説明

筆記具用摩擦体及びそれを備えた筆記具

【課題】 可逆熱変色性インキにより形成された筆跡を剥がすことなく擦過して第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させ得ると共に、擦過部分への再筆記が可能であり、繰り返し使用による持久性が高い筆記具用摩擦体と、それを備えた筆記具を提供する。
【解決手段】 可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる筆記具用摩擦体であって、前記摩擦体がスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体又はスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体からなる。可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、前記筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用摩擦体とそれを備えた筆記具に関する。更に詳細には、可逆熱変色性インキにより形成される筆跡を、摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる筆記具用摩擦体とそれを備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、支持体上に形成された可逆熱変色層を手動摩擦による摩擦熱で変色させる摩擦体を備えた熱変色セットが提案されている(特許文献1参照)。
前記提案で用いられる摩擦体は、摩擦熱を発生させるために擦過した際、可逆熱変色層を剥がしてしまい可逆的な色変化を損なうため、該可逆熱変色層上にオーバーコート層を設けて剥がれを防止する必要がある。
また、前記特許文献1に記載の摩擦体の擦過部に用いられる例示の樹脂では、該樹脂自体が擦過により削られるため、カスが出て周囲を汚すことがある。更に、摩擦熱の発生効率が低いために擦過回数が増加することがあった。
また、前記特許文献1の可逆熱変色層には、可逆熱変色像の擦過する部分の剥がれを防止するためのオーバーコート層が設けられているので、既存の可逆熱変色像を変色させることしかできず、ユーザーが自由に形成した可逆熱変色像を変色することができなかった。
【0003】
そこで、オーバーコート層等の保護部材を必要とせず、可逆熱変色性インキにより形成された像や筆跡を剥がすことなく変色させるために有用な摩擦体としてシリコーンゴムが提案されている(特許文献2参照)。
前記シリコーンゴムは、可逆熱変色性インキにより形成された像や筆跡を剥がすことなく変色させることができ、摩擦熱の発生効率が高いため摩擦体として優れた効果を発現できるものである。
しかしながら、筆跡や像を擦過して変色させた場合、該擦過部分にシリコーンゴムが僅かに付着してしまうため、擦過部分に再び筆記してもインキがはじいてしまい筆跡や像を形成することができ難いものであった。
【特許文献1】特開平7−241388号公報
【特許文献2】特開2004−148744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解決するものであり、可逆熱変色性インキにより形成された像や筆跡を剥がすことなく擦過して第1状態から第2状態に変色させ得ると共に、擦過部分への再筆記が可能であり、繰り返し使用による持久性が高い筆記具用摩擦体を提供するものである。
更に、可逆熱変色性インキにより自由に形成した像を変色できる、摩擦体を備えた筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる筆記具用摩擦体であって、前記摩擦体がスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体又はスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体からなることを要件とする。
更に、前記摩擦体が、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上であることを要件とする。
更に、可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、前記筆記具により形成された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる請求項1又は2に記載の筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備えることを要件とする。
更には、前記可逆熱変色性インキが、少なくとも25℃〜95℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有すること、前記可逆熱変色性インキが、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型のいずれかであるか、或いは、それらの任意の組合せであることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、請求項1により、熱変色像を剥がすことなく容易に変色できると共に、インキのはじきを生じることなく擦過部上に再び熱変色像を形成できる摩擦体が得られる。
【0007】
請求項2により、擦過時に削れカスにより擦過部周辺を汚すことなく、摩擦熱の発生効率を高めることができる。
【0008】
請求項3により、ユーザーが自由に像を形成できると共に、筆記具に備えた摩擦体を用いて前記像を容易に変色させ得る。
【0009】
請求項4により、インキが高濃度の発色性を有し、擦過により確実に変色するものとなる。
【0010】
請求項6により、加熱、冷却により可逆的に変色するマジック性に富んだ像を形成でき、目的に応じて学習、教習、玩具要素等多様に応用展開できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の筆記具用摩擦体は、可逆熱変色性インキにより筆記された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に簡易に変色させるものであり、前記筆跡を擦過することで常態と異なる色彩に互変的に変色させるものである。
【0012】
また、本発明の筆記具用摩擦体は、動力等を用いず手動操作によって発熱させ得るため、大がかりな装置を必要とせず、低コストで製造できるので、可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具の軸胴の後端部または筆記具用キャップの頂部等に嵌合や二色成形等の手段により設けたり、可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具と併せて使用したり、可逆熱変色性インキによる印刷像を備えた絵本や玩具と併せて使用することができる。
特に、前記筆記具と摩擦体を別体で設けて可逆熱変色性筆記具セットとしたり、前記筆記具に摩擦体を設けた場合、前記筆記具により自由な像を形成することができると共に、摩擦体により前記像を容易に変色させることができるため、より有用なものとなる。
【0013】
前記筆記具用摩擦体としてはスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体又はスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体が適用される。これらの共重合体は、摩擦熱の発生効率が良く、熱変色像を剥がすことなく繰り返し可逆的に変色させることができると共に、擦過時の抵抗が少ないため滑らかに擦過できるものであり、更に、擦過時に支持体に定着してもインキのはじきを生じないため、擦過部分に再筆記することが可能である。
【0014】
また、前記共重合体からなる摩擦体の硬度を、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aを55度以上にすることが好ましい。
55度以上とすることで、摩擦熱の発生効率が高まると共に、摩擦体がより削れ難くなるので、少ない擦過回数で容易に熱変色像を変色させることができ、削れカスにより擦過部分の周辺を汚すことなく使用できる。
また、摩擦体に弾性を付与するためにショア硬度Aを100度以下にすることが好ましい。100度以下とすることで、弾性力を備えるため、摩擦時の支持体への接触面が増加し、少ない擦過回数で容易に熱変色像を変色できると共に、滑らかに擦過できる。
【0015】
更に、前記摩擦体には着色剤を添加することができる。摩擦体を着色することによってデザイン性に富んだものとなる。また、該摩擦体を筆記具に装着した場合には、第一状態又は第二状態のインキ色に着色し、第一状態の色又は変色により現れる色をユーザーに知らせる色表示機能部分としたり、筆記具の外装に合わせて着色することでデザインの統一を計ることができる。
前記着色剤の添加量としては、摩擦体全量中0.1〜1.0重量%含有されることが好ましい。0.1%以下では摩擦体を鮮明に着色することができず、1.0%より多いと擦過した際に筆跡周辺に着色剤が色移りする場合がある。
前記着色剤としては一般に汎用の染料、顔料等を適宜使用できる。
更に、前記摩擦体には、必要に応じて充填剤等の各種添加剤を加えることができる。
【0016】
前記摩擦体は、擦過部の形状を凸曲面とすることができる。特に、筆記具に装着した摩擦体においては、摩擦体が小さくなるため、擦過部の形状を凸曲面とすることが好ましい。凸曲面とすることにより、筆跡を剥がすことなく、適度な柔らかさで擦過できる。また、筆跡との接触角度によらず一定の接触面積が得られ、広域を擦過することなく目的の部分のみを擦過できると共に、摩擦体自体の磨耗性を低減でき、熱の発生効率が高められることから、削れカスが出難くなり、変色させたい部分を的確且つ容易に変色できる。
更に、筆記具に装着した摩擦体においては、前記凸曲面の曲率半径を、1mm〜10mmの範囲に設定することが好ましい。前記の範囲とすることで、筆記具により形成される幅の狭い筆跡を的確且つ容易に変色させ得る。
【0017】
前記摩擦体を筆記具に装着する場合、別部材で成形したものを筆記具に嵌着したり、筆記具本体又は筆記具部材へ二色成形により一体に成形することで装着できる。別部材として嵌着する場合、摩擦体を頭冠、尾栓等の筆記具部材の形状とし、直接筆記具を構成することで部品点数を削減することもできる。
また、前記共重合体は成形性に優れているため、筆記具本体や筆記具部材とともに二色成形することで容易に摩擦体を設けることができる。
【0018】
更に、嵌着される筆記具用摩擦体の抜け力を10N以上とすることにより、筆記具から摩擦体を容易に外すことができなくなり、幼児等の誤飲を防止できる。前記筆記具に摩擦体を装着する際、抜け力を向上する目的で、筆記具の摩擦体嵌合部の内面に係止用リブを設けこともできる。
また、前記筆記具に摩擦体を設ける際、摩擦体に通気孔や通気溝を貫設することで、幼児等が誤飲した場合にもより安全性の高いものとなる。
【0019】
次に可逆熱変色性インキについて説明する。
本発明の摩擦体により可逆的に変色される可逆熱変色像及び筆跡を形成する可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。前記構成を用いることで、擦過により変色した像が瞬時に元の色に戻るものや、擦過による変色を広い温度範囲で保持できるもの等、マジック性に富んだ像を形成できる。
また、前記可逆熱変色性インキは、低温側変色点を−30℃〜+10℃の範囲、且つ、高温側変色点を25℃〜95℃(好ましくは36℃〜90℃)の範囲に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができると共に、本発明の摩擦体による擦過で変色可能となるため、実用性が高いものとなる。
【0020】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させたものが有効であり、発色状態からの加熱により消色する加熱消色型としては、本出願人が提案した、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載のものが利用できる。前記は所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、完全消色温度以上の温度域で消色状態、完全発色温度以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しない。即ち、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する。
ΔHが3℃以下の系〔特公平1−29398号公報に示す、3℃以下のΔT値(融点−曇点)を示す脂肪酸エステルを変色温度調節化合物として適用した系〕にあっては、完全消色温度(t)及び完全発色温度(t)を境に温度変化に鋭敏に感応して高感度の変色性を示し、ΔHが4〜7℃程度の系では変色後、緩徐に元の様相に戻り、視認効果を高めることができる。
又、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性組成物も適用できる。更に、カプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル等の分子内に芳香環を2個有するアルコール化合物と炭素数4以上の飽和又は不飽和脂肪酸とから構成されるエステル化合物を(ハ)成分に用いることで、より大きなヒステリシス特性(ΔH=50〜80℃)を示す色彩記憶保持型熱変色性組成物も適用できる。
前記実質的二相保持温度域は、目的に応じて設定できるが、本発明では、前記高温側変色点を25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定する。
尚、前記低温側変色点〔完全発色温度(t)〕は、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲から選ばれる任意の温度に設定できる。
前記温度設定により、発色開始温度(t)と消色開始温度(t)の間の任意の温度で、発色状態又は消色状態を互変的に記憶保持して視覚させることができる。
又、加熱発色型の組成物として、消色状態からの加熱により発色する、本出願人の提案による、電子受容性化合物として、炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を適用した系(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、或いは特定のヒドロキシ安息香酸エステルを適用した系(特開2001−105732号公報)、更に、消色状態からの加熱により高温側変色点(完全発色温度)で発色する、没食子酸エステル等を適用した系等を適用できる。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル中、或いはインキ中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成となすことができる。
【0021】
前記マイクロカプセル顔料は、粒子径の平均値が0.5〜5.0μm、好ましくは1〜4μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が5.0μmを越える系では、ボールペンチップやマーキングペンチップの毛細間隙からの流出性の低下を来し、平均粒子径が0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難くなる。
【0022】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される。
【0023】
本発明の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料におけるカプセルの形態は、円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される可逆熱変色性筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡を摩擦体による擦過等による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
ここで、前記非円形断面形状のマイクロカプセル顔料は、最大外径の平均値が0.5〜5.0μmの範囲にあることが好ましい。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)は、最大外径の平均値が、5.0μmを越える系では、毛細間隙からの流出性の低下を来し、一方、最大外径の平均値が、0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難く、好ましくは、最大外径の平均値が、1〜4μmの範囲、当該マイクロカプセルの平均粒子径〔(最大外径+中央部の最小外径)/2〕が1〜3μmの範囲が好適である。
【0024】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化には、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法等の公知の手段が適用できるが、本発明の前記した要件を満たす粒子径範囲のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法の適用が効果的である。
【0025】
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いはインキ中には、非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成とすることもできる。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、蛍光染料が全て使用可能である。また、顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料や蛍光顔料を例示できる。
【0026】
本発明の摩擦体を備える筆記具、又は、筆記具セットとして摩擦体と別体で設けられる筆記具に内蔵される可逆熱変色性インキは、25〜95℃の範囲に高温側変色点を有し、平均粒子径が0.5〜5μmの範囲にある可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を水性媒体中に分散させ、必要に応じてバインダー樹脂を配合したものが有効である。
具体的には、剪断減粘性物質を含む剪断減粘系インキや、水溶性高分子凝集剤により可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集系インキが効果的である。更には、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が水性ビヒクルと比重差0.05以下になるよう調節した比重調節型インキも適用できる。
【0027】
前記剪断減粘性物質は、8〜12の範囲内のHLB値を有するノニオン界面活性剤、キサンタンガム、ウエランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルローズ、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。特にキサンタンガム、サクシノグリカン、架橋性アクリル酸重合体が保存安定性に優れる。
【0028】
前記水溶性高分子凝集剤としては、非イオン性水溶性高分子化合物が好適に用いられる。
具体的にはポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられる。このうち水溶性多糖類の具体例としては、トラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリンが挙げられ、また非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。本発明の可逆熱変色性水性インキ組成物中において微小カプセル顔料粒子間の緩い橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも前記の非イオン性水溶性セルロース誘導体が最も本発明の可逆熱変色性水性インキ組成物に対し有効に作用する。
前記高分子凝集剤は、インキ組成物全量に対し、0.05〜20重量%配合することができる。
【0029】
また、ペン先での乾燥を抑制するために保湿剤として、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール等のグリコール類及びそれらの低級アルキルエーテル、2−ピロリドン、N−ビニルピロリドン、尿素等の適宜量を配合することができる。
前記保湿剤は、インキ全量に対して5〜40重量%配合することができる。
【0030】
更に、筆跡の固着性や粘度調整等のために、適宜量のバインダー樹脂を添加することもできる。前記バインダー樹脂は樹脂エマルション、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂から選ばれる。
前記樹脂エマルションとしては、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、α−オレフィン−マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の水分散体が挙げられ、前記アルカリ可溶性樹脂としては、スチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられ、前記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を挙げることができ、一種又は二種以上を混合して用いることができる。
また、界面活性剤等の従来より汎用の各種分散剤を必要に応じて配合することができる。
【0031】
本発明のインキ組成物をボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0032】
前記剪断減粘系インキ及び凝集系インキは、汎用の筆記具に充填され実用に供される。
具体的には、前記剪断減粘系インキは、回転自在にボールを抱持したチップを先端部に備えた軸胴に充填され、後部に粘稠追従体(液栓)を配してボールペン形態の熱変色性筆記具を構成できる。又、凝集系インキは、多数の繊維を互いに密接状態に配し、隣接する繊維相互間に毛細間隙が形成された繊維加工体をペン体とし、隣接する繊維相互間に毛細間隙が形成された繊維集束体をインキ吸蔵体とし、ペン体の後端を前記インキ吸蔵体の前端に接続状態に組み立てられたマーカーに前記凝集系インキを含浸させて、マーカー形態の熱変色性筆記具を構成できる。
【0033】
なお、本発明の摩擦体を筆記具と共に用いる場合、擦過により有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する構成よりも、有色から無色、又は無色から有色への互変的色変化を呈する構成とし、無色状態の筆跡上に再筆記することで、あたかも新たに筆記したかのように使用できるものとなる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部は重量部である。
また、図1に筆記具の実施形態を示し、図2に加熱消色型熱変色性インキの変色挙動図を示す。
【0035】
実施例1
摩擦体の作成
青色顔料〔大日精化工業(株)製〕0.25部をSEBS共重合エラストマー〔アロン化成(株)製、商品名:AR−885C、ショアA硬度:88〕100部に添加し、混練した後、成型することにより青色の摩擦体1を得た。
前記摩擦体1は、紙面に印刷された可逆熱変色像を擦過により瞬時に変色させることができると共に、前記紙面に色移りすることはなかった。
【0036】
実施例2
摩擦体の作成
青色顔料〔大日精化工業(株)製〕0.125部、桃色顔料〔大日精化工業(株)製〕0.125部をSBS共重合エラストマー〔アロン化成(株)製、商品名:AR−460、ショアA硬度:60〕100部に添加し、混練した後、成型することにより紫色の摩擦体1を得た。
前記摩擦体1は、紙面に印刷された可逆熱変色像を擦過により瞬時に変色させることができると共に、前記紙面に色移りすることはなかった。
【0037】
実施例3
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分としてビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド8.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けて感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(t:−14℃、t:−6℃、t:48℃、t:60℃、平均粒子径:2μm)のヒステリシス幅(ΔH)は64℃であり、温度変化により青色から無色に変色する。
【0038】
感温変色性色彩記憶性インキの調製
前記マイクロカプセル顔料25.7部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.2部、尿素5.5部、グリセリン7.5部、ノニオン系浸透性付与剤〔サンノプコ(株)社製、商品名:ノプコSW−WET−366〕0.03部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.15部、防腐剤〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕0.1部、潤滑剤〔第一工業製薬(株)製プライサーフA212C〕0.5部、トリエタノールアミン0.5部、水59.82部からなる感温変色性色彩記憶性インキ6を調製した。
【0039】
筆記具の作製
前記インキ6(予め−14℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させた後、室温下で放置したもの)を内径4.4mmのポリプロピレン製パイプに0.97g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ4と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプ(レフィールパイプ8)の後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓7)を充填し、更に尾栓をレフィールパイプ8の後部に嵌合させ、先軸、後軸からなる軸胴5を組み付け、キャップ3を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なってボールペン2を得た。
なお、前記ボールペンチップ4は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させたものであり、キャップは頂部に設けられた嵌合部31に実施例1で得られた摩擦体1の擦過部11を曲率半径3.0mmの凸曲面とし、抜け力10Nで嵌着してなる(図1)。
【0040】
筆跡の変色挙動
前記ボールペン2により通常の浸透性を有する紙に筆記した熱変色性筆跡は、室温(25℃)で青色の発色状態であり、低温側変色点(−6℃)以上、高温側変色点(60℃)以下の温度でこの状態を保持していた。
前記筆跡をキャップに固着した摩擦体1で数回擦過したところ、擦過した部分が直ちに消色して無色となり、低温側変色点(−6℃)以上、高温側変色点(60℃)以下の温度でこの状態を保持していた。
次いで、前記熱変色性筆跡を冷凍庫(約−15℃)の中に放置したところ、前記消色部分が再び青色に発色し擦過前の状態に戻った。この変色挙動は繰り返し再現することができた。
更に、擦過により消色した部分に再筆記しても、筆跡のはじき等を生じることなく、筆跡を形成することが可能であった。前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。
【0041】
実施例4
可逆熱変色性インキの調製
感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性顔料(t:3℃、t:6℃、t:38℃、t:45℃、平均粒子径:2.5μm、ΔH=37℃、青色から無色に色変化する)18部、キサンタンガム(剪断減粘性付与剤)0.33部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透性付与剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコSW−WET−366〕0.6部、変性シリコーン系消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034〕0.1部、防黴剤〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕0.1部、水60.87部からなる可逆熱変色性インキ6を調製した。
【0042】
筆記具の作製
前記インキ6(予め2℃以下に冷却して可逆熱変色性顔料を発色させた後、室温下で放置したもの)を内径4.4mmのポリプロピレン製パイプに0.97g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ4と連結させた。なお、前記ボールペンチップ4は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプ(レフィールパイプ8)の後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓7)を充填し、軸胴5内に組み付け、実施例2で作成した摩擦体1の擦過部11を、曲率半径3.0mmの凸曲面とし、抜け力10Nで嵌合部31に嵌合させたキャップ3を取付けた後、遠心処理により脱気処理を行ない、剪断減粘系熱変色性ボールペン2を得た(図1)。
前記ボールペン2によりレポート用紙に筆記したところ、長時間の筆記または速記によっても筆跡が消色することがなく、安定した濃度の青色の鮮明な熱変色性筆跡が得られた。
【0043】
筆跡の変色挙動
前記ボールペン2により通常の浸透性を有する紙に筆記した熱変色性筆跡は、室温(25℃)で青色の発色状態であり、前記摩擦体1で数回擦過したところ、擦過した部分が直ちに変色して無色となり、この状態は室温で維持することができた。次いで、前記熱変色性筆跡を冷凍庫(約−15℃)の中に放置したところ、前記消色部分が再び青色に発色し擦過前の状態に戻った。この変色挙動は繰り返し再現することができた。
更に、擦過により消色した部分に再筆記しても、筆跡のはじき等を生じることなく、筆跡を形成することが可能であった。前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。
【0044】
実施例5
可逆熱変色性インキの調製
加熱消色型可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(t:35℃、t:38℃、t:37℃、t:40℃、平均粒子径:2.5μm、ΔH=2℃、青色から無色の色変化する)のマイクロカプセルスラリー44.0部(固形分13.2%)を、ピンク色染料〔アイゼン保土谷(株)製、商品名:エリスロシン(C.I.No.45430)〕0.5部、グリセリン5.0部、防黴剤、〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕0.70部、シリコーン系消泡剤、〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー 381〕0.1部、及び水41.7部からなる水性媒体中に均一に分散状態となした後、水溶性高分子凝集剤(ヒドロキシエチルセルロース)〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕5.0重量%を含む水溶液8.0部を攪拌しながら、前記分散状態にある液中に添加して、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料をゆるやかな凝集状態に懸濁させた可逆熱変色性インキ6を調製した。
【0045】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体(気孔率約80%)中に、前記可逆熱変色性インキ6を均一状態に攪拌した直後に含浸させて、軸胴の先端部に装着させたポリエステル繊維の樹脂加工ペン体(気孔率約50%)と接触状態に組み立て、水性マーカーを構成した。
更に、実施例1で作成した摩擦体1を一辺が20mmの立方体とし、得られたマーカーと共に筆記具セットとした。
前記水性マーカーによりレポート用紙に筆記したところ、長時間の筆記または速記によっても筆跡が変色することがなく、安定した色調の紫色の鮮明な筆跡が得られた。
【0046】
筆跡の変色挙動
前記水性マーカーにより通常の浸透性を有する紙に筆記した筆跡は、室温(25℃)で紫色の変色状態であり、前記摩擦体1で数回擦過したところ、擦過した部分が直ちに変色してピンク色に変色した。更に、この変色状態で室温に放置すると、前記ピンク色部分は再び紫色に変色し、擦過前の状態に戻った。前記変色挙動は繰り返し再現することができた。
また、擦過した部分に再筆記しても、筆跡のはじき等を生じることなく、筆跡を形成することが可能であった。前記擦過変色及び変色箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。
【0047】
実施例6
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5重量部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5重量部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5重量部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0重量部からなる感温変色性色彩記憶性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30.0重量部、助溶剤40.0重量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5重量部を加え、更に6時間攪拌を続けて感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(t:−20℃、t:−9℃、t:40℃、t:57℃、平均粒子径:2.5μm)のヒステリシス幅(ΔH)は63℃であり、温度変化により黒色から無色に変色する。
【0048】
感温変色性色彩記憶性インキの調製
前記マイクロカプセル顔料25.7重量部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.2重量部、尿素5.5重量部、グリセリン7.5重量部、ノニオン系浸透性付与剤〔サンノプコ(株)社製、商品名:ノプコSW−WET−366〕0.03重量部、変性シリコーン系消泡剤〔日本シリコーン(株)製、商品名:FSアンチフォーム013B〕0.15重量部、防腐剤〔ゼネカ(株)製、商品名:プロキセルXL−2〕0.1部、潤滑剤〔第一工業製薬(株) 製、プライサーフA212C〕0.5重量部、トリエタノールアミン0.5重量部、水59.82重量部からなる感温変色性色彩記憶性インキ6を調製した。
【0049】
筆記具の作製
前記インキ6(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黒色に発色させた後、室温下で放置したもの)を内径4.4mmのポリプロピレン製パイプに0.97g吸引充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ4と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプ(レフィールパイプ8)の後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓7)を充填し、更に尾栓をレフィールパイプ8の後部に嵌合させ、先軸胴、後軸胴を組み付け、キャップ3を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なってボールペン2を得た。
なお、前記キャップ3はポリプロピレン樹脂からなるキャップ本体に、SEBS共重合エラストマー〔アロン化成(株)製、商品名:AR−885C、ショアA硬度:88〕を用いて、二色成形により頭冠部分に白色透明の摩擦体1を成型してなるものであり、ボールペンチップ4は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径1.0mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0050】
筆跡の変色挙動
前記ボールペン2により通常の浸透性を有する紙に筆記した熱変色性筆跡は、室温(25℃)で黒色の発色状態であり、発色開始温度(−9℃)以上、完全消色温度(57℃)以下の温度でこの状態を保持していた。
前記筆跡をキャップに設けた摩擦体1で数回擦過したところ、擦過した部分が直ちに消色して無色となり、発色開始温度(−9℃)以上、完全消色温度(57℃)以下の温度でこの状態を保持していた。
次いで、前記熱変色性筆跡を冷凍庫(約−15℃)の中に放置したところ、前記消色部分が再び黒色に発色し擦過前の状態に戻った。この変色挙動は繰り返し再現することができた。
更に、擦過により消色した部分に再筆記しても、筆跡のはじき等を生じることなく、筆跡を形成することが可能であった。前記擦過消去及び消去箇所への筆跡形成は繰り返し行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の摩擦体を備えた筆記具の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】加熱消色型可逆熱変色性インキの変色挙動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 摩擦体
11擦過部
2 ボールペン
3 キャップ
31 嵌合部
4 ボールペンチップ
5 軸胴
6 熱変色性インキ
7 液栓
8 レフィールパイプ
t 加熱消色型熱変色性インキ及び色彩記憶保持型熱変色性インキの完全発色温度(低温側変色点)
t 加熱消色型熱変色性インキ及び色彩記憶保持型熱変色性インキの発色開始温度
t 加熱消色型熱変色性インキ及び色彩記憶保持型熱変色性インキの消色開始温度
t 加熱消色型熱変色性インキ及び色彩記憶保持型熱変色性インキの完全消色温度(高温側変色点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆熱変色性インキを用いて形成された筆跡を、摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる筆記具用摩擦体であって、前記摩擦体がスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体又はスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体からなることを特徴とする筆記具用摩擦体。
【請求項2】
前記摩擦体が、JIS K6253Aにおけるショア硬度Aが55度以上であることを特徴とする請求項1記載の筆記具用摩擦体。
【請求項3】
可逆熱変色性インキを内蔵する筆記具であって、前記筆記具により形成された筆跡を摩擦熱により第1の発色状態から第2の発色状態、発色状態から消色状態、又は消色状態から発色状態に変色させる請求項1又は2に記載の筆記具用摩擦体を少なくとも一部に備えることを特徴とする筆記具。
【請求項4】
前記可逆熱変色性インキが、少なくとも25℃〜95℃の範囲に高温側変色点を有するマイクロカプセル顔料を含有することを特徴とする請求項3記載の筆記具。
【請求項5】
前記可逆熱変色性インキが、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型のいずれかであるか、或いは、それらの任意の組合せであることを特徴とする請求項3又は4に記載の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−179914(P2012−179914A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105072(P2012−105072)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【分割の表示】特願2004−314170(P2004−314170)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】