説明

管圧延プラント

本発明は、典型的には中から大直径を有する継目無管を圧延するためのプラントに関する。プラントは、半完成管をマンドレル圧延するための調整可能なロールを有する主圧延機を備える。このプラントはまた、主圧延機の下流に位置決めされそれと直列する、ロールが固定された引抜き/縮小機を備える。引抜き/縮小機は、半完成管をマンドレルから引抜き、その直径を完成管のための値に近い所定の値まで縮小するように設計される。最後に、このプラントは、ロールが調整可能な定寸機を備える。定寸機は、引抜き/縮小機の下流に、それに対してラインから外れて位置決めされる。この定寸機は、ロールの径方向位置を調整し、出て行く管の直径を規定するように設計される。本発明はまた、継目無管を圧延するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継目無管を連続圧延するための、詳細には中から大直径の継目無管を連続圧延するためのプラントに関する。本発明はまた、前記圧延を実行するための方法に関する。出発鋼片を連続的に塑性変形させる手段により、継目なしの金属管を製造することが知られている。第1のステップとして、鋼片は、加熱炉内で約1220〜1280℃の温度まで加熱される。次いで鋼片は、厚い壁部と、出発鋼片の1.5倍から4倍の長さとを有する穿孔された半完成物品が得られるように、縦方向に穿孔される。次いで、この半完成物品内にマンドレルが挿入される。この半完成物品は次いで、適当な直径縮小動作によって壁部を次第に薄くし、完成製品の長さを増大させることができる、圧延機(以下で「主圧延機」と呼ぶ)に通される。この圧延機は、よく知られているように、複数の圧延ユニットを備える。それぞれのユニットは、スタンドを備え、その上に、形状付けされた溝を有するロールが取り付けられる。一般に、形状付けされたロールの数は3つであり、3つのロールの溝の形状は、互いにすべて連結されて、圧延ユニットにより放出される管の外形を定める。
【背景技術】
【0002】
上述のように、主圧延機は、圧延中にローラによって加えられる径方向の推力に対抗することができる、加工される管の内側のマンドレルの構成を必要とする。この対抗作用を及ぼすために、マンドレルは、径方向で極めて高い剛性をもたなくてはならない。さらに、管の内面の高品質の仕上げを保証するために、マンドレルは、可能な限り滑らかな外面をもたなくてはならない。この要件のため、互いに接合されるいくつかの部品からなるマンドレルを製造することは、極めて困難となる。接合領域は実際、必然的に不均一な表面により特徴付けられる。さらに、この領域は弱すぎて、径方向の圧延圧力に適切に耐えることができない。
【0003】
保持マンドレルを使用することも知られている。マンドレルは、軸方向に拘束され、制御された速度で前進するように保持されるが、この解決法は明らかな欠点を有する。マンドレルの単一の区間は実際、制動される間に、圧延機に沿って軸方向に前進させられ、完全な変形状態の間に、すべての圧延ステーション内に連続的に係合させられる。マンドレルは、圧延ステーションの内側で、変形エネルギー、および管材料の摺動接触によって生み出される摩擦による、高い熱応力および機械的応力を受ける。したがって、2つ以上の圧延ステーションを通ることにより、マンドレル温度が大幅に上昇させられ、そのため、圧延の最後にそれらを1つずつ適当に冷却し、次の圧延サイクルのために潤滑にすることができるように、互いに同一であるいくつかのマンドレルを設けることが必要となる。
【0004】
さらに、個々のマンドレルは、典型的には圧延中に生じる応力に耐えるために、全体的に特に高品質の材料で製作されなければならないことを考慮しなければならない。
【0005】
上記から、主圧延機の動作を保証することを可能にするために、マンドレルの在庫にかなりの経費が必要となることが明らかである。
【0006】
主圧延機の下流で、管はマンドレルから引き抜かれ、次いで、適当な品質の制御基準に従ったものとなる管を得るために、最終的な仕上げ動作が実行される。
【0007】
確認されなければならない主なパラメータは、管の壁厚および外径である。
【0008】
現在、最終的な仕上げ動作を実行することができる、2つの異なるタイプのプラントが知られている。
【0009】
第1のタイプのプラントは、主圧延機の下流にありそれと直列である、半完成の管をマンドレルから引き抜くことができる引抜き機の配置を想定したものである。この引抜き機は、通常、3つのスタンドを備える。
【0010】
後の加工動作中にはもはや、管の壁厚を直接修正することはできない。したがって、このタイプのプラントでは、引抜き後すぐに壁厚の制御を行うことが望ましい。このようにして、半完成の管が所望の厚さと異なる壁厚を有する場合、後続の管区間に沿った厚さを修正するように、主圧延機の自動調整を実行することができる。
【0011】
定寸機が、引抜装置および厚さ制御点の下流にラインから外れて位置決めされる。この定寸機は、複数の(通常10〜12個の)固定されたスタンドを備え、それらは、管の最終的な直径を、所望の規格に従ったものとなるように規定することができる。直径に関する良好な結果を得るためには、後の冷却中に管の均一な収縮も達成することができるように、適当な加熱炉内側の管の均一な温度を保証することが望ましい。この加工ステップ中に、主圧延機から出る管は実際、管の幾何学的条件および工程中の過渡的因子に応じて、様々な区間に沿って異なる温度を有することがある。定寸機に先行する加熱炉は、管が約950℃の均一な温度を有することができるように、管全体を内部に収容することができるような寸法をもたなくてはならない。
【0012】
定寸機の作用後に、管の最終的な直径は所望の規格に従ったものとなる。ただし、定寸機の作用により、制御不可能かつ時には予測不可能なやり方で壁厚が修正されるので、壁厚は、規格に従ったものにならないことがある。定寸機の下流には、管の最終的な厚さを制御するためのステーションを設けることもでき、必要に応じて、主圧延機内の上流で半完成物品の厚さを修正することができる。ただし、この制御動作が後期に実行されること、および、必要とされる規格からの厚さの偏差を生じた条件が再び一時的に変えられ、それにより制御動作の効果を無効にすることが明らかである。
【0013】
この第1のタイプのプラントは、広く使用されているが、欠点がないわけではない。まず、引抜き機と定寸機との間に構成される加熱炉により費用が増し、かつ、加熱炉は絶えず動作し続けなくてはならないので運転費が高くなる。さらに、ロジスティックの観点で言えば、ロールが固定される定寸機は、必要とされる様々な直径、使用される様々な鋼鉄、およびそれらの特徴に適合可能とするために、大量のマンドレルストックの在庫を必要とする。最後に、上述のように、管壁の最終的な厚さの制御は間接的にのみ実行され、公差の値を小さくすることを保証することができない。
【0014】
第2のタイプの公知のプラントは、主圧延機の下流にありそれと直列である、引抜き/定寸機の配置を想定したものである。この引抜き/定寸機は、複数の調整可能なロールスタンドを備え、したがって管をマンドレルから引抜き、最終的な管直径を制御することができる。壁厚の制御は、引抜き/定寸機の直後に実行される。このようにして、完成管が所望の厚さと異なる壁厚を有する場合、後続の管区間に沿って厚さを修正するように、主圧延機の自動調整を実行することができる。
【0015】
このタイプのプラントは、上記で説明したプラントよりも明らかに小型であるが、多数の欠点があり、それを利用することは特に有利なことではない。
【0016】
引抜き/定寸機は実際、多くの(10〜12個の)調整可能なスタンドを備え、したがって非常に複雑で高コストの機械である。
【0017】
さらに、管直径の精密な制御を、ライン上で実行することができない。実際、圧延工程の最後に、管がプラントに沿って約5〜6m/秒の速度で動くことを忘れてはならない。したがって、管パラメータの点検および圧延機のリアルタイムの修正を可能にするフィードバック制御を実装することは、非常に難しい。管に沿って温度が変化する場合、この難しさは増す。これらの温度変化は、効果的に補償することができず、対応する変化を管の最終的な直径にもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】EP0921873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、従来技術に関して上述した欠点を、少なくとも部分的に克服することである。
【0020】
特に、本発明の目的は、完成管の外径および壁厚の両方をより効果的に制御することを可能にする、連続圧延プラントを提供することである。
【0021】
さらに、本発明の目的は、必要とされる初期費用および運転費がより少ない、連続圧延プラントを提供することである。
【0022】
最後に、本発明の目的は、ロジスティックの観点からより単純な管理を可能にする、連続圧延プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目標および目的は、請求項1に記載のプラント、および請求項12による方法によって達成される。
【0024】
本発明の特徴的な機能およびさらなる利点は、添付の図面を参照しながら以下で行う、非限定的な例により提供される実施形態の多数の例の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術による第1のタイプの圧延プラントを表すブロック図である。
【図2】従来技術による第2のタイプの圧延プラントを表すブロック図である。
【図3】本発明による圧延プラントを表すブロック図である。
【図4】本発明によるプラントにおいて用いられる主連続圧延機を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による、継目無管を圧延するためのプラントは、それ自体既知のやり方で主圧延機を備え、この主圧延機では、半完成管をマンドレル圧延するためにロールの径方向位置を調整することができる。したがって、本発明によるプラントは、主圧延機の下流に位置決めされそれと直列する、ロールが固定された引抜き/縮小機を備える。この引抜き/縮小機は、半完成管をマンドレルから引き抜き、かつ、半完成管の直径を、完成管のための所望の値に近い所定の値に縮小するように設計される。
【0027】
最後に、本発明によるプラントは、ロールの径方向位置が調整可能なタイプの定寸機を備え、この定寸機は、引抜き/縮小機の下流に、それに対してラインから外れて位置決めされる。圧延プラントを基準にして、加工される管の縦軸である圧延軸を具体的に規定することができる。したがって「径方向」とは、軸に対して垂直であり、その軸上に原点を有する半直線の方向である。
【0028】
本発明によるプラントのいくつかの実施形態によれば、主圧延機は、低速マンドレルを用いることを特徴とする。本明細書では、「低速マンドレル」という用語は、そのいかなる区間も、2つの連続する圧延ステーションの作用を受けないように保持マンドレルという意味で理解される。より具体的には、添付の図4も参照すると、以下の等式
m<d/Tl
が得られ、Vmはマンドレル32の速度であり、dは2つの連続する圧延スタンド34の間の最小軸間距離であり、Tlは圧延時間である。また、等式
l=Lt/Vt
が適用可能であり、Ltは管20の長さであり、V1は圧延機30に沿った管20の軸方向速度である。
【0029】
上記から、本発明によるプラントにおいて用いられる主圧延機30の動作に必要とされるマンドレル32は、相対的に短くすることができることを理解できる。必要とされる最小長さは、実際、圧延時間中にマンドレル32が行う移動Smによって増大する、全軸間距離D(すなわち第1の圧延ステーションと最後の圧延ステーションとの間の距離)と等しくなり、Sm=Vmlである。上記等式はまた、以下の値Sm<dを与える。
【0030】
図4に概略的に示す実施形態では、主圧延機30は単純化されており、スタンドを4つのみ備える。より明確に説明するために、この単純化された実施形態を以下で参照するが、当業者であれば、4つより多いスタンドを有する圧延機に、同じ概念をどのように適用することができるかを直ちに理解することができる。
【0031】
マンドレルの速度Vmは、極度に遅く、それにより、マンドレル32の制限された移動Smが可能になる。上記で示した変数が通常とる平均値を考えると、D+Smと等しいマンドレル32の最小長さは、約5メートルから6メートルの間となる。この長さにより、従来の保持マンドレルよりも明らかに低コストの、マンドレル32の製造が可能になる。
【0032】
さらに、マンドレルの個々の区間はそれぞれ、1つの圧延スタンドのみの作用を受けるので、工程中のマンドレルの全体的な加熱が制限される。このことから、それによるいかなる否定的な結果も伴わずに、従来のより高速のマンドレルに用いられる材料よりも、安価な材料を用いたマンドレルを製造することが可能となる。
【0033】
圧延の最後の低速マンドレルの温度がより低いことによって、より迅速な冷却も可能になる。これにより、1つのタイプの管を製造するために必要となるマンドレルの見本の数をかなり減らすことが可能になる。マンドレルの在庫の減少は総じて、かなりの経済的およびロジスティック的な利点を生じることが明らかである。
【0034】
さらに、添付の図4に示すことができるように、4つの圧延スタンド34を隔てる3つの軸間距離は、すべて同じではない。第1のスタンドを第2のスタンドから隔てる第1の軸間距離dと、第3のスタンドを第4のスタンドから隔てる第3の軸間距離dとは、実質的に同じである。ただし、第2のスタンドを第3のスタンドから隔てる第2の軸間距離は、他の2つの距離よりも大きい。マンドレル32のための小型支持スタンド36は実際、そうしなければマンドレルの一端が圧延機30に沿って突出するので、第2の圧延スタンドと第3の圧延スタンドとの間に位置決めされる。
【0035】
図4のように、第2の軸間距離は、他の2つの軸間距離よりも距離jだけ大きく、マンドレル32の各区間は、全圧延工程中に、最大で長さSm<dを有する区間に沿って移動すると考えられる。したがって、第2の軸間距離と関連付けると、第2のスタンドまたは第3のスタンドのいずれかによるいかなる圧延も受けない、少なくともjと等しい長さを有するマンドレル32の区間を特定することができる。したがって、長さjのこの区間は、マンドレル32の2つの部分32’および32’’の間の接合部33を設けるために利用することができる。上記で考察した例をさらに参照すると、マンドレル32の2つの部分32’および32’’はそれぞれ、約2.5から3メートルの間の長さを有する。こうした長さでは、マンドレル32の製造および管理を大幅に単純化することができる。
【0036】
さらに、複合マンドレルを用いると、磨耗した部分のみを、必要に応じて交換するという選択肢が存在する。反対に、従来の非複合マンドレルを用いる場合、局所的な磨耗しか受けていないとしても、マンドレル全体を交換しなければならない。さらに、複合マンドレルを用いる場合、最も応力を受ける部分(通常、第1の圧延スタンド内に係合させられる部分)にのみ高品質の材料を用い、より小さい応力を受ける部分に、より安価な材料を用いることが可能となる。複合マンドレルによってもたらされるこうした可能性により、圧延機の動作コストが大幅に低減される。
【0037】
ここで採用される低速の複合マンドレルの解決策を用いると、市場において極めて競争力の高い主圧延機を提供することができる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、本発明による圧延プラントは、引抜き/縮小機の下流に、管の壁厚を測定するための手段を備え、これらの実施形態では、主圧延機は、管の壁厚の測定値に応じて、ロールの径方向位置を調整することができる。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、定寸機は、入ってくる管の温度を測定するための手段、および出て行く管の直径を測定するための手段を備える。これらの実施形態では、定寸機は、入ってくる管の温度および出て行く管の直径の測定値に応じて、ロールの径方向位置を調整することができる。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、本発明による圧延プラントは、主圧延機の上流に、鋼片を加熱するための加熱炉と、厚い壁部および出発鋼片の1.5から4倍の長さを有する穿孔された半完成物品が得られるように鋼片を縦方向に穿孔することができる、穿孔機とを備える。
【0041】
一実施形態によれば、本発明による圧延プラントは、定寸機の下流に、管を室温まで冷却する装置、および管を所定の長さに切断することができる切断ステーションを備える。
【0042】
本発明によるプラントは、中から大直径を有する継目無管を圧延するために、特に適している。この後者の表現は、168.3mm(6と5/8インチ)より大きい直径を指し、典型的には、168.3mmから508mm(20インチ)の間の直径を指す。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、引抜き/縮小機は、ロールが固定される8〜12個の圧延スタンドを備える。この装置は、加工される管をマンドレルから引抜き、半完成管の直径を最終的な値に近い所定の値まで縮小することができるので、引抜き/縮小機と呼ばれる。
【0044】
上述のように、引抜き/縮小機の下流に、管の壁厚を測定するための手段が任意で設けられ、これらは、主圧延機のロールの径方向位置を調整することができる。管の壁厚を直接修正する可能性は、実際、マンドレルとともに動作する主圧延機に限定される。後続の引抜き/縮小機は代わりに、マンドレルなしで動作し、管直径を直接修正することができる。引抜き/定寸機による直径の修正は、二次的な効果として厚さの変化を伴う。ただしこの変化は、事前に精密に決定することはできない。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、定寸機は、径方向に調整可能なロールを有するタイプの、2〜3個の圧延スタンドを備える。調整可能なロールを有するこれらの圧延スタンドは、たとえば、同じ出願人が取得した特許文献1に記載されるものと同様とすることができる。定寸機は、管の直径を、完成管に必要とされる所定の値に縮小することができる。
【0046】
調整可能なロールを定寸機内に用いることにより、同じロールの組を用いて、最大約3.5mmまでの直径の変化のための、様々な最終的な直径を得ることが可能であり、ロールの磨耗は、それらの耐用期間を延長するために補償することができ、材料の様々な熱収縮および製造される厚さを制御することができる。すなわち、完全に許容可能な変化のための、圧延機を備えるロールの在庫の大幅な削減が達成される。この削減は、ロール(引抜き/縮小機および定寸機)の在庫全体に関して、少なくとも30%であると推定することができる。
【0047】
上述のように、定寸機は、プラントの上記で説明した部品と直列に構成されない。これは、この加工ステップ中に、先行する加工ステップの最後に到達する速度よりも大幅に低い軸方向速度で、管を動かすことができることを意味する。通常、主圧延機を離れるとき、その内側は速度増加が最大になり、管は約5〜6m/秒の速度で移動する。管の外径を較正するための最適な圧延速度は代わりに、約1.2m/秒から約2.5m/秒の範囲内にあると確定されている。本発明によるプラントの一実施形態によれば、管は、定寸機内で約1.5から2m/秒で移動する。
【0048】
こうした供給速度で、定寸ロールの径方向位置の制御は、入ってくる管の後続の区間の温度の測定値および出て行く管の直径の測定値を、リアルタイムで任意で考慮に入れることができる。
【0049】
したがって、管の温度に応じてロールの運動をリアルタイムで制御することができることは、前記管に沿った温度の差を管理することができることを意味する。こうすると、管の均一な温度を保証するために加熱炉を提供することは、もはや必要とされない。
【0050】
このプラントを用いると、管の最適な仕上げを達成すること、すなわち非常に小さい公差内の所望の直径を得ることが可能になる。
【0051】
従来技術の第1のタイプのプラントについて述べたのとは反対に、管直径の最終的な較正は、実質的に、壁厚上にいかなる効果ももたないことに留意されたい。実際、調整可能なロールを有する少数の圧延スタンドによって、本発明によるプラントにおいて較正が実行される。一方、公知のタイプのプラントでは、最終的な較正が、固定されたロールを備えるおよそ12個のスタンドによって行われている。
【0052】
これに関連して、本発明によるプラントによって得られる公称壁厚に関する公差は、第1のタイプのプラントを用いる従来技術において達成されるものよりも一般に20%良好であることが考慮されるべきであり、特に、本発明による厚さの公差は、薄い壁厚または高合金鋼を用いる最も重大な場合においても、±7%(3σ)に制限されることを考慮することができる。一方、第1のタイプの公知のプラント内で得られる公称厚さに関する公差は、一般に最大±9%の範囲内にある。ただし、第2のタイプの公知のプラントに関しては、公称厚さに関する公差は比較的小さいが、直径に関する公差はむしろ非常に広範囲にわたる。
【0053】
大直径の管は、特にそれらが薄い壁部を有する場合、一般に、それらの本来の重量により楕円化させられることを忘れてはならない。実際、同じ温度状態において、金属材料はクリープさせられ、すなわち持続的な応力下で変形が増大する。この現象は、絶対温度で測定した材料の溶融温度の半分を超えたところの温度で生じると考えることができる。これらの状態は、第2のタイプの公知のプラント内の、最近完成した管で生じる。実際、ロールが固定される引抜き/定寸機を離れるとき、管は依然、約1000℃のかなり高い温度を有する。
【0054】
本発明によるプラントでは、定寸機からの出口で、完成管のための大幅に低い温度(約850℃)が得られ、クリープによる楕円化の現象がかなり減少する。本発明はまた、典型的には大直径の管である継目無管を圧延するための方法に関する。
【0055】
本発明による圧延方法は、以下のステップを含む。
【0056】
穿孔された半完成物品を、半完成管が得られるまで、主圧延機内で調整可能なロールを用いてマンドレル圧延するステップと、
半完成管をマンドレルから引き抜くステップと、
半完成管の直径を所定の値まで縮小させるステップとを含み、マンドレルを引き抜くステップおよび半完成管の直径を縮小するステップは、主圧延機の下流にそれと直列して位置決めされる、ロールが固定される単一の引抜き/縮小機によって実現され、この方法はさらに、
管の直径を所定の値に較正するステップを含み、管直径の較正は、
ロールの径方向位置が調整可能な定寸機によって、
引抜き/縮小機の下流で、
引抜き/縮小機に関してラインから外れて得られる。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、本発明による圧延方法はまた、引抜き/縮小機の下流にある管壁の厚さを測定するステップと、この測定値に応じて、主圧延機のロールの径方向位置を調整するステップとを含む。
【0058】
本発明による圧延方法のいくつかの実施形態によれば、管直径を較正するステップは、定寸機に入る管の温度の測定値に応じて、かつ、定寸機を離れる管の直径の測定値に応じて、ロールの径方向位置を調整することによって行われる。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、本発明による圧延方法は、穿孔された半完成物品をマンドレル圧延するステップの前に、他のステップを含むことができる。特に、本発明による圧延方法は、加熱炉内で鋼片を加熱するステップと、厚い壁部を有する穿孔された半完成物品が得られるように鋼片を縦方向に穿孔するステップとを含むことができる。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、本発明による圧延方法は、管直径を較正するステップの後に、他のステップを含むことができる。特に、本発明による圧延方法は、管を室温まで冷却するステップと、それを所定の長さに切断するステップとを含むことができる。
【0061】
上述のように、管直径を較正するステップは、この方法の先行するステップと連続して実行されない。これは、この加工ステップ中に、先行する加工ステップの最後に到達する速度より大幅に低い軸方向速度で管を動かすことができることを意味する。通常、最も大きい速度上昇にさらされるマンドレル圧延ステップの最後に、管は約5〜6m/秒の速度で移動する。管の外径を較正するための最適な圧延速度はそうではなく、約1.2m/秒から約2.5m/秒の間の範囲内で確立されてきた。本発明による方法の一実施形態によれば、較正ステップ中に、管は約1.5〜2m/秒で移動する。
【0062】
こうした供給速度で、サイジングロールの径方向位置の制御は、入ってくる管の後続の区間の温度の測定値および出て行く管の直径の測定値を、リアルタイムで任意で考慮することができる。
【0063】
したがって、管の温度に応じてサイジングロールの運動をリアルタイムで制御することが可能であることは、前記管に沿った温度の差を管理することができることも意味する。このやり方では、管の均一な温度を保証するための加熱炉を設けることはもはや必要とされない。
【0064】
この方法を用いると、管の最適な仕上げを達成すること、すなわち非常に小さい公差内の所望の直径を得ることが可能になる。
【0065】
本発明による圧延プラントおよび方法を用いると、従来技術と比べて、完成管の製造に必要とされる後の変形のより良好な分布を得ることができることに留意されたい。特に、鋼片を完成管に変えるために必要とされる変形全体に関して、従来技術による圧延プラントおよび方法は、主圧延機内で60%の変形、引抜き機内で10%の変形、および定寸機内で残りの30%の変形を行う。反対に、本発明による圧延プラントおよび方法は、主圧延機内で60%の変形、引抜き/縮小機内で30%の変形、および定寸機内で残り10%の変形を行う。この変形の再分配は、管が依然非常に高温である主圧延機のすぐ下流で生じる変形を、大幅に(10%から30%へ)増大させるので、特に都合がよい。当業者には明らかであるように、本発明による圧延プラントおよび方法は、従来技術を参照しながら説明した欠点を、少なくとも部分的に克服する。
【0066】
本発明による大直径の継目無管を圧延するためのプラントおよび方法の実施形態に関して、当業者は、固有の要求を満足させるために、それにより添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、同等の要素を用いて説明される要素に修正を加え、かつ/または置換することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継目無管を圧延するためのプラントであって、
半完成管をマンドレル圧延するためにロールの径方向位置が調整可能な主圧延機と、
前記半完成管を前記マンドレルから引き抜き、前記半完成管の直径を完成管に近い所定の値に規定するように設計される、前記主圧延機の下流にそれと直列で位置決めされる、ロールが固定された引抜き/縮小機と、
前記引抜き/縮小機の下流にそれに対してラインから外れて位置決めされる、前記ロールの前記径方向位置が調整可能であるタイプの定寸機と、
を備えることを特徴とするプラント。
【請求項2】
前記引抜き/縮小機の下流に、前記半完成管の壁厚を測定するための手段をさらに備え、前記主圧延機が、前記引抜き/縮小機を離れる前記管の前記壁厚の測定値に応じて、前記ロールの前記径方向位置を調整するように設計されることを特徴とする請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記定寸機が、入ってくる管の温度を測定するための手段と、出て行く管の直径を測定するための手段を備え、前記定寸機に入る前記管の前記温度の測定値に応じ、かつ前記定寸機を離れる前記完成管の前記直径の測定値に応じて、前記ロールの前記径方向位置を調整するように設計されることを特徴とする請求項1または2に記載のプラント。
【請求項4】
前記主圧延機の上流に、鋼片を加熱するための加熱炉と、前記鋼片を縦方向に穿孔することができる穿孔機とをさらに備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項5】
前記定寸機の下流に、前記管を室温まで冷却するための装置と、前記管を所定の長さに切断することができる切削ステーションとをさらに備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項6】
前記管が、中から大直径を有し、すなわち168.3mm(6と5/8インチ)より大きい直径を有する継目無管であることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
前記引抜き/縮小機が、固定されたロールを有する8〜12個の圧延スタンドを備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項8】
前記定寸機が、径方向に調整可能なロールを有するタイプの2〜3個の圧延スタンドを備えることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項9】
前記引抜き/縮小機内で、前記管が約5〜6m/秒で動く一方、前記定寸機内で、前記管が約1.2〜2.5m/秒で動くことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項10】
前記主圧延機(30)の前記マンドレル(32)が、そのいかなる区間も2つの連続する圧延ステーション(34)の作用を受けないように保持されることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項11】
前記主圧延機(30)の前記マンドレル(32)が、少なくとも2つの部分(32’、32’’)で構成され、2つの部分(32’、32’’)の間の接合部(33)が、圧延中にいかなる圧延ステーション(34)にも係合されないことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
継目無管を圧延するための方法であって、
穿孔された半完成物品を、半完成管が得られるまで、主圧延機内で調整可能なロールを用いてマンドレル圧延するステップと、
前記マンドレルを前記半完成管から引き抜くステップと、
前記半完成管の直径を、前記完成管に所望される値に近い所定の値まで縮小するステップとを含み、前記マンドレルを引き抜く前記ステップ、および前記半完成管の前記直径を縮小する前記ステップが、前記主圧延機の下流にそれと直列して位置決めされる、ロールが固定された単一の引抜き/縮小機によって行われ、前記方法がさらに、
前記管の前記直径を前記完成管のための所定の値へと較正するステップを含み、前記管直径の較正は、
前記ロールの前記径方向位置が調整可能な定寸機によって、
前記引抜き/縮小機の下流で、
前記引抜き/縮小機に対してラインから外れて得られることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記引抜き/縮小機の下流の前記管壁の前記厚さを測定し、この測定値に応じて前記主圧延機の前記ロールの前記径方向位置を調整するステップをさらに含むことを特徴とする前記請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記管直径を較正する前記ステップが、前記定寸機に入る前記管の前記温度の測定値に応じ、かつ前記定寸機を離れる前記管の前記直径の測定値に応じて、前記定寸機の前記ロールの前記径方向位置を調整することにより実行されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
穿孔された半完成物品をマンドレル圧延する前記ステップの前に、加熱炉内で鋼片を加熱するステップと、前記穿孔された半完成部品が得られるように前記鋼片を縦方向に穿孔するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記管の前記直径を較正する前記ステップの後に、前記管を室温まで冷却する前記ステップと、前記管を所定の長さに切断するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−530605(P2012−530605A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515614(P2012−515614)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052699
【国際公開番号】WO2010/146546
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511174797)
【Fターム(参考)】