減少、および死亡率の抑制が、活性部位を不活性化されたFVIIa(Taylor F. et al., Blood. (1998) 91:1609-1615)またはFVII/VIIaに対するモノクローナルFabフラグメント(Biemond B. J. et al., Thromb. Haemost. (1995) 73:223-230)のいずれかで処置されたサルにおいて観察された。活性部位を不活性化されたFVIIaは、また、実験的急性膵炎において、肺、回腸および結腸における好中球の組織浸潤を抑制し、IL−6およびマクロファージ炎症性タンパク質−2(MIP−2)などの炎症マーカーを減少させて、強力な抗炎症性を示した(Andersson E. et al., Scand. J. Gastroenterology (2007) 42: 765-770)。
【0006】
さらに、マウスへのTF:FVIIa複合体の関節内注射により、滑膜組織への単球浸潤が誘導され、続いて軟骨および骨が破壊される。TF突然変異マウスでは関節炎の重症度が有意に低下したが、これは、関節リウマチ患者の関節の関節内にしばしば見られるTF/FVII複合体が、慢性破壊性関節炎の誘導と進行の両方に重要な成分であることを示している。(Yang Y. H. et al., Am. J. Pathol. (2004) 164:109-117)。
【0007】
抗TFモノクローナル抗体(Mueller B. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:11832-11836)、組織因子経路阻害剤(Amirkhosravi A. et al., Semin. Thromb. Hemost. (2007) 33:643-652)または特異的TF siRNAによるTF発現のノックダウンのいずれかによるTF:FVIIa複合体の遮断により、実験的肺転移が阻害され(Amarzguioui M. et al., Clin. Cancer Res. (2006) 12:4055-4061)、これは、TF:FVIIa複合体が、腫瘍の成長および転移の促進にも関与することを示唆し、さらに、TF:FVIIa複合体の阻害が、ガンの処置のための臨床的に実行可能な戦略であることを示唆している。
【0008】
血栓および炎症障害の処置における著しい進歩にかかわらず、例えば冠動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、ガン/転移のような増殖障害の現在の理解によると、抗血栓性と抗炎症性の両方を有する治療的に活性で安全な物質が、標準的な治療法より改良されたものであることが示唆される。
【0009】
二本鎖RNA分子(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)として知られている高度に保存された調節メカニズムで遺伝子発現を遮断することが示されている。本発明は、FVIIの発現を選択的かつ効率的に減少させることができる二本鎖リボ核酸分子(dsRNA)を提供する。FVII RNAiの使用は、FVIIa、TF−FVIIa複合体、IXa、Xa、XIIaおよびトロンビンのような凝固因子、FVIIaおよびTFによって直接または間接的に活性化される、サイトカインおよびC反応性タンパク質(CRP)のような炎症因子の形成に関連する疾患/障害の治療的および/または予防的処置のための方法を提供する。特定の疾患/障害状態には、動脈および静脈血栓症、深部静脈血栓症、不安定狭心症、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、心房細動による発作、肺塞栓、脳塞栓、腎塞栓、重症肢虚血、急性肢虚血、播種性血管内凝固(例えば細菌、ウイルス疾患、ガン、敗血症、多発外傷によって起こるもの)、壊疽、鎌状赤血球症、結節性動脈周囲炎(periateritis nodosale)、川崎病、バージャー病、抗リン脂質症候群、非限定的に急性または慢性アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、ガン/転移のような増殖障害、膵炎を含めた炎症反応の治療的および/または予防的処置が含まれ、その方法は、ヒトまたは動物にFVIIをターゲティングするdsRNAを投与することを含む。本発明の化合物は、また、血液が体内の医療機器(例えば機械および生体人工心臓弁、血管ステント、血管カテーテル、代用血管)または体外の医療機器(例えば血液透析、人工心肺)に接触している場合の血栓症の予防に使用することができる。
【0010】
本発明は、FVII遺伝子をサイレンシングすることによって肝細胞でのFVIIの発現を選択的かつ効率的に減少させ、そのことにより肝臓で合成されるFVIIタンパク質のレベルを減少させ、最終的に血漿中のFVII活性を低下させることのできる二本鎖リボ核酸分子(dsRNA)を提供する。好ましい一態様では、記載されたdsRNA分子は、FVII遺伝子の発現を少なくとも70%阻害することができる。本発明は、また、FVII遺伝子の発現によって引き起こされる上記を含めた病状および疾患を処置するために、肝臓をFVII dsRNAで特異的にターゲティングするための組成物および方法を提供する。
【0011】
一態様では、本発明は、第VII因子の発現、特に哺乳動物またはヒト第VII因子遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、相互に相補的な少なくとも二つの配列を含む。dsRNAは、第1の配列を含むセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は第2の配列を含むことがあり、添付の表1、4、6および7における特異的dsRNA対の提供も参照されたい。一態様では、センス鎖は、FVIIをコードするmRNAの少なくとも一部に少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。該配列は、アンチセンス鎖に対するセンス鎖の相補的領域に位置する。好ましい一態様では、dsRNAは、特にヒト第VII因子遺伝子をターゲティングし、なお別の好ましい態様では、dsRNAは、モルモット(Cavia porcellus)またはラット(Rattus norvegicus)第VII因子遺伝子をターゲティングする。
【0012】
一態様では、アンチセンス鎖は、該第VII因子遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、相補的領域は、最も好ましくは30ヌクレオチド長未満である。さらに、本明細書に記載の本発明のds分子の長さ(二重鎖長)は、約16〜30個のヌクレオチドの範囲、特に約18〜28個のヌクレオチドの範囲であることが好ましい。本発明に関して特に有用なのは、約19、20、21、22、23または24個のヌクレオチドの二重鎖長である。最も好ましいのは、19、21または23個のヌクレオチドの二重鎖ストレッチである。そのdsRNAは、第VII因子遺伝子を発現している細胞と接触すると、in vitroで第VII因子遺伝子の発現を少なくとも70%阻害する。
【0013】
選択されたdsRNA分子を添付の表6および7に提供するが、配列番号413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437および438のヌクレオチド第1〜19位を含むdsRNA分子が好ましい。
【0014】
一態様では、該dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するアンチセンス鎖を含む。好ましくは、アンチセンス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%相補的なヌクレオチドを含む。
【0015】
別の好ましい態様では、該dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するセンス鎖を含む。好ましくは、センス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%同一なヌクレオチドを含む。
【0016】
別の好ましい態様では、該dsRNA分子は、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するセンス鎖、および1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有するアンチセンス鎖を含む。好ましくは、センス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%同一なヌクレオチド含み、アンチセンス鎖の該オーバーハングは、ウラシル、または第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%相補的なヌクレオチドを含む。
【0017】
好ましいdsRNA分子において、とりわけ好ましくはセンス鎖は、配列番号413、415、417、419、421、423、425、427、429、431、433、435、および437に示される核酸配列から成る群より選択され、アンチセンス鎖は、配列番号414、416、418、420、422、424、426、428、430、432、434、436および438に示される核酸配列から成る群より選択される。したがって、本発明のdsRNA分子は、とりわけ、配列番号413/414、415/416、417/418、419/420、421/422、423/424、425/426、427/428、429/430、431/432、433/434、435/436および437/438から成る群より選択される配列対を含んでもよい。本明細書に提供される特異的dsRNA分子に関連して、配列番号の対は、添付の表にも示されるような、対応するセンス鎖およびアンチセンス鎖配列(5’から3’)に関する。
【0018】
また、改変されたdsRNA分子が本明細書に提供され、特に添付の表1および4に開示され、本発明の改変されたdsRNA分子の説明に役立つ実例を提供している。
【0019】
表2および3は、本発明の特定のdsRNA分子の選択的な生物学的、臨床的および薬学的に関連するパラメーターを提供するものである。
【0020】
本明細書上記に指摘したように、表1は、本発明の改変されたdsRNAsの説明に役立つ実例を提供する(対応するセンス鎖およびアンチセンス鎖をこの表に提供する)。なお、本発明のdsRNAのこれらの構成成分の例示的改変は、改変例として本明細書に提供される。これらのdsRNA(およびその構成成分)のさらなる改変もまた、本発明の一態様として含まれる。対応する例を、本発明のさらに詳細な説明に提供する。
【0021】
添付の表4および7は、また、本発明に関連して有用なさらなるsiRNA分子/dsRNAを提供し、ここで、表4は、表7に示されるような本発明の改変されたsiRNA分子/dsRNA分子の、特定の生物学的および/または臨床的に関連する驚くべき特徴を提供する。これらのRNA分子は、例示的なヌクレオチド改変を含む。
【0022】
最も好ましいdsRNA分子は、添付の表1および4に提供され、ここで、とりわけ好ましくは、センス鎖は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23および25に示される核酸配列から成る群より選択され、アンチセンス鎖は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に示される核酸配列から成る群より選択される。したがって、本発明のdsRNA分子は、とりわけ、配列番号1/2、3/4、5/6、7/8、9/10、11/12、13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24および25/26から成る群より選択される配列対を含んでもよい。最も好ましいdsRNA分子は、配列対19/20および11/12を含む。本明細書に提供される特異的dsRNA分子に関連して、配列番号の対は、添付および包含される表にも示されるような、対応するセンスおよびアンチセンス鎖配列(5’から3’)に関する。
【0023】
一態様では、本発明のdsRNA分子は、センスおよびアンチセンス鎖から成り、ここで、該鎖の少なくとも一方は、少なくとも24時間の半減期を有する。別の態様では、本発明のdsRNA分子は、非免疫刺激性であり、例えばin vitroでINF−αおよびTNF−αを刺激しない。
【0024】
本発明のdsRNA分子は、天然ヌクレオチドから成ることがあるか、または2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチドなどの少なくとも1個の改変ヌクレオチドから成ることがある。2’改変ヌクレオチドは、本発明のdsRNA分子がin vivoで、例えば医学的状況で使用される場合に、特定の免疫刺激因子またはサイトカインが抑制されるというさらなる利点を有しうる。または、そして非限定的に、改変ヌクレオチドは、2’−デオキシ−2’−フルオロ改変ヌクレオチド、2’−デオキシ改変ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ改変ヌクレオチド、2’−アルキル改変ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、および非天然塩基を含むヌクレオチドの群より選択してもよい。好ましい一態様では、dsRNA分子は、以下の改変ヌクレオチド:2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびデオキシチミジンの少なくとも一つを含む。改変ヌクレオチドを含む好ましいdsRNA分子を表1および4に示す。
【0025】
本発明は、また、本発明の少なくとも一つのdsRNAを含む細胞を提供する。細胞は、好ましくはヒト細胞などの哺乳動物細胞である。さらに、本明細書に定義されるdsRNA分子を含む組織および/または非ヒト生物もまた、本発明に含まれ、ここで、該非ヒト生物は、特に研究目的にまたは研究ツールとして、例えば薬物の試験にも有用である。
【0026】
さらに、本発明は、以下の段階:
(a)本明細書において定義の二本鎖リボ核酸(dsRNA)を細胞、組織または生物に導入すること;
(b)段階(a)で作製した該細胞、組織または生物を、FVII遺伝子のmRNA転写物が分解されるために十分な時間維持することによって、所与の細胞におけるFVII遺伝子の発現を阻害すること
を含む、細胞、組織または生物におけるFVII遺伝子、特に哺乳動物またはヒトFVII遺伝子の発現を阻害するための方法に関する。
【0027】
本発明は、また、本発明のdsRNAを含む薬学的組成物に関する。これらの薬学的組成物は、特に、細胞、組織または生物におけるFVII遺伝子の発現の阻害に有用である。本発明の一つまたは複数のdsRNAを含む薬学的組成物は、また、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含んでもよい。
【0028】
別の態様では、本発明は、凝固因子の活性化、炎症または増殖障害に関連する血栓障害を治療、予防または管理するための方法であって、そのような治療、予防または管理の必要のある対象に治療または予防有効量の本発明の一つまたは複数のdsRNAを投与することを含む方法を提供する。好ましくは、該対象は、哺乳動物であり、最も好ましくはヒト患者である。
【0029】
一態様では、本発明は、第VII因子遺伝子の発現により仲介される病状を有する対象を処置するための方法を提供する。そのような状態は、血栓塞栓障害、望まれない炎症イベントまたは増殖障害および上記のような障害を含む。この態様では、dsRNAは、第VII因子遺伝子の発現をコントロールするための治療剤として作用する。その方法は、第VII因子遺伝子の発現がサイレンシングされるように、患者(例えばヒト)に本発明の薬学的組成物を投与することを含む。それらの高い特異性が原因で、本発明のdsRNAは、第VII因子遺伝子のmRNAを特異的にターゲティングする。好ましい一態様では、記載されたdsRNAは、FVII mRNAレベルを特異的に減少させ、細胞中のオフターゲット遺伝子の発現および/またはmRNAレベルに直接には影響しない。
【0030】
好ましい一態様では、記載されたdsRNAは、肝臓中の第VII因子mRNAレベルをin vivoで少なくとも80%減少させ、血漿中の第VII因子チモーゲンレベルをin vivoで少なくとも95%減少させる。別の態様では、記載されたdsRNAは、プロトロンビン時間を延長し、トロンビン生成および血栓形成をin vivoで阻害する。なお別の好ましい態様では、記載されたdsRNA分子によって仲介されるこれらの抗血栓効果は、減少したin vivo血漿FVIIレベルおよび減少したin vivo肝臓FVII mRNAレベルに関連する。
【0031】
一態様では、記載されたdsRNA分子は、血液凝固時間をin vivoで少なくとも2倍に増加させる。
【0032】
治療用dsRNAに関して特に有用なのは、モルモットまたは細胞培養モデルで個別のdsRNAについての毒性、治療有効性および有効薬用量およびin vivo半減期を推定するために使用することができる、モルモット第VII因子をターゲティングするdsRNAセットである。
【0033】
別の態様では、本発明は、細胞における第VII因子遺伝子の発現、特に本発明のdsRNAの一つの少なくとも1本の鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む第VII因子遺伝子の発現を阻害するためのベクターを提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、細胞における第VII因子遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。該ベクターは、本発明のdsRNAの一つの少なくとも1本の鎖をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む。なお、該ベクターが、該調節配列以外に本発明のdsRNAの少なくとも1本の「センス鎖」および該dsRNAの少なくとも1本の「アンチセンス鎖」をコードする配列を含むことが好ましい。請求された細胞が、該調節配列以外に本発明のdsRNAの一つの少なくとも1本の鎖をコードする、本明細書に定義される配列を含む二つ以上のベクターを含むことも予想される。
【0035】
一態様では、その方法は、dsRNAを含む組成物を投与することを含み、ここで、そのdsRNAは、処置される哺乳動物の第VII因子遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。上に指摘したように、本明細書に定義されるdsRNA分子の少なくとも1本の鎖をコードする核酸分子を含むベクターおよび細胞もまた、薬学的組成物として使用することができ、したがって、本明細書に開示された医学的介入の必要のある対象を処置する方法に使用することもできる。薬学的組成物および対応する(ヒト)対象を処置する方法に関するこれらの態様が、また、遺伝子治療アプローチのようなアプローチに関することも注目すべきである。本明細書に提供されるような第VII因子特異的dsRNA分子または本発明のdsRNA分子の個別の鎖をコードする核酸分子を、また、ベクターに挿入し、ヒト患者のための遺伝子治療ベクターとして使用してもよい。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)または定位注射(例えばChen et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057参照)によって対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことがあるか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている徐放マトリックスを含むことがある。または、リコンビナント細胞から完全な遺伝子送達ベクター、例えばレトロウイルスベクターをインタクトに産生できる場合、その医薬製剤は、遺伝子送達システムを産生する一つまたは複数の細胞を包含してもよい。
【0036】
本発明の別の局面では、第VII因子遺伝子の発現活性をモデュレーションする第VII因子特異的dsRNA分子は、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写ユニットから発現される(例えば、Skillern, A.ら、PCT国際公開公報第00/22113号参照)。これらの導入遺伝子は、直鎖構築物、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入することができ、それらは、ホストゲノムに組込まれる導入遺伝子として組入れおよび遺伝することができる。導入遺伝子は、また、それが染色体外プラスミドとして遺伝可能なように構築することができる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
【0037】
dsRNAの個別の鎖を、二つの別々の発現ベクター上のプロモーターによって転写させて、ターゲット細胞に同時トランスフェクションすることができる。または、dsRNAの各個別の鎖を、どちらも同じ発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写させることができる。好ましい態様では、dsRNAは、ステムアンドループ構造を有するようにリンカーポリヌクレオチド配列によって結合した逆方向反復配列として発現される。
【0038】
リコンビナントdsRNA発現ベクターは、好ましくはDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。dsRNAを発現しているウイルスベクターは、非限定的にアデノ随伴ウイルス(総説についてはMuzyczka, et al., Curr. Topics Micro. Immunol. (1992) 158:97-129)参照);アデノウイルス(例えば、Berkner, et al., BioTechniques (1998) 6:616)、Rosenfeld et al. (1991, Science 252:431-434)、およびRosenfeld et al. (1992), Cell 68:143-155)参照);またはアルファウイルスおよび当技術分野で公知の他のウイルスに基づき構築することができる。レトロウイルスは、上皮細胞を含めた多数の異なる種類の細胞に、in vitroおよび/またはin vivoで多様な遺伝子を導入するために使用されている(例えば、Danos and Mulligan, Proc. NatI. Acad. Sci. USA (1998) 85:6460-6464参照)。細胞のゲノムに挿入された遺伝子をトランスダクションおよび発現することができるリコンビナント−レトロウイルスベクターは、PA317およびPsi−CRIPなどの適切なパッケージング細胞系にリコンビナント−レトロウイルスゲノムをトランスフェクションすることによって産生することができる(Comette et al., 1991, Human Gene Therapy 2:5-10; Cone et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349)。リコンビナント−アデノウイルスベクターは、感受性ホスト(例えばラット、ハムスター、イヌおよびチンパンジー)の多種多様な細胞および組織に感染させるために使用することができ(Hsu et al., 1992, J. Infectious Disease, 166:769)、感染に有糸分裂活性細胞を必要としないという利点ももつ。
【0039】
本発明のDNAプラスミドまたはウイルスベクターのいずれかにおけるdsRNA発現を駆動するプロモーターは、真核生物RNAポリメラーゼIプロモーター(例えばリボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼIIプロモーター(例えばCMV初期プロモーターまたはアクチンプロモーターまたはU1 snRNAプロモーター)または好ましくはRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば U6 snRNAまたは7SK RNAプロモーター)または原核生物プロモーター、例えばT7プロモーター(発現プラスミドが、T7プロモーターからの転写に必要なT7 RNAポリメラーゼもまたコードする場合)でありうる。プロモーターは、また、膵臓に導入遺伝子の発現を指令することができる(例えば膵臓についてのインスリン調節配列参照(Bucchini et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2511-2515))。
【0040】
加えて導入遺伝子の発現は、例えば、特定の生理学的レギュレーターに、例えば循環グルコースレベルまたはホルモンに、感受性の調節配列などの誘導性調節配列および発現システムを使用することによって正確にレギュレーションすることができる(Docherty et al., 1994, FASEB J. 8:20-24)。細胞または哺乳動物における導入遺伝子発現のコントロールに適した、そのような誘導性発現システムには、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体形成の化学誘導因子、およびイソプロピル−β−D1−チオガラクトピラノシド(EPTG)によるレギュレーションが含まれる。当業者は、意図されるdsRNA導入遺伝子の使用に基づいて適切な調節/プロモーター配列を選択できよう。
【0041】
好ましくは、dsRNA分子を発現することができるリコンビナントベクターは、下記のように送達され、ターゲット細胞中に長く残る。または、dsRNA分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。必要に応じてそのようなベクターを繰り返し投与することができる。dsRNAは、いったん発現したならばターゲットRNAに結合し、その機能または発現をモデュレーションする。dsRNA発現ベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与による、患者から外植されたターゲット細胞に投与後にその患者に再導入することによる、または所望のターゲット細胞への導入を可能にする他の手段によるなどの、全身的でありうる。
【0042】
dsRNA発現DNAプラスミドは、典型的には陽イオン性脂質担体(例えばオリゴフェクタミン)または非陽イオン性脂質系担体(例えばTransit-TKO(商標))との複合体としてターゲット細胞にトランスフェクションされる。単一のA第VII因子遺伝子または複数のA第VII因子遺伝子の異なる領域をターゲティングするdsRNA介在性ノックダウンのための1週間以上にわたる複数回の脂質トランスフェクションもまた、本発明によって考えられている。本発明のベクターがホスト細胞にうまく導入されたことは、様々な公知の方法を使用してモニタリングすることができる。例えば、一過性トランスフェクションは、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーのようなレポーターを用いてシグナルを発生させることができる。エックスビボ細胞の安定トランスフェクションは、トランスフェクションされた細胞に、ハイグロマイシンB耐性などの特異的環境因子(例えば抗生物質および薬物)に対する耐性を有することを示すマーカーを使用して確認することができる。
【0043】
以下の詳細な説明は、dsRNAを製造および使用する方法、ならびにターゲット第VII因子遺伝子の発現を阻害するdsRNAを含有する組成物、加えて該第VII因子遺伝子の発現によって引き起こされる疾患および障害を処置するための組成物および方法を開示する。
【0044】
定義
便宜上、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲に使用される特定の用語および語句の意味を下記に提供する。この明細書の他の部分での用語の使用と本節に提供されたその定義との間に明らかな矛盾がある場合は、本節の定義が優先されるものとする。
【0045】
それぞれ「G」、「C」、「A」、「U」および「T」または「dT」は、それぞれ一般的に、塩基としてそれぞれグアニン、シトシン、アデニン、ウラシルおよびデオキシチミジンを有するヌクレオチドを意味する。しかし、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、また、下記にさらに詳述するような改変ヌクレオチドまたは代替置換部分を表わすことがある。そのような置換部分を含む配列は、本発明の態様である。下記に詳述するように、本明細書に記載されたdsRNA分子は、また「オーバーハング」、すなわち対になっていない、突出したヌクレオチドであって、本明細書において定義された「センス鎖」および「アンチセンス鎖」の対によって通常形成されるRNA二重らせん構造に直接には関与しないヌクレオチドを含むことがある。多くの場合に、そのような突出したストレッチは、3’末端にデオキシチミジンヌクレオチドを、大部分の態様では2個のデオキシチミジンを含む。そのようなオーバーハングを下記に説明および例示する。
【0046】
本明細書に使用されるような「第VII因子」または「FVII」という用語は、特に第VII凝固因子(以前は「プロコンバーチン」または「血清プロトロンビン転化促進因子」とも記載された)に関し、該用語は、対応する遺伝子、コードされるmRNA、コードされるタンパク質/ポリペプチドに加えて、その機能的フラグメントに関する。「第VII因子遺伝子/配列」という用語は、野生型配列だけでなく、該遺伝子/配列に含まれうる突然変異および変化にも関する。したがって、本発明は、本明細書に提供される特異的dsRNA分子に限定されない。本発明は、また、そのような突然変異/変化を含む第VII因子遺伝子のRNA転写物の対応するヌクレオチドストレッチに少なくとも85%相補的なアンチセンス鎖を含むdsRNA分子に関する。
【0047】
本明細書に使用されるような「ターゲット配列」は、一次転写産物のRNAプロセシングの産物であるmRNAを含めた、第VII因子遺伝子の転写中に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続する部分を表す。
【0048】
本明細書に使用されるような「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチドの命名法を使用して表される配列によって記載されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを表す。しかし、本明細書に詳述されるような「配列を含む鎖」は、また、改変ヌクレオチドのように改変を含んでもよい。
【0049】
本明細書に使用されるように、そして特に指摘しない限り、第1のヌクレオチド配列を第2のヌクレオチド配列に比較して記載するために使用される場合の「相補的」という用語は、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定の条件で第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションして二重鎖構造を形成する能力を表す。本明細書に使用されるような「相補的」配列は、それらがハイブリダイゼーションする能力に関する上記要件が満たされる限り、非Watson-Crick塩基対ならびに/または非天然および改変ヌクレオチドから形成された塩基対を含むか、またはそれらから完全に形成されていてもよい。
【0050】
「完全に相補的」と称される配列は、第1および第2のヌクレオチド配列の全長にわたり、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドへの、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの塩基対形成を含む。
【0051】
しかし、本明細書において第1の配列が第2の配列に対して「実質的に相補的」と称される場合に、これら二つの配列は、完全に相補的でありうるか、またはハイブリダイゼーションしたときに一つまたは複数の、しかし好ましくは4、3または2個以下の、ミスマッチ塩基対を形成しうる。
【0052】
本明細書における「相補的」「完全に相補的」および「実質的に相補的」という用語は、その使用の状況から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、またはdsRNAのアンチセンス鎖とターゲット配列との間の塩基のマッチングに関して使用することができる。
【0053】
本明細書に使用されるような「二本鎖RNA」または「dsRNA」という用語は、2本の逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子、またはリボ核酸分子複合体を表す。二重鎖構造を形成している2本の鎖は、一つのより大きなRNA分子の異なる部分であってもよいか、またはそれらは、別々のRNA分子であってもよい。これらの2本の鎖が一つのより大きな分子の一部であるために、一方の鎖の3’末端と対する他方の鎖の5’末端との間で分断されないヌクレオチド鎖によって連結されて二重鎖構造を形成している場合に、その連結をしているRNA鎖を「ヘアピンループ」と呼ぶ。2本の鎖が、一方の鎖の3’末端と対する他方の鎖の5’末端との間で、分断されないヌクレオチド鎖以外の手段によって共有結合されて二重鎖構造を形成している場合に、その連結している構造を「リンカー」と呼ぶ。RNA鎖は、同じまたは異なる数のヌクレオチドを有してもよい。二重鎖構造に加えて、dsRNAは、一つまたは複数のヌクレオチドオーバーハングを含んでもよい。該「オーバーハング」中のヌクレオチドは、0〜5個のヌクレオチドを含んでもよく、ここで、「0」は、「オーバーハング」を形成する追加的なヌクレオチドがないことを意味し、一方で「5」は、dsRNA二重鎖の個別の鎖に5個の追加的なヌクレオチドがあることを意味する。これらの任意の「オーバーハング」は、個別の鎖の3’末端に位置する。下記に詳述するように、2本の鎖の1本だけに「オーバーハング」を含むdsRNA分子も、本発明に関連して有用であり、有利でさえありうる。「オーバーハング」は、好ましくは0〜2個のヌクレオチドを含む。最も好ましくは、2個の「dT」(デオキシチミジン)ヌクレオチドが、dsRNAの両方の鎖の3’末端に見られる。したがって、「ヌクレオチドオーバーハング」は、dsRNAの1本の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を超えて伸長するか、またはその逆の場合に、dsRNAの二重鎖構造から突出する一つまたは複数の不対ヌクレオチドを表す。「平滑」または「平滑末端」は、dsRNAのその末端に不対ヌクレオチドがないこと、すなわちヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。「平滑末端の」dsRNAは、その全長にわたり二本鎖であるdsRNAであり、すなわちその分子のどちらの末端にもヌクレオチドオーバーハングがないdsRNAである。
【0054】
「アンチセンス鎖」という用語は、ターゲット配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNA鎖を表す。本明細書に使用されるような「相補的領域」という用語は、配列、例えばターゲット配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を表す。相補的領域がターゲット配列に完全には相補的でない場合に、ミスマッチは、末端領域で最も許容され、存在する場合は好ましくは一つまたは複数の末端領域にあり、例えば5’および/または3’末端から6、5、4、3、または2個のヌクレオチド以内にある。
【0055】
本明細書に使用されるような「センス鎖」という用語は、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を表す。「実質的に相補的」は、好ましくは、センスおよびアンチセンス鎖におけるオーバーラップしているヌクレオチドの少なくとも85%が相補的であることを意味する。
【0056】
dsRNAに関して使われる場合の「細胞に導入する」は、当業者に理解されているように、細胞への取込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取込みは、受動(unaided)拡散過程もしくは能動細胞過程を介して、または補助剤もしくは装置によって行うことができる。この用語の意味は、in vitroの細胞に限定されず、dsRNAを、生物の一部である「細胞に導入」してもよい。その場合、細胞への導入は、生物への送達を含むであろう。例えば、in vivo送達について、dsRNAは、組織部位に注射することができるか、または全身投与することができる。例えば、医学的介入を必要とする対象に本発明のdsRNA分子が投与されることが予想されている。そのような投与は、該対象の罹患部に、例えば肝臓組織/細胞に、または肝ガン組織のようなガン組織/細胞に、本発明のdsRNA、ベクターまたは細胞を注射することを含んでもよい。しかし、罹患組織近傍への注射も予想されている。細胞へのin vitro導入には、エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの当技術分野で公知の方法が含まれる。
【0057】
「サイレンシングする」、「発現を阻害する」および「ノックダウンする」という用語は、それらが第VII因子遺伝子に言及するかぎり、本明細書において、第1の細胞または細胞群(第VII因子遺伝子が転写される細胞であって、第VII因子遺伝子の発現が阻害されるように処理されたもの)から単離することができる、第VII因子遺伝子から転写されたmRNAの量が、第2の細胞または細胞群(第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処理されなかったもの(対照細胞))に比べて減少したことを表す、第VII因子遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を表す。阻害度は、通常次式により表される。
【0058】
【数1】
【0059】
または、阻害度は、第VII因子遺伝子の転写に機能的に関連しているパラメーター(例えば細胞によって分泌される、第VII因子遺伝子によってコードされるタンパク質の量、または特定の表現型を提示している細胞数)の減少によって示してもよい。
【0060】
添付の実施例および本明細書に提供される添付の表に例示されるように、本発明のdsRNA分子は、in vitroアッセイにおいて、すなわちin vitroで、ヒト第VII因子の発現を少なくとも約70%阻害することができる。別の態様では、本発明のdsRNA分子は、モルモット第VII因子の発現を少なくとも70%阻害することができ、このことは顕著なin vivo抗血栓効果にも導く。当業者は、特に本明細書に提供されるアッセイを考慮に入れて、そのような阻害速度および関連効果を容易に決定することができる。特に好ましいdsRNAを、例えば添付の表1の、特に順位1〜13に提供する(そこに提供されるセンス鎖およびアンチセンス鎖の配列は、5’から3’方向である)。
【0061】
本明細書に使用されるような「オフターゲット」という用語は、in silico法によって、記載されたdsRNAに配列相補性に基づきハイブリダイゼーションすると予測されるトランスクリプトームの全ての非ターゲットmRNAを表す。本発明のdsRNAは、好ましくは、第VII因子の発現を特異的に阻害し、すなわちどのオフターゲットの発現も阻害しない。
【0062】
本明細書に使用されるような「半減期」という用語は、化合物または分子の安定性の尺度であって、特に本明細書に提供されるアッセイを考慮に入れて、当業者に公知の方法によって評価することができる。
【0063】
本明細書に使用されるような「非免疫刺激性」という用語は、本発明のdsRNA分子による免疫反応の任意の誘導がないことを表す。免疫反応を決定する方法は、当業者に周知であり、例えば実施例の節に記載されているようにサイトカインの放出を評価することによる。
【0064】
「処置する」、「処置」などの用語は、本発明に関連して血栓塞栓障害/疾患、炎症または増殖障害のような、第VII因子の発現に関係する障害の軽減または緩和を意味する。
【0065】
本明細書に使用されるような「薬学的組成物」は、薬理学的有効量のdsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む。しかし、そのような「薬学的組成物」は、また、そのようなdsRNA分子の個別の鎖、または本発明のdsRNAに含まれるセンスもしくはアンチセンス鎖の少なくとも1本をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む、本明細書に記載されたベクターを含んでもよい。本明細書に定義されたdsRNAを発現するか、または含む細胞、組織または単離された器官を「薬学的組成物」として使用してもよいことも予想される。本明細書に使用されるような「薬理学的有効量」、「治療有効量」または単に「有効量」は、意図される薬理学的、治療的または予防的結果を生じるために有効なRNAの量を表す。
【0066】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤の投与のための担体を表す。そのような担体には、非限定的に、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組合せが挙げられる。具体的には、この用語に細胞培養用培地は入らない。経口投与される薬物について、薬学的に許容される担体には、非限定的に、当業者に公知のような不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、香味料、着色料および保存料などの薬学的に許容される賦形剤が挙げられる。
【0067】
薬学的に許容される担体が本発明のdsRNA、ベクターまたは細胞の全身投与を可能にすることが、特に予想される。経腸投与も予想されるが、非経口投与および経皮または経粘膜(例えば吹入、口内、膣、肛門)投与に加えて、薬物の吸入が、医学的介入を必要とする患者に本発明の化合物を投与する実現可能な方法である。非経口投与を採用する場合に、これは、罹患組織または少なくともその近傍への本発明の化合物の直接注射を含むことがある。しかし、本発明の化合物の静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、皮内、くも膜下腔内および他の投与もまた、技術者、例えば担当医師の技術の範囲内である。
【0068】
筋肉内、皮下および静脈内使用のために、本発明の薬学的組成物は、一般に、滅菌水溶液または懸濁物中に提供され、適切なpHおよび等張性に緩衝化されるであろう。好ましい態様では、担体は、水性緩衝液のみから成る。これに関連して、「のみ」は、第VII因子遺伝子を発現する細胞におけるdsRNAの取込みに影響または取込みを仲介しうる補助剤も封入物質もないことを意味する。本発明による水性懸濁剤は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびトラガカントゴムなどの懸濁化剤、ならびにレシチンなどの湿潤剤を含みうる。水性懸濁剤用の適切な保存料には、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよびp−ヒドロキシ安息香酸プロピルが挙げられる。本発明による有用な薬学的組成物には、また、インプラントおよび微小封入デリバリーシステムを含めた徐放剤などの、身体からdsRNAが急速に排泄されるのを防ぐ封入製剤が挙げられる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。リポソーム懸濁剤もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法により、例えば参照により本明細書に組入れられるPCT国際公開公報第91/06309号に記載されているように調製することができる。
【0069】
本明細書に使用されるような「トランスフォーメーションされた細胞」は、dsRNA分子またはそのようなdsRNA分子の少なくとも1本の鎖を発現させることができる、少なくとも一つのベクターが導入された細胞である。そのようなベクターは、好ましくは、本発明のdsRNAに含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むベクターである。
【0070】
表1および4の配列の一つの一方または両方の末端から少数のヌクレオチドだけを除いた短いdsRNAが、上記dsRNAと同様に有効でありうると合理的に予想することができる。上に指摘したように、本発明の大部分の態様では、本明細書に提供されたdsRNA分子は、約16〜約30個のヌクレオチドの二重鎖長(すなわち「オーバーハング」なし)を含む。特に有用なdsRNA二重鎖長は、約19〜約25個のヌクレオチドである。最も好ましいのは、19ヌクレオチド長の二重鎖構造である。本発明のdsRNA分子では、アンチセンス鎖は、センス鎖に少なくとも部分的に相補的である。
【0071】
本発明のdsRNAは、ターゲット配列に1個または複数個のミスマッチを有しうる。好ましい態様では、本発明のdsRNAは、最大3個のミスマッチを有する。dsRNAのアンチセンス鎖がターゲット配列に対するミスマッチを有する場合に、ミスマッチ領域が相補的領域の中心に位置しないことが好ましい。dsRNAのアンチセンス鎖がターゲット配列に対するミスマッチを有する場合に、そのミスマッチが、末端領域に、好ましくは5’および/または3’末端から6、5、4、3または2個のヌクレオチド以内に、限られることが好ましい。例えば、第VII因子遺伝子の領域に相補的な23個のヌクレオチドのdsRNA鎖について、dsRNAは、好ましくは中央の13個のヌクレオチド内に全くミスマッチを有さない。
【0072】
上述のように、dsRNAの少なくとも一つの末端/鎖は、1〜5個、好ましくは1または2個のヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを有してもよい。少なくとも一つのヌクレオチドオーバーハングを有するdsRNAは、その平滑末端の対応物よりも予想外に優れた阻害性を有する。さらに、本発明者らは、1個のヌクレオチドオーバーハングの存在のみが、dsRNAの干渉活性を強化するが、その全体的な安定性には影響しないことを発見した。オーバーハングを1個だけ有するdsRNAがin vivoで、ならびに様々な細胞、細胞培養用培地、血液および血清中で特に安定で有効なことが証明された。好ましくは、一本鎖オーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端またはその代わりにセンス鎖の3’末端に位置する。dsRNAは、また、好ましくはアンチセンス鎖の5’末端に位置する平滑末端を有してもよい。好ましくは、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端は平滑である。別の態様では、オーバーハング中の一つまたは複数のヌクレオチドは、ヌクレオシドチオリン酸エステルと置換されている。
【0073】
また、安定性を高めるために、本発明のdsRNAを化学的に改変してもよい。本発明の核酸は、参照により本明細書に組入れられる"Current protocols in nucleic acid chemistry", Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているような、当技術分野で十分に確立された方法により合成および/または改変してもよい。化学的改変には、非限定的に、2’改変、非天然塩基の導入、リガンドへの共有結合、およびリン酸結合からチオリン酸結合への置換を挙げることができる。この態様では、二重鎖構造の完全性は、少なくとも一つ、好ましくは二つの化学結合によって強化される。化学結合形成は、多様な周知の技法のいずれかによって、例えば共有結合、イオン結合または水素結合;疎水性相互作用、ファンデルワールスまたはスタッキング相互作用によって;金属イオン配位によって、またはプリンアナログの使用を介して達成してもよい。好ましくは、dsRNAを改変するために使用することのできる化学基には、非限定的にメチレンブルー;二官能基、好ましくはビス−(2−クロロエチル)アミン;N−アセチル−N’−(p−グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4−チオウラシル;およびソラレンが挙げられる。好ましい一態様では、リンカーは、ヘキサエチレングリコールリンカーである。この場合、dsRNAは、固相合成により生成され、ヘキサエチレングリコールリンカーは、標準法により組入れられる(例えばWilliams, D.J., and K.B. Hall, Biochem. (1996) 35:14665-14670)。特定の態様では、アンチセンス鎖の5’末端とセンス鎖の3’末端とは、ヘキサエチレングリコールリンカーを介して化学結合している。別の態様では、dsRNAの少なくとも1個のヌクレオチドは、ホスホロチオエート基またはホスホロジチオエート基を含む。dsRNA末端の化学結合は、好ましくは三重らせん結合によって形成される。
【0074】
特定の態様では、化学結合は、1個または数個の結合基によって形成されてもよく、ここで、そのような結合基は、好ましくはポリ−(オキシホスフィニコオキシ−1,3−プロパンジオール)鎖および/またはポリエチレングリコール鎖である。他の態様では、化学結合は、また、プリンの代わりに二本鎖構造に導入されたプリンアナログによって形成されてもよい。さらなる態様では、化学結合は、二本鎖構造に導入されたアザベンゼン−ユニットによって形成されてもよい。なおさらなる態様では、化学結合は、二本鎖構造に導入されたヌクレオチドの代わりに分岐ヌクレオチドアナログによって形成されてもよい。特定の態様では、化学結合は、紫外線によって誘導されてもよい。
【0075】
なお別の態様では、二つの1本鎖の一方または両方のヌクレオチドを改変して、細胞酵素、例えば特定のヌクレアーゼの活性化を抑制または阻害してもよい。細胞酵素の活性化を阻害するための技法は、当技術分野で公知であり、例えば非限定的に2’−アミノ改変、2’−アミノ糖改変、2’−F糖改変、2’−F改変、2’−アルキル糖改変、非荷電骨格改変、モルホリノ改変、2’−O−メチル改変、およびホスホルアミデートである(例えばWagner, Nat. Med. (1995) 1:1116-8参照)。したがって、dsRNA上のヌクレオチドの少なくとも一つの2’−ヒドロキシル基が、化学基、好ましくは2’−アミノ基または2’−メチル基により置換される。また、少なくとも1個のヌクレオチドを改変して、ロックされたヌクレオチドを形成させてもよい。そのようなロックされたヌクレオチドは、リボースの2’−酸素とリボースの4’−炭素を連結するメチレン架橋を有する。オリゴヌクレオチドへのロックされたヌクレオチドの導入により、相補的配列に対する親和性が向上し、融解温度が数度増加する。
【0076】
本明細書に提供されたdsRNA分子の改変は、in vivoに加えてin vitroでその安定性にプラスの影響を与え、(罹患した)ターゲット部へのその送達も向上しうる。さらに、そのような構造的および化学的改変は、投与時のdsRNA分子に対する生理学的反応に、例えばサイトカイン放出(好ましくは抑制される)に、プラスの影響を与えうる。そのような化学的および構造的改変は、当技術分野において公知であり、とりわけNawrot (2006) Current Topics in Med Chem, 6, 913-925に例示されている。
【0077】
dsRNAにリガンドをコンジュゲーションすることで、その細胞吸収に加えて特定組織へのターゲティングを高めることができる。場合によっては、細胞膜の直接透過性を促進するために疎水性リガンドがdsRNAにコンジュゲーションされる。または、dsRNAにコンジュゲーションしたリガンドは、レセプター介在性エンドサイトーシスについての基質である。これらのアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞透過を促進するために使用されている。例えば、コレステロールが、様々なアンチセンスオリゴヌクレオチドとコンジュゲーションされて、コンジュゲーションしていないアナログよりも実質的に活性な化合物を生じた。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103参照。オリゴヌクレオチドとコンジュゲーションされた他の親油性化合物には、1−ピレン酪酸、1,3−ビス−O−(ヘキサデシル)グリセロール、およびメントールが挙げられる。レセプター介在性エンドサイトーシスについてのリガンドの一例は、葉酸である。葉酸は、葉酸レセプター介在性エンドサイトーシスにより細胞に進入する。葉酸と結合したdsRNA化合物は、葉酸レセプター介在性エンドサイトーシスにより細胞に効率的に輸送されるであろう。オリゴヌクレオチドの3’末端への葉酸の結合は、オリゴヌクレオチドの細胞取込みの増加を招く(Li, S.; Deshmukh, H. M.; Huang, L. Pharm. Res. 1998, 15, 1540)。オリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされた他のリガンドには、ポリエチレングリコール、糖質クラスター、架橋剤、ポルフィリンコンジュゲート、および送達ペプチドが挙げられる。
【0078】
場合によっては、オリゴヌクレオチドへの陽イオン性リガンドのコンジュゲーションは、多くの場合にヌクレアーゼ耐性の改善を招く。陽イオン性リガンドの代表例は、プロピルアンモニウムおよびジメチルプロピルアンモニウムである。興味深いことに、陽イオン性リガンドがアンチセンスオリゴヌクレオチド全体に分散した場合に、そのオリゴヌクレオチドは、mRNAに対するその高い結合親和性を保持することが報告された。M. Manoharan Antisense & Nucleic Acid Drug Development 2002, 12, 103および本明細書における参考文献を参照されたい。
【0079】
リガンドとコンジュゲーションした本発明のdsRNAは、dsRNAへの連結分子の結合から誘導されるような反応性ペンダント官能基を有するdsRNAの使用によって合成することができる。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する、合成されたリガンド、または連結部分が結合したリガンドと直接反応させてもよい。本発明の方法は、リガンドとコンジュゲーションしたdsRNAの合成を、いくつかの好ましい態様においてリガンドと適切にコンジュゲーションされたヌクレオシドモノマーであって、固体支持材料にさらに結合されてもよいヌクレオシドモノマーの使用により、容易にする。場合により固体支持材料に接着した、そのようなリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートは、選択された血清結合性リガンドと、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドの5’位に位置する連結部分との反応を介して、本発明の方法のいくつかの好ましい態様により調製される。場合によっては、dsRNAの3’末端に結合したアラルキルリガンドを有するdsRNAは、長鎖アミノアルキル基を介して多孔性(controlled-pore)ガラス支持体にモノマー構成要素を最初に共有結合させることによって調製される。次に、標準的な固相合成技法により、固体支持体に結合したモノマー構成要素にヌクレオチドを結合させる。モノマー構成要素は、固相合成に適したのヌクレオシドまたは他の有機化合物であってもよい。
【0080】
本発明のコンジュゲートに使用されるdsRNAは、周知の固相合成技法により簡便かつ日常的に製造することができる。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などの、他のオリゴヌクレオチドを調製する類似の方法を使用することも公知である。
【0081】
特に改変されたオリゴヌクレオチドの合成に関する教示は、以下の米国特許に見出すことができる:ポリアミンとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,218,105号;改変された骨格を有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,541,307号;キラルリン結合を有するオリゴヌクレオチドの調製方法に関して記載された米国特許第5,521,302号;ペプチド核酸に関して記載された米国特許第5,539,082号;β−ラクタム骨格を有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,554,746号;オリゴヌクレオチドを合成するための方法および材料に関して記載された米国特許第5,571,902号;アルキルチオ基(そのような基は、ヌクレオシドの多様な位置のいずれかに結合した他の部分へのリンカーとして使用することができる)を有するヌクレオシドに関して記載された米国特許第5,578,718号;高キラル純度のホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,587,361号;2’−O−アルキルグアノシンおよび2,6−ジアミノプリン化合物を含めた関連化合物の調製方法に関して記載された米国特許第5,506,351号;N−2置換プリンを有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,587,469号;3−デアザプリンを有するオリゴヌクレオチドに関して記載された米国特許第5,587,470号;共にコンジュゲーションした4’−デスメチルヌクレオシドアナログに関して記載された米国特許第5,608,046号;骨格改変オリゴヌクレオチドアナログに関して記載された米国特許第5,610,289号;とりわけ2’−フルオロ−オリゴヌクレオチドの合成方法に関して記載された米国特許第6,262,241号。
【0082】
本発明のリガンドとコンジュゲーションしたdsRNAおよびリガンド分子を有する配列特異的連結ヌクレオシドにおいて、標準的なヌクレオチドもしくはヌクレオシド前駆体、または連結部分を既に有するヌクレオチドまたはヌクレオシドコンジュゲート前駆体、リガンド分子を既に有するリガンド−ヌクレオチドもしくはヌクレオシド−コンジュゲート前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを有する構成要素を利用して、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドを適切なDNA合成装置で作製することができる。
【0083】
典型的に連結部分を既に有するヌクレオチド−コンジュゲート前駆体を使用する場合に、配列特異的連結ヌクレオシドの合成は、完了し、次に、リガンド分子が連結部分と反応し、リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドを形成する。ステロイド、ビタミン、脂質およびレポーター分子などの多様な分子を有するオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、以前に記載されている(Manoharanら、PCT国際公開公報第93/07883号参照)。好ましい態様では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは連結ヌクレオシドは、市販のホスホルアミダイトに加えて、リガンド−ヌクレオシドコンジュゲート由来のホスホルアミダイトを使用して自動合成装置により合成される。
【0084】
オリゴヌクレオシドのヌクレオシドへの2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アリル、2’−O−アミノアルキルまたは2’−デオキシ−2’−フルオロ基の導入は、そのオリゴヌクレオチドに高いハイブリダイゼーション性を付与する。さらに、ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドは、高いヌクレアーゼ安定性を有する。したがって、本発明の官能基化された連結ヌクレオシドは、ホスホロチオエート骨格または2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−O−プロピル、2’−O−アミノアルキル、2’−O−アリルもしくは2’−デオキシ−2’−フルオロ基のいずれかまたは両方を含むように強化することができる。
【0085】
いくつかの好ましい態様では、5’末端にアミノ基を有する本発明の官能化ヌクレオシド配列は、DNA合成装置を使用して調製し、次に、選択されたリガンドの活性エステル誘導体と反応する。活性エステル誘導体は、当業者に周知である。代表的な活性エステルには、N−ヒドロスクシンイミドエステル、テトラフルオロフェノールエステル、ペンタフルオロフェノールエステルおよびペンタクロロフェノールエステルが挙げられる。アミノ基と活性エステルとの反応により、選択されたリガンドが連結基を介して5’位に結合しているオリゴヌクレオチドが生成する。5’末端のアミノ基は、5’−アミノ改変剤であるC6試薬を使用して調製することができる。好ましい態様では、リガンド分子を、リガンドがリンカーを介して5’−ヒドロキシ基に直接または間接的に連結しているリガンド−ヌクレオシドホスホルアミダイトの使用によって5’位でオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションさせてもよい。そのようなリガンド−ヌクレオシドホスホルアミダイトは、典型的には自動化合成手順の最後に使用されて、5’末端にリガンドを有する、リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドを提供する。
【0086】
本発明の方法の好ましい一態様では、リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの調製は、上にリガンド分子を構築する適切な前駆体分子の選択することから始まる。典型的には、前駆体は、通例使用されるヌクレオシドの適切に保護された誘導体である。例えば、本発明のリガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの合成のための合成前駆体には、非限定的に、分子の核酸塩基部分で保護されていてもよい2’−アミノアルコキシ−5’−ODMT−ヌクレオシド、2’−6−アミノアルキルアミノ−5’−ODMT−ヌクレオシド、5’−6−アミノアルコキシ−2’−デオキシ−ヌクレオシド、5’−6−アミノアルコキシ−2−保護−ヌクレオシド、3’−6−アミノアルコキシ−5’−ODMT−ヌクレオシド、および3’−アミノアルキルアミノ−5’−ODMT−ヌクレオシドが挙げられる。そのような保護されたアミノ連結ヌクレオシド前駆体の合成方法は、当業者に公知である。
【0087】
多くの場合に、本発明の化合物の調製時に保護基が使用される。本明細書に使用されるような「保護」という用語は、表示された部分に保護基が付属されていることを意味する。本発明のいくつかの好ましい態様では、化合物は、一つまたは複数の保護基を有する。多種多様な保護基を本発明の方法に使用することができる。一般に保護基は、化学官能基を特定の反応条件下で不活性にし、分子の残りを実質的に損傷することなしに分子中のそのような官能基に付属させ、そしてその官能基から除去することができる。
【0088】
代表的なヒドロキシル保護基に加えて他の代表的な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, Chapter 2, 2d ed., John Wiley & Sons, New York, 1991、およびOligonucleotides And Analogues A Practical Approach, Ekstein, F. Ed., IRL Press, N.Y, 1991に開示されている。
【0089】
酸処理に安定なアミノ保護基は、塩基処理で選択的に除去され、反応性アミノ基を置換に選択的に利用可能にするために使用される。そのような基の例は、Fmoc(E. Atherton and R. C. Sheppard、出典:The Peptides, S. Udenfriend, J. Meienhofer, Eds., Academic Press, Orlando, 1987, volume 9, p.1)およびNsc基により例示される様々な置換スルホニルエチルカルバメートである(Samukov et al., Tetrahedron Lett., 1994, 35:7821。
【0090】
追加的なアミノ保護基には、非限定的に2−トリメチルシリルエトキシカルボニル(Teoc)、1−メチル−1−(4−ビフェニリル)エトキシカルボニル(Bpoc)、t−ブトキシカルボニル(BOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)などのカルバメート保護基;ホルミル、アセチル、トリハロアセチル、ベンゾイル、およびニトロフェニルアセチルなどのアミド保護基;2−ニトロベンゼンスルホニルなどのスルホンアミド保護基;ならびにフタルイミドおよびジチアスクシノイルなどのイミンおよび環状イミド保護基が挙げられる。これらのアミノ保護基の等価体もまた、本発明の化合物および方法に包含される。
【0091】
多数の固体支持体が市販されており、当業者は、固相合成段階に使用される固体支持体を容易に選択することができる。特定の態様では、ユニバーサル支持体が使用される。ユニバーサル支持体は、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置する特異なヌクレオチドまたは改変ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドの調製を可能にする。ユニバーサル支持体に関するさらなる詳細については、Scott et al., Innovations and Perspectives in solid-phase Synthesis, 3rd International Symposium, 1994, Ed. Roger Epton, Mayflower Worldwide, 115-124]を参照されたい。加えて、より容易に塩基性加水分解を受けるsyn−1,2−アセトキシリン酸基を介してオリゴヌクレオチドが固体支持体に結合している場合に、より温和な反応条件でオリゴヌクレオチドをユニバーサル支持体から切断することができることが報告されている。Guzaev, A. I.; Manoharan, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2380を参照されたい。
【0092】
ヌクレオシドは、リン含有またはリン不含のヌクレオシド間共有結合によって結合している。同定のために、そのようなコンジュゲーションしたヌクレオシドは、リガンド結合ヌクレオシドまたはリガンド−ヌクレオシドコンジュゲートとして特徴づけることができる。配列内にヌクレオシドにコンジュゲーションしたアラルキルリガンドを有する、連結ヌクレオシドは、コンジュゲーションしていない同様のdsRNA化合物と比べた場合に、高いdsRNA活性を実証するであろう。
【0093】
本発明のアラルキル−リガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドには、また、オリゴヌクレオチドおよび連結ヌクレオシドのコンジュゲートが含まれ、ここで、リガンドは、中間にリンカー基を挟まずにヌクレオシドまたはヌクレオチドに直接結合している。リガンドは、好ましくはリガンドのカルボキシル、アミノまたはオキソ基で連結基を介して結合してもよい。典型的な連結基は、エステル、アミドまたはカルバメート基でありうる。
【0094】
本発明のリガンドとコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに使用するために想定される、好ましい改変オリゴヌクレオチドの具体例には、改変された骨格および非天然ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。改変された骨格またはヌクレオシド間結合を有する、本明細書において定義するようなオリゴヌクレオチドには、骨格にリン原子を保持するものおよび骨格にリン原子を有さないものが含まれる。本発明のために、糖間骨格にリン原子を有さない改変オリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドと見なすことができる。
【0095】
特定のオリゴヌクレオチドの化学的改変を、下記に説明する。所与の化合物の全位置が一様に改変される必要はない。逆に、一つを超える改変を単一のdsRNA化合物に、またはその単一のヌクレオチドにさえも導入することができる。
【0096】
好ましい改変されたヌクレオシド間結合または骨格には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含めたメチルホスホネートおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含めたホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、および通常の3’−5’結合を有するボラノホスフェート、これらの2’−5’結合アナログ、および隣接するヌクレオシドユニットの対が3’−5’から5’−3’または2’−5’から5’−2’に結合している逆極性を有するものが挙げられる。様々な塩、混合された塩および遊離酸形態もまた含まれる。
【0097】
上記リン原子含有結合の調製に関する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第4,469,863号;第5,023,243号;第5,264,423号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号および第5,466,677号が挙げられ、そのそれぞれは、参照により本明細書に組入れられる。
【0098】
中にリン原子を含まない好ましい改変されたヌクレオシド間結合または骨格(すなわちオリゴヌクレオシド)は、短鎖アルキルまたはシクロアルキル糖間結合、混合されたヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキル糖間結合、または一つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間結合によって形成される骨格を有する。これらには、モルホリノ結合(部分的にヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、SおよびCH2の混合成分部分を有するその他を有するものが含まれる。
【0099】
上記オリゴヌクレオシドの調製に関係する代表的な米国特許には、非限定的に米国特許第5,034,506号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,264,562号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,602,240号および第5,663,312号が含まれ、そのそれぞれは、参照により本明細書に組入れられる。
【0100】
他の好ましいオリゴヌクレオチド模倣体では、ヌクレオシドユニットの糖およびヌクレオシド間結合、すなわち骨格の両方が、新規な基に置換される。核酸塩基ユニットは、適切な核酸ターゲット化合物とのハイブリダイゼーションのために保持される。優れたハイブリダイゼーション性を有することが示されている、そのようなオリゴヌクレオチドの一つであるオリゴヌクレオチド模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特にアミノエチルグリシン骨格に置換される。核酸塩基は保持され、その骨格のアミド部分の原子に直接または間接的に結合する。PNA化合物の教示は、例えば米国特許第5,539,082号に見いだすことができる。
【0101】
本発明のいくつかの好ましい態様は、ホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子骨格を有するオリゴヌクレオシド、特に、上記に参照した米国特許第5,489,677号の−CH2−NH−O−CH2−、−CH2−N(CH3)−O−CH2−[メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格としても知られている]、−CH2−O−N(CH3)−CH2−、−CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2−、および−O−N(CH3)−CH2−CH2−[式中、ネイティブなホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH2−として表される]、および上記に参照した米国特許第5,602,240号のアミド骨格を使用する。同様に好ましいのは、上記に参照した米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0102】
本発明のリガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに使用されたオリゴヌクレオチドは、追加的または代替的に核酸塩基(当技術分野において単に「塩基」と呼ばれることが多い)の改変または置換を含んでもよい。本明細書に使用されるような「非改変」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。改変された核酸塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどの他の合成および天然核酸塩基が挙げられる。
【0103】
さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されたもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されたもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613によって開示されたもの、およびSanghvi, Y. S., Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., ed., CRC Press, 1993によって開示されたものが挙げられる。これらの特定の核酸塩基は、本発明のオリゴヌクレオチドの結合親和性を増加させるために特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびに2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含めたN−2、N−6およびO−6置換プリンが挙げられる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示され(同上、276〜278頁)、現在好ましい塩基置換であるが、なおさらに2’−メトキシエチル糖改変と組合せた場合に、特に好ましい。
【0104】
特定の上記改変核酸塩基に加えて、他の改変核酸塩基の調製に関係する代表的な米国特許には、非限定的に、上記の米国特許第3,687,808号に加えて、米国特許第5,134,066号;第5,459,255号;第5,552,540号;第5,594,121号および第5,596,091号が挙げられ、それらの全ては、参照により本明細書に組入れられる。
【0105】
特定の態様では、本発明のリガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドに使用されるオリゴヌクレオチドは、追加的または代替的に、一つまたは複数の置換糖部分を含んでもよい。好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の一つを含む:OH;F;O−、S−、もしくはN−アルキル、O−、S−、もしくはN−アルケニル、またはO、S−もしくはN−アルキニル(ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC1〜C10のアルキルまたはC2〜C10のアルケニルおよびアルキニルであってもよい)。特に好ましいのは、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2であり、ここで、nおよびmは、1〜約10である。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の一つを含む:C1〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2 CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基。好ましい改変には、2’−メトキシエトキシ[2’−O−CH2CH2OCH3、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られている]、すなわちアルコキシアルコキシ基が挙げられる。さらに好ましい改変には、1998年1月30日に出願された米国特許第6,127,533号に記載されているような2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基(2’−DMAOEとしても知られている)が挙げられ、その内容は、参照により組入れられる。
【0106】
他の好ましい改変には、2’−メトキシ(2’−O−CH3)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH2CH2CH2NH2)および2’−フルオロ(2’−F)が挙げられる。類似の改変を、また、オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に、3’末端ヌクレオチド上または2’−5’結合オリゴヌクレオチド中の糖の3’位に行ってもよい。
【0107】
本明細書に使用されるような「糖置換基」または「2’−置換基」という用語には、酸素原子と共にまたは酸素原子なしにリボフラノシル部分の2’位に結合した基が含まれる。糖置換基には、非限定的に、フルオロ、O−アルキル、O−アルキルアミノ、O−アルキルアルコキシ、保護されたO−アルキルアミノ、O−アルキルアミノアルキル、O−アルキルイミダゾールおよび式(O−アルキル)mのポリエーテル(式中、mは1〜約10である)が挙げられる。これらのポリエーテルの中で好ましいのは、直鎖および環状ポリエチレングリコール(PEG)、およびクラウンエーテルなどの(PEG)−含有基、とりわけDelgardoら(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 1992, 9:249、参照によりその全体が本明細書に組入れられる)によって開示されたものである。さらなる糖の改変は、Cook(Anti-fibrosis Drug Design, 1991, 6:585-607)によって開示されている。フルオロ、O−アルキル、O−アルキルアミノ、O−アルキルイミダゾール、O−アルキルアミノアルキル、およびアルキルアミノ置換は、その全体が参照により本明細書に組入れられる「Oligomeric Compounds having Pyrimidine Nucleotide(s) with 2' and 5' Substitutions」という名称の米国特許第6,166,197号に記載されている。
【0108】
本発明に受け入れられる追加的な糖置換基には、2’−SRおよび2’−NR2基(式中、各Rは、独立して水素、保護基または置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルである)が挙げられる。2’−SRヌクレオシドは、その全体が参照により本明細書に組入れられる米国特許第5,670,633号に開示されている。2’−SRモノマー出発材料の組入れは、Hammら(J. Org. Chem., 1997, 62:3415-3420)に開示されている。2’−NRヌクレオシドは、Goettingen, M., J. Org. Chem., 1996, 61, 6273-6281;およびPolushin et al., Tetrahedron Lett., 1996, 37, 3227-3230によって開示されている。本発明に受け入れられるさらなる代表的な2’−置換基には、式IまたはII:
【0109】
【化1】
[式中、
Eは、C1−C10アルキル、N(Q3)(Q4)またはN=C(Q3)(Q4)であり;各Q3およびQ4は、独立してH、C1−C10アルキル、ジアルキルアミノアルキル、窒素保護基、テザーもしくは非テザーコンジュゲート基、固体支持体へのリンカーであるか;またはQ3およびQ4は、一緒になって窒素保護基もしくは場合によりNおよびOより選択される少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を含む環構造を形成し;
q1は、1〜10の整数であり;
q2は、1〜10の整数であり;
q3は、0または1であり;
q4は、0、1または2であり;
各Z1、Z2およびZ3は、独立して、C4−C7シクロアルキル、C5−C14アリールまたはC3−C15ヘテロシクリルであり、ここで、該ヘテロシクリル基のヘテロ原子は、酸素、窒素および硫黄より選択され;
Z4は、OM1、SM1、またはN(M1)2であり;各M1は、独立してH、C1−C8アルキル、C1−C8ハロアルキル、C(=NH)N(H)M2、C(=O)N(H)M2またはOC(=O)N(H)M2であり;M2は、HまたはC1−C8アルキルであり;
Z5は、C1−C10アルキル、C1−C10ハロアルキル、C2−C10アルケニル、C2−C10アルキニル、C6−C14アリール、N(Q3)(Q4)、OQ3、ハロ、SQ3またはCNである]の一つを有するものが挙げられる。
【0110】
式Iで示される代表的な2’−O−糖置換基は、その全体が参照により本明細書に組入れられる「Capped 2'-Oxyethoxy Oligonucleotides」という名称の米国特許第6,172,209号に開示されている。式IIで示される代表的な環状2’−O−糖置換基は、その全体が参照により本明細書に組入れられる「RNA Targeted 2'-Modified Oligonucleotides that are Conformationally Preorganized」という名称の米国特許第6,271,358号に開示されている。
【0111】
リボシル環にO−置換を有する糖もまた、本発明に受け入れられる。環Oについての代表的な置換には、非限定的にS、CH2、CHF、およびCF2が挙げられる。
【0112】
オリゴヌクレオチドは、また、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。そのような改変された糖の調製に関する代表的な米国特許には、非限定的に、米国特許第5,359,044号;第5,466,786号;第5,519,134号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,646,265号および第5,700,920号が挙げられ、それらの全ては、参照により本明細書に組入れられる。
【0113】
追加的な改変は、オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位に行ってもよい。例えば、本発明のリガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの追加的な一改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを高める一つまたは複数の追加的な非リガンド部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学結合させることを伴う。そのような部分には、非限定的に、コレステロール部分などの脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4, 1053)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10, 111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923)が挙げられる。
【0114】
本発明には、また、オリゴヌクレオチド内の特定の位置に関して実質的にキラル純粋なオリゴヌクレオチドを使用している組成物が含まれる。実質的にキラル純粋なオリゴヌクレオチドの例には、非限定的に、少なくとも75%SpまたはRpのホスホロチオエート結合を有するもの(Cookら、米国特許第5,587,361号)および実質的にキラル純粋な(SpまたはRp)アルキルホスホネート、ホスホルアミデートまたはホスホトリエステル結合を有するもの(Cook、米国特許第5,212,295号および第5,521,302号)が挙げられる。
【0115】
場合によっては、オリゴヌクレオチドを、非リガンド基により改変してもよい。いくつかの非リガンド分子は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取込みを高めるためにオリゴヌクレオチドにコンジュゲーションされており、そのようなコンジュゲーションを行う手順は、科学文献から利用することができる。そのような非リガンド部分には、コレステロールなどの脂質部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86:6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:111; Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327; Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651; Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)が含まれた。典型的なコンジュゲーションプロトコールは、配列の一つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するオリゴヌクレオチドの合成を伴う。次に、適切なカップリング試薬または活性化試薬を使用して、コンジュゲーションされる分子とアミノ基を反応させる。コンジュゲーション反応は、まだ固体支持体に結合しているオリゴヌクレオチドと共に、または液相中の切断後のオリゴヌクレオチドのいずれかで行ってもよい。HPLCによるオリゴヌクレオチドコンジュゲートの精製により、典型的には純粋なコンジュゲートが得られる。コレステロールコンジュゲートの使用は、そのような部分が第VII因子タンパク質産生部位である肝臓中の組織へのターゲティングを増加させることができることから、特に好ましい。
【0116】
または、コンジュゲーションされる分子は、分子に存在するアルコール基を介して、またはリン酸化されうるアルコール基を有するリンカーの結合によって、ホスホルアミダイトなどの構成要素に変換してもよい。
【0117】
重要なことには、リガンドにコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドを合成するために、これらのアプローチのそれぞれを使用することができる。アミノ連結オリゴヌクレオチドを、カップリング試薬の使用によりリガンドと直接カップリングさせてもよく、またはリガンドをNHSもしくはペンタフルオロフェノレート(pentfluorophenolate)エステルとして活性化後に、カップリングさせてもよい。リガンドのホスホルアミダイトは、カルボキシル基の一つにアミノヘキサノールリンカーを結合させ、続いて末端アルコール官能基を亜リン酸エステル化することによって合成してもよい。システアミンなどの他のリンカーを、また、合成されたオリゴヌクレオチド上に存在するクロロアセチルリンカーへのコンジュゲーションに利用してもよい。
【0118】
本発明の主な要旨の一つは、本発明のdsRNA分子を含む薬学的組成物の提供である。そのような薬学的組成物は、また、本発明のdsRNA分子に含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む、そのようなdsRNA分子またはベクターの個別の鎖を含んでもよい。また、本明細書に定義されたdsRNA分子を発現するか、または含む細胞および組織を、薬学的組成物として使用してもよい。そのような細胞または組織は、特に移植アプローチに有用でありうる。これらのアプローチは、また、異種移植を含んでもよい。
【0119】
一態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなdsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。dsRNAを含む薬学的組成物は、血栓塞栓障害などのFVII遺伝子の発現または活性に関連する疾患または障害を処置するために有用である。
【0120】
本発明の薬学的組成物は、FVII遺伝子の発現を阻害するために十分な薬用量で投与される。本発明者らは、それらの改善された有効性のおかげで、本発明のdsRNAを含む組成物を低薬用量で投与できることを見出した。
【0121】
一般に、dsRNAの適切な用量は、1日にレシピエントの体重1kgあたり0.01〜5.0ミリグラム、好ましくは1日に体重1kgあたり0.1〜200マイクログラム、さらに好ましくは1日に体重1kgあたり0.1〜100マイクログラム、いっそうさらに好ましくは1日に体重1kgあたり1.0〜50マイクログラム、最も好ましくは1日に体重1kgあたり1.0〜25マイクログラムであろう。薬学的組成物は、1日1回投与してもよいか、またはdsRNAは、2、3、4、5、6またはそれを超える分割用量として1日を通して適切な間隔で、またはさらに連続注入も利用して、投与してもよい。その場合、総1日薬用量に達するように、各分割用量に含有されるdsRNAは、それに応じて少量でなければならない。単位薬用量は、また、例えば数日間かけてdsRNAを徐放する従来の徐放製剤を使用して、数日間かけて送達するために配合することができる。徐放製剤は、当技術分野において周知である。この態様では、単位薬用量は、1日用量の倍数に対応する量を含有する。
【0122】
熟練者は、非限定的に疾患または障害の重症度、過去の処置、対象の全身の健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含めたある種の要因が、対象を効果的に処置するために必要な薬用量およびタイミングに影響するおそれがあることを認識しているであろう。さらに、治療有効量の組成物を用いた対象の処置には、単回処置または一連の処置が含むことができる。本発明により包含される個別のdsRNAについての有効薬用量およびin vivo半減期の推定は、従来の方法を用いて、または適切な動物モデルを使用したin vivo試験に基づいて行うことができる。
【0123】
そのような化合物の毒性および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果の間の用量比は治療指数であり、それを比LD50/ED50で表わすことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0124】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための様々な薬用量の処方に使用することができる。本発明の組成物の薬用量は、好ましくはほとんどまたは全く毒性を有さない、ED50を含む様々な循環濃度範囲にある。薬用量は、使用される剤形および利用される投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。本発明の方法に使用される任意の化合物について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初推定することができる。化合物の、または適切であればターゲット配列のポリペプチド産物(例えば減少した濃度のポリペプチドを得る)の、循環血漿濃度範囲を達成する動物モデルで、用量を設定してもよいが、その範囲は、細胞培養で決定されたようなIC50(すなわち症状の最大半値阻害を達成する被験化合物濃度)を含む。そのような情報は、ヒトに有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
【0125】
前述のように個別にまたは複数でそれらを投与することに加えて、本発明のdsRNAは、他の公知の薬剤と組合せて投与することができる。いずれにしても、投与を行う医師は、当技術分野で公知の、または本明細書に記載された標準的な有効性尺度を利用して、観察された結果に基づきdsRNAを投与する量およびタイミングを調整することができる。
【0126】
本発明により包含される薬学的組成物は、非限定的に、経口経路、または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、鼻腔、直腸、膣および局所(口腔および舌下を含む)投与、ならびに硬膜外投与を含めた非経口経路などの、当技術分野で公知の任意の手段によって投与することができる。好ましい態様では、薬学的組成物は、注入または注射によって静脈内投与される。
【0127】
特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の通常の技術者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を下に記載する。本明細書に言及された全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照は、その全体が参照により本明細書に組入れられる。相反する場合、定義を含め本明細書に基づくものとする。加えて、材料、方法および実施例は、例示だけを目的とし、限定を意図しない。
【0128】
上に提供された態様および本発明の項目をこれから以下の非限定的な実施例を用いて例示する。
【図面の簡単な説明】
【0129】
図および添付の表の説明:
【図1a】配列番号対259/260を含む、FVII dsRNA(図1a)および配列番号対253/254を含むdsRNA(図1b)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に4mg/kgでi.v.注射後のモルモットにおけるFVII血漿濃度に及ぼすFVIIをターゲティングするdsRNA(「FVII dsRNA」)の効果。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)/LNP01およびPBSは、対照である。結果は個別の動物からのものである。
【図1b】配列番号対259/260を含む、FVII dsRNA(図1a)および配列番号対253/254を含むdsRNA(図1b)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に4mg/kgでi.v.注射後のモルモットにおけるFVII血漿濃度に及ぼすFVIIをターゲティングするdsRNA(「FVII dsRNA」)の効果。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)/LNP01およびPBSは、対照である。結果は個別の動物からのものである。
【図2a】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII siRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、肝臓FVII mRNAレベル(2a)および血漿FVIIレベル(2b)に及ぼすモルモットにおけるFVII dsRNAの効果。全ての測定は、注射後48時間または72時間に行った。mRNAの結果は、PBS処置群に対するパーセントで表し;FVIIチモーゲンの結果は、処置前値に対するパーセントで表す。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc siRNA」)/LNP01およびPBSは対照である。統計:平均±sem;*はANOVA、事後Dunnett検定;‡は多重t検定。
【図2b】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII siRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、肝臓FVII mRNAレベル(2a)および血漿FVIIレベル(2b)に及ぼすモルモットにおけるFVII dsRNAの効果。全ての測定は、注射後48時間または72時間に行った。mRNAの結果は、PBS処置群に対するパーセントで表し;FVIIチモーゲンの結果は、処置前値に対するパーセントで表す。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc siRNA」)/LNP01およびPBSは対照である。統計:平均±sem;*はANOVA、事後Dunnett検定;‡は多重t検定。
【図3】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII siRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後のモルモットのプロトロンビン時間(PT)に及ぼすFVII dsRNAの効果。FVII dsRNAのi.v.注射直前(ベースライン)および注射の48時間後または72時間後に血液を採取した。処置前値に対する延長倍率で結果を表す(平均±sem)。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc siRNA」)/LNP01およびPBSは、対照である。
【図4】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「FVII dsRNA」)をLNP01(1:14)リポソーム製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、モルモット動脈血栓症モデルにおけるFVII dsRNAの抗血栓効果。全ての測定は、麻酔した動物において注射の48時間後または72時間後に行った(方法参照)。結果をPBS処置群に対するパーセントで表す。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「Luc dsRNA」)/LNP01およびPBSは対照である。統計:平均±sem;*はANOVA、事後Dunnett検定;‡は多重t検定。
【図5】配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(「siFVII」)をSNALP−L製剤中に1、2、3、4、5mg/kgでi.v.注射後の、肝臓FVII mRNAレベル(a)および血漿FVIIレベル(b)に及ぼすモルモットにおけるFVII dsRNAの効果。ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412;「siLuc」)/SNALP−LおよびPBSは対照である。
【図6a】SNALP−L製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNAのi.v.注射後のモルモットにおける(a)外科的失血および(b)爪上皮出血時間に及ぼすFVII dsRNAの効果。結果は、PBS処置群に対する増加倍率(外科的失血)および延長倍率(上皮出血時間)で表した。全ての測定は、注射後72時間に行った。SNALP−L製剤中のルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)(Luc dsRNA)およびPBSは対照である。最大95%のFVIIのダウンレギュレーションで(0.05mg/kg〜2mg/kgのFVII dsRNA)、両モデルにおいて出血傾向の増加は観察されなかった。
【図6b】SNALP−L製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNAのi.v.注射後のモルモットにおける(a)外科的失血および(b)爪上皮出血時間に及ぼすFVII dsRNAの効果。結果は、PBS処置群に対する増加倍率(外科的失血)および延長倍率(上皮出血時間)で表した。全ての測定は、注射後72時間に行った。SNALP−L製剤中のルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)(Luc dsRNA)およびPBSは対照である。最大95%のFVIIのダウンレギュレーションで(0.05mg/kg〜2mg/kgのFVII dsRNA)、両モデルにおいて出血傾向の増加は観察されなかった。
【図7】−血漿中FVII活性とPT延長の間の相関。FVII dsRNAのiv注射後のFVII活性の減少(LNP01およびSNALP−L中に製剤化されたFVII dsRNAからのデータを合同したもの)は、FVII依存性凝固パラメーターPTとよく相関した。
【図8】ルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)またはFVII dsRNA(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に発色アッセイによって3回測定された、カニクイザル血漿中のFVII活性。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示す。N=2匹の雌性カニクイザル。各個別のサルの投薬前FVII活性値の平均に対して値を標準化し、標準偏差を示すエラーバーを付ける。
【図9】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に3回測定された、カニクイザル血漿中のプロトロンビン時間(PT)。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示す。N=2匹の雌性カニクイザル。各個別のサルの投薬前PTの平均に対して標準化した変化倍率として値を示し、標準偏差を示すエラーバーを付ける。
【図10】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に発色アッセイによって3回測定された、カニクイザル血漿中のFVII活性。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示した。N=2匹の雄性カニクイザル、1mg/kgのFVII dsRNA群(n=3匹の雄性カニクイザル)および3mg/kgのルシフェラーゼdsRNA群(n=2匹の雌性カニクイザル)を例外とする。100%に設定した各個別のサルの投薬前FVII活性値の平均に対して値を標準化した。エラーバーは、各群におけるサルの最小/最大値を示す。
【図11】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射の投薬前ならびに24時間後および48時間後に3回測定されたカニクイザル血漿中のプロトロンビン時間(PT)。dsRNAに関する用量を各群についてmg/kgで示す。N=2匹の雄性カニクイザル、1mg/kgのFVII dsRNA群(n=3匹の雄性カニクイザル)および3mg/kgのルシフェラーゼdsRNA群(n=2匹の雌性カニクイザル)を例外とする。1に設定した各個別のサルの投薬前PT値の平均に対して標準化したPT変化倍率として値を示す。エラーバーは、各群におけるサルの最小/最大値を示す。
【図12】SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射前後に経時的に、カニクイザル血清中のFVII活性を追跡した。FVII活性は、投薬前および投薬後の表示時点に3回発色アッセイによって測定した。dsRNAに関する用量は、各動物についてmg/kgで表し、数字は、試験における個別の動物の番号を示す。注射した日に100%に設定した各動物の投薬前の平均に対して曲線を標準化する。
【図13】カニクイザル血漿中のプロトロンビン時間(PT)を、SNALP製剤中のルシフェラーゼdsRNA(siLUC)(配列番号対411/412)またはSNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射前後に経時的に追跡した。PTは、投薬前および投薬後の表示時点に3回測定した。dsRNAに関する用量は、各動物についてmg/kgで示し、数字は、試験における個別の動物の番号を表示する。値はPTの変化倍率として示し、曲線は、注射の日に1に設定した各動物の投薬前の平均に対して標準化する。
【図14】カニクイザル血漿中のFVII活性を、SNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)を3mg/kgで反復ivボーラス注射前後に経時的に追跡した。FVII活性を、投薬前および投薬後の表示時点に3回発色アッセイによって測定した。最初に注射した日に100%に設定した各動物の投薬前の平均に対して曲線を標準化する。
【図15】カニクイザル血漿におけるプロトロンビン時間(PT)を、SNALP製剤中のFVII dsRNA(siFVII)(配列番号19/20)の反復ivボーラス注射前後に経時的に追跡した。3mg/kgを投薬前および投薬後の表示時点に3回PTを測定した。値をPT変化倍率として示し、曲線を、注射した日に1に設定した各動物の投薬前の平均に対して標準化する。
【図16】オフターゲット配列のサイレンシングに及ぼす、配列番号対13/14を含むFVII dsRNAの効果。FVII mRNAの19塩基長ターゲット部位(「on」)またはin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off1」〜「off10」;「off1」〜「off8」はアンチセンス鎖オフターゲットであり、「off9」〜「off10」はセンス鎖オフターゲットである)のいずれかを表わすデュアルルシフェラーゼ構築物を発現しているCOS7細胞に50nMのFVII dsRNAをトランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAは、対応するターゲット部位の機能的サイレンシングについての陽性対照である。
【図17】オフターゲット配列のサイレンシングに及ぼす、配列番号対19/20を含むFVII dsRNAの効果。FVII mRNAの19塩基長ターゲット部位(「on」)またはインシリコで予測されたオフターゲット配列(「off1」〜「off17」;「off1」〜「off14」はアンチセンス鎖オフターゲットであり、「off15」〜「off17」はセンス鎖オフターゲットである)のいずれかを表わすデュアルルシフェラーゼ構築物を発現しているCOS7細胞に50nMのFVII dsRNAをトランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAは、対応するターゲット部位の機能的サイレンシングについての陽性対照である。off11と同じ10個のヌクレオチドを上流および下流に有する、第VII因子mRNAのターゲット部位をクローニングし、機能的ターゲット部位を作製した。
【図18】オフターゲット配列のサイレンシングに及ぼす、配列番号対11/12を含むFVII dsRNAの効果。FVII mRNAの19塩基長ターゲット部位(「on」)またはin silicoで予測されたオフターゲット配列(「off1」〜「off16」;「off1」〜「off13」はアンチセンス鎖オフターゲットであり、「off14」〜「off16」は、センス鎖オフターゲットである)のいずれかを表わすデュアルルシフェラーゼ構築物を発現しているCOS7細胞に50nMのFVII dsRNAをトランスフェクション後のウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の発現。完全にマッチするオフターゲットdsRNAは、対応するターゲット部位の機能的サイレンシングについての陽性対照である。配列番号対19/20についてoff11と同じ10個のヌクレオチドを上流および下流に有する第VII因子mRNAのターゲット部位をクローニングし、機能的ターゲット部位を作製した。
【0130】
表1 − ヒト第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は、2’−O−メチル−改変ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを、そして「dT」はデオキシチミジンを表す。
表2 − ヒト第VII因子をターゲティングするdsRNAの特徴付け:Huh7細胞における用量反応についての活性試験。IC50:50%阻害濃度。
表3 − ヒト第VII因子をターゲティングするdsRNAの特徴づけ:安定性およびサイトカイン誘導。t1/2:実施例において同義の鎖半減期、PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
表4 − モルモット第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、小文字「c」、「g」、「a」および「u」は、2’−O−メチル−改変ヌクレオチドを表し、「s」はホスホロチオエートを、そして「dT」はデオキシチミジンを表す。「f」は、前述のヌクレオチドの2’−フルオロ改変を表す。
表5 − モルモット第VII因子をターゲティングするdsRNAの特徴づけ。IC50:50%阻害濃度、PBMC:ヒト末梢血単核細胞。
表6 − ヒト第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、「T」はデオキシチミジンを表す。
表7 − モルモット第VII因子遺伝子をターゲティングするdsRNA。大文字はRNAヌクレオチドを表し、「T」はデオキシチミジンを表す。
表8 − 配列番号対13/14を含む、ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAの選択されたオフターゲット。
表9 − 配列番号対19/20を含む、ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAの選択されたオフターゲット。
表10 − 配列番号対11/12を含む、ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAの選択されたオフターゲット。
【0131】
実施例
治療用途のdsRNAの同定
ヒト第VII因子を特異的にターゲティングする治療用途のdsRNAを同定するために、dsRNAの設計を実施した。まず、ヒト(Homo sapiens)第VII因子の既知のmRNA配列(配列番号406および配列番号407として記載されたNM_019616およびNM_000131.3)をコンピューター解析によって調査し、これらの配列の間で交差反応性のRNA干渉(RNAi)作用物質を生成する19個のヌクレオチドの相同配列を同定した。
【0132】
RNAi作用物質の同定にあたり、fastAアルゴリズムを用いて、ヒトRefSeqデータベース(リリース25)(広範なヒトトランスクリプトームを表わすと仮定した)における任意の他の配列に対して少なくとも2個のミスマッチを有する19塩基長配列に限って選択を行った。
【0133】
16匹のサルからRT−PCR増幅後に、カニクイザル(Macaca fascicularis)第VII因子遺伝子のCDS(コード配列)を配列決定した。この配列をNCBI EST/EMBL BB885059 EST(配列番号408)の逆相補体と一緒に使用して、カニクイザル第VII因子についての代表的なコンセンサス配列(配列番号409参照)を作製させた。
【0134】
ヒトに加えてカニクイザルの第VII因子に交差反応性のdsRNAを、治療用途に最も好ましいと決定した。4個以上の連続するG’(ポリ−G配列)を有する全ての配列を合成から除外した。
【0135】
このように同定された配列は、表1および6におけるRNAi作用物質を合成するための基礎とした。
【0136】
in vivo概念実証研究のためのdsRNAの同定
in vivo概念実証実験のための、モルモット(Cavia porcellus)第VII因子に加えて、前述のin vitroスクリーニング目的のヒト第VII因子をターゲティングするdsRNAを同定するために、dsRNAの設計を実施した。まず、モルモット第VII因子について予測される転写物ENSEMBL(ENSCPOT00000005353、配列番号410)およびヒト第VII因子のどちらも既知のmRNA配列(配列番号406および配列番号407として記載されたNM_019616およびNM_000131.3)を、コンピューター解析によって調査し、これらの配列の間で交差反応性のRNAi作用物質を生成する19個のヌクレオチドの相同配列を同定した。
【0137】
4個以上の連続するG(ポリ−G配列)を有する全ての配列を合成から除外した。このように同定された配列は、表4および7におけるRNAi作用物質を合成するための基礎とした。
【0138】
dsRNAの合成
本明細書において試薬の入手源を具体的に示さない場合、そのような試薬は、分子生物学適用基準の品質/純度の分子生物学用試薬を供給する任意の供給業者から得ることができる。
【0139】
Expedite 8909合成装置(Applied Biosystems、Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)および固体支持体として多孔質ガラス(CPG、500Å、Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を使用して、1μmolスケールの固相合成によって1本鎖RNAを作製した。RNAおよび2’−O−メチルヌクレオチドを有するRNAを、それぞれ対応するホスホルアミダイトおよび2’−O−メチルホスホルアミダイトを用いた固相合成に(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)によって作製した。Current protocols in nucleic acid chemistry, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているような標準的なヌクレオシドホスホルアミダイト化学反応を用いて、オリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択された部位にこれらの構成要素を導入した。ヨウ素酸化剤溶液をBeaucage試薬(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)のアセトニトリル溶液(1%)に交換することによって、ホスホロチオエート結合を導入した。さらなる補助試薬をMallinckrodt Baker(Griesheim, Germany)から得た。
【0140】
確立された手順により、陰イオン交換HPLCによる粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護および精製を実施した。分光光度計(DU 640B, Beckman Coulter GmbH, Unterschleissheim, Germany)を使用して波長260nmでそれぞれのRNAの溶液のUV吸収によって収量および濃度を決定した。アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中で等モルの相補鎖溶液を混合し、水浴中、85〜90℃で3分間加熱し、3〜4時間室温に冷却することによって二本鎖RNAを作製した。アニーリングしたRNA溶液を使用まで−20℃で保存した。
【0141】
活性試験
上記第VII因子−dsRNAの活性をHuh7細胞で試験した。
【0142】
第VII因子特異的dsRNAと共にインキュベーションした細胞から得られた総mRNA中の分岐DNAによる第VII因子mRNAの定量のために培養Huh7細胞を使用した。
【0143】
Huh7細胞をAmerican Type Culture Collection(Rockville, Md.、カタログ番号HB-8065)から入手し、5%ウシ胎児血清(FCS)(Gibco Invitrogen、カタログ番号16250-078)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco Invitrogen、カタログ番号15140-122)を含有するように補充したフェノールレッド不含DMEM/F−12(Gibco Invitrogen, Germany、カタログ番号11039-021)中、37℃の加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)中で5% CO2雰囲気中で培養した。
【0144】
細胞の接種およびdsRNAのトランスフェクションを同時に行った。dsRNAをトランスフェクションするために、96ウェルプレートにHuh7細胞を2.5×104個細胞/ウェルの密度で蒔いた。製造業者によって記載されたように、リポフェクトアミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany、カタログ番号11668-019)を用いてdsRNAのトランスフェクションを実施した。最初の単回投与実験において、dsRNAをHuh7細胞に30nMの濃度でトランスフェクションした。各データ点を4連実施で決定した。2回の独立した実験を行った。30nMの単用量選別により70%を超えるmRNAノックダウンを示す最も有効なdsRNAを用量反応曲線によってさらに特徴づけた。用量反応曲線に関して、上記単用量選別について記載されたようにトランスフェクションを行ったが、dsRNA濃度(nM)は、以下:24、6、1.5、0.375、0.0938、0.0234、0.0059、0.0015、0.0004および0.0001nMとした。トランスフェクション後に細胞を加湿インキュベーター(Heraeus GmbH, Hanau, Germany)中で37℃および5% CO2で24時間インキュベーションした。第VII因子mRNAを測定するために、mRNAのbDNA定量にはより高感度のQuantiGene 2.0 Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA、カタログ番号QS0011)を使用し、一方、GAP−DH mRNAの測定にはQuantiGene 1.0 Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA、カタログ番号:QG0004)を使用した。トランスフェクションされたHuh7細胞を回収し、製造業者が勧める手順により53℃で溶解させた。50μlの溶解液をそれぞれヒト第VII因子mRNAまたはモルモット第VII因子に特異的なプローブセット(プローブセットの配列は下記参照)と共にインキュベーションし、QuantiGeneについての製造業者のプロトコールに従い処理した。GAP−DH mRNAの測定のために、GAP−DH特異的プローブセットを用いて10μlの細胞溶解液を分析した。Victor2-Light(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)でRLU(相対発光量)として化学発光を測定し、ヒト第VII因子プローブセットで得られた値を、各ウェルについてのそれぞれのヒトGAPDH値に対して標準化した。無関係の対照dsRNAを陰性対照として使用した。表2および5に阻害データを示す。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
dsRNAの安定性
各1本鎖の半減期を測定することによってヒト血清またはカニクイザル血漿のいずれかを用いたin vitroアッセイでdsRNAの安定性を決定した。
【0148】
30μlのヒト血清またはカニクイザル血漿(Sigma Aldrich)と混合した3μlの50μM dsRNA試料を用いて、各時点について3連で測定を実施した。混合物を37℃で0分間、30分間、1時間、3時間、6時間、24時間、または48時間のいずれかの時間インキュベーションした。非特異的分解についての対照として、dsRNAを30μlの1×PBS(pH6.8)と共に48時間インキュベーションした。4μlのプロテイナーゼK(20mg/ml)、25μlの「Tissue and Cell Lysis Solution」(Epicentre)および38μlのMillipore水を65℃で30分間添加して反応を停止させた。その後、1400rpmで8分間、0.2μmの96ウェルフィルタープレートで試料を遠心濾過し、55μlのMillipore水で2回洗浄し、再度遠心濾過した。
【0149】
1本鎖の分離および残りの全長産物(FLP)の分析のために、溶出液Aとして10% ACN中の20mM Na3PO4(pH=11)および溶出液Bについて溶出液A中の1M NaBrを使用して、変性条件でイオン交換Dionex Summit HPLCに試料を流した。
【0150】
以下の勾配を加えた:
【0151】
【表3】
【0152】
各注入について、クロマトグラムをDionex Chromeleon 6.60 HPLCソフトウェアで自動的に積分し、必要に応じて手動で調整した。全てのピーク面積を内部標準(IS)のピークに対して補正し、t=0分でのインキュベーションに対して標準化した。ピーク下面積および残留FLPを各一本鎖および3連実施について別々計算した。3連実施についてFLPの半分が分解した平均時点[h]により鎖半減期(t1/2)を定義した。結果を表3および5に示す。
【0153】
サイトカイン誘導
in vitroPBMCアッセイにおけるINF−αおよびTNF−αの放出を測定することによってdsRNAの潜在的サイトカイン誘導を決定した。
【0154】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、トランスフェクションした日に2人のドナーの血液バフィーコートからFicoll遠心分離によって単離した。細胞にdsRNAを4連でトランスフェクションし、Gene Porter 2(GP2)またはDOTAPのいずれかをOpti−MEM中で130nMの終濃度で使用して37℃で24時間培養した。このアッセイにおいてINF−αおよびTNF−αを誘導することが知られているdsRNA配列およびCpGオリゴを陽性対照として使用した。サイトカイン誘導にトランスフェクション試薬を必要としない、化学コンジュゲーションしたdsRNAまたはCpGオリゴヌクレオチドを培地中に500nMの濃度でインキュベーションした。インキュベーションの終了時に、4連で培養上清をプールした。
【0155】
次に、これらのプールした上清中のINF−αおよびTNF−αを、標準的なサンドイッチELISAによってプール1個あたり2個のデータ点で測定した。サイトカイン誘導度は、0〜5の評点を利用して陽性対照と比較して表し、5は最大誘導を示した。結果を表3及び5に示す。
【0156】
FVIIをターゲティングするdsRNAのin vivo効果(モルモット)
抗血栓効果
新規な抗血栓薬のin vivo効力を評価するために以前に開発された検証済みモルモット動脈血栓症モデルで上記FVII dsRNAの活性を試験した(Himber J. et al., Thromb Haemost. (2001); 85:475-481)。
【0157】
雄性モルモット(350〜450g、CRL:(HA)BR、Charles River(Germany)を、ケタミン−HCl 90mg/kgおよびキシラジン2% 10mg/kgによるi.m.誘導に続く連続ガス麻酔によって麻酔した。吸入器を介し、麻酔薬を供給し、同時に過剰の蒸気を除去するダブル吸入マスクからO2/空気40:60中に1〜3Vol%のイソフルランを注入した(Provet AG, Switzerland)。体温をサーモスタットで38℃に保った。
【0158】
モルモットを仰臥位にし、採血用に右大腿動脈にカテーテル(TriCath In 22G、0.8mm×30mm, Codan Steritex ApS, Espergaerde, Denmark)を留置した。右頸動脈を解剖して露出させ、Transit Time流量計モジュール(TS420, Transonic Systems Inc. Ithaca, NY,USA)に連結された血管周囲超音波流量プローブ(Transonic 0.7 PSB 232)を頸動脈周辺に配置し、血流速度をモニタリングした。頸動脈血流速度をGraphtec LinearレコーダーVII(Model WR 3101, Hugo Sachs, March-Hugstetten, Germany)で記録した。
【0159】
5〜15分間の血流を安定させた後で、ゴム被覆鉗子を用いて、解剖された頸動脈の1mm部分を10秒間ピッチングすることによって流量プローブから2mm遠位に内皮下層の損傷を起こした。損傷後に、血流の緩徐な減少が起こり、完全な血管閉塞が起こった。流量がゼロに達した場合は、損傷領域の頸動脈を軽く揺り動かし、閉塞性血栓を除去し、流量を回復させ、周期的流量変化(CFV)を生じさせた。CFVが8分間観察されなかった場合、最初の損傷部位でピンチングを繰り返した。CFVが起こらなかった場合は、同じ手順を8分毎に繰り返した。最終的に、CFVが起こるために必要なピンチの回数を40分の観察時間にわたり計数した。このプロトコールを用いて、各CFVの平均周期は、対照動物において約3〜5分/サイクルであった。ピンチの回数に対するCFV数の比として血栓症指数を計算した。
【0160】
血管壁損傷の48または72時間前に、麻酔したモルモットの頸静脈に上記FVII dsRNAを注射した。採取した血液を108mMクエン酸ナトリウム溶液に(1:10の容量で)加えてから、薬物の注射を開始し、血管壁を損傷させた。
【0161】
出血時間および失血
以前に記載されたように爪上皮出血時間(NCBT)の試験を行った(Himber J. et al., Thromb Haemost. (1997) 78:1142-1149)。機械的損傷によって誘導した動脈血栓症の試験を行ったのと同じ動物でNCBTを評価した。麻酔したモルモットにおいて、爪切りを用いて前肢の爪上皮頂端に標準的な切断を行い、足を37℃の水面と接触させたままにし、水中に流血させた。出血時間は、出血が完全に停止した上皮切断後の時間として定義した。2分以内に再度出血した場合は、出血時間を初回出血時間と合計した。40分の実験的血栓症時間の直後にこの操作を同時に3回行った。結果を対照群の値に対する延長倍率で表す。
【0162】
外科的失血(SBL)もまた、NCBTの直後に同じ動物から測定した。麻酔したモルモットを背臥位にし、頸を剃毛し、外科用メス(AESCULAP BB 524)で耳から肩甲骨まで正中切開(長さ40〜50mm、深さ5mm)を行った。切開の直後に、傷に縦にあてた歯科用ガーゼロール(No.1-14 111 00, φ8mm、長さ40mm、Internationale Verbandstoff Fabrik, Neuhausen, Switzerland)に血液を染みこませた。歯科用ロールを傷に5分間あてる前後に秤量し、重量差を5分あたりの失血量(mg)と定義した。1時間評価した総失血量は、1時間の測定時間内に傷にあてられた12個の歯科用ロールに染みこんだ血液の合計量に対応する。
【0163】
続いてペントバルビタール(100mg/kg)のi.v.注射により動物を安楽死させ、肝臓を素早く取り出した。肝臓1gを液体窒素中でショック凍結し、下記のようにFVII mRNAを測定した。
【0164】
血漿のアッセイ
市販の発色アッセイ(BIOPHEN FVII kit; ref 221304, HYPHEN BioMed, France)を使用して、モルモット血漿中のFVIIレベルを決定した。処置前レベルに対するパーセントでFVIIレベルを表した。凝固傾向および出血傾向のマーカーとして使用されるプロトロンビン時間(PT)は、活性化因子としてヒトリコンビナント−ヒト組織因子(Dade Innovin, Dade Behring, Marburg, Germany)を使用して決定し、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、活性化因子としてリン脂質を使用することにより決定した(Dade Actin, Dade Behring, Marburg, Germany)。ACL3000plus Coagulation Systems Analyzerを使用してPTおよびaPTTを測定し、処置前値に対する延長倍率で表す。Hitachi 912 Automatic Analyser(Boehringer Mannheim, Germany)およびALT Kit No. 10851132216、AST(Asat/Got) Kit No. 10851124216, Roche Diagnostics, Switzerland)を使用してアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を測定した。
【0165】
血球数、血小板およびヘマトクリットを測定するために、採取した血液試料を、EDTAの中にも加えた(Cobas Helios VET, F. Hoffmann-La Roche, Basel, Switzerland)。
【0166】
以前に記載されたように、dsRNAをLNP01に入れて製剤化した(Akinc, A. et al., Nature Biotech 2008, 26(5):561-9)。加えて、SNALP−Lに入れて製剤化されたdsRNAを試験した(Judge A.D. et al., J. Clinic. Invest. 2009, 119(3):661-73)。
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
モルモット肝臓組織中のFVII mRNAの測定:
QuantiGene 1.0 branched DNA (bDNA) Assay Kit(Panomics, Fremont, Calif., USA、カタログ番号:QG0004)を使用して肝臓組織からのFVII mRNAの測定を行った。
【0170】
剖検時に1〜2gの肝臓組織を液体窒素中で急速凍結した。乳鉢および乳棒を用いて凍結組織をドライアイス上で粉末化した。冷却した1.5ml反応チューブに15〜25mgの組織を移し、Lysis Mixtureを1:3でMilliQ水に予備希釈したもの1mlおよび3.3μl プロテイナーゼK(50μg/μl)を添加し、30〜50%出力の超音波処理(HD2070, Bandelin, Berlin, Germany)を数秒間行うことによって組織を溶解した。分析まで溶解物を−80℃で保存した。mRNA分析のために、溶解物を解凍し、1000rpmおよび65℃で15分間プロテイナーゼKで消化した(Thermomixer comfort, Eppendorf, Hamburg, Germany)。FVIIおよびGAPDHのmRNAレベルをQuantiGene 1.0 bDNA Assay Kit試薬を使用して製造業者の推奨により決定した。20μlの溶解物およびモルモット(cavia porcellus)FVIIプローブセットを使用してFVIIの発現を分析し、GAPDHの発現を、40μlの溶解物およびモルモットと交差反応することが示されたラット(rattus norwegicus)プローブセット(プローブセットの配列は下記参照)を使用して分析した。アッセイ終了時の化学ルミネセンスシグナルは、Victor 2 Light luminescence counter(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)で相対発光量(RLU)として測定した。FVIIシグナルを同じ溶解物のGAPDHシグナルで除算し、GAPDHに対して標準化したFVIIの発現として値を示した。
【0171】
例として(図1)、LNP01リポソーム製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNAおよび配列番号対253/254を含むFVII dsRNA[脂質:dsRNA比(w/w)14:1、96%の封入率、サイズ80〜85nm]を4mg/kgでモルモット頸静脈に注射後に、FVIIの血漿レベルの経時変化を3および5日間追跡した。最大のFVIIノックダウンは、注射後24時間で達成され、少なくとも72時間継続した。
【0172】
モルモット動脈血栓症モデルにおいて、配列番号対259/260を含むFVII dsRNA/LNP01(1:14)を1、2、3、4、5mg/kg、単回i.v.投与で試験した。リン酸緩衝食塩水(PBS)およびルシフェラーゼdsRNA(配列番号対411/412)/LNP01(1:14)を対照として使用した。肝臓のFVII mRNAレベル(図2a)および血漿FVIIチモーゲンレベル(図2b)は、用量依存的に減少し、一方PTは延長した(図3)。
【0173】
血漿のFVIIの80%を超えるノックダウンは、モルモット動脈血栓症モデルにおいて血栓形成の有意な阻害に関連した。観察されたIC50は、配列番号対259/260を含むFVII dsRNA/LNP01(1:14)で1〜2mg/kgであった。配列番号対259/260を含む3、4、5mg/kgのFVII dsRNA/LNP01(1:14)でFVII血漿ノックダウン(約95%)と肝臓mRNAのノックダウン(約80%)とが類似していることは、抗血栓効果が類似していることに関連した(血栓形成の約90%阻害)(図4)。
【0174】
・ 1mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの56%のノックダウン、血漿においてFVIIの62%のノックダウンを誘導し、PTを1.3倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を4%阻害し、血栓形成を約26%阻害した。
・ 2mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの73%のノックダウン、血漿においてFVIIの84%のノックダウンを誘導し、PTを1.6倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を22%阻害し、血栓形成を約62%阻害した。
・ 3mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの81%のノックダウン、血漿においてFVIIの93%のノックダウンを誘導し、PTを2.0倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を27%阻害し、血栓形成を約82%阻害した。
・ 4mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの80%のノックダウン、血漿においてFVIIの93%のノックダウンを誘導し、PTを2.3倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を43%阻害し、血栓形成を約91%阻害した。
・ 5mg/kgは、肝臓においてFVII mRNAの80%のノックダウン、血漿においてFVIIの95%のノックダウンを誘導し、PTを2.4倍延長し、トロンビン産生(ピーク高)を40%阻害し、血栓形成を約92%阻害した。
【0175】
爪上皮出血時間および外科的失血によって評価した出血は、配列番号対259/260の被験FVII dsRNA/LNP01(1:14)の用量(1、2、3、4、5mg/kg)で有意には影響されず、これは、血漿中で正常な止血が最大約95%のFVIIノックダウンまで維持されたことを示唆している。
【0176】
図5は、配列番号対259/260を含むFVII dsRNAをSNALP−Lに入れて製剤化した場合の、肝臓のFVII mRNAレベル(図5a)および血漿のFVII チモーゲンレベル(図5b)を示す。
【0177】
図6は、SNALP−L製剤中に配列番号対259/260を含むFVII dsRNA(siFVII)をi.v.注射後のモルモットにおける(a)外科的失血および(b)爪上皮出血時間に及ぼすFVII dsRNAの効果を示す。
【0178】
図7は、血漿のFVII活性とPT延長との相関を示す。FVII活性は、FVII dsRNAのiv注射後に減少し(LNP01およびSNALP−L中で製剤化したFVII dsRNAからの合併データ)、それは、FVII依存性凝固パラメーターPTとよく相関する。
【0179】
FVIIをターゲティングするdsRNAのin vivo効果(Macaca fascicularis)
以下の研究のために、等張緩衝液中の脂質粒子中のdsRNAの滅菌製剤(「安定核酸−脂質粒子」(SNALP)技法、Tekmira Pharmaceuticals Corporation, Canada)を使用した。
【0180】
サル(Macaca fascicularis)における単回用量設定研究
0.3mg/kg〜10mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)の単回ivボーラス注射をサルに行った。対照群には、脂質粒子によって起こる作用とRNAi介在性作用を識別するために、10mg/kgの高用量のルシフェラーゼdsRNA(配列番号411/412)を投与した。注射の48時間後にサルを屠殺した。
【0181】
血漿および肝臓において薬理効果をモニタリングした。注射の24時間後および48時間後の血漿のFVII活性およびPT値を測定した。注射の48時間後の屠殺時に肝臓のFVII mRNAレベルを測定した。
【0182】
FVII dsRNA(配列番号19/20)処置群は、1mg/kgのdsRNAでFVII活性の約50%の用量依存的減少を示し、3mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)でiv注射の24および48時間後にFVII活性が>90%の減少に達した(図8)。6mg/kgおよび10mg/kgの用量で、FVII活性の減少は、3mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)で見られたものと同様であった。PTの延長は、3mg/kgから観察された(図9)。PTにおける追加的な延長は、用量が6mg/kgおよび10mg/kgに増加したときに観察された。PTの延長は、3mg/kgで1.2倍から10mg/kgで1.4倍までの間であった。
【0183】
有効時間および反復投薬を評価するためのサルにおける探索研究
FVII dsRNA(配列番号19/20)を使用して雄性カニクイザルにおける単回および反復投与を研究した。研究の目的は、FVII dsRNA(配列番号19/20)の薬理効果の持続時間および動態についてさらに洞察することに加えて、多回投与の安全性および有効性を評価することであった。
【0184】
サルにFVII dsRNA(配列番号19/20)を単回または反復投与した。単回投与の目的は、効果の持続時間を検討することであった。単回投与群のサルに3mg/kgおよび6mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)のボーラス注射を行った。6mg/kgのルシフェラーゼdsRNA(配列番号411/412)群をdsRNA配列依存性サイレンシングに関する対照とするために、そして脂質粒子関連作用を評価するために使用した。反復投薬の目的は、用量加算性を研究すること、および脂質粒子の毒性の問題または薬理効果の過剰発現(exaggerated pharmacology)による潜在的出血問題のいずれかにより定義されるような最大耐用量を同定することであった。2種の反復投薬群のサルに1週間に1回FVII dsRNA(配列番号19/20)のボーラス注射を3mg/kgおよび10mg/kgで3回行うことを計画した。
【0185】
上記サルの単回投与研究における結果のフォローアップとして、低用量での脂質粒子介在性効果の特徴をさらに調べるために3mg/kgのルシフェラーゼdsRNA(配列番号411/412)の雌性サル群を含めた。研究の間および屠殺時の複数の時点で採取した血漿試料から薬理効果(FVII活性およびPT)をモニタリングした。
【0186】
24時間および48時間でのFVII活性についてまとめたデータは、上記単回投与研究からのデータに類似していた(図10)。FVII dsRNA(配列番号19/20)は、1mg/kg用量で約50%、3、6および10mg/kg用量で約85%〜95%、FVII活性を減少させた。3および6mg/kgのルシフェラーゼdsRNA対照群から、dsRNA脂質粒子が24時間でFVII活性に一過性の非特異的な影響を及ぼすことが確認された。48時間で値は正常に戻った。したがって、3および6mg/kgのFVII dsRNA(配列番号19/20)群において48時間に認められた活性は、完全にFVII dsRNAの薬理活性に原因があるとすることができる。
【0187】
PT値を図11に示す。1.2倍のPT延長が3mg/kgで観察され、10mg/kgでは用量依存的に1.7倍に増加した。
【0188】
サルにおける薬理効果の持続時間は、1か月超にわたり追跡した血漿のFVII活性レベルからの外挿に基づくと、約6週間であった(図12)。FVII活性の全減少は約1週間持続し、その後FVII活性が徐々に回復した。類似のサイレンシング動態が3および6mg/kgで観察され、これは、デポー効果がなかったこと、および単なるFVII活性の全阻害に必要な用量よりも高い用量で与えられたFVII dsRNAが、必ずしも薬理効果を延長しないことを示唆している。
【0189】
PT延長は、4週間認められ、処置後1週間で最高値となり、続いて2〜4週間目に直線的に減少した(図13)。データは、このFVII依存性バイオマーカーに及ぼす効果を認めるために、>70%のFVII活性減少が必要であったことを示している。
【0190】
3mg/kgで1週間に1回の多回投与を図14に示す。定常状態の状況を調査するために、そして効力の過剰発現および有毒作用を避けるために、2回目と3回目の投与の間隔を1週間から2週間に広げた。FVIIの活性データは、定常状態の間にFVIIレベルを固定することが実行可能であったことを示した。
【0191】
80%〜95%のFVII活性減少を維持するために、3mg/kgで2または3週間間隔で投与することが最適と思われた。PT値は、1.2〜1.8倍の延長に保つことができる。
【0192】
80%〜95%のFVII活性減少を維持するために、3mg/kgで2または3週間の間隔で投与することが最適と思われた。PT値を、1.2〜1.8倍の延長時間に保つことができ(図15)、注射の数日後に顕著なPTピークが認められた。これらのピークは、おそらくFVII dsRNAの薬理活性と、脂質粒子からの非特異的作用との相加的作用が原因であった。
【0193】
ヒトFVIIをターゲティングするdsRNAのin vitroのオフターゲット分析
psiCHECK(商標)ベクター(Promega)は、RNAi活性をモニタリングするための二つのレポーター遺伝子、すなわち合成版ウミシイタケルシフェラーゼ(hRluc)遺伝子および合成ホタルルシフェラーゼ遺伝子(hluc+)を有する。ホタルルシフェラーゼ遺伝子は、ホタルルシフェラーゼの発現に対するウミシイタケルシフェラーゼの発現の変化の標準化を可能にする。ウミシイタケおよびホタルルシフェラーゼの活性を、Dual-Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)を使用して測定した。本発明のdsRNAのオフターゲット効果を分析するためにpsiCHECK(商標)ベクターを使用するために、予測されるオフターゲット配列を、合成ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子およびその翻訳終止コドンの3’に位置するマルチクローニング領域にクローニングした。クローニング後に、そのベクターを哺乳動物細胞系にトランスフェクションし、続いてFVIIをターゲティングするdsRNAを共トランスフェクションする。dsRNAが予測されるオフターゲットのターゲットRNAに対して効果的にRNAi過程を開始するならば、融合されたウミシイタケターゲット遺伝子のmRNA配列は分解し、ウミシイタケルシフェラーゼ活性の減少を招くであろう。
【0194】
in silicoオフターゲット予測
本発明のdsRNAに相同な配列についてヒトゲノムをコンピューター解析により検索した。本発明のdsRNAと5個未満のミスマッチを示した相同配列を、可能性のあるオフターゲットとして定義した。in vitroのオフターゲット分析のために選択されたオフターゲットを、添付の表8、9および10に示す。
【0195】
予測されたオフターゲット配列を有するpsiCHECKベクターの産生
siRNA有力候補についてのオフターゲット効果を分析するための戦略は、予測されたオフターゲット部位をXhoIおよびNotI制限部位を介してpsiCHECK2ベクターシステム(Dual Glo(登録商標)-system, Promega, Braunschweig, Germany、カタログ番号C8021)にクローニングすることを含む。したがって、siRNAターゲット部位の上流および下流の10個のヌクレオチドをオフターゲット部位から伸長させる。さらに、フラグメントの挿入を制限分析により確認するために、NheI制限部位を組込む。1本鎖オリゴヌクレオチドを標準プロトコール(例えばMetabionによるプロトコール)によりMastercycler(Eppendorf)でアニーリングさせ、次に予めXhoIおよびNotIで消化しておいたpsiCHECK(Promega)にクローニングした。挿入の有無はNheIを用いた制限分析に続く陽性クローンの配列決定により検証した。配列決定のための選択されたプライマー(配列番号761)は、ベクターpsiCHECKの1401位に結合する。クローン産生後に、配列決定によりプラスミドを分析し、次に細胞培養実験に使用した。
【0196】
dsRNAのオフターゲット効果の分析
細胞培養:
Cos7細胞は、Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ、Braunschweig, Germany、カタログ番号ACC-60)から得られ、10%ウシ胎児血清(FCS)(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号S0115)、ペニシリン100U/ml、およびストレプトマイシン100μg/ml(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号A2213)および2mM L−グルタミン(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号K0283)さらに12μg/ml重炭酸ナトリウムを含有するように補充されたDMEM(Biochrom AG, Berlin, Germany、カタログ番号F0435)に入れて、加湿インキュベーター(Heraeus HERAcell, Kendro Laboratory Products, Langenselbold, Germany)中、37℃で5% CO2雰囲気中で培養した。
【0197】
トランスフェクションおよびルシフェラーゼの定量:
プラスミドのトランスフェクションのために、Cos−7細胞を96ウェルプレート中、2.25×104個細胞/ウェルの密度で蒔き、そのままトランスフェクションした。プラスミドのトランスフェクションは、リポフェクトアミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany、カタログ番号11668-019)を50ng/ウェルの濃度で用いて製造業者の説明に従い実施した。トランスフェクションの4時間後に、培地を捨て、新鮮培地を添加した。ここで、上記リポフェクトアミン2000を使用してsiRNAを50nMの濃度でトランスフェクションした。siRNAのトランスフェクションの24時間後に、製造業者(Dual-GloTM Luciferase Assay system, Promega, Mannheim, Germany、カタログ番号E2980)の説明に従いルシフェラーゼ試薬を使用して細胞を溶解させ、製造業者のプロトコールによりホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼを定量した。ウミシイタケルシフェラーゼのタンパク質レベルをホタルルシフェラーゼのレベルに対して標準化した。各siRNAについて12個の個別のデータ点を3回の独立した実験で収集した。全てのターゲット部位に関係しないsiRNAを、siRNA処理細胞におけるウミシイタケルシフェラーゼタンパク質の相対レベルを決定するための対照として使用した。
【0198】
結果を図16、17および18に示す。
【0199】
【表6】
【0200】
【表7】
【0201】
【表8】
【0202】
【表9】
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
【表12】
【0206】
【表13】
【0207】
【表14】
【0208】
【表15】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VII因子遺伝子の発現をin vitroで少なくとも70%阻害可能な二本鎖リボ核酸分子。
【請求項2】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖リボ核酸分子であって、該アンチセンス鎖が、該センス鎖に少なくとも部分的に相補的であり、該センス鎖が、第VII因子をコードするmRNAの少なくとも一部に少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、該配列が、(i)該アンチセンス鎖に対する該センス鎖の相補的領域に位置し;(ii)該配列が、30ヌクレオチド長未満である、請求項1記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項3】
配列番号413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437および438のヌクレオチド第1〜19位を含む、請求項1または2のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項4】
アンチセンス鎖が、さらに、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを含む、請求項3記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項5】
アンチセンス鎖のオーバーハングが、ウラシルまたは第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%相補的なヌクレオチドを含む、請求項3または4記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項6】
センス鎖が、さらに、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを含む、請求項3〜5のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項7】
センス鎖のオーバーハングが、ウラシルまたは第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%同一なヌクレオチドを含む、請求項3〜6のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項8】
該センス鎖が、配列番号413、415、417、419、421、423、425、427、429、431、433、435、および437に示される核酸配列から成る群より選択され、該アンチセンス鎖が、配列番号414、416、418、420、422、424、426、428、430、432、434、436および438に示される核酸配列から成る群より選択される、配列番号413/414、415/416、417/418、419/420、421/422、423/424、425/426、427/428、429/430、431/432、433/434、435/436および437/438から成る群より選択される配列対を含む、請求項1〜7のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項9】
少なくとも1本の鎖が、少なくとも24時間の半減期を有する、請求項1〜8のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項10】
非免疫刺激性である、請求項1〜9のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項11】
少なくとも1個の改変ヌクレオチドを含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項12】
該改変ヌクレオチドが、2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロ改変ヌクレオチド、2’−デオキシ改変ヌクレオチド、ロックしたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ改変ヌクレオチド、2’−アルキル改変ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、およびヌクレオチドを含む非天然塩基から成る群より選択される、請求項11記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項13】
該改変ヌクレオチドが、2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびデオキシチミジンである、請求項11および12のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項14】
該センス鎖が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23および25に示される核酸配列から成る群より選択され、アンチセンス鎖が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に示される核酸配列から成る群より選択される、配列番号1/2、3/4、5/6、7/8、9/10、11/12、13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24および25/26から成る群より選択される配列対を含む、請求項1〜13のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖および/またはアンチセンス鎖をコードする核酸配列。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードする、または請求項15記載の核酸配列を含むヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むベクター。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子または請求項16記載のベクターを含む、細胞、組織または非ヒト生物。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子請求項16記載のベクター、または請求項17記載の細胞もしくは組織を含む薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に許容され得る担体、安定化剤および/または希釈剤をさらに含む、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
以下の工程:
(a)該細胞、組織または生物に、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターを導入すること;および
(b)工程(a)において作製された該細胞、組織または生物を、第VII因子遺伝子のmRNA転写物が分解されるために十分な時間維持することによって、細胞における第VII因子遺伝子の発現を阻害すること
を含む、細胞、組織または生物における第VII因子遺伝子の発現を阻害するための方法。
【請求項21】
FVII遺伝子疾患の発現により引き起こされる病状および疾患を治療、予防または管理する方法であって、該治療、予防または管理を必要とする対象に、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターおよび/または請求項18もしくは19記載の薬学的組成物の治療または予防有効量を投与することを含む方法。
【請求項22】
該対象がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
血栓塞栓障害/疾患、炎症または増殖障害の処置に使用するための、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターおよび/または請求項18もしくは19記載の薬学的組成物。
【請求項24】
血栓塞栓障害/疾患、炎症または増殖障害の処置のための薬学的組成物を調製するための、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターおよび/または請求項17記載の細胞もしくは組織の使用。
【請求項1】
第VII因子遺伝子の発現をin vitroで少なくとも70%阻害可能な二本鎖リボ核酸分子。
【請求項2】
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖リボ核酸分子であって、該アンチセンス鎖が、該センス鎖に少なくとも部分的に相補的であり、該センス鎖が、第VII因子をコードするmRNAの少なくとも一部に少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、該配列が、(i)該アンチセンス鎖に対する該センス鎖の相補的領域に位置し;(ii)該配列が、30ヌクレオチド長未満である、請求項1記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項3】
配列番号413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437および438のヌクレオチド第1〜19位を含む、請求項1または2のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項4】
アンチセンス鎖が、さらに、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを含む、請求項3記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項5】
アンチセンス鎖のオーバーハングが、ウラシルまたは第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%相補的なヌクレオチドを含む、請求項3または4記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項6】
センス鎖が、さらに、1〜5ヌクレオチド長、好ましくは1〜2ヌクレオチド長の3’オーバーハングを含む、請求項3〜5のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項7】
センス鎖のオーバーハングが、ウラシルまたは第VII因子をコードするmRNAに少なくとも90%同一なヌクレオチドを含む、請求項3〜6のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項8】
該センス鎖が、配列番号413、415、417、419、421、423、425、427、429、431、433、435、および437に示される核酸配列から成る群より選択され、該アンチセンス鎖が、配列番号414、416、418、420、422、424、426、428、430、432、434、436および438に示される核酸配列から成る群より選択される、配列番号413/414、415/416、417/418、419/420、421/422、423/424、425/426、427/428、429/430、431/432、433/434、435/436および437/438から成る群より選択される配列対を含む、請求項1〜7のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項9】
少なくとも1本の鎖が、少なくとも24時間の半減期を有する、請求項1〜8のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項10】
非免疫刺激性である、請求項1〜9のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項11】
少なくとも1個の改変ヌクレオチドを含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項12】
該改変ヌクレオチドが、2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロ改変ヌクレオチド、2’−デオキシ改変ヌクレオチド、ロックしたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’−アミノ改変ヌクレオチド、2’−アルキル改変ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、およびヌクレオチドを含む非天然塩基から成る群より選択される、請求項11記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項13】
該改変ヌクレオチドが、2’−O−メチル改変ヌクレオチド、5’−ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびデオキシチミジンである、請求項11および12のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項14】
該センス鎖が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23および25に示される核酸配列から成る群より選択され、アンチセンス鎖が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24および26に示される核酸配列から成る群より選択される、配列番号1/2、3/4、5/6、7/8、9/10、11/12、13/14、15/16、17/18、19/20、21/22、23/24および25/26から成る群より選択される配列対を含む、請求項1〜13のいずれか記載の二本鎖リボ核酸分子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖および/またはアンチセンス鎖をコードする核酸配列。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子に含まれるセンス鎖またはアンチセンス鎖の少なくとも一つをコードする、または請求項15記載の核酸配列を含むヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含むベクター。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子または請求項16記載のベクターを含む、細胞、組織または非ヒト生物。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子請求項16記載のベクター、または請求項17記載の細胞もしくは組織を含む薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に許容され得る担体、安定化剤および/または希釈剤をさらに含む、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
以下の工程:
(a)該細胞、組織または生物に、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターを導入すること;および
(b)工程(a)において作製された該細胞、組織または生物を、第VII因子遺伝子のmRNA転写物が分解されるために十分な時間維持することによって、細胞における第VII因子遺伝子の発現を阻害すること
を含む、細胞、組織または生物における第VII因子遺伝子の発現を阻害するための方法。
【請求項21】
FVII遺伝子疾患の発現により引き起こされる病状および疾患を治療、予防または管理する方法であって、該治療、予防または管理を必要とする対象に、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターおよび/または請求項18もしくは19記載の薬学的組成物の治療または予防有効量を投与することを含む方法。
【請求項22】
該対象がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
血栓塞栓障害/疾患、炎症または増殖障害の処置に使用するための、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターおよび/または請求項18もしくは19記載の薬学的組成物。
【請求項24】
血栓塞栓障害/疾患、炎症または増殖障害の処置のための薬学的組成物を調製するための、請求項1〜14のいずれか一項記載の二本鎖リボ核酸分子、請求項15記載の核酸分子、請求項16記載のベクターおよび/または請求項17記載の細胞もしくは組織の使用。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−508569(P2012−508569A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535995(P2011−535995)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064940
【国際公開番号】WO2010/055041
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064940
【国際公開番号】WO2010/055041
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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