説明

筐体構造、筐体製造方法および電子機器

【課題】内蔵光源を利用した筐体外部への文字や記号等の鮮明な表示を可能とするとともに、筐体のデザイン性、筐体の発色性の向上が可能な筐体構造を提供する。
【解決手段】筐体構造として、筐体の成形材料となる透明な成形樹脂12に透明な板ガラスを粉砕したガラス片13を練り込むとともに、成形樹脂12の上に塗装膜14を形成した構造とし、前記成形材料を見掛け上明るく白濁させるとともに、筐体の内部に実装した基板16上に適宜配設されたLED16を用いて筐体の外面に情報を鮮明に表示することを可能にする。ガラス片13は、厚みが4〜6μm、最大粒径が80μm以下、平均粒径が15〜30μmの範囲の大きさとする。塗装膜14は、ガラス繊維とポリカーボネート樹脂とからなる透明性を有する樹脂組成物とし、膜厚は20〜100μmの範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体構造、筐体製造方法および電子機器に関し、特に、内蔵LED(Light Emitting Diode)による情報表示と発色性の向上の両立が可能な筐体構造、該筐体構造を製造する筐体製造方法および該筐体構造を使用する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1の特開2007−173133号公報「光源ユニットおよび面発光装置」や特許文献2の特開2001−053341号公報「面発光表示器」のように、携帯電話機を始めとする各種の電子機器において、内部基板に適宜配設された多数のLED(Light Emitting Diode)を使用して、電子機器の筐体を面発光させたり、筐体を透過して、時刻やメッセージ等を外部に表示させたりすることが可能な筐体構造が多く採用されている。
【0003】
かくのごとき筐体構造の仕様とする場合、LEDからの光に対する透過性を実現させるために、筐体を形成する材料と塗装とに、光に対する透過性が求められる。
【0004】
その一方では、電子機器の筐体に対するデザイン性の向上を図るために、筐体への塗装の発色も重視される。例えば、明度の高い白色の筐体色を実現するためには、塗装の下地である筐体の成形材料の色も、白などの明度の高い色にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−173133号公報(第5−6頁)
【特許文献2】特開2001−053341号公報(第3−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように、内蔵したLEDからの光を筐体の外部に透過させるとともに、筐体のデザイン性も向上させるような仕様とする場合、筐体の成形材料を白くするための顔料である酸化チタンは、光に対する透過性が悪くなり、内蔵LEDを利用した筐体の外部への表示を暗くしてしまうという問題がある。
【0007】
また、筐体に白の染料を使用した場合は、微細な染料の拡散効果により、LEDの光を拡散させ過ぎてしまい、内蔵LEDを利用した筐体の外部への表示をぼかしてしまい、鮮明な表示を行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、内蔵光源例えば内蔵LEDを利用した筐体外部への文字や記号等の鮮明な表示を可能とするとともに、筐体のデザイン性、筐体の発色性の向上が可能な筐体構造、筐体製造方法および電子機器を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による筐体構造は、次のような特徴的な構成を採用している。
(1)筐体の内部に実装した光源を用いて筐体の外面に情報を表示することが可能な筐体構造であって、前記筐体の成形材料となる透明な成形樹脂に透明な板ガラスを粉砕したガラス片を練り込むとともに、前記成形樹脂の上に塗装膜を形成した構造とする筐体構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明の筐体構造、筐体製造方法および電子機器によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0011】
透明なガラス片を練り込んだ筐体の成形材料と透明な塗装膜とからなる筐体構造としているので、明度の高い筐体色の発色と筐体を透過した内部光源からの光による視認性の良い情報表示との両立を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電子機器の筐体形状の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示す電子機器の筐体の断面構造の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す筐体構造における光の透過性を示すイメージ図である。
【図4】図2に示す筐体構造において筐体外面に情報表示した表示例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による筐体構造、筐体製造方法および電子機器の好適な実施例について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明に係る電子機器として、携帯電話機を例にして、その筐体構造を説明するが、本発明に係る電子機器は、携帯電話機のみに限るものではなく、PHS(Personal Handy-Phone System)端末、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯音楽プレーヤ、ゲーム機器等を含む各種電子機器についても全く同様に適用することが可能であることは言うまでもない。
【0014】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、筐体を透過して内蔵光源例えばLED(Light Emitting Diode)からの光を利用した情報表示を行う電子機器において、デザイン性に富む明度の高い塗装を筐体に施すために、筐体の成形材料に、粉砕した板状のガラス片を配合し、該ガラス片の反射効果を利用することによって、見掛け上白濁させて塗装の下地を明るくし、筐体の明度の向上と光に対する透過性の向上とを両立させることを特徴としている。つまり、本発明においては、筐体の成形材料に極薄の透明ガラス板を粉砕したものを練り込んだ筐体構造とすることを特徴としている。
【0015】
かくのごとく、筐体の成形材料として、透明な成形材料の中に粉砕されたガラス片を練り込むことによって透明な成形材料が白濁し、材料色の明度を上げることができる。また、透明ガラス板を粉砕した大き目のガラス片は、それぞれの角度で、外光を不規則に反射するので、擬似的に、明度を上げることができる。その上に、白などの明度の高さを要求される塗装を施すことによって、筐体色の明度を向上させることができる。
【0016】
また、ガラス片は透明であるので、筐体内の光源例えばLEDからの光は高効率で筐体外に透過させることができ、各光源例えば各LEDからの光による鮮明な文字や記号等の情報表示が可能である。
【0017】
その結果、本発明は、明度の高いデザイン性に富む筐体色の発色と筐体を透過しての表示情報に対する視認性に富む内蔵光源による情報表示との両立を図ることが可能な筐体構造および電子機器を実現している。
【0018】
(本発明の実施形態の説明)
次に、本発明の実施形態について、図1を用いて、まず、電子機器の筐体形状について説明する。図1は、本発明に係る電子機器の筐体形状の一例を示す構成図であり、電子機器として携帯電話機を例にとって示している。
【0019】
図1に示す電子機器は、筐体を構成する蓋部1と本体部2とがヒンジ3を介して開閉することが可能な構造を有しており、蓋部1の内部に実装された基板上に適宜配設した1ないし複数の光源例えばLED(Light Emitting Diode)によって、蓋部1の筐体を透過して外部に時刻やスケジュールやメッセージ等の情報を表示する構造となっている。
【0020】
つまり、図1の蓋部1には、破線によって囲んで示す背面表示部11が備えられており、背面表示部11は、時刻やスケジュールやメッセージ等の情報を蓋部1の内部に実装された光源例えばLEDが点灯することによって表示する領域であり、LEDを点灯しない状態では、筐体外部からは内部に実装された光源例えばLEDの存在を視認することができない筐体構造になっている。
【0021】
次に、図1に示す電子機器の筐体の断面構造について、図2を用いて説明する。図2は、図1に示す電子機器の筐体の断面構造の一例を示す断面図であり、図1の蓋部1に備えられた背面表示部11の領域の筐体の断面構造を示している。
【0022】
図2に示すように、背面表示部11の領域の筐体は、光に対する透過性を有する筐体を形成するための透明な成形材料からなる成形樹脂12、該成形樹脂12を形成する成形材料に練り込まれた透明なガラス片13(図2には斜線を施して示している)、該成形樹脂12上に塗装される発色性に富む透明な塗装膜14からなっている。
【0023】
ここで、成形樹脂12を形成する成形材料に練り込む透明なガラス片13は、透明なガラス板を大き目のサイズで粉砕したものであり、その具体的なサイズは、例えば、厚みが4〜6μm程度であり、平均粒径を15〜30μm程度とすることが望ましい。粉砕されたガラス片13の混入によって成形材料は白濁するが、ガラス片13として透明性も有しているので、内蔵光源例えばLEDからの光を遮光することなく、透過させることができる。
【0024】
また、塗装膜14は、例えばガラス繊維とポリカーボネート樹脂とからなる透明性と耐衝撃性とを有する樹脂組成物であり、成形樹脂12上には、膜厚は20〜100μm程度に形成することが望ましい。
【0025】
図3は、図2のような筐体構造における光の透過性を示すイメージ図であり、前述のような筐体構造とすることによって、筐体内部に設けられた基板16上に適宜配設された光源例えばLED15からの光が、ガラス片13を練り込んだ成形樹脂12や塗装膜14で一部反射や散乱が生じて、ロスを生じることはあるものの、点光源として、筐体の外部に透過して、文字や記号等を鮮明に表示させることができる。
【0026】
また、粉砕されたガラス片13の混入によって成形樹脂12は白濁しているので、その上に形成する塗装膜14の下地が白くなり、結果として、外装の塗装膜14の明度も向上することになり、外観意匠面から見たデザイン性の向上も図ることができる。さらには、内蔵された光源例えばLED15が点灯していない状態では、光源例えばLED15の存在を、筐体外部から視認することができない状態にすることができ、外観意匠として好ましい状態にすることが可能である。
【0027】
以上のように、内蔵の光源例えばLED15より発光される光は、ガラス片13で一部反射および拡散されるため、多少のロスは生じるものの、ガラス片13自身は透明な材料であるので、光の大半を筐体の外部へ透過させ、筐体外部への情報表示に対する視認性を十分確保することが可能であり、例えば、図4に示すように、筐体の蓋部1に設けた背面表示部11には、デザイン性に富む形式で、時刻情報を鮮明に表示することができる。ここに、図4は、図2に示す筐体構造において筐体外面に情報表示した表示例を示すイメージ図である。
【0028】
なお、筐体内に内蔵する光源例えばLED15は、単色のみではなく、異なる色を発光する複数種類のLEDを用いるようにしても良い。かくのごとく、複数の色を発光する光源を用いることにより、蓋部1に設けた背面表示部11に表示する情報を、より視認性に富む表示とすることができる。
【0029】
また、筐体の成形材料に練り込む透明なガラス片13の粒径は、最大80μm程度までの大きさであっても構わない。また、ガラス片13として、着色されたガラスを用いることも可能である。ただし、かくのごとき着色は薄い色が望ましく、濃い着色が施されている場合は、外部への光の発色性にも影響を及ぼすことになり、好ましくない。
【0030】
(実施形態の効果の説明)
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したように、本実施形態によれば、明度の高い筐体色の発色と筐体を透過した内部光源からの光による視認性の良い情報表示との両立を実現することができる。
【0031】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記ガラス片は、厚みが4〜6μm、平均粒径が15〜30μmの範囲の大きさである上記(1)の筐体構造。
(3)前記ガラス片の粒径は、80μm以下である上記(2)の筐体構造。
(4)前記塗装膜は、ガラス繊維とポリカーボネート樹脂とからなる透明性を有する樹脂組成物であり、膜厚は20〜100μmの範囲である上記(1)ないし(3)のいずれかの筐体構造。
(5)筐体の内部に実装した前記光源は、1ないし複数のLED(Light Emitting Diode)からなる上記(1)ないし(4)のいずれかの筐体構造。
(6)筐体の内部に実装した光源を用いて筐体の外面に情報を表示することが可能な筐体を製造する筐体製造方法であって、前記筐体の成形材料となる透明な成形樹脂に透明な板ガラスを粉砕したガラス片を練り込む工程と、前記成形樹脂の上に塗装膜を形成する工程とを少なくとも含む筐体製造方法。
(7)前記ガラス片は、厚みが4〜6μm、平均粒径が15〜30μmの範囲の大きさである上記(7)の筐体製造方法。
(8)前記塗装膜は、ガラス繊維とポリカーボネート樹脂とからなる透明性を有する樹脂組成物であり、膜厚は20〜100μmの範囲である上記(6)または(7)の筐体製造方法。
(9)筐体の内部に実装する前記光源として、1ないし複数のLED(Light Emitting Diode)を用いる上記(6)ないし(8)のいずれかの筐体製造方法。
(10)各種の情報を送受信したり、処理したりする電子機器において、当該電子機器の筐体の構造を、上記(1)ないし(5)のいずれかの筐体構造を用いて形成している電子機器。
【符号の説明】
【0032】
1 蓋部
2 本体部
3 ヒンジ
11 背面表示部
12 成形樹脂
13 ガラス片
14 塗装膜
15 LED
16 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に実装した光源を用いて筐体の外面に情報を表示することが可能な筐体構造であって、前記筐体の成形材料となる透明な成形樹脂に透明な板ガラスを粉砕したガラス片を練り込むとともに、前記成形樹脂の上に塗装膜を形成した構造とすることを特徴とする筐体構造。
【請求項2】
前記ガラス片は、厚みが4〜6μm、平均粒径が15〜30μmの範囲の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の筐体構造。
【請求項3】
前記ガラス片の粒径は、80μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の筐体構造。
【請求項4】
前記塗装膜は、ガラス繊維とポリカーボネート樹脂とからなる透明性を有する樹脂組成物であり、膜厚は20〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の筐体構造。
【請求項5】
筐体の内部に実装した前記光源は、1ないし複数のLED(Light Emitting Diode)からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の筐体構造。
【請求項6】
筐体の内部に実装した光源を用いて筐体の外面に情報を表示することが可能な筐体を製造する筐体製造方法であって、前記筐体の成形材料となる透明な成形樹脂に透明な板ガラスを粉砕したガラス片を練り込む工程と、前記成形樹脂の上に塗装膜を形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とする筐体製造方法。
【請求項7】
前記ガラス片は、厚みが4〜6μm、平均粒径が15〜30μmの範囲の大きさであることを特徴とする請求項7に記載の筐体製造方法。
【請求項8】
前記塗装膜は、ガラス繊維とポリカーボネート樹脂とからなる透明性を有する樹脂組成物であり、膜厚は20〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項6または7に記載の筐体製造方法。
【請求項9】
筐体の内部に実装する前記光源として、1ないし複数のLED(Light Emitting Diode)を用いることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の筐体製造方法。
【請求項10】
各種の情報を送受信したり、処理したりする電子機器において、当該電子機器の筐体の構造を、請求項1ないし5のいずれかに記載の筐体構造を用いて形成していることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−199763(P2010−199763A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40091(P2009−40091)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】