説明

筋力補助装置及びその動作方法

【課題】第1の装着具に対する第2の装着具の曲げ角度を大きくすることができる筋力補助装置を提供する。
【解決手段】筋力補助装置は、関節の一方の骨に沿って配置される第1の装着具10と、関節の他方の骨に沿って配置される第2の装着具20と、第1の装着具10に一端31を、第2の装着具20に他端32を設ける人工筋30とを備え、使用者の肘、膝、又は手首の動作を支援し、第1の装着具10に一端51を設ける補助人工筋50を備え、補助人工筋50の他端52を、スイングアーム40を介して人工筋30の一端31と接続し、補助人工筋50によって、人工筋30の一端31を第1の装着具10に対して変位可能な構成としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、液体、若しくは固体の物質、又はこれらの混合物の供給又は排出によって伸縮するアクチュエータを用い、使用者の肘、膝、又は手首の動作を支援する筋力補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体・液体・固体の物質またはそれらの混合体を注入すると長手方向は拘束され
径方向に膨らむことを特徴とするチューブを持ち、そのチューブの外部に長手方向および径方向に伸縮する円筒型スリーブを配置し、両端を拘束し、片端に注入口を設け、チューブにポリエステル系・ポリアミド系・ポリエチレン系・ポリイミド系・ポリスチレン系・ポリカーボネート系のいずれか/もしくは混合されたフィルムまたは繊維を用いたことを特徴とする動力装置が既に提案されている(特許文献1、特許文献2)。
また、この種の動力装置を利用した動作支援装置も提案されている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−105263号公報
【特許文献2】特開昭52−40378号公報
【特許文献3】国際公開第2007/043308号
【特許文献4】特開2007−167484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記各文献で利用されているような、例えばマッキベン型の空気圧アクチュエータを用いた場合には以下のような課題を生じる。
マッキベン型の空気圧アクチュエータは、一般的には、収縮率に優れたものにあっても人体の筋肉の収縮率には及ばない。
従って、マッキベン型の空気圧アクチュエータのような人工筋肉を利用する場合には、人体の筋肉と同じ位置に配置したのでは、同等以上の曲げ角度を得ることはできない。
以下に、この種の人工筋肉を肘の曲げに利用する場合について図6から図8を用いて説明する。
図6は比較例1を示す構成図、図7は比較例2を示す構成図、図8は比較例3を示す構成図である。
図6から図8において、筋力補助装置は、上腕に配置される第1の装着具10と、前腕に配置される第2の装着具20と、第1の装着具10に一端を第2の装着具20に他端を設ける人工筋30とを備えている。
第1の装着具10と第2の装着具20との初期角度を10度、設置状態での人工筋30の収縮率を22%とした。
なお、関節の回動軸1を通り第1の装着具10の長手方向に沿った仮想線をX軸線、関節の回動軸1を通りX軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、X軸線とY軸線との交点(回動軸1)に対して、第2の装着具20の曲げ方向をY軸線のプラス方向として以下に説明する。
図6に示す比較例1では、人工筋30の一端31Aは第1の装着具10の関節側端部の上端に、人工筋30の他端32は第2の装着具20の反関節側端部の上端に設けている。
図6に示すように、人工筋30の一端31Aを関節の回動軸1から所定の距離を持たせることで、人工筋30の収縮に伴って、第2の装着具20の第1の装着具10に対する曲げに必要な駆動力を発生させることができるが、第1の装着具10に対する第2の装着具20の曲げ角度が小さくなる。本例の場合には、X軸線に対して63度の曲げ角度となり、曲げに必要な駆動力は87Nであった。
図7に示す比較例2では、人工筋30の一端31Bは、図6に示す人工筋30の一端31Aよりも、Y軸線に近づけており、人工筋30の他端32は比較例1と同じ位置に設けている。
図7に示すように、人工筋30の一端31Bを関節の回動軸1に近づけることで、比較例1に比べて曲げ角度を大きくすることができるが、第2の装着具20の第1の装着具10に対する必要最大曲げに必要な駆動力は大きくなる。本例の場合には、X軸線に対して71度の曲げ角度となり、曲げに必要な駆動力は90Nであった。
図8に示す比較例3では、人工筋30の一端31Cは、図7に示す人工筋30の一端31Bよりも、X軸線に近づけており、人工筋30の他端32は他の比較例と同じ位置に設けている。
図8に示すように、人工筋30の一端31Cを関節の回動軸1に更に近づけることで、比較例2に比べて曲げ角度を大きくすることができるが、第2の装着具20の第1の装着具10に対する必要最大曲げに必要な駆動力は更に大きくなる。本例の場合には、X軸線に対して100度の曲げ角度となり、曲げに必要な駆動力は219Nであった。
以上のように、曲げ角度を大きくするような人工筋30の取り付け位置では、曲げに必要な力が増大してしまい、曲げに必要な駆動力が人工筋30の駆動力よりも大きくなると曲がらなくなってしまう。
また、人工筋30の一端31Cが関節の回動軸1に近づきすぎると、人工筋30の駆動力が曲げのために機能せず、第2の装着具20を関節の回動軸1に近づける力となってしまう。
ところで、第1の装着具10と第2の装着具20とを一軸の回転軸で連結した場合には、人工筋30の一端31を回転軸に近づけても曲げに必要な駆動力を確実に発生させることができる。
しかし、この場合には、装着時において、関節の回動軸1と、第1の装着具10と第2の装着具20との回転軸とがずれている場合や、装着後の曲げ動作の結果として、関節の回動軸1と、第1の装着具10と第2の装着具20との回転軸とがずれてしまった場合には、使用者に過度の負荷がかかるなどの問題が生じる。
また、人の関節は完全な一軸動作ではないために、第1の装着具10と第2の装着具20とを一軸の回転軸で連結した場合には、曲げ動作において関節の回動軸1と、第1の装着具10と第2の装着具20との回転軸とが完全に一致することはあり得ない。
従って、第1の装着具10と第2の装着具20とを一軸の回転軸で連結することは好ましくなく、第1の装着具10と第2の装着具20とを一軸の回転軸で連結しない場合には、人工筋30の一端31を関節の回動軸1に近づけることができなくなり、十分な曲げ角度を確保できないという問題を生じる。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するもので、第1の装着具に対する第2の装着具の曲げ角度を大きくすることができる筋力補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の筋力補助装置は、関節の一方の骨に沿って配置される第1の装着具と、前記関節の他方の骨に沿って配置される第2の装着具と、前記第1の装着具に一端を、前記第2の装着具に他端を設ける人工筋とを備え、使用者の肘、膝、又は手首の動作を支援する筋力補助装置であって、前記第1の装着具に一端を設ける補助人工筋を備え、前記補助人工筋の他端を、スイングアームを介して前記人工筋の前記一端と接続し、前記補助人工筋によって、前記人工筋の前記一端を前記第1の装着具に対して変位可能な構成としたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の筋力補助装置において、前記人工筋の前記一端を変位させることで、前記人工筋の前記一端を変位させない場合よりも、前記第1の装着具に対する前記第2の装着具の曲げ角度を大きくしたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の筋力補助装置において、前記人工筋として、気体、液体、若しくは固体の物質、又はこれらの混合物の供給又は排出によって伸縮するアクチュエータを用いたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の筋力補助装置において、前記第1の装着具に前記スイングアームを設け、前記スイングアームの反関節側端部を回動支点とし、前記スイングアームの関節側端部を変位端とし、前記人工筋の前記一端を前記スイングアームの前記変位端に設けたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の筋力補助装置において、前記補助人工筋の前記他端を、前記スイングアームの前記変位端に設けたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の筋力補助装置において、前記関節の回動軸を通り前記第1の装着具の長手方向に沿った仮想線をX軸線、前記関節の前記回動軸を通り前記X軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、前記X軸線と前記Y軸線との交点に対して、前記第2の装着具の曲げ方向を前記Y軸線のプラス方向とした場合に、前記スイングアームの前記回動支点を前記Y軸線のプラス位置に配置し、前記補助人工筋の一端を前記Y軸線のマイナス位置に配置することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項5に記載の筋力補助装置において、前記関節の回動軸を通り前記第1の装着具の長手方向に沿った仮想線をX軸線、前記関節の前記回動軸を通り前記X軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、前記X軸線と前記Y軸線との交点に対して、前記第2の装着具の曲げ方向を前記Y軸線のプラス方向とした場合に、前記スイングアームの前記回動支点を前記Y軸線のプラス位置に配置し、前記補助人工筋の一端を前記Y軸線のマイナス位置に配置し、前記スイングアームの前記変位端は前記Y軸線のプラス位置と前記Y軸線のマイナス位置とを変位することを特徴とする。
請求項8記載の本発明の筋力補助装置の動作方法は、請求項1に記載の筋力補助装置の動作方法であって、前記人工筋を収縮させる第1の動力源と、前記補助人工筋を収縮させる第2の動力源とを備え、屈曲動作時には、前記第1の動力源の作動開始を前記第2の動力源の作動開始よりも早く行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の装着具に対する第2の装着具の曲げ角度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例における筋力補助装置の伸展状態を示す構成図
【図2】同筋力補助装置の屈曲途中の状態を示す構成図
【図3】同筋力補助装置の屈曲状態を示す構成図
【図4】図1相当の同筋力補助装置の要部斜視図
【図5】図3相当の同筋力補助装置の要部斜視図
【図6】比較例1を示す構成図
【図7】比較例2を示す構成図
【図8】比較例3を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による筋力補助装置は、第1の装着具に一端を設ける補助人工筋を備え、補助人工筋の他端を、スイングアームを介して人工筋の一端と接続し、補助人工筋によって、人工筋の一端を第1の装着具に対して変位可能な構成としたものである。本実施の形態によれば、補助人工筋によって、人工筋の曲げ角度を大きくすることができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による筋力補助装置において、人工筋の一端を変位させることで、人工筋の一端を変位させない場合よりも、第1の装着具に対する第2の装着具の曲げ角度を大きくしたものである。本実施の形態によれば、人工筋の一端を変位させることで、曲げに必要な駆動力を大きくすることなく曲げ角度を大きくすることができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による筋力補助装置において、人工筋として、気体、液体、若しくは固体の物質、又はこれらの混合物の供給又は排出によって伸縮するアクチュエータを用いたものである。本実施の形態によれば、長手方向に伸縮することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3の実施の形態による筋力補助装置において、第1の装着具にスイングアームを設け、スイングアームの反関節側端部を回動支点とし、スイングアームの関節側端部を変位端とし、人工筋の一端をスイングアームの変位端に設けたものである。本実施の形態によれば、スイングアームの変位端に人工筋の一端を設けることで、人工筋の一端の位置を変位させることができる。
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による筋力補助装置において、補助人工筋の他端を、スイングアームの変位端に設けたものである。本実施の形態によれば、補助人工筋によって、人工筋の曲げ角度を大きくすることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による筋力補助装置において、関節の回動軸を通り第1の装着具の長手方向に沿った仮想線をX軸線、関節の回動軸を通りX軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、X軸線とY軸線との交点に対して、第2の装着具の曲げ方向をY軸線のプラス方向とした場合に、スイングアームの回動支点をY軸線のプラス位置に配置し、補助人工筋の一端をY軸線のマイナス位置に配置するものである。本実施の形態によれば、スイングアームの可動範囲を大きくすることができるとともに、補助人工筋によってスイングアームをスムーズに移動させることができる。
本発明の第7の実施の形態は、第5の実施の形態による筋力補助装置において、関節の回動軸を通り第1の装着具の長手方向に沿った仮想線をX軸線、関節の回動軸を通りX軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、X軸線とY軸線との交点に対して、第2の装着具の曲げ方向をY軸線のプラス方向とした場合に、スイングアームの回動支点をY軸線のプラス位置に配置し、補助人工筋の一端をY軸線のマイナス位置に配置し、スイングアームの変位端はY軸線のプラス位置とY軸線のマイナス位置とを変位するものである。本実施の形態によれば、スイングアームの可動範囲を大きくすることができるとともに、補助人工筋によってスイングアームをスムーズに移動させることができる。
本発明の第8の実施の形態による筋力補助装置の動作方法は、第1の実施の形態における筋力補助装置の動作方法であって、人工筋を収縮させる第1の動力源と、補助人工筋を収縮させる第2の動力源とを備え、屈曲動作時には、第1の動力源の作動開始を第2の動力源の作動開始よりも早く行うものである。本実施の形態によれば、人工筋の動作を開始した後に人工筋の一端を変位させることでスムーズな動作を行わせることができる。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明の筋力補助装置の一実施例について説明する。
図1は本発明の一実施例における筋力補助装置の伸展状態を示す構成図、図2は同筋力補助装置の屈曲途中の状態を示す構成図、図3は同筋力補助装置の屈曲状態を示す構成図、図4は図1相当の同筋力補助装置の要部斜視図、図5は図3相当の同筋力補助装置の要部斜視図である。
本実施例による筋力補助装置は、関節の一方の骨に沿って配置される第1の装着具10と、関節の他方の骨に沿って配置される第2の装着具20と、第1の装着具10に一端31を第2の装着具20に他端32を設ける人工筋30とを備えている。
本実施例のように、肘に設ける場合には、第1の装着具10は上腕に配置され、第2の装着具20は前腕に配置される。
人工筋30は、気体、液体、若しくは固体の物質、又はこれらの混合物の供給又は排出によって、少なくとも長手方向に伸縮するアクチュエータである。
第1の装着具10には、スイングアーム40を設けている。このスイングアーム40の反関節側端部が回動支点41となり、スイングアーム40の関節側端部が変位端42となる。そして、人工筋30の一端31は、スイングアーム40の変位端42に設けている。
第1の装着具10には、補助人工筋50を設けている。この補助人工筋50は、その一端51を第1の装着具10の反関節側端部に設け、他端52をスイングアーム40の変位端42に設けている。
第1の装着具10には、ガイドプレート60を設けている。このガイドプレート60にはガイド穴61を備え、スイングアーム40の変位端42をガイド穴61に沿って変位させている。
【0011】
なお、関節の回動軸1を通り第1の装着具10の長手方向に沿った仮想線をX軸線、関節の回動軸1を通りX軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、X軸線とY軸線との交点(回動軸1)に対して、第2の装着具20の曲げ方向をY軸線のプラス方向として以下に説明する。なお、回動軸1は、第1の装着具10に対する第2の装着具20が最も伸展した状態での関節の位置を示している。この回動軸1は、図2及び図3では、点線で示す円内で変位する。
スイングアーム40の回動支点41をY軸線のプラス位置に配置し、補助人工筋50の一端51をY軸線のマイナス位置に配置している。また、ガイド穴61の一端61AはY軸線のプラス位置に、ガイド穴61の他端61BはY軸線のマイナス位置に配置している。
第1の装着具10と第2の装着具20とはバネ関節70で連結している。このバネ関節70には、コイルバネを用い、引っ張りバネとして用いる。バネ関節70は、第1の装着具10に対する第2の装着具20が最も伸展した状態において、コイルバネの軸線71がY軸線のマイナス位置となるように配置している。
加えて、コイルバネによるバネ関節70の回転軸のずれが、関節の回動軸1のずれと等しくなるようにコイルバネの長さを調節している。
また、図示はしないが、人工筋30を収縮させる第1の動力源と、補助人工筋50を収縮させる第2の動力源とを備えている。人工筋30及び補助人工筋50は、それぞれ腕の両側方に対として設けることが好ましい。
また、図4及び図5に示すように、肘側に伸展用人工筋80を備えている。伸展用人工筋80は、図4に示す状態で最も収縮した状態を示しており、図5に示す状態で最も伸展した状態を示している。
【0012】
以下本実施例による筋力補助装置の動作について説明する。
図1に示すように、同装置の伸展状態では、第1の装着具10に対して第2の装着具20は、第2の装着具20の反関節側端部が、Y軸線のプラス方向に約10度の初期角度を持って構成されている。
この状態では、人工筋30及び補助人工筋50は、長手方向に最も伸展した状態となっている。また、スイングアーム40の変位端42は、ガイド穴61の一端61Aに配置されている。
図1の状態では、バネ関節70の長手方向の中心線70yはY軸線上に、長手方向の上部巻線の中心70xはY軸線の略マイナス位置に配置している。
【0013】
図1の状態において、第1の駆動源によって人工筋30だけを作動させた状態を図2に示している。
第2の駆動源の作動を行わせていないため、補助人工筋50は、長手方向に最も伸展した状態を維持しており、スイングアーム40の変位端42は、ガイド穴61の一端61Aに配置された状態を示している。
第1の駆動源によって人工筋30を作動させることで、人工筋30は長手方向に収縮し、人工筋30の収縮によって第2の装着具20は第1の装着具10に対して屈曲する。
図1の状態では、コイルバネの軸線71はY軸線のマイナス位置に配置され、バネ関節70の長手方向の中心線70yはY軸線上に、長手方向の上部巻線の中心70xはY軸線の略マイナス位置に配置している。
【0014】
図2の状態において、第2の駆動源によって補助人工筋50を作動させた状態を図3に示している。
第2の駆動源によって補助人工筋50を作動させることで、補助人工筋50は長手方向に収縮し、補助人工筋50の収縮によって、スイングアーム40の変位端42は、ガイド穴61の他端61Bに移動する。
スイングアーム40の変位端42がガイド穴61の他端61Bに移動することで、人工筋30の一端31も、ガイド穴61の他端61Bに移動し、第2の装着具20は第1の装着具10に対して更に屈曲する。
なお、上記実施例の動作説明では、人工筋30の動作を終了させてから、補助人工筋50を動作させる場合を説明したが、屈曲動作時には、第1の動力源の作動開始を第2の動力源の作動開始よりも早く行えばよく、人工筋30の動作が終了しない前に、補助人工筋50の動作を開始してもよい。
【0015】
以上のように本発明は、人工筋30の一端31を第1の装着具10に対して変位可能な構成とし、人工筋30の一端31を変位させることで、人工筋30の一端31を変位させない場合よりも、第1の装着具10に対する第2の装着具20の曲げ角度を大きくしたものである。本発明によれば、人工筋30の一端31を変位させることで、駆動力を大きくすることなく曲げ角度を大きくすることができる。
また本発明は、第1の装着具10にスイングアーム40を設け、スイングアーム40の反関節側端部を回動支点41とし、スイングアーム40の関節側端部を変位端42とし、人工筋30の一端31をスイングアーム40の変位端42に設けたことで、人工筋30の一端31の位置を変位させることができる。
また本発明は、第1の装着具10に一端51、をスイングアーム40の変位端42に他端52を設ける補助人工筋50を備えたことで、補助人工筋50によってスイングアーム40を変位させ、人工筋30の曲げ角度を大きくすることができる。
また本発明は、第1の装着具10にガイドプレート60を設け、ガイドプレート60にはガイド穴61を備え、スイングアーム40の変位端42をガイド穴61に沿って変位させることで、安定した変位を行うことができる。
また本発明は、スイングアーム40の回動支点42をY軸線のプラス位置に配置し、補助人工筋50の一端51をY軸線のマイナス位置に配置することで、スイングアーム40の可動範囲を大きくすることができるとともに、補助人工筋50によってスイングアーム40をスムーズに移動させることができる。
また本発明は、ガイド穴61の一端61AをY軸線のプラス位置に、ガイド穴61の他端61BをY軸線のマイナス位置に配置することで、スイングアーム40の可動範囲を大きくすることができる。
また本発明は、第1の装着具10と第2の装着具20とをバネ関節70で連結し、バネ関節70としてコイルバネを用いたことで、筋力補助装置と関節とのずれがある場合でも、スムーズな動作を確保することができる。
また本発明は、屈曲動作時には、人工筋30の動作を開始した後に人工筋30の一端31を変位させることでスムーズな動作を行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、肘、膝、又は手首などの関節での動作を支援する筋力補助装置として利用できる。
【符号の説明】
【0017】
10 第1の装着具
20 第2の装着具
30 人工筋
31 一端
32 他端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節の一方の骨に沿って配置される第1の装着具と、
前記関節の他方の骨に沿って配置される第2の装着具と、
前記第1の装着具に一端を、前記第2の装着具に他端を設ける人工筋とを備え、
使用者の肘、膝、又は手首の動作を支援する筋力補助装置であって、
前記第1の装着具に一端を設ける補助人工筋を備え、
前記補助人工筋の他端を、スイングアームを介して前記人工筋の前記一端と接続し、
前記補助人工筋によって、前記人工筋の前記一端を前記第1の装着具に対して変位可能な構成とした筋力補助装置。
【請求項2】
前記人工筋の前記一端を変位させることで、前記人工筋の前記一端を変位させない場合よりも、前記第1の装着具に対する前記第2の装着具の曲げ角度を大きくした請求項1に記載の筋力補助装置。
【請求項3】
前記人工筋として、気体、液体、若しくは固体の物質、又はこれらの混合物の供給又は排出によって伸縮するアクチュエータを用いた請求項1又は請求項2に記載の筋力補助装置。
【請求項4】
前記第1の装着具に前記スイングアームを設け、
前記スイングアームの反関節側端部を回動支点とし、前記スイングアームの関節側端部を変位端とし、
前記人工筋の前記一端を前記スイングアームの前記変位端に設けた請求項1から請求項3のいずれかに記載の筋力補助装置。
【請求項5】
前記補助人工筋の前記他端を、前記スイングアームの前記変位端に設けた請求項4に記載の筋力補助装置。
【請求項6】
前記関節の回動軸を通り前記第1の装着具の長手方向に沿った仮想線をX軸線、前記関節の前記回動軸を通り前記X軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、前記X軸線と前記Y軸線との交点に対して、前記第2の装着具の曲げ方向を前記Y軸線のプラス方向とした場合に、前記スイングアームの前記回動支点を前記Y軸線のプラス位置に配置し、前記補助人工筋の一端を前記Y軸線のマイナス位置に配置した請求項5に記載の筋力補助装置。
【請求項7】
前記関節の回動軸を通り前記第1の装着具の長手方向に沿った仮想線をX軸線、前記関節の前記回動軸を通り前記X軸線に垂直な仮想線をY軸線とし、前記X軸線と前記Y軸線との交点に対して、前記第2の装着具の曲げ方向を前記Y軸線のプラス方向とした場合に、前記スイングアームの前記回動支点を前記Y軸線のプラス位置に配置し、前記補助人工筋の一端を前記Y軸線のマイナス位置に配置し、前記スイングアームの前記変位端は前記Y軸線のプラス位置と前記Y軸線のマイナス位置とを変位する請求項5に記載の筋力補助装置。
【請求項8】
請求項1に記載の筋力補助装置の動作方法であって、前記人工筋を収縮させる第1の動力源と、前記補助人工筋を収縮させる第2の動力源とを備え、屈曲動作時には、前記第1の動力源の作動開始を前記第2の動力源の作動開始よりも早く行う筋力補助装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78637(P2013−78637A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−285740(P2012−285740)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2007−340672(P2007−340672)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】