説明

管体溶接装置

【課題】ワークの外周面の損傷や貫通孔の内周面の磨耗を軽減することができ、ワークが溶接位置を通過する際の通過速度を高速化して管体の製造時間を短縮できるようにする。
【解決手段】管体溶接装置10は、7個の無端状移動部材4及び溶接トーチ6を備えている。7個の無端状移動部材4は、各々が直線部分を含む循環経路を移動自在にされたチェーン41を備え、各チェーン41の直線部分でワーク100の外周面における突き合わせ部分110を除く周方向の7箇所に軸方向に沿って当接する。溶接トーチ6は、ワーク100の軸方向における各チェーン41の循環経路中の直線部分が位置している範囲内で、ワーク100の突き合わせ部分110に対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の板材を筒状に曲げ加工したワークにおける軸方向に平行な2端面の突き合わせ部分を溶接する管体溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の金属製薄肉管体を形成する際に、金属製板材を略真円状に曲げ加工し、周方向に突き合わされた2端面を溶接する方法がある。円筒状のワークにおける軸方向に平行な2端面の溶接に使用する装置として、円筒状のワークが通過する貫通孔を形成した金型を備える管体溶接装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
管体溶接装置は、溶接具を貫通孔における軸方向の一部に露出して金型に配置し、貫通孔をワークが通過する間に、溶接具が配置された溶接位置でワークの突き合わせ部を溶接する。貫通孔の内径は、ワークの通過方向の下流側が上流側よりも僅かに縮小されている。溶接位置は、貫通孔における下流側に配置されている。
【0004】
ワークの通過方向における溶接位置の上流側には、位置合わせ用のガイド刃が貫通孔内に露出している。貫通孔の周方向におけるガイド刃の露出位置は、溶接具の露出位置に一致している。ガイド刃は、ワークの突き合わせ部に嵌入することで貫通孔内におけるワークの回転を防止し、ワークの突き合わせ部を軸方向の全長にわたって溶接具に対向させてワークにおける溶接線のズレを防止する。
【特許文献1】特公平2−15310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の管体溶接装置では、金型の貫通孔内をワークが通過する際にワークの外周面に貫通孔の内周面との接触による線状の傷が生じ易く、貫通孔の内周面に磨耗を生じ易い。このため、ワークの通過速度を高速化することが困難で、製造時間を短縮することが困難になる。このような問題は、円筒状の金属製薄肉管体の製造時だけでなく、楕円状又は角筒状の金属製薄肉管体の製造時にも生じる。
【0006】
この発明の目的は、ワークの外側面の損傷やワークの移動経路の磨耗を軽減することができ、ワークが溶接位置を通過する際の通過速度を高速化して管体の製造時間を短縮できる管体溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、搬送手段、複数の無端状移動部材、溶接具を備えている。搬送手段は、金属製の板材を互いに平行な2端面が突き合うように筒状にしたワークを軸方向に沿って搬送する。複数の無端状移動部材は、各々が直線部分を含む所定の循環経路に沿って移動自在にされ、各々が循環経路における直線部分に位置する部分で搬送中のワークの外側面における2端面を除く複数の位置に軸方向に沿って当接する。溶接具は、ワークの軸方向における複数の無端状移動部材の各々の循環経路中の直線部分が位置している範囲内で、搬送手段によって搬送中のワークの2端面の突き合わせ部分に対向する。
【0008】
この構成では、金属製の板材を互いに平行な2端面が突き合うように筒状にしたワークが、搬送手段によって軸方向に沿って搬送される。この間に、複数の無端状移動部材が、循環経路中の直線部分に位置している部分でワークの外側面における2端面を除く複数の位置に軸方向に沿って当接し、ワークの移動に伴って移動する。ワークは、複数の無端状移動部材が外周面に当接することで移動方向を規定され、複数の無端状移動部材とともに移動する間に2端面の突き合わせ部分が溶接具によって溶接される。ワークの外周面と複数の無端状移動部材との間に大きな速度差を生じないため、ワークの外周面の損傷や複数の無端状移動部材の磨耗が軽減される。
【0009】
この構成において、複数の無端状移動部材の各々は、外側面に弾性体を備えることが好ましい。ワークの外周面の損傷をより軽減することができる。
【0010】
また、複数の無端状移動部材の各々を、ワークの外側面の法線方向に沿って互いに等しい距離だけ移動するように支持する第1の支持部材と、溶接具をワークの外側面の法線方向に沿って移動自在に支持する第2の支持部材と、を備えることが好ましい。ワークの寸法の変化に対応することができる。
【0011】
さらに、第1の支持部材は、複数の無端状移動部材の各々を、軸方向における両端側のそれぞれで独立して移動自在に支持するものであることが好ましい。溶接の前後におけるワークの寸法の変化に対応することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ワークの外側面の損傷やワークの移動経路の磨耗を軽減することができ、ワークが溶接位置を通過する際の通過速度を高速化して管体の製造時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施形態に係る管体溶接装置の側面断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、同管体溶接装置に備えられる無端状移動部材の正面断面図及び側面図である。
【図3】(A)及び(B)は、同管体溶接装置に備えられるフレームの正面図及び側面断面図である。
【図4】(A)及び(B)は、同管体溶接装置に備えられるカム円盤の正面図及び側面断面図である。
【図5】は、同管体溶接装置に備えられる第2の支持部材の側面図である。
【図6】(A)及び(B)は、この発明の別の実施形態に係る管体溶接装置におけるワークの形状と無端状移動部材の配置状態との関係を示す正面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施形態として、円筒状の金属製薄肉管体の製造に用いられる管体溶接装置について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、管体溶接装置10は、金属製の板材を素材とする円筒状のワーク100の突き合わせ部110を軸方向に沿って溶接し、管体を製造する。ワーク100は、予め矩形の金属製板材を曲げ加工し、互いに平行な2端面を周方向に突き合わせた状態の円筒状に形成されている。管体溶接装置10は、搬送ローラ1A,1B、ガイドローラ2、予備加熱器3、無端状移動部材4、ガイド刃5、溶接トーチ6、第1の支持部材7、第2の支持部材8を備えている。
【0016】
搬送ローラ1A,1Bは、この発明の搬送手段であり、ワーク100をその軸方向に平行な搬送方向Xに沿って搬送する。搬送ローラ1Aは、溶接前のワーク100を溶接位置に搬入する。搬送ローラ1Bは、溶接後のワーク100を溶接位置から搬出する。搬送ローラ1A,1Bは、筒状のワーク100を軸方向に沿って搬送するために適した形状とすることができる。ワーク100の軸方向の長さが短い場合には、搬送ローラ1A及び1Bの何れか一方又は両方に代えて、溶接前のワーク100の後端を軸方向に沿って押圧するプッシャ、及び溶接後のワーク100の先端を軸方向に沿って引き出すプラーを備えることもできる。
【0017】
ガイドローラ2は、周縁部の厚さを薄くした円盤状を呈し、搬送方向Xにおける無端状移動部材4の上流側で、第2の支持部材8に回転自在に支持されている。
【0018】
予備加熱器3は、一例として電磁誘導加熱器であり、搬送方向Xにおける無端状移動部材とガイドローラ2との間で、第2の支持部材8に固定されている。予備加熱器65は、溶接前のワーク100の溶接部分を予備的に加熱し、後の溶接を容易にする。予備加熱器3は、溶接トーチ6による溶接が適正に行われることを条件に、省略することができる。
【0019】
無端状移動部材4は、一例として、一対のスプロケット42,43に張架されたチェーン41を備えており、後述するように、ワーク100の周囲の7箇所に配置されている。チェーン41は、直線部分を含む循環経路に沿って移動自在に張架されている。チェーン41は、3個以上のスプロケットに張架することもできる。7個の無端状移動部材4は、それぞれのチェーン41の循環経路における直線部分がワーク100の外周面に当接するように、第1の支持部材7に支持されている。
【0020】
ガイド刃5は、下端部の厚さを薄くした板状体であり、搬送方向Xにおける無端状移動部材4の循環経路における直線部分が配置されている範囲内で、長手方向を搬送方向Xに平行にして第2の支持部材8に固定されている。
【0021】
溶接トーチ6は、この発明の溶接具であり、アーク溶接によってワーク100における突き合わせ部分を溶接する。溶接トーチ6は、搬送方向Xにおける無端状移動部材4A〜4Gの循環経路における直線部分の範囲内で、かつガイド刃4の下流側の位置で、第2の支持部材8に固定されている。
【0022】
第1の支持部材7は、7個の無端状移動部材4のそれぞれがワーク100の半径方向(外側面の法線方向)に沿って互いに等しい距離だけ移動するように、各無端状移動部材4のスプロケット42,43を回転自在に支持する。第1の支持部材7は、ベース71、フレーム72、カム円盤73、リング74、カムフォロワ75を備え、搬送方向Xの上流側と下流側とで対称形状に構成されている。ベース71は、平板状を呈し、水平に配置される。ベース71の上面には、2箇所から固定部711が延出している。フレーム72は、下端部を固定ボルト76によって固定部711に固定されている。
【0023】
第2の支持部材8は、ガイドローラ2、予備加熱器3、ガイド刃5、溶接トーチ6を、搬送方向Xに沿ってこの順に支持する。搬送方向Xに直交する面内における水平方向について、ガイドローラ2の周縁部、予備加熱器3の加熱部、ガイド刃5の下端部、溶接トーチ6の火口のそれぞれの中心位置は、一致している。
【0024】
ガイドローラ2の周縁部を突き合わせ部110に嵌入させた状態でワーク100を搬送方向Xに沿って無端状移動部材4の循環経路における直線部分の間に搬入すると、ガイド刃5の下端部も突き合わせ部110に嵌入する。ワーク100の搬送中に突き合わせ部110が予備加熱器3の加熱部及び溶接トーチ6の火口に対向する回転位置でワーク100の回転が規制され、突き合わせ部110が予備加熱器3によって加熱されるとともに溶接トーチ6によって溶接される。
【0025】
図2(A)に示すように、合計7個の無端状移動部材4が、ワーク100の円周方向を8等分したうちの最上部の位置を除く7箇所のそれぞれで、スプロケット42,43の回転軸をワーク100の半径方向に直交する方向にして配置されている。7個の無端状移動部材4は、それぞれのチェーン41の循環経路における一方の直線部分を露出させており、この直線部分をワーク100の外周面側にして配置されている。
【0026】
図2(B)に示すように、各無端状移動部材4は、チェーン41及びスプロケット42,43のほかに、ガイド45、プレート46、調整ボルト47を備えている。長板状のプレート46は、長手方向の第1の端部461に形成した孔部463及び第2の端部462に形成した長孔464のそれぞれで、スプロケット42の軸受421及びプロケット43の軸受431を保持している。
【0027】
孔部463には、軸受421の軸部が嵌入する。軸受421は、プレート46の第1の端部461における固定された位置でスプロケット42を軸支する。長孔464は、プレート46の長手方向に沿って形成されており、軸受431の軸部が嵌入する。軸受431は、プレート46の第2の端部462における長孔464の長さの範囲でプレート46の長手方向に沿って移動自在にしてスプロケット43を軸支する。
【0028】
調整ボルト47は、先端がプレート46の端面の穴部に嵌入しており、調整板471に螺合している。調整板471には、貫通孔472が形成されている。貫通孔472には、軸受431の軸部が嵌入している。調整ボルト47を回転させると、軸受431が長孔464内を調整板371と共にプレート46の長手方向に沿って移動し、チェーン41の張力が調整される。ロックナット473を調整板471に締結することで、軸受431の位置が固定される。
【0029】
プレート46は、カムフォロワ75に固定される。したがって、第1の支持部材7には、7個のカムフォロワ75が備えられている。各カムフォロワ75は、両端部75A,75Bの外側にローラ751を回転自在に支持している。両端部75A,75Bは、ローラ751の回転軸に直交する面内で矩形を呈している。
【0030】
ガイド45は、循環経路内の直線部分でチェーン41の内周面に当接するようにプレート46に固定されており、チェーン41の移動方向を規定する。
【0031】
図3(A)及び(B)に示すように、フレーム72は、開口721、スリット722、凹部723、段部724、固定孔725、ネジ穴726を備えた円盤状を呈している。
【0032】
開口721は、フレーム72の中心位置に配置され、ワーク100の外径に比較して十分に大きい径の円形を呈している。
【0033】
スリット722は、開口721の周縁部における均等な間隔の8箇所のうちの最上部の1箇所を除く7箇所から、半径方向に沿って放射状に形成されている。スリット722の幅は、カムフォロワ75の両端部75A,75Bの幅に等しくされている。スリット722には、カムフォロワ75の両端部75A,75Bがスリット722の長手方向に沿って移動自在に嵌入する。したがって、各カムフォロワ75は、ワーク100の半径方向にのみ移動可能にされている。
【0034】
凹部723は、開口721の周縁部の均等な間隔の8箇所のうちのスリット722が形成されていない最上部の1箇所から半径方向に形成されている。段部724は、開口721と同心上に形成されている。
【0035】
2個の固定孔725のそれぞれには、固定ボルト76(図1参照。)が貫通する。7個のネジ穴726のそれぞれには、リング74(図1参照。)を固定するための取付ネジが螺合する。リング74は、段部724内に嵌入したカム円盤73のフランジ部731の側面に当接し、カム円盤73のフレーム72からの脱落を防止する。
【0036】
図4(A)及び(B)に示すように、カム円盤73は、フランジ部731、カム溝732、開口733を有する環状体である。カム円盤73は、フランジ部731をフレーム72の段部724に嵌入している。リング74は、フレーム72の外側面に複数のボルトを介して固定される。
【0037】
カム溝732は、ワーク100の周方向を8等分するうちの7つの半径方向のそれぞれに対して一例として60°の角度で形成された長穴であり、フレーム72のスリット722に対応して円周方向に沿って7箇所に形成されている。開口733は、少なくともワークの外径よりも大きな内径の円形を呈している。カム溝732の幅は、ローラ751の径に等しくされている。カム溝732には、ローラ751がカム溝732の長手方向に移動自在に嵌入している。
【0038】
ローラ751は、スリット722内への嵌入によってワーク100の円周方向の移動を規制されたカムフォロワ75の両端部75A,75Bに軸支されており、カム円盤73がフレーム72内で回転すると、カム溝732内における位置を変化させる。このとき、カム溝732はワーク100の半径方向に対して傾斜しているため、ローラ751を含むカムフォロワ75は、スリット722の長手方向であるワーク100の半径方向にのみ変位する。7個のカム溝732は半径方向に対する傾斜角が互いに等しいため、カム円盤73の回転により、7個のカムフォロワ75は無端状移動部材4のそれぞれと共にワーク100の中心位置からの距離が等しい位置で、ワーク100の半径方向に沿って互いに等しい距離だけ移動する。
【0039】
図5に示すように、第2の支持部材8は、水平に配置される支持板81及び可動板82を備えている。支持板81は、フレーム72の上端の水平部分に固定されている。支持板81には、可動板82が可動部材83を介して取り付けられている。可動板82には、ガイドローラ2、予備加熱器3、ガイド刃5、溶接トーチ6が固定されている。
【0040】
可動部材83は、傾斜カム831、スライダ832、ガイド833、スクリューネジ834、支持ピン835、押圧バネ836、調整ナット837を備えている。
【0041】
傾斜カム831は、支持板81の上面に固定されており、上面が傾斜面で構成されている。スライダ832は、傾斜カム831の上面に当接する下面が傾斜面で構成されており、支持板81と可動板82との間で移動自在に配置されている。ガイド833は、可動板82の下面に固定されており、スライダ832の移動方向を規定する。スクリューネジ834は、可動板82の下面から下方に延出したネジ孔821に螺合しており、長手方向を水平にして配置され、一端がスライダ832に係止されている。支持ピン835は、支持板81の上面の複数の位置に下端を固定され、長手方向を垂直にして配置されており、可動板82の孔部822を貫通して可動板82の上面に露出している。調整ナット837は、支持ピン835の上端に形成されているネジ部に螺合している。押圧バネ836は、調整ナット837と可動板82の上面との間で支持ピン835に外嵌しており、可動板82を下方に付勢する。
【0042】
スクリューネジ834の操作部8341に回転力を作用させると、その回転方向に応じてスライダ832が水平方向に移動し、傾斜カム831の傾斜面におけるスライダ832の下面の当接位置が変位し、支持板81に対して可動板82が昇降する。操作部8341の回転方向及び回転数に応じて、可動板8とともにガイドローラ2、予備加熱器3、ガイド刃5、溶接トーチ6の上下位置が調整される。
【0043】
この構成により、第2の支持部材8は、ガイドローラ2、予備加熱器3、ガイド刃5、溶接トーチ6をワーク100の半径方向(外側面の法線方向)に沿って移動自在に支持する。第2の支持部材8の構成には、図5に示すものに限るものではない。
【0044】
なお、溶接トーチ6をガイド刃5に所定範囲内で昇降自在に支持させることで、ワーク100の材質、板厚等の変化に応じて、溶接トーチ6の上下位置を単独で調整できるようにしてもよい。
【0045】
以上の構成により、管体溶接装置10は、7個の無端状移動部材4によって、溶接トーチ6の配置位置を含む範囲で、ワーク100を軸方向に沿って移動させる。各無端状移動部材4のチェーン41は、循環経路における直線部分でワーク100の周面に当接するため、ワーク100の搬送方向Xに沿った移動に伴ってワーク100の移動速度と同一の速度で循環経路に沿って移動する。各チェーン41はワーク100の周面に摺動することがないため、ワーク100の周面における損傷、及びチェーン41の磨耗が抑制される。これによって、トンネル状の搬送部を備えた従来の溶接装置に比較して、溶接速度を3倍程度高速化できる。なお、チェーン41は、外表面にゴムらの弾性部材を備えることで、ワーク100の損傷をより軽減することができる。
【0046】
7個の無端状移動部材4の外表面の位置によって規定されるワーク100の外径は、第1の支持部材7におけるカム円盤73の回転によって調整できる。また、ワーク100の半径方向におけるガイドローラ2、予備加熱器3、ガイド刃5及び溶接トーチ6の位置は、第2の支持部材8における可動板82の移動によって調整できる。このため、ワーク100の外径の変化に容易に対応することができる。
【0047】
ワーク100の外径の縮小又は拡大に応じて、7個の無端状移動部材4を互いに近接又は離間させるとともに、可動板82を加工又は上昇させる。
【0048】
カム円盤73の回転、及び可動板82の移動は、手動操作によるものに限らず、モータ等を介して行うこともできる。また、カム円盤73の回転に連動して可動板82を昇降させるようにしてもよい。
【0049】
第1の支持部材7において、上流側及び下流側のカム円盤73を互いに独立して回転できるようにしてもよい。この場合には、カムフォロワ75をワーク100の搬送方向の上流側と下流側とで2分割にする。突き合わせ部分の溶接の前後におけるワーク100の外径の変化に対応してワーク100を確実に搬送することができる。
【0050】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、上記の実施形態では、7個の無端状移動部材4を配置しているが、突き合わせ部分が溶接トーチに対向する状態を維持しつつワーク100を確実に搬送できることを条件に、無端状移動部材の数を適宜増減することができる。これに合わせて、カムフォロワ、スリット及びカム溝の数も増減できる。また、無端状移動部材はチェーンに限るものではなく、ベルトを用いることもできる。
【0052】
また、管体溶接装置100で突き合わせ部分を溶接するワークは、円筒形状のワーク100に限るものではない。例えば、無端状移動部材4の配置位置を考慮することにより、図6(A)及び(B)に示すように、楕円筒形状のワーク200の突き合わせ部分210、角筒形状のワーク300の突き合わせ部分310を溶接することもできる。
【符号の説明】
【0053】
1A,1B−搬送ローラ
2−ガイドローラ
3−予備加熱装置
4−無端状移動部材
5−ガイド刃
6−溶接トーチ
7−第1支持部材
8−第2支持部材
10−管体溶接装置
41−チェーン
42,43−スプロケット
72−フレーム
73−カム円盤
75−カムフォロワ
100−ワーク
110−突き合わせ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属平板を互いに平行な2端面が突き合うように筒状にしたワークを軸方向に沿って搬送する搬送手段と、
各々が直線部分を含む循環経路を移動自在にされ、各々が前記直線部分で前記搬送手段によって搬送中のワークの外側面における前記2端面の突き合わせ部分を除く複数の位置に軸方向に沿って当接する複数の無端状移動部材と、
前記軸方向における前記直線部分が位置している範囲内で、前記搬送手段によって搬送中のワークの前記突き合わせ部分に対向する溶接具と、を備えた管体溶接装置。
【請求項2】
前記複数の無端状移動部材の各々は、外側面に弾性材を備えた請求項1に記載の管体溶接装置。
【請求項3】
前記複数の無端状移動部材の各々を、前記ワークの外側面の法線方向に沿って互いに等しい距離だけ移動するように支持する第1の支持部材と、
前記溶接具を前記ワークの外側面の法線方向に沿って移動自在に支持する第2の支持部材と、を備えた請求項1又は2に記載の管体溶接装置。
【請求項4】
前記第1の支持部材は、前記複数の無端状移動部材の各々を、前記軸方向における両端側のそれぞれで独立して移動自在に支持する請求項3に記載の管体溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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