説明

第VII/VIIa因子活性を有するハイブリッド分子

本発明は、血液凝固潜在性/活性を有する新規なヒト凝固第VII/VIIa因子タンパク質、並びにポリペプチドを含む薬学的組成物、使用、および治療の方法に関する。特に、本発明は、ヒト凝固第VIIおよびVIIa因子(FVIIおよびFVIIa)の新規な半合成類似体、並びにこれらの産生の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、血液凝固潜在性/活性を有する新規ヒト凝固第VII/VIIa因子タンパク質、並びにポリペプチドを含む薬学的組成物、使用、および治療の方法に関する。特に、本発明は、新規ヒト凝固第VIIおよびVIIa因子(FVIIおよびFVIIa)の半合成類似体、並びにこれらの作製方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
血液凝固は、種々の血液成分(または因子)の複雑な相互作用からなるプロセスであり、最終的にフィブリン凝塊を生じさせる。一般に、凝固「カスケード」と称されてきたものに関与する血液成分は、酵素的に不活性タンパク質(前酵素または酵素前駆体)であり、活性化因子(これは、それ自身が活性化された凝固因子である)の作用によってタンパク質分解酵素に変換される。このような転換を受けた凝固因子は、一般に「活性因子」と呼ばれ、凝固因子の名前に文字の「a」を付加することによって命名される(たとえば第VIIa因子)。
【0003】
止血プロセスの開始は、血管壁に対する傷害の結果として曝露される組織因子と第VIIa因子との間の複合体の形成によって媒介される。次いで、この複合体は、第IXおよびX因子をこれらの活性型に変換する。第Xa因子は、組織因子を有する細胞において限られた量のプロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは、血小板、並びに第Vおよび第VIII因子を第Vaおよび第VIIIa因子に活性化し、両補因子がさらなるプロセスで完全なトロンビンバーストに至る。このプロセスは、第IXa因子(第VIIIa因子との複合体前において)による第Xa因子の産生を含み、活性化された血小板の表面で生じる。トロンビンは、最終的にフィブリノーゲンをフィブリンに変換してフィブリン凝塊の形成を生じる。近年、第VII因子および組織因子は、血液凝固の主なイニシエーターであることが見いだされた。
【0004】
第VII因子は、単鎖酵素前駆体として血液中で循環する微量血漿糖タンパク質である。酵素前駆体は、触媒的に不活性である。単鎖第VII因子は、インビトロで第Xa因子、第XIIa因子、第IXa因子、第VIIa因子、またはトロンビンによって2本鎖第VIIa因子に変換され得る。第Xa因子は、第VII因子の主要な生理学的活性化因子であると考えられる。止血に関与する幾つかのその他の血漿タンパク質のように、第VII因子は、多くのその他の凝固タンパク質のように、その活性に関してビタミンKに依存的であり、必要であるタンパク質のアミノ末端近くにクラスター形成している複数のグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化を必要とする。これらのγカルボキシル化されたグルタミン酸は、金属イオンで誘導されるリン脂質と第VII因子の相互作用を必要とする。酵素前駆体第VII因子の活性化された2本鎖状分子への転換は、内部のArg152〜Ile153ペプチド結合の切断によって生じる。組織因子、リン脂質、およびカルシウムイオンの存在下において、2本鎖第VIIa因子は、限定加水分解によって第X因子または第IX因子を迅速に活性化する。
【0005】
従って、第VII因子は、γ-カルボキシグルタミン酸残基に富んだドメイン(「GLAドメイン)を含むドメイン構造と、ヒト上皮細胞成長因子に対して相同的な配列を含む領域と、およびセリンプロテアーゼ触媒三連構造を含む触媒ドメインとを有する。触媒ドメインは、天然においてグリコシル化される。
【0006】
被検体においては、凝固カスケードを刺激するか、または改善することが望ましいことが多い。第VIIa因子は、凝固因子欠損(たとえば、血友病AおよびB、または凝固因子XIもしくはVIIの欠損)または凝固因子阻害剤などの幾つかの原因を有する出血性疾患を制御するために使用されてきた。また、第VIIa因子は、正常に機能する血液凝固カスケード(凝固因子欠損または凝固因子の何れかに対する阻害剤がない)をもつ被検体に生じる過剰の出血を制御するために使用されてきた。このような出血は、たとえば血小板機能に欠陥があること、血小板減少症、またはフォンウィルブランド病によって生じるかのうせいがある。また、出血は、手術および組織損傷のその他の形態に関連した主要な問題である。
【0007】
FVIIは、組換えで調製することができるが、細菌は、タンパク質の膜結合に必須なビタミンK-依存的カルボキシル化を導入する能力を有していないため、第VII因子の一次構造は、原核生物宿主細胞における機能的タンパク質の産生を不可能にしてしまう。従って、FVIIの産生は、高等な哺乳動物細胞での発現に制限される。しかし、哺乳動物細胞における発現は、原核生物における発現よりもずっと複雑で、かつ時間がかかり、収率は概してより限定され;従って、一般に、哺乳動物細胞における産生は、原核生物宿主細胞を使用する産生より高価である。
【0008】
欧州特許第200,421号(ZymoGenetics)は、哺乳動物細胞におけるヒト第VII因子をコードするヌクレオチド配列および第VII因子の組換え発現に関する。
【0009】
Dickinson et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1996)93、14379〜14384)は、Leu305がAlaによって置換された第VII因子変異体(FVII(Ala305))に関する。
【0010】
Iwanaga et al.(Thromb. Haemost. (supplement August 1999), 466, abstract 1474)は、残基316〜320が欠失されているか、または残基311〜322がトリプシンから対応する残基で置換されている第VIIa因子変異体に関する。
【0011】
公開された国際特許出願国際公開公報第01/83725号、国際公開公報第02/22776号、国際公開公報第03/027147号、および国際公開公報第03/037932号、並びにデンマーク特許出願第PA2002 01423号は、全て活性が保存されたか、または増大された第VIIa因子の変異体に関する。国際公開公報第02/077218号は、血清半減期が延長された第VIIa因子の誘導体に関する。
【発明の目的】
【0012】
本発明の目的は、あまり高価でなく、製造するのがより容易な、FVII活性を有するタンパク質を提供することである。本タンパク質の調製のための方法を提供することも、さらなる目的である。
【発明の開示】
【0013】
本発明の発明者は、γ-カルボキシグルタミン酸を含む脂質膜結合ドメインを合成されたポリアミノ酸の一部として生成して、その後に活性なFVII触媒ドメインのアミノ酸配列の少なくとも一部を含む原核生物で産生されたFVIIの断片に結合するという半合成法によって、FVII/FVIIaおよびFVII/FVIIa活性を有するその他のタンパク質を調製することが可能であることに気付いた。
【0014】
細菌で産生された部分は、天然のグリコシル化が完全にないのに対し、本タンパク質は、原核生物が産生することができないGLA残基を含むので、このような半合成FVIIタンパク質は、新規ハイブリッドタンパク質であると考えられる。触媒ドメインのグリコシル化パターンは、FVIIaの機能に必ずしも必要ではないことが分かっているので、これらの半合成ハイブリッドは、組換えFVII誘導タンパク質およびポリペプチドの生物活性/潜在能力を共有すると考えられる。
【0015】
それ故、本発明は、新規半合成タンパク質に、並びにこれらの調製のための方法、および使用に関する。また、本発明は、半合成タンパク質を含む組成物に、並びに治療の方法、および新規半合成FVIIタンパク質の種々の使用にも関する。
【0016】
<定義>
本明細書および特許請求の範囲に関して、「ハイブリッド分子」は、1つのタイプの細胞におけるタンパク質発現に典型的なポリペプチド断片と、異なるタイプの細胞におけるタンパク質発現に典型的な別のポリペプチド断片とを含む分子であり、ハイブリッド分子は、これが天然に存在するタンパク質と同一のアミノ酸配列を有していてもよいにもかかわらず、天然に存在しない化学実体であることを意味する。
【0017】
「第VII因子」(および「FVII」)は、本状況において、配列番号:1に記載された完全なアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味することが企図されるが、「第VIIa因子」(および「FVIIa」)は、R152とI153との間のペプチド結合が切断されて、配列番号:1のC135とC262との間のジスルフィド橋によって連結された軽鎖(配列番号:1の残基1〜152)および重鎖(配列番号:1の残基153〜406)を有するタンパク質を生じるプロセスされた形態の同じポリペプチドをも意味する。また、本用語は、これらのタンパク質が実質的に第VIIa因子活性を保持するか、または増大する限り、わずかに修飾されたアミノ酸配列、たとえばN末端アミノ酸欠失または付加を含む修飾されたN末端をもつタンパク質を含む。また、上記定義の範囲内の「第VII因子」または「第VIIa因子」には、個体間に存在し、および生じ得る天然の対立形質変異を含む。また、グリコシル化またはその他の翻訳後修飾の程度および部位は、選択された宿主細胞および宿主細胞の環境の性質に応じて異なるであろう。
【0018】
本明細書に使用される「第VII因子ポリペプチド」という用語は、天然のヒト第VII因子(配列番号:1)のアミノ酸配列1〜406を含むいずれのタンパク質またはこれらの変異体も意味する。これは、ヒト第VII因子、ヒト第VIIa因子、およびこれらの変異体を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
「脂質膜結合ドメイン」は、本状況において、γ-カルボキシグルタミン酸残基を含むタンパク質ドメインであり、通常は、トロンビン、第VII、IXおよびX因子;プロテインC、プロテインS;オステオカルシン、マトリックスGlaタンパク質、およびプロリン・リッチGlaタンパク質1などのビタミンK依存的タンパク質に由来する。その他の適切な脂質膜結合ドメインは、5,225,537に開示されており、これは参照により本明細書に援用される。
【0020】
「N末端Glaドメイン」または単なる「Gla-ドメイン」という用語は、具体的には、配列番号:1に記載された第VII因子のアミノ酸配列1〜37を意味する。
【0021】
3文字表記「Gla」は、4-γカルボキシグルタミン酸(γ-カルボキシグルタミン酸)を意味する。
【0022】
「プロテアーゼドメイン」という用語は、第VII因子のアミノ酸配列153〜406(第VIIa因子の重鎖)を意味する。
【0023】
「ヒト第VII/VIIa因子の生理活性を示す分子」は、正しくは折り畳まれたときに、1)その基質第X因子を、実施例1および/または2のアッセイ法によって活性と証明される第Xa因子に変換することができるか、または2)トロンビン、第IXa因子、第Xa因子、および第XIIa因子から選択される物質による活性化に供されたときに、このような活性分子に変換することができるか、何れかの分子を意味する。
【0024】
本発明によれば、「本質的にグリコシル化がない」ポリアミノ酸は、ポリアミノ酸のバックボーンを形成するアミノ酸残基に宿主細胞由来のグリコシル化が実質的にないポリアミノ酸である。一つの態様において、ポリアミノ酸は、1つのアミノ酸がグリコシル化されている。一つの態様において、ポリアミノ酸は、2つのアミノ酸がグリコシル化されている。一つの態様において、ポリアミノ酸は、3つのアミノ酸がグリコシル化されている。一つの態様において、これらのアミノ酸のグリコシル化が全くない。
【0025】
本明細書に使用される「組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性または増大された活性」という用語は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の70%を超える活性を意味する。一つの態様において、活性は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の80%を超える。もう一つの態様において、活性は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の90%を超える。さらなる態様において、活性は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の100%を超える。さらなる態様において、活性は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の120%を超える。さらなる態様において、活性は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の200%を超える。さらなる態様において、活性は、組換え野生型ヒト第VIIa因子の活性の400%を超える。
【0026】
また、「固有の活性」という用語は、組織因子の非存在下で活性化された血小板の表面上でトロンビンを生じさせる能力を含む。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲における「半合成」という用語は、最終生成物の一部の組換え産生、および最終生成物と異なる部分の純粋化学合成、続いて2つの部分を結合して最終生成物を得ることの両方を含むポリペプチドの調製のためのプロセスを意味することが企図される。
【0028】
本明細書に使用される「変異体」という用語は、配列番号:1の配列を有する第VII/VIIa因子であって、親タンパク質の1つもしくは複数のアミノ酸が、別のアミノ酸によって置換され、および/または親タンパク質の1つもしくは複数のアミノ酸が欠失され、および/または1つもしくは複数のアミノ酸がタンパク質において挿入され、および/または1つもしくは複数のアミノ酸が親タンパク質に付加されたものを示すことが企図される。このような付加は、親タンパク質のN末端に、もしくはC末端に、または両方ともに生じさせることができる。この定義の範囲内の「変異体」は、その活性化されて、正しく折り畳まれた形態で、なおもFVII活性を有する。一つの態様において、変異体は、配列番号:1の配列と70%同一である。一つの態様において、変異体は、配列番号:1の配列と80%同一である。もう一つの態様において、変異体は、配列番号:1の配列と90%同一である。さらなる態様において、変異体は、配列番号:1の配列と95%同一である。
【0029】
本明細書に使用される「誘導体」という用語は、本発明のハイブリッド分子(すなわちFVIIポリペプチドまたはこれらの変異体)であって、親ペプチドのアミノ酸の1つまたは複数が、たとえばアルキル化、PEG化、アシル化、エステル形成、またはアミド形成等によって化学的に修飾されたハイブリッド分子を示すことが企図される。これは、PEG化されたヒト第VIIa因子、システイン-PEG化されたヒト第VIIa因子、およびこれらの変異体を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
「ポリエチレングリコール」または「PEG」という用語は、カップリング剤、カップリング部分もしくは活性化部分(moeities)の有無にかかわらず(たとえば、チオール、トリフレート、トレシラート(tresylate)、アジルジン(azirdine)、オキシラン、または好ましくはマレイミド部分もつ)、ポリエチレングリコール化合物またはこれらの誘導体を意味する。マレイミドモノメトキシPEG(maleimido monomethoxy PEG)などの化合物は、本発明の活性化されたPEG化合物の例示である。
【0031】
「PEG化されたハイブリッド分子」という用語は、ハイブリッド分子の配列内のアミノ酸に対して抱合されたPEG分子を有する誘導体を意味し;「システイン-PEG化されたハイブリッド分子」という用語は、ハイブリッド分子内に導入されたシステインのスルフヒドリル基に対してPEG分子が抱合されることを意味する。
【0032】
本明細書および特許請求の範囲において、「アミノ酸」という用語は、式COOH-CR-NH3を有するいずれの分子をも意味し、すなわち、本用語は、その範囲内に天然に存在する、並びに天然に存在しないL-およびD-アミノ酸を含む。ほとんどの場合、本明細書で論議されるアミノ酸操作には、以下の天然に存在するLアミノ酸の使用を含む:
アミノ酸 3文字コード 1文字コード
グリシン Gly G
プロリン Pro P
アラニン Ala A
バリン Val V
ロイシン Leu L
イソロイシン Ile I
メチオニン Met M
システイン Cys C
フェニルアラニン Phe F
チロシン Tyr Y
トリプトファン trp W
ヒスチジン His H
リジン Lys K
アルギニン Arg R
グルタミン Gln Q
アスパラギン Asn N
グルタミン酸 Glu E
アスパラギン酸 Asp D
セリン Ser S
スレオニン Thr T
「ポリアミノ酸」という用語は、少なくとも3アミノ酸残基を含む分子を意味する。
【0033】
「ペプチド」という用語は、少なくとも3アミノ酸が、残基がペプチド結合を経て連結されたアミノ酸残基の鎖を形成する単鎖ポリアミノ酸を意味する。
【0034】
「オリゴペプチド」は、少なくとも10アミノ酸残基および多くても99アミノ酸残基を有するペプチドである。
【0035】
「ポリペプチド」は、少なくとも100アミノ酸残基を有するペプチドである。
【0036】
「タンパク質」は、少なくとも1つのペプチド鎖を含む分子である。分子は、共有結合で、または非共有結合で結合されていてもよい幾つかのペプチド鎖を含んでもよく、これは、異常アミノ酸、補欠分子族、グリコシル化、脂質化などを含んでいてもよい。
【0037】
本明細書に使用される「ベクター」という用語は、選択の宿主細胞における増幅が可能ないずれの核酸実体をも意味する。従って、ベクターは、染色体外の実体として存在する自律的に複製し、その複製が染色体の複製とは独立している(たとえば、プラスミド)ベクター(すなわち、ベクター)であってもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されるときに、宿主細胞ゲノムに組み込まれて、それが組み込まれた染色体と共に複製されたものであってもよい。ベクターの選択は、たいていそれが導入される宿主細胞に依存する。ベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスまたはコスミドベクターを含むが、これらに限定されるわけではない。ベクターは、通常、複製開始点および少なくとも1つの選択可能な遺伝子、すなわち容易に検出可能であるか、またはその存在が細胞増殖のために必須である生成物をコードする遺伝子を含む。本技術分野では、ネガティブおよびポジティブの両方の選択マーカが提供されている。
【0038】
「置換」、「挿入」、「欠失」、および「付加」という用語は、アミノ酸配列での操作をいうときの、通常の技術分野において認識される意味を有する。配列番号:1のアミノ酸が何れかのアミノ酸残基で置換されていてもよいことを述べるときに、これは、1つまたは複数のアミノ酸での置換を、すなわち実際は、置換と少なくとも1つの挿入との組み合わせを含めることが企図されることに留意すべきである。
【0039】
本明細書に使用される「被検体」という用語は、任意の動物、特にヒトなどの哺乳類を意味することが企図され、適切であれば、「患者」という用語と交換可能に使用される。
【0040】
「正常な止血系の増強」という用語は、トロンビンを生じさせる能力の増強を意味する。
【0041】
<本発明のハイブリッド分子の一般的特徴>
本発明の1つの部分は、ヒト第VII/VIIa因子の生理活性を示すハイブリッド分子であって、
・少なくとも1つのγ-カルボキシグルタミン酸残基を含む機能的な脂質膜結合ドメインを形成することができる第1のポリアミノ酸と、および、
・本質的にグリコシル化がなく、かつγ-カルボキシグルタミン酸残基がない第2のポリアミノ酸であって、前記ハイブリッド分子が少なくともトロンビン、第IXa因子、第Xa因子、または第XIIa因子による活性化に供された後に、ヒト凝固第VIIa因子活性を示す機能的触媒ドメインを形成することができるアミノ酸配列を含む前記第2のポリアミノ酸と、
を含むハイブリッド分子に関する。
【0042】
ポリアミノ酸が「形成できる」ことを述べるときは、本明細書において、これらが関連したドメインのアミノ酸配列を含むが、ポリアミノ酸は、折り畳まれていないか、または変性された形態であってもよいことを意味する(これは、これらが生物学的に活性な高次構造を達成するためにリフォールディングされなければならないことを意味する)。
【0043】
従って、本発明のハイブリッド分子は、活性化されていない第VII因子の形態か、または活性な第VIIa因子の形態のいずれでもあり、ハイブリッド分子の正確な折り畳みにより所望の活性を提供する限り、これらは、誤って折り畳まれたために不活性であってもよい。それ故、本ハイブリッド分子の新規性は、これらの一次構造に帰すると考えられる。
【0044】
通常の環境下では、第1のポリアミノ酸を含むハイブリッド分子の部分は、化学的ペプチド合成によって調製され、第2のポリアミノ酸の少なくとも一部を含むハイブリッド分子の部分は、原核生物の宿主細胞培養株において組換え産生によって調製され、原則として、第1のポリアミノ酸を含む部分は、いくらかの第2のポリアミノ酸を含んでいてもよく;次いで、前記部分を、ハイブリッド分子のFVII/FVIIa生理活性に悪影響を与えることなく、ペプチド結合またはペプチド結合の高次構造を模倣する結合によって連結させて;ハイブリッド分子の重要な特徴は、所望のFVII/FVIIa活性を提供する生物学的に活性な3D高次構造を保存するためのものであることを意味する。第1のポリアミノ酸の合成は、エラーが一定の割合で生じるプロセスであるので、第1のポリアミノ酸の長さを実用的な最小限に保持し、したがって、また通常、第2のポリアミノ酸の全長は、組換え産生によって産生されることに関心がもたれる。
【0045】
本発明のハイブリッド分子の上記定義から、第1と第2のポリアミノ酸間の接合部は、C末端に脂質膜結合ドメインの最後のgla残基が、およびN末端に触媒ドメインが位置することが明らかである。たとえば米国特許第6,326,468号に開示した方法に従って、完全なハイブリッド分子を合成的に産生してもよいことに留意すべきであるが、これは好ましい態様ではない。
【0046】
本発明の一つの態様において、ハイブリッド分子は、ヒトFVIIポリペプチド、すなわち配列番号:1に記載されたアミノ酸配列の完全なアミノ酸配列を含み、その場合には、第1のポリアミノ酸は、配列番号:1の残基1〜37からなり、第2のポリアミノ酸は、配列番号:1の残基153〜406からなる。ハイブリッド分子の産生に半合成アプローチが使用される本発明の態様において、ハイブリッド分子の第2の部分は、配列番号:1に見いだされるN末端のCys残基を有する。一つの態様において、ハイブリッド分子の第2の部分は、配列番号:1の残基50〜406からなるアミノ酸配列を有する(ハイブリッド分子の第1の部分は、配列番号:1の残基1〜49からなることを意味する)。
【0047】
本発明の一つの態様において、第1と第2のポリアミノ酸との間の接合部領域は、もっぱらペプチド結合で連結されたアミノ酸だけを含む(下記の天然の化学的連結の考察を参照)(これはまた、完全なハイブリッド分子の場合である)が、第1と第2のポリアミノ酸との間の接合部領域が少なくとも1つの非ペプチド結合を含む場合は、ハイブリッド分子を提供することも除外されない。このような非ペプチド結合の例は、第1と第2のポリアミノ酸との間の接合部領域にオキサゾリジン、オキシム、チアゾリジン、アシルヒドラゾン、トリアゾール、チオエステル、またはチオエーテル部分を生じる結合を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0048】
配列番号:1に記載した天然に存在するアミノ酸配列が最も好ましいが、多くの興味深い第VII因子ポリペプチド変異体も、本発明のハイブリッド分子の範囲内である。
【0049】
<配列変位をもつハイブリッド分子>
一般に、国際公開公報第01/83725号、国際公開公報第02/22776号、国際公開公報第03/027147号、国際公開公報第03/037932号、デンマーク特許出願第PA 2002 01423号、国際公開公報第01/58935号(Maxygen ApS)、国際公開公報第03/93465号(Maxygen ApS)、国際公開公報第04/029091号(Maxygen ApS)、Dickinson et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1996)93, 14379-14384)およびIwanaga et al. (Thromb. Haemost. (supplement August 1999), 466, abstract 1474)に開示されたいずれの第VII/VIIa因子変異体も、本発明のハイブリッド分子として産生してもよい。従って、これらは、ここに開示されたハイブリッド分子内のものと同一であってもよいアミノ酸配列を有するので、これらの参照の全ては、参照により本明細書に援用され、本明細書に開示された何れかの第VII/VIIa因子変異体である。
【0050】
従って、本発明の一つの態様において、ハイブリッド分子は、触媒ドメインが、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列、アミノ酸残基153〜406、または前記アミノ酸配列の変異体を含み、これは、単一アミノ酸挿入、単一アミノ酸欠失、単一アミノ酸置換(substations)、および単一アミノ酸付加から選択される多くても30の修飾を含むものである。より詳細には、置換の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30の置換からなる群より選択され、または前記アミノ酸挿入の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30の挿入からなる群より選択される。
【0051】
ハイブリッド分子は、好ましくは、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列、アミノ酸残基153〜406、または以下の修飾の少なくとも1つを含む前記アミノ酸配列の変異体を含み、全てのアミノ酸番号付けは、配列番号:1の番号付けに従う:
独立して、何れかのアミノ酸残基での少なくとも1つの残基157〜170の置換、
独立して、何れかのアミノ酸残基での少なくとも1つの残基290〜339の置換、
何れかのアミノ酸残基でのA274の置換、
何れかのアミノ酸残基でのS314の置換、
何れかのアミノ酸残基でのW364の置換、
何れかのアミノ酸残基でのQ366の置換、
何れかのアミノ酸残基でのH373の置換、
何れかのアミノ酸残基でのF374の置換、
何れかのアミノ酸残基でのV376の置換、
少なくとも1つの残基316〜320の欠失、
トリプシン由来の対応する残基での残基311〜322の置換、
バルキング剤に化学的に抱合させることができるアミノ酸でのアミノ酸残基247〜260および393〜406の何れか1つの置換、
少なくとも1つのアミノ酸残基393〜406の欠失、並びに、
バルキング剤に抱合することができるアミノ酸のNまたはC末端に対する付加。
【0052】
一つの態様において、ハイブリッド分子は、何れかのアミノ酸残基で、しかし特に、Ala、Val、Met、Leu、trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp、Gln、Tyr、およびIleなどの何れかのアミノ酸残基で、好ましくはProおよびTyrから選択されるアミノ酸残基でのF374の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0053】
第2の態様において、ハイブリッド分子は、Met、Leu、Lys、およびArgから選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのA274の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0054】
第3の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Val、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp、Gln、Tyr、またはIleでのL305の置換を含むが、置換は、Ala、Val、Tyr、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基でなされることが好ましい。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0055】
第4の態様において、ハイブリッド分子は、Gly、Lys、Gln、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのS314の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0056】
第5の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのK157の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0057】
第6の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのK337の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0058】
第7の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Gly、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのD334の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0059】
第8の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Gly、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのS336の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0060】
第9の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのK337の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0061】
第10の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのV158の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0062】
第11の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Arg、Lys、Ile、Leu、およびValからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのE296の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0063】
第12の態様において、ハイブリッド分子は、Ala、Lys、Arg、Gln、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのM298の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0064】
第13の態様において、ハイブリッド分子は、Tyr、Phe、Leu、およびMetからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのR304の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0065】
第14の態様は、AspおよびAsnからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのM306の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0066】
第15の態様は、SerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのD309の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0067】
第16の態様は、Gluでなどの、GlyまたはGluでなどの、何れかのアミノ酸残基でのS314の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0068】
第17の態様は、Glnでなどの、Gly、His、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でなどの、何れかのアミノ酸残基でのK316の置換を含む。この特定の態様は、本明細書に記載されている態様の何れか1つまたは幾つかと組み合わせることができる。
【0069】
上記の17態様の何れか1つを残りの16態様のうちの少なくとも1つと組み合わせることができる。これに関して、種々の置換の可能な組み合わせを詳細に取扱っている本請求項に、並びに国際公開公報第01/83725号、国際公開公報第02/22776号、国際公開公報第03/027147号、および国際公開公報第03/037932号に対して参照がなされる。
【0070】
特に、アミノ酸F374および配列番号:1の残基157、305、314、337、334、336、158、296、および298からなる群より独立して選択される少なくとも1つのアミノ酸が置換された第VIIa因子ポリペプチド変異体は、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して、増大された血液凝固性の活性を示すことが以前に見いだされた。
【0071】
残基F374は、残基307で始まるαヘリックスの末端に位置する。このαヘリックスは、第VIIa因子の組織因子複合型の形態で見いだされる。遊離の第VIIa因子(組織因子に結合していない第VIIa因子)では、ヘリックスがねじれており、したがって、おそらく不安定である。ヘリックスは、活性に重要であると考えられる。本発明に従った好ましい変異体により、通常は組織因子によって誘導されなければならない活性な高次構造を達成してもよい。
【0072】
位置157のLysおよび位置337のLysおよび位置158のValおよび位置296のGluおよび位置298のMetおよび位置334のAspおよび位置336のSerおよび位置305のLeuおよび位置314のSerの1つまたは複数と組み合わせてアミノ酸F374を置換することよって、第VIIa因子は、通常は組織因子によって誘導されなければならないより活性な高次構造を自発的に達成することが以前に見いだされた。
【0073】
従って、興味深い態様は、以下のものを含む:
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも2つの置換を含むハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸の置換である。
【0074】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して2つの置換を含むハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296およびM298からなる群より選択される1つの単一アミノ酸の置換である。
【0075】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、3つの置換を含むハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296およびM298からなる群より選択される2つのアミノ酸の置換(substation)である。
【0076】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、4置換を含むハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される3つのアミノ酸の置換である。
【0077】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、5置換を含むハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつ(ii)L305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される4アミノ酸の置換である。
【0078】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、6置換を含むハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される5アミノ酸の置換である。
【0079】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、7置換をもつハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される6アミノ酸の置換(substation)である。
【0080】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、8置換をもつハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される7アミノ酸の置換である。
【0081】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、9置換をもつハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換であり、かつL305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される8アミノ酸の置換である。
【0082】
・配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、10置換をもつハイブリッド分子であって、前記置換は、F374の置換(substation)であり、かつアミノ酸L305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298の置換である。
【0083】
更なる側面において、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、少なくとも2つの置換を含む第VII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物であって、前記置換は、(i)その他の何れかのアミノ酸でのF374の置換であり、(ii)L305、S314、K157、K337、D334、S336、V158、E296、およびM298からなる群より選択される1つまたは複数のアミノ酸のその他の何れかのアミノ酸での置換である構築物に関する。
【0084】
また、第VII因子の脂質膜結合ドメインを幾つかの位置で変異してもよく、または細胞膜に対して異なる親和性を有するハイブリッド分子を提供するために、もう一つのビタミンK依存的タンパク質の脂質膜結合ドメインでさらに置換してもよい。脂質膜結合ドメインは、ビタミンK依存的タンパク質に由来するという事実は、少なくとも1つのγ-カルボキシグルタミン酸が第1のポリアミノ酸に存在するという結果を有する。しかし、第1のポリアミノ酸は、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも9、または少なくとも10個のγ-カルボキシグルタミン酸残基などの少なくとも2つのγ-カルボキシグルタミン酸残基を含むことが通常である(ヒトFVIIでは、10個のγ-カルボキシグルタミン酸残基がある)。
【0085】
一つの態様において、本発明のハイブリッド分子は、ビタミンK依存的タンパク質の天然に存在するGlaドメインである脂質膜結合ドメインを含む。一つの態様において、本発明のハイブリッド分子は、ビタミンK依存的タンパク質由来の天然に存在するGlaドメインの機能的変異体または断片を含み、生物活性(膜結合)が満足なレベルで保存されることを意味する。このような機能的変異体は、多くても5つのアミノ酸に、アミノ酸付加、欠失、置換、および挿入からなる群より選択される修飾が導入された配列番号:1のアミノ酸1〜37を含むことが好ましい。たとえば、P10は、Gln、Arg、His、Asn、およびLysから選択されるアミノ酸残基などの何れかのアミノ酸残基で置換されてもよく、および/またはK32は、Glu、Gln、およびAsnから選択されるアミノ酸残基などの何れかのアミノ酸残基で置換されてもよい。ビタミンK依存的血漿タンパクの異なるリン脂質親和性および配列に基づいて、Glaドメインにおけるその他のアミノ酸も、置換のために考慮してもよい。
【0086】
一つの態様において、本発明のハイブリッド分子は、国際公開公報第99/20767号(ミネソタ大学)および国際公開公報第00/66753号(ミネソタ大学)(本参照は、参照により本明細書に援用される)に開示されたように、本明細書に開示された何れかの第VII/VIIa因子変異体である、修飾されたGla-ドメインを含む。
【0087】
<延長された血清半減期をもつハイブリッド分子>
本発明の好ましいハイブリッド分子は、野生型第VII/VIIa因子と比較して、同じか、または増大された活性を有し、かつ増大された血清半減期を有する誘導体である。
【0088】
国際公開公報第02/077218号および国際公開公報第02/02764号は、延長された血清半減期をもつFVIIポリペプチドの誘導体を開示する。これらの全ては、本発明の興味深い態様であり、従って、国際公開公報第02/077218号および国際公開公報第02/02764号の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0089】
循環に導入された大部分のタンパク質は、腎臓によって哺乳類被検体から迅速にクリアされる。この問題は、より多量のタンパク質を投与することによって、または反復投与を介して部分的に解決してもよい。しかし、高用量のタンパク質は、タンパク質に結合し、不活性化し、および/または被検体の体からタンパク質のクリアランスを容易にすることができる抗体を誘発することができる。治療タンパク質の反復投与は、本質的に効果がなく、これによりアレルギー応答を引き出すことができるために危険でもあろう。
【0090】
タンパク質療法に関する問題を解決する種々の試みには、マイクロカプセル化、リポソームデリバリー系、融合タンパク質の投与、および化学修飾を含む。腎臓は、濾過によって大きな分子をクリアリングすることができないので、これらの幾つかは、問題の分子の分子量を増大することを目的とする。
【0091】
本明細書および特許請求の範囲では、このアプローチを一般に「バルキング剤」の導入と呼ぶ(すなわち、好ましくは、生じる分子の分子量を増大する目的で、本発明のハイブリッド分子に付着された生物学的に不活性な分子部分)。バルキング剤は、それ自体で必要な増大をもたらしてもよいが、これはまた、アルブミンなどの大量の血清タンパクに対して高い親和性を有する分子実体であってもよい。
【0092】
現在までで、これらのうち最も有望なものは、ポリアルキレンオキシド重合体、特にポリエチレングリコール(PEG)の共有結合による治療的タンパク質の修飾である。たとえば、米国特許第4,179,337号は、生理的に活性な非免疫原性水溶性ポリペプチド組成物を提供するための、タンパク質に結合されたPEGまたはポリプロピレングリコールの使用を開示する。Nucci et al.は、アデノシンデアミダーゼ、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα2b(IFN-2b)、スーパーオキシドジスムターゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)、ウロキナーゼ、ウリカーゼ、ヘモグロビン、インターロイキン、インターフェロン、TGF-β、EGF、およびその他の成長因子を含むPEGの付加によって修飾された幾つかのタンパク質を記載している(Nucci et al., 1991, Adv. Drug Delivery Rev. 4: 133-151)。これらなどの試みでは、いくらか長いタンパク質の半減期およびタンパク質免疫原性の減少を生じた。
【0093】
典型的には、タンパク質のPEG化(PEGylation)は、タンパク質の表面上のリジン残基と反応する官能基でPEGを活性化することを含む。タンパク質の修飾が完了した場合には、通常タンパク質の活性は失われる。タンパク質の部分的なPEG化が可能な修飾法は、通常活性の約50%だけを喪失し、非常に増大された血清半減期を生じ、その結果タンパク質の全体の有効量がより低い。
【0094】
タンパク質PEG化法における最近の開発では、タンパク質のチオール基と反応する活性化されたPEG試薬を使用して、タンパク質の天然に存在するリジンの代わりに挿入された残基であるシステインに対してPEGの共有結合を生じさせる。Shaw et al.(米国特許第5,166,322号)は、天然に存在するアミノ酸配列内の特異的部位に導入されたシステインを有するIL-3の特異的変異体を記載している。次いで、スルフヒドリル反応性化合物(たとえば、活性化したポリエチレングリコール)をIL-3変異体と反応させることによってこれらのシステインに付着させる。Katre et al.(米国特許第5,206,344号)は、天然に存在するアミノ酸配列内の特異的部位に導入されたシステインを含む特異的IL-2変異体を記載している。その後、IL-2変異体を活性化されたポリエチレングリコール試薬と反応させて、システインにこの部分を付着させる。
【0095】
以下の考察では、バルキング剤としてのPEGに焦点をあてるが、本発明は、その範囲がPEGの使用に限定されない点に留意すべきである。その他の可能性は、PEG(下記参照)、過剰なグリコシル化、または脂肪酸もしくは脂質に対するカップリング以外のその他の重合体の導入を含む。
【0096】
第VIIa因子の生物活性に影響を及ぼすか、または減少させることなく、一次構造に対する変更、並びにその他の修飾が可能な第VIIa因子分子内の領域は、以前に同定されており−本発明のハイブリッド分子に修飾を導入するためにも同じ領域が関連する。組織因子に対する、または第X因子に対する結合に関与しないことが同定された第VIIa因子の構造内の領域は、配列番号:1の247〜260、および393〜406のアミノ酸位置を含む。具体的には、配列番号:1の配列の位置Q250、R396、およびP406のアミノ酸は、システイン(Cys)残基の導入について解析されている。Cys残基の導入は、第VII因子誘導体の循環における半減期を増大するために、バルキング剤、たとえばポリエチレングリコール(PEG)などの化学基との抱合を伴う。また、システインは、PEGの抱合を伴って配列番号:1のC末端の配列に導入された(407Cと称する)。また、この配列番号:1のC末端の配列内のシステインの付加は、第VIIa因子ポリペプチドのタンパク分解活性の減少を伴わない。これらの第VII因子誘導体、たとえばPEG分子と抱合した第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの効果が遅延されることが望ましい状況において、たとえば第VII因子ポリペプチドの反復投与もしくはより大量の投与が不都合であるか、または問題を含む状況において、治療的に有用である。さらに、タンパク分解活性に影響を及ぼさない第VIIa因子分子内の位置にて化学基と抱合することができるアミノ酸(たとえばCys残基)が導入されたハイブリッド分子は、第VII因子の抱合体におけるいずれの官能基を導入するために使用してもよい。
【0097】
好ましくは、化学基は、生体適合性の、無毒の、非免疫原性の、および水溶性の重合体である。好ましくは、化学基は、全ての部分において水溶性である。
【0098】
従って、本発明の興味深い態様は、アミノ酸残基(好ましくはCys)が配列番号:1の位置247〜260もしくは393〜405の何れか1つに対応して挿入されること、または前記アミノ酸残基が配列番号:1のNまたはC末端のアミノ酸に対応するアミノ酸に付加される場合を含む。アミノ酸残基は、配列番号:1のC末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸に付加してもよい。本発明によれば、バルキング剤は、好ましくは前記アミノ酸残基に結合される。
【0099】
また、本発明は、上で議論したとおりの配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含むハイブリッド分子であって、アミノ酸が異なるアミノ酸で置換されており、異なるアミノ酸を化学基に抱合することができ、かつハイブリッド分子が、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有するハイブリッド分子に関する。
【0100】
従って、配列番号:1の247〜260、393〜405、または406から選択される位置のアミノ酸は、任意のアミノ酸で置換されていてもよい。配列番号:1の247〜260、393〜405、または406から選択される位置のいずれのアミノ酸も、実質的に第VII因子ポリペプチドの活性の減少を伴わずに置換することができる。上で論議した配列番号:1を含む本発明のハイブリッド分子において、またはこれらの変異体において、配列番号:1のR396、Q250、またはP406から選択されるアミノ酸に対応するアミノ酸を置換することが好ましい。特に好ましい態様は、R396が何れかのアミノ酸残基で置換されたものを含む。同程度に好ましい態様は、Q250が何れかのアミノ酸残基で置換されたものを含み、P406が何れかのアミノ酸残基で置換されるものも好ましい。「挿入態様」に関しては、好ましい置換アミノ酸は、Cysである。
【0101】
アミノ酸置換、挿入、または付加、およびその後のバルキング剤との抱合は、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、第VII因子誘導体の活性型の凝血原活性の実質的減少を伴わない(実施例1および2に記載されているアッセイ法を参照)。
【0102】
ハイブリッド分子内のアミノ酸を置換するか、またはハイブリッド分子内に挿入されるか、またはハイブリッド分子内に付加されるアミノ酸は、ハイブリッド分子の実際の分子量を増大するいずれの化学基(すなわち、バルキング剤)と抱合することもできる。この化学基との抱合は、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキサイド共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化されたポリオール(たとえば、グリセロール)、およびポリビニルアルコール;コロミン酸またはその他の炭水化物に基づく重合体;アミノ酸の重合体;およびビオチン誘導体の共有結合を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0103】
ハイブリッド分子の態様は、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を有する本発明のハイブリッド分子であって、アミノ酸が異なるアミノ酸で置換されており、異なるアミノ酸が、300〜100,000ダルトンをもつハイブリッド分子の実際の分子量を増大する化学基と抱合されており、ハイブリッド分子が、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有するハイブリッド分子を含む誘導体を含む。
【0104】
<その他のハイブリッド分子>
本発明の上記の分子とは別に、触媒中心に不活性化する修飾を含むハイブリッド分子の異なるクラスも、本発明において想定される。これらは、国際公開公報第02/077218号に開示された不活性変異体を含む。
【0105】
すなわち、これらのハイブリッド分子は、本発明のハイブリッド分子と共に、その他の全ての特徴を共有するが、これらは、実質的に不活性触媒部位を与える修飾を含む。
【0106】
更なる側面において、従って、本発明は、上に記載したのと同じ原理に従って産生されるハイブリッド分子であって、第VII因子ポリペプチドは、その触媒中心がさらに修飾されており、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害するハイブリッド分のその他のクラスに関する。一つの態様において、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、セリンプロテアーゼ阻害剤でその触媒中心が修飾される。さらなる態様において、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、以下からなる群より選択されるペプチドハロメチルケトンでその触媒中心が修飾される:Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Phe-ArgクロロメチルケトンPhe-Pro-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、L-Glu-Gly-ArgクロロメチルケトンおよびD-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-L-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン、並びにダンシル-D-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン。
【0107】
本明細書に使用される「不活性化された第VII因子ポリペプチド」という用語は、血漿第XまたはIX因子を活性化する能力をもたない第VII因子ポリペプチドを意味する。
【0108】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、約300ダルトン〜約100,000ダルトンをもつ不活性化された第VII因子ポリペプチドの実際の分子量を増大する化学基(すなわち、バルキング剤を含む分子)とさらに抱合されているハイブリッド分子に関する。
【0109】
更なる側面において、本発明は、第VII因子誘導体の形態の不活性化されたハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、アミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、異なるアミノ酸は、化学基と抱合することができ、第VII因子ポリペプチドは、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して実質的に同じ活性か、または増大された活性を有し、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、化学基とさらに抱合されており、かつ不活性化されたFVIIポリペプチドは、その触媒中心に修飾を含み、かつその修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤をさらに含むハイブリッド分子に関する。
【0110】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、配列番号:1の247〜260、393〜405、または406から選択される位置のアミノ酸に対応するアミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子に関する。
【0111】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、配列番号:1のR396、Q250またはP406から選択されるアミノ酸に対応するアミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子に関する。
【0112】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、化学基と抱合することができるアミノ酸は、配列番号:1またはこれらの変異体の配列内の位置に挿入されており、第VII因子ポリペプチドは、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有し、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子に関する。
【0113】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、化学基と抱合することができるアミノ酸は、配列番号:1またはこれらの変異体のNまたはC末端に付加されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子に関する。
【0114】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物に関する。
【0115】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、アミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、異なるアミノ酸は、化学基と抱合することができ、かつ第VII因子ポリペプチドは、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有し、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物に関する。
【0116】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、配列番号:1の247〜260、393〜405、または406から選択される位置のアミノ酸に対応するアミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物に関する。
【0117】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、配列番号:1のR396、Q250、またはP406から選択されるアミノ酸に対応するアミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物に関する。
【0118】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、化学基と抱合することができるアミノ酸は、配列番号:1またはこれらの変異体の配列内の位置に挿入されており、第VII因子ポリペプチドは、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有し、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物に関する。
【0119】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、化学基と抱合することができるアミノ酸は、配列番号:1またはこれらの変異体のNまたはC末端に付加されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物に関する。
【0120】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアと;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物に関する。
【0121】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、アミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、異なるアミノ酸は、化学基と抱合することができ、かつ第VII因子ポリペプチドは、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有し、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物に関する。
【0122】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、配列番号:1の247〜260、393〜405、または406から選択される位置のアミノ酸に対応するアミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物に関する。
【0123】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、配列番号:1のR396、Q250、またはP406から選択されるアミノ酸に対応するアミノ酸は、異なるアミノ酸で置換されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物に関する。
【0124】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、化学基と抱合することができるアミノ酸は、配列番号:1またはこれらの変異体の配列内の位置に挿入されており、第VII因子ポリペプチドは、組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同じ活性か、または増大された活性を有し、かつその触媒中心修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物に関する。
【0125】
更なる側面において、本発明は、不活性化された第VII因子誘導体の形態のハイブリッド分子であって、不活性化された第VII因子ポリペプチドは、配列番号:1またはこれらの変異体のアミノ酸配列を含み、化学基と抱合することができるアミノ酸は、配列番号:1またはこれらの変異体のNまたはC末端に付加されており、かつその触媒中心に修飾を有し、その修飾は、第VII因子ポリペプチドが血漿第XまたはIX因子を活性化する能力を阻害し、バルキング剤にさらに抱合されているハイブリッド分子と;および任意に、薬学的に許容されるキャリアとを含む薬学的組成物に関する。
【0126】
これらの不活性化されたハイブリッド分子は、国際公開公報第02/077218号に詳述する多数の臨床的指標において興味深く、これらの指標の全てはまた、このような不活性化されたハイブリッド分子に関連がある限り、本発明の一部である。
【0127】
<本発明のハイブリッド分子の調製>
また、本発明は、重要な側面として、ヒト凝固第VIIまたはVIIa因子活性を示すハイブリッド分子の調製のための方法であって、本方法は、
(a)ペプチド合成によって、ビタミンK依存的タンパク質に由来する機能的膜結合ドメインのアミノ酸配列を含む第1のポリアミノ酸を合成する工程と、
(b)組換え細胞の培養から、Gla残基がなく、かつヒト第VII/VIIa因子活性を有する触媒ドメインを構成するアミノ酸配列の少なくとも一部を含む第2のポリアミノ酸を産生させて回収する工程と、
(c)工程(a)と(b)の生成物を結合して、第3のポリアミノ酸を製造することであって、N末端は、工程(a)の生成物のN末端であり、前記第3のポリアミノ酸はヒト第VII/VIIa因子活性を有する触媒ドメインを構成するアミノ酸配列を含む工程と、
(d)工程(c)の生成物を回収する工程と、
を含む方法を含む。
【0128】
連結工程Cに関して選択される連結の型に応じて、最終生成物を再び折り畳むことが必要であってもよい。また、最終生成物が、増大された血清半減期をもつハイブリッド分子が企図される場合、さらなる工程には、バルキング剤にハイブリッド分子のカップリングを含んでもよい。再折り畳み法は、必要に応じて全てにおいて、バルキング剤にカップリングの前に、および後で行ってもよいことが十分に理解されるであろう。
【0129】
工程bにおける組換え発現のためには、第2のポリアミノ酸をコードする核酸断片を通常適切なベクターに挿入して、本発明の核酸断片を有するクローニングまたは発現ベクターを形成する。本発明のこれらのベクターの構築に関する詳細は、下記の形質転換細胞および微生物に関して後述する。ベクターは、プラスミド、ファージ、コスミド、またはミニクロモソームの形態であることができる。本発明に使用される好ましいクローニングおよび発現ベクターは、自律増殖ができ、これによりその後のクローニングのために高レベル発現または高レベル複製のための高コピー数が可能となる。
【0130】
本発明に使用するための一般的なベクターの概要は、5'→3’方向に、かつ動作可能な結合に、以下の特徴を含む:第2のポリアミノ酸をコードする核酸断片の発現を駆動するためのプロモーター、任意に、第2のポリアミノ酸の分泌(細胞外相に、または適切な場合は、周辺質に)または膜への組込みを可能にするリーダーペプチドをコードする核酸配列、本発明の核酸断片、および任意にターミネータをコードする核酸配列。産生株または株化細胞において発現ベクターを作動するときに、形質転換細胞の遺伝的安定性のために、ベクターを宿主細胞に導入するときに宿主細胞ゲノムに組み込むことが好ましい。
【0131】
本発明のベクターは、宿主細胞を形質転換して第2のポリアミノ酸を産生するために使用される。このような形質転換細胞は、第2のポリアミノ酸(acod)をコードする核酸断片およびベクターの伝播のために使用されるか、または第2のポリアミノ酸の組換え産生のために使用される培養細胞もしくは株化細胞であることができる。
【0132】
本発明の好ましい形質転換細胞は、細菌(種エシュリヒア属[たとえば大腸菌]、バシラス属[たとえば枯草菌]、またはサルモネラ属など)、酵母(サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)など)などの微生物、および原生動物である。あるいは、形質転換細胞は、真菌、昆虫細胞、植物細胞、または哺乳類細胞などの多細胞生物に由来する。
【0133】
細菌大腸菌(Escherichia coli)、バシラス属(Bacillus)、およびその他の属の株を含む原核生物の宿主細胞は、本発明に最も有用な宿主細胞である。これらの宿主を形質転換し、その中にクローン化された外来DNA配列を発現するための技術は、当技術分野において周知である(たとえば、Sambrook et al.,同書を参照されたい)。大腸菌などの細菌において第2のポリアミノ酸をコードするDNAを発現するときは、ポリペプチドは、典型的には、不溶性顆粒剤として細胞質に保持してもよく、または細菌分泌配列によって細胞膜周辺腔に向けてもよい。前者の場合、細胞を溶解して、顆粒を回収し、たとえばグアニジンイソチオシアナートまたは尿素を使用して変性させる。次いで、変性させたポリペプチドを尿素並びに還元型および酸化型のグルタチオンの組み合わせの溶液に対する透析、続く緩衝生理食塩溶液に対して透析などによって、変性剤を希釈することによって再び折り畳む。後者の場合、ポリペプチドを、細胞を崩壊することによって(たとえば、超音波処理または浸透圧ショックによって)可溶性かつ機能的な形態で細胞膜周辺腔から回収して、胞膜周辺腔の内容物を放出させ、これにより変性および再折り畳みの必要を不要にする。細菌細胞において異種ジスルフィド結合を含むポリペプチドを産生するための方法は、Georgiou et al., 米国特許第6,083,715号によって開示されている。
【0134】
クローニングおよび/または最適化された発現の目的のためには、形質転換細胞が、第2のポリアミノ酸をコードする核酸断片を複製できることが好ましい。最終的に第2のポリアミノ酸を産生するためには、形質転換細胞が第1のポリアミノ酸をコードする核酸断片を発現しなければならない。決して必須でないが、発現生成物は、培地内に外に搬出されるか、または形質転換細胞の表面上に保有されるかの何れかであると便利である。
【0135】
効率的なプロデューサー細胞が同定されたときは、これらに基づいて、第2のポリアミノ酸をコードする核酸断片を発現するものを保有する安定な株化細胞を確立することが好ましい。好ましくは、この安定な株化細胞は、その表面上に第2のポリアミノ酸を分泌するか、または保有することによりこれらの精製が容易になる。
【0136】
一般に、宿主細胞に適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターが、宿主と共に使用される。ベクターは、通常、複製部位、並びに形質転換細胞における表現型選択を提供することができるマーキング配列を保有する。たとえば、大腸菌は、典型的にはpBR322(大腸菌種に由来するプラスミド)を使用して形質転換される。pBR322プラスミドは、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含み、したがって、形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する。また、pBRプラスミド、またはその他の微生物のプラスミドもしくはファージは、発現のために原核生物微生物が使用することができるプロモーターを含むか、または含むように修飾されなければならない。
【0137】
原核生物の組換えDNA構築に最も一般的に使用されるこれらのプロモーターは、B-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモータ系(Chang et al., 1978;Itakura et al., 1977;Goeddel et al., 1979)およびトリプトファン(trp)プロモータ系(Goeddel et al., 1979;EP-A-0 036 776)を含む。これらが最も一般的に使用されるが、その他の微生物プロモーターも発見され、および利用されており、これらのヌクレオチド配列に関する詳細も発表されており、当業者はこれらをプラスミドベクターと機能的に結合することができる(Siebwenlist et al., 1980)。一定の遺伝子は、自分自身のプロモーター配列から大腸菌において効率的に発現されて、人工的手段によってもう一つのプロモーターを付加する必要を排除する。
【0138】
原核生物に加えて、酵母培養などの真核生物微生物を使用してもよく、ここでは、プロモーターが発現を駆動することができるはずである。多くのその他の株を一般に利用できるが、サッカロマイセス・セレビジエ、または一般的パン酵母が、真核微生物の中で最も一般的に使用される。サッカロマイセス属における発現のためには、たとえば、プラスミドYRp7が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠いた酵母(たとえばATCC番号44076またはPEP4-1)の突然変異株に関する選択マーカを提供するtrpl遺伝子を予め含む。次いで、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてtrpl破壊が存在することにより、トリプトファンの非存在下において増殖することによって形質転換を検出するための効果のある環境を提供する。
【0139】
酵母ベクターにおける適切な促進配列は、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどのその他の糖分解酵素のためのプロモーターを含む。適切な発現プラスミドを構築する際に、また、これらの遺伝子と関連する終結配列を発現が望まれる配列の発現ベクター3'に結合させて、mRNAおよび終結のポリアデニル化を提供する。
【0140】
培養条件によって制御されるさらなる転写の利点を有するその他のプロモーターは、アルコール脱水素酵素2、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解酵素、および上述したグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素、並びにマルトースおよびガラクトース利用に応答する酵素のプロモーター領域である。酵母適合性プロモーター、複製開始点、および終結配列を含むいずれのプラスミドベクターも適している。
【0141】
また、微生物に加えて、多細胞生物に由来する細胞の培養を宿主として使用してもよい。原則として、このような細胞培養のいずれも、脊椎動物または無脊椎動物培養に由来するかどうかにかかわらず、使用可能である。しかし、脊椎動物の細胞に最も大きな関心がもたれ、培養(組織培養)における脊椎動物の増殖は、近年ルーチン法になってきた(Tissue Culture, 1973)。このような有用な宿主株化細胞の例は、VEROおよびHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞、並びにW138、BHK、COS-7 293、Spodoptera frugiperda(SF)細胞(i.a. Protein Sciences, 1000 Research Parkway, Meriden, CT 06450, U.S.Aから、およびInvitrogeから完全な発現系として市販されている)、およびMDCK株化細胞である。
【0142】
このような細胞のための発現ベクターは、(必要に応じて)通常複製開始点、何れかの必要なリボソーム結合部位と共に、発現される遺伝子の前に位置するプロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネータ配列を含む。
【0143】
哺乳動物細胞に使用するためには、発現ベクターに対する制御機能は、ウイルスの物質によって提供されることが多い。たとえば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、および最も頻繁にシミアンウイルス40(Simian Virus 40:SV40)に由来する。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、両方ともSV40ウイルスの複製開始点をも含む断片として容易にウイルスから得られるので、特に有用である。また、より小さな、またはより大きなSV40断片を使用してもよいが、ウイルスの複製開始点に位置する、HindIII部位からBglI部位の方へ延長する約250bp配列を含むことを条件とする。さらに、所望の遺伝子配列に正常に結合されたプロモーターまたは制御配列を利用することも可能であり、望まれることが多いが、このような制御配列は、宿主細胞系に適合性であることを条件とする。
【0144】
複製開始点は、SV40もしくはその他のウイルス(たとえば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)に由来してもよく、または宿主細胞染色体の複製メカニズムによって提供してもよいなど、外来起源のものを含めるためのベクターの構築によって、何れかで提供してもよい。ベクターが宿主細胞染色体に組み込まれる場合は、たいてい後者で十分である。
【0145】
工程(a)におけるペプチド合成は、固相および液相ペプチド合成から選択されるが、固相ペプチド合成を使用することが好ましい。
【0146】
このような方法は、当技術分野において公知である。ペプチドの固相合成は、最初に1962年に発表されたMerrifieldの先駆的研究に続いて40年間知られていた。この種の合成の一般的な原理は、以下のとおりである:
(a)N保護されたアミノ酸(保護基は、一般にt-ブトキシカルボニルであり、Bocと略記される)を連結基(一般にベンジルエステル)を経てそのカルボン酸末端に固体の、非可溶性支持体(一般にポリスチレン樹脂)に付着する。
【0147】
(b)N-保護基を、固体支持体からアミノ酸を剥離しない手段によって除去して、第2のN保護されたアミノ酸を、すでに付着されたものに対して(一般にカルボジイミド・カップリング薬を使用することによって)結合させる。
【0148】
(c)所望のペプチドが形成され、そのカルボキシル末端にて固体支持体にさらに付着されるまで、必要とされる程度のN保護されたアミノ酸を使用してシーケンスを繰り返す。
【0149】
(d)最終的にN-保護基を除去して、ペプチドを連結基を切断することによって(一般に強酸を使用することによって)固体支持体から分離する。
【0150】
全合成を機械操作することができ、幾つかの状況においては、ペプチドを手動処置することなく形成してもよい。Boc保護基は、トリフルオロ酢酸によって除去され、ペプチド鎖は、フッ化水素酸などのより強力な酸で固体支持体から除去される。
【0151】
この技術の導入以来、多くの修飾が導入されてきたが、今日一般に使用されるプロセスが本質的に最初に記載されている。2つの主要な革新は、固体支持体としてのポリアミドの使用およびアミノ酸のN-α基のためのN-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基の使用である。Fmoc基は、塩基(一般にピペリジン)に不安定であることによって区別される。さらなる詳細については、たとえば、Atherton and Sheppard, "Solid phase peptide synthesis - a practical approach", IRL Press at Oxford University Press, 1989; Barany et al., "Solid-phase peptide synthesis: a silver anniversary report", Int. J. Peptide Protein Res., 1987, 30, 705-739 and Fields et al., ibid, 1990, 35, 161-21に対して参照がなされる。
【0152】
米国特許第6,326,468号は、水性環境における固相合成によって、非常に長いポリペプチドを調製するための便利な方法を開示する。従って、これらの内容は、本明細書に参照により援用される。しかし、本発明は、本発明の好ましい態様を使用するときに、1つの単一の連結だけが必要であるという意味で、米国特許第6,326,468号に記載されている手順の簡略化したものを目標にする。
【0153】
米国特許第6,326,468号の開示は、主に天然の化学的連結と上述した従来の固相ペプチド合成の組み合わせに、すなわち、第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含み、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別のつかない骨格構造を有するアミド結合の形成を生じる官能基選択的反応に依存する。
【0154】
米国特許第6,326,468号では、このペプチドに対する連結は、N末端にシステインを有するペプチドと、C末端にチオエステルを有するペプチドを反応させ、これにより天然のペプチド結合を得ることによって達成される。それ故、本発明に関して、以下の様式で、上で言及した実行(exercisting)工程(c)によってこの技術を使用することができる:
1)部分的に、または完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントの形態である工程(a)の生成物を、リンカーを経て固相に結合し、または有して、固相結合した第1のペプチド・セグメントを形成させる工程であって、前記部分的に、または完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントは、N末端と、そのC末端に式-COSRのチオエステルとを含み、前記リンカーは、切断可能な部分を含み、かつ前記部分的に、または完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントは、前記N末端で前記リンカーに結合し、Rは、直鎖または分枝のC1-15官能性をもったアルキル基、C1-15芳香族構造、もしくは1〜4アミノ酸、またはこれらの誘導体である工程;
2)部分的に、または完全に保護されていない第2のペプチド・セグメントの形態である工程(b)の生成物を、前記固相結合した第1のペプチド・セグメントに結合させて、任意に、幾つか、または全ての保護基を除去する工程であって、前記第2のペプチド・セグメントは、そのN末端にシステインCを含み、前記第2のペプチド・セグメントの前記N末端システインは、前記固相結合した第1のペプチドの前記C末端に選択的に結合して、固相結合したペプチドの形態のハイブリッド分子を形成することができる工程。
【0155】
あるいは、工程(c)は、
1)部分的に、または完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントの形態である前記工程(b)の生成物を、リンカーを経て固相に結合し、または有する工程であって、前記第1のペプチド・セグメントは、N末端システインと前記リンカーに対して結合することができるC末端残基を含み、前記リンカーは、切断可能な部分を含み、かつ前記第1のペプチド・セグメントは、前記C末端残基で前記リンカーに結合されている工程;
2)部分的に、または完全に保護されていない第2のペプチド・セグメントの形態である工程(a)の生成物を、前記固相結合した第1のペプチド・セグメントに結合させて、任意に、幾つか、または全ての保護基を除去する工程であって、前記第2のペプチド・セグメントは、そのC末端にチオエステルを含み、前記第2のペプチド・セグメントの前記C末端チオエステルは、前記固相結合した第1のペプチド・セグメントの前記N末端のシステインに結合して、固相結合したペプチドの形態のハイブリッド分子を形成する工程、
を含む。
【0156】
工程(a)の生成物は、ビタミンK依存的タンパク質の脂質膜結合ドメインのアミノ酸配列を含み、かつ前記アミノ酸配列の最後のγ-カルボキシグルタミン酸でC末端で終結し、工程(b)の生成物は、第VII/VIIa因子活性を有するタンパク質の触媒部位のアミノ酸配列を含み、かつシステイン残基をもつN末端で終結する。
【0157】
好ましい態様において、工程(a)の生成物は、配列番号:1のアミノ酸1〜49からなり、Q49は、対応するチオエステルで置換されている。もう一つの好ましい態様において、工程(b)の生成物は、配列番号:1のアミノ酸50〜406からなる。
【0158】
固相は、カップリング反応、脱保護反応、および開裂反応に使用される有機溶液または水溶液に曝露されたときに実質的に不溶性である表面を有するいずれの物質であってもよい。固相物質の例は、ポリアクリルアミド、PEG、ポリスチレンPEG-A、PEG-ポリスチレン、マクロポーラス、POROS(商標)、セルロース、再構成されたセルロース(たとえば、Perloza)、ニトロセルロース、ナイロン膜、制御された孔のガラスビーズ、アクリルアミドゲル、ポリスチレン、活性化されたデキストラン、アガロース、ポリエチレン、官能性をもたせたプラスチック、ガラス、シリコン、アルミニウム、鋼、鉄、銅、ニッケル、および金を含む、ガラス、重合体、および樹脂を含む。このような物質は、プレート、シート、シャーレ、ビーズ、ペレット、円板、またはその他の便利な形の形態であってもよい。
【0159】
上述した天然の連結方法に関する1つの欠点は、これが還元状態下で行われなければならないということであり、本発明のハイブリッド分子における全てのジスルフィド橋が破壊され、それ故、生成物が変性されることを意味する。従って、天然の連結プロセスでは、酸化条件下で行われるその後の再折り畳み工程を必要とする。
【0160】
再折り畳みのための便利な方法は、実施例3に記載してあるが、米国特許第5,739,281号の再折り畳みスキーム、すなわち、環状再折り畳みストラテジーを利用することも可能である。本状況において、ハイブリッド分子は、切断可能なリンカーを経てすでに固相に結合されているために、ハイブリッド分子に親和性ハンドルを包含させる必要はなく、それゆえ、米国特許第5,739,281号の再折り畳みスキームを現在開示されたプロセスの固相結合した最終生成物に直接適用することができる。
【0161】
タンパク質の再折り畳みのための一般に適用できる方法は、“Refolding of therapeutic proteins produced in Escherichia coli as inclusion bodies”, S. Misawa and I. Kumagai, Biopolymers, 1999, 51, 297-307に記載されている。
【0162】
しかし、その後の再折り畳みの工程を回避することが要求される場合は、上記した天然の化学的連結プロセスの変形例が、当技術分野において公知である:
オキサゾリジン化学的連結:アルデヒドもしくはケトン部分を有する第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、1-アミノ,2-オール部分を有する第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含む官能基選択的反応により、連結部位にオキサゾリジン部分を形成させる。オキサゾリジンを形成する化学的連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。
【0163】
オキシム化学的連結:アミノオキシ部分を有する第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、アルデヒドまたはケトン部分を有する第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの官能基選択的反応により、連結部位にオキシム部分を形成させる。オキシム化学的連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。この種の連結は、“Facile synthesis of homogeneous artificial proteins”, K. Rose, Journal of the American Chemical Society, 1994, 116, 30-33に、さらに“A fluorescent interleukin-8 receptor probe produced by targeted labeling at the amino-terminus”, S. Alouani, H. F. Gaertner, J. J. Mermod, C. A. Power, K. B. Bacon, T. N. C. Wells, and A. E. I. Proudfoot, European Journal of Biochemistry, 1995, 227, 328-334に開示されている。
【0164】
チアゾリジン化学的連結:アルデヒドまたはケトン部分を有する第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、1-アミノ,2-チオール部分を有する第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含む官能基選択的反応により、連結部位にチアゾリジン部分を形成させる。チアゾリジン化学的連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。
【0165】
アシルヒドラゾン化学的連結:第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含む官能基選択的反応により、連結部位にアシルヒドラゾン結合を形成させる。アシルヒドラゾン化学的連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。
【0166】
トリアゾール化学連結: 第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含む官能基選択的反応をして、連結部位にトリアゾール結合を形成させる。トリアゾール化学連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。
【0167】
チオエステル化学的連結: 第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含む官能基選択的反応をして、連結部位にチオエステル結合を形成させる。チオエステル化学的連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。
【0168】
チオエーテル化学的連結: 第1の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドと、第2の保護されていないアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドとの連結を含む官能基選択的反応をして、連結部位にチオエーテル結合を形成させる。チオエーテル化学的連結から生じるペプチドまたはポリペプチド生成物の骨格構造は、天然に存在するか、もしくは組換え発現を経たペプチドまたはポリペプチドと区別可能である。
【0169】
第1のポリアミノ酸と第2のポリアミノ酸とを含むことができるハイブリッド分子の適切な断片を選択することは、当業者には問題とならないであろう。
【0170】
本発明のハイブリッド分子の組換えで産生された部分は、組換え核酸技術によって産生してもよい。一般に、変異体を産生するときに、クローン化された野生型第VII因子核酸配列を所望のタンパク質をコードするように修飾する。次いで、配列を発現ベクターに挿入し、これを次に原核生物宿主細胞に形質転換するか、またはトランスフェクトする。ヒト第VII因子の完全なヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、公知である(米国特許第4,784,950号を参照されたい)。
【0171】
アミノ酸配列変化(適切な場合)は、種々の技術によって達成してもよい。核酸配列の修飾は、部位特異的突然変異によって行ってもよい。部位特異的突然変異のための技術は、当技術分野において周知であり、たとえばZoller and Smith (DNA 3:479-488, 1984)または"Splicing by extension overlap", Horton et al., Gene 77, 1989, pp. 61-68に記載されている。従って、第VII因子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を使用して、選択の変化を導入してもよい。同様に、特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応法を使用してDNA構築物を調製するための方法も当業者に周知である(PCR Protocols, 1990, Academic Press San Diego, California, USAを参照)。
【0172】
本発明のハイブリッド分子(moleucle)の組換えで産生された部分をコードする核酸構築物は、最適には、たとえばゲノムまたはcDNAライブラリを調製する工程、および標準的な技術に従って合成オリゴヌクレオチド・プローブを使用するハイブリダイゼーションによってポリペプチドの全部もしくは一部をコードするDNA配列に対してスクリーニングする工程によって得られるゲノムまたはcDNA起源のものであってもよい(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. Ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照)。
【0173】
また、核酸構築物は、確立された標準的な方法、たとえばBeaucage and Caruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859 - 1869によって記載されている亜リン酸アミダイト法、またはMatthes et al., EMBO Journal 3 (1984), 801 - 805によって記載されている方法によって、合成で調製してもよい。亜リン酸アミダイト法によれば、オリゴヌクレオチドは、たとえば自動DNA合成され、精製され、アニールされ、結合され、適切なベクターにクローン化される。また、DNA配列は、たとえば、米国特許第4,683,202号、Saiki et al., Science 239 (1988), 487 - 491、またはSambrook et al., 前記に記載されているように、特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応法によって調製してもよい。
【0174】
さらにまた、核酸構築物は、標準的な技術に従って、合成、ゲノム、またはcDNA起源の断片(断片は、全核酸構築物の種々の部分に対応する)を(適切に)結合することによって調製される合成とゲノム起源が混合されたもの、合成とcDNA起源が混合されたもの、またはゲノムとcDNA起源が混合されたものであってもよい。
【0175】
核酸構築物は、好ましくはDNA構築物である。本発明に従ってハイブリッド分子を産生する際に使用するためのDNA配列は、典型的には上記のとおりの細菌発現のために操作される。
【0176】
当業者には周知のとおり、さらなる修飾が、タンパク質が凝固剤として作用する能力を有意に障害しない場合は、これらの修飾をハイブリッド分子のアミノ酸配列に作製することができる。たとえば、ハイブリッド分子は、また、一般に米国特許第5,288,629号(参照により本明細書に援用される)に記載されているように、活性化切断部位に修飾して、酵素前駆体第VII因子のその活性化された2本鎖形態への転換を阻害することができる。
【0177】
ハイブリッド分子の組換えで産生された部分をコードするDNA配列は、通常、いずれのベクターであってもよい組換えベクターに挿入され、これを便利には組換えDNA手順に供してもよく、ベクターの選択は、たいていこれが導入される宿主細胞に依存する。従って、ベクターは、染色体外の実体として存在する自律的に複製し(すなわち、ベクター)、その複製が染色体の複製とは独立している(たとえば、プラスミド)ベクターであってもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されるときに、宿主細胞ゲノムに組み込まれて、それが組み込まれた染色体と共に複製されてもよい。
【0178】
ベクターは、好ましくは、ハイブリッド分子の組換えで産生された部分をコードするDNA配列が、DNAの転写のために必要とされるさらなるセグメントに作動可能に連結された発現ベクターである。一般に、発現ベクターは、プラスミドもしくはファージDNAに由来するか、または両方とものエレメントを含んでいてもよい。「作動可能に連結される」という用語は、これらが、これらの企図される目的、たとえばプロモーターで開始して、ポリペプチドをコードするDNA配列を通って進行する転写のために協調して機能するようにセグメントが配置されることを示す。
【0179】
発現ベクターは、クローン化された遺伝子またはcDNAの転写を指揮することができるプロモーターを含む。プロモーターは、選択の宿主細胞において転写活性を示すいずれのDNA配列であってもよく、宿主細胞と同種または異種の何れかのタンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。
【0180】
本発明のハイブリッド分子の組換えで産生された部分は、細胞培養培地から回収される(培地から、または細菌を収集する工程および当技術分野に周知の技術によってそこからポリペプチドを単離する工程によって)。精製マットは、クロマトグラフィー(たとえば、イオン交換、親和性、疎水性、等電点電気泳動、およびサイズ排除)、電気泳動的手順(たとえば、調製用等電点電気泳動(IEF)、差動的溶解度(たとえば、硫安塩析)、または抽出(たとえば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照されたい)を含むが、これらに限定されない、当技術分野において公知の種々の手順によって到達される。好ましくは、これらは、抗第VII因子抗体カラムでのアフィニティークロマトグラフィーによって精製してもよい。Wakabayashi et al., J. Biol. Chem. 261:11097-11108, (1986) および Thim et al., Biochemistry 27: 7785-7793, (1988)によって記載されたカルシウム依存性モノクローナル抗体の使用は、特に好ましい。さらなる精製は、高速液体クロマトグラフィーなどの従来の化学的精製手段によって達成してもよい。クエン酸バリウム沈澱を含む精製のその他の方法は、当技術分野において公知であり、精製に適用してもよい(たとえば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照されたい)。
【0181】
治療目的のためには、本発明のハイブリッド分子は、実質的に純粋であることが好ましい。従って、本発明の好ましい実施例において、本発明のハイブリッド分子は、少なくとも約90〜95%均質に、好ましくは少なくとも約98%均質に精製される。純度は、たとえばゲル電気泳動およびアミノ末端アミノ酸配列によって評価してもよい。
【0182】
因子ハイブリッド分子は、その活性な2本鎖形態にそれを変換するために、その活性化部位で切断される。活性化は、Osterud, et al., Biochemistry 11:2853-2857 (1972); Thomas, 米国特許第4,456,591号; Hedner and Kisiel, J. Clin. Invest. 71:1836-1841 (1983);または Kisiel and Fujikawa, Behring Inst. Mitt. 73:29-42 (1983)に開示したものなど、当技術分野において公知の手順に従って実施してもよい。あるいは、Bjoern et al. (Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565)によって記載されているとおり、第VII因子は、イオン交換クロマトグラフィーカラムなどのMono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)等にこれを通すことによって活性化してもよい。次いで、生じる活性化されたハイブリッド分子(molecle)を処方して、後述するように投与してもよい。
【0183】
<アッセイ法>
また、本発明は、本発明に従った好ましいハイブリッド分子を選択するための適切なアッセイ法を提供する。これらのアッセイ法は、簡単な予備的インビトロ試験として行うことができる。
【0184】
従って、実施例1は、本明細書において、本発明の第VIIa因子変異体の活性についての簡単な試験(「インビトロ加水分解アッセイ法」の表題を付けた)を開示する。これに基づいて、特に興味がもたれる第VIIa因子変異体は、「インビトロ加水分解アッセイ法」で試験したときに、変異体の活性と図1に示した天然の第VII因子の活性との間の比率が、1.0以上、たとえば少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0、少なくとも約3.0など、またはさらにより好ましくは少なくとも約4.0であるような変異体である。
【0185】
また、変異体の活性は、第X因子などの生理学的基質を、最適には100〜1000nMの濃度で使用して(「インビトロタンパク質分解アッセイ法」)(実施例2を参照されたい)測定することができ、この場合、産生された第Xa因子が、適切な色素生産性基質(たとえば、S-2765)の添加後に測定される。加えて、活性アッセイ法は、生理学的温度で実行してもよい。
【0186】
また、第VIIa因子変異体がトロンビンを産生する能力は、生理的濃度の全ての関連した凝固因子および阻害剤(血友病A状態を模倣するときは、第VIII因子なしで)並びに活性化した血小板を含むアッセイ法で測定することができる(Monroe et al. (1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547のp. 543に記載されており、これは、参照として本明細書に援用される)。
【0187】
<投与および薬学的組成物>
本発明に従ったハイブリッド分子は、凝固因子欠損(たとえば、血友病AおよびB、または凝固因子XIもしくはVIIの欠損)もしくは凝固因子阻害剤などの幾つかの原因を有する出血性疾患を制御するために使用してもよく、または、これらは、正常に機能する血液凝固カスケード(凝固因子欠損または凝固因子の何れかに対する阻害剤がない)をもつ被検体に生じる過剰の出血を制御するために使用してもよい。出血は、欠陥がある血小板機能、血小板減少症、またはフォンウィルブランド病によって生じてもよい。これらは、繊維素溶解活性の増大が、種々の刺激によって誘導された被検体においても見られるかもしれない。
【0188】
手術または莫大な外傷に関連して広範な組織損傷を受けた被検体では、止血メカニズムが、即時の止血の要求に圧倒されてしまい、これらは正常な止血メカニズムにもかかわらず出血を発症するかもしれない。また、脳、内耳領域、および眼などの器官に出血が生じたときは、十分な止血を達成することも問題であり、また、供与源を同定することが困難であるときには、びまん性出血(出血性胃炎および大量の子宮出血)の場合に問題であるかもしれない。同じ問題は、種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、消化管)からの生検採取のプロセスにおいて、並びに腹腔鏡手術において生じるかもしれない。これらの状況は、外科的技術(縫合、切り抜き、その他)によって止血を提供することが困難であるという問題を共有する。また、急性および大量の出血は、与えられた療法によって止血の欠損が誘導された抗凝固療法の被検体に生じるかもしれない。このような被検体は、抗凝固効果を迅速に反対に作用されなければならない場合には外科的処置を必要とするかもしれない。止血が不十分な場合に問題を生じさせるかもしれないもう一つの状況は、正常な止血メカニズムをもつ被検体が、血栓塞栓疾患を予防するために抗凝固療法を与えられたときである。このような療法は、ヘパリン、プロテオグリカンの他の形態、ワルファリン、またはビタミンKアンタゴニストのその他の形態、並びにアスピリンおよびその他の血小板凝集阻害薬を含んでもよい。
【0189】
凝固カスケードの全身的活性化は、播種性血管内血液凝固(DIC)を生じるかもしれない。しかし、このような合併症は、血管壁傷害の部位に曝露される第VIIa因子と胸腺因子との間の複合体形成によって誘導される種類の局在化された止血プロセスを原因として生じるので、高用量の組換え第VIIa因子で治療された被検体では見られていない。従って、本発明に従ったハイブリッド分子をこれらの活性型で使用して、正常な止血メカニズムに付随したこのような過剰の出血を制御してもよい。
【0190】
慎重な処置に関連した治療については、本発明のハイブリッド分子は、典型的には、処置を行う前約24時間以内に、およびその後7日以上の間に投与される。凝固剤としての投与は、本明細書に記載されているように種々の経路によることができる。
【0191】
ハイブリッド分子の用量は、負荷量および維持量として70kgの被検体に対して約0.05mg〜500mg/日まで、好ましくは約1mg〜200mg/日まで、およびより好ましくは約10mg〜約175mg/日の範囲であり、被検体の重量および状態の重症度に依存する。
【0192】
薬学的組成物は、主に予防法および/または治療的な処置のために非経口投与することが企図される。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的に、すなわち静脈内に、皮下に、または筋肉内に投与され、またはこれは連続的もしくはパルス状の注入によって投与してもよい。非経口投与のための組成物は、薬学的に許容されるキャリア、好ましくは水性キャリアと組み合わせて、好ましくは溶解させて、本発明の第VII因子変異体を含む。水、緩衝化された水、0.4%の食塩水、0.3%のグリシンなどの種々の水性キャリアを使用してもよい。また、本発明のハイブリッド分子は、傷害の部位にデリバリーまたはターゲティングするためにリポソーム調製に処方することができる。たとえば、リポソーム調製は、米国特許第4,837,028号、米国特許第4,501,728号、および米国特許第4,975,282号に一般に記載されている。組成物は、従来の周知の滅菌法技術によって殺菌してもよい。生じる水溶液は、使用するためのパッケージにしても、または無菌条件下で濾過して凍結乾燥してもよく、凍結乾燥された製剤は、投与前に無菌水溶液と合わせられる。組成物は、必要に応じて生理学的条件近くにするための、pH調整剤および緩衝剤、緊張度調整剤等などの薬学的に許容される補助物質、たとえば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含んでもよい。
【0193】
これらの製剤中の第VII因子変異体の濃度は、非常に広範に、すなわち約0.5重量%未満、通常約1重量%に、もしくは少なくとも約1重量%から、15または20重量%までで変更することができ、選択される特定の投与様式に従って、主に液量、粘性、その他によって選択される。
【0194】
従って、静脈内注入のための典型的な薬学的組成物は、250mlの無菌リンゲル液および10mgの第VII因子変異体を含むように作製することができる。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるか、または明らかであり、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA (1990)に更に詳細に記載されている。
【0195】
本発明のハイブリッド分子を含む組成物は、予防的および/または治療的な処置のために投与することができる。治療的な適用において、組成物は、すでに上記した疾患に罹患した被検体に対して、疾患およびその合併症を治癒し、軽減し、または部分的に停止するために十分な量で投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療上有効な量」と定義される。当業者には理解されるであろうとおり、この目的のための有効な量は、疾患または傷害の重症度、並びに被検体の体重および一般的な状態に依存する。しかし、一般に、有効量は、70kgの被検体に対して1日あたり約0.05mg〜約500mgまでの第VII因子変異体の範囲であり、1日あたり約1.0mg〜約200mgの用量の第VII因子変異体がより一般的に使用される。
【0196】
本発明のFVIIaポリペプチドは、一般に重篤な疾患もしくは傷害状態、すなわち生命の脅威となるか、または潜在的に生命の脅威となる状況で使用してもよい。このような場合、外来物質を最小限にすること、およびヒトにおいてヒト第VII因子ポリペプチド変異体の免疫原性が一般的に欠如していることからみて、治療医師は、これらの本発明のハイブリッド分子を含む組成物の実質的過剰を投与することが望ましいと思われるかもしれない。
【0197】
予防的適用では、本発明の第VII因子変異体を含む組成物は、被検体自身の凝固能力を増強するために、疾患状態もしくは傷害に感受性であるか、またはそうでなければそのリスクのある被検体に投与される。このような量は、「予防的に有効な用量」であると定義される。予防的適用において、正確な量は、再び、被検体の健康状態および体重に依存するが、用量は、一般に70kgの被検体に対して1日あたり約0.05mg〜約500mgまで、より一般的には、70kgの被検体に対して1日あたり約1.0mg〜約200mgの範囲である。
【0198】
組成物の一回または複数回の投与は、治療医師によって選択される服用レベルおよびパターンで実施することができる。毎日のレベルを維持することが必要な外来被検体については、ハイブリッド分子を、たとえば持運びポンプシステムを使用して連続注入によって投与してもよい。
【0199】
たとえば局所適用など本発明のハイブリッド分子の局所デリバリーは、たとえば、スプレー、灌流、二重バルーンカテーテル、ステント、代用血管またはステントに組み入れて、バルーンカテーテルを被覆するために使用されるヒドロゲル、またはその他の十分に確立された方法によって実施してもよい。いずれにしても、薬学的組成物は、効率的に被検体を治療するために十分なハイブリッド分子の量を提供するべきである。
【0200】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、保護の範囲を限定するものと解釈されない。前述の明細書において、および以下の実施例において開示される特徴は、両方とも別々に、およびこれらのいずれの組み合わせでも、これらの多様な形態の本発明を理解するための材料である。
【実施例】
【0201】
実施例1
インビトロでの加水分解アッセイ法
天然の(野生型)第VIIa因子および第VIIa因子変異体(以下、両方とも「第VIIa因子」と称する)を、直接これらの比活性を比較するために平行してアッセイする。本アッセイ法は、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で実施される。色素生産性基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden)(終濃度1mM)を、第VIIa因子(終濃度100nM)の0.1M NaCl、5mM CaCl2、および1mg/ml ウシ血清アルブミンを含む50mM Hepes、pH 7.4溶液に添加する。405nmの吸光度をSpectraMax(商標) 340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。酵素を含んでいない空ウェルの吸光度を減算後に、20分のインキュベーションの間に発色される吸光度を使用して、変異体と野生型第VIIa因子の活性との間の比率を算出する:
比率=(A405nm第VIIa因子変異体)/(A405nm第VIIa因子野生型)。
【0202】
実施例2
インビトロでのタンパク質分解アッセイ法
天然の(野生型)第VIIa因子および第VIIa因子変異体(以下、両方とも「第VIIa因子」と称する)を、直接これらの比活性を比較するために平行してアッセイする。本アッセイ法は、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)で実施される。100μLの第VIIa因子(10nM)および第X因子(0.8μM)の、0.1M NaCl、5mM CaCl2、および1mg/ml ウシ血清アルブミンを含む50mM Hepes(pH 7.4)溶液を15分間インキュベートする。次いで、50μLの、0.1MのNaCl、20mM EDTAおよび1mg/mlのウシ血清アルブミンを含む50mM Hepes、pH 7.4の添加によって第X因子切断を停止させる。産生される第Xa因子の量は、色素生産性基質Z-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアニリド(S-2765, Chromogenix, Sweden)(終濃度0.5mM)を添加することによって測定する。405nmの吸光度をSpectraMax(商標) 340プレートリーダー(Molecular Devices, USA)で連続的に測定する。FVIIaを含んでいない空ウェルの吸光度の減算後に、10分間に発色される吸光度を使用して、変異体と野生型第VIIa因子の活性との間の比率を算出する:
比率=(A405nm第VIIa因子変異体)/(A405nm第VIIa因子野生型)。
【0203】
実施例3
本発明の変性されたハイブリッド分子の再折り畳み
本発明の誤って折り畳まれたハイブリッド分子は、Sichler K et al., J. Mol. Biol.(2002)322、591〜603に記載されている。
【0204】
変性したFVIIの適切な折り畳みの状態は、可溶化タンパク質を異なる折り畳み緩衝液に素早く100倍希釈して、異なる温度にて14日までインキュベーションすることによって決定した。
【0205】
その後、試料を20mM Tris(pH 8.5)(5mM CaCl2)に対して透析し、可溶性画分を非還元SDS-PAGEによって解析する。
【0206】
変性した天然のFVIIのための最適な折り畳み緩衝液は、1M L-アルギニン、40% エチレングリコール、50mM Tris(pH 8.5)、20mM CaCl2、1mM EDTAであることが証明された。可溶化タンパク質を、0.5mMシステインと共に折り畳みの緩衝液に繰り返し添加して、300mg/lの濃度を生じさせ、10日間15℃でインキュベートした。
【0207】
同じ再折り畳み手順が、本発明のハイブリッド分子でも有効であると判明すると考えられる。
【0208】
実施例4
FVII-(R396C)、FVII-(Q250C)、FVII-(P406C)、FVII-(407C)のPEG抱合
国際公開公報第02/077218号の実施例1に記載された、言及した何れかの位置に(250、396、406、または407(後者は、C末端に延長))遊離チオール基が導入された第VIIa因子変異体を、5倍モル過剰のPEG ビニルスルホンまたはPEG-マレイミド(あるいは、他の何らかのスルフヒドリル反応性PEG誘導体を使用してもよい)と水性緩衝液中で3時間反応させて、実質的に完了まで反応を駆動させる。PEG誘導体の分子量は、少なくとも10,000である。生じるPEG-FVIIaを実施例1および2に記載されているようにアミド分解(amidolytic)およびタンパク質分解活性について試験し、野生型ヒトFVIIaの活性を保持するはずであるか、または活性が増大されたFVIIa変異体にCysが導入された場合は、PEG誘導体との反応後の活性が、野生型ヒトFVIIaのものよりも高いままのはずである。PEG抱合されたFVIIaをSuperdex-200等のカラムでのゲル濾過などのクロマトグラフィーによって反応していないFVIIa変異体および遊離PEG誘導体から分離する。
【0209】
Cys残基のタンパク質のPEG抱合は、当業者にとって公知であり、Goodson, R. J. & Katre, N. V. (1990) Bio/Technology 8, 343 および Kogan, T. P. (1992) Synthetic Comm. 22, 2417を含む幾つかの刊行物に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1−1】図1は、天然の(野生型)ヒト凝固第VII因子の完全なアミノ酸配列を示す(配列番号:1)。
【図1−2】図1(続き)は、天然の(野生型)ヒト凝固第VII因子の完全なアミノ酸配列を示す(配列番号:1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト第VII/VIIa因子の生理活性を示すハイブリッド分子であって、
・少なくとも1つのγ-カルボキシグルタミン酸残基を含む機能的な脂質膜結合ドメインを形成することができる第1のポリアミノ酸と、および、
・本質的にグリコシル化がなく、かつγ-カルボキシグルタミン酸残基がない第2のポリアミノ酸であって、前記ハイブリッド分子が少なくともトロンビン、第IXa因子、第Xa因子、または第XIIa因子による活性化に供された後に、ヒト凝固第VIIa因子活性を示す機能的触媒ドメインを形成することができるアミノ酸配列を含む第2のポリアミノ酸と、
を含むハイブリッド分子。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド分子であって、少なくとも前記第1のポリアミノ酸を含む分子の部分は、化学的ペプチド合成によって調製されており、少なくともわずかな前記第2のポリアミノ酸を含む部分は、原核生物宿主細胞培養において組換え産生によって調製されており、かつ前記部分は、ペプチド結合または非ペプチド結合によって連結されており、その存在は、ハイブリッド分子のFVII/FVIIa生理活性に悪影響を与えないハイブリッド分子。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド分子であって、前記第1のポリアミノ酸は、少なくとも5つ、少なくとも7つ、少なくとも9つ、または少なくとも10のγ-カルボキシグルタミン酸残基などの、少なくとも2つのγ-カルボキシグルタミン酸残基を含むハイブリッド分子。
【請求項4】
バルキング剤に結合されている、前述の請求項の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド分子であって、前記バルキング剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキサイド共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化されたポリオール(たとえば、グリセロール)、およびポリビニルアルコールなどのポリアルキレンオキシド重合体;コロミン酸またはその他の炭水化物に基づく重合体;アミノ酸の重合体;およびビオチン誘導体からなる群より選択されるハイブリッド分子。
【請求項6】
前述の請求項の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記脂質膜結合ドメインは、
・天然に存在するビタミンK依存的タンパク質のGlaドメイン;または、
・天然に存在するビタミンK依存的タンパク質由来のGlaドメインの機能的変異体もしくは断片、
であるハイブリッド分子。
【請求項7】
請求項6に記載のハイブリッド分子であって、前記機能的変異体は、配列番号:1のアミノ酸1〜37を含み、アミノ酸付加、欠失、置換、および挿入からなる群より選択される多くても5つのアミノ酸修飾が導入されたハイブリッド分子。
【請求項8】
請求項7に記載のハイブリッド分子であって、P10は、Gln、Arg、His、Asn、およびLysから選択されるアミノ酸残基などの何れかのアミノ酸残基で置換されており、および/またはK32は、Glu、Gln、およびAsnから選択されるアミノ酸残基などの何れかのアミノ酸残基で置換されているハイブリッド分子。
【請求項9】
前述の請求項の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記触媒ドメインは、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列、アミノ酸残基153〜406、または単一アミノ酸挿入、単一アミノ酸欠失、単一アミノ酸置換(substations)、および単一アミノ酸付加から選択される多くても30の修飾を含む前記アミノ酸配列の変異体を含むハイブリッド分子。
【請求項10】
請求項9に記載のハイブリッド分子であって、前記置換の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30の置換からなる群より選択され、または前記アミノ酸挿入の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30の挿入からなる群より選択されるハイブリッド分子。
【請求項11】
請求項9または10に記載のハイブリッド分子であって、前記触媒ドメインは、配列番号:1に記載されたアミノ酸配列、アミノ酸残基153〜406、または以下の修飾の少なくとも1つを含む前記アミノ酸配列の変異体を含み、全てのアミノ酸番号付けは、配列番号:1の番号付けと一致するハイブリッド分子:
独立して、何れかのアミノ酸残基での少なくとも1つの残基157〜170の置換、
独立して、何れかのアミノ酸残基での少なくとも1つの残基290〜339の置換、
何れかのアミノ酸残基でのA274の置換、
何れかのアミノ酸残基でのS314の置換、
何れかのアミノ酸残基でのW364の置換、
何れかのアミノ酸残基でのQ366の置換、
何れかのアミノ酸残基でのH373の置換、
何れかのアミノ酸残基でのF374の置換、
何れかのアミノ酸残基でのV376の置換、
少なくとも1つの残基316〜320の欠失、
トリプシン由来の対応する残基での残基311〜322の置換、
バルキング剤に化学的に抱合させることができるアミノ酸でのアミノ酸残基247〜260および393〜406の何れか1つの置換、
少なくとも1つのアミノ酸残基393〜406の欠失、並びに、
バルキング剤に抱合することができるアミノ酸のNまたはC末端に対する付加。
【請求項12】
Ala、Val、Met、Leu、trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp、Gln、TyrおよびIleのような何れかのアミノ酸残基、好ましくはProおよびTyrから選択されるアミノ酸残基でのF374の置換を含む、請求項9〜11の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項13】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはMet、Leu、Lys、およびArgから選択されるアミノ酸残基でのA274の置換を含む、請求項9〜12の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項14】
Ala、Val、Met、Phe、trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp、Gln、Tyr、またはIleのような何れかアミノ酸残基、好ましくはAla、Val、Tyr、およびIleからなる群より選択されるアミノ酸残基でのL305の置換を含む、請求項9〜13の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項15】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはGly、Lys、Gln、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのS314の置換を含む、請求項9〜14の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項16】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのK157の置換を含む、請求項9〜15の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項17】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのK337の置換を含む、請求項9〜16の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項18】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Gly、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのD334の置換を含む、請求項9〜17の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項19】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Gly、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのS336の置換を含む、請求項9〜18の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項20】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのK337の置換を含む、請求項9〜19の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項21】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのV158の置換を含む、請求項9〜20の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項22】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Arg、Lys、Ile、Leu、およびValからなる群より選択されるアミノ酸残基でのE296の置換を含む、請求項9〜21の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項23】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAla、Lys、Arg、Gln、およびAsnからなる群より選択されるアミノ酸残基でのM298の置換を含む、請求項9〜22の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項24】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはTyr、Phe、Leu、およびMetからなる群より選択されるアミノ酸残基でのR304の置換を含む、請求項9〜23の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項25】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはAspおよびAsnからなる群より選択されるアミノ酸残基でのM306の置換を含む、請求項9〜24の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項26】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはSerおよびThrからなる群より選択されるアミノ酸残基でのD309の置換を含む、請求項9〜25の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項27】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはGlyまたはGluでのS314の置換を含む、請求項9〜26の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項28】
何れかのアミノ酸残基、好ましくはGly、His、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、およびGluからなる群より選択されるアミノ酸残基でのK316の置換を含む、請求項9〜27の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項29】
請求項9〜28の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、F374は、請求項11および13〜28の何れか1項において定義された修飾の少なくとも1つの他の修飾との組み合わせで置換されているハイブリッド分子。
【請求項30】
請求項9〜26の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、L305は、請求項11〜13および15〜28の何れか1項において定義された修飾の少なくとも1つの他の修飾との組み合わせで置換されているハイブリッド分子。
【請求項31】
請求項11〜30の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、R396、Q250、およびP406から選択されるアミノ酸は、何れかのアミノ酸残基で置換されているハイブリッド分子。
【請求項32】
請求項31に記載のハイブリッド分子であって、R396は、何れかのアミノ酸残基で置換されているハイブリッド分子。
【請求項33】
請求項31または32に記載のハイブリッド分子であって、Q250は、何れかのアミノ酸残基で置換されているハイブリッド分子。
【請求項34】
請求項31〜33の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、P406は、何れかのアミノ酸残基で置換されているハイブリッド分子。
【請求項35】
請求項31〜34の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記置換するアミノ酸は、バルキング剤に対して化学的に結合することができるハイブリッド分子。
【請求項36】
請求項35に記載のハイブリッド分子であって、前記置換するアミノ酸残基は、システイン残基であるハイブリッド分子。
【請求項37】
請求項11〜36の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、バルキング剤に化学的に結合することができるアミノ酸残基は、配列番号:1の配列もしくはこれらの変異体に挿入されるか、または付加されており、これにより前記ハイブリッド分子は、組換えヒト野生型FVIIもしくはFVIIaと比較して実質的に同じか、または増大された生物活性を有するハイブリッド分子。
【請求項38】
請求項37に記載のハイブリッド分子であって、前記アミノ酸残基は、配列番号:1の位置247〜260もしくは393〜405の何れか1つに対応して挿入されているか、または前記アミノ酸残基は、配列番号:1のNもしくはC末端のアミノ酸に対応するアミノ酸に付加されているハイブリッド分子。
【請求項39】
請求項38に記載のハイブリッド分子であって、前記アミノ酸残基は、配列番号:1のC末端アミノ酸残基に対応するアミノ酸に付加されているハイブリッド分子。
【請求項40】
請求項37〜39の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記アミノ酸残基は、システイン残基であるハイブリッド分子。
【請求項41】
請求項31〜40の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記バルキング剤は、前記アミノ酸残基に結合されているハイブリッド分子。
【請求項42】
請求項40に記載のハイブリッド分子であって、前記バルキング剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキサイド共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化されたポリオール(たとえば、グリセロール)、およびポリビニルアルコールなどのポリアルキレンオキシド重合体;コロミン酸またはその他の炭水化物に基づく重合体;アミノ酸の重合体;およびビオチン誘導体であるハイブリッド分子。
【請求項43】
前述の請求項の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記第1と第2のポリアミノ酸の間の接合部領域は、ペプチド結合で連結されたアミノ酸だけを含むハイブリッド分子。
【請求項44】
請求項1〜42の何れか1項に記載のハイブリッド分子であって、前記第1と第2のポリアミノ酸の間の接合部領域は、少なくとも1つの非ペプチド結合を含むハイブリッド分子。
【請求項45】
請求項44に記載のハイブリッド分子であって、前記非ペプチド結合の存在には、前記第1と第2のポリアミノ酸の間の接合部領域におけるオキサゾリジン、オキシム、チアゾリジン、アシルヒドラゾン、トリアゾール、チオエステル(thioster)、またはチオエーテル部分の存在が伴うハイブリッド分子。
【請求項46】
医薬として使用するための前述の請求項の何れか1項に記載のハイブリッド分子。
【請求項47】
請求項1〜45の何れか1項に記載のハイブリッド分子と、薬学的に許容されるキャリアまたは担体とを含む薬学的組成物。
【請求項48】
出血性疾患もしくは出血発作症候群の治療のための医薬の調製のための、または正常な止血系の増強のための医薬の調製のための、請求項1〜45の何れか1項に記載のハイブリッド分子の使用。
【請求項49】
前記医薬が血友病AまたはBの治療のためのものである、請求項49に記載の使用。
【請求項50】
被検体における出血性疾患もしくは出血発作症候群の治療のための、または正常な止血系の増強のための方法であって、請求項1〜45の何れか1項に記載のハイブリッド分子または請求項47に記載の組成物の治療的もしくは予防的に有効な量をこれらが必要な被検体に対して投与する工程を含む方法。
【請求項51】
ヒト凝固第VIIまたはVIIa因子活性を示すハイブリッド分子の調製のための方法であって、
(a)ペプチド合成によって、ビタミンK依存的タンパク質に由来する機能的膜結合ドメインのアミノ酸配列を含む第1のポリアミノ酸を合成する工程と、
(b)組換え細胞の培養から、Gla残基がなく、かつヒト第VII/VIIa因子活性を有する触媒ドメインを構成するアミノ酸配列の少なくとも一部を含む第2のポリアミノ酸を産生させて回収する工程と、
(c)工程(a)と(b)の生成物を結合して、第3のポリアミノ酸を製造することであって、N末端は、工程(a)の生成物のN末端であり、前記第3のポリアミノ酸はヒト第VII/VIIa因子活性を有する触媒ドメインを構成するアミノ酸配列を含む工程と、
(d)工程(c)の生成物を回収する工程と、
を含む方法。
【請求項52】
工程(d)の生成物を再び折り畳む工程を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
工程(d)からの生成物をバルキング剤に結合する工程を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
再折り畳み工程の前、または後に、工程(d)からの生成物をバルキング剤に結合する工程を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記組換え細胞が組換え細菌である、請求項51〜54の何れか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記組換え細菌が大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis)、およびサルモネラ菌(Salmonella)からなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ペプチド合成が固相および液相ペプチド合成から選択される、請求項51〜56の何れか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記合成が固相ペプチド合成である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項51〜58の何れか1項に記載の方法であって、工程(c)は、
1)部分的に、もしくは完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントの形態である工程(a)の生成物を、リンカーを経て固相に結合し、または有して、固相結合した第1のペプチド・セグメントを形成させる工程であって、前記部分的に、もしくは完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントは、N末端と、そのC末端に式-COSRのチオエステルとを含み、前記リンカーは、切断可能な部分を含み、かつ前記部分的に、または完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントは、前記N末端で前記リンカーに結合し、Rは、直鎖または分枝のC1-15官能性をもったアルキル基、C1-15芳香族構造、もしくは1〜4アミノ酸、またはこれらの誘導体である工程;
2)部分的に、もしくは完全に保護されていない第2のペプチド・セグメントの形態である工程(b)の生成物を、前記固相結合した第1のペプチド・セグメントに結合させて、任意に、幾つか、または全ての保護基を除去する工程であって、前記第2のペプチド・セグメントは、そのN末端にシステインCを含み、前記第2のペプチド・セグメントの前記N末端システインは、前記固相結合した第1のペプチドの前記C末端に選択的に結合して、固相結合したペプチドの形態のハイブリッド分子を形成することができる工程、
を含む方法。
【請求項60】
請求項51〜58の何れか1項に記載の方法であって、工程(c)は、
1)部分的に、もしくは完全に保護されていない第1のペプチド・セグメントの形態である前記工程(b)の生成物を、リンカーを経て固相に結合し、または有する工程であって、前記第1のペプチド・セグメントは、N末端システインと前記リンカーに対して結合することができるC末端の残基を含み、前記リンカーは、切断可能な部分を含み、かつ前記第1のペプチド・セグメントは、前記C末端残基で前記リンカーに結合されている工程;
2)部分的に、もしくは完全に保護されていない第2のペプチド・セグメントの形態である工程(a)の生成物を、前記固相結合した第1のペプチド・セグメントに結合させて、任意に、幾つか、または全ての保護基を除去する工程であって、前記第2のペプチド・セグメントは、そのC末端にチオエステルを含み、前記第2のペプチド・セグメントの前記C末端チオエステルは、前記固相結合した第1のペプチド・セグメントの前記N末端のシステインに結合して、固相結合したペプチドの形態のハイブリッド分子を形成する工程、
を含む方法。
【請求項61】
請求項59または60に記載の方法であって、前記工程(a)の生成物は、ビタミンK依存的タンパク質の脂質膜結合ドメインのアミノ酸配列を含み、かつ前記アミノ酸配列の最後のγ-カルボキシグルタミン酸でC末端で終結し、工程(b)の生成物は、第VII/VIIa因子活性を有するタンパク質の触媒部位のアミノ酸配列を含み、かつシステイン残基をもつN末端で終結する方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、工程(a)の生成物は、配列番号:1のアミノ酸1〜49からなり、Q49は、対応するチオエステルで置換された方法。
【請求項63】
請求項61または62に記載の方法であって、工程(b)の生成物は、配列番号:1のアミノ酸50〜406からなる方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【公表番号】特表2007−509843(P2007−509843A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529651(P2006−529651)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000678
【国際公開番号】WO2005/032581
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】