説明

筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具

【課題】 疎水性合成樹脂製インキタンクに直接充填する水性インキにおいてインキタンクへの濡れ性を改善し、良好なインキ流動でインキを備えた筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具を提供する。
【解決手段】 少なくとも着色剤、水溶性有機溶剤と、グリチルリチン酸及び/又はその塩を含有してなる。前記グリチルリチン酸及び/又はその塩をインキ組成物中0.01〜10重量%含んでなる筆記具用水性インキ組成物。前記筆記具用水性インキ組成物を内蔵した筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具に関する。詳細には、疎水性合成樹脂材料からなるインキタンク中に直接インキを充填する筆記具に適用される水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆や直液式の水性ボールペン、水性マーキングペンは、軸胴の一端に適宜のインキ流量調節体を介してペン体が取り付けられ、前記軸胴内にフリーのインキを貯蔵する合成樹脂材料からなるインキタンクを備えた構造のものが一般的である。前記インキタンクは軸胴自体であったり、別体のカートリッジタイプである場合もあるが、いずれにしてもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の汎用合成樹脂材料が用いられており、これらはいずれも疎水性であるが故に次のような問題を生じる。この種の筆記具は、横置きに放置されていた(机の上、抽出しの中に置かれている等の状態)か、又はペン先上向き状態(ペン立てに置かれているか、衣服のポケットに係止されている等の状態)に置かれていた状態から筆記に供するためにペン先下向き状態にした場合、インキタンク中の水性インキがタンク内壁を伝ってペン先方向へ流下して筆記可能となるものであるが、疎水性合成樹脂材料からなるインキタンク内壁表面は水性インキによる濡れが悪く、しかも水性インキは一般に表面張力が高いので、筆記具をペン先下向きの筆記状態にしてもインキが流下せずに元の位置に留まってしまうという現象を起こす傾向にある。軸胴の径との関係から内径の大きさが著しく制約されるカートリッジタイプのインキタンクを用いる筆記具では前記現象が一層起こり易くなる。尚、インキタンクの反転によるインキの移動を以下「インキ交替性」と称する。
【0003】
疎水性合成樹脂材料からなる筆記具用部品への水性インキの濡れ性を向上させるため、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等を添加する水性インキ組成物が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−217036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載された添加剤は比較的分子量の大きい水溶性樹脂であるため少量の添加で水性インキの粘度を過度に高めてしまう不具合があった。
本発明は前記疎水性合成樹脂材料からなり、しかも内径が数mm程度と小さいインキタンクを用い、前記インキ交替性に対してもっとも厳しい条件の筆記具に適用されても、良好なインキ交替性を示す筆記具用水性インキ組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、着色剤、水溶性有機溶剤、水及びグリチルリチン酸及び/又はその塩を含有してなることを要件とする。
更には、前記グリチルリチン酸及び/又はその塩をインキ全量に対して0.01〜10重量%含有すること、前記グリチルリチン酸及び/又はその塩が甘草抽出物であることを要件とする。
また前記水性インキ組成物を内蔵した筆記具、前記筆記具が先細テーパー形状に裁断された金属板片を屈曲させてなる万年筆形態のペン先を有すること等を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、疎水性合成樹脂材料からなるインキタンク内壁への濡れ性が良いにも拘わらず表面張力が極端に低くないので、ペン先での耐ドライアップ性能の劣化や筆跡滲みを生じることがなく、筆記具用水性インキ組成物に良好なインキ交替性を付与することができる。
また、合成樹脂製のインキ流量調整部材(所謂ペン芯)を備えた直液式筆記具の場合では温度変化やキャップ着脱による内部気圧の変化に即応してペン芯の櫛溝内への流出入が円滑に行われ、ペン先からのインキボタ落ち現象を発生することがない水性インキとなる。更に、ペン先として金属板片からなる万年筆形態のものを用いた場合には、金属に対して適度な濡れ性を保持できることから、細い筆跡を維持できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、合成樹脂製のインキタンクに直接収容される水性インキ中に、グリチルリチン酸及び/又はその塩を添加することで、良好なインキ交替性が得られ、更にペン芯式筆記具においてはインキタンク内部の圧力変化によるペン先からのインキボタ落ち現象や、筆跡滲みや、耐ドライアップ性能の劣化を生じることなくペン芯の濡れ性をも向上させることができるものである。
【0008】
前記グリチルリチン酸は甘草の根茎から抽出されるものでその塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が代表的なものとして甘味料、漢方薬などとして用いられている。
前記グリチルリチン酸及び/又はその塩がなぜインキの表面張力の低下を招くことなく合成樹脂表面の親水性を向上させるかは定かではないが、以下のように推察される。グリチルリチン酸の構造は親水性の糖部分と疎水性の非糖部分(サポゲニン)からなり、界面活性作用を有すると考えられるが、疎水基の嵩が大きいため水―空気界面への配向が妨げられ表面張力が低下しない。更に、疎水基が合成樹脂表面に親水基を外に向けて吸着するため親水性が向上すると考えられる。
【0009】
また、水性インキ組成物に多用されている多糖類やポリビニルアルコール等の水溶性高分子等と比較して分子量が小さいため、配合量を増やしてもインキ組成物の粘度は筆記具構造内における流動性を妨げるほどに高くなることはない。前記グリチルリチン酸及び/又はその塩は、インキ組成物全量中0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%の範囲で添加できる。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、10重量%を越えて添加しても濡れ性の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
【0010】
前記着色剤は、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料が全て使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6BN(C.I.43525)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
【0011】
塩基性染料としては、
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
【0012】
直接染料としては、
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0013】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、既に界面活性剤や水溶性樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、界面活性剤を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔商品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素(株)製〕、
C.I. Pigment Red 146〔商品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔商品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔商品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業(株)製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black
A250、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
【0014】
蛍光顔料としては、各種蛍光染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。その他、パール顔料、金属粉顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料、熱変色性組成物を内包したカプセル顔料、香料や香料を内包したカプセル顔料等を例示できる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属光沢顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した金属光沢顔料(パール顔料)、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断した虹彩性を有する金属光沢顔料が例示できる。
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中0.5〜25重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲で用いられる。
【0015】
また、着色剤として顔料を用いた場合、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が用いられる。
【0016】
更に、必要に応じて水溶性有機溶剤を添加することができる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもでき、3〜30重量%の範囲で用いられる。
【0017】
更に、紙面への固着性や粘性を付与するために水溶性樹脂を添加することもできる。前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1乃至30重量%の範囲で用いられる。
【0018】
上記成分以外に、必要に応じて炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、金属石鹸、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、燐酸系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等の潤滑剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン、カテキン誘導体、合成ポリフェノール、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、ホルムアミジンスルフィン酸、グルタチオン等の酸化防止剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤、分散剤等を使用してもよい。
【0019】
更に、必要に応じて剪断減粘性付与剤を添加し、インキに適当な粘性を与えて実用に供することができる。用いられる剪断減粘性付与剤は従来より公知のものから適宜選択することができ、その具体例としては、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型アクリル酸、ポリビニルアセトアミド、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、会合性ウレタンエマルジョン等が挙げられ、単独或いは混合して用いられる。
【0020】
前記インキ組成物は、疎水性合成樹脂材料からなるインキタンクに直接インキを収容する構造の筆記具に適用される。前記筆記具として万年筆に代表されるスペア式インキタンクを用いる筆記具があげられる。また各種チップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に直接インキを収容し、合成樹脂製の櫛溝状インキ流量調節部材(ペン芯)を介在させる構造を有するマーキングペン、ボールペン等の汎用のペン芯式筆記具に充填して実用に供される。
【0021】
前記チップのうち、マーキングペンチップとしては、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、毛筆等が適用できる。特に、繊維チップとしては、多数の繊維を互いに密接状態に配し、隣接する繊維相互間に毛細間隙が形成された繊維加工体からなるペン先や、該ペン先の外周を樹脂により被覆したもの等が適用できる。
ボールペンチップとしては、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等が適用できる。尚、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等が適用でき、直径0.1mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
また、万年筆形態のチップ(ペン体)としては、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲したものや、ペン先形状に樹脂成形したもの等が適用できる。尚、前記ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
【0022】
特に、前記チップとして金属板片からなる万年筆形態のチップ(ペン体)を用いた場合、本発明のインキ組成物が金属に対して適度な濡れ性を保持できることから、細い筆跡を維持できるものとなる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の表に実施例及び比較例の筆記具用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。また、表面張力は、協和界面科学(株)製のウィルヘルミー法表面張力計(CB−VP型)を用いて測定した。
【0024】
【表1】

【0025】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:ブリリアントブルーFCF−L(酸性染料、C.I.42090;35%水溶液)
(2)ダイワ化成(株)製、商品名:アシッドレッドFB(酸性染料、C.I.45100)
(3)丸善化成(株)製、商品名:リコチミンN−P(グリチルリチン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の混合物を80重量%以上含有)
(4)日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールPBC−34〔ポリオキシエチレン(20モル)・ポリオキシプロピレン(4モル)セチルエーテル〕
【0026】
インキの調製
水にフェノール以外の成分を添加し、室温又は必要に応じて50℃〜60℃の範囲に加温して1時間混合攪拌した後、放冷してフェノールを添加して均一に混合することで各インキを調製した。
【0027】
インキカートリッジの作成
実施例1乃至3、比較例1乃至3のインキ組成物を、万年筆用スペアインキカートリッジ(パイロットコーポレーション社製、IRF−12S)に充填してパッキング(栓体)を嵌合することで試験用インキカートリッジを作成した。
【0028】
前記試験用インキカートリッジを用いて以下の試験を行った。
〔インキ交替性試験〕
インキを1ml充填しパッキングを嵌合したインキカートリッジを50℃の恒温槽に24時間放置した試料を取り出し、室温まで放冷する。その後開栓しインキを約半分抜き取った後再度密栓し、パッキング上向きの状態で室温に24時間静置したものを上下反転させて内部のインキがすべて流下する時間を測定した。
【0029】
〔ボタ落ち試験〕
インキを充填したインキカートリッジを万年筆に装着し、ペン先上向きで0℃恒温槽に1時間放置後、ペン先下向きで40℃恒温槽に2時間放置する。試料万年筆を取り出し、室温まで放冷やした後キャップを外し、キャップ内を観察してインキが漏れ出していないか観察した。
【0030】
〔滲み試験〕
インキを充填したインキカートリッジを万年筆に装着し、筆記試験用紙A(JIS P3201)に文字を筆記し、滲みの有無を目視で観察した。
【0031】
前記各試験の結果を以下の表に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
尚、試験結果の評価は以下の通りである。
インキ交替性試験
○:30秒以内にインキが流下した。
×:30秒経過してもインキが流下しなかった。
ボタ落ち試験
○:キャップ内にインキの漏れ出しがなかった。
×:キャップに漏れ出したインキが観察された。
滲み試験
○:筆跡に滲みがない。
×:筆跡に滲みが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性合成樹脂からなるインキタンクに直接インキを収容する筆記具に用いられる水性インキ組成物であって、該水性インキ組成物は、必須成分として着色剤、水溶性有機溶剤、水及びグリチルリチン酸及び/又はその塩を含有してなることを特徴とする筆記具用水性インキ組成物。
【請求項2】
軸胴の一端にインキ流量調節体を介してペン体が取り付けられ、前記軸胴内に直接インキを収容する疎水性合成樹脂からなるインキタンクを備えた筆記具に適用される水性インキ組成物であって、該水性インキ組成物は、必須成分として着色剤、水溶性有機溶剤、水及びグリチルリチン酸及び/又はその塩を含有してなることを特徴とする筆記具用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記グリチルリチン酸及び/又はその塩がインキ全量に対して0.01乃至10重量%含まれてなることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項4】
前記グリチルリチン酸及び/又はその塩が甘草抽出物として得られた物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の水性インキ組成物を内蔵してなることを特徴とする筆記具。
【請求項6】
前記筆記具が、先細テーパー形状に裁断された金属板片を屈曲させてなる万年筆形態のペン先を有することを特徴とする請求項5記載の筆記具。

【公開番号】特開2008−106080(P2008−106080A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287117(P2006−287117)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】