説明

筒編衣料製品の製造方法及び筒編衣料製品

【課題】編成後の仕上げ加工及び各筒編衣料製品の分離を容易にして、かつ衣料における開口縁部を縫製等の縁始末の処理が不要な縁部を得ることができる筒編衣料製品の製造方法と筒編衣料製品を提供する。
【解決手段】ダブルニードル列経編機の前部ニードル列により筒編前部を、後部ニードル列により筒編後部を編成し、、非開口個所4を筒編前部と筒編後部とを接結編成し、筒方向の少なくとも一端部に開口縁部3を有してなる筒編衣料製品1を、各製品領域11の編幅方向端部に開口縁部3を位置させるように筒方向を編幅方向にして編方向に連続して編成し、製品領域11の編幅方向端部と、これに隣接する編生地部分との間に、解き用編糸7を編み込んでなる接結部17を介在させて編成しておき、仕上げ加工後に、解き用編糸7を解く分離工程で個々の筒編衣料製品単位に分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として無縫製の筒編衣料製品の製造方法と筒編衣料製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダブルニードル列の経編機(ダブルラッシェル機)により、無縫製の筒編衣料製品あるいは縫製を殆ど必要としない筒編衣料製品を編成することは公知である。
【0003】
例えば、特許文献1には、前後のニードル列により前後の編地を一部で接結する所謂筒編を行って、筒編衣料であるシャツを機上で一体に連続して編成する方法が示されているが、シャツの胴部等の筒方向を編方向にして編成するものであるため、その製品化にあたっては、衿部、袖口部、胴裾部等の開口部を、縁取り輪郭に沿って鋏等で切断することで、一枚のシャツに切り出すことが必要である。切り出されたシャツの前記開口部は、生地端が切り放されて編目ループが解れる状態であり、このままでは製品化できないので、切り出された縁を折り曲げるか、別布を当てて縫製することにより縁取りをした縁部(ヘム)を作ることが必要である。
【0004】
また、特許文献2には、前後のニードル列により前後の編地を一部で接結する所謂筒編を行って、筒編衣料であるショーツを機上で一体に連続して編成する方法が示されているが、ショーツの脚開口部を逆ハの字形(▽状)に形成するために、2枚の製品生地を脚開口部の側を向き合わせて左右に並べて連接編成することとし、その連接部分に可溶性編糸を使用しておいて、編成後に該可溶性編糸を溶解して左右の製品に分離するものである。この分離のために可溶性編糸を使用するため、該可溶性編糸を除去して分離した後でしかヒートセット等の仕上げ加工を行うことができず、編上がりの一体化された生地での仕上げが事実上可能であり、それだけ仕上げ加工に手数がかかりコスト高になる。
【0005】
また、特許文献3には、一体成形袋状経編地を、筒編部分の筒方向を編方向にして、一単位の袋状経編地を編幅方向に複数を連結してかつ編方向に繰り返し連続して編成後、カットして各単位に分離するときに捨て部分をなくすように、所定の形状に応じて形状変化部を形成するようにする。
【0006】
開口個所のカットは、特許文献1と同様、生地端が切り放し編ループが補される状態であり、やはりヘム形成のために、縫製や当て布が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−223351号公報
【特許文献2】特開昭62−104901号公報
【特許文献3】特開2001−303412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなしたものであり、ダブルニードル列経編機による筒編衣料製品の製造において、編成後の仕上げ加工及び各筒編衣料製品の一単位毎の分離を容易にして、かつ衣料における開口縁部を縫製等の縁始末の処理が不要な縁部(ヘム)を得ることができる筒編衣料製品の製造方法、及び、その方法により得られた筒編衣料製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明は、筒編部を主体とし、該筒編部の筒方向の少なくとも一端部に衣料としての開口縁部を有する筒編衣料製品の製造方法であって、前部ニードル列と後部ニードル列とを有するダブルニードル列経編機を用い、前部ニードル列により筒編前部を、後部ニードル列により筒編後部をそれぞれ編成するとともに、衣料としての輪郭における非開口個所を前記筒編前部と前記筒編後部とを接結編成して形成してなる筒編衣料製品を、各製品領域の編幅方向端部に前記開口縁部を位置させるように筒方向を編幅方向にして編方向に繰り返し連続して編成するとともに、前記製品領域の編幅方向端部と、これに隣接する編生地部分との間に、解き用編糸を編み込んでなる接結部を介在させて編成しておき、仕上げ加工後に、解き用編糸を解く工程を含む分離工程において個々の筒編衣料製品単位に分離することを特徴とする。
【0010】
これにより、仕上げ加工後に、接結部の解き用編糸を解くことにより、切断することなく製品領域の編生地を隣接する編生地部分と分離でき、かつ該編生地を、筒編前部と筒編後部とを接結編成してなる非開口個所の接結部分で切断することにより、所定の形状の個々の筒編衣料製品を得ることができる。特に、本発明の場合は、前記解き用編糸を解くことにより、前記製品領域の編幅方向端部に位置する衣料としての開口縁部も同時に切り離されることになり、鋏による切り放しのない縁始末不要な開口縁部が形成される。
【0011】
前記の製造方法において、前記筒編衣料製品を編幅方向で複数並列させて編方向に連続編成するとともに、各列の製品領域の編幅方向端部同士の間に前記解き用編糸の編み込みによる接結部を介在させて編成しておき、仕上げ加工後に解き用編糸を解く工程を含む分離工程において、各列の個々の筒編衣料製品に分離することができる。
【0012】
これにより、編成後の編生地を、仕上げ加工工程において所定幅の加工枠にそのまま保持可能であり、仕上げ加工を効率よく行え、この加工後に、分離工程で前記解き用編糸を解くことにより、各列毎の製品領域の編生地に分離でき、かつ、各編生地を衣料としての非開口個所に沿って切断することにより、所定形状の個々の筒編衣料製品に分離できる。
【0013】
前記の製造方法において、前記開口縁部における複数ウェールに補強糸又は弾性糸等の特殊糸を編み込んで編成することにより、分離された筒編衣料製品の開口縁部に伸縮力を強くする等の補強機能を付与することができる。
【0014】
前記各発明の解き用編糸による接結部において、該解き用編糸を同一ウェールで編方向に連続して鎖編するとともに、前記製品領域の編幅方向端部に編み込まれた挿入糸を所要コース毎に前記解き用編糸の鎖編列に係止して接結するように編成し、前記分離工程で解き用編糸を解いて個々の筒編衣料製品に分離することができる。これにより、前記編幅方向端部に位置する開口縁部を縁始末不要に形成することができ、分離した後の開口縁部において捲れ上がり等のない綺麗な縁部を得ることができる。
【0015】
また、前記各発明の前記解き用編糸による接結部において、該解き用編糸を同一ウエールで前部ニードル列と後部ニードル列とに交互に掛け渡して編目形成しながら編方向に連続して鎖編するとともに、前記製品領域の前後の編幅方向端部にそれぞれ編み込まれた挿入糸を所要コース毎に前記解き用編糸の鎖編列に係止して接結するように編成し、前記分離工程で解き用編糸を解いて前後部で同時に筒編衣料製品に分離することができる。これにより、一本の解き用糸を解くことにより前後部で同時に分離でき、分離作業をさらに容易に効率よく行え、しかも編幅方向端部に位置する開口縁部を縁始末不要に形成することができる。
【0016】
前記いずれの場合にも、前記解き用編糸による鎖編列に係止して接結する挿入糸を弾性糸とし、解き用編糸を解いた状態において開口縁部に引きつけるようにするのが望ましく、これにより、開口縁部がさらに綺麗なものになる。
【0017】
また、本発明は、前記各発明のいずれかの製造方法により製造された筒編衣料製品として、主体となる筒編部の筒方向が編幅方向をなし、筒方向の少なくとも一端部に縁始末不要な開口縁部を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記したように本発明によれば、ダブルニードル列経編機による編成で、編成後の仕上げ加工及び各筒編衣料製品の一単位毎の分離を容易にして、かつ衣料における開口縁部を縫製等の縁始末の処理が不要な縁部(ヘム)を形成できる、主として無縫製の筒編衣料製品を得ることがてきる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の筒編衣料製品の編成状態を示す前部編生地の略示平面図である。
【図2】同上の編成状態を示す後部編生地の略示平面図である。
【図3】本発明の筒編衣料製品の編成に用いるダブルニードル列経編機(ダブルラッシェル機)の筬配列例(A)(B)を示す略示図である。
【図4】図3(A)の筬配列による基本の編組織の1例を各筬を分解して示すラッピング状態の組織図である。
【図5】同上のジャカード筬の変化状態の説明図である。
【図6】図3(b)の筬配列による基本の編組織の1例を各筬を分解して示すラッピング状態の組織図である。
【図7】同上のジャカード筬の変化状態の説明図である。
【図8】編組織の他の例を各筬を分解して示すラッピング状態の組織図である。
【図9】同上のジャカード筬の変化状態の説明図である。
【図10】図6の編組織におけるジャカード筬の変化組織を利用する解き用編糸による接結部を示す前部側(A)と後部側(B)のラッピング状態の組織図である。
【図11】解き用編糸による接結部の分離前(A)と分離後(B)の編目組織による説明図である。
【図12】解き用編糸を前後部の編生地の接結に共用する編組織の説明図である。
【図13】個々の筒編衣料製品に分離した筒編前部(A)と筒編後部(B)の略示平面図である。
【図14】本発明の製造方法により製造された筒編衣料製品の略示斜視図である。
【図15】本発明の製造方法により製造される他の筒編衣料製品(A)(B)を例示する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次ぎに本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0021】
本発明の筒編衣料製品の製造方法は、図14に例示する無縫製ショーツのような筒編衣料製品1、すなわち筒編部2を主体として、該筒編部2の筒方向の少なくとも一端部に衣料としての開口縁部、例えば両端部に腰部側開口や脚側開口における所要幅の開口縁部3を有する主として無縫製の筒編衣料製品1を製造するものであり、特に、前部ニードル列と後部ニードル列とを有するダブルニードル列経編機(ダブルラッシェル機)を用い、図13のように前部ニードル列により筒編前部2fを、後部ニードル列により筒編後部2bをそれぞれ編成するとともに、衣料としての輪郭における非開口個所4を前記筒編前部2fと前記筒編後部2bとを接結編成し、かつ筒方向の端部に前記開口縁部3を有する筒編衣料製品1を、次のようにして製造する。図13及び図14において、符号5は接結編成の余剰部分を切除して形成された股部を示し、6は伸縮性等の機能性を付加した帯状領域を示している。
【0022】
前記筒編衣料製品1の編成においては、図1及び図2に示すように、ダブルニードル列経編機上で同時に編成される前後部の編生地10fと10bにおいて、各筒編衣料製品1に相当する各領域(以下、製品領域とする)11の編幅方向端部に前記開口縁部3を編方向に直線状に位置させるように筒方向を編幅方向にして、かつ前記非開口個所4になる所要幅の接結編成部分14を介して編方向に繰り返し連続して編成する。この際、編方向に一列で編成することも可能ではあるが、通常は、図1及び図2のように、前記筒編衣料製品1を編幅方向で複数並列させて編方向に連続編成する。このとき、股部5に相当する余剰部分15についても接結編成する。この編成において、必要に応じて、前記開口縁部3には補強糸や弾性糸を所要幅にわたって編み込み、また前記帯状領域6には弾性糸などの機能性を付加する糸を編み込む。
【0023】
さらに、前記の編成において、前後部の編生地10fと10bにおける前記製品領域11の編幅方向端部と、これに隣接する別の製品領域11あるいは耳部等の他の編生地部分の端部との間に、後述するように、分離のための解き用編糸7の編み込みによる接結部17を介在させて編成しておく。
【0024】
こうして編成後、ヒートセット、洗浄、乾燥等の仕上げ加工処理を行う。この仕上げ加工においては、前記のように、筒編衣料製品1を編幅方向で複数列にして編成しておくことにより、編生地10f,10bとして所定の編幅を確保でき、既存の所定幅の加工枠にそのまま保持可能であり、仕上げ加工を効率よく行える。
【0025】
そして、仕上げ加工後に、前記解き用編糸7を解く工程を含む分離工程において、先ず、解き用編糸7を解いて各列の製品領域11の編生地に分離し、さらに、前記非開口個所4になる接結編成部分14で衣料としての輪郭に切断し、個々の筒編衣料製品1に分離する。同時に、接結編成の前記余剰部分15をその輪郭に沿って切除する。これにより、図13及び図14の筒編衣料製品1を得ることができる。
【0026】
前記の筒編衣料製品1の編成について具体的に説明する。図3(A)(B)は、それぞれ前記の編成に用いるダブルニードル列経編機の筬配列例を示し、同図中のFNは前部ニードル列、BNは後部ニードル列を示している。
【0027】
図3(A)において、GB1,GB2,GB3は前部用の筬、PJB4とPJB5はジャカード装置によりガイドニードルの運動が制御される前部と後部のジャカード筬、GB6,GB7,GB8は後部用の筬である。この筬配列において、筬GB1〜筬GB6は前部ニードル列FNに、筬GB3〜筬GB8は後部ニードル列BNにそれぞれオーバーラッピング可能である。
【0028】
図4は、図3(A)の筬配列による基本的な編組織の例を示し、筬(地筬)GB1,GB2,GB3とジャカード筬PJB4により前部の編生地10fを編成し、筬(地筬)GB6,GB7,GB8とジャカード筬PJB5により後部の編生地10bを編成する。前後部のジャカード筬PJB4及びPJB5は、それぞれ鎖編を基本にして、図5のように変化可能なものであり、このジャカード変化により地編部分においてジャカード柄等の編成を行うとともに、前後部の編生地10fと10bにおける前記製品領域11と他の編生地部分との間の接結部17においては、解き用編糸7を導糸して基本的に鎖編を行う。また、挿入糸を導糸する筬GB1及びGB8は、それぞれ腰部側開口や脚側開口等の開口縁部3においては所要幅にわたって伸縮力を強くしたり補強するための補強糸や弾性糸を編み込み、また前記接結部17では前記ジャカード筬PJB4及びPJB5による解き用編糸7の鎖編列に対し所要コース毎に係止して接結するように挿入編成する。これにより、前記鎖編の解き用編糸7を解くことにより前記製品領域11と他の製品領域等の編生地部分とを分離できることになる。
【0029】
図3(B)において、PB1及びPB2,PB3,PB4は前部用の筬(柄筬)、PJB6は前部用のジャカード筬、PJB7は後部用のジャカード筬、PB8及びPB9,PB10,PB11,PB12は後部用の筬(柄筬)である。この筬配列において、筬PB1〜筬GB8は前部ニードル列FNに、筬GB5〜筬PB12は後部ニードル列BNにそれぞれオーバーラッピング可能である。
【0030】
図6は、図3(B)の筬配列による基本的な編組織の例を示し、筬PB1,PB2,PB3,PB4とGB5及ジャカード筬PJB6により前部の編生地10fを編成し、筬GB8とPB9,PB10,PB11,PB12及びジャカード筬PJB7により後部の編生地10bを編成する。前後部のジャカード筬PJB6及びPJB7は、それぞれ1×1のデンビ編を基本にして図7のように変化可能なものであり、このジャカード変化により地編部分においてジャカード柄等の編成を行うとともに、前後部の編生地10fと10bにおける前記製品領域11と他の編生地部分との間の接結部17においては、解き用編糸7を導糸して基本的に鎖編を行う。また、前後部の筬PB1,PB2,PB3,PB4及びPB9,PB10,PB11,PB12は、それぞれ任意の筬を選択使用して、例えば筬PB2、PB3及びPB11及びPB10により、機能性を付加する帯状領域6では弾性糸等の機能性を付加する糸を、腰部側開口や脚側開口等の開口縁部3においては補強糸や弾性糸を導糸して所要幅にわたって編み込む。また、筬PB4及びPB9により地編部分の全体に挿入糸を導糸して地編部分を編成するとともに、前記接結部17では例えば前記ジャカード筬PJB6及びPJB7による解き用編糸7の鎖編列に対し所要コース毎に係止して接結するように挿入編成する。これにより、前記鎖編の解き用編糸7を解くことにより前記製品領域11と他の製品領域等の編生地部分とを分離できることになる。
【0031】
図8は、図3(A)と同じ8枚の筬配列による編組織の他の例を示しており、筬GB1,GB2,GB3とジャカード筬PJB4により前部の編生地10fを編成し、また筬GB6,GB7,GB8とジャカード筬PJB5により後部の編生地10bを編成する。この編組織では、前後部のジャカード筬PJB4及びPJB5は、それぞれチュール編組織を基本にして図9のように変化可能なものであり、このジャカード変化により地編部分においてジャカード柄等の編成を行うとともに、前後部の編生地10fと10bにおける前記製品領域11と他の編生地部分との間の接結部17においては、解き用編糸7を導糸して基本的に鎖編を行う。また、挿入糸を導糸する筬GB1及びGB8は、機能性を付加する帯状領域6において弾性糸等の機能性を付加する糸を導糸して編み込み、また筬GB2及びGB7は、地編部分の全体に挿入糸を導糸して筬GB3及びGB6とともにチュール編の地組織を編成するとともに、前記接結部17では例えば前記ジャカード筬PJB4及びPJB5による解き用編糸7の鎖編列に対し所要コース毎に係止して接結するように挿入編成する。編成後に、前記鎖編の解き用編糸7を解くことにより前記製品領域11と他の製品領域等の編生地部分とを分離できることになる。
【0032】
図10(A)(B)は、図6の編組織におけるジャカード筬の変化組織を利用する解き用編糸7による前後部それぞれの接結部17、すなわち前記製品領域11と、これに隣接する編生地部分である別の製品領域11との間の接結部17を、他の筬の組織を省略して示している。
【0033】
同図のように、前部及び後部共に、ジャカード筬PJB6,PJB7により導糸する糸のうち、前記接結部17における解き用編糸7となる1本の糸と、その両側に隣接する2本の糸との3本を、それぞれ同じウエールで編方向に連続して鎖編するとともに、両製品領域11,11の端部に挿入される挿入糸8,8を所要コース毎に交互に係止して接結するように挿入編成する。このとき、解き用編糸7の両側の鎖編の糸は、両製品領域11,11の端のウエールに位置させておく。また、地を編成する筬GB5及びGB8等の糸は、前記解き用編糸7の鎖編列に係止させないように前記接結部17に相当する個所の所要針分、例えば3針分を糸抜きにしておく。このように編成することにより、前記鎖編の解き用編糸7を解くことにより、前記両製品領域11,11をカットを要さずに分離できることになる。
【0034】
すなわち、図11(A)のように、1本の解き用編糸7の鎖編列に対して、隣接する両製品領域11,11の挿入糸8,8のみを係止しておき、前記解き用編糸7の鎖編を解くことにより、同図(B)のように両製品領域11,11に分離できる。しかもこうして分離された製品領域11,11の端部においては、糸の切断がないため解れ等が生じる虞がない。そのため、前記製品領域11の端部に図1及び図2のように前記衣料としての開口縁部3を位置させておくことにより、分離した後の開口縁部3において縁始末等の処理が不要な綺麗な縁部、また捲れ上がり等のない縁部を形成できる。特に、前記解き用編糸7の鎖編列に係止する挿入糸8として弾性糸を用いることにより、分離した状態において前記挿入糸8が開口縁部の側に引きつけられて、縁部がさらに綺麗になる。
【0035】
なお、上記した実施例においては、解き用編糸7による接結部17を前後部の編生地10fと10bのそれぞれに設定して実施する場合を示したが、このほか、図12に示すように、例えば図6の編組織のジャカード筬PJB6及びPJB7により変化組織を利用する解き用編糸7を、該同一ウエールで前部ニードル列と後部ニードル列とに交互に掛け渡して前後部の編生地10fと10bにおいてそれぞれ編目形成しながら編方向に連続して鎖編することとし、この鎖編列に対して、図10と同様に製品領域の前後の編幅方向端部にそれぞれ編み込まれた挿入糸を、所要コース毎に前記解き用編糸7の鎖編列に係止して接結するように編成することができる。この場合、編成後に前記解き用編糸7を解くことにより、前後部の編生地10fと10bにおいて同時に各製品領域11,11に分離でき、筒編衣料製品1の分離作業をさらに容易に効率よく行える。
【0036】
上記のように本発明の製造方法により得られた筒編衣料製品1は、図13及び図14に示すように、無縫製でしかも開口縁部3の綺麗なものとなる。
【0037】
なお、本発明は、図15(A)(B)のように、筒編部2における筒方向の少なくととも一端部である裾部に開口縁部3を有するスリップやキャミソール、あるいはブラジャー等のランジェリーその他の女性用下着やスポーツウエア等においも上記と同様に実施することができる。また、地編部分の編組織としては、鎖編、デンビ編、チュール編のほかサテン編、プレーンコード編の編組織とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、主として無縫製の各種の筒編衣料製品に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1…筒編衣料製品、2…筒編部、2f…筒編前部、2b…筒編後部、3…開口縁部、4非開口個所、5…股部、6…機能性を付加した帯状領域、7…解き用編糸、8…挿入糸、10f,10b…前後部の編生地、11…製品領域、14…接結編成部分、15…余剰部分、17…接結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒編部を主体とし、筒編部の筒方向の少なくとも一端部に衣料としての開口縁部を有する筒編衣料製品の製造方法であって、
前部ニードル列と後部ニードル列とを有するダブルニードル列経編機を用い、前部ニードル列により筒編前部を、後部ニードル列により筒編後部をそれぞれ編成するとともに、衣料としての輪郭における非開口個所を前記筒編前部と前記筒編後部とを接結編成してなる筒編衣料製品を、各製品領域の編幅方向端部に前記開口縁部を位置させるように筒方向を編幅方向にして編方向に繰り返し連続して編成するとともに、前記製品領域の編幅方向端部と、これに隣接する編生地部分との間に、解き用編糸を編み込んでなる接結部を介在させて編成しておき、仕上げ加工後に、解き用編糸を解く工程を含む分離工程において個々の筒編衣料製品単位に分離することを特徴とする筒編衣料製品の製造方法。
【請求項2】
前記筒編衣料製品を編幅方向で複数並列させて編方向に連続編成するとともに、各列の製品領域の編幅方向端部同士の間に前記解き用編糸の編み込みによる接結部を介在させて編成しておき、仕上げ加工後に解き用編糸を解く工程を含む分離工程において、各列の個々の筒編衣料製品に分離する請求項1に記載の筒編衣料製品の製造方法。
【請求項3】
前記開口縁部における複数ウェールに、補強糸又は弾性糸等の特殊糸を編み込んで編成する請求項1又は2に記載の筒編衣料製品の製造方法。
【請求項4】
解き用編糸による接結部において、該解き用編糸を同一ウェールで編方向に連続して鎖編するとともに、前記製品領域の編幅方向端部に編み込まれた挿入糸を所要コース毎に前記解き用編糸の鎖編列に係止して接結するように編成し、前記分離工程で解き用編糸を解いて個々の筒編衣料製品に分離する請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒編衣料製品の製造方法。
【請求項5】
解き用編糸による接結部において、該解き用編糸を同一ウエールで前部ニードル列と後部ニードル列とに交互に掛け渡して編目形成しながら編方向に連続して鎖編するとともに、前記製品領域の前後の編幅方向端部にそれぞれ編み込まれた挿入糸を所要コース毎に前記解き用編糸の鎖編列に係止して接結するように編成し、前記分離工程で解き用編糸を解いて前後部で同時に筒編衣料製品に分離する請求項1〜3のいずれか1項に記載の筒編衣料製品の製造方法。
【請求項6】
前記解き用編糸による鎖編列に係止して接結する挿入糸を弾性糸とし、解き用編糸を解いた状態において開口縁部に引きつけるようにする請求項4に記載の筒編衣料製品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された筒編衣料製品であって、筒編部の筒方向が編幅方向をなし、筒方向の少なくとも一端部に縁始末不要な開口縁部を有してなることを特徴とする筒編衣料製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−196184(P2010−196184A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39954(P2009−39954)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000230168)日本マイヤー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】