説明

第VIII族金属および第IIIA族金属を含む二ゼオライト触媒および芳香族C8化合物の異性化におけるその使用

構造型EUOの少なくとも1種のゼオライトと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWのゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の第VIII族金属と、少なくとも1種の第IVA族金属と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒が記載される。本発明による触媒は、1分子当たり8個の炭素原子を有する芳香族可倒物を含む供給材料の異性化方法に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の相異なるゼオライトから形成され、その一方は、構造型EUOを有するゼオライトである触媒であって、例えば、芳香族炭化水素の変換反応における使用のためのものに関する。より正確には、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を含有する芳香族化合物を異性化するための触媒に関する。本発明はまた、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料の異性化方法における前記触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
8個の炭素原子を含む芳香族化合物(AC8)を異性化するための既知の方法において、供給材料であって、混合物の熱力学的平衡に対してパラキシレンが一般的に少なく(すなわち、考慮中である温度での熱力学的平衡における混合物であって、メタキシレン、オルトキシレン、パラキシレンおよびエチルベンゼンによって形成される群から選択される少なくとも1種の化合物を含むもののパラキシレン含有量よりはるかに低いパラキシレン含有量を有し)、かつ、熱力学的平衡における同混合物と比較してエチルベンゼンを一般的に豊富に含むものは、少なくとも1種の触媒を含む反応器に、反応器の温度での熱力学的平衡における前記混合物の組成物に可及的に近い8個の炭素原子を含有する芳香族化合物の組成物を反応器出口において得るための適切な温度および圧力条件の下に導入される。この混合物から、パラキシレンは、次いで、場合によっては、特に合成繊維産業にとって非常に重要であるために所望の異性体であるメタキシレンまたはオルトキシレンと一緒に分離される。
【0003】
8個の炭素原子を含む芳香族化合物の異性化方法を行うために用いられる触媒は、一般的にはゼオライト触媒である。従来技術の触媒、特に、モルデナイトゼオライトをベースとする触媒は、それらの存在において起こる無視することのできない副反応が損失を生じさせるので、可もなく不可もない触媒性能を引き出すだけである。このような二次的な反応の挙げられ得る例は、クラッキングに続く場合も続かない場合もあるナフテン環の開環(パラフィン類への損失)、または8個の炭素原子を含む芳香族化合物の不均化およびトランスアルキル化反応(不要な芳香族化合物への損失)または芳香族化合物の水素化(ナフテン類への喪失)。ZSM−5ゼオライトをベースとする触媒が、単独でまたはモルデナイト等の他のゼオライトと混合されて既に用いられているが、これも最適の触媒性能を引き出すわけではない。より最近になって、構造型EUOを有するゼオライトをベースとする触媒が提案された(特許文献1)。それ故に、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を異性化するために用いられた場合に二次反応が制限され、このために、損失が低減するような組成を有する新規な触媒を提供することを提案する。
【特許文献1】欧州特許出願公開0923987号明細書(特開平11−244704号公報)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要約)
本発明は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属と、元素周期律表の第IIIA族からの少なくとも1種の金属と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒を提供する。本発明の触媒中に含まれるゼオライトのそれぞれは、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素によって形成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。
【0005】
本発明はまた、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料を異性化する方法における前記触媒の使用に関する。
【発明の効果】
【0006】
(発明の利点)
驚くべきことに、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の第VIII族金属と、少なくとも1種の第IIIA族金属との組合せを含む複合触媒によって、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を異性化する反応において改善された触媒性能が得られることが発見された。特に、本発明の触媒は、二次的反応を大きく制限し、これにより、従来技術の触媒と比較してより少ない損失を生じさせる。
【0007】
さらに、本発明の触媒において、2種のゼオライト(構造型EUOを有するものと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されたもの)の相対量を調節することによって、非常に広い範囲の炭化水素供給材料混合物を処理することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(説明)
本発明は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトと、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属と、元素周期律表の第IIIA族からの少なくとも1種の金属と、少なくとも1種の多孔質鉱物(mineral)マトリクスとを含む触媒を提供する。
【0009】
本発明によると、触媒は、異なる構造型を有する少なくとも2種のゼオライトを含む。
【0010】
本発明の触媒中に存在するゼオライトは、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素によって形成される群から選択される少なくとも1種の元素T、好ましくはアルミニウムとを含む。それらは、好ましくは、実質的に完全に酸型である。
【0011】
本発明の触媒中に存在する構造型EUOを有するゼオライトは、既に、当該技術において記載されている。それは、4.1×5.7Å(1Å=1オングストローム=10−10m)の細孔径を有する一次元ミクロ孔ネットワークを有している(「Atlas of Zeolite Framework Types」,W. M. Meier,D. H. Olsonand Ch. Baerlocher,第5版,2001)。さらに、N. A. Briscoeらは、総説Zeolites(1988,8,74)における論文において、一次元チャネルは、8.1Åの深さおよび6.8×5.8Åの径を有するサイドポケットを有することを開示した。構造型EUOを有するゼオライトは、ゼオライトEU−1(EP-B1-0 042 226)、ZSM−50(US-A-4 640 829)およびTPZ−3(EP-A1-0 051 318)を含む。本発明の触媒中に存在する構造型EUOを有するゼオライトは、好ましくは、EU−1ゼオライトである。前記構造型EUOを有するゼオライトは、少なくとも5、有利には5〜100のSi/T原子比、好ましくはSi/Al原子比によって特徴付けられる。前記構造型EUOを有するゼオライトは、少なくとも部分的に、好ましくは事実上完全に、酸型、すなわち、水素型Hであり、ナトリウム含有量は、好ましくは、原子比Na/Tが0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満であるようにされる。EU−1ゼオライトを合成する方式は、EP-B1-0 042 226に記載されている。ZSM−50ゼオライトを合成する方式は、US-A-4 640 829に記載されている。TPZ−3ゼオライトを合成する方式は、EP-A1 0 051 318に記載されている。
【0012】
本発明の触媒はまた、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトを含む。好ましくは、前記IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトは、2〜250、好ましくは5〜150、より好ましくは10〜80のSi/T原子比、好ましくはSi/Al原子比によって特徴付けられる。ナトリウム含有量は、総乾燥ゼオライト重量に対して0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満である。構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトは、zeolotes atlasにおいて目録に載せられており(「Atlas of Zeolite Framework Types」,W. M. Meier,D. H. Olson,and Ch. Baerlocher,第5改訂版,2001)、当該著作物において引用された文献に記載された方法を用いて、あるいは、当業者に利用可能である文献に記載された任意の他の方法を用いて合成される。任意の商業的に利用可能なゼオライトも本発明の触媒を調製するために用いられ得る。非常に有利には、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトは、IM−5、ZSM−5、モルデナイト、ベータおよびZSM−12ゼオライトから選択される。IM−5ゼオライトは、特許EP-B-0 946 416およびUS-A-6 136 290に記載されている。
【0013】
構造型EUOを有するゼオライトの結晶およびIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトの結晶は、互いに明確に区別される;重複はない。
【0014】
構造型EUOを有するゼオライトの原子比Si/T、好ましくは原子比Si/AlおよびIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトのそれは、前記ゼオライトの合成の後に得られるもの、または、T原子の一部の合成後抽出の後に得られるものである。T原子の一部の合成後抽出は、元素Tがアルミニウムである場合には脱アルミニウム処理と称され、この処理は、当業者に周知である:限定的な例は、水熱処理であり、これに続いて、鉱酸または有機酸の溶液を用いる酸攻撃(acid attack)または直接的酸攻撃が行われても行われなくてもよく、ゼオライト骨格からT原子の一部、好ましくは、アルミニウム原子の一部が抽出される。
【0015】
本発明の触媒の組成物の一部を形成する、構造型EUOを有するゼオライトおよびIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトの原子比Si/T、好ましくは原子比Si/Alおよび前記触媒の化学組成は、X線蛍光および原子吸光によって測定される。
【0016】
本発明の触媒の組成物の一部を形成するゼオライトは、焼成され、かつ、一旦焼成されてからゼオライトの水素型を生じるゼオライトのアンモニウム型を得るために少なくとも1種のアンモニウム塩の溶液を用いる少なくとも1回の処理によって交換され得る。
【0017】
本発明の触媒の組成物の一部を形成するゼオライトは、少なくとも部分的に、好ましくは、事実上完全に、酸型、すなわち、水素型(H)である。原子比Na/Tは、一般的には10%未満、好ましくは5%未満、一層より好ましくは1%未満である。
【0018】
本発明の触媒はまた、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属と、元素周期律表の第IIIA族からの少なくとも1種の金属とを含む。各金属の重量含有量は、前記触媒の総重量に対して好ましくは0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.2〜2重量%である。好ましくは、第VIII族金属は、貴金属、好ましくは白金である。好ましくは、第IIIA族金属はインジウムである。本発明の触媒は、場合によっては、少なくとも1種の第IVA族金属も含んでよく、好ましくは、その量は、総触媒重量に対して0.01〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。非常に有利には、前記第IVA族金属はスズである。前記第IVA族金属は、有利には、本発明の触媒の安定性を向上させ得る。
【0019】
多孔質鉱物マトリクスは、総触媒重量に対して好ましくは10〜98重量%、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは60〜95重量%の量で存在するものであり、このものは、一般的には、粘土(カオリン、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト等の天然粘土等)、マグネシア、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、無定形シリカ−アルミナおよび石炭によって形成される群からの構成要素から、好ましくは、アルミナ、粘土、アルミナおよびシリカの混合物およびアルミナおよびシリカ−アルミナの混合物によって形成される群の構成要素から、より好ましくはアルミナ、特にガンマアルミナから選択される。
【0020】
一般的に、および、本発明の触媒の調製の第一の実施形態では、触媒は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトを混合することによって調製され、前記ゼオライトは、粉体状である。前記ゼオライトの混合物は、当業者に知られる任意の粉体混合技術を用いて生じさせられる。一旦、ゼオライト粉体の混合物が生じると、混合物は、当業者に知られる任意の技術を用いて成形される。特に、それは、多孔質鉱物マトリクス(一般的には無定形である)、例えば、湿気を有するアルミナゲル粉体と共に混合され得る。次いで、混合物は、例えば、ダイを通した押出によって成形される。成形は、アルミナ以外のマトリクス、例えば、マグネシア、無定形シリカ−アルミナ、天然粘土(カオリン、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト)、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、石炭およびそれらの混合物により行われ得る。好ましくは、当業者に知られる形態のいずれか、より好ましくはガンマアルミナであるアルミナを含有するマトリクスが用いられる。アルミナとシリカの混合物またはアルミナとシリカ−アルミナの混合物を用いることも有利であり得る。押出以外の技術、例えば、ペレット化またはボウル造粒(bowl granulation)が用いられてもよい。成形工程の後、得られた触媒担体は、乾燥工程、次いで、焼成工程を経る。乾燥工程は、80〜150℃の温度で行われ、焼成工程は、300〜600℃、好ましくは400〜550℃の温度で行われる。
【0021】
第IIIAおよびVIII族からの金属および場合による第IVA族からの金属は、金属を含まないゼオライトを成形した後に、当業者に知られ、かつ、金属が触媒担体上に担持させられることを可能にし得る任意の方法を用いて、少なくとも1種の触媒担体上に担持させられる。用語「触媒担体」は、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライト、およびIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライト(金属不含有ゼオライト)の少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとの混合物であって、上記の成形、乾燥および焼成後のものを意味する。本発明の触媒の前記触媒担体は、一般的に、以下の量のマトリクスおよびゼオライトを有する:
・少なくとも1種のゼオライトは構造型EUOを有するゼオライトであり、少なくとも1種のゼオライトはIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトであるようなゼオライト:2〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜40重量%;
・少なくとも1種の無定形または低結晶性の酸化物タイプの多孔質鉱物マトリクス:10〜98重量%、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは60〜95重量%。
【0022】
本発明の触媒の調製の第二の実施形態によると、成形の前に、前記触媒中に含まれる、上記の少なくとも1種のゼオライト、すなわち、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトまたはIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトは、第IIIAおよびVIII族、場合によっては第IVA族からの金属から選択される少なくとも1種の金属の担持を経る。特に、第VIII族からの少なくとも1種の金属および少なくとも1種の第IIIA族金属の同一のゼオライト上への担持または少なくとも1種の第VIII族金属の1種のゼオライト上への担持および少なくとも1種の第IIIA族金属の他のゼオライト上への担持が想定され得る。複数種のゼオライト(その少なくとも一つには、金属(単数種または複数種)が装填される)は、次いで混合される。前記複数種のゼオライト(その少なくとも一つには、金属(単数種または複数種)が装填され、依然として粉体状態である)の混合は、当業者に知られた任意の粉体混合技術を用いて行われる。
【0023】
一旦、ゼオライト粉体の混合物が形成されると(その粉体の少なくとも一方には、金属(単数種または複数種)が装填される)、混合物は、当業者に知られるあらゆる技術を用いて成形される。特に、それは、多孔質鉱物マトリクス(一般的には無定形、例えば、湿ったアルミナゲル粉体)と混合され得る。この混合物は、次いで、例えば、ダイを通した押出により成形される。成形は、アルミナ以外のマトリクス、例えば、マグネシア、無定形シリカ−アルミナ、天然粘土(カオリン、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト)、シリカ、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、石炭およびそれらの混合物と共に行われ得る。好ましくは当業者に知られる形態のいずれかのアルミナ、より好ましくはガンマアルミナを含有するマトリクスが用いられる。アルミナとシリカの混合物またはアルミナとシリカ−アルミナの混合物を用いることも有利であり得る。押出以外の技術、例えば、ペレット化またはボウル造粒が用いられてもよい。成形工程の後、得られた触媒担体は、乾燥工程、次いで、焼成工程を経る。乾燥工程は80〜150℃の温度で行われ、焼成工程は300〜600℃、好ましくは400〜550℃の温度で行われる。
【0024】
第IIIA族および第VIII族からの金属および場合による第IVA族からの金属を、構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライト上および/またはIM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライト上および/または本発明の触媒を調製するための第一または第二の態様による触媒担体上に担持させるために、競争剤による陽イオン交換技術であって、この競争剤は、好ましくは、硝酸アンモニウムであり、競争剤と金属性前駆体との間の競争剤比は、少なくとも約5、有利には5〜200であるものを用いることが可能である。乾式含浸または共沈技術が用いられてもよい。
【0025】
用いられ得る第VIII族金属源は、当業者に周知である。用いられ得る例は、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、フッ化物等)、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩)および炭酸塩である。白金の場合、ヘキサクロロ白金酸が好ましく用いられる。用いられ得る第IIIA族金属源も当業者に周知である。インジウムについては、硝酸インジウムまたは塩化インジウムが好ましく用いられる。用いられ得る第IVA族金属源も当業者に周知である。スズについては、塩化スズまたはテトラブチルスズが好適に用いられる。第VIII族および第IIIA族および場合による第IVA族の金属の担持に次いで、一般的には、空気または酸素中の焼成が行われ、この焼成は、通常は300〜600℃で0.5〜10時間にわたって、好ましくは350〜550℃で1〜4時間にわたって行われる。次に、水素中の還元が行われ得、この還元は、一般的には300〜600℃の温度で1〜10時間にわたって、好ましくは350〜550℃で2〜5時間にわたって行われる。
【0026】
本発明の触媒の調製の前記第一または前記第二の実施形態において、金属はまた、成形工程の前または後に、陰イオン交換を用いて、ゼオライト上に直接的にではなく、触媒担体の多孔質鉱物マトリクス(例えば、アルミナバインダ)上に担持され得る。一般的に、金属を担持させた後に、従来通り、触媒は、上記のように焼成、次いで、水素中の還元を経る。
【0027】
第VIII族および第IIIA族および場合による第IVA族からの金属は、同じ方法または異なる技術を用いるかのいずれかで、用いられる触媒調製方式に応じて成形の前または後に、任意の順序で導入される。用いられる技術がイオン交換である場合には、要求される量の金属を導入するために連続する複数回の交換が必要であり得る。
【0028】
本発明の触媒を調製する態様に拘わらず、前記触媒を焼成した後に、水素中で還元が行われ得る。この還元は、一般的には300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で、1〜10時間、好ましくは2〜5時間の期間にわたって行われる。このような還元は、所与の反応における前記触媒の使用の場所に対して現場外(ex situ)または現場(in situ)で行われ得る。
【0029】
本発明の触媒中の2種のゼオライトの間の分布は、構造型EUOを有するゼオライトの量が、触媒に導入された総ゼオライトに対する構造型EUOを有するゼオライトの重量の百分率として1〜99%、好ましくは5〜95%、より好ましくは10〜90%であり得るようにされる。同様に、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトの量は、触媒に導入されるゼオライトの総量に対する前記ゼオライトの重量百分率として1〜99%、好ましくは5〜95%、より好ましくは10〜90%である。
【0030】
本発明の触媒は、種々の形状および寸法を有する粒状に成形される。それは、一般的には、円筒状押出物または多葉状押出物(真っ直ぐまたは捻れ形状を有する二葉、三葉または多葉等)の形態で用いられるが、場合によっては、粉体、ペレット、錠剤、リング、ビーズ、または車輪状の形態で製造され、用いられてもよい。
【0031】
本発明の触媒は、場合によっては、硫黄を含有し得る。この場合、硫黄は、上記の元素(単数種または複数種)を含有する成形および焼成された触媒に、触媒反応の前に現場で、または現場外のいずれかで導入される。硫化は、当業者に知られる任意の硫化剤、例えば、ジメチルジスルフィド、硫化水素を用いて行われる。還元の後にあらゆる硫化が行われる。現場硫化の場合、還元は、触媒が未だに還元されていないのであれば、硫化の前に行われる。現場外硫化の場合、還元が行われた後に、硫化が行われる。
【0032】
本発明はまた、炭化水素を転化する方法における本発明の触媒の使用に関する。より正確には、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料を異性化する方法であって、本発明による触媒の存在下に行われるものに関する。前記供給材料は、キシレン類およびエチルベンゼンの混合物を含む。前記方法は、好ましくは、気相中、あらゆる液相の不存在下に行われる。前記方法は、一般的には、以下の操作条件下に行われる:
・温度:300〜500℃、好ましくは320〜450℃、より好ましくは340〜430℃;
・水素分圧:0.3〜1.5MPa、好ましくは0.4〜1.2MPa、より好ましくは0.7〜1.2MPa;
・全圧:0.45〜1.9MPa、好ましくは0.6〜1.5MPa;
触媒重量(kg)当たり、かつ、1時間当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される毎時空間速度:0.25〜30h−1、好ましくは1〜10h−1、より好ましくは2〜6h−1
【0033】
以下の実施例は、決して本発明の範囲を制限することなく本発明を例示する。
【0034】
(実施例1:ZSM−5ゼオライトおよびモルデナイトゼオライトをベースとし、白金を含む触媒の調製(比較例))
本実施例1の触媒を調製するために用いられたモルデナイトゼオライトは、Zeolystによって販売される市販ゼオライトであった。X線蛍光によって測定されるそのSi/Al比は10.0であり、残留ナトリウム含有量は109ppmであった。それはその酸型であった。
【0035】
本実施例1の触媒を調製するために用いられたZSM−5ゼオライトは、Zeolystによって販売される市販ゼオライトであった。X線蛍光によって測定されるそのSi/Al比は17.5であり、残留ナトリウム含有量は132ppmであった。それはその酸型であった。
【0036】
粉体の状態にあったZSM−5ゼオライトおよびモルデナイトゼオライトは、次いで、機械的に混合され、アルミナゲルを用いた押出によって成形され、100℃での終夜乾燥および空気中500℃での焼成の後に、15重量%のゼオライト(ZSM−5+モルデナイト)および85重量%のアルミナを含有する担体が得られた。ZSM−5およびモルデナイトゼオライトは、担体中の重量で等価な量で存在した(50/50重量分布)。ゼオライト担体は、ヘキサクロロ白金酸HPtClの溶液を用いた乾式含浸を経て、触媒の重量に対して0.3重量%の白金が導入された。湿気のある固体は、次いで、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れ中500℃温度で1時間にわたって焼成された。得られた触媒Aは、7.5重量%のEU−1ゼオライト(H型)、7.5重量%のZSM−5ゼオライト(H型)、84.7重量%のアルミナおよび0.3重量%の白金を含有していた。
【0037】
(実施例2:二ゼオライト触媒であって、一方のゼオライトはEU−1ゼオライトであり、白金およびインジウムを含むもの)の調製(本発明に合致する))
本発明を例示する触媒を調製するために用いられるゼオライトは、表1において、それらの組成(Si/Al原子比)およびそれらの残留ナトリウム量により示される。関係するゼオライトは全て酸型であった。
【0038】
EU−1ゼオライトについて、用いられる出発材料は、合成された際のEU−1ゼオライトであって、有機テンプレート、ケイ素およびアルミナを含み、全Si/Al原子比が13.6であり、ナトリウム含有量が、乾燥EU−1ゼオライトの重量に対する重量で約1.5%(0.6の原子比Na/Alに対応する)である、ものである。このEU−1ゼオライトは、最初に、550℃で空気流れ中6時間にわたる「乾式」焼成を経た。次に、得られた固体は、3回のイオン交換を経た。このイオン交換は、各交換について10NのNHNO溶液中、約100℃で4時間にわたるものであった。これらの処理の終了時に、NH型のEU−1ゼオライトのSi/Al原子比は18.3であり、ナトリウム含有量は、乾燥EU−1ゼオライトの重量に対する重量で、50ppm(0.003のNa/Al原子比に対応する)であった。
【0039】
ベータ、モルデナイトおよびZSM−5ゼオライトは、市販ゼオライトである(Zeolyst)。IM−5ゼオライトは、欧州特許出願EP-A-0 946 416またはUS-A-6 136 290の実施例1に従って合成された。これらの特許文献の内容は、以下、参考として援用される。
【0040】
【表1】

【0041】
ゼオライトの全ては粉体状態にあった。EU−1ゼオライト(粉体状態にある)は、次いで、別のタイプのゼオライト(ベータ、ZSM−5、モルデナイトまたはIM−5)と機械的に混合され、次いで、集合体は、アルミナゲルを用いて押出によって成形され、100℃での終夜乾燥および500℃での空気中の焼成の後に、担体が得られた。この担体は、15重量%のゼオライト(別のタイプのゼオライトと組み合わせられたEU−1)および85重量%のアルミナを含有していた。ゼオライト担体中のゼオライトの重量分布および各担体中に存在するゼオライトのタイプは、表2に与えられる。
【0042】
触媒B、C、DおよびEを調製するために、2種の異なるゼオライト(触媒BについてはEU−1+モルデナイト、触媒CについてはEU−1+ベータ、触媒DについてはEU−1+ZSM−5および触媒EについてはEU−1+IM−5)の混合物を含むゼオライト担体は、最初に、ヘキサクロロ白金酸HPtOの溶液による乾式含浸を経て、触媒重量に対して0.3重量%の白金が導入された。含浸させられた固体は、120℃で終夜乾燥させられ、次いで、窒化インジウム溶液による乾式含浸を経て、触媒の重量に対して0.3重量%のインジウムが担持させられた。次いで、湿気のある固体は、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、乾燥空気の流れ中500℃の温度で1時間にわたって焼成された。得られた触媒の組成は、表2に示される。
【0043】
触媒Fは、触媒Bと同じ方法で調製され、窒化インジウムによる含浸の直後に、塩化スズ溶液による乾式含浸が行われ、触媒Fの重量に対して0.3重量%のスズが導入された。
【0044】
【表2】

【0045】
(実施例3:芳香族C8留分の異性化による触媒A〜Fの触媒特性の評価)
触媒A〜Fの性能は、1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物、主として、メタキシレン、オルトキシレンおよびエチルベンゼンを含む芳香族留分の異性化によって評価された。用いられた操作条件は、以下の通りであった:
・温度=390℃;
・圧力=15バール;
・H分圧=12バール。
【0046】
触媒は、水素の存在下にジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)を含む供給材料により、金属に対する硫黄の原子比が1.5であるような濃度で前処理された。次いで、触媒は、水素の流れ中3時間にわたって400℃に維持され、次いで、供給材料が注入された。
【0047】
毎時空間速度は、各触媒が、エチルベンゼンの等転化(isoconversion)を確実に行うように調節された。触媒は、エチルベンゼンの等転化におけるそれらの正味の損失による選択性に関して比較された。
【0048】
異性化反応によって、3種の損失を生じさせる副反応が起こった:パラフィンへの喪失(特に、ナフテン環の開環反応およびその後の分解に由来するものであり、その後にクラッキングが続く)、8個の炭素原子を含む芳香族化合物(AC8)の不均化およびトランスアルキル化によって形成される芳香族化合物への損失、および、芳香族脱水素に起因する8個の炭素原子を含むナフテン(N8)を含むナフテン類への損失。N8は、再循環させられ得るので、N8以外のナフテンを含む、クラッキングおよび不均化/トランスアルキル化による損失(その合計は、正味の損失を構成する)が比較されることになる。
【0049】
クラッキングによる損失(P1)は、C1〜C8パラフィン(PAR)の形態のAC8の損失である:
P1(重量%)=100×[(%PAR流出物×流出物重量)−(%PAR供給材料×供給材料の重量)]/(%AC8供給材料)×供給材料の重量)
不均化/トランスアルキル化による損失(P2)は、N8以外のナフテン、トルエン、ベンゼンおよびC9+芳香族化合物(OAN)の形態のAC8の損失である:
P2(重量%)=100×[(%OAN流出物×流出物の重量)−(%OAN供給材料×供給材料の重量)]/(%AC8供給材料×供給材料の重量)
損失P1およびP2の合計は、正味の損失を示す。
【0050】
表3に示されるデータは、エチルベンゼンの等転化(isoconversion)において得られた(61%)。
【0051】
【表3】

【0052】
それぞれ、構造型EUOを有するゼオライトと、モルデナイトゼオライト(触媒BおよびF)、ベータゼオライト(触媒C)、ZSM−5ゼオライト(触媒D)およびIM−5ゼオライト(触媒E)から選択されるゼオライトと、白金と、インジウムとを含む本発明による触媒B〜Fは、低減した正味の喪失を呈し、このことは、インジウムを含まない触媒Aを用いて得られた性能と比較して二次反応が制限されたことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造型EUOを有する少なくとも1種のゼオライトと、IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトと、少なくとも1種の第VIII族金属と、少なくとも1種の第IIIA族金属と、少なくとも1種の多孔質鉱物マトリクスとを含む触媒。
【請求項2】
構造型EUOを有するゼオライトは、EU−1ゼオライトである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
IM−5ゼオライトおよび構造型MFI、MOR、BEAおよびMTWを有するゼオライトから選択されるゼオライトは、IM−5、ZSM−5、モルデナイト、ベータおよびZSM−12ゼオライトから選択される、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
第VIII族金属は、白金である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
第IIIA族金属は、インジウムである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
少なくとも1種の第IVA族金属を含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
前記第IVA族金属は、スズである、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
硫黄を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
1分子当たり8個の炭素原子を含む芳香族化合物を含む供給材料の異性化方法であって、請求項1〜8のいずれか1つに記載の触媒の存在下に行われる、方法。
【請求項10】
前記供給材料は、キシレン類およびエチルベンゼンの混合物を含む、請求項9に記載の異性化方法。
【請求項11】
温度:300〜500℃、水素分圧:0.3〜1.5MPa、全圧:0.45〜1.9MPa、触媒の重量(kg)当たり、かつ、1時間当たりの導入される供給材料の重量(kg)で表される毎時空間速度:0.25〜30h−1で行われる、請求項9または10に記載の異性化方法。

【公表番号】特表2009−520591(P2009−520591A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546501(P2008−546501)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002361
【国際公開番号】WO2007/080238
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(500393413)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (32)
【Fターム(参考)】