説明

管制装置

【課題】 船舶に搭載される砲銃により調停射撃を行う場合、状況に応じた調停射撃を簡易な操作で行える方法を確立する。
【解決手段】
管制装置1において、操作表示盤10を用いた1回の操作で調停射撃のパターン番号を選択することにより、調停設定テーブル11であらかじめ定められた弾種と発射弾数及び目標距離に応じ、砲銃制御器8において威嚇の効果を確保しつつ目標に着弾しない最適な調停射撃のオフセット角度を計算して砲銃の発射角度を自動で設定するようにしたため、簡易な操作かつ短い時間で、効果的な調停射撃を実施することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶に搭載して、撮影画像により目標の追尾を行い、砲銃の発射を制御する管制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に搭載される砲銃の照準を行う場合、砲照準用テレビカメラを取り付け、テレビカメラで撮影した静止画像に基づいて、テレビカメラの光軸線が目標から旋回方向及び俯仰方向にずれている角度をそれぞれ求め、対応する角度だけ、テレビカメラの光軸線を旋回方向及び俯仰方向に修正することによって、砲銃の照準合わせを行う方法が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開平7−174495公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、海上において射撃を行う際、射撃を行う対象となる目標に対して命中を期する射撃を実施する前段階として、まず威嚇のために目標に対して砲銃をオフセットさせて行う調停射撃を行うことが必要とされている。このような調停射撃を行う際、操作員は海上の状況に応じた各種設定を行わなければならない。特に、調停射撃では、照準する位置を目標から偏移させて直撃を避ける必要がある。また、発射弾数の設定や、場合によっては弾種の選択に関する設定を行う必要があり、このようなことから調停射撃を行う際の操作が複雑化している。
【0005】
このため、操作員が迅速に、かつ適切に調停射撃を行うことができるように、簡易な操作で、調停射撃に必要な各種設定を行うことが要望されている。
なお、特許文献1に代表される従来技術には、目標からの偏移量を設定し、発射弾数や弾種を選択して調停射撃を行う点については開示されていない。
【0006】
一方、砲銃を搭載する船舶は、高速航行可能となるように高機動化される傾向にある。このため、目標に対して正確な射撃を行う場合、風向及び風速を考慮して照準を調整し、高機動の船舶に対応した精度の高い射撃処理が必要となる。
【0007】
しかし、高速航行時に生じる風に抗して、目標位置に正確に射撃を行うことのできる管制装置は今までのところ実現化されていない。
なお、特許文献1に代表される従来技術には、風向及び風速を考慮して砲の照準を行うための具体的な方法については、開示されていない。
【0008】
この発明は、係る課題を解決するために成されたものであり、調停射撃に要する目標からの偏移量、発射弾数、及び弾種選択等の各種設定を簡素に行うことや、高速航行する船舶からの正確な射撃を行うことができる、高度な射撃用の管制装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による管制装置は、船舶に搭載され、追尾目標に対し砲銃による調停射撃を統制する管制装置であって、目標の映像を撮像する撮像器と目標の距離を計測する測距器を有した監視機と、上記撮像器の撮影画像から目標存在方向を検出する追尾制御器と、上記撮像器で撮像された目標の映像を画面表示する表示部と、調停射撃の形態毎に付与された調停射撃パターン識別情報を選択するための操作部とを有した操作表示盤と、上記操作表示盤により選択された調停射撃パターン識別情報に対応して、予め設定された調停射撃のための偏移角、発射弾種、発射弾数を選択し、選択結果と上記監視機により計測された目標距離と上記追尾制御器により計測された目標存在方向に基づいて、砲銃の発射角度を計算し、砲銃の発射角度、発射弾種及び発射弾数を指令する砲銃制御器と、を備えたものである。
【0010】
また、船舶に搭載され、追尾目標に対し砲銃による射撃を統制する管制装置であって、目標の映像を撮像する撮像器と目標の距離を計測する測距器を有した監視機と、上記撮像器の撮影画像から目標存在方向を検出する追尾制御器と、自船に対する真風向及び風速を計測する風向風速計と、自船の移動速力を検出する自船速力検出器と、上記風向風速計で検出される真風向及び風速と自船速力検出器で検出される自船の移動速力とから、相対風向及び相対風速を計算する風向風速計算機と、上記監視機により計測された目標距離と上記追尾制御器により計測された目標存在方向と、上記風向風速計算機により算出された相対風向及び相対風速とから、砲銃の発射角度を計算し、砲銃の発射角度を指令する砲銃制御器と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、船舶に搭載される砲銃により調停射撃を行う際、操作表示盤を用いて調停射撃のパターン識別情報を選択するだけの簡単な操作で、調停の効果を確保しつつ、目標に着弾しない最適な調停射撃の偏移角度を設定することができるとともに、砲銃の発射角を自動で設定することができる。これによって、状況に応じた調停射撃を、簡易な操作で、かつ短い時間で、効果的に実施することが可能となる。
【0012】
また、自船位置の移動速力を用いて相対風向及び相対風速を算出するので、発射した砲弾が受けると見込まれる風の影響を、正確に求めることができ、目標位置への正確な射撃が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、図を用いて、この発明に係わる実施の形態1について説明する。
図1は、本発明による管制装置の運用状態を示している。図において、船舶15に搭載された監視機3は、射撃対象目標16を画像追尾する。監視機3の画像追尾結果に基づいて、砲銃2を用いて船舶15から射撃が行われる。
【0014】
図2は、管制装置の内部構成を示したものである。
図において、点線で囲まれた部分が管制装置1であり、砲銃2に対して射撃管制を実施する。この際、管制装置1は指示した角度に砲銃2を追従させ、砲銃2の発射角度を設定して、指定された弾種を、指定された弾数だけ発射する。
【0015】
管制装置1は、監視機3と、画像追尾処理器6と、追尾制御器7と、砲銃制御器8と、ジャイロ9と、表示操作盤10と、調停設定テーブル11を備えて構成される。
監視機3は、撮像器4と測距器5とが取り付けられている。監視機3は、撮像器4と測距器5を、所望の旋回角及び俯仰角方向に、同方向に同時に回転させることが可能であり、目標の方向に対して撮像器4の指向方向(画面中心の方向)を一致させるように指向制御する。撮像器4は、目標の映像を撮像し、撮像した画像信号を出力する。また、測距器5は目標までの距離を計測し、計測した距離情報を出力する。
ジャイロ9は、船舶の動揺角を検出して監視機3に出力する。すなわち、ジャイロ9は角度検出器として動作する。
表示操作盤10は、表示部と操作部を備えている。
【0016】
ここで、管制装置1の動作について説明する。
撮像器4により得られた目標の画像信号をもとに、画像追尾処理器6では目標画像を抽出する。目標画像の抽出は、2値化処理や、エッジ抽出処理、単位時間前に撮影された背景画像との差分処理、クラスタリング処理等の各種画像処理を行うことによってなされる。画像追尾処理器6は、抽出した目標の重心位置を求めて、画面中心に対する目標重心位置の上下及び左右の角度を求める。すなわち、撮像器4の画面内での目標角度を求める。
【0017】
また、ジャイロ9で検出された動揺角に基づいて、監視機3は動揺を打ち消す方向に監視機3の指向方向を制御する。すなわち、船舶の動揺に対する監視機3の動揺修正を行う。
追尾制御器7は、基準方位(例えば北方向)及び基準面(例えば水平面)に対する撮像器4の指向方向の旋回角及び仰角を、監視機3の指向角度として求める。また、追尾制御器7は、画像追尾処理器6により求められた撮像器4の画面中心からの目標の上下及び左右の角度と、監視機3の指向角度とを用いて、基準方位及び基準面に対する目標の存在する方向の旋回角及び俯仰角を目標角度(または目標方向)として求める。続いて、追尾制御器7は、監視機3に対して指向角度指令値を出力し、常に目標が画面中心に存在するよう、撮像器4の指向方向を制御する。
【0018】
表示操作盤10は、調停射撃を行うための目標からの偏移角度、発射する弾種、及び発射する弾数を前もって数種類定めておき、調停射撃パターン番号として予め登録しておく。調停射撃パターン番号は、複数種類の調停射撃の形態毎に付与された識別情報である。 例えば、脅威の低い目標に対する調停射撃パターンを、大きな偏移角度、通常の弾種、通常の弾数に対応したパターン番号1とする。また、脅威の高い目標に対する調停射撃パターンを、小さい偏移角度、通常の弾種、多数の弾数に対応したパターン番号2とする。また、脅威の低い目標であって、かつ速力の速い目標船舶に対する調停射撃パターンを、大きい偏移角度、通常の弾種、通常の弾数に対応したパターン番号3とする。さらに、極めて脅威の高い目標に対する調停射撃パターンを、小さい偏移角度、効果の大きい弾種、多数の弾数に対応したパターン番号4とする等、目標の種類、目標の速度に応じて、予め選択すべき調停射撃パターン番号を取り決めておく。
【0019】
表示操作盤10の操作部には、調停射撃パターン番号毎に、選択ボタンが設けられている。表示操作盤10では、撮像器4による目標の画像を表示部に表示するほか、操作部における選択ボタンの押下により上記の調停射撃パターン番号の選択を行うことができる。また、操作部によって砲銃2に対する指向開始及び解除、砲弾の発射開始の操作を行うことができる。
【0020】
表示操作盤10において、上記の調停射撃パターン番号を選択した場合、砲銃制御器8では調停設定テーブル11を参照し、このパターン番号にもとづいて調停射撃のための偏移角度θe、発射する弾数の設定を行うほか、砲銃2に対して発射すべき弾種を出力する。
【0021】
また、砲銃制御器8では、測距器5により計測された目標距離と、追尾制御器7により求められた目標角度をもとに、砲弾が目標に着弾するための砲銃2の命中すべき指向角度(砲軸の俯仰角及び方位角)θ0EL、θ0AZを求める。さらに、砲銃2の命中すべき指向角度θ0EL、θ0AZに対して、偏移角度θeを加算した角度θ0EL +θe、θ0AZ +θeを、砲銃2の発射角度(仰角及び方位角)として求める。また、砲銃制御器8は、ジャイロ9により検出された船舶の動揺角にもとづいて砲銃2に対する動揺修正角を求め、砲銃2が空間上において安定した指向が可能となるよう、砲銃2における発射角度を空間上で一定方向に指向制御し、空間安定化させる。
【0022】
ここで、算出される調停射撃のための最適な偏移角度、すなわち目標に対して着弾しないための偏移角度は、目標距離に応じて威嚇の効果を確保しつつ着弾の誤差範囲や弾薬の影響する範囲を考慮して、誤差範囲及び弾薬の影響する範囲の和により算出された距離をもとに設定される。砲銃制御器8は、設定された偏移角度に基づいて、砲銃の所要の発射角度(府仰角及び方位角)を自動で設定する。
【0023】
砲銃2に対する発射角度の算出の例を図3に示す。図3において、符号17が目標位置、符号18が弾着見込誤差、符号19が弾着見込範囲、符号20が弾薬の影響する範囲、符号21が弾着見込範囲と弾薬の影響する範囲を考慮した調停所要偏移角度、符号22が発射角度指令位置であり、砲銃2の発射角度方向(府仰角及び方位角)に見た図である。
【0024】
このように、調停所要偏移量21は、弾着見込み誤差の要因である目標の距離や弾種により可変の数値となる。調停設定テーブル11には、目標の距離や弾種に応じて、予め弾着見込み誤差がテーブル化されており、目標の距離や弾種を入力することによって、調停所要偏移量21や弾着見込誤差19が自動で計算される。追尾制御器7から出力される目標角度に対し、所要偏移量21、及び弾着見込誤差19が加算されて、所要の発射角度が設定される。
【0025】
ごく単純に説明するならば、目標の仰角0°(水平方向)、方位角0°(北方向)で、目標までの距離L、砲弾の初速度v0として、空気や風による粘性摩擦や抗力がないと仮定した場合、
tanθe + 1/tanθe = v0×g(重力加速度)×L
を満足するような発射角度θeの値を、調停設定テーブル11の計算表から求める。さらに、距離Lに対する方位方向の所要偏移量を調停設定テーブル11からθazとして求め、弾着見込誤差をθmとして求めて、砲銃2の発射角度を、仰角θe、方位角0+θaz+θmとして決定する。
なお、実際には空気や風による粘性摩擦や抗力が関係するので、これらを総合的に考慮して、発射角度が設定される。
【0026】
表示操作盤10において、調停射撃パターン番号が設定されている状態で、さらに砲銃指向開始の操作を行った場合は、砲銃制御器8は設定した所要の発射角度に基づいて、調停射撃を行うための発射角度の指令値を生成し、砲銃2に対して出力する。
【0027】
さらに、この状態で、表示操作盤10において発射の操作を行った場合は、砲銃制御器8は設定されている弾種を自動的に砲銃2に装てんし、設定されている弾数の発射を砲銃2に対して出力する。これによって、砲銃2から設定された弾種の砲弾が、設定された弾数だけ、目標位置から偏移した所望の着弾位置に向けて発射される。
【0028】
なお、従来の管制装置では、照準を正確に合わせることのみが主体となっており、目標からの偏移量を設定し、発射弾数や弾種を選択して行う調停射撃が考慮されたものではなかった。
【0029】
これに対し、この実施の形態1による管制装置1では、操作表示盤10を用いて、調停射撃のパターン番号を選択する1回の操作で、調停設定テーブル11を用いて目標からの偏移量や、発射弾数や弾種が自動的に設定される。調停設定テーブル11では、あらかじめ定められた弾種と発射弾数及び目標距離に応じ、砲銃制御器8において威嚇の効果を確保しつつ目標に着弾しないための最適な調停射撃の偏移角度を計算して、砲銃の発射角度を自動で設定する。これによって、簡易な操作で、かつ短い時間で、効果的な調停射撃を実施することが可能となる。
【0030】
以上説明したとおり、この実施の形態では、船舶15に搭載され、目標16に対し砲銃2による調停射撃を統制する管制装置1として、俯仰角及び旋回角方向に撮像器4及び測距器5を回動自在に支持した監視機3と、自船の動揺角を検出するジャイロ9とを備える。監視機3は目標の映像を撮像する撮像器4と目標の距離を計測する測距器5とを有し、ジャイロ9で検出された動揺角に基づいて撮像器4及び測距器5の動揺修正を行うとともに、指向角指令値に基づいて撮像器4及び測距器5の指向方向を制御する。また、管制装置1は、撮像器4で撮像された目標の画像信号に基づいて、画像内での目標角度を計算する画像追尾処理器6と、監視機3の指向方向と画像追尾処理器6で計算された目標角度に基づいて、目標16の方位角及び仰角を計算し、目標16が監視機3の指向方向に存在するように、監視機3に指向角指令値を出力する追尾制御器7とを備える。さらに、管制装置1は、撮像器4で撮像された目標16の映像を画面表示する表示部と砲銃2の指向制御の開始、解除、及び発射の操作、及び調停射撃の形態に応じて付与される調停射撃パターン番号の選択入力を行う操作部とを有した操作表示盤10と、調停射撃パターン番号に対応して、予め調停射撃のための偏移角、発射弾種、発射弾数の各設定値が格納された調停設定テーブル11と、測距器5により計測された目標距離と、追尾制御器7により算出された目標の方位及び仰角と、ジャイロ9で検出された動揺角と、操作表示盤10により選択入力された調停射撃パターン番号に基づいて調停設定テーブル11より参照された、調停射撃のためのオフセット角、発射弾種、発射弾数の設定値とから、砲銃2の発射角度を計算し、砲銃2の発射角度、発射弾種及び発射弾数を指令する砲銃制御器8とを備える。これによって、簡易な操作で、かつ短い時間で、効果的な調停射撃を実施することが可能となる。
【0031】
実施の形態2.
以下、図2を用いてこの発明に係わる実施の形態2について説明する。
図2は本発明による管制装置の内部構成を示したものである。図において、実施の形態1と同一符号のものは、同一の構成、機能を有し、図1に示したものと同様の運用形態で使用される。
【0032】
ここで、管制装置100は、監視機3と、画像追尾処理器6と、追尾制御器7と、砲銃制御器58と、ジャイロ9と、表示操作盤50と、自船速力検出器12と、風向風速計算機13と、風向風速計14とを備えて構成される。
監視機3は、撮像器4と測距器5とが取り付けられている。監視機3は、撮像器4と測距器5を、所望の旋回角及び俯仰角方向に、同方向に同時に回転させることが可能であり、目標の方向に対して撮像器4の指向方向(画面中心の方向)を一致させるように指向制御する。撮像器4は、目標の映像を撮像し、撮像した画像信号を出力する。また、測距器5は目標までの距離を計測し、計測した距離情報を出力する。
ジャイロ9は、船舶の動揺角を検出して監視機3に出力する。すなわち、ジャイロ9は角度検出器として動作する。
表示操作盤10は、表示部と操作部を備えている。
【0033】
ここで、管制装置1の動作について説明する。
撮像器4により得られた目標の画像信号をもとに、画像追尾処理器6では目標画像を抽出する。目標画像の抽出は、2値化処理や、エッジ抽出処理、単位時間前に撮影された背景画像との差分処理、クラスタリング処理等の各種画像処理を行うことによってなされる。画像追尾処理器6は、抽出した目標の重心位置を求めて、画面中心に対する目標重心位置の上下及び左右の角度を求める。すなわち、撮像器4の画面内での目標角度を求める。
【0034】
また、ジャイロ9で検出された動揺角に基づいて、監視機3は動揺を打ち消す方向に監視機3の指向方向を制御する。すなわち、船舶の動揺に対する監視機3の動揺修正を行う。
追尾制御器7は、基準方位(例えば北方向)及び基準面(例えば水平面)に対する撮像器4の指向方向の旋回角及び仰角を、監視機3の指向角度として求める。また、追尾制御器7は、画像追尾処理器6により求められた撮像器4の画面中心からの目標の上下及び左右の角度と、監視機3の指向角度とを用いて、基準方位及び基準面に対する目標の存在する方向の旋回角及び俯仰角を目標角度(または目標方向)として求める。続いて、追尾制御器7は、監視機3に対して指向角度指令値を出力して指向角度を指令し、常に目標が画面中心に存在するよう、撮像器4の指向角度を制御する。
【0035】
表示操作盤10は、撮像器4による目標の画像を表示するほか、風向風速計14より計測された海上における真風向及び真風速が入力され、入力された真風向及び真風速を適宜図表を用いて表示する表示部を有する。また、気象情報等に基づいて真風向及び真風速を固定値として設定入力できるほか、砲銃2の指向開始及び解除、発射の操作を入力するための操作部を有する。
【0036】
自船速力検出器12では、GPSまたは慣性センサにより検出された自船位置の変化量をもとに、自船の速力を東西方向、南北方向の成分で検出し、風向風速計算機13に移動速力として出力する。
【0037】
風向風速計算機13では、表示操作盤10から出力された真風向及び真風速をもとに、東西方向と南北方向の自船速力を減算し、船体に対する相対風向及び相対風速を計算する。
【0038】
ここで、自船の動きと風の影響の関係を図5に示す。図5は高速航行時に回頭する船体(自船)23を上方から見た図を意味しており、縦軸と横軸はそれぞれ東西方向、南北方向を示している。
図において、符号24は船首方向である針路、符号25は実際の自船位置の変化量(移動速力)、符号26は風すなわち真風向及び真風速を示す。ここでは風26から相対風向及び相対風速を算出する場合、自船の針路及び速力を用いずに、自船位置の変化量を用いることにより、発射した弾丸が受けると見込まれる風の影響を正確に求めることが可能となる。具体的には、風26と自船位置の変化量25の合成ベクトルとして、相対風向及び相対風速を算出する。
【0039】
また、砲銃制御器58では、測距器5により計測された目標距離と、追尾制御器7により求められた目標角度をもとに、砲弾が目標に弾着するための砲銃2に対する指向すべき角度(砲口の砲軸の俯仰角及び方位角)を求める。さらに、砲銃制御器58は、風向風速計算機13により計算された相対風向と相対風速による弾道の影響を求め、砲銃の発射角度補正を実施する。また、砲銃制御器58は、ジャイロ9により検出された船舶の動揺角にもとづいて砲銃2に対する動揺修正角を求め、砲銃2が空間上において安定した指向が可能となるよう、砲銃2における砲軸の指向する角度を空間上で一定方向に制御し、空間安定化する。
【0040】
この状態で、表示操作盤10において、砲銃2の指向開始の操作を行った場合は、上記設定した所要の発射角度を砲銃制御器58から砲銃2に対して指令値として出力し、砲銃2の発射角度を制御する。
【0041】
同様に、表示操作盤10において発射の操作を行った場合は、砲銃制御器58から砲銃2に対して発射の指令を出力し、砲銃2が砲弾を発射する。
【0042】
なお、従来の管制装置では、高速航行しながら回頭した場合などにおいて、船首方位と進行方向が異なる場合に関する、風の影響を補正する方法がなかった。
【0043】
これに対し、この実施の形態2による管制装置100では、風向風速計算機13が、自船位置の移動速力を用いて相対風向及び相対風速を算出するので、発射した砲弾が受けると見込まれる風の影響を、正確に求めることができ、目標位置への正確な射撃が可能となる。
【0044】
以上説明したとおり、この実施の形態2では、船舶15に搭載され、追尾目標16に対し砲銃による射撃を統制する管制装置100であって、自船の動揺角を検出するジャイロ9と、目標16の映像を撮像する撮像器4と目標の距離を計測する測距器5とを有し、撮像器4及び測距器5を俯仰角及び旋回角方向に回動自在に支持し、ジャイロ9で検出された動揺角に基づいて動揺修正を行うとともに、指向角度指令値に基づいて指向角度を制御する監視機3と、撮像器4で撮像された目標の画像信号に基づいて、画像内での目標角度を計算する画像追尾処理器6と、監視機3の指向方向と画像追尾処理器6で計算された目標角度に基づいて、目標16の方位角及び仰角を計算し、目標16が監視機の指向方向に存在するように、監視機3に指向角度指令値を出力する追尾制御器7と、自船に対する真風向及び風速を計測する風向風速計14と、自船の移動速力を検出する自船速力検出器12と、風向風速計14で検出される真風向及び風速と自船速力検出器12で検出される自船の移動速力とから、相対風向及び相対風速を計算する風向風速計算機13と、撮像器4で撮像された目標の映像と風向風速計14で計測した真風向及び真風速を画面表示する表示部と上記砲銃2の指向制御の開始、解除、及び発射の操作を行う操作部とを有した操作表示盤50と、測距器5により計測された目標距離と、追尾制御器7により算出された目標の方位及び仰角と、ジャイロ9で検出された動揺角と、風向風速計算機13により算出された相対風向及び相対風速とから、砲銃2の発射角度を計算し、砲銃2の発射角度を指令する砲銃制御器58とを備えている。これによって、発射した砲弾が受けると見込まれる風の影響を、正確に求めることができ、目標位置への正確な射撃が可能となる。
【0045】
勿論、上掲の実施の形態2において、調停設定テーブル11を設けて、表示操作盤10や砲銃制御器8を、実施の形態1と同様に動作させても良いことは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施の形態1による運用状態を示すための図である。
【図2】この発明の実施の形態1による構成を示すための図である。
【図3】調停射撃を行う際、目標の位置と発射角の位置関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2による構成を示すための図である。
【図5】高速航行時に回頭する際、自船の針路と移動方向と風の影響を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 管制装置、2 砲銃、3 監視機、4 撮像器、5 測距器、6 画像追尾処理器、7 追尾制御器、8 砲銃制御器、9 ジャイロ(角度検出器)、10 表示操作盤、 11 調停設定テーブル、12 自船速力検出器、13 風向風速計算機、14 風向風速計、15 船舶、16 射撃対象目標、17 目標位置、18 弾着見込誤差、19 弾着見込範囲、20 弾薬の影響する範囲、21 調停所要偏移角度、22 発射角度指令位置、表示操作盤50、砲銃制御器58、100 管制装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、追尾目標に対し砲銃による調停射撃を統制する管制装置であって、
目標の映像を撮像する撮像器と目標の距離を計測する測距器を有した監視機と、
上記撮像器の撮影画像から目標存在方向を検出する追尾制御器と、
上記撮像器で撮像された目標の映像を画面表示する表示部と、調停射撃の形態毎に付与された調停射撃パターンの識別情報を選択するための操作部とを有した操作表示盤と、
上記操作表示盤により選択された調停射撃パターン識別情報に対応して、予め設定された調停射撃のための偏移角、発射弾種、発射弾数を選択し、選択結果と上記監視機により計測された目標距離と上記追尾制御器により計測された目標存在方向に基づいて、砲銃の発射角度を計算し、砲銃の発射角度、発射弾種及び発射弾数を指令する砲銃制御器と、
を備えた管制装置。
【請求項2】
船舶に搭載され、目標に対し砲銃による調停射撃を統制する管制装置であって、
自船の動揺角を検出する角度検出器と、
目標の映像を撮像する撮像器と目標の距離を計測する測距器とを有し、撮像器及び測距器を俯仰角及び旋回角方向に回動自在に支持し、上記角度検出器で検出された動揺角に基づいて動揺修正を行うとともに、指向角指令値に基づいて指向方向を制御する監視機と、
上記撮像器で撮像された目標の画像信号に基づいて、画像内での目標角度を計算する画像追尾処理器と、
上記監視機の指向方向と画像追尾処理器で計算された目標角度に基づいて、目標の方位角及び仰角を計算し、目標が監視機の指向方向に存在するように、上記監視機に上記指向角指令値を出力する追尾制御器と、
上記撮像器で撮像された目標の映像を画面表示する表示部と、砲銃の指向制御の開始、解除、及び発射の操作、及び調停射撃の形態に応じて付与される調停射撃パターン番号の選択入力を行う操作部とを有した操作表示盤と、
上記調停射撃パターン番号に対応して、予め調停射撃のための偏移角、発射弾種、発射弾数の各設定値が格納された調停設定テーブルと、
上記測距器により計測された目標距離と、上記追尾制御器により算出された目標の方位及び仰角と、上記角度検出器で検出された動揺角と、上記操作表示盤により選択入力された調停射撃パターン番号に基づいて上記調停設定テーブルより参照された、調停射撃のためのオフセット角、発射弾種、発射弾数の設定値とから、上記砲銃の発射角度を計算し、砲銃の発射角度、発射弾種及び発射弾数を指令する砲銃制御器と、
を備えた管制装置。
【請求項3】
船舶に搭載され、追尾目標に対し砲銃による射撃を統制する管制装置であって、
目標の映像を撮像する撮像器と目標の距離を計測する測距器を有した監視機と、
上記撮像器の撮影画像から目標存在方向を検出する追尾制御器と、
自船に対する真風向及び風速を計測する風向風速計と、
自船の移動速力を検出する自船速力検出器と、
上記風向風速計で検出される真風向及び風速と自船速力検出器で検出される自船の移動速力とから、相対風向及び相対風速を計算する風向風速計算機と、
上記監視機により計測された目標距離と上記追尾制御器により計測された目標存在方向と、上記風向風速計算機により算出された相対風向及び相対風速とから、砲銃の発射角度を計算し、砲銃の発射角度を指令する砲銃制御器と、
を備えた管制装置。
【請求項4】
船舶に搭載され、追尾目標に対し砲銃による射撃を統制する管制装置であって、
自船の動揺角を検出する角度検出器と、
目標の映像を撮像する撮像器と目標の距離を計測する測距器とを有し、撮像器及び測距器を俯仰角及び旋回角方向に回動自在に支持し、上記角度検出器で検出された動揺角に基づいて動揺修正を行うとともに、指向角指令値に基づいて指向方向を制御する監視機と、
上記撮像器で撮像された目標の画像信号に基づいて、画像内での目標角度を計算する画像追尾処理器と、
上記監視機の指向方向と画像追尾処理器で計算された目標角度に基づいて、目標の方位角及び仰角を計算し、目標が監視機の指向方向に存在するように、上記監視機に上記指向角指令値を出力する追尾制御器と、
自船に対する真風向及び風速を計測する風向風速計と、
自船の移動速力を検出する自船速力検出器と、
上記風向風速計で検出される真風向及び風速と上記自船速力検出器で検出される自船の移動速力とから、相対風向及び相対風速を計算する風向風速計算機と、
上記撮像器で撮像された目標の映像と上記風向風速計で計測した真風向及び真風速を画面表示する表示部と、上記砲銃の指向制御の開始、解除、及び発射の操作を行う操作部とを有した操作表示盤と、
上記測距器により計測された目標距離と、上記追尾制御器により算出された目標の方位及び仰角と、上記角度検出器で検出された動揺角と、上記風向風速計算機により算出された相対風向及び相対風速とから、砲銃の発射角度を計算し、砲銃の発射角度を指令する砲銃制御器と、
を備えた管制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−333260(P2007−333260A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163232(P2006−163232)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(591196577)海上保安庁長官 (6)
【Fターム(参考)】