説明

筆記具用油性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具

【課題】厳しい環境条件で使用されるマーキングペン形態の筆記具に適用した場合であっても、優れた耐ドライアップ性能を長期間に亘って発揮することができる筆記具用油性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供する。
【解決手段】染料と、有機溶剤と、樹脂とを含む油性インキ組成物であって、前記有機溶剤が、エタノール:γ−ブチロラクトン=9:1〜6:4の範囲で混合される溶媒であり、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれかを含む筆記具用油性インキ組成物。前記筆記具用油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用油性インキ組成物に関する。更に詳細には、ペン先を長時間露出した状態での耐ドライアップ性に優れた筆記具用油性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具用油性インキは、筆跡の速乾性を得るために低級アルコール等の揮発性(低沸点)の有機溶剤が媒体として用いられる。そのため、キャップを外した状態で放置するとペン先が乾燥し、インキ中の樹脂や着色剤が乾燥硬化してしまうために筆記不良を起こし易いという問題がある。
前記問題を解消するために、各種化合物の添加が検討されており、例えば、HLB値が8以下のショ糖脂肪酸エステルを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−200186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ショ糖脂肪酸エステルの添加により若干の耐ドライアップ性能を付与できるものの、特に使用条件の厳しいマーキングペン形態の筆記具に適用した場合には充分な効果が得られ難いものであった。
【0005】
本発明は、厳しい環境条件で使用されるマーキングペン形態の筆記具に適用した場合であっても、優れた耐ドライアップ性能を長期間に亘って発揮することができる筆記具用油性インキ組成物と筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、染料と、有機溶剤と、樹脂とを含む油性インキ組成物であって、前記有機溶剤が、エタノール:γ−ブチロラクトン=9:1〜6:4の範囲で混合される溶媒であり、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれかを含む筆記具用油性インキ組成物を要件とする。
更に、前記ショ糖脂肪酸エステルが9以上のHLB値を有すること、シリコーン系界面活性剤を含むこと、前記シリコーン系界面活性剤が、両末端変性型ポリエーテル変性シリコーン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドが繰り返し結合した直鎖状ブロックコポリマー、ポリエーテル部のポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の重量比においてポリオキプロピレン鎖が0重量%以上50重量%未満であると共にHLBが10以下である側鎖ポリエーテル変性シリコーンのいずれか一種以上であることを要件とする。
更には、前記いずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具を要件とし、ポリエステル繊維束の樹脂加工体であるポリエステルチップを筆記先端部に備えたマーキングペンであることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、エタノールのような揮発性の高い溶剤を用いたインキを、屋外等の厳しい環境条件で使用されるマーキングペン形態の筆記具に適用した場合であっても、筆跡性能を悪化させることなく優れた耐ドライアップ性能を長期間に亘って発揮することができる筆記具用油性インキ組成物とこれを内蔵する筆記具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の油性インキ組成物は、溶剤としてエタノールとγ−ブチロラクトンを9:1〜6:4の範囲で混合するとともに、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれかを添加することで、良好な筆跡を形成できる状態で高い耐ドライアップ性能を長期間発揮するものである。
【0009】
前記インキはエタノールを主溶剤として用い、γ−ブチロラクトンがエタノールに対して9:1〜6:4、好ましくは9:1〜7:3の範囲で混合された混合溶剤が適用される。
前記混合溶剤は、インキ組成中40〜90重量%の範囲で用いられる。
【0010】
更に、前記混合溶剤と共に汎用の有機溶剤を用いることもでき、例えば、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピル等を例示できる。
【0011】
前記染料としては、従来から油性インキに適用される汎用のものが適用でき、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
前記ソルベント染料の具体例としては、バリファストブラック3806(C.I.ソルベントブラック29)、同3807(C.I.ソルベントブラック29の染料のトリメチルベンジルアンモニウム塩)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、スピロンブラックGMH(C.I.ソルベントブラック43)、バリファストレッド1308(C.I.ベーシックレッド1の染料とC.I.アシッドイエロー23の染料の造塩体)、バリファストイエローAUM(C.I.ベーシックイエロー2の染料とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンイエローC2GH(C.I.ベーシックイエロー2の染料の有機酸塩)、スピロンバイオレットCRH(C.I.ソルベントバイオレット8−1)、バリファストバイオレット1701(C.I.ベーシックバイオレット1とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンレッドCGH(C.I.ベーシックレッド1の染料の有機酸塩)、スピロンピンクBH(C.I.ソルベントレッド82)、ニグロシンベースEX(C.I.ソルベントブラック7)、オイルブルー613(C.I.ソルベントブルー5)、ネオザポンブルー808(C.I.ソルベントブルー70)等が挙げられる。
前記染料は一種又は二種以上を併用してもよく、インキ組成物中3〜40重量%の範囲で用いられる。更に顔料を併用することもできる。
【0012】
前記樹脂としては、通常油性インキ組成物に用いられる有機溶剤に対して可溶なものであれば特に限定されることなく適用でき、筆跡の滲み抑制、定着性向上、堅牢性等を付与する目的でインキ中に添加できる。
具体的には、ケトン樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物等が挙げられる。
これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中0.5〜40重量%、好ましくは1〜35重量%の範囲で用いられる。0.5重量%未満では筆跡の紙への滲み抑制、定着性向上、堅牢性付与等の充分な効果を発揮できず、40重量%を越えて添加すると、樹脂の溶剤への溶解性が低下し、インキの流動性が低下することがある。
【0013】
本発明の油性インキでは、前記混合溶剤とともに、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるいずれかの脂肪酸エステルが添加される。これらの脂肪酸エステル自体も油性インキ中で弱い耐ドライアップ性能を発現するものであるが、使用環境条件の厳しいマーキングペンに適用した場合には所望の効果が得られ難いものである。そこで前記割合で構成される混合溶剤と併用することで優れた耐ドライアップ性能を発現し、マーキングペンでの適用にも適したインキとすることを本発明で見出した。
【0014】
前記ショ糖脂肪酸エステルはショ糖と脂肪酸とのエステルであり、前記脂肪酸は、炭素数4〜24、好ましくは炭素数8〜22、より好ましくは、炭素数12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸である。前記脂肪酸として具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸等が挙げられる。特に、前記ショ糖脂肪酸エステルとしては、溶剤への溶解性が高いことから、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖脂肪酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、ポリエステルの混合物)全量に対して、ショ糖脂肪酸のモノエステル50〜80重量%、好ましくは50〜70重量%と、ショ糖脂肪酸のジエステル、トリエステル、ポリエステルから選ばれる一種又は二種以上20〜50重量%、好ましく30〜50重量%からなるショ糖脂肪酸エステルが好適である。
前記ショ糖脂肪酸エステルとして、HLB値が9以上のものが特に好適である。HLB値が9以上のものはエタノールへの溶解性が高いため、混合溶剤を構成するγ−ブチロラクトンの量が増えたり、エタノールが蒸発した場合であっても析出し難く、筆記性能を悪化させることなく高い耐ドライアップ性能を維持できる。
【0015】
前記ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトールの還元物であるソルビタンと脂肪酸とのエステルであり、前記脂肪酸として具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸等が適用される。具体的な化合物としては例えば、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリパルミテート等が例示できる。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリセリンと脂肪酸とのエステルであり、前記脂肪酸は、炭素数4〜24、好ましくは炭素数8〜22、より好ましくは、炭素数12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸である。前記脂肪酸として具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸等が挙げられる。
前記脂肪酸エステルは、インキ組成物全量中0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲で添加することができる。
0.1重量%未満では耐ドライアップ性能を付与することができ難く、5重量%を超えて添加することも可能であるが、5重量%以下で所望の効果は充分に得られるためこれ以上の添加は要しない。
【0016】
前記シリコーン系界面活性剤は、金属、プラスチック等の非吸収面の他、特殊表面処理されたクラフトテープ等に筆記した際に、にじみがなく、定着性に優れた筆跡を形成するために用いられるものであり、本発明の有機溶剤に用いた際に特に効果的に発現される。具体的には、アクリル−シリコーングラフト共重合体、アミノグリコール変性シリコーン、両末端変性型ポリエーテル変性シリコーン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドが繰り返し結合した直鎖状ブロックコポリマー、ポリエーテル部のポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の重量比においてポリオキプロピレン鎖が0重量%以上50重量%未満であると共にHLBが10以下である側鎖ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらのいずれか一種以上が適用される。
【0017】
詳細には、前記アクリル−シリコーングラフト共重合体は、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物とアクリレート及び/又はメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマーとの共重合体である。前記アクリル−シリコーングラフト共重合体は、常温、即ち、0〜35℃、通常は10〜30℃の温度範囲で液状乃至ペースト状であり、溶解性に優れている。
前記アミノグリコール変性シリコーンは、アミノ基にプロピレングリコールが付加された置換基を有する変性シリコーンである。
前記両末端変性型ポリエーテル変性シリコーンは、直鎖状ジメチルポリシロキサンの主鎖両末端基をポリエーテル基で置換したものであり、前記ポリエーテル基は−R(CO)a(CO)で表される〔式中Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、水素、炭素数1〜50のアルキル基、アリール基のいずれかを表す。また、aは1〜50の整数を表し、bは1〜50の整数を表す〕。
前記側鎖ポリエーテル変性シリコーンは、ポリシロキサンの側鎖の一部にポリエーテル基を導入したものであり、前記ポリエーテル基は、ポリオキシエチレン鎖単独で構成される、又は、少なくともポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとにより構成され、前記ポリオキシプロピレンの含有量が重量比で50重量%未満のものが用いられる。また、HLBが10以下、好適には2〜9の範囲のものが用いられる。更に好適には、少量の添加で高い効果が得られることから3〜6の範囲のものが用いられる。
【0018】
更に、本発明の筆記具用油性インキ組成物には、必要に応じて上記成分以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、潤滑剤、粘度調整剤、剥離剤、顔料分散剤、消泡剤、剪断減粘性付与剤、界面活性剤等の各種添加剤を使用できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
【0019】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等が使用できる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン類等が使用できる。
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル5′−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、p−安息香酸−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が使用できる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等が使用できる。
【0020】
剥離剤としては、ホーロー、ガラス、金属或いは熱可塑性又は熱硬化性プラスチック等の素材からなる筆記板(ホワイトボード)に用いられるインキ組成物に含まれる剥離性を付与できる化合物であれば全て用いることができ、例えば、カルボン酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を挙げることができるが、好適に用いられる剥離剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの塩、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、ポリアルキレングリコールエステルから選ばれる化合物であり、一種又は二種以上を併用して用いることもできる。
【0021】
また、本発明の油性インキ組成物をボールペンに適用する際には、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル等の潤滑剤を必要により添加することもできるが、特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等を用いるとボール受け座の摩耗防止効果に優れる。
【0022】
更に、剪断減粘性付与剤を添加することによって、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、従来公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカ等が例示できる。
【0023】
前記インキ組成物は、チップを筆記先端部に装着したボールペンやマーキングペンに充填して実用に供される。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用に液栓や固体栓等のインキ追従体が密接している構造のボールペンを例示できる。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により前記筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
特に、前記マーキングペンに適用されるチップとしてポリエステル繊維束の樹脂加工体であるポリエステルチップを用いた場合、筆記感がやわらかくインキ追従性がよい反面、耐ドライアップ性に不利であることから本発明のインキによる効果が発現され易く効果的である。
【実施例】
【0024】
実施例及び比較例のインキ組成を以下の表に示す。
尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
【0025】
【表1】

【0026】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:バリファストブラック3810
(2)オリエント化学工業(株)製、商品名:オイルブルー615
(3)荒川化学工業(株)製、商品名:マルキードNo.33
(4)ショ糖ステアリン酸エステル、三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョートーシュガーエステルS1570〔モノエステル70%、その他(ジ、トリ、ポリエステル)30%:HLB=15〕
(5)ショ糖ステアリン酸エステル、三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョートーシュガーエステルS970〔モノエステル50%、その他(ジ、トリ、ポリエステル)50%:HLB=9〕
(6)ポリグリセリン脂肪酸エステル、坂本薬品工業(株)製、商品名:SYグリスターTS−3S
(7)モノステアリン酸ソルビタン、日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールSS−10
(8)両末端変性シリコーン、信越シリコーン(株)製、商品名:KF−6004
(9)側鎖変性シリコーン、信越シリコーン(株)製、商品名:KF−615
(10)ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドの直鎖状ブロックコポリマー、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、商品名:FZ 2203
【0027】
インキの調製
前記実施例及び比較例の各原料を混合し、ディスパーにて40℃で2時間撹拌することにより筆記具用油性インキ組成物を得た。
【0028】
マーキングペンの作製
得られたインキ組成物5gを、市販のマーキングペン外装(パイロットコーポレーション製;MEF−12EU、ポリエステル製チップを備える)に充填することで油性マーキングペンを得た。
【0029】
筆記試験
各マーキングペンを用いて、25℃で透明なPETフィルム上に5個連続して丸を書いた後、90秒間乾燥させ、筆跡状態を目視により確認した。
【0030】
耐ドライアップ性試験
各マーキングペンを用いて、20℃、湿度65%の環境下にペン先を露出した状態で横置きに放置した後、12時間毎に用紙に筆記し、筆跡の状況を目視により確認した。
試験結果を以下の表に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表中の記号の内容を以下に説明する。
筆記試験
○:鮮明な筆跡が得られる。
△:若干のインキはじきやカスレが見られる。
×:筆跡がはじかれる、筆跡がかすれる。
耐ドライアップ性試験
○:3日以上良好な筆跡が得られる。
△:1日〜2日経過後に筆跡カスレが見られる。
×:24時間以内に筆跡にカスレが見られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料と、有機溶剤と、樹脂とを含む油性インキ組成物であって、前記有機溶剤が、エタノール:γ−ブチロラクトン=9:1〜6:4の範囲で混合される溶媒であり、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれかを含む筆記具用油性インキ組成物。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステルが、9以上のHLB値を有する請求項1記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項3】
シリコーン系界面活性剤を含む請求項1又は2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項4】
前記シリコーン系界面活性剤が、アクリル−シリコーングラフト共重合体、アミノグリコール変性シリコーン、両末端変性型ポリエーテル変性シリコーン、ジメチルポリシロキサンとポリアルキレンオキサイドが繰り返し結合した直鎖状ブロックコポリマー、ポリエーテル部のポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の重量比においてポリオキプロピレン鎖が0重量%以上50重量%未満であると共にHLBが10以下である側鎖ポリエーテル変性シリコーンのいずれか一種以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の筆記具用油性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。
【請求項6】
ポリエステル繊維束の樹脂加工体であるポリエステルチップを筆記先端部に備えたマーキングペンである請求項5記載の筆記具。

【公開番号】特開2012−67185(P2012−67185A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212907(P2010−212907)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】