説明

管劣化コアサンプラー及びサンプルコア採取方法

【課題】PC管等の鉄筋コンクリート管のサンプルコアを管内側から採取する管劣化サンプラーである。
【解決手段】管劣化サンプラー100は、4つの突起107a〜107dを有し、突起を鉄筋コンクリート管の内壁に当接することによって中心軸線が管の内径線上に位置される基台102と、基台の中心軸線上に固定された支柱103と、支柱の軸線方向に進退自在なパッド109と、支柱の軸線方向に移動自在に設けられた昇降ブロック104と、昇降ブロックに対し前記中心軸線を通る管の長手方向線上で移動自在に設けられたブラケット105とを備え、ブラケットにコアドリル106が着脱自在に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば管水路などに使用されているPC管やヒューム管等の鉄筋で補強したコンクリート管の鉄筋やコンクリートの劣化予測をするための試料を管の内側から採取することを可能とした管劣化コアサンプラー及びそのサンプルコアの採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用水道、下水道、工業用水道などの管水路に、PC管やヒューム管などの鉄筋で補強したコンクリート管が利用されている。PC管は、長手方向にPC鋼線を緊張してプレストレスを導入したコアコンクリート管に、円周方向にPC鋼線を巻き付けた鉄筋コンクリート管(プレストレスコンクリート管)であり、ヒューム管は長手方向の鉄筋と周方向の鉄筋で作ったカゴに遠心力製法でコンクリートを施した鉄筋コンクリート管である。
【0003】
PC管では、円周方向に巻き付けたPC鋼線の上に、モルタルを吹き付けてPC鋼線を被覆し、その腐食を防ぐようにしている。PC鋼線の腐食破断の主原因は、PC管外面に施されたカバーコートモルタルの劣化によるものとされ、この劣化の要因は、カバーコートモルタルの中性化やクラックの発生などによるものと考えられている。
【0004】
このようなカバーコートモルタルは、1974年5月以前のPC管製品では、その厚さが2cmと薄く、かつ、吹き付け施工であるため厚さのバラツキが多く、2cm未満のものも多数確認されているが、1978年以降の製品では、JIS規格上、カバーコートモルタルの厚さが2.5cmとされている。
【0005】
現在公的に知られている中性化予測式は、コンクリートに対する研究成果に基づくもので水セメント比(以下、「W/C」という)や混和剤の有無によって予測値が大きく変動する。
【0006】
中性化予測式として岸谷式を使用すると、経過年数35年で中性化深さは15.9mm、経過年数60年で中性化深さは20.0mmであり、経過年数35年で中性化はPC鋼線の位置に至り、経過年数60年でカバーコートモルタル全層が中性化することになる(カバーコートモルタル厚:20mm、PC鋼線:φ4mm、被り:16mmとしている)。したがって、カバーコートモルタル厚が2cmのPC管では、35年経過までに中性化の進行を止めるか再アルカリ化をすることが必要である。
【0007】
このような中にあって、PC管のカバーコートモルタルの劣化を調べるためには、埋設されているPC管を掘り出して、カバーコートモルタルのひび割れや中性化の目視調査をする他、カバーコートモルタルの剥ぎ取りによる中性化試験及び鋼材腐食の目視観察を実施している。
【0008】
しかし、埋設されたPC管の周辺は、宅地化されるなど土地の利用形態が変化し、PC管を掘り出すことが年々困難となってきている。一方、試掘個所は事後沈下が発生し易く、公道及び私有地などの地権者から試掘に対する同意を得がたい状況になっている。このため、試掘個所が限定され、数少ない試掘調査データから、一個所で数km単位のPC管水路の劣化状態を評価しなければならず、劣化予測の精度の低下が懸念されている。このため、PC管の管内からカバーモルタルのコアを採取して中性化深さを調査することが求められている。
【0009】
また、下水管路に使用されているヒューム管などでは、下水管路の壁面における腐食は一様に生ずるものではなく、空気の流れ、管壁に沿っての硫酸の流下及び水との混合などで管路面の腐食が進むことが知られている。このようなヒューム管においても、管内からコンクリートコアを採取して腐食深さや硫黄浸入深さを調査することが求められている。
【0010】
ところで、コンクリートのボーリングやコア供試体の採取方法については、以下の提案がある。特開平10−293091号公報に示す例では、携帯型のハンディーコアドリルで、コンクリート構造体から直径が15mm〜30mmの小径柱状体を複数採取し、小径柱状体を供試体としてその圧縮試験の平均から、コンクリートの強度を推定するコンクリート強度の推定方法が示されている(特許文献1)。
【0011】
また、特開平7−120361号公報に示す例では、放射性廃棄物から固化材で固化してなる固化体からコアを抜き取る為に用いられる装置であって、固化体からコアを抜き取る為に先端部に刃状部が構成された円筒体を備えた切削手段と、切削手段によるコア切削時に発生する熱による影響を抑制する為の冷却手段とを具備したコア抜き取り装置が示されている(特許文献2)。
【0012】
また、特開2004−50664号公報に示す例では、コアボーリングマシンの削孔用チューブを用いて、大断面コンクリートに、相互に一部重複する複数のボーリング孔を一列に削孔することで、コンクリートを切断する工法において、先行ボーリング孔の上部に設置されるガイドプレートと、ガイドプレートを貫通して先行ボーリング孔内に昇降可能、かつ回り止め状態に挿通されるガイドロッドと、ガイドロッドの下部外周に同軸に連結され、かつ削孔用チューブの下端にこれと平行かつ相対回転可能に連結された連結パイプと、ローラ支持パイプの外周に放射状に配置され、かつ先行ボーリング孔の内壁に沿って転動する複数のガイドローラを備えたコアボーリングマシンのガイド用治具装置が示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平10−293091号公報(特許第3067016号)
【特許文献2】特開平7−120361号公報
【特許文献3】特開2004−50664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1〜3に示すような従来のボーリングマシンやコア抜き取り法では、例えば、内径が900mm〜2000mmのPC管やヒューム管内部からコア抜き取りをする場合にはそのまま適用することができず、しかもPC管やヒューム管内への出入り口であるマンホールの内径が600mmであるため、ボーリングマシンは携帯可能であることを要し、改善の余地が多分にある。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、PC管やヒューム管などの鉄筋コンクリート管の内部からサンプルコアを抜き取ることができる管劣化コアサンプラー及びコア採取方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明の管劣化コアサンプラーは、鉄筋コンクリート管を縦筋および横筋の間の位置で内側から削孔するコアドリルと、平行四辺形の頂点に相当する位置に、該平行四辺形の中心を中心とする中心軸線と平行に同一突出量で突出された4本の突起を有し、該4本の突起を前記管の内壁に当接させることによって、前記コアドリルを前記管の内径線上に位置するように位置決めする、前記コアドリルが前記中心軸線に沿って移動可能に取り付けられた基台とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記基台の前記中心軸線上に前記コアドリルのコアビットが通る貫通穴を形成するとともに、前記基台の上方に前記中心軸線上で移動可能に前記コアドリルを支持する支持台を設けることができる。
【0017】
鉄筋コンクリート管の内側からサンプルコアを採取する場合、管に対し直角に採取する必要があるが、本発明では、基台の4つの突起を管の内壁に当接させることによって、コアドリルを管の内径線上に位置するように簡単に位置決めできるので、管から直角にサンプルコアを容易に採取することができる。
【0018】
また、前記コアドリルを前記基台の前記中心軸線に対してオフセットして配置するとともに、前記基台の中心軸線上に支柱の本体を固定し、前記鉄筋コンクリート管の前記基台とは反対側の内壁に圧接するパッドを前記支柱の本体に対してその軸線方向に進退自在に配設してなる支柱を設けることができる。これによれば、支柱のパッドを管の内壁に圧接することにより、コアドリルを位置決めしたコアサンプラーを管内に保持することができる。
【0019】
また、前記支柱の本体に対して昇降ブロックを該支柱の軸線方向に移動自在に設け、該昇降ブロックに対してブラケットを前記中心軸線を通る前記鉄筋コンクリート管の長手方向線上で移動自在に設け、前記ブラケットに前記コアドリルを着脱自在に装着することができる。前記鉄筋コンクリート管の鉄筋を検出する金属センサを備え、前記ブラケットに前記金属センサと前記コアドリルとを選択的に装着させることができる。
【0020】
これによれば、コアドリルを管の長手方向に移動することができるので、管内にコアサンプラーをセットしなおすことなく、管の長手方向に重なる複数の穴を削孔して、横筋探知用の長穴を形成するができ、さらにコアドリルに代えて金属センサを取付けることにより、横筋の位置を検出することもできる。また昇降ブロックをネジ棒機構等により昇降自在に構成すれば、反力の影響を受けることなく管を内側から直角に削孔してコアサンプルを採取することができる。
【0021】
本発明のサンプルコア採取方法は、鉄筋コンクリート管の内壁を金属探知機で走査して縦筋および横筋の位置を検出し、前記縦筋および横筋の間の位置でコアドリルに装着したコアビットにより前記管を直角に削孔して前記管のサンプルコアを採取することを特徴とする。これによれば、PC管やヒューム管などの鉄筋コンクリート管のサンプルコアを、縦筋および横筋を避けて管の内側から直角に採取することができる。
【0022】
特にPC管のような鉄筋コンクリート管の場合、鉄筋コンクリート管の内壁を金属探知機で走査して縦筋の位置を検出し、前記縦筋の間の位置でコアドリルに装着した第1のコアビットにより前記管を直角に削孔して複数本の横筋に渡る該横筋の近くまで達する第1の穴を形成し、前記穴の底を金属探知機で走査して横筋の位置を検出し、前記穴内の前記横筋の間の位置で前記コアドリルに装着した第2のコアビットにより前記管の外面まで達する第2の穴を前記管に直角に削孔して前記管のサンプルコアを採取するようにする。
【0023】
これによれば、鉄筋コンクリート管の縦筋および横筋を避けて管の内側から直角に外面側のサンプルコアを採取することができる。この場合、前記第1の穴を、前記管の長手方向に重なるようにして削孔した複数の穴からなる長穴とすれば、大径の穴をあけなくても複数本の横筋に渡るようにすることができ、サンプルコア採取箇所の強度低下を抑制できる。また前記サンプルコアの採取後、前記第1の穴をゴム栓で塞ぎ、前記第2の穴をセメント材で塞いで補修することができ、これによりサンプルコア採取箇所の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の管劣化コアサンプラーによれば、例えばPC管やヒューム管などの鉄筋コンクリート管内でコアドリルを管の内径線上に位置するように簡単に位置決めして、管から直角にサンプルコアを採取することができる。
【0025】
また本発明のサンプルコア採取方法によれば、鉄筋コンクリート管の鉄筋を避けて管から直角にサンプルコアを採取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図4は、本願発明のサンプルコア採取方法に使用する管劣化コアサンプラーの一実施形態を示す斜視図である。本発明の採取方法では、図4のコアサンプラー30と、その他、図1の鉄筋探知機10等を使用して、図17に示すPC管1のような鉄筋コンクリート管の内側からコアサンプルを採取するものである。
【0027】
まず、PC管の構造を一部を破断して示す図17の斜視図により説明する。PC管1は、長手方向のPC鋼線、すなわち縦筋7の緊張でプレストレスを導入した、例えばロール転圧方式で製管されたコンクリートコア(コアコンクリート管)2の外側に周方向にPC鋼線、すなわち横筋3を巻き付け、さらにその上に横筋3を被覆するカバーコートモルタル5を吹き付けてなっている。
【0028】
このPC管1は、基礎工事された土台の上に設置して地中に埋設されているので、地下水や空気が浸入してカバーコートモルタル5の劣化が生じるのは、PC管1の地表側、つまり円筒状断面の上部側である可能性が高い。したがって、PC管1からサンプルコアは、PC管1の地表側のものを採取するのが望ましい。
【0029】
本実施形態では、内径がφ1500(単位は、「mm」。以下、同様とする)のPC管を例に挙げ、管劣化コアサンプラー30でサンプルコアを採取する場合を説明する。なお、PC管の規格寸法は、「JIS A5333−1979」に定められており、φ1500のII類PC管のコアコンクリート厚は85mm、カバーコートモルタル厚は20mm又は25mmである。
【0030】
本実施形態の管劣化コアサンプラー30は、図4に示すように、基台42と該基台42に対し移動可能に設けられたガイドプレート40とからなるドリル保持具35を備え、ガイドプレート40にコアドリル32が取り付けられている。本実施形態では、PC管1に対し、周方向に隣り合う2本の縦筋(長手方向のPC鋼線)7の間で、コアドリル32のコアビット(切削歯)34により孔を2つ長手方向に重ね合わせて削孔して、横筋(周方向のPC鋼線)3の探知用の長穴(第1の穴)を形成し、ついでコアビット34を小径のものに代えて、長穴内の長手方向に隣り合う2本の横筋3の間でPC管1の外面に達する穴(第2の穴)を削孔して、この削孔でカバーモルタル5から円柱状サンプルコアを採取するものである。
【0031】
基台42は外側が略矩形状に四方に突出した十字状の平板からなり、基台42の中心軸線を挟んで対向した位置にそれぞれシャフト36が螺着され、この2本のシャフト36にベアリング38を介してガイドプレート40を嵌装して、ガイドプレート40に装着したコアドリル32が基台42の上方に中心軸線上で移動可能に支持されている。
【0032】
コアドリル32は、ガイドプレート40の中央に設けられた取り付け孔39(図5参照)に図示しない固定手段で着脱自在に取り付けられるドリル本体32Aと、該ドリル本体32Aの駆動軸に着脱自在に装着されるコアビット(削孔歯)34とからなっており、コアビット34はガイドプレート40の下方に突出されている。コアドリル32は、これを手で押すことによって、ガイドプレート40を介して基台42の中心軸線上を下方に移動され、PC管1の削孔に使用される。
【0033】
上記の基台42の4つの矩形部先端には、先の尖った突起43、44、45、46が螺着されている。4本の突起43〜46は、基台42の中心軸線に中心が位置する正方形の頂点位置に配置され、中心軸線と平行に同一突出量で基台42から下方に突出されている。この基台42を手で保持してPC管1の内壁8に押圧して、4本の突起43〜46の全てをPC管1の内壁に当接させると、突起43〜46の隣り合う2つ同士、例えば43と44、45と46が共にPC管1の内壁8においてPC管1の長手方向上に位置し、基台42の中心軸線がPC管1の内径線上に位置する。したがって、ガイドプレート40に取り付けるコアドリル32がPC管1の内径線上に位置するように位置決めされ、これにより、PC管1に対し内側から直角に削孔してサンプルコアを採取することができる。
【0034】
なお、基台42の4つの突起は、一般に正方形および長方形を含む概念の平行四辺形の頂点に位置していればよく、同様な押圧で基台42の中心軸線をPC管1の内径線上に位置させることができる。
【0035】
基台42の中心軸線上には、1対のシャフト36の内側に正方形の浅い凹状の段差31が設けられ、その段差31の中央にコアビット34が通る貫通穴41が設けられている。基台42の段差31には、図5に示すように、十字線の入った十字プレート33が装着され、十字プレート33は基台42に設けた1対のクリップ37で両側を押えて、段差31内から外れないように保持される。この十字プレート33の中心(十字線のクロス位置)は基台42の中心軸線上に位置し、ガイドプレート40にコアドリル32を装着しない状態で、ドリル取り付け孔39から十字プレート33を覗いて十字プレート33の中心をPC管1の内壁のコアリング位置のマークに位置合わせしながら、基台42の突起43〜46をPC管1の内壁に当接する。これにより、ガイドプレート40に取り付けたコアドリル32は、PC管1の内壁8のコアリング位置を通る内径線上に位置するように位置決めされる。なお、基台42に段差31を設けず、基台42に十字プレート33を貫通穴41に対しスライド自在に設けてもよい。
【0036】
基台42のシャフト38には表面に目盛り48を設けるとともに、所望の目盛り位置に固定可能な可動ストッパ40が摺動自在に嵌装されている。この可動ストッパ50は、ガイドプレート40の移動を当接することによって停止して、コアビット34のPC管1の管壁への進入距離(削孔深さ)を規定するためのものである。シャフト36の上端にはガイドプレート40の抜け止め用のストッパ47が設けられている。なお、可動ストッパ50の上端に図示しないリミットスイッチを更に設けて、ガイドプレート40がリミットスイッチの位置に来たときにオンすることによって、コアドリル32のスイッチがオフしてドリル32の回転が停止されるようになっていてもよい。
【0037】
コアドリル32の本体32Aには、図示しない水タンクからの水を注入するための注入チューブ54が取り付けられ、注入チューブ54の途中にはブラケット56でガイドプレート40に支持させた開閉弁52が介挿されている。チューブ54から本体32Aに注入された水は、本体32A内およびコアビット34のシャフト内の通水路を通って、削孔時の冷却および防塵用にコアビット34の先端から噴出される。
【0038】
前述したように、PC管1のサンプルコアは、PC管1の地表側のものを採取するのが望ましく、コアサンプラー30の基台42を手で持って、図6に示すように、PC管1の内壁8の例えば斜め上方45°位置に押圧して、コアドリル32を位置決め状態に保持し、PC管1の斜め上方45°の位置で直角に削孔し、最終的にカバーモルタル5からサンプルコアを採取する。PC管1に対するコアビット34の侵入深さdは、シャフト8の目盛り48上の位置dに可動ストッパ50を固定することによって設定される。カバーモルタル5のサンプルコアの抜き深さ(サンプルコアの長さ)は例えば70mmとされ、したがってカバーモルタル5からサンプルコアを採取する際、シャフト8の目盛り48上のd=70mmの位置に可動ストッパ50が固定される。
【0039】
PC管1の内壁からサンプルコアを採取するには、初めPC管1の内壁8からPC管1の縦筋の間で横筋の近くまで達する第1の穴を削孔する。そのために、まず、図1に示す鉄筋探知機によってPC管1の縦筋(長手方向のPC鋼線)7の位置を探知する。この鉄筋探知機10は、携帯型の例えば誘導電流方式の金属探知器であり、探知機10に設けられた測定ボタン12を押しながら、コンクリート管1の内壁8の表面を周方向になぞると、探知孔16から発信した高周波により縦筋7に渦電流が発生して、コンクリート管1の内壁8との間のインピーダンスが変化し、そのインピーダンス変化を検出することによって縦筋7の存在が探知される。縦筋7の存在は、ディスプレイ14上にインピーダンスの強度変化として表示され、音声アラームを鳴らして報知するようになっている。したがって音声アラームが鳴ったときに探知孔16が位置した場所が縦筋7の位置になる。この縦筋7の位置は、周方向に隣り合う2本を探知する。
【0040】
鉄筋探知機10の探知深さは縦筋7の径によるが、本実施形態では、コアコンクリートの厚さが50〜100mmのPC管をサンプルコアの採取対象としているので、最大探知深さは100mm程度あればよい。なお、図1中、符号11は、オン/オフスイッチや音声アラームスイッチ、金属・木材選択スイッチ等のスイッチ類を示す。
【0041】
PC管1の縦筋7の位置を2本探知したら、図2に示す位置決め用具20を使用して、第1の穴を削孔するために2つの削孔位置を決める。この位置決め用具20は、角棒からなるL状アングル部材24の一方の縦棒部に角棒材22をその中央でスライド自在に取り付け、角棒材22の両端の下面に突起21を、アングル部材24の他方の横棒部の角部の下面に突起23をそれぞれ設け、さらに横棒部の側面に目盛り26を設けてなっている。
【0042】
この位置決め用具20は、図3に示すように使用する。例えば鉄筋探知機10で探知した2本の隣り合う縦筋7の間の中央位置に例えばチョークで1つのコアリング位置をマークし、ついでマークを付けた位置に位置決め用具20のアングル部材24の横部材の長手方向がPC管1の長手方向になる姿勢で突起23を当て、角棒材22の突起21をPC管1の内壁に押し付けて、PC管1の内壁に用具20不動に保持する。そしてその状態で用具20の横棒部の目盛り26で長さを計って、チョークで2つ目のコアリング位置をマークし、或いは2つ目のコアリング位置まで直線を引く。
【0043】
この2つのコアリング位置は、この位置で削孔することによって、PC管1の管壁に2つの穴が長手方向に重なった長穴(瓢箪型の孔)を形成するためであるが、長穴を形成するのは、PC管1の内壁の奥側にある横筋3に精密金属探知機をなるべく近づけて、横筋3の位置を探知しやすくするためであり、また隣り合った2本の横筋3を探知するのに十分な長さをPC管1の長手方向に確保するためである。PC管1の内壁に形成した長穴は、中の削り残しのコンクリートを浚って底部を平らにした後、図7に示す精密金属探知機を使用して、横筋3の位置を探知する。
【0044】
図7に示すように精密金属探知機60は、コ字状の本体枠62の両側部間にシャフト66を取り付け、シャフト66に摺動自在に取り付けたスライド部64にアンプ分離型の近接センサ70を下方に向けて支持させてなっており、両側部の各端部の下面には突起68が設けられ、本体枠62の中央部の上面には目盛り61が設けられている。
【0045】
近接センサ70は、例えば電磁誘導を利用した高周波発振型の金属探知センサであり、図8に示すように、外面がネジ切りされた金属筒部内に検出コイルを収容した検知部72を備え、検知部72の外面のネジに取り付けたナット76で、スライド部64の底板を上下から挟んで取り付けられている。近接センサ70からの出力信号は、同軸コード74によって図示しないアンプユニットに送られ、そこで信号処理することによって横筋3の存在が検出される。
【0046】
図9に、精密金属探知機60による横筋3の位置検出法を示す。図9において、符号80はPC管1の内壁に形成した長穴(第1の穴)で、長穴80内の底部は削り残しのコンクリートを浚って平らにしてある。この長穴80に対して探知機60を手で持って本体枠62の4個の突起68を内壁に押し当て、近接センサ70が長穴80内で長手方向全体に渡って移動するように、本体枠62の中央部をPC管1の長手方向に一致させて保持する。そして手でスライド部64を介して近接センサ70をスライドしてスキャンし、アンプユニットでの信号処理により横筋3を検出したときの位置を本体枠62の中央部上面の目盛り61で読んで、長穴80内で長手方向に隣り合った2本の横筋3の位置をチョーク等でマークする。
【0047】
次に、本発明のサンプルコアの採取方法について説明する。本発明の採取方法では、PC管1の内側から縦筋7の位置を検出して、縦筋7を避けたコアリング位置を決定し、PC管1の内側から削孔してコアコンクリートを除去した長穴80(第1の穴)を形成し、長穴80内で横筋3の位置を検出して、横筋3を避けたコアリング位置を決定し、長穴80内から削孔してカバーモルタル5のコアサンプルを採取する。その後、コアサンプルを採取後のカバーモルタルの穴(第2の穴)82(図12参照)をゴム栓で塞ぎ、コアコンクリートの穴80をポリマーセメントで塞いで補修するものである。以下、詳細に各過程を説明する。
【0048】
サンプルコア採取方法の概略を図10のブロック図に示す。またPC管に対し削孔した断面図を図11に示し、図11の削孔部分をPC管の内側から視た図を図12に示す。
【0049】
図10に示すように、先ず、PC管1の内壁8の表面で鉄筋探知機10を周方向に移動させて、コアコンクリート2中の周方向に隣り合う2本の縦筋7の位置を検出する(ステップS1)。ディスプレイ14の強度変化で縦筋7の位置を検出したら、その縦筋7の位置をチョークなどを使ってマークする。
【0050】
ついで2つのマークの間の周方向上の中央位置を1つ目のコアリング位置とし、位置決め用具20を用いて1つ目のコアリング位置からPC管1の長手方向に直線を引いて、所定距離の位置を2つ目のコアリング位置とし、チョークなどでマークする。これにより、PC管1の内壁8に対し長穴80の削孔用のコアリング位置が決定される(ステップS2)。この2つのコアリング位置は、削孔した穴が長手方向に重なった長穴となり、長穴内に2本の横筋3を探知するのに十分な長さをPC管1の長手方向に確保するようにする。
【0051】
この長穴削孔用のコアリング位置の決定法をさらに説明すると次の通りである。まず、2のコアリングを予定する大凡の位置をチョークなどでマークする。マークする位置は少なくともPC管1の受け口側外面のテーパー区間から外すようにする。
【0052】
次にPC管1の内壁にマークした2つの位置のPC管1の端部継手位置からの距離を鋼尺などの測定具を用いて測定し、各マークの位置と同じ距離となる点を測定具を用いて周方向に何点か決めて、それらの周方向上の点を結ぶことにより、PC管1の内壁に周方向のラインを2本引く。
【0053】
次いで、PC管1の内壁の周方向のラインに沿って鉄筋探知機10を走査させ、ディスプレイ14の強度変化が生じた位置をチョークなどでマークする。マークする点数は周方向の1ライン当たり2点である。そしてそのマークした点のうちPC管1の長手方向に位置する2点に鋼尺などを当ててチョークなどでライン引き、これを他の2点についても行い、PC管1の内壁に2本の縦筋7の位置を表示する。
【0054】
次に、2本の縦筋7の位置を示す2本のライン間の周方向の距離を鋼尺などを用いて長手方向の2点で測定し、各周方向の中央位置をマークし、マークした中央位置2点を結ぶ中央ラインを鋼尺などを当ててチョークで描く。
【0055】
この中央ラインに1つ目のコアリング位置を定め、ついで中央ラインにコアリング位置決め用具20のアングル部材24の横棒部を当て、その側面の目盛り26で1つ目のコアリング位置から適当な距離(凡そ18mm)を置いた2つ目のコアリング位置を決定する。
【0056】
次に、コアドリル32にコアビット34としてφ32のものを装着し、図6に示すように、PC管1の内壁8に対し基台42を介してコアドリル32を内径線上に位置するようにコアサンプラー30を位置決めする。そしてコアドリル32を手で押して削孔し、これをPC管1の長手方向にずらした位置で繰り返して、同様なφ32の孔を削孔し、長穴80を形成する(長穴用のコア抜き)(ステップS3)。本実施形態の場合、コアコンクリート2の厚が85mmであるので、75mmの深さまでφ32のコアビット34で削孔する。
【0057】
次いで、コアドリル32にコアビットに代えてサライビットを装着して、抜いた長穴80の底を平坦に浚う(ステップS4)。この長穴80の長手方向の距離は、横筋3の少なくとも2ピッチあればよい。
【0058】
ついで精密金属探知機60で長穴80内を走査して、横筋3の位置を検出する(ステップS5)。具体的には、上述したように、PC管1の内壁に長穴80に近接させて探知機60の本体枠62を手で押圧して保持し、スライド部64を手で動かして長穴80内で近接センサ70により走査し、横筋3の位置を検知しマークする。
【0059】
次に、カバーコートモルタル5の部分のコア抜き位置を決めた後、コア抜きする深さを設定し、コアビット34としてφ12.5(これより小径の例えばφ8.0のものも使用可能であるが、サンプルコアを折らずに採取することが難しい)のものを装着して、先と同様に位置決めしてコアボーリングし、カバーモルタル5のコアサンプルを採取する(ステップS6)。このとき、コアコンクリート管2の残りの厚が10mm、カバーコートモルタル5の厚が20mm又は25mmであるので、先ずコアコンクリートからカバーモルタルに削孔を進めて、カバーモルタルの厚が20mmかを確認し、そうでなかった更に削孔してカバーモルタルの厚25mmを確認する。コア抜きする深さは、コアビット34がカバーモルタル5に当接した位置から30mm又は35mmになるように設定しておく。
【0060】
図11に、コアサンプルを採取して残った穴を符号82で示す。採取したサンプルは、長さ20mm又は25mmのカバーモルタルの先端に長さ10mmのコンクリートが付いた円柱状をなす。
【0061】
上記のステップS3では、PC管1のコアコンクリートに対し75mmの深さ(図11中Cで示す面)まで一気にコアリングしたが、縦筋7の例えば35mm手前のコアカット中断面Dまでコアリングし、その位置で近接センサ70により縦筋7の有無を確認後、横筋3の例えば20mm手前のコアカット面Aまでコアリングする。そしてコアカット面Aで抜いた穴の底を平坦にして近接センサ70により横筋3の位置検出をし、横筋3の例えば手前15mmのコアカット面Bまでコアリングし、そこで穴の底を平らにし横筋3の位置検出をするというように、横筋3の手前10mmのコアカット面Cまで穴の削孔を進めるようにしてもよい。
【0062】
以上のようにして、PC管1からカバーモルタル5のサンプルコアの採取が終了したら、カバーモルタル5に開けた穴(モルタルコアの穴)82をゴム栓で塞いで補修する(ステップS7)。カバーモルタル5の厚さは、コアサンプルの採取により20mmか25mmかが分かるので、それに応じた20mm用又は25mm用のゴム栓を用意する。
【0063】
図13は、カバーモルタルの穴にゴム栓を取り付けたところを示す断面図である。ゴム栓84は、カバーモルタルの穴82に入りやすいように先端を尖らせ、穴82に全体が入り込むのを防ぐストッパの役目をする縁部85を基端部から突出させた、内部に円柱状の穴86を有する柱状体からなる。このゴム栓84の外面には先端の基部まで、ゴム栓84の挿入方向下流側が柱状部に対し直角をなす挿入方向に尖った直角三角形状の突起88が適宜間隔で設けられている。この突起88は、穴82の内面およびカバーモルタル5の外面の穴82の周囲に引っかかって、ゴム栓84が穴82から容易に抜けないように保持する。このように穴82をゴム栓84で塞ぐことにより、PC管1を埋設した土壌から水が穴82に浸透しないように防止する。
【0064】
ゴム栓88は、図14に示すように、挿入方向下流側が柱状部に対し鋭角をなす三角形状の突起89を有するものでもよい。このような突起89を有するゴム栓88によれば、カバーモルタル5の穴82からより抜けにくくなる。
【0065】
ゴム栓84をカバーモルタル5の穴82に取り付けるには、図15に示すゴム栓挿入金具兼用ノッキングハンマを使用する。該ノッキングハンマ90は、ブロック状のノッキングハンマ部93上に細長い挿入金具部92を一体に設けたもので、挿入金具部92の外径はゴム栓84の円柱状の穴86より若干小径で、穴86より充分に長い長さを持ち、ハンマ部93の端面には凹部94が形成されている。
【0066】
このノッキングハンマ90の挿入金具92をゴム栓84の穴86に挿入し、その状態でカバーモルタル5の穴82に臨ませたゴム栓84をノッキングハンマ90により押し込んで、穴82にゴム栓84を取り付ける。カバーモルタル5の穴82に取り付けたゴム栓84は、穴82への密着度をさらに高めるために、図16に示すような中栓98を中栓挿入棒96を使用してゴム栓84の穴86に挿入する。
【0067】
中栓98はプラスチック製であり、先端部97の径をゴム栓84の円柱状の穴86と同径とし、先端部97より10mm程度のところから後端部95に向けて若干末広がりなるようにテーパー状に形成している。中栓挿入棒96はプラスチック製で、中栓98の後端部95側の径より若干大径で中栓98の半分程度の長さを有する凹部99を備える。この挿入棒96の凹部99に中栓98の後端部95側を装着し、挿入棒96で中栓98を先端部97側からゴム栓84の穴86に押し込む。挿入棒96で押し込んだ状態では、中栓98はゴム栓84の穴86内に全体が入らず、後端部95の側がゴム栓84の縁部85からはみ出す。そこで縁部85からはみ出した部分にノッキングハンマ90の凹部94を当てて、他端の挿入金具部92をハンマで叩いて、中栓98をゴム栓84の穴86内に完全に押し込む。このゴム栓84への中栓98の挿入によって、ゴム栓84はカバーモルタル5の穴82内に強く圧接され、密着度がさらに高まって穴82から一段と抜けにくくなる。
【0068】
最後に、コアコンクリートの長穴80にポリマーセメントを塗り込んで塞ぎ、長穴80の補修を終了する(ステップS8)。
【0069】
採取したサンプルコア(カバーモルタルのコア)は、試験して中性化の進み具合を検査する(ステップS9)。なお、特にヒューム管からサンプルコア(コアコンクリート)を採取したときには、サンプルコアの強度試験を行う。
【0070】
以上のように、本実施形態では、PC管1の内側から削孔してサンプルコアを採取するので、PC管1を掘り出すことが不要となり、地権者に同意を得る必要がなくなるため、多くの個所でサンプリングが可能となり、劣化予測の精度が向上する。また、コアコンクリートのサンプルコアも同時に入手できるため、コアコンクリートの圧縮強度やその他の劣化試験(下水道用では硫黄浸入深さなど)を知ることができる。
【0071】
ところで、ヒューム管などのEPMA分析ではコア採取が必要であるが、コア採取位置の設定は管の横断方向及び縦断方向のそれぞれについて行うのが望ましい。コア採取位置の設定は、腐食の分布傾向を踏まえて行うが、通常、管頂部と水面境界で腐食深さが大きくなることが知られている。したがって、管の横断方向でのコア採取位置は、管頂部又は水面境界付近で採取するのが望ましい。
【0072】
管の縦方向でのコア採取位置は、劣化位置の縦断的な分布を把握するため、ある一定の間隔でコアを3個所以上で採取し、腐食深さ及び硫黄浸入深さのデータのバラツキがあっても正誤判断可能にするのが望ましい。
【0073】
さらにコア径の設定は、鉄筋径や鉄筋間隔を考慮する必要があるが、特にコア採取時に主筋を切断しないコア径にする必要がある。
【0074】
ヒューム管などの管内表面のコア採取する場合、既存の資料から管の鉄筋径と鉄筋間隔を把握可能であるが、実際の鉄筋位置が不明であるので、先ず、鉄筋探知機で鉄筋位置を探知する。次に、コア抜き穴の位置を決定し、コア抜きをする。コアを採取後、管壁を補修する。
【0075】
このようにして採取したコアサンプラーによって、腐食深さ及び硫黄浸入深さを測定する。腐食深さはコンクリートが劣化又は剥離した部分の厚さであり、採取したコアの長さをノギスなどで測定し、劣化する前の管厚からコアの長さを差し引いて腐食深さを求める。
【0076】
また硫黄浸入深さの測定は、コアサンプラーをEPMAで面分析し、カラーマッピングにより行う。
【0077】
本発明の管劣化コアサンプラーの他の実施形態について説明する。図4等を参照して説明した前の実施形態の管劣化コアサンプラー30では、PC管1の内壁8に基台32を手で押圧することによって位置決めしたコアドリル32は、手による基台32の押圧を続けることによって位置決め状態に保持し、しかもコアドリル32を手で移動してPC管1を削孔させた。図18に示す本実施形態の管劣化コアサンプラーでは、基台102によるコアドリル106の位置決めおよびその位置決め状態の保持、並びにコアドリル106のPC管1の長手方向への移動を機械的な機構で行えるようにした。
【0078】
図18は、本実施形態の管劣化サンプラーを示す斜視図、図19は、同サンプラーの半断面図である。
【0079】
図18に示すように、本実施形態の管劣化コアサンプラー100は、基台102と、基台102の中軸線上に設けた支柱103と、支柱103に設けた昇降ブロック104と、該昇降ブロック104に設けたブラケット105とを備え、ブラケット105にコアビット122を備えたコアドリル106が取り付けられている。
【0080】
基台102は、中心からアームを四方に十字状に突出させた形状の台で、この基台102のアームの先端には、先の尖った突起107a、107b、107c、107dが螺着され、この4本の突起107(107a〜107d)が基台102の中心軸線と平行に同一突出量で下方に突出されている。基台102のアーム先端は、基台102の中心軸線に中心が位置する正方形の頂点に位置しており、したがって基台102の4本の突起107の全てがPC管1の内壁8に当接するように押圧すると、基台102の中心軸線、したがって支柱103の軸線がPC管1の内径線上に位置する姿勢になる。
支柱103は、基台102の中心軸線に固定された本体103aと、この本体103aの上端に軸線方向に進退自在に設けられたパッド109とからなり、パッド109を本体103aに螺合したネジ部109aを回転してパッド109を伸長し、パッド109に螺着したナット109bをパッド109に締め付けることにより、パッド109が基台102の反対側でPC管1の内壁8に圧接し、PC管1に対し基台102の中心軸線がPC管1の内径線上に位置した状態にコアサンプラー100がPC管1内に保持される。なお、PC管1の管径の大きいものにもコアサンプラー100を適用できるようにするために、支柱103の本体103aが下の支持板110bのところで上下に分離し、その間にスペーサを継ぎ足して長くできるようになっている。
【0081】
支柱103の本体103aには、コアドリル106のネジ棒昇降機構を構成する昇降ブロック104が取り付けられており、この昇降ブロック104に、コアドリル106のネジ棒横動機構を構成する2本のスライドヨーク115が水平方向に間隔を開けて貫通されている。昇降ブロック104の本体部104aから前方に突出したスライドヨーク115の先端には、前記のブラケット105が支持されている。このスライドヨーク115の基端は支持板116に固定され、支持板116の中央部には、先端を昇降ブロック104に回転自在に支持させた駆動ネジ117が螺合され、支持板116から突出した駆動ネジ117の基端には、外周部にハンドル118を有する円板118aの中心が固定されている。したがってハンドル118により円板118aを一方向に回転すると、支持板116を介してスライドヨーク115が昇降ブロック104から前方に伸長し、逆方向に回転すると昇降ブロック104から後方に後退し、ブラケット105に取り付けたコアドリル106をPC管1の長手方向に移動することができる。
【0082】
このスライドヨーク115は、基台102の突起107の隣り合う2つ、例えば突起107aと107b(あるいは突起107cと107dでも同じ)を結ぶ線に平行であり、PC管1に対し中心軸線が内径線上に位置するように基台102が保持された状態で、PC管1の長手方向に延びる。したがってスライドヨーク115の進退によってコアドリル6をPC管1の長手方向に移動しても、コアドリル106は常に基台102の中心軸線と平行な内径線上に位置決めされた状態に保持される。
【0083】
支柱103の本体103aの上端位置および下端近くの位置には、それぞれ支持板110aおよび110bが固定され、この支持板110aと110bの間にネジ棒112が回転自在に支持されている。昇降ブロック104は、スライドヨーク115が貫通した本体部104aと、スライドヨーク115の駆動ネジ117を支持させた小形の昇降部104bとからなり、本体部104aを支柱103の本体103aに摺動自在に嵌装し、昇降部104bの内に設けられた雌ネジ111をネジ棒112に噛合させて、支柱103の本体103aに設けられている。下の支持板110bから突出したネジ棒112の下端には、ワンウエィレバー113が取り付けられている。該レバー113によりネジ棒112を一方向に回転すると、昇降ブロック104が支柱103の本体103aに沿って上昇し、ネジ棒112を逆方向に回転すると本体103aに沿って下降し、これにより、コアドリル106が基台102の中心軸線と平行なPC管1の内径線上で移動する。
【0084】
上記のネジ棒112には、昇降ブロック104の昇降部104bを当接させるストッパ128が嵌装されており、昇降部104bの側面に取り付けた高さ方向の目盛り板129によりストッパ128の位置を計測してネジ棒112に固定することにより、PC管1へのコアドリル106のコアビット122の進入深さを設定することができるようになっている。コアドリル106のPC管1の長手方向への移動量は、昇降ブロック104の昇降部104aの側面に取り付けた目盛り板130により計測することができる。
【0085】
コアドリル106は、コアドリル本体106aと、その本体106aの駆動軸121の上端に着脱自在に取り付けられる前記のコアビット122とからなる。コアドリル106は、コアドリル本体106aを固定したドリルホルダ120の下部をブラケット105の先端に設けられた切欠き部に挿入し、ブラケット105の下面からドリルホルダ120をネジ止めすることによって、ブラケット105に着脱自在に取り付けられる。ブラケット105には、コアドリル106に代えて精密金属探知センサ132を同様にネジ止めで取り付けることができ、PC管1に削孔した長穴80内で横筋3の探知ができるようになっている。
【0086】
上記のドリルホルダ120には、伸縮ガイドリングスタンド124がコアビット122と平行に取り付けられており、コアビット122の先端には、ガイドリングスタンド124の外面に嵌装したバネ125で伸縮自在に支持されたガイドリングホルダ126が嵌装されている。このホルダ126にパッキン127aを先端に設けたガイドリング127を取り付けて、コアビット122の先端を覆うことにより、ドリルホルダ120の注水口123aからコアビット122の内側の通水路123bを通ってコアビット122の先端から噴出した冷却および防塵用の飛び散りを防いで、ガイドリング127の排出口123cから排出するようにしている。
【0087】
本実施形態の管劣化コアサンプラー100でPC管1のサンプルコアを採取するには、図20示すように、まず、PC管1の内壁8の例えば斜め上方45°の位置に支柱103が向く姿勢で内壁8に対し基台102を押圧して突起107a〜107dを当接させ、支柱103のストッパ109を伸長して内壁8に圧接して、コアドリル106がPC管1の内壁8の隣り合う縦筋7同士の間にマークした2つのコアリング位置の1つ目を通る内径線上に位置するように位置決めする。必要ならば、図18のハンドル118を回してコアドリル106をPC間1の長手方向に移動する。
【0088】
ついで図18のレバー113によりコアドリル106をPC管1の内壁8に移動し、φ32のコアビット122によりPC管1の1つ目のコアリング位置を横筋3の近くまで削孔する。1つ目の削孔が終わったら、レバー113によりコアビット122を削孔した穴からPC管1の内壁8の外に抜き出し、ハンドル118によりコアドリル122をPC管1の長手方向に2つ目のコアリング位置まで移動し、2つ目のコアリング位置を同様に横筋3の近くまで削孔する。これにより、PC管1の縦筋7同士の間に2つの穴が長手方向に重なった横筋探知用の長穴80(第1の穴)が形成される。
【0089】
ついでコアドリル106の駆動軸121にサライビットを装着し、長穴80内を長手方向に移動させながら長穴80の底を平らに浚い、つぎにブラケット105に精密金属探知センサ132を取り付け、長穴80内で精密金属探知センサ132を長手方向に移動して横筋3の位置を検出する。ついでブラケット105にコアドリル106を装着しなおし、φ12.5のものに替えたコアビット122により、長穴80内の隣り合う横筋3同士の間にマークしたコアリング位置を削孔し、これによりカバーモルタル5のサンプルコアを採取する。
【0090】
その後は、前の実施形態と同様にして、サンプルコアの採取で形成された第2の穴82をゴム栓84で塞ぎ、第1の穴80をポリマーセメントで塞げば、PC管1からのサンプルコアの採取および採取箇所の補修が終了する。
【0091】
本実施形態によれば、基台102の突起107(107a〜107d)をPC管1の内壁8に当接させ、支柱103のパッド109を内壁8に圧接させるので、コアドリル106を基台102の中心軸線と平行なPC管1の内径線上に位置決めし、PC管1内にコアサンプラー100を保持することができる。そしてレバー113によりネジ棒昇降機構を介してPC管1に対しコアドリル106を内径線上で移動して削孔するので、反力の影響を受けることなくPC管1を内側から直角に削孔してコアサンプルを採取することができる。またハンドル118によりネジ棒横動機構を介してコアドリル106をPC管1の長手方向に移動することができるので、PC管1内にコアサンプラー100をセットしなおすことなく、PC管1の長手方向に重なる2つの穴を削孔して、横筋探知用の長穴80を形成するができる。
【0092】
以上の実施形態では、いずれも、PC管1を例にとって、管の内側からカバーモルタルのサンプルコアを直角に採取する場合を説明し、その採取過程でPC管1のコンクリートコア2からサンプルコアを採取することができることも示した。本発明は、ヒューム管のコンクリートコアからサンプルコアを採取する場合にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明に係る管劣化コアサンプラーは、PC管やヒューム管などの鉄筋コンクリート管のサンプルコアを管の内側から採取する装置として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明のコアサンプル採取方法で使用する鉄筋探知機を示す平面図である。
【図2】本発明のコアサンプル採取方法で使用するコアリング位置決め用具を示す斜視図である。
【図3】図2のコアリング位置決め用具の使用法を示す平面図である。
【図4】本発明のコアサンプラーの一実施形態を示す斜視図である。
【図5】図4のコアサンプラーに十字プレートを装着し、コアドリルを取り外したところを示す斜視図である。
【図6】図1のコアサンプラーの削孔時の姿勢を示す概略側面図である。
【図7】本発明のコアサンプル採取方法で使用する精密金属探知機を示す斜視図である。
【図8】図7の探知機に設置される近接センサを示す正面図である。
【図9】本実施形態に係る金属探知センサスライド装置の使用形態を示す図である。
【図10】本発明のサンプルコア採取方法を示すブロック図である。
【図11】本発明の採取方法に従って削孔したPC管を示す断面図である。
【図12】図11の削孔部分をPC管の内側から視た図である。
【図13】図11のPC管の削孔部分の第2の穴にゴム栓を取り付けたところを示す断面図である。
【図14】図13のゴム栓の突起の他の例を示す部分図である。
【図15】図11のゴム栓をPC管の削孔部分の第2の穴に取付けるのに使用するゴム栓挿入金具兼用ノッキングハンマを示す断面図である。
【図16】図13のゴム栓の穴に挿入する中栓およびその挿入に使用する中栓挿入棒を示す断面図である。
【図17】PC管の構造を示す一部破断斜視図である。
【図18】本発明のコアサンプラーの他の実施形態を示す斜視図である。
【図19】図18のコアサンプラーの縦断面図である。
【図20】図18のコアサンプラーをPC管の内側に管横断方向に設置したところを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 PC管
2 コンクリートコア
3 横筋(円周方向PC鋼線)
5 カバーコートモルタル
7 縦筋(縦方向PC鋼線)
10 鉄筋探知機
20 コアリング位置決め用具
44〜48 突起
30 管劣化サンプラー
32 コアドリル
33 十字プレート
34 コアビット
36 シャフト
39 ドリル取り付け孔
40 ガイドプレート
41 コアビットが通る穴
42 基台
50 可動ストッパ
60 精密金属探知機
70 近接センサ
80 第1の穴
82 第2の穴
84 ゴム栓
90 ゴム栓挿入金具兼用ノッキングハンマ
96 中栓挿入棒
98 中栓
100 管劣化コアサンプラー
102 基台
103 支柱
104 昇降ブロック
105 ブラケット
106 コアドリル
107a〜107d 突起
109 パッド
112 ネジ棒
113 ワンウエィレバー
115 スライドヨーク
118 ハンドル
118a ネジ棒
120 ドリルホルダ
121 駆動軸
122 コアビット
132 精密金属探知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート管を縦筋および横筋の間の位置で内側から削孔するコアドリルと、平行四辺形の頂点に相当する位置に、該平行四辺形の中心を中心とする中心軸線と平行に同一突出量で突出された4本の突起を有し、該4本の突起を前記管の内壁に当接させることによって、前記コアドリルを前記管の内径線上に位置するように位置決めする、前記コアドリルが前記中心軸線に沿って移動可能に取り付けられた基台とを備えることを特徴とする管劣化コアサンプラー。
【請求項2】
前記基台の前記中心軸線上に前記コアドリルのコアビットが通る貫通穴を形成するとともに、前記基台の上方に前記中心軸線上で移動可能に前記コアドリルを支持する支持台を設けたことを特徴とする請求項1記載の管劣化コアサンプラー。
【請求項3】
前記コアドリルを前記基台の前記中心軸線に対してオフセットして配置するとともに、前記基台の中心軸線上に支柱の本体を固定し、前記鉄筋コンクリート管の前記基台とは反対側の内壁に圧接するパッドを前記支柱の本体に対してその軸線方向に進退自在に配設してなる支柱を設けたことを特徴とする請求項1記載の管劣化コアサンプラー。
【請求項4】
前記支柱の本体に対して昇降ブロックを該支柱の軸線方向に移動自在に設け、該昇降ブロックに対してブラケットを前記中心軸線を通る前記鉄筋コンクリート管の長手方向線上で移動自在に設け、前記ブラケットに前記コアドリルを着脱自在に装着することを特徴とする請求項3記載の管劣化コアサンプラー。
【請求項5】
前記鉄筋コンクリート管の鉄筋を検出する金属センサを備え、前記ブラケットに前記金属センサと前記コアドリルとを選択的に装着させるようにしたことを特徴とする請求項4記載の管劣化コアサンプラー。
【請求項6】
鉄筋コンクリート管の内壁を金属探知機で走査して縦筋および横筋の位置を検出し、前記縦筋および横筋の間の位置でコアドリルに装着したコアビットにより前記管を直角に削孔して前記管のサンプルコアを採取することを特徴とするサンプルコア採取方法。
【請求項7】
前記鉄筋コンクリート管の内壁を金属探知機で走査して縦筋の位置を検出し、前記縦筋の間の位置でコアドリルに装着した第1のコアビットにより前記管を直角に削孔して複数本の横筋に渡る該横筋の近くまで達する第1の穴を形成し、前記穴の底を金属探知機で走査して横筋の位置を検出し、前記穴内の前記横筋の間の位置で前記コアドリルに装着した第2のコアビットにより前記管の外面まで達する第2の穴を前記管に直角に削孔して前記管のサンプルコアを採取することを特徴とする請求項6記載のサンプルコア採取方法。
【請求項8】
前記第1の穴は、前記管の長手方向に重なるようにして削孔した複数の穴からなる長穴であることを特徴とする請求項7記載のサンプルコア採取方法。
【請求項9】
前記サンプルコアの採取後、前記第1の穴をゴム栓で塞ぎ、前記第2の穴をセメント材で塞いで補修することを特徴とする請求項7または8記載のサンプルコア採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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