説明

管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールまたは該シールを具備した管内移動体

【課題】管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールあるいは該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体を提供する。
【解決手段】柔軟材料から形成され、対向する二つの極部が環状に開口し、互いに相似形を成す、2枚の中空のボール状のシール部材Aとシール部材Bから構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールにおいて;シール部材Aは外側に、シール部材Bは内側に、2枚重ねで密着した状態で配置されており;シール部材Aとシール部材Bは、共に、一方の開口部の近傍から他方の開口部の近傍へ延びる相似形のスリット部をN個具備しており;シール部材Aとシール部材Bとが成す位相角について、シール部材Aとシール部材Bの同一の中心軸に直交する面上において、該中心軸を中心として位相がずれた状態で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシール、または該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
給水用配管や排水用配管あるいはガス配管などの各種配管の内面に付着した錆や水棲生物などの異物を除去し、これらを除去した後に、例えば塗料や耐蝕合金などの被覆材料のコーティングを行うなど、配管内で走行しながら配管の保守作業を行うことができる装置に係る公知技術としては、特許公開2003−225626号公報に記載の「配管内作業方法および装置」が知られている。
また特許公開平6−66776号公報に記載の「管内検査ピグ」などが知られている。
【特許文献1】特許公開2003−225626号公報
【特許文献2】特許公開平6−66776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に係るこの種の公知の装置においては、管の内径が変化すると、そのたびに、当該内径に合致したシール部材に取り換える必要があり、異なった内径の管部材が混在する管においては、当該物体や装置が、シール部材を取り換えることなく、連続して管内を移動することは困難であった。
この種の公知の装置においては、本発明のごときセルフシール式フレキシブルシールを具備していれば、その適用範囲は飛躍的に拡大する。
すなわち、本発明においては、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る管内面封止用シールであって、管の内径が変化してもフレキシブルに変形可能で、且つシールを包囲している流体の圧力を利用してその内壁に密着することが出来る、すなわちセルフシール機能を有した優れた管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールを提供するものである。
更に、本発明の管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールにおいては、該シールが管の軸線に沿って前方あるいは後方のどちらの方向へ移動する場合においても、全く同一のセルフシール機能とフレキシブル機能を付与するものである。
また、本発明においては更に、該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的解決課題を達成するために、請求項1に係る本発明の第1の発明においては、
柔軟材料から形成され、対向する二つの極部が環状に開口し、互いに相似形を成す、2枚の中空のボール状のシール部材Aとシール部材Bから構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールにおいて;
シール部材Aは外側に、シール部材Bは内側に、2枚重ねで密着した状態で配置されており;シール部材Aとシール部材Bは、共に、一方の開口部の近傍から他方の開口部の近傍へ延びる相似形のスリット部をN個具備しており;シール部材Aとシール部材Bとが成す位相角について、シール部材Aとシール部材Bの同一の中心軸に直交する面上において、該中心軸を中心として位相がずれた状態で配置されている、ことを特徴とする、管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールが提供される。
【0005】
請求項6に係る本発明の第2の発明においては、
請求項1乃至請求項5に記載の管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールと;管内移動体本体の外周部に、該セルフシール式フレキシブルシールが、その一方の開口部と他方の開口部との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部のうち少なくとも下流側の開口部と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている管内移動体本体;から少なくとも構成されている、ことを特徴とする管内移動体が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は下記の効果をもたらすものである。
本発明においては、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る、管の内径が変化してもフレキシブルに変形してその内壁に密着することが出来る管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールを提供するものである。
すなわち、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置において、本発明のごとき管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールを具備していれば、その適用範囲は飛躍的に拡大する。
また、本発明においては更に、該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に従って構成された装置の好適実施例について、添付図を参照して更に詳細に説明する。
【実施例】
【0008】
図1乃至図8は、本発明に従って構成された第1の好適実施例のセルフシール式フレキシブルシール20を図示している。
第1の好適実施例のセルフシール式フレキシブルシール20は、ポリウレタンやゴムなどの柔軟材料から形成され、対向する二つの極部が環状に開口し、互いに相似形を成す、2枚の中空のボール状のシール部材A:21とシール部材B:22から構成されている。
シール部材A:21は外側に、シール部材B:22は内側に、2枚重ねで密着した状態で配置されている。
シール部材A:21とシール部材B:22は、共に、一方の開口部212の近傍から他方の開口部212の近傍へ延びる相似形のスリット部213を多数個、例えばN個具備している。
シール部材A:21とシール部材B:22とが成す位相角について、シール部材A:21とシール部材B:22の同一の中心軸に直交する面上において、該中心軸を中心として位相がずれた状態で配置されている。
シール部材A:21とシール部材B:22とが成す位相角について具体例を述べると、シール部材A:21とシール部材B:22の同一の中心軸に直交する面上において、該中心軸を中心としておおよそ180/N度だけ位相がずれた状態で配置されている。
例えば、第1の好適実施例のシール部材A:21とシール部材B:22においては、各々スリット部213、223を8個具備しており、互いに相似形のシール部材A:21とシール部材B:22は、互いの位相が22.5度ずれた状態で配置されている。
なお、シール部材A:21とシール部材B:22の開口部212、222どうしは、該位相を固定するために、接着や溶着などの手段により一体化されている。
中空ボール状のシール部材A:21とシール部材B:22の各々のスリット部213、223の形状について述べると、一方の開口部212、222の近傍に在る点部Xから該スリットが形成され始め、該スリットの幅は該ボールの赤道部に近づくに従って広くなり、該赤道部から他方の開口部212、222の近傍に在る点部Yに近づくに従って狭くなっている。
図4に図示するように、セルフシール式フレキシブルシール20の二つの開口部212、222の間には、複数の引張りコイルバネ24が配置されても良く、図8は、引張りコイルバネ24が収縮した状態におけるセルフシール式フレキシブルシール20の形状、すなわちセルフシール式フレキシブルシール20の標準状態の形状を図示している。
一方、図7は、引張りコイルバネ24が伸長した状態におけるセルフシール式フレキシブルシール20の形状を図示している。
【0009】
図9は、本発明に従って構成された第2の好適実施例のセルフシール式フレキシブルシール20を図示している。
本発明に従って構成された第1の好適実施例のセルフシール式フレキシブルシール20と、同じく第2の好適実施例のセルフシール式フレキシブルシール20との相違点について、唯一、スリット部213、223の形状が異なっている。
第2の好適実施例のスリット部213、223の形状について述べると、シール部材A:21とシール部材B:22の中心軸線が在る面であって、かつ点部Xが在る面を面Xとし、点部Yが在る面を面Yとした場合において、図9において面Xと面Yとが成す角度は約50度である。
なお、面Xと面Yとが成す角度は0度以上の任意の値とすることができる。
面Xと面Yとが成す角度について、0度が良いのか、あるいは何度にしたら良いかは、本発明のセルフシール式フレキシブルシール20が適用される場所や目的によって異なる。
【0010】
図10乃至図11は、本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシール20を具備し、且つ、本発明に従って構成された第1の好適実施例の管内移動体2、および管内移動体2に付帯する装置類の構成を図示している。
図10において、本発明に従って構成された第1の好適実施例の管内移動体2およびそれに付帯の装置は;
配管1の内部に配置された管内移動体2と;上流側の端部が管内移動体2に連結され、下流側の端部が固体・流体分離装置4の上流側入口に連結されたホース5と;上流側の入口が固体・流体分離装置4の下流側出口に連結され、下流側の出口が配管1を包囲している空間に開放された、容積型ポンプの一種であるルーツ式真空ポンプ3と;配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されていない側の端部に接続されたバキュームブレーカ6;により少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、配管1の内部の空間を、セルフシール式フレキシブルシール20を境界として、空間A:A0と空間B:B0の二つの空間に分割しており、バキュームブレーカ6に連通された空間を空間Aと呼称し、ホース5が配置された空間を空間Bと呼称する。
なお、配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されている側の端部は配管1を包囲している空間に開放されている。
【0011】
図11において、管内移動体2の構成について述べると、
管内移動体2は、本発明に従って構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール20と、管内移動体本体23から少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、管内移動体本体23の外周部に、該シール部材が、その一方の開口部212と他方の開口部212との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部212のうち少なくとも下流側の開口部212と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている。
より具体的に述べると、管内移動体本体23の外周部は、円筒状に形成された筒状体と、筒状体の二つの端部の各々に形成されたフランジ状の突起から構成されており、セルフシール式フレキシブルシール20は該二つのフランジ状の突起の間に配置されており、且つ、セルフシール式フレキシブルシール20の二つの開口部212の内縁部は筒状体の外表面上を自在に摺動可能なように配置されている。
管内移動体2は、ホース5を介して負圧生成手段としてのルーツ式真空ポンプ3に連結され、管の上流側の端部にバキュームブレーカ6が設置されている。
【0012】
以上のように構成されたセルフシール式フレキシブルシール20および第1の好適実施例の管内移動体の作用について、図10乃至図11を参照して説明する。
吸引風量が十分にあるルーツ式真空ポンプ3が作動すると、
配管1の内部の空間A:A0に在る大気は下流側の方向、すなわちルーツ式真空ポンプ3の方向に吸引されるが、この時、配管1の内壁に接触しているセルフシール式フレキシブルシール20の作用により、空間B:B0に在る大気の空間A:A0への流入が阻害されるので、空間A:A0の圧力は減少する。
次に、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203の圧力(大気圧)と空間A:A0の圧力(負圧)の圧力差に起因して、セルフシール式フレキシブルシール20の自由端部202(接触部202)は、小矢印91で示す方向に強い力を受け、而して、自由端部202(接触部202)は配管1の内壁へ強く押し付けられて配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間は僅かなものになる。
かくして、空間A:A0はバキュームブレーカ6の設定圧力(仮に−200mmHgとする)まで減圧される。
なお、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203に在る大気は、シール部材A:21とシール部材B:22との間の僅かな隙間から空間A:A0へ吸い出されようとするが、シール部材B:22には小矢印91で示す強い力が作用しているのでシール部材A:21とシール部材B:22との密着力は強固であり、而して該吸い出しは極力阻止される。
一方、空間B:B0に在る大気は、シール部材B:22を空間203の方向に押して容易に変形させることが可能で、而して、空間B:B0に在る大気は該変形により生じた隙間より容易に空間203へ侵入することができる。よって、空間203の圧力は常に大気圧に近い圧力に維持されている。
図中の黒矢印82は大気が空間203へ侵入する方向を示している。
空間A:A0の減圧に伴い、空間B:B0に在る大気は、図11において、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との接触部202に在る隙間を通って空間A:A0へ流入する。
なお、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間について、シール部材A:21とシール部材B:22の重なりにより生じた段差に起因する隙間がある。
また、実際の配管1の内壁には錆などにより腐食された凹凸があり、セルフシール式フレキシブルシール20の表面にも細かい傷が有るので、これ等の凹凸や傷に起因する僅かな隙間を通って、空間B:B0から空間A:A0へ高速の空気流が流入するものである。
該高速空気流は、配管1の内面に付着する汚れを吸引清掃し、あるいは、配管1の内面に付着する水分を乾燥させるために大変効果的である。
図10に図示のバキュームブレーカ6の構造は、図13に図示のバキュームブレーカ6の構造と同一であり、公知の装置でもあるので、図13のバキュームブレーカ6の構造を参照しながら図10に図示のバキュームブレーカ6の作用を説明する。
空間A:A0の圧力が−200mmHg以下になると、大気の圧力が圧縮コイルバネ66の力に打ち勝って弁板64を押し開くので大気がバキュームブレーカ6の内部へ流入し、而して空間A:A0の圧力は−200mmHgに維持される。
【0013】
図10において、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して、管内移動体2は白矢印で示す右方向へ移動させようとする強い力を受けるものであるが、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするために、例えば巻取り方向と巻取り速度を任意に変更可能なウインチに巻取られたワイヤロープ70の端部が管内移動体2に連結されている。
なお、当該機能を備えたワイヤロープ70の代わりに、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするための公知の管内自走装置(図示せず)が管内移動体2に連結されても良い。
【0014】
本発明に従って構成された管内移動体2においては、管内移動体2が配管1の内部を移動するのに伴い、管内移動体2に装着され且つ配管1の内壁に密着したセルフシール式フレキシブルシール20が配管1の内壁を擦り、而して、該内壁に付着した錆などの異物が剥離される。該剥離された異物は、バキュームブレーカ6から空間A:A0、空間B:B0、ホース5、固体・流体分離装置4を経由してルーツ式真空ポンプ3に至る空気流の作用により、吸引移送され、固体・流体分離装置4にて異物が分離された後の清浄な空気はルーツ式真空ポンプ3の出口から大気中へ放出される。
【0015】
図12乃至図13は、本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシール20を具備し、且つ、本発明に従って構成された第2の好適実施例の管内移動体2、および管内移動体2に付帯する装置類の構成を図示している。
図12において、本発明に従って構成された第2の好適実施例の管内移動体2およびそれに付帯の装置は;
配管1の内部に配置された、バキュームブレーカ6を具備する管内移動体2と;上流側の端部が配管1の端部に連結され、下流側の端部が固体・流体分離装置4の上流側入口に連結されたホース5と;上流側の入口が固体・流体分離装置4の下流側出口に連結され、下流側の出口が配管1を包囲している空間に開放された、容積型ポンプの一種であるルーツ式真空ポンプ3;により少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、配管1の内部の空間を、セルフシール式フレキシブルシール20を境界として、空間A:A0と空間B:B0の二つの空間に分割しており、ルーツ式真空ポンプ3に連通された空間を空間Aと呼称し、配管1を包囲している空間に開放されている空間を空間Bと呼称する。
【0016】
図13において、管内移動体2の構成について述べると、
管内移動体2は、本発明に従って構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール20と、管内移動体本体23から少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、管内移動体本体23の外周部に、該シール部材が、その一方の開口部212と他方の開口部212との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部212のうち少なくとも下流側の開口部212と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている。
より具体的に述べると、管内移動体本体23の外周部は、円筒状に形成された筒状体と、筒状体の二つの端部の各々に形成されたフランジ状の突起から構成されており、セルフシール式フレキシブルシール20は該二つのフランジ状の突起の間に配置されており、且つ、セルフシール式フレキシブルシール20の二つの開口部212の内縁部は筒状体の外表面上を自在に摺動可能なように配置されている。
管内移動体本体23には、バキュームブレーカ6が装着されている。
【0017】
図13において、公知のバキュームブレーカ6の構成について述べると;
バキュームブレーカ6は、上流側の弁穴61と下流側の継手62を備えた弁ケース63と、弁ケース63の内部に配置された弁板64と、弁板64に固定された摺動自在な弁ロッド65と、弁板64を弁穴に強く押し当てるための圧縮コイルバネ66、から構成されている。
【0018】
以上のように構成されたセルフシール式フレキシブルシール20および第2の好適実施例の管内移動体の作用について、図12乃至図13を参照して説明する。
吸引風量が十分にあるルーツ式真空ポンプ3が作動すると、
配管1の内部の空間B:B0に在る大気は下流側の方向、すなわちルーツ式真空ポンプ3の方向に吸引されるが、この時、配管1の内壁に接触しているセルフシール式フレキシブルシール20の作用により、空間B:B0に在る大気の空間A:A0への流入が阻害されるので、空間A:A0の圧力は減少する。
次に、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203の圧力(大気圧)と空間A:A0の圧力(負圧)の圧力差に起因して、セルフシール式フレキシブルシール20の自由端部202(接触部202)は、小矢印91で示す方向に強い力を受け、而して、自由端部202(接触部202)は配管1の内壁へ強く押し付けられて配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間は僅かなものになる。
かくして、空間A:A0はバキュームブレーカ6の設定圧力(仮に−200mmHgとする)まで減圧される。
なお、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203に在る大気は、シール部材A:21とシール部材B:22との間の僅かな隙間から空間A:A0へ吸い出されようとするが、シール部材B:22には小矢印91で示す強い力が作用しているのでシール部材A:21とシール部材B:22との密着力は強固であり、而して該吸い出しは極力阻止される。
一方、空間B:B0に在る大気は、シール部材B:22を空間203の方向に押して容易に変形させることが可能で、而して、空間B:B0に在る大気は該変形により生じた隙間より容易に空間203へ侵入することができる。よって、空間203の圧力は常に大気圧に近い圧力に維持されている。
図中の黒矢印82は大気が空間203へ侵入する方向を示している。
空間A:A0の減圧に伴い、空間B:B0に在る大気は、図13において、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との接触部202に在る隙間を通って空間A:A0へ流入する。
なお、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間について、シール部材A:21とシール部材B:22の重なりにより生じた段差に起因する隙間がある。
また、実際の配管1の内壁には錆などにより腐食された凹凸があり、セルフシール式フレキシブルシール20の表面にも細かい傷が有るので、これ等の凹凸や傷に起因する僅かな隙間を通って、空間B:B0から空間A:A0へ高速の空気流が流入するものである。
該高速空気流は、配管1の内面に付着する汚れを吸引清掃し、あるいは、配管1の内面に付着する水分を乾燥させるために大変効果的である。
図12乃至図13に図示のバキュームブレーカ6の作用を説明する。
空間A:A0の圧力が−200mmHg以下になると、大気の圧力が圧縮コイルバネ66の力に打ち勝って弁板64を押し開くので大気がバキュームブレーカ6の内部へ流入し、而して空間A:A0の圧力は−200mmHgに維持される。
【0019】
図12において、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して、管内移動体2は白矢印で示す左方向へ移動させようとする強い力を受けるものであるが、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするために、例えば巻取り方向と巻取り速度を任意に変更可能なウインチに巻取られたワイヤロープ70の端部が管内移動体2に連結されている。
なお、当該機能を備えたワイヤロープ70の代わりに、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするための公知の管内自走装置(図示せず)が管内移動体2に連結されても良い。
【0020】
以上に本発明の装置の好適実施例について説明したが、本発明の装置は該好適実施例の他にも特許請求の範囲に従って種々実施例を考えることができる。
また、本発明の好適実施例の装置の説明においては、装置も配管も大気中にあるものとして説明を行ったが、装置と配管が水中にある場合においても本発明の装置を適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、例えば給水用配管や排水用配管あるいはガス配管などの各種配管の内面に付着した錆や水棲生物などの異物を除去し、これらを除去した後に、例えば塗料や耐蝕合金などの被覆材料のコーティングを行うなど、配管内で走行しながら配管の保守作業を行う管内移動体などに具備されるセルフシール式フレキシブルシールとして好都合に用いることができる。
また、本発明は更に、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体として好都合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシールおよびシール部材Aの第1の好適実施例の正面図。
【図2】図1に示すセルフシール式フレキシブルシールの側面図。
【図3】図1に示すセルフシール式フレキシブルシールのA−A矢視の断面図。
【図4】図2に示すセルフシール式フレキシブルシールのB−B矢視の断面図。
【図5】図1に示すセルフシール式フレキシブルシールを構成するシール部材Bの正面図。
【図6】図1に示すシール部材Aと図5に示すシール部材Bの相対的位置関係を示す、セルフシール式フレキシブルシールの正面図。
【図7】図1に示すセルフシール式フレキシブルシールが、その中心軸に沿って伸長した状態を示す正面図。
【図8】図1に示すセルフシール式フレキシブルシールが、その中心軸に沿って収縮した状態を示す正面図。
【図9】本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシールの第2の好適実施例の正面図。
【図10】本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体、および該管内移動体に付帯する装置類の構成を示す、第1の好適実施例の全体図。
【図11】図10に示す管内移動体の拡大断面図。
【図12】本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体、および該管内移動体に付帯する装置類の構成を示す、第2の好適実施例の全体図。
【図13】図12に示す管内移動体の拡大断面図。
【符号の説明】
【0023】
空間A:A0
空間B:B0
配管1
配管端部栓101
管内移動体2
ルーツ式真空ポンプ3
固体・流体分離装置4
ホース5
バキュームブレーカ6
上流側の弁穴61
下流側の継手62
弁ケース63
弁板64
弁板に固定された弁ロッド65
圧縮コイルバネ66
セルフシール式フレキシブルシール20
接触部202
セルフシール式フレキシブルシールの内側の空間203
シール部材A 21
シール本体部211
開口部212
スリット部213
シール部材B 22
シール本体部221
開口部222
スリット部223
管内移動体本体23
引張りコイルバネ24
ワイヤロープ70
ルーツ式ポンプへ向かう流体の流れ81
セルフシール式フレキシブルシールの内側の空間へ流入する流体の流れ82

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟材料から形成され、対向する二つの極部が環状に開口し、互いに相似形を成す、2枚の中空のボール状のシール部材Aとシール部材Bから構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールにおいて;
シール部材Aは外側に、シール部材Bは内側に、2枚重ねで密着した状態で配置されており;シール部材Aとシール部材Bは、共に、一方の開口部の近傍から他方の開口部の近傍へ延びる相似形のスリット部をN個具備しており;シール部材Aとシール部材Bとが成す位相角について、シール部材Aとシール部材Bの同一の中心軸に直交する面上において、該中心軸を中心として位相がずれた状態で配置されている、ことを特徴とする、管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール。
【請求項2】
シール部材Aとシール部材Bとが成す位相角について、シール部材Aとシール部材Bの同一の中心軸に直交する面上において、該中心軸を中心としておおよそ180/N度だけ位相がずれた状態で配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の、管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール。
【請求項3】
シール部材Aとシール部材Bの開口部どうしが接着や溶着などの手段により一体化されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の、管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール。
【請求項4】
中空ボール状のシール部材Aとシール部材Bの各々のスリット部の形状について、一方の開口部の近傍に在る点部Xから該スリットが形成され始め、該スリットの幅は該ボールの赤道部に近づくに従って広くなり、該赤道部から他方の開口部の近傍に在る点部Yに近づくに従って狭くなっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の、管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール。
【請求項5】
シール部材Aとシール部材Bの中心軸線が在る面であって、かつ点部Xが在る面を面Xとし、点部Yが在る面を面Yとした場合において、面Xと面Yとが成す角度が0度以上の任意の値である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の、管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールと;管内移動体本体の外周部に、該セルフシール式フレキシブルシールが、その一方の開口部と他方の開口部との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部のうち少なくとも下流側の開口部と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている管内移動体本体;から少なくとも構成されていることを特徴とする管内移動体。
【請求項7】
管内移動体本体の外周部は、円筒状もしくは角筒状に形成された筒状体と、該筒状体の二つの端部の各々に形成されたフランジ状の突起から構成されており、該セルフシール式フレキシブルシールは該二つのフランジ状の突起の間に配置されており、且つ、該セルフシール式フレキシブルシールの二つの開口部の内縁部は該筒状体の外表面上を自在に摺動可能なように配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載の管内移動体。
【請求項8】
管内移動体にホースを介して負圧生成手段が連結され、管の上流側の端部にバキュームブレーカが設置された、ことを特徴とする請求項6乃至請求項7に記載の管内移動体。
【請求項9】
管内移動体にバキュームブレーカが具備され、管の下流側の端部に負圧生成手段が連結された、ことを特徴とする請求項6乃至請求項7に記載の管内移動体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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