説明

筒状ワークの周壁に加工孔を穿孔する加工器具。

【課題】パンチが進退する際に筒状ワークに当接する直前までパンチの横ずれを防止することができて、加工孔の位置精度を高めることができる加工器具を提供する。また、従来からある1方向の垂直プレス装置によって、筒状ワークの周囲に複数の加工孔を穿孔することができる加工器具を提供する。
【解決手段】第1穿孔器具は、第1パンチ11、第2パンチ12、これらのパンチを誘導する第1誘導ピン21及び第2誘導ピン22、これら第1誘導ピン21及び第2誘導ピン22の動きをそれぞれ制御する第1スライド部材31及び第2スライド部材32、並びにこれらを支持する第1支持用治具41を備えている。第1スライド部材31及び第2スライド部材をスライドさせることによって、第1誘導ピン21及び第2誘導ピンを介して、第1パンチ11及び第2パンチ12を進退させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄パイプ、プラスチックパイプ等の筒状ワーク周壁の外側から加工して、周壁に加工孔を穿孔する加工器具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、鉄パイプ、プラスチックパイプ等の筒状ワークの周壁に加工孔を穿孔する装置として、特許文献1記載の方法がある。特許文献1に記載された装置では、筒状ワークに複数の孔加工を行う際に、加工ポジションの周囲に配設したパンチによってワークに孔加工を行う複数のプレス装置と、2つのワーク保持部より構成されているものである。この装置によれば、2つのワーク保持部が進退可能なスライドプレート上に配置し、そしてスライドプレートの進退動作によって、2つのワーク保持部は孔加工を行う加工ポジションと、ワークの供給排出を行うローディングポジション間を交互に切り替わるというものである。これによって、プレス孔加工装置の小型化と作業時間の短縮が可能になるというものである。
【0003】
しかし、このプレス機はパンチの後端を保持して進退させるものであるため、パンチ自体が進退する際に横ブレをする可能性があった。そのため、特に加工孔を空ける面が曲面であるパイプの場合は、パンチの先端が周壁に触れた瞬間にずれて、加工孔の位置に大きな加工誤差が発生しやすいという問題があった。
【0004】
また、鉄パイプ等の筒状ワークに複数の加工孔をパイプに開ける場合、パンチの方向が360°にわたるため、型の作製、パンチの方向、これらのパンチを構成するためのカムスライドの配置、プレス装置の配置等種々の考慮が必要であり、加工孔の配置によっては、複数の工程が必要であったり、大掛かりな装置が必要であったりするという課題があった。特許文献1記載の方法によっても、プレス機を複数用意しなければならず、設備にコストがかかるものであった。また、台の下面側に各パンチを可動させるためのプレス装置を設置しなければならず、非常に大がかりな装置になっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−254303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこうした課題を鑑みてなされたものであり、パンチが進退する際に筒状ワークに当接する直前までパンチの横ずれを防止することができて、加工孔の位置精度を高めることができる加工器具を提供することにある。また、器具の周囲にパンチごとにカムスライドや複数のプレス装置を設置する必要がなく、従来からある垂直プレス装置に設置するだけで、筒状ワークの周囲に複数の加工孔を穿孔することができる加工器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明の加工器具は、パイプ、管等の筒状ワークの周壁を外側から加工する加工器具において、
端部に加工部を有する柱状のパンチ部材と、
前記パンチ部材と十字状に組まれて、前記パンチ部材の進退を誘導する柱状の誘導部材と、
前記パンチ部材と前記誘導部材とを内部に配置可能な貫通溝を有し、前記貫通溝内の前記誘導部材の位置に応じて前記パンチ部材の進退位置を決定する柱状の制御部材と、
前記パンチ部材、前記誘導部材及び前記制御部材を内部に配置する支持部材と、を備え、
前記制御部材は前記支持部材内をスライド可能であり、
前記パンチ部材及び前記誘導部材は前記支持部材内で前記制御部材のスライド方向への移動を防止されてなり、
前記制御部材をスライドすることによって、前記誘導部材の前記貫通溝内の位置を変化させることにより、前記パンチ部材の進退を制御可能であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の加工器具は、パンチ部材及びこのパンチ部材を誘導する誘導部材を内部に配置している制御部材を有し、この制御部材を支持部材内でスライドさせることでパンチ部材を進退させて筒状ワークに穿孔する加工器具である。パンチ部材が制御部材内部の貫通溝に配置されているので、貫通溝の内壁面によりパンチ部材の横ぶれを防止することができる。また、パンチ部材の進退をパンチ部材の中央付近で十字状に組まれている誘導部を可動させて行わせているので、パンチ部材の後端部をプレス機で進退させる場合と比較して、パンチ部材の傾く軸が後端部より加工部に近くなる。そのため、パンチ部材の横ずれを効果的に防止することができる。従って、より位置精度の高い加工孔を筒状ワークに穿孔することができる。
【0010】
また、パンチ部材を移動させる機構(誘導部材及び制御部材)が支持部材内に配置されているので、支持部材の外側にパンチ部材に直結するプレス装置等を配置する必要がなく、従来の機器と比較してコンパクトな加工器具とすることができる。また、プレス装置の底板側に加工孔を穿孔する場合であっても、プレス装置の底板裏側に様々な装置等を配置する必要はない。さらに、特にパンチ部材そのものを直接プレス装置に取り付ける必要がなく、制御部材をスライドすることでパンチ部材を進退させることができるので、制御部材のみスライド可能な器具を用いれば、通常の垂直プレス装置を利用して筒状ワークを加工することができる。
【0011】
さらに、パンチ部材は、誘導部材によって進退方向にのみ駆動されるので、貫通溝の側面に力がかかるのを防止することができる。従って、貫通溝やパンチ部材の側面が摩耗するのを防止することができる。
【0012】
さらに、本発明の加工器具は、構造が単純で、かつ構成部品が少ないためにメンテナンス性にも優れる。また、加工の際も大がかりな専用機を必要とすることなく、既存のプレス装置に装着して加工することができ、設備投資を最小限に抑えることができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記貫通溝は、前記パンチ部材と同様の幅を有し、かつ前記制御部材の長軸と同様の方向の軸を有する、前記制御部材の周壁面から反対側の面まで貫通する長孔からなるパンチ部材用貫通溝と、前記誘導部材と同様の幅を有し、前記パンチ部材用貫通溝と直交するように前記制御部材の周壁面から反対側の面まで貫通し、かつ前記制御部材の長軸に対して角度を有する長孔又は弧状の長孔からなる誘導部材用貫通溝とを備えるものであってもよい。係る構成を採用することにより、制御部材の位置に応じて誘導部材の位置を確実に制御することができ、結果として、パンチ部材の進退を制御することが可能になる。また、誘導部材用貫通溝の制御部材の軸との傾き具合によって、制御部材とパンチ部材との相対移動距離を変更することができる。従って、この相対移動距離を調整することによって、パンチ部材のパイプに与えるプレス圧を調整することができる。また、制御部材の移動距離が同じであっても、パンチ部材の移動距離(ストローク)を調整することができる。
【0014】
前記支持部材は、前記パンチ部材及び前記誘導部材を前記支持部材の外側から設置可能に構成してもよい。係る構成を採用することによって、支持部材をコンパクトに形成することができ、容易に組み立てることができるようになる。
【0015】
さらに、本発明において、前記支持部材は、前記パンチ部材の一方端部及び他方端部のいずれをも収納可能な前記パンチ部材と同径の挿通孔からなるパンチ部材用孔が設けられていてもよい。係る構成を採用することによって、パンチ部材の両端が支持部材のパンチ部材用孔によって規制されているので、進退方向以外の方向への移動が防止されることになる。従って、パンチ部材の横ぶれが抑えられ、さらに位置精度が高い加工孔を筒状ワークに空けることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記支持部材は、前記筒状ワークを固定可能な筒状ワーク用固定部を備えていてもよい。係る構成を採用することによって、支持部材内に筒状ワーク及びパンチ部材の両方が配置されるので、別々に設置する場合と比較して、互いの位置の誤差を最小限に抑えることができる。そのため、より位置精度の高い加工孔を筒状ワークに設けることができる。
【0017】
さらに、本発明において、前記支持部材は、内側支持部材と前記内側支持部材を収容可能な収容部を有する外側支持部材とからなり、前記内側支持部材は円筒形をなし、外側支持部材内で回動可能に設けられていてもよい。係る構成を採用することにより、外側支持部材に対して内側支持部材の位置を調整することができ、パンチ部材の位置を調整することができる。従って、筒状ワークに開ける加工孔の位置の微調整を行うことができる。
【0018】
さらに、本発明において、複数の前記パンチ部材と、前記誘導部材と、前記制御部材とを備えてなり、前記支持部材は、複数の前記パンチ部材と、前記誘導部材と、前記制御部材とを内部に配置可能であってもよい。係る構成を採用することによって、筒状ワークの同じ円周内又は近傍に異なる角度の加工孔を設けることができる。しかも、従来のようにカムスライドを複数設けたり、複数のプレス装置を用いる必要がないので、狭い角度の隣り合った加工孔を設けることができる。
【0019】
さらに、本発明において、前記制御部材は、前記パンチ部材と前記誘導部材とを内部に配置する貫通溝を複数備えていてもよい。係る構成を採用することによって、筒状ワークの軸上の異なる位置に加工孔を穿孔することができる。
【0020】
さらに、本発明において、前記制御部材の可動方向と異なる方向からのプレスを前記制御部材のスライド方向へ変換する変換装置をさらに備えていてもよい。係る構成を採用することによって、従来の垂直型のプレス装置に取り付けるだけで制御部材をスライドさせることができ、筒状ワークの穿孔加工を行うことができる。
【0021】
また、本発明に加工器具において、複数の前記誘導部材用貫通溝の少なくとも1つは、長孔の角度又は形状が異なるものであってもよい。係る構成を採用することにより、誘導部材用加工孔の形状に応じて、それぞれ複数のパンチ部材の移動距離、移動開始時期を異ならせることができ、筒状ワークに対してパンチ部材が加工するタイミングをずらすことができる。そのため、複数の加工孔を穿孔する場合に、一度に同じタイミングで加工孔を開ける場合と比較して、弱い圧力で制御部材を移動することができる。
【0022】
さらに、本発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の加工器具を用いた筒状ワークの加工方法であって、
加工器具に筒状ワークを取り付ける工程と、
前記加工器具の制御部材をスライドさせる工程と、
からなることを特徴とする筒状ワークの加工方法とするものである。
係る構成を採用することによって、複数の異なる位置、角度を有するパイプを通常のプレス機を使用して加工することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る加工器具によれば、パンチ部材が筒状ワークに当接する直前までパンチ部材の横ずれを防止することができて、加工精度の高い加工孔開けることができる。また、1つのプレス装置によって、筒状ワークの周囲に複数の加工孔を穿孔することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを備えた穿孔用型110を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る穿孔器具100の第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを構成する部品のみを図示した斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る穿孔器具100の第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを構成する部品を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの第1パンチ11及び第2パンチ12の構成を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの第1スライド部材31を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの第1支持用治具41を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの組み立ての工程の一部を示す斜視図である。
【図8】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの組み立ての工程の一部を示す斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの組み立ての工程の一部を示す斜視図である。
【図10】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの組み立ての工程の一部を示す斜視図である。
【図11】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの組み立ての工程の一部を示す斜視図である。
【図12】第1実施形態に係る第1穿設器具100aの第1パンチ11、第2パンチ12、第1誘導ピン21、第2誘導ピン22、第1スライド部材31、第2スライド部材32及び鉄パイプ80が支持用治具41内に配置された状態を示す内部斜視図である。
【図13】第1実施形態に係る第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを備えた穿孔用型110のカム器具を示す斜視図である。
【図14】第1実施形態に係る穿孔用型110の芯金固定部材60を示す斜視図である。
【図15】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの穿孔工程の一部を示す断面図である。
【図16】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの穿孔工程の一部を示す断面図である。
【図17】第1実施形態に係る第1穿孔器具100aの穿孔工程の一部を示す断面図である。
【図18】第2実施形態に係る第4穿孔器具100dを示す斜視図である。
【図19】第2実施形態に係る第4穿孔器具100dの分解斜視図である。
【図20】第2実施形態に係る第4穿孔器具100dの内側支持用治具47を示す斜視図である。
【図21】誘導部材用貫通溝の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0026】
本発明の第1実施形態を説明するにあたり、第1実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態における穿孔器具100(第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b、第3穿孔器具100c)及びカム器具90が加工器具に相当し、鉄パイプ80が筒状ワークに相当し、第1パンチ11、第2パンチ12及び第3パンチ13がパンチ部材に相当し、第1誘導ピン21、第2誘導ピン22及び第3誘導ピン23が誘導部材に相当し、第1スライド部材31、第2スライド部材32及び第3スライド部材33が制御部材に相当し、第1貫通溝31a及び第1スライド溝31b、第2貫通溝32a及び第2スライド溝32b、並びに第3貫通溝33a及び第3スライド溝33bがそれぞれ貫通溝に相当し、第1貫通溝31a、第2貫通溝32a及び第3貫通溝33aがそれぞれパンチ部材貫通溝にし、第1スライド溝31b、第2スライド溝32b及び第3スライド溝33bがそれぞれ誘導部材用貫通溝に相当し、第1パンチ用孔41d、第2パンチ用孔41f、第3パンチ用孔43d、第4パンチ用孔44dがパンチ部材用孔に相当し、第1鉄パイプ用挿入孔41a、第2鉄パイプ用挿入孔43a及び第3鉄パイプ用挿入孔44aが筒状ワーク用固定部に相当し、第1支持用治具41、第2支持用治具43及び第3支持用治具44が支持部材に相当し、カム器具90が変換装置に相当する。
【0027】
図1は、第1実施形態に係る複数の穿孔器具100(第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b、第3穿孔器具100c)を備えた穿孔用型110を示す斜視図である。穿孔用型110は、主として、複数の穿孔器具100と、垂直プレスのプレス方向を水平方向への移動に変換するカム器具90と、これらの器具を固定する底板120とを備えている。
【0028】
図2は、第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを構成する部品のみを図示した斜視図である。図3は、第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cを構成する部品を分解した分解斜視図である。
【0029】
第1穿孔器具100aは、図2及び図3に示すように、第1パンチ11、第2パンチ12、これらのパンチを誘導する第1誘導ピン21及び第2誘導ピン22、これら第1誘導ピン21及び第2誘導ピン22の動きをそれぞれ制御する第1スライド部材31及び第2スライド部材32、並びにこれらを支持する第1支持用治具41を備えている。
【0030】
第1パンチ11は、図4Aに示すように、全体が円柱状をなしており、中央に第1誘導ピン21を内側に挿入するための第1誘導ピン挿入用貫通孔11aが軸αと直交するように設けられている。第2パンチ12は、図4Aに示すように、全体が円柱状をなしておりその周壁の一部が平面12dに形成されている。第2パンチ12の中央に第2誘導ピン22を内側に挿入するための第2誘導ピン挿入用貫通孔12aが軸βと直交するように設けられている。第1パンチ11及び第2パンチ12の端部は、加工される鉄パイプ80(図3)の孔の大きさ、形状等と同様の断面を有する刃部11b、12bがそれぞれ備えられていて、それぞれ加工部を形成する。刃部11bは断面が円形であり、刃部12bは断面が楕円形である。
【0031】
第1誘導ピン21は、第1誘導ピン挿入用貫通孔11aの内径とほぼ同径の外径を有する円柱部材である。第1誘導ピン21は、図4Bに示すように、第1誘導ピン挿入用貫通孔11aの内側にスライド自在に挿入され、第1誘導ピン固定ネジ11c(螺合部は省略してある。)によって第1パンチ11の後端からの延びるネジ孔11eを通して固定され、第1パンチ11及び第1誘導ピン21は、十字状の部材をなす。第2誘導ピン22も同様に第2誘導ピン挿入用貫通孔12aの内側に挿入され、第2誘導ピン固定ネジ12cによって第2パンチ12の後端から延びるネジ孔12eを通して固定され、第2パンチ12及び第2誘導ピン22は、十字状の部材をなす。
【0032】
第1スライド部材31は、図5Aに示すように、四角柱状の鉄の部材からなる。4つの周壁の一つの周壁面から反対側の周壁面まで貫通する第1貫通溝31aが設けられている。この第1貫通溝31aは、第1パンチ11の直径とほぼ同様の幅に形成された長孔に形成され、第1スライド部材31の長軸方向γと同様の軸を有するように設けられている。第1パンチ11は組み立てられた際に、図5Bに示すように、第1貫通溝31a内に配置され、第1貫通溝31a内を自在にスライドすることができる。一方、第1貫通溝31aと直交するように周壁面から反対側の周壁面に貫通する第1スライド溝31bが設けられている。第1スライド溝31bの長軸δは、第1誘導ピン21の直径とほぼ同様の幅に形成された長孔に設けられており、第1スライド部材31の長軸方向γに対して、角度(ε)を有するように斜めに配置されている。第1スライド溝31bは、第1誘導ピン21を自在にスライドさせることができる。第2スライド部材32も第1スライド部材31と同様に、第2貫通溝32a及び第2スライド溝32bが設けられる(図3参照)
【0033】
第1支持用治具41は、図6、図7に示すように、主として、鉄パイプ80を挿入し、周囲を位置決めして挿入ζ方向以外の方向への移動を防止するための第1鉄パイプ用挿入孔41aと、第1スライド部材31を挿入し、周囲を位置決めして挿入方向以外の方向への移動を防止するための第1スライド部材用孔41bと、第2スライド部材32を挿入し、周囲を位置決めして挿入方向以外の方向への移動を防止するための第2スライド部材用孔41cと、第1パンチ11を挿入し、周囲を位置決めし、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第1パンチ用孔41dと、第1誘導ピン21を、第1パンチ11の進退方向と同じ方向へ一定距離移動可能であるが、第1スライド部材31の軸方向への移動を防止する第1誘導ピン用スライド孔41eと、第2パンチ12を挿入し、周囲を位置決めして挿入方向以外の方向への移動を防止するための第2パンチ用孔41fと、第2誘導ピン22を第2パンチ12の進退方向と同じ方向へ一定距離移動可能であるが、第2スライド部材32の軸方向へ移動を防止するための第2誘導ピン用スライド孔41gと、を備えている。
【0034】
第1鉄パイプ用挿入孔41aは、鉄パイプ80の外径とほぼ同様の長さの内径を有する。これによって、第1鉄パイプ用挿入孔41aに挿入された鉄パイプ80は位置決めされ、第1パンチ11又は第2パンチ12によって加工孔が穿孔される際に、鉄パイプ80に圧力がかかっても、鉄パイプ80の移動が防止される。これにより、精度の高い加工孔を設けることができる。
【0035】
第1スライド部材用孔41bは、第1スライド部材31の断面とほぼ同様の断面を有する貫通孔に形成されており、挿入された第1スライド部材31は、長軸方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動が防止される。第2スライド部材用孔41cも同様に、第2スライド部材32の断面とほぼ同様の断面を有する貫通孔に形成されており、挿入された第2スライド部材32は、長軸方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動が防止される。第1スライド部材用孔41bと第1鉄パイプ用挿入孔41aとの距離ηと、第2スライド部材用孔41cと第1鉄パイプ用挿入孔41aとの距離θは、異なる距離を有する。このように異なる距離にすることによって、第1スライド部材31及び第2スライド部材32が干渉するのを防止でき、鉄パイプ80の同一円周上に近い距離で加工孔を開けることができる。
【0036】
第1パンチ用孔41dは、外壁面から第1スライド部材用孔41bを経由して、第1鉄パイプ用挿入孔41aまで貫通する貫通孔である。第1パンチ用孔41dは、第1パンチ11の外径とほぼ同様の長さの内径を有する貫通孔に形成され、挿入方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動は防止される。第1パンチ用孔41d内を第1パンチ11が進退し、第1鉄パイプ用挿入孔41aに突き出ることで、鉄パイプ80に加工孔を穿孔することになる。
【0037】
第1誘導ピン用スライド孔41eは、外壁面から第1スライド部材用孔41bを経由して、反対側まで連通する孔に形成される。第1誘導ピン用スライド孔41eは、第1誘導ピン21と同様の幅であって、長軸が第1パンチ11の進退方向と同じ方向の軸となる長孔に形成される。そのため、第1誘導ピン21は、第1スライド部材31のスライド方向へは可動しないが、第1パンチ11の進退方向へ移動可能となる。
【0038】
第2パンチ用孔41fは、外壁面から第2スライド部材用孔41cを経由して、第1鉄パイプ用挿入孔41aまで貫通する貫通孔である。第2パンチ用孔41fは、第2パンチ12の外径とほぼ同様の形状を有する貫通孔に形成され、挿入方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動は防止される。また、第2パンチ用孔41fは、貫通孔内の周壁の一部が第2パンチ12の平面と適合する平面をなしており、貫通孔内で第2パンチが軸回転不可能にされている。第2パンチは楕円を有しているので、軸回転が不可能なようにしたものである。第2パンチ12は、第2パンチ用孔41f内を進退し、第1鉄パイプ用挿入孔41aに突き出ることで、鉄パイプ80に加工孔を穿孔することになる。
【0039】
第2誘導ピン用スライド孔41gは、外壁面から第2スライド部材用孔41cを経由して、反対側の連通する孔に形成される。第2誘導ピン用スライド孔41gは、第2誘導ピン22と同様の幅であって、長軸が第2パンチ12の進退方向と同じ方向の軸となる長孔に形成される。そのため、第2誘導ピン22は、第2スライド部材32のスライド方向へは可動しないが、第2パンチ12の進退方向へ移動可能となる。
【0040】
以上のようにして形成された第1穿孔器具100aの構成部品は、以下のようにして組み立てられる。まず、図7に示すように、第1スライド部材31を矢印Aの方向へ移動して第1支持用治具41の第1スライド部材用孔41bに、第1貫通溝31aの一部が第1パンチ用孔41dと重なり合う位置まで挿入する。
【0041】
次に、図8に示すように、第1パンチ11を矢印Bの方向へ移動し、第1パンチ用孔41dに挿入し、第1スライド部材31の第1貫通溝31aを介して、第1パンチ用孔41d奥側まで挿入する。この際に、第1パンチ11の第1誘導ピン挿入用貫通孔11aと第1誘導ピン用スライド孔41eが重なり合うようにする。さらに、図9に示すように、第1誘導ピン21を矢印Cの方向へ移動して、第1誘導ピン用スライド孔41eに挿入し、第1スライド溝31b及び第1誘導ピン挿入用貫通孔11aを介して反対側まで挿入する。
【0042】
同様にして、第2スライド部材32を矢印Dの方向へ移動して第1支持用治具41の第2スライド部材用孔41cに第2貫通溝32aの一部が第2パンチ用孔41fと重なり合う位置まで挿入する。次に、第2パンチ12を矢印Eの方向へ移動し、第2パンチ用孔41fに挿入し、第2スライド部材32の第2貫通溝32aを介して第2スライド部材用孔41f奥側まで挿入する。さらに、第2誘導ピン22を矢印Fの方向へ移動して、第2誘導ピン用スライド孔41gに挿入し、第2スライド溝32b及び第2誘導ピン挿入用貫通孔12aを介して反対側まで挿入する。
【0043】
その後、鉄パイプ80を第1鉄パイプ用挿入孔41aに挿入し(図10)、この鉄パイプ80に芯金70を挿入して、第1穿孔器具100aの組み立ては終了する(図11)。こうして第1支持用治具41に取り付けられた、第1パンチ11、第2パンチ12、第1誘導ピン21、第2誘導ピン22、第1スライド部材31及び第2スライド部材32は、図12に示すような状態で、第1支持用治具41内に配置されることになる。
【0044】
次に、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cについて説明する。第2穿孔器具100bは、図3に示すように第3パンチ13、このパンチを誘導する第3誘導ピン23、この第3誘導ピン23の動きを制御する第3スライド部材33、並びにこれらを支持する第3支持用治具44を備えている。第3パンチ13及び第3誘導ピン23は、第1実施形態の第1パンチ11及び第1誘導ピンと同様の構成であるので説明を省略する。
【0045】
第3スライド部材33は、図3に示すように、四角柱状の鉄の部材からなり、4つの周壁の一つの周壁面から反対側の周壁面まで貫通する複数の第3貫通溝33a及び第3スライド溝33bが設けられている。この第3貫通溝33a及び第3スライド溝33bの形態は、第1実施形態の第3貫通溝33a及び第3スライド溝33bと同様であるので、説明を省略する。
【0046】
第2支持用治具43は、図3に示すように、鉄パイプ80を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第2鉄パイプ用挿入孔43aと、第3スライド部材33を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第3スライド部材用孔43bと、第3パンチ13を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第3パンチ用孔43dと、第3誘導ピン23を第3パンチ13の進退方向へ一定距離移動可能に形成された第3誘導ピン用スライド孔43eと、を有する。それぞれの構成は、第1実施形態の第1支持用治具41の各構成と同様であるので説明を省略する。
【0047】
一方、第3穿孔器具100cは、図3に示すように第4パンチ14、このパンチを誘導する第4誘導ピン24、この第4誘導ピン24の動きを制御する第3スライド部材33、並びにこれらを支持する第3支持用治具44を備えている。第4パンチ14及び第4誘導ピン24は、第1実施形態の第1パンチ11及び第1誘導ピン21と同様であるので説明を省略する。
【0048】
第3支持用治具44は、図3に示すように、鉄パイプ80を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第3鉄パイプ用挿入孔44aと、第3スライド部材33を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第4スライド部材用孔44bと、第4パンチ14を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第4パンチ用孔44dと、第4誘導ピン24を第4パンチ用孔44dの進退方向へ一定距離移動可能に形成された第4誘導ピン用スライド孔44eと、を有する。それぞれの構成は、第1支持用治具41の各構成と同様であるので説明を省略する。
【0049】
このようにして構成された第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cは、第1穿孔器具100aと同様にして組み付けられる。但し、第1穿孔器具100aと異なるのは、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cのいずれもが1本の第3スライド部材33を共有している点が異なる。
【0050】
次にカム器具90について説明する。カム器具90は、図13に示すように、プレス等の押圧装置(図示しない。)からの力Jを受ける被押圧部材91と、押圧装置から受けた力Jの方向を直角方向(K)へ変換する変換部材92と、この変換部材92を穿孔器具側へ付勢するバネ93と、これらの動きをスライド部材に伝達するベースプレート94とを備えている。
【0051】
被押圧部材91は、プレス等の力を受ける被押圧面91aと、プレスの力の方向Jを変化させるためにプレス方向に対し、80°の傾斜面を有する変換部材押圧面91bと、を備えている。
【0052】
変換部材92は、変換部材押圧面91bと同様の角度を有し、変換部材押圧面91bと摺動する摺動面92aを備えている。変換部材押圧面92bからの力によって、プレス方向に対して直角方向(K)へスライド移動される。変換部材92は、K方向へスライド自在のベースプレート94と連結されており、ベースプレート94はバネ93と接触されて、プレスによる変換部材のスライド方向(K)と反対の方向へ付勢されている。従って、プレスによる圧力がなくなると、ベースプレート94及び変換部材92は−K方向(初期位置)へ戻されることになる。ベースプレート94は、スライド部材固定部94aで第1スライド部材31及び第2スライド部材32と固定することができる。
【0053】
こうして構成されたカム器具90によれば、プレス装置によって矢印Jの方向に押圧すると、変換部材92は矢印Kの方向へスライド移動する。このスライド移動によって、第1スライド部材31及び第2スライド部材32も同様に矢印Kの方向に移動させることができる。
【0054】
同様に形成されたカム器具90が、反対側にも設置され、第3スライド部材33を可動可能に設置されている(図1参照)
【0055】
次に、芯金固定部材60について説明する。芯金固定部材60は、カム器具90に隣接して配置され、芯金70を固定する機能を有する部材である。芯金固定部材60は、芯金70の端部を固定することができる芯金固定孔61を備え、この芯金固定孔61に差し込まれた芯金70は、芯金固定孔61まで連通しているネジ孔62を介して、芯金固定ネジ63によって固定される。
【0056】
以上のように構成された第1穿孔器具100a、第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cは、図1に示すように、底板120に取り付けられる。その両端には、カム器具90及び芯金固定部材が配置されて穿孔用型110をなす。
【0057】
次に、こうして組み立てられた穿孔金型110が鉄パイプ80に加工孔を開ける工程を以下に説明する。図15〜図17には、鉄パイプ80に加工孔が穿孔される一連の工程が示されている。説明の便宜のため、第1支持用治具の第1パンチ11、第1誘導ピン21及び第1スライド部材31を利用して一連の動きを説明する。
【0058】
組み付けられた直後の状態では、図15に示すように、第1誘導ピン21は、第1スライド溝31bの端に配置されていて、第1パンチ11を鉄パイプ80から最も離れた位置となるように位置決めしている。この状態からプレス装置(図示しない。)によってカム器具90の被押圧部材91を押圧すると、第1スライド部材31が矢印Gの方向へスライド移動される。すると、図16に示すように、第1誘導ピン21は、第1誘導ピンスライド孔41eによってスライド部材31のスライド方向への移動は防止されているので、第1誘導ピン21は第1スライド溝31bの反対側への端部へとスライドさせられることになる。このスライドに伴って、これに伴い第1パンチ11は、第1パンチ用孔41d内を矢印Hの方向へスライドするように進行して鉄パイプ80を穿孔する。さらに、第1スライド部材31を矢印Gの方向へ移動させると、図17に示すように、第1誘導ピン21は、反対の端部まで移動されて、第1スライド溝31b内でも最も鉄パイプ80に近い側へ移動させられる。この移動に伴い、第1パンチ11は、最下点まで移動して芯金70内へスクラップを落として、鉄パイプ80の穿孔は終了する。以上のようにして、鉄パイプ80に加工孔が穿孔されることになる。加工処理が終了し、プレス装置が上昇すると、バネ93により、第1スライド部材31は初期位置に復帰し、第1誘導ピン21は、初期の位置まで復帰され、それに伴い第1パンチ11も初期位置まで復帰する。
【0059】
第2パンチ12、第2誘導ピン22、及び第2スライド部材32も同様にして、第2スライド部材32をスライドさせることによって、鉄パイプ80を加工することができる。
【0060】
第2穿孔器具100b及び第3穿孔器具100cは、反対側のカム器具90によって第3スライド部材33がスライドされて、上述の第1穿孔器具100aと同様の方法で鉄パイプ80に加工孔を穿孔することができる。
【0061】
第1実施形態によれば、第1パンチ11は、第1スライド部材31内に配置されるため、第1貫通溝31aによって、スライド方向以外の方向の横ぶれが抑えられる。また、第1誘導ピン21によって、第1パンチ11中央付近の横ぶれが防止される。さらに、第1パンチ用孔41dによって、第1パンチ11の先端及び後端で進退以外の方向への移動が防止されているため、ほぼ完全に第1パンチ11の横ぶれを抑えることができる。また、第1パンチ用孔41dは、鉄パイプ80の側面まで設けられているため、第1パンチ11が鉄パイプ80に当接した際の横ずれを防止することができる。第2パンチ12、第3パンチ及び第4パンチも同様の理由で横ぶれを防止することができる。そのため加工精度の高い加工孔を穿孔することができる。
【0062】
また、第1パンチ11、第1誘導部材21及び第1スライド部材31はすべて第1支持用治具41内に配置されているため、穿設器具100aはコンパクトな器具とすることができる。
【0063】
また、第1実施形態においては、第1支持用治具41内に第1パンチ11及び第2パンチ12の2つのパンチを設置した例を用いて説明したが、これらのパンチの数は限定するものではなく、3以上設けても構わない。これによって、異なる角度を有する加工孔を複数穿孔することが可能になる。
【0064】
また、第1実施形態においては、1つの第3スライド部材33が第2支持用治具43及び第3支持用治具44内に設置されるようにしたが、これに限定されるものではなく、さらに、支持用治具を設置すれば、さらに多くの加工孔を開けることができる。
【0065】
このように、本発明においては、支持用治具内におけるパンチの数、スライド部材が収容される支持用治具の数を変更することによって、鉄パイプの様々な位置に加工孔を開けることが可能になる。
(第2実施形態)
【0066】
本発明の第2実施形態を説明するにあたり、第2実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態における穿孔器具100dが加工器具に相当し、鉄パイプ80が筒状ワークに相当し、第5パンチ15及び第6パンチ16がパンチ部材に相当し、第5誘導ピン25及び第6誘導ピン26が誘導部材に相当し、第5スライド部材35及び第6スライド部材36が制御部材に相当し、第4支持用治具45が支持部材に相当し、カム器具90が変換装置に相当する。
【0067】
図18に第2実施形態に係る第4穿孔器具100dが示されている。第5パンチ15、第6パンチ16、これらのパンチを誘導する第5誘導ピン25及び第6誘導ピン26、これら第5誘導ピン25及び第6誘導ピン26の動きをそれぞれ制御する第5スライド部材35及び第6スライド部材36、並びにこれらを支持する第4支持用治具45を備えている。
【0068】
第5パンチ15、第6パンチ16、これらのパンチを誘導する第5誘導ピン25及び第6誘導ピン26並びに第5スライド部材35及び第6スライド部材36は、第1実施形態の第1パンチ11、第1誘導ピン21及び第1スライド部材31とそれぞれ同様であるので、説明は省略する。第1実施形態と異なるのは、図19に示すように、第4支持用治具45が外側支持用治具46と内側支持用治具47とに分割されている点が異なる。
【0069】
外側支持用治具46は、図19に示すように、内側支持用治具47の外形とほぼ同様の内径を有し、内側支持用治具47を嵌合可能にする空間が設けられている。この空間は一方面が閉鎖された閉鎖面46hを有しており、内側支持用治具47を位置決めできるようにされている。外側支持用治具46は、主として、鉄パイプ80を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための鉄パイプ用挿入孔46aと、第5スライド部材35を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第5スライド部材用孔46bと、第6スライド部材36を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第6スライド部材用孔46cと、第5パンチ15を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第5外側パンチ用孔46dと、第6パンチ16を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第6外側パンチ用孔46fと、を備えている。
【0070】
鉄パイプ用挿入孔46aは、鉄パイプ80の外径とほぼ同様の長さの内径を有する。これによって、鉄パイプ用挿入孔46aに挿入された鉄パイプ80は、位置決めされ、第5パンチ15又は第6パンチ16によって加工孔が穿孔される際の鉄パイプの移動が防止される。これにより、精度の高い穿孔孔を設けることができる。
【0071】
また、第5外側パンチ用孔46e及び第6外側パンチ用孔46fは、第5パンチ15及び第6パンチ16の外径と同様の幅の長孔に形成されている。
【0072】
内側支持用治具47は、図20に示すように、全体が円筒状に形成され、その内側に支持板47aが設けられている。内側支持用治具47は、この支持板47aによって、主として、鉄パイプ80を挿入される空間と、第5スライド部材35を挿入する空間と、第6スライド部材36を挿入する空間と、第5パンチ15を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第1パンチ用孔47dと、第5誘導ピン25を第5パンチ15の進退方向へ一定距離移動可能であるが、第5スライド部材35の軸方向への移動を防止するための第5誘導ピン用スライド孔47eと、第6パンチ16を挿入し、挿入方向以外の方向への移動を防止するための第6パンチ用孔47fと、第6誘導ピン26を第6パンチ16の軸方向へ一定距離移動可能であるが、第6スライド部材36の軸方向へ移動を防止するための第6誘導ピン用スライド孔47gと、を備えている。
【0073】
第5パンチ用孔47dは、外壁面から第5スライド部材35が配置される空間を経由して、鉄パイプ80が配置される空間まで貫通する貫通孔である。第5パンチ用孔41dは、第5パンチ15の外径とほぼ同様の長さの内径を有する貫通孔に形成され、挿入方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動は防止される。
【0074】
第5誘導ピン用スライド孔47eは、第5スライド部材35が配置される空間を経由して、反対側まで連通する孔に形成される。第5誘導ピン用スライド孔47eは、第5誘導ピン25と同様の幅であって、長軸が第5パンチ15のスライド方向と同じ方向の軸となる長孔に形成される。そのため、第5誘導ピン用スライド孔47eは、第5スライド部材35のスライド方向へは可動しないが、第5パンチ15の進退方向へ移動可能となる。
【0075】
第6パンチ用孔47fは、外壁面から第6スライド部材36が配置される空間を経由して、鉄パイプ80が配置される空間まで貫通する貫通孔である。第6パンチ用孔41fは、第6パンチ16の外径とほぼ同様の長さの内径を有する貫通孔に形成され、挿入方向への可動は可能であるが、それ以外の方向への移動は防止される。
【0076】
第6誘導ピン用スライド孔47eは、第6スライド部材36が配置される空間を経由して、反対側まで連通する孔に形成される。第6誘導ピン用スライド孔47gは、第6誘導ピン26と同様の幅であって、長軸が第6パンチ16のスライド方向と同じ方向の軸となる長孔に形成される。そのため、第6誘導ピン用スライド孔47gは、第6スライド部材36のスライド方向へは可動しないが、第6パンチ16の進退方向へ移動可能となる。
【0077】
こうして作製された穿孔器具100d内側支持用治具47を外側支持部46に挿入した後、第1実施形態と同様に、第5スライド部材35及び第6スライド部材36をそれぞれ、第5スライド部材用孔46b及び第6スライド部材用孔46cに挿入し、第5パンチ15及び第5誘導部材25を第5スライド部材35の貫通溝に取り付けられ、第6パンチ16及び第6誘導部材26が第6スライド部材36の貫通溝に取り付けられる。
【0078】
そして、第1実施形態の穿孔用型110の穿孔器具100に代えて取り付けられて使用される。鉄パイプ80への穿孔方法は実施例1と同様に、第5スライド部材35、第6スライド部材36をスライドすることによって、第5パンチ15及び第6パンチ16を移動させて鉄パイプ80を穿孔する。
【0079】
このとき、プレス装置によって、第5スライド部材35及び第6スライド部材36を引き出しても、外側支持用治具46の一方面は、閉鎖されているので、内側支持用治具47が外れることを防止することができる。また、そのため、内側支持用治具47を外側支持用治具46に嵌合した後、第5パンチ用孔46d及び第6パンチ用孔46fは、長孔に形成されているので、円周方向に内側支持用治具47の位置を調整することができる。よって、パイプに開ける加工孔の位置を調整することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、スライド部材のスライド溝として傾斜を有する長孔を用いて説明したが、スライド溝は、円筒治具の軸と平行する直線状の長孔以外であれば、その溝の形状は限定するものではない。例えば、図21に示すように、弧状スライド溝34bを使用すれば、スライド部材30の片道の移動で、パンチが、鉄パイプを穿孔し、鉄パイプから引き出されることになる。また、例えば、一部が直線で途中から斜めに形成された屈曲スライド溝35bを用いれば、パンチの移動開始時期を遅らせることができる。このようにすれば、複数のパンチがある場合にタイミングをずらすことができるようになる。さらに、傾き具合の異なるスライド溝36bにすることで、パンチ10の移動ストロークやパンチの力をコントロールすることができる。
【0081】
また、上述した実施形態では、支持用治具に鉄パイプ用の貫通孔を設けたが、必ずしも一体である必要はなく、別手段で鉄パイプを固定できるようにして、鉄パイプにパンチが押圧するように形成してもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、本発明に係る加工装置のみを用いて加工孔を設けたが、必ずしもこれに限定するものではなく、さらに、カムスライドを用いて加工孔を設けたり、垂直プレスによる加工孔を設けたりしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上述した実施形態で示すように、鉄パイプ等の筒状ワークを加工する穿孔器具として、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
11…第1パンチ、11a…第1誘導ピン挿入用貫通孔、11b…刃部、11c…第1誘導ピン固定ネジ、12…第2パンチ、12a…第2誘導ピン挿入用貫通孔、12b…刃部、12c…第2誘導ピン固定ネジ、13…第3パンチ、14…第4パンチ、21…第1誘導ピン、22…第2誘導ピン、23…第3誘導ピン、24…第4誘導ピン、31…第1スライド部材、31a…第1貫通溝、31b…第1スライド溝、32…第2スライド部材、32a…第2貫通溝、32b…第2スライド溝、33…第3スライド部材、33a…第3貫通溝、33b…第3スライド溝、41…第1支持用治具、41a…第1鉄パイプ用挿入孔、41b…第1スライド部材用孔、41c…第2スライド部材用孔、41d…第1パンチ用孔、41e…第1誘導ピン用スライド孔、41f…第2パンチ用孔、41g…第2誘導ピン用スライド孔、43…第2支持用治具、43a…第2鉄パイプ用挿入孔、43b…第3スライド部材用孔、43d…第3パンチ用孔、43e…第3誘導ピン用スライド孔、44…第3支持用治具、44a…第3鉄パイプ用挿入孔、44b…第4スライド部材用孔、44d…第4パンチ用孔、44e…第4誘導ピン用スライド孔、47…内側支持用治具、60…芯金固定部材、61…芯金固定孔、62…ネジ孔、63…芯金固定ネジ、70…芯金、80…鉄パイプ、90…カム器具、91…被押圧部材、91a…被押圧面、91b…変換部材押圧面、92…変換部材、92a…摺動面、92b…変換部材押圧面、93…バネ、94…ベースプレート、94a…スライド部材固定部、100a…第1穿孔器具、100b…第2穿孔器具、100c…第3穿孔器具、100d…第4穿孔器具、110…穿孔用型、120…底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ、管等の筒状ワークの周壁を外側から加工する加工器具において、
端部に加工部を有する柱状のパンチ部材と、
前記パンチ部材と十字状に組まれて、前記パンチ部材の進退を誘導する柱状の誘導部材と、
前記パンチ部材と前記誘導部材とを内部に配置可能な貫通溝を有し、前記貫通溝内の前記誘導部材の位置に応じて前記パンチ部材の進退位置を決定する柱状の制御部材と、
前記パンチ部材、前記誘導部材及び前記制御部材を内部に配置する支持部材と、を備え、
前記制御部材は前記支持部材内をスライド可能であり、
前記パンチ部材及び前記誘導部材は前記支持部材内で前記制御部材のスライド方向への移動を防止されてなり、
前記制御部材をスライドすることによって、前記誘導部材の前記貫通溝内の位置を変化させることにより、前記パンチ部材の進退を制御可能であることを特徴とする加工器具。
【請求項2】
前記貫通溝は、前記パンチ部材と同様の幅を有し、かつ前記制御部材の長軸と同様の方向の軸を有する、前記制御部材の周壁面から反対側の面まで貫通する長孔からなるパンチ部材用貫通溝と、
前記誘導部材と同様の幅を有し、前記パンチ部材用貫通溝と直交するように前記制御部材の周壁面から反対側の面まで貫通し、かつ前記制御部材の長軸に対して角度を有する長孔又は弧状の長孔からなる誘導部材用貫通溝と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の加工器具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記パンチ部材及び前記誘導部材を前記支持部材の外側から設置可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工器具。
【請求項4】
前記支持部材は、前記パンチ部材の一方端部及び他方端部のいずれをも収納可能な前記パンチ部材と同径の挿通孔からなるパンチ部材用孔が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項5】
前記支持部材は、前記筒状ワークを固定可能な筒状ワーク用固定部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項6】
前記支持部材は、内側支持部材と前記内側支持部材を収容可能な収容部を有する外側支持部材とからなり、前記内側支持部材は円筒形をなし、前記外側支持部材内で回動可能に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項7】
複数の前記パンチ部材と、前記誘導部材と、前記制御部材とを備えてなり、前記支持部材は、複数の前記パンチ部材と、前記誘導部材と、前記制御部材とを内部に配置可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項8】
前記制御部材は、前記パンチ部材と前記誘導部材とを内部に配置する前記貫通溝を複数備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項9】
前記制御部材の可動方向と異なる方向からのプレスを前記制御部材のスライド方向へ変換する変換装置を備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項10】
複数の前記誘導部材用貫通溝の少なくとも1つは、長孔の角度又は形状が異なるものであることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の加工器具。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の加工器具を用いた筒状ワークの加工方法であって、
加工器具に筒状ワークを取り付ける工程と、
前記加工器具の制御部材をスライドさせる工程と、
からなることを特徴とする筒状ワークの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−55953(P2012−55953A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203625(P2010−203625)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【特許番号】特許第4843762号(P4843762)
【特許公報発行日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(310014137)有限会社 シバ金型 (2)
【出願人】(510245256)中部スリッター株式会社 (1)
【Fターム(参考)】