説明

筐体用蓋止め具及びこれを用いた発光装置

【課題】筐体の壁外面側から解除可能なロック機構を筐体の壁内面側に設けて、ロック機構がコードや衣類等に引っかかることを抑え、筐体のデザイン性を向上できる。
【解決手段】本発明に係る筐体用蓋止め具1は、筐体2に支持された開閉自在な蓋3を止める筐体用蓋止め具であって、筐体2の壁内面側に、蓋3の内面側に設けた係止部4に係止して蓋3の開き動作を阻止し且つ係止部4との係止を筐体2の壁外面側から解除可能なロック機構5を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の蓋を止める蓋止め具、及びこの止め具を用いて蓋を止める案内板、看板等の発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅のホームなどの案内板や、広告宣伝用看板等の照明式発光装置の筐体に用いられる筐体用蓋止め金具が知られている。
この筐体用蓋止め金具は、発光装置などの様々な形の筐体(例えば、駅舎や建物内外の天井、壁、ドア等に組み込んだ内蔵型のものや、或いは表示板、光源を取り付けた所望形状のフレームを吊り下げて独立型としたもの)に用いることができる。
【0003】
特許文献1には、発光装置などの筐体の蓋を止める技術が開示されている。
この技術において、筐体用蓋止め金具は、筐本体と蓋の一方に固着される取付座と、この取付座の前端部に枢着した操作レバーと、この操作レバーに枢軸で枢着された掛金と、この掛金と係合し且つ筐本体と蓋の他方に固着される受金と、掛金を後方に付勢するバネとを有している。
【0004】
この筐体用蓋止め金具によって筐体の蓋を止める際には、掛金を受金に掛け合わせた後、バネの作用に抗しながら操作レバーを下方へ押圧回転させる。操作レバーが、掛金と受金との掛合点と、枢軸とを結ぶ直線(デッドライン)を越えると、バネの付勢力によって掛金と受金とは緊密に係合することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−209639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の筐体用蓋止め金具は、筐体の壁外面側に取り付けられ外方へ膨出しているため、筐体の取付作業や部品交換作業中にコード類や作業者の衣類や等が引っ掛かる可能性がある。
これに加え、駅構内等の発光装置では、筐体外部に露出した筐体用蓋止め金具が人目につき、デザイン的にも不体裁で煩雑である。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点を鑑み、蓋の係止部との係止を筐体の壁外面側から解除可能なロック機構を筐体の壁内面側に設けることで、コードや衣類等の引っかかりを抑え、デザイン性を向上させた筐体用蓋止め具、及びこれを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
本発明に係る筐体用蓋止め具1は、筐体2に支持された開閉自在な蓋3を止める筐体用蓋止め具であって、
前記筐体2の壁内面側に、前記蓋3の内面側に設けた係止部4に係止して前記蓋3の開き動作を阻止し且つ係止部4との係止を筐体2の壁外面側から解除可能なロック機構5を設けていることを特徴とする。
【0009】
これによって、筐体2内に設けたロック機構5が筐体2の壁外面から解除操作可能であって、筐体用蓋止め具1のすべてを外部に露出させなくてもすむため、筐体2の壁外面に膨出を最小限に抑えられるとともに、筐体2のデザイン性を向上させることが可能となる。
好ましくは、前記ロック機構5は、前記筐体2の壁内面へ近接する方向に付勢されることで係止部4に係止する係止板6と、この係止板6を前記付勢に抗って筐体2の壁内面から離反させる離反手段7とを有してもよい。
【0010】
こうすることで、蓋3の係止部4に係止された係止板6は、筐体2の壁内面側に沿うように近接し、係止を外す場合でも必要最低限の距離だけ壁内面から離反させればよいため、筐体2の内方へほとんど膨出することがなく、筐体2内における他の部材用スペースを十分に確保できる。
また、前記離反手段7は、前記係止板6を筐体2の壁内面側から押圧するビット部材8を、前記筐体2の壁に設けた貫通孔9内で出退自在に配備していてもよい。
【0011】
これによって、ビット部材8を押し込むだけで簡単に係止板6の係止を外すことができると同時に、筐体2の外部に露出する部分をビット部材8だけにとどめることが可能となって、見栄え向上を図れる。
さらに好ましくは、前記筐体2の前後に蓋3がそれぞれ支持され、
前記ロック機構5を、前記前後の蓋3の係止部4に同時に係止可能となるべく前後の係止部4間にわたって配備してもよい。
【0012】
これにより、筐体2に支持された2つの蓋3を、1つのロック機構5によって開き動作を阻止でき、筐体用蓋止め具1の小型化と、構造の簡素化を図れる。
これに加えて、前記ロック機構5は、前記筐体2の壁内面へ近接する方向に中央部が付勢されることで前後の係止部4に同時に係止する係止板6と、この係止板6を前記付勢に抗って筐体2の内面に対して傾斜可能に離反させる離反手段7とを有していることも好適である。
【0013】
このような構成によって、係止板6は、係止時には筐体2の壁内面側に沿うように近接し且つ必要最低限の離反で係止が外れるため、筐体2内で省スペース化が図れると同時に、前後の蓋3の係止を1つの係止板6で兼用することができ、さらにロック機構5の小型化が図れるとともに、係止板6を傾斜可能に離反させることで、係止板6と前後一方の係止部4との係止を外したり、さらには前後両方の係止部4との係止を同時に外すすことも可能となるため、前後の蓋3のロック解除作業の容易化も図れる。
【0014】
より好ましくは、前記離反手段7は、前記係止板6の端部を筐体2の壁内面側から押圧するビット部材8を、前記筐体2の壁に前後並列して設けた貫通孔9内で出退自在にそれぞれ配備していることを特徴とする。
この特徴によって、ビット部材8の押込みによる簡単な係止解除と、筐体2の外観向上を図るとともに、係止板6における前後の端部を個別又は両方を離反させることが簡単にでき、蓋3のロック解除作業がさらに容易となる。
【0015】
本発明に係る発光装置は、前記筐体2の内部に光源10を有し、この光源10からの光で発光する発光面23が蓋3に設けられた発光装置であって、
前記蓋3を止めるべく上述した記載の筐体用蓋止め具1を備えていることを特徴とする。
これにより、筐体2を設置した後でも、内部の光源10の取換作業等がスムースに行えると同時に、人目につく筐体2底面等の見栄えをよくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、筐体の壁外面側から解除可能なロック機構を筐体の壁内面側に設けて、コードや衣類等の引っかかりを抑え、発光装置等の筐体の外観を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る筐体用蓋止め具を用いた発光装置の断面側面図である。
【図2】(a)は発光装置の平面図で、(b)は発光装置の正面図である。
【図3】発光装置の底面斜視図である。
【図4】筐体用蓋止め具のロック機構の要部斜視図である。
【図5】第2実施形態に係る筐体用蓋止め具を用いた発光装置の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1〜4には、第1実施形態に係る筐体用蓋止め具1を用いた駅構内の案内表示や、看板等の発光装置21が示されている。
発光装置21は、正面視で左右幅広に且つ略直方体状に形成され、上部から立設する取付部材22を介して駅舎、デパート等の建造物の天井Tに取り付けられる。
【0019】
図1に示すように、発光装置21は、箱型の筐体2と、この筐体2の前後側に開閉自在に支持された板状の蓋3と、筐体2内部の光源10と、この光源10からの光で発光する発光面23とを有している。
この発光面23が上述した蓋3に設けられており、また、この蓋3の開き動作を規制するロック機構5が前記筐体2の内部側に設けられている。
[発光装置21とその筐体2]
図2(b)に示す如く、筐体2は、前記蓋3を前後の開口部に取り付ける正面視で略ロ字型の外枠材24と、この外枠材24の左右側の壁内面に設けられた光源10用のソケット25と、外枠材24の上下側の壁内面に設けられた光反射用の反射部材26とを有している。
【0020】
なお、光源10は、蛍光灯や長尺円柱状のLED灯であって、上下略中央で左右方向に沿って配備されている。光源10の各端部には電源端子10aが設けられており、この電源端子10aを前記ソケット25に差し込む。このソケット25に差し込まれることで、光源10は、漏電ブレーカー27及び安定器28を介して外部電源(図示省略)に接続される。
【0021】
外枠材24は、案内板、看板等を支持するための枠部材であって、鋼材、樹脂等によって正面視で左右幅広に形成されている。外枠材24は、左右に長い略矩形の上板24aと、この上板24aの両端から下方向に延設した左右一対の側枠体24bと、左右の側枠体24bの下端間にわたって取り付けられた左右に長い略矩形の下板24cとを有している。
【0022】
これら上板24a、側枠体24b及び下板24cで筐体2の壁が形成されている。
図2(a)に示すように、上板24aの上面には、筐体2の前後側の蓋3をそれぞれ枢支するために、蝶盤等の枢支具29が各コーナー付近に(つまり合計4つ)設けられている。よって、この枢支具29の枢支軸29a回りに、前後の蓋3それぞれが揺動して外枠材24の各開口部を開閉する。
【0023】
これに加えて上板24aには、これらの枢支具29に前後を挟まれていて蓋3の開閉に支障のない位置に上述した取付部材22が設けられている。
なお、この取付部材22は、上板24aにねじ込まれた吊りボルト22aと、これを覆う支持ブラケット22bとを備えている。さらに、この支持ブラケット22bで囲まれた位置には、光源10と外部電源とを接続する電気配線用に上板24aを貫通する配線孔30が穿設されている。
【0024】
図1に示すように、上板24aの下面には、細長い略矩形状の板体を幅方向略中央にて折り曲げて断面を台形状とした台座部31(上台座部31a)が、下方突出状に上板24aの長手方向に沿って設けられている。この上台座部31aは、前記吊りボルト22aの下端部等を覆うと同時に、下面側に漏電ブレーカー27や、上述の反射部材26が取り付けられている。
【0025】
この反射部材26は、細長い略矩形状の板体を幅方向略中央にて折り曲げて(つまり、側面視で略V字形状と)形成した反射板であって、表面(略V字形状外側の面)に反射性塗料を塗布している。反射部材26の二股に分かれた両端部(両基端部)26aは、上台座部31aにビス等を介して取り付けられ、反射部材26は、上下略中央に配置された光源10から所定距離はなれた位置まで下方突出している。
【0026】
反射部材26を上述のように配備することで、反射部材26は、光源10から離れるにつれて前後の発光面23に近づくこととなるため、光源10から遠い部位においても発光面23において十分な光量を確保できる。
側枠体24bは、断面略U字状の柱体であって、内部には前記安定器28や、光源10によって発生する熱を外部に逃がすために、換気手段(図示省略)が設けられている。側枠体24bの上面には、防虫ネットを備えた熱抜き孔32が設けられている(図2(a)参照)。
【0027】
各側枠体24bの左右内側面(外枠材24の左右側の壁内面)には、前記ソケット25が上下方向の略中央位置に内方突出状に設けられている。
図1に示す如く、下板24cは、上板24aと同様に、台座部31(下台座部31b)と、上述のような反射部材26とが設けられており、光源10から離れることで光が弱まっても、前後の発光面23へは十分な光を反射できる。
【0028】
なお、下台座部31bと下板24c上面との間には、所定の空間Kがある。
[発光装置21の蓋3]
図1及び図2(b)に示す如く、前記蓋3は、板材で形成された発光面23と、この発光面23を取り囲んで支持する略ロ字型の枠部材とを有している。
発光面23は、透光性のあるアクリル、セラミック等の部材で形成されており、発光面23の内部側(裏側)に光を照射することで、発光面23を介して筐体2の外部へ光が出射される。また、発光面23の表面には、案内及び業務表示や、貼り紙、貼り札などの広告物等が刻印又は貼り付けられている。
【0029】
なお、発光装置21を照明器具として用いた際には、発光面23は採光面の役割を果たす。
蓋3の上部は、前記外枠材24の上面(上板24a上面)に枢支具29によって開閉自在に枢支されている(つまり、蓋3は上部側が枢支端となる)。また、蓋3の自由端である下部には、筐体2側の係止板6と係止する係止部4が設けられている。
【0030】
この係止部4は、蓋3の下端部の内面から内方へ突出した先細り状の係止突起4aと、この係止突起4aの先端部に設けられた係止溝4bとを有している。この係止溝4bは、係止突起4aの上面側で左右に延び且つ上方開口状に形成されている。
[ロック機構5]
前記ロック機構5は、上述した空間K内の下板24c上面(つまり、筐体2の壁内面)に左右方向に所定間隔を空けて複数(本実施形態においては、2つ)設けられており、蓋3の前記係止部4に係止して蓋3の開き動作を阻止すべく下記構成となっている。
【0031】
図1、4に示す如く、ロック機構5は、外枠材24の下板24cの上面(筐体2の壁内面)に取り付けられた板台座33と、この板台座33に支持された状態で前記蓋3の係止部4と係止する略矩形状の係止板6と、この係止板6のピン孔6cに遊嵌する支持ピン34と、この支持ピン34に止められて係止板6を下方(筐体2の壁内面)側へ近接する方向に付勢する付勢手段35と、筐体2の壁(板台座33及び下板24c)の貫通孔9内で出退自在で且つ下端部が外部に露出したビット部材8とを有している。
【0032】
このロック機構5によって、蓋3は下端部が外枠材24に係止して閉じた状態で保持され、筐体2の壁下面の外部からビット部材8を押し込むことで、付勢手段35の付勢力に逆らって係止板6が上昇し、係止板6と係止部4との係止が外れ、蓋3を上方に開くことが可能となる。
[板台座33、係止板6、ビット部材8等]
前記板台座33は、長手方向が前後に沿うように下板24cの上面に取り付けられた略直方体部材であって、この上面に前記係止板6が嵌り込み可能な幅広の溝33aが形成されている。この溝33a底面の略中央には前記支持ピン34をねじ込むべく雌ネジが切られた螺合穴33bが設けられ、この螺合穴33bの前後には、ビット部材8を摺動自在に支持する前記貫通孔9(厳密には、貫通孔9の一部)が穿設されている(図4参照)。
【0033】
この貫通孔9は、下部(下板24cに近い部分)が上部よりも径小な孔径小部9aが設けられ、この孔径小部9aと前記上部(孔径大部9b)との間に孔段差9cが形成されている。
なお、下板24cには、板台座33を取り付けた際に孔径小部9aと連通する連通孔37が設けられており、以下は、この連通孔37も含めて、筐体2の壁に設けた貫通孔9とする。
【0034】
また、板台座33には、前後面の下部から前後方向の外方へ突出した薄板状の脚部33cが設けられている。これら前後の脚部33cの突端が下台座部31bの前後の内面に当接することで、板台座33がロック解除操作によってずれるのを防いでいる(図1参照)。
なお、前記係止部4の係止突起4aは、下台座部31bに設けられた進入孔36をくぐって、空間K(下台座部31b)内の板台座33の脚部33c上方へ進入してくる。
【0035】
図1、4に示すように、前記係止板6は、長手方向が前後に沿うように配置される横長の板材である。
係止板6の前後端から下方(筐体2の壁内面側)へ延設された鉤部6aがそれぞれ形成されている。この鉤部6aにおける延設幅は、係止板6が溝33a底面に当接した際には、蓋3が閉じて下台座部31bの進入孔36に進入した係止突起4aの係止溝4bに、鉤部6aが係止可能となる長さに設定されている。
【0036】
また、係止板6の長さ(前後の鉤部6a間の距離)は、係止板6が溝33a底面に当接している時には、前後の蓋3の係止部4に同時に係止可能となるべく前後の係止部4間にわたって係止板6が掛け渡せるように設定されている。
これにより、筐体2に支持された2つの蓋3を、1つのロック機構5(係止板6)で兼用して開き動作を阻止でき、筐体用蓋止め具1の小型化と、構造の簡素化を図れる。
【0037】
なお、鉤部6a先端の前後外側は、面取りされており、この面取り部6bによって、先細り状の係止突起4aが鉤部6aと係止する位置まで進入しやすくなっている。
係止板6の略中央には、板厚方向に貫通するピン孔6cが穿孔されており、このピン孔6cの直径は、前記支持ピン34の直径より若干大きく設定されている。
前記支持ピン34は、フランジ状の頭部34aを備え、ピン軸方向中途部から下部にかけて雄ネジ部34bが形成されている。
【0038】
したがって、この雄ネジ部34bを板台座33の螺合穴33bにねじ込むことで、支持ピン34が板台座33の溝33a底面から立設し、且つ支持ピン34の頭部34aは溝33a底面から所定高さL(頭部高さL)に位置する。
前記付勢手段35は、コイル状の圧縮バネ35(押しバネ)であって、その内径は、前記支持ピン34及び係止板6のピン孔6cよりも大きく、且つ前記支持ピン34の頭部34aの直径よりも小さく形成されている。
【0039】
圧縮バネ35の長さは、圧縮されない自然長で前記頭部高さLよりも長く形成されている。ゆえに、この圧縮バネ35と係止板6とを支持ピン34に遊嵌して、支持ピン34の雄ネジ部34bを板台座33の螺合穴33bにねじ込めば、常時、係止板6のピン孔6c周辺部を下方(筐体2の壁内面に近接する方向)へ押圧(付勢)することとなる。
この圧縮バネ35による下方への付勢によって、係止板6は溝33a底面に当接した状態となり、係止板6の各鉤部6aは前後の係止部4に同時に係止する。
【0040】
上述したように、係止板6は、係止時には筐体2の壁内面側に沿うように近接し且つ必要最低限の離反で係止が外れる構成となっているため、係止板6の近接離反距離さえ確保できれば、既存の下台座部31b(空間K)内にロック機構5を内蔵可能となり、筐体2内で省スペース化が図れる。
また、圧縮バネ35は、係止板6のピン孔6c周辺部(つまり、略中央部)だけを押圧し且つピン孔6cは支持ピン34との間に隙間を形成した状態で遊嵌されている。
【0041】
このため、係止板6は、板台座33の上で、溝33a底面(筐体2の壁内面)に対して傾斜可能、すなわち、係止板6における前後少なくとも一方の端部だけが、溝33a底面から離反して片持ち上がり可能となっている。
図1、図3に示すように、前記ビット部材8は、略円柱状の胴部8aと、この胴部8aの一端側に設けられた先細り状の当接部8bと、胴部8aの他端側に設けられた胴部8aより径が小さいビット径小部8cとを有している。このビット径小部8cと胴部8aとの間にはビット段差8dが形成されている。
【0042】
ビット部材8は、胴部8aが貫通孔9の孔径大部9bより若干径小で、ビット径小部8cが孔径小部9a及び連通孔37よりも若干径小に形成されており、貫通孔9内を出退自在に摺動できる。
また、ビット部材8は、胴部8aの長さが貫通孔9の孔径大部9bと略同一で、ビット径小部8cの長さが孔径小部9a及び連通孔37の孔長さの合計長さよりも長く形成されている。
【0043】
よって、図1中の実線に示されたように、ビット部材8は、前記ビット段差8dが貫通孔9の孔段差9cに係止したときには、当接部8bの先端が板台座33の溝33a底面と略同じ高さに位置し且つ下方に付勢された係止板6の下面(筐体2の壁内面に近い側の面)に略当接する。
また、ビット段差8dが孔段差9cに係止するため、ビット部材8の貫通孔9からの抜止めがなされている。さらにビット段差8dが孔段差9cに係止したときには、下板24cの下面(筐体2の壁外面)からビット部材8のビット径小部8cが外方へ突出することとなる。
【0044】
したがって、図1中の仮想線に示す如く、突出したビット径小部8cを圧縮バネ35の付勢力に抗って押し込むことで、ビット部材8が貫通孔9内に退き、当接部8bが係止板6の下面を押圧して、係止板6を板台座33(筐体2の壁内面)から離反させられる。
この係止板6の離反によって、係止板6の鉤部6aと蓋3の係止部4との係止が外れ、蓋3を開くことが可能となる(図1中の仮想線参照)。
【0045】
一方、係止板6は圧縮バネ35によって下方に付勢されているため、ビット径小部8cの押し込みを解くと、ビット部材8は貫通孔9内を下方(筐体2の壁外面側)へ摺動して再びビット径小部8cが下板24cの下面から外方へ突出することとなる。
これによって、筐体2内に設けたロック機構5が筐体2の壁外面から解除(蓋3の開き)操作可能となり、筐体用蓋止め具1のすべてを外部に露出させずとも、ビット径小部8cが突出させるだけですむため、筐体2の壁外面での膨出を最小限に抑えられるとともに、筐体2の外観を向上させられる。
[前後いずれか又は両方の係止解除]
図3には、上述したように貫通孔9が支持ピン34を挟んで前後に設けられているため、ビット部材8の径小部8cは前後に並んで2箇所に突出していることが示されている。
【0046】
このとき、前後のビット径小部8cのいずれかを押し込めば、押し込んだ側の係止板6の端部を片持ち上げ、つまり、係止板6が板台座33の溝33a底面(筐体2の壁内面)に対して前後方向に傾斜して離反する。
したがって、係止板6が傾斜して離反すると、係止板6の前後端部のうち片持ち上がりした側の鉤部6aのみが、同じ側の蓋3の係止部4との係止を外すことが可能となる。
【0047】
これに加えて、前後のビット径小部8cを両方一度に押し込めば、係止板6が略水平(板台座33の溝33a底面に対して略平行)を保ったまま上方に移行(筐体2の壁内面から離反)することもできる。この場合には、係止板6と前後両方の係止部4との係止を同時に外すことも可能となる。
したがって、前後蓋3の開き動作の必要に応じて、臨機応変なロック解除が容易に行える。
【0048】
なお、2組のビット部材8及び貫通孔9によって、係止板6を板台座33から離反させる離反手段7が構成されている。
[筐体用蓋止め具1の使用態様]
図1〜4に示した筐体用蓋止め具1の使用態様を説明する。
すでに設置している発光装置21に対して、筐体2内部の光源10等の部品取換や、修理作業などをする際には、筐体2自体の設置位置(駅舎等の天井Tや建物の壁面W近傍など)、取り換える部品の大きさに応じて、前後いずれか又は両方の蓋3を開く必要がある。
【0049】
そこで、作業者は、開きたい蓋3側のビット部材8を押し込んで、係止板6と係止部4との係止を外すこととなる。
また、案内表示や看板などの発光装置21は、人目を引くために高い位置に取り付けられていることがほとんどであるが、作業者が脚立等で作業を行ったとしても、筐体2外部に突出したビット径小部8cを押し込むだけで蓋3のロック解除ができるため、作業が非常に容易にできる。
【0050】
さらに、ロック機構5のうちビット径小部8cしか外部に突出していないため、作業中にコード類や衣類の引っかかりを抑えられ、目立つ筐体2下面もすっきりとしたデザインとなる。
発光装置21の光源10取換等が完了した後、光源10に電流を供給し発光面23に光を照らすことで、案内表示、広告物等を浮かび上がらせ人目を引く。
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態を説明する。
【0051】
図5には、本発明の第2実施形態に係る筐体用蓋止め具1を備えた発光装置21が示されている。
第2実施形態に係る筐体用蓋止め具1が第1実施形態と最も異なるところは、筐体2の前面(片面)にのみ蓋3を有する点にある。
したがって、係止板6は、前側の鉤部6aが係止部4の係止溝4bに係止して、前面川の蓋3の開き動作を阻止することとなる。
【0052】
なお、図5では、係止板6は後側にも鉤部6aが設けられ、ビット部材8及び貫通孔9は支持ピン34の後側にも配備されているが、これらはなくてもよい。
また、発光装置21は、蓋3のない筐体2後面側を壁面Wに取り付けており、外枠材24の上板24aに取付部材22は設けられていない。
その他の作用効果は第1実施形態と略同様である。
【0053】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。筐体用蓋止め具1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
筐体用蓋止め具1は、発光装置21の筐体2の蓋3を止めるものであったが、配電盤、キュービクルなどの密閉用筐体2の蓋3を止めるために用いてもよい。
筐体2は、略直方体状に形成されていなくとも、略円柱状であってもよい。
【0054】
ロック機構5は、係止板6を押圧するビット部材8端部を外部に露出させていたが、筐体2の壁外面側から係止部4との係止を解除できるのであれば、係止板6の一部を外部に露出したり、係止板6とビット部材8とを一体とするなどいずれの構成であってもよい。 係止板6は、筐体2の壁内面へ近接する方向に付勢されていたが、逆に、筐体2の壁内面から離反する方向に付勢してもよい。この場合、係止板6の鉤部6aは上方へ延設し、係止突起4aの係止溝4bは下方開口状に形成される。
【0055】
また、係止板6は、外枠材24の下板24cの前後幅より長くともよく、この際には、下台座部31bに設けた孔から係止板6の鉤部6aを前後に露出させ、この鉤部6aと係止可能な開口部を、蓋3の下端部内面に係止部4として設けることとなる。
付勢手段35は、圧縮バネであったが、係止板6を所望方向に付勢するのであれば、コイル状の引張バネや、板バネ等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、案内板、看板等の発光装置や、配電盤、キュービクルなどの筐体の蓋を止める蓋止め具、及びこの止め具を用いて蓋を止めるに関する発光装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 筐体用蓋止め具
2 筐体
3 蓋
4 蓋の係止部
5 ロック機構
6 係止板
7 離反手段
8 ビット部材
9 貫通孔
10 光源
21 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(2)に支持された開閉自在な蓋(3)を止める筐体用蓋止め具であって、
前記筐体(2)の壁内面側に、前記蓋(3)の内面側に設けた係止部(4)に係止して前記蓋(3)の開き動作を阻止し且つ係止部(4)との係止を筐体(2)の壁外面側から解除可能なロック機構(5)を設けていることを特徴とする筐体用蓋止め具。
【請求項2】
前記ロック機構(5)は、前記筐体(2)の壁内面へ近接する方向に付勢されることで係止部(4)に係止する係止板(6)と、この係止板(6)を前記付勢に抗って筐体(2)の壁内面から離反させる離反手段(7)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の筐体用蓋止め具。
【請求項3】
前記離反手段(7)は、前記係止板(6)を筐体(2)の壁内面側から押圧するビット部材(8)を、前記筐体(2)の壁に設けた貫通孔(9)内で出退自在に配備していることを特徴とする請求項2に記載の筐体用蓋止め具。
【請求項4】
前記筐体(2)の前後に蓋(3)がそれぞれ支持され、
前記ロック機構(5)を、前記前後の蓋(3)の係止部(4)に同時に係止可能となるべく前後の係止部(4)間にわたって配備していることを特徴とする請求項1に記載の筐体用蓋止め具。
【請求項5】
前記ロック機構(5)は、前記筐体(2)の壁内面へ近接する方向に中央部が付勢されることで前後の係止部(4)に同時に係止する係止板(6)と、この係止板(6)を前記付勢に抗って筐体(2)の内面に対して傾斜可能に離反させる離反手段(7)とを有していることを特徴とする請求項4に記載の筐体用蓋止め具。
【請求項6】
前記離反手段(7)は、前記係止板(6)の端部を筐体(2)の壁内面側から押圧するビット部材(8)を、前記筐体(2)の壁に前後並列して設けた貫通孔(9)内で出退自在にそれぞれ配備していることを特徴とする請求項5に記載の筐体用蓋止め具。
【請求項7】
前記筐体(2)の内部に光源(10)を有し、この光源(10)からの光で発光する発光面(23)が蓋(3)に設けられた発光装置であって、
前記蓋(3)を止めるべく請求項1〜6のいずれかの1項に記載の筐体用蓋止め具(1)を備えていることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7298(P2012−7298A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141635(P2010−141635)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(598160225)
【出願人】(503388511)株式会社阪急アドエージェンシー (4)
【Fターム(参考)】