説明

筐体構造およびメディア処理装置

【課題】外部側からだけでは分解できない筐体構造およびこの筐体構造を備えたメディア処理装置を提供する。
【解決手段】筐体の内部側へのアクセスを規制することが可能な筐体構造であって、筐体2を形成する基部ケース2bと、基部ケース2bへ装着されると基部ケース2bの外部側からの分解を規制し、基部ケース2bへの装着を解除されると基部ケース2bの分解を可能にする上部ケース2aと、上部ケース2aの基部ケース2bへの装着を保持し、筐体の内部側からの操作により上部ケース2aの装着を解除する機能を有する規制部と、を備え、規制部は、上部ケース2aに設けられた係合体8およびL字型フック6であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティの向上を図った筐体構造およびこの筐体構造を備えたメディア処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メディア処理装置において、筐体内のメディアを保護するために、メディアを出し入れするための開閉扉に機械的な錠や電子的な錠を設けていた。これらの錠を設けることにより、開閉扉を開閉する操作の実行は、開閉扉の操作権限を有するオペレータのみに限定される。そのため、操作権限のない者が、開閉扉を開けてメディアを持ち出すような行いを防止でき、メディア処理装置のセキュリティを向上させることが可能であった(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−247390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、メディア処理装置の外観を形成する筐体は、内部フレームにネジ止め等された構成であって、メンテナンス等のために外部側から分解可能な構造になっている。そのため、メディア処理装置は、多少の構造知識があれば、開閉扉を開けることなく筐体を分解して、開閉扉以外からメディアを持ち出せてしまう、という課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる筐体構造は、筐体の内部側へのアクセスを規制することが可能であって、前記筐体を形成する基部ケースと、前記基部ケースへ装着されると前記基部ケースの外部側からの分解を規制し、前記基部ケースへの装着を解除されると前記基部ケースの分解を可能にする可動ケースと、前記可動ケースの前記基部ケースへの装着を保持し、前記筐体の内部側からの操作により前記可動ケースの装着を解除する機能を有する規制部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この筐体構造によれば、基部ケースは、可動ケースが基部ケースへ取り付けられている装着状態の場合、外部側から分解できないように規制され、可動ケースが基部ケースから取り外された装着解除状態の場合、外部側から分解することが可能となっている。さらに、可動ケースを基部ケースから取り外すには、基部ケースを含んで構成される筐体の内部側から、可動ケースの装着状態を保持している規制部を操作しなければならない。つまり、規制部を筐体の内側から操作して、可動ケースを装着解除状態にすることによってのみ、可動ケースの取り外しが可能である。従って、可動ケースが装着された筐体は、外部側からのみでは分解することができない構造となっている。このような構造の筐体を用いれば、筐体の内部へのアクセス権をもつオペレータのみが、例えば筐体内部に設置した装置のメンテナンス等を行うために、筐体を分解することが可能であって、アクセス権をもたないオペレータ等が筐体を分解して内部へ不正に侵入することを確実に防止することが可能である。これにより、筐体のセキュリティ性の向上が図れる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる筐体構造において、前記規制部は、前記可動ケースに設けられ係合体とフックとを有し、前記可動ケースがスライド移動して前記基部ケースへ装着されると、前記係合体は前記可動ケースのスライド移動を規制し、前記フックは前記可動ケースの前記基部ケースからの離反を規制することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、可動ケースをスライド移動させて基部ケースへ装着すると、規制部を構成するフックは、スライド移動に伴い、可動ケースが基部ケースから離反しないようにフック係合し、規制部を構成する係合体は、可動ケースがスライド移動しないように規制してフック係合の保持を図る。このように可動ケースをスライド移動させてフック係合させると、可動ケースが基部ケースに固定された状態となって、基部ケースの分解をできなくする。係合体とフックとを有する規制部により、簡便な構成であっても、筐体内への進入を十分防止することが可能である。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる筐体構造において、前記可動ケースは、前記筐体の内部側からの操作による前記係合体に係る規制の解除と、前記可動ケースのスライド移動による前記フックに係る規制の解除とにより、前記基部ケースへの装着が解除されることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、可動ケースを基部ケースから取り外す装着解除は、まず、筐体の内部側から係合体を操作してスライド移動の規制を解除し、可動ケースのスライド移動を可能にする。そして、可動ケースをスライド移動させて、フックに係る規制であるフック係合を解除する。これらの操作により、可動ケースの装着解除が行われるため、外部からのみの操作では装着解除ができない。このように、可動ケースの装着解除には、筐体の内部側および外部側からの操作が必要であり、筐体の安易な分解を防止してセキュリティ性の確保が可能である。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる筐体構造において、ロック機構を有する開閉部をさらに備え、前記規制部は、開放された前記開閉部を介してのみ、操作が可能であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、規制部を筐体の内部側から操作するために、筐体には開閉部が設けられていて、この開閉部のロック機構にアクセス可能なオペレータのみが規制部の操作を行える。規制部の操作は、ロック機構を有する開閉部を開放して行われるため、規制部の操作だけでなく、筐体を分解せずに筐体内部の点検等も合わせて行うことが可能である。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる筐体構造において、前記係合体は、前記筐体の内部側に設けられた係合受口と係合することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、可動ケースに設けられた係合体は、係合体を受容するために基部ケースの側に設けられた係合受口と係合し、係合状態のままスライド移動が可能である。可動ケースと基部ケースとの装着時には、係合体がスライド移動すると、係合体は、最終的に係合受口とスライド移動不可の規制状態で係止する。この係止状態において、係合体を操作して規制を解除すれば、係合体は再びスライド移動が可能となり、可動ケースの取り外しが行えるようになる。このように係合体と係合受口との係合によってスライド移動の規制および規制解除が容易に行える。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる筐体構造において、前記係合体は、係合係止面と係合斜面とを先端部に有する可撓性のアームを有し、前記係合受口は、突起係止面と突起斜面とを有する略三角形の突起部を有し、前記係合体と前記係合受口とが係合し前記係合体がスライド移動すると、前記係合斜面が前記突起斜面に沿って前記アームを撓ませつつ移動し、前記突起斜面との係合が外れた時点で前記アームの撓みが戻ることにより、前記係合係止面と前記突起係止面とが係止して前記可動ケースのスライド移動を規制することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、可動ケースがスライド移動する場合には、係合体の係合斜面が係合受口の突起斜面に沿って移動可能な状態であり、さらなるスライド移動によって係合斜面と突起斜面との係合が外れて、係合体の係合係止面と係合受口の突起係止面とが係止すると、可動ケースは、スライド移動ができないように規制された状態となる。このような係合体と係合受口との係合により、可動ケースをスライド移動させるだけで、可動ケースを基部ケースに装着でき、基部ケースを筐体の外部側から分解できなくすることが可能である。これにより、筐体を外部側から分解して筐体内へ不正進入すること等の防止が確実に図れる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかる筐体構造において、スライド移動の規制された前記可動ケースは、前記係合係止面と前記突起係止面との係止が解除される方向へ前記アームを撓ませることにより、スライド移動の規制が解除されることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、筐体の内部側から係合体のアームを撓ませる簡単な操作によって、係合係止面と突起係止面との係止を外して、可動ケースのスライド移動の規制を解除することが可能である。このように、筐体の内部側からの簡単な操作により、可動ケースの取り外しが行え、筐体の不正な分解を防止すると共に、必要時には容易に分解が可能である。
【0020】
[適用例8]本適用例にかかるメディア処理装置は、メディアへのデータの記録および前記メディアの表面へ印刷をするものであって、上記適用例のいずれかに記載の筐体構造を備えていることを特徴とする。
【0021】
このメディア処理装置によれば、内部への不正なアクセスを防止するために上記適用例に示すいずれかの構造の筐体を備えている。このような筐体を備えることにより、メディア処理装置は、筐体の内部に収容するメディアが不正に持ち出されるようなことを確実に防止することができ、高いセキュリティ性を有することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、メディア処理装置の具体的な実施形態について図面に従って説明する。本実施形態のメディア処理装置は、外部側からだけでは分解できない構成の筐体を備えていることを特徴とする。
(実施形態)
【0023】
まず、本実施形態のメディア処理装置の外観構成について説明する。図1は、本実施形態にかかるメディア処理装置の外観を示す斜視図である。図1に示すように、メディア処理装置1は、CDやDVD等の円板状のメディアヘのデータの記録やメディアのレーベル面(表面)への印刷を行うものであり、全体的にほぼ直方体形状の筐体2を備えている。この筐体2は、装置上面を形成する上部ケース(可動ケース)2aと、装置側面および背面を形成する基部ケース2bと、装置底部を形成する底部ケース2cと、を有している。これら上部ケース2a、基部ケース2bおよび底部ケース2cは、ネジ止めされたケース止部45によって相互固定されている。
【0024】
また、筐体2の前面には、右方向に開閉可能で機械錠を有するメディア扉(開閉部)3と、左方向に開閉可能なカートリッジ扉4と、が取り付けられており、メディア扉3には、透光性を有する窓部3aが設けられ、外側から装置内部の状況を視認することが可能である。このメディア扉3は、未使用のブランクメディアをセットする時あるいは作成済みのメディアを取り出す時に開閉するためのものである。また、カートリッジ扉4は、メディアのレーベル面への印刷を行うレーベルプリンタのインクカートリッジを入れ換える時に開閉するためのものである。そして、筐体2の前面左上部には、表示ランプ、操作ボタンなどが配列された操作面5が設けられており、前面下端には、メディア排出口10が設けられている。
【0025】
次に、メディア処理装置1において、筐体2の内部に収容されている機構装置について説明する。図2は、メディア処理装置の筐体内を前面側から見た斜視図である。また、図3は、メディア処理装置の筐体内を背面側から見た斜視図である。図2および図3に示すように、メディア処理装置1の機構装置は、底部ケース2cに設置されていて、背面側上部に配置されメディアMAにデータの書き込みを行う上下2段(図3)のメディアドライブ50と、背面側下部に配置されメディアMAのレーベル面に印刷を行うレーベルプリンタ11と、を有し、前面側左部には、カートリッジ装着部14を有するインク供給機構70が配置され、前面側右部には、メディアMA,MBを保管するメディア保管部21,22が配置されている。
【0026】
また、メディア保管部21,22の背面側には、メディア搬送機構30が配置されている。メディア搬送機構30は、垂直ガイド軸35と、垂直ガイド軸35に取り付けた搬送アーム36とを備えている。搬送アーム36は、駆動モータ37によって垂直ガイド軸35に沿って昇降可能であると共に、垂直ガイド軸35を中心に左右に旋回可能である。搬送アーム36の下面には、先端にグリッピング機構(図示省略)が設けられており、メディアMA,MBの搬送の際にはそれぞれの中心孔を把持するようになっている。
【0027】
メディア保管部21は、データの書き込み(記録)処理が行われていない複数枚の未使用ブランクのメディアMAを保管するメディアスタッカであり、メディア保管部22は、作成済みのメディアMBを保管するメディアスタッカであり、メディア保管部21を上側にして同軸状態で上下に配置されている。そして、メディア保管部21は、ブランクのメディアMAを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収納することができ、このメディア保管部21にブランクのメディアMAを収納あるいは補充する作業は、メディア扉3を開ければ簡単に行える。また、メディア保管部22もメディア保管部21と同一構造となっており、作成済みのメディアMBを上側から受け入れ、同軸に積層した状態で収納することができる。
【0028】
さらに、メディア処理装置1は、メディア排出口10に作成済みのメディアMBをメディアMCとして排出することができ、この場合、メディア扉3を閉じたままで、メディア保管部22に収容されている作成済みのメディアMBを容易に取り出すことができるようになっている。なお、作成済みのメディアMBは、データの書き込み、及びレーベル面への印刷が終了したものである。
【0029】
また、上下2段のメディアドライブ50は、メディアヘのデータの書き込み位置と、メディアMAの受け取り及び受け渡しを行うメディア受け渡し位置と、の間を移動可能なメディアトレイ51をそれぞれ有している。図2および図3では、上側のメディアドライブ50のメディアトレイ51が前面側に引き出されて、メディア受け渡し位置にある状態が示されている。
【0030】
そして、レーベルプリンタ11は、メディアMAのレーベル面へのレーベル印刷が可能な位置と、メディアMAの受け取り及び受け渡しを行うメディア受け渡し位置と、の間を移動可能なメディアトレイ15を有している。図3では、レーベルプリンタ11のメディアトレイ15が背面側のレーベル印刷可能位置にある状態が示されている。メディアトレイ15には、矩形の板の上面に、メディアMAの外周端面と当接してメディアMAの移動を規制するための円形の低い凸部15aが設けられている。
【0031】
このレーベルプリンタ11は、インクジェットヘッド61を有するキャリッジ62を備えており、このキャリッジ62は、キャリッジガイド軸63に沿って、水平方向に往復移動するように支持されている。そして、キャリッジ62は、キャリッジガイド軸63に沿って水平に架け渡したタイミングベルト64(図2)と、これを駆動するためのキャリッジモータ65とを備えている。キャリッジ62に搭載されているインクジェットヘッド61は、そのノズル面が下向きになっており、インクジェットヘッド61の下側位置を、前後方向に水平にメディアトレイ15が往復移動するようになっている。メディアトレイ15は、一端が前後方向に水平に延びるガイド軸66によって支持され、他端がスライド可能な状態で、前後方向に水平に延びるガイドレール67によって支持されている。
【0032】
このような構成により、レーベルプリンタ11は、メディアMAをメディアトレイ15の凸部15aに保持し、図示していないトレイモータを駆動して、メディアトレイ15をガイド軸66に沿って背面側に移動させ、インクジェットヘッド61の印刷領域内まで移動させることができる。この後に、インクジェットヘッド61によって、メディアMAのレーベル面に所定の印刷を施すことができる。印刷後、メディアトレイ15は、レーベルプリンタ11の前面側のメディア受け渡し位置に位置することになる。
【0033】
そして、レーベルプリンタ11のメディアトレイ15のメディア受け渡し位置の下方には、廃棄用のメディアMDを一時的に保管するための廃棄用スタッカ52が配置されており、この廃棄用スタッカ52には、例えば30枚程度の廃棄用のメディアMDが保管可能である。メディアトレイ15が廃棄用スタッカ52の上方のメディア受け渡し位置から印刷位置へ退避した状態にて、メディア搬送機構30の搬送アーム36により、廃棄用のメディアMDを廃棄用スタッカ52に供給可能となっている。また、メディア搬送機構30により、メディアは、廃棄用スタッカ52だけでなく、メディア保管部21,22、メディアドライブ50のメディアトレイ51及びレーベルプリンタ11のメディアトレイ15間を搬送されることになる。
【0034】
また、メディア処理装置1は、カートリッジ扉4を開けると、上下方向に配列された複数のカートリッジホルダ13を有するカートリッジ装着部14(図2)が露出するようになっている。カートリッジ装着部14は、レーベルプリンタ11のインクジェットヘッド61にインクを供給するインク供給機構70の一部を構成しており、カートリッジホルダ13には、インクカートリッジ12が収容されている。
【0035】
このように、メディア処理装置1は、メディア保管部21,22やインク供給機構70等、頻繁にメンテナンスを行う機器を前面側に配置した構成であるため、ユーザは、メディア保管部21,22にメディアMA,MBを供給したり、レーベル印刷用のインクが収容されたインクカートリッジ12の交換を行ったりすることが容易に行える。なお、機構装置の各側面には、図示していない内部フレームが立設されていて、機構装置を支持すると共に上部ケース2aおよび基部ケース2bがケース止部45によって取り付けられる。
【0036】
次に、筐体2の構造について詳細に説明する。図4は、上部ケースと係合フレームとの取り付け構造を示す斜視図である。図4は、上部ケース2aを基部ケース2bの側から取り外した状態を表している。また、基部ケース2bの側へ装着された状態における上部ケース2aの直下には、既述した内部フレームの上部に設けられた係合フレーム41が位置している。この場合、基部ケース2bは、ケース止部45の止めネジが外されても、底部ケース2cの側へは取り外すことができず、装置上面または装置背面の側へスライドさせることによってのみ取り外せるようになっている。
【0037】
上部ケース2aは、係合フレーム41および操作面5の側が開放された直方体の箱型をなしており、箱型内部の係合フレーム41との対向面には、4つのL字型フック(フック)6と、操作面5側の略中央に位置する係合体8と、が設けられている。さらに、対向面の3辺に対向面と直角に立ち上がった立面には、基部ケース2bへ固定するための止めネジが貫通するケース止孔46が設けられている。また、係合フレーム41には、L字型フック6と係合するフック受口7と、係合体8と係合する係合受口9と、が設けられている。これらL字型フック6と係合体8とは、規制部に該当する。
【0038】
そして、上部ケース2aが装着される基部ケース2bの上部は、立面の操作面5の側が開放された箱型の上部ケース2aに合わせた段部が形成されている。段部には、ケース止孔46を貫通した止めネジと螺合するネジ穴47が設けられている。このような構成において、上部ケース2aの基部ケース2bへの装着は、図4に示す状態において、まず、フック受口7へL字型フック6が挿入され、且つ、係合受口9へ係合体8が挿入されるように上部ケース2aを載置する。次いで、上部ケース2aを操作面5の方向へスライド移動させる。これにより、L字型フック6とフック受口7とが係合するため、上部ケース2aを背面側の方向へスライド移動させない限り、上部ケース2aは、基部ケース2bから離反することがない。この時、上部ケース2aの操作面5の方向へのスライド移動により、係合体8と係合受口9とが係合し、上部ケース2aが背面側の方向へスライド移動しないようになっている。
【0039】
次に、このような係合の機能を有する係合体8および係合受口9の構成および作用について説明する。まず、それぞれの構成について説明する。図5(a)は、上部ケースの係合体の形状を示す斜視図、図5(b)は、係合受口の形状を示す斜視図である。係合体8は、図5(a)に示すように、上部ケース2a(図4)に固定された基体81と、基体81の一端部から基体81の両側へそれぞれ延在する2本の可撓性のアーム82と、アーム82の端部にそれぞれ設けられた係合部83と、を有している。係合部83は、三角形の形状であって、係合係止面83aおよび係合斜面83bの2辺が、アーム82に対して基体81と反対方向へ略直角をなすように突き出ている。アーム82は、基体81の一端部を中心にして撓むことができ、撓みに応じて係合部83が基体81の他端部に対して接近または離反するように揺動する。
【0040】
係合受口9は、係合フレーム41(図4)に設けられた略台形状の開口であり、図5(b)に示すように、開口へ係合体8が係合してスライド移動する。図5(b)の左半図は、上部ケース2aが装着解除され取り外し可能な状態、即ち基部ケース2bの取り外しが可能な分解時を表している。また、図5(b)の右半図は、上部ケース2aが装着された状態、即ち筐体2が組み立てられた組立時を表している。この係合受口9は、略台形の斜面部に係合体8の係合部83と係合するように2つの突起部91が形成されている。この突起部91は、係合部83と同様な三角形状であって、係合係止面83aと係合する突起係止面91aと、係合斜面83bと係合する突起斜面91bと、を有している。
【0041】
ここで、図5(b)の左半図に示すように、係合斜面83b(図5(a))と突起斜面91bとが係合している状態では、係合体8は、係合受口9に対してスライド移動が可能である。つまり、上部ケース2aがスライド移動できる状態である。この状態での筐体2が図6に示されており、図6(a)は、上部ケースを取り付ける最初の状態を示す斜視図、図6(b)は、係合体と係合受口との最初の係合状態を示す平面図である。
【0042】
図6(a)は、図4に示すような取り外された上部ケース2aが、下向き方向Pに沿って、基部ケース2bへ載置された状態を示している。この時、係合体8は、図6(b)に示すように、係合体8の係合斜面83bが係合受口9の突起斜面91bと係合するように、開口である係合受口9に挿入されている。係合斜面83bは、突起斜面91bに沿ってスライド移動が可能であって、これにより、上部ケース2aは、装置背面の側から装置前面の側の操作面5方向へスライド移動することができる。
【0043】
一方、図5(b)の右半図に示すように、係合斜面83b(図5(a))と突起斜面91bとの係合が外れ、係合係止面83a(図5(a))と突起係止面91aとが係止している状態では、係合体8は、係合受口9に係止されスライド移動が不可能である。係合体8が、図5(b)の左半図に示す状態から図5(b)の右半図に示す状態へスライド移動する時、係合斜面83bの突起斜面91bに沿う移動に伴い、アーム82は、基体81の側へ撓んで行く。そして、係合斜面83bと突起斜面91bとの係合が外れると、撓んだアーム82が元に戻り、係合係止面83aと突起係止面91aとが係止した状態となる。
【0044】
この状態での筐体2が図7に示されており、図7(a)は、上部ケースの取り付けを完了した状態を示す斜視図、図7(b)は、係合体と係合受口とが係止した状態を示す平面図である。図7(a)は、6(a)に示す載置された上部ケース2aが、操作面5方向への前向きの水平方向Qに沿って、スライド移動した状態を示している。この時、係合体8は、図7(b)に示すように、係合体8の係合係止面83aが係合受口9の突起係止面91aに係止されている。そのため、係合体8は、水平方向Qと反対の方向Rへは、スライド移動できない状態となり、さらに、L字型フック6とフック受口7との係合により、装置上面方向への移動も規制されている。そして、上部ケース2aは、止めネジ48で基部ケース2bへ完全に固定される。
【0045】
これにより、上部ケース2aは、メディア扉3を開放して筐体2の内部側からアーム82を操作して、係合係止面83aと突起係止面91aとの係止を外さなければ、取り外して装着解除することができなくなっている。つまり、ケース止部45の止めネジ48を外しても、上部ケース2aの取り外しができない。このような筐体構造を備えたメディア処理装置1は、内部に収容しているメディアの不正持ち出し等を防ぐことのできる、高度なセキュリティ性を有することになる。
【0046】
以下、実施形態におけるメディア処理装置1の筐体構造について、主な効果を記載する。
【0047】
(1)メディア処理装置1は、上部ケース2aを取り外さなくては筐体2の分解ができない筐体構造を備えている。上部ケース2aの取り外しは、上部ケース2aに設けられた規制部を筐体内部から操作するようになっていて、筐体2の外部側からのみでは、上部ケース2aを取り外して筐体2の分解をすることができない。このような構造の筐体2を備えたメディア処理装置1は、筐体2の内部へのアクセス権をもつオペレータのみが筐体2を分解でき、アクセス権をもたないオペレータ等が筐体2を分解して内部へ不正に侵入することを防止できるセキュリティ性の高いものである。
【0048】
(2)上部ケース2aに設けられた規制部は、係合体8とL字型フック6とを有する簡便な構成であって、さらに、上部ケース2aを取り外して装着を解除する係合体8の操作は、筐体2のメディア扉3を介して内部側からのみ可能で、外部側からの筐体2の安易な分解を防止することが可能である。
【0049】
また、メディア処理装置1は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0050】
(変形例1)メディア処理装置1の上部ケース2aは、メディア処理装置1の前面方向または背面方向へ水平にスライド移動する構成であるが、この構成に限定されることなく、メディア処理装置1の側面方向へスライド移動する構成や、水平方向でなく水平に対して斜め方向へスライド移動する構成等であっても良い。これにより、筐体2の形状等に応じて柔軟に規制部を設定することが可能である。
【0051】
(変形例2)
また、メディア処理装置1において、上部ケース2aを可動ケースとした構造であるが、これに限定されず、基部ケース2bの一部を別体にした部分や底部ケース2c等を可動ケースにした構造であっても良い。
【0052】
(変形例3)メディア処理装置1の規制部は、係合体8とL字型フック6とによって構成されているが、上部ケース2aの装着解除が筐体2の内部側からのみ操作できれば、この構成に限定されるものではない。例えば、L字型フック6に、係合フレーム41と係合してR方向のスライド移動を規制するための突起等をさらに設け、係合体8を廃止した構成であっても良い。この場合、筐体2の内部側から突起等を操作して、スライド移動の規制解除を行う。または、係合体8にL字型フック6の機能をも持たせて、L字型フック6を廃止した構成であっても良い。
【0053】
(変形例4)筐体2のメディア扉3は、機械錠を有して不正な開放を防止する構成であるが、機械錠に加えて、電子錠を併用しても良い。これにより、メディア処理装置1は、メディア扉3を介して行う係合体8の操作が安易になされることを確実に防止し、メディア扉3のセキュリティ性をより向上させることができる。
【0054】
(変形例5)メディア処理装置1に備えられている筐体構造は、メディア処理装置1以外の電子機器等にも備えることが可能であり、適用例として、印刷ジャーナルを収容するPOSプリンタ、複数のCDやDVD等を収容して再生するプレーヤ、着脱式記録装置を内部に搭載したコンピュータ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態にかかるメディア処理装置の外観を示す斜視図。
【図2】メディア処理装置の筐体内を前面側から見た斜視図。
【図3】メディア処理装置の筐体内を背面側から見た斜視図。
【図4】上部ケースと係合フレームとの取り付け構造を示す斜視図。
【図5】(a)上部ケースの係合体の形状を示す斜視図、(b)係合受口の形状を示す斜視図。
【図6】(a)上部ケースを取り付ける最初の状態を示す斜視図、(b)係合体と係合受口との最初の係合状態を示す平面図。
【図7】(a)上部ケースの取り付けを完了した状態を示す斜視図、(b)係合体と係合受口とが係止した状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0056】
1…メディア処理装置、2…筐体、2a…可動ケースとしての上部ケース、2b…基部ケース、2c…底部ケース、3…開閉部としてのメディア扉、4…カートリッジ扉、6…規制部およびフックとしてのL字型フック、7…フック受口、8…規制部としての係合体、9…係合受口、11…レーベルプリンタ、12…インクカートリッジ、21,22…メディア保管部、30…メディア搬送機構、41…係合フレーム、45…ケース止部、46…ケース止孔、47…ネジ穴、48…止めネジ、50…メディアドライブ、70…インク供給機構、81…基体、82…アーム、83…係合部、83a…係合係止面、83b…係合斜面、91…突起部、91a…突起係止面、91b…突起斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部側へのアクセスを規制することが可能な筐体構造であって、
前記筐体を形成する基部ケースと、
前記基部ケースへ装着されると前記基部ケースの外部側からの分解を規制し、前記基部ケースへの装着を解除されると前記基部ケースの分解を可能にする可動ケースと、
前記可動ケースの前記基部ケースへの装着を保持し、前記筐体の内部側からの操作により前記可動ケースの装着を解除する機能を有する規制部と、を備えたことを特徴とする筐体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の筐体構造において、
前記規制部は、前記可動ケースに設けられ係合体とフックとを有し、
前記可動ケースがスライド移動して前記基部ケースへ装着されると、前記係合体は前記可動ケースのスライド移動を規制し、前記フックは前記可動ケースの前記基部ケースからの離反を規制することを特徴とする筐体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の筐体構造において、
前記可動ケースは、前記筐体の内部側からの操作による前記係合体に係る規制の解除と、前記可動ケースのスライド移動による前記フックに係る規制の解除とにより、前記基部ケースへの装着が解除されることを特徴とする筐体構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の筐体構造において、
ロック機構を有する開閉部をさらに備え、
前記規制部は、開放された前記開閉部を介してのみ、操作が可能であることを特徴とする筐体構造。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の筐体構造において、
前記係合体は、前記筐体の内部側に設けられた係合受口と係合することを特徴とする筐体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の筐体構造において、
前記係合体は、係合係止面と係合斜面とを先端部に有する可撓性のアームを有し、
前記係合受口は、突起係止面と突起斜面とを有する略三角形の突起部を有し、
前記係合体と前記係合受口とが係合し前記係合体がスライド移動すると、前記係合斜面が前記突起斜面に沿って前記アームを撓ませつつ移動し、前記突起斜面との係合が外れた時点で前記アームの撓みが戻ることにより、前記係合係止面と前記突起係止面とが係止して前記可動ケースのスライド移動を規制することを特徴とする筐体構造。
【請求項7】
請求項6に記載の筐体構造において、
スライド移動の規制された前記可動ケースは、前記係合係止面と前記突起係止面との係止が解除される方向へ前記アームを撓ませることにより、スライド移動の規制が解除されることを特徴とする筐体構造。
【請求項8】
メディアへのデータの記録および前記メディアの表面へ印刷をするメディア処理装置であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の筐体構造を備えていることを特徴とするメディア処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−211785(P2009−211785A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55897(P2008−55897)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】