説明

管構造体及びこれを用いたバッテリ温調システム

【課題】 連結対象となる構造体の個数に応じて容易に分岐数や長さ等の構造を変更することができる管構造体を提供する。
【解決手段】 複数の管ユニット15を連結してなる管構造体4であって、管ユニットは、両端が開口した管状の主管部17と、主管部の一端に連続した円管状の挿入端部18と、主管部の他端に連続した受容端部33と、主管部の主管部の中間部から分岐した分岐管部40とを有し、挿入端部の外周面及び受容端部の内周面の一方には凸部27が形成される一方、他方には凸部よりも大きい係止孔37が形成され、任意の管ユニットの挿入端部は、他の管ユニットの受容端部に挿入され、挿入端部の外周面と受容端部の内周面との間は可撓性を有するシール部材30によって封止され、凸部は係止孔に遊嵌し、凸部が係止孔内を変位可能な範囲で、挿入端部は受容端部に対して出没及び回転可能に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の管ユニットを連結してなる管構造体に関する。また、この管構造体を熱交換媒体の送給通路として使用したバッテリ温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の電源に、複数の電池セルを直列又は並列に接続してなるバッテリパックを使用したものがある。バッテリパックの充放電性能は温度に依存するため、大電流を取り出す場合にはバッテリパックを冷却して温度上昇を抑制する一方、使用開始等の温度が低い場合にはバッテリパックを昇温することが好ましい。このような観点からバッテリパックを筐体内に配置し、暖機風又は冷却風を筐体に供給してバッテリパックの温度調節を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−225485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなバッテリパックの温調システムにおいて、温度調節をより安定的かつ効率的に行うべく、空気に代えて水等の媒体を用いて温度調節を行いたいという要求がある。この場合には、通路を備えた熱交換器を電池セル間に配置し、各熱交換器のそれぞれに媒体を送給することが必要になる。しかしながら、バッテリパックを構成する電池セルの数が多い場合には、複数の熱交換器が必要になり、各熱交換器に媒体を送給するための管構造体が複雑になるという問題がある。また、所望の電圧に応じて必要となる電池セルの個数が増減するため、介装される熱交換器の個数も増減し、熱交換器の個数に応じた管構造体を適宜構築することが必要となり、設計及び製造上の手間が大きいという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、連結対象となる熱交換器等の構造体の個数に応じて容易に分岐数や長さ等の構造を変更することができる管構造体を提供することを課題とする。また、この管構造体を用いた簡素な構造のバッテリ温調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の管ユニット(15)を連結してなる管構造体(4)であって、前記管ユニットは、両端が開口した管状の主管部(17)と、前記主管部の一端に連続した円管状の挿入端部(18)と、前記挿入端部の外径よりも大きい内径を有し、前記主管部の他端に連続した受容端部(33)と、前記主管部の前記主管部の中間部から分岐した分岐管部(40)とを有し、任意の前記管ユニットの前記挿入端部は、他の前記管ユニットの前記受容端部に出没可能に挿入され、前記挿入端部の外周面と前記受容端部の内周面との間は可撓性を有するシール部材(30)によって封止され、前記挿入端部は他の前記受容端部に対して変位可能となっていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、管ユニットを繋げるだけで任意の規模の管構造体を構築することができるため、例えば電池セルや熱交換器の個数に応じて管構造体の規模を容易に変更することができる。各管ユニット同士の連結は、挿入端部の受容端部への挿入によって行われるため、連結操作が容易である。また、各管ユニット同士は、可撓性を有するシール部材を介して連結されており、シール部材の滑りや変形によって互いに若干の相対変位が可能であるため、分岐管部の接続対象となる構造体が寸法誤差を有していても、管構造体は各管ユニットが相対変位して接続対象に確実に接続することができる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記挿入端部の外周面及び前記受容端部の内周面の一方には凸部(27)が形成される一方、他方には前記凸部よりも大きい係止孔(37)が形成され、任意の前記管ユニットの前記挿入端部が他の前記管ユニットの前記受容端部に挿入される際に、前記凸部は前記係止孔に遊嵌し、前記凸部が前記係止孔内を変位可能な範囲で、前記挿入端部は他の前記受容端部に対して変位可能となっていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、凸部が係止孔に遊嵌することで管ユニット同士が連結した状態に維持される。また、凸部は係止孔内を変位することができるため、その変位の範囲内で管ユニット同士も互いに相対変位することができる。
【0010】
本発明の他の側面は、任意の前記管ユニットの前記挿入端部は、他の前記管ユニットの前記受容端部の内周面(34)に摺接可能な外周面(26)を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、各管ユニット同士は、がた付きなく連結される。
【0012】
本発明の他の側面は、前記分岐管部の端部には、連結対象となるパイプの端部を前記分岐管に連結するコネクタ(41)が設けられ、前記コネクタは、前記パイプ(8、9)が挿脱されるパイプ挿入管(43)と、前記パイプを係止するパイプ係止部(53)を有し、当該パイプ係止部が前記パイプを係止するロック位置と、当該係止を解除するロック解除位置との間を移動可能に前記パイプ挿入管に対して保持されるロック部材(44)と、前記ロック部材を前記ロック位置側に付勢する付勢手段(53、56)とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、分岐管部と連結対象となるパイプとの連結をコネクタによって、着脱自在にすることができるため、連結作業が容易である。
【0014】
本発明の他の側面は、上記の管構造体を有するバッテリ温調システム(1)であって、複数の電池セル(2)間に介装された複数の熱交換器(3)を有し、前記複数の熱交換器のそれぞれは、内部に通路(7)を有し、外面に前記通路に連通する入口管(8)及び出口管(9)が突設され、前記入口管及び出口管のそれぞれは、前記管構造体の各分岐管部に連結され、前記管構造体を介して前記複数の熱交換器のそれぞれに媒体が送給されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、熱交換器の個数に応じた管構造体を容易に構築することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成によれば、連結対象となる構造体の個数に応じて規模を容易に変更することができる管構造体を提供することができる。また、この管構造体を用いて簡素な構造のバッテリ温調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るバッテリ温調システムの分解斜視図
【図2】実施形態に係るバッテリ温調システムの要部を示す平面図
【図3】実施形態に係る管ユニットの斜視図
【図4】図2のIV−IV断面図
【図5】図4のV−V断面図
【図6】図2のVI−VI断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を自動車用バッテリの温調システムに適用した実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、自動車用のバッテリ温調システム1は、複数の電池セル2と、電池セル2間に介装される複数の熱交換器3と、各熱交換器3に連結された一対の管構造体4とを有している。
【0020】
各電池セル2は、リチウムイオン電池であり、そのケーシングは扁平な直方体状をなす。電池セル2のケーシングは、例えばABS樹脂といった樹脂材料から形成されている。各電池セル2は、主面同士が対向するように、互いに積層されている。各電池セル2は、図示しない正端子及び負端子を備えており、それらの端子は、例えば各電池セル2が直列となるように導電性部材によって接続されている。なお、電池セル2は、鉛電池等の公知の他の電池であってもよい。
【0021】
熱交換器3は、外形が扁平な直方体状に形成され、その主面は電池セル2のケーシングの主面と対向可能なように略同形に形成されている。熱交換器3は、熱伝導率の高い材料から形成されることが好ましく、例えばアルミニウムや銅といった金属から形成されている。熱交換器3は、その内部に液体及び気体が導通可能な通路7を備えている。通路7の一端は入口管8として熱交換器3の端部から突出し、他端は出口管9として熱交換器3の入口管8が突出した端部と相反する端部から突出している。入口管8及び出口管9は、同形の円管であり、それぞれ外周面に周方向に沿って延在する環状のバルジ部10が突設されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、電池セル2を2つ続けて配置した後に熱交換器3を1つ配置する繰り返し単位をもって、電池セル2及び熱交換器3は積層されている。また、電池セル2及び熱交換器3の積層体の両端には、熱交換器が配置されるようになっている。また、各入口管8が互いに同方向を向き、かつ各出口管9が互いに同方向を向くように、各熱交換器3は向きが定められている。
【0023】
一対の管構造体4は、各入口管8又は各出口管9に連続する分岐した配管であり、それぞれ同一構成の管ユニット15を繋ぎ合わせて形成されている。
【0024】
図3に示すように、管ユニット15は、例えばPOM(ポリアセタール)といった樹脂材料から形成されており、円管である主管部17を有する。主管部17の一端には、挿入端部18が一体に設けられている。挿入端部18は、主管部17側から順に、円管状を呈する基端部19、先端部20を同軸に有し、先端部20の先端には挿入端部18の内部及び主管部17の内部に連通する開口21が形成されている。
【0025】
基端部19は、主管部17の外径よりも小さい外径を有し、外面において主管部17との境界に段部23を有している。先端部20は、基端部19の外径よりも小さく、かつ主管部17の内径よりも小さい外径を有し、外面において基端部19との境界に段部24を有している。
【0026】
基端部19の外周面26には、一対の凸部27が径方向において互いに相反する位置に形成されている。各凸部27は、先端部20側の部分に、主管部17側へと進むにつれて外周面26からの突出量が大きくなるテーパ部と、主管部17側の部分に基端部19の軸線と直交する逆止面とを有している。
【0027】
先端部20は、周方向に延在する環状の突条28を複数有する。なお、突条28を含めて先端部20の外径は、主管部17の内径よりも小さくなっている。突条28の1つには、周方向に延在する環状溝29が形成されている。環状溝29には、可撓性を有するゴムやシリコーン樹脂から形成されたシール部材としてのOリング30が嵌め着けられている。
【0028】
主管部17の挿入端部18側と相反する端部には、主管部17と同軸に連続する円管状の受容端部33が一体に設けられている。受容端部33の外径は、主管部17の外径と同一であり、受容端部33及び主管部17の外周面は連続した面を形成している。図5に示すように、受容端部33の内周側には、端部側から順に大径部34と小径部35とが形成されている。小径部35は、主管部17の内径と同一の内径を有し、内周面が主管部17の内周面に滑らかに連続する。大径部34は、小径部35と段部36を介して同軸に連続し、開口端を形成している。大径部34の内径は、小径部35の内径より大きく、挿入端部18の基端部19が嵌入可能な大きさに形成されている。
【0029】
大径部34には、周方向において各凸部27とそれぞれ対応する位置に、径方向に貫通する係止孔37が形成されている。係止孔37は、大径部34の周方向及び軸線方向において凸部27よりも大きな幅(長さ)を有している。すなわち、各係止孔37は大径部24(主管部17)の周方向において幅L1、大径部24の軸線方向において幅L2を有し、各凸部27は大径部24(主管部17)の周方向において幅L3、大径部24の軸線方向において幅L4を有し、L1>L3かつL2>L4の関係となっている。
【0030】
主管部17の長手方向における中間部には、主管部17と直交するように分岐管部40が分岐している。分岐管部40は、主管部17と一体に形成されており、その内部は主管部17の内部に連通している。分岐管部40の開口端部には、パイプを連結するためのコネクタ41が設けられている。コネクタ41は、入口管8に連結するために用いられるものであり(同形である出口管9も同様)、入口管8が挿脱されるパイプ挿入管43と、このパイプ挿入管43の外周部に変位可能に支持され、その変位に応じて入口管8等の固定およびその解除を行うロック部材44とから主として構成される。
【0031】
図3及び図4を参照し、図3に示す座標軸を基準として説明すると、コネクタ41は、分岐管部40の端部に一体に形成された筒状のパイプ挿入管43と、パイプ挿入管43の外周に取り付けられるロック部材44とを備える。パイプ挿入管43は、上下・左右に対称な形状を有しており、入口管8が挿入される挿入孔45内の基端側(前側)には、流路を密封するための2つのOリング48が、嵌め着けられたスペーサ46及びブッシュ47によって保持されている。パイプ挿入管43の先端側(後側)の上部及び下部には、貫通孔である係止開口51が形成されている。
【0032】
ロック部材44は、例えばポリアミド系樹脂といった樹脂材料からなる略筒状の部材であり、上下・左右に対称な形状を有する。ロック部材44の上下には、その後端から後方に向けて弾性係止片53がそれぞれ突設されている。弾性係止片53の基端部の左右部分には、前方へ延びるスリット54が形成され、弾性係止片53の基端が前方へと延長されている。
【0033】
弾性係止片53は、ロック部材44の径方向内側へと湾曲し、先端部が係止開口51内に突入している。弾性係止片53の径方向内側部分であって、係止開口51の前縁部に対向する部分には、前方かつ径方向内方を向く傾斜面であるカム部56が形成されている。これにより、ロック部材44がパイプ挿入管43に対して前方に移動する際には、係止開口51の前縁部にカム部56が摺接し、弾性係止片53がロック部材44の径方向外側へと弾性変形し、弾性係止片53の先端部は係止開口51から離脱する。そのため、初期状態(通常状態)においては、弾性係止片53の復元力によってカム部56が係止開口51の前縁部を押圧し、ロック部材44はパイプ挿入管43に対して後方へと変位し、弾性係止片53の先端部は係止開口51内に突入した状態となる。すなわち、ロック部材44は、弾性係止片53によってパイプ挿入管43に対して後方へと付勢されている。ロック部材44のパイプ挿入管43に対する後方への変位は、弾性係止片53の先端が係止開口51の後縁に当接することによって規制されている。なお、ロック部材44のパイプ挿入管43に対する前方への限界変位位置は、パイプ挿入管43の外面に突設された規制片57にロック部材44の前縁が当接することによって規制されている。
【0034】
弾性係止片53の先端には、ロック部材44の径方向内側に向けて係止爪58が突設されている。通常状態においては、係止爪58は、パイプ挿入管43内に突出している。また、係止爪58は、径方向内側に突設されたその先端部から後方へと延びる突片59を有している。通常状態(すなわち、ロック部材44がパイプ挿入管43に対して後方に位置する状態)においては、突片59は係止開口51の前縁部に径方向内方から引っ掛かっており、弾性係止片53の径方向外方への弾性変形は禁止されている。突片59の径方向内側部分は、前方に進むほど径方向内側へと突出するテーパ面となっている。
【0035】
以上のように構成したコネクタ41は、初期状態において入口管8が挿入される際に、入口管8のバルジ部10によって係止爪58が前方へと押圧され、ロック部材44がパイプ挿入管43に対して前方に移動する。これによって突片59と係止開口51の前縁部との引っ掛かりが解除され、弾性係止片53の径方向外方への弾性変形が可能となる。バルジ部10によって係止爪58が更に前方へと押圧され、ロック部材44がパイプ挿入管43に対して前方に移動すると、カム部56が係止開口51の後縁部に摺接し、弾性係止片53が径方向外方への弾性変形する。また、バルジ部10が突片59のテーパ面を押圧することによって、弾性係止片53を径方向外方へと弾性変形させる。これらにより、バルジ部10は係止爪58を前方へと乗り越え、ブッシュ47に当接するまで前方に移動する。バルジ部10が係止爪58を前方へと乗り越えた後は、係止爪58を前方へと押圧する荷重がなくなるため、弾性係止片53の復元力によってカム部56が係止開口51の前縁部を押圧し、ロック部材44はパイプ挿入管43に対して後方へと変位して初期状態に復帰する。この状態では、突片59が係止開口51の前縁部に径方向内方から引っ掛かり、弾性係止片53の径方向外方への弾性変形が禁止されているため、バルジ部10が係止爪58を後方へと乗り越えることはできず、入口管8はパイプ挿入管43に突入した状態に保持される。このとき、入口管8の先端部外面とパイプ挿入管43の内面との隙間は、2つのOリング48によってシールされる。
【0036】
入口管8をコネクタ41から抜き去る際には、手や工具によって、ロック部材44をパイプ挿入管43に対して前方に移動させ、突片59と係止開口51の前縁部との引っ掛かりを解除した状態で、入口管8をコネクタ41から抜き去ればよい。
【0037】
コネクタ41は、入口管8をパイプ挿入管43に挿入するだけで連結構造を形成することができるため、連結作業が容易である。なお、上記の説明では入口管8について説明したが、入口管8と同形の出口管9についても同様である。
【0038】
以上のように構成した管ユニット15を連結させて管構造体4を形成する方法について説明する。管ユニット15同士の連結は、任意の第1管ユニット15の挿入端部18を、他の第2管ユニット15の受容端部33に挿入することによって行う。挿入作業によって、第1管ユニット15の先端部20は第2管ユニット15の小径部35内に突入し、第1管ユニット15の基端部19は第2管ユニット15の大径部34に突入し、第1管ユニット15の各凸部27は第2管ユニット15の各係止孔37に遊嵌する。このとき、基端部19が大径部34にがた付きなく、かつ軸線回りに回転可能に嵌入することによって、第1管ユニット15と第2管ユニット15とは同軸に配置される。また、Oリング30が、先端部20の外周面と小径部35の内周面との隙間をシールする。
【0039】
図6に示すように、各凸部27は、その逆止面において各係止孔37の孔縁部に引っ掛かることによって、挿入端部18の受容端部33からの抜け出しを阻止する。係止孔37は、凸部27に対して大径部34の軸線方向及び周方向において幅が広いため(L1>L3、L2>L4)、凸部27は係止孔37内を変位することができる。これにより、第1管ユニット15は、凸部27が係止孔37内で変位可能な範囲で、第2管ユニット15に対して軸線方向に相対移動し、また軸線を中心とした相対回転することが可能となっている。
【0040】
図2及び図5に示すように、管構造体4の末端に位置する受容端部33は、めくら蓋60によって封止される。このようにして、分岐した通路を有する管構造体4が形成される。管構造体4の隣接する分岐管部40間の距離が、2つの電池セル2を挟んで配置される2つの熱交換器3の入口管8間の距離及び出口管9間の距離に一致するように、各管ユニット15の主管部17の長さが予め設定されている。
【0041】
以上のように構成された管構造体4は、各分岐管部40において、コネクタ41を介して対応する入口管8又は出口管9に連結される。入口管8に接続された管構造体4の一端に設けられた挿入端部18は、循環通路の供給側に接続され、出口管9に接続される管構造体4の一端に設けられた挿入端部18は、循環通路の戻り側に接続される。循環通路は、経路内に媒体を圧送するためのポンプと、媒体の加熱及び冷却を行う温度調節装置とを備えている。媒体は、例えば水やシリコーン油等の液体や水蒸気、アンモニア等の気体といった公知の熱交換媒体であり、使用目的に応じて適宜選択すればよい。このようにして、管構造体4を含むバッテリ温調システム1が構成される。
【0042】
以上のように構成したバッテリ温調システム1では、ポンプによって圧送された媒体は、入口管8に接続された管構造体4で分岐(分配)されて各熱交換器3に供給される。そして、各熱交換器3から排出される媒体は、出口管9に接続された管構造体4で集合されてポンプへと戻される。媒体の循環経路に配置される温度調節装置は、運転開始時等の各電池セル2の暖機を行いたい場合には媒体を加熱し、継続使用時等の各電池セル2を冷却したい場合には媒体を冷却する。
【0043】
以上のように構成した管構造体4は、電池セル2の個数の増加に応じて熱交換器3の個数が増加する場合に、連結する管ユニット15の個数を増やすだけで、熱交換器3の個数に対応した配管構造を構築することができるため、拡張性及び汎用性が高い。また、管構造体4を構成する各管ユニット15は、互いに相対位置を若干変化させることができるため、電池セル2や熱交換器3の外形が寸法誤差を有していても、各入口管8及び各出口管9にこじれることなく適切に連結することができる。また、分岐管部40と入口管8及び出口管9との連結部に、入口管8等を挿入するだけで連結構造を形成することができるコネクタ41を使用したため、連結作業が容易である。
【0044】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、係止孔37は凸部27が遊嵌し得る大きさであれば貫通孔ではない、有底孔であってもよい。また、上記の実施形態では、基端部19の外周面に凸部27を設け、大径部34に係止孔37を設ける構成としたが、大径部34に凸部27を設け、基端部19に凸部27が遊嵌する有底の係止孔37を設けてもよい。また、管ユニット15において凸部27及び係止孔37のいずれも省略してもよい。
【0045】
管ユニット15同士の相対回転を規制したい場合には、図3に二点鎖線で示すように、基端部19の外周面26にキー部65を突設し、大径部34にキー部65が嵌合するキー孔66を形成して両者を嵌合させるようにしてもよい。また、凸部27の幅L3と係止孔37の幅L1とを等しくし、凸部27と係止孔37とを周方向において係合させることによって、管ユニット15同士の相対回転を規制してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…バッテリ温調システム、2…電池セル、3…熱交換器、4…管構造体、7…通路、8…入口管、9…出口管、10…バルジ部、15…管ユニット、17…主管部、18…挿入端部、19…基端部、20…先端部、26…外周面、27…凸部、30…Oリング、33…受容端部、34…大径部、35…小径部、37…係止孔、40…分岐管部、41…コネクタ、43…パイプ挿入管、44…ロック部材、45…挿入孔、51…係止開口、53…弾性係止片、56…カム部、58…係止爪、59…突片、60…蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管ユニットを連結してなる管構造体であって、
前記管ユニットは、
両端が開口した管状の主管部と、
前記主管部の一端に連続した円管状の挿入端部と、
前記挿入端部の外径よりも大きい内径を有し、前記主管部の他端に連続した受容端部と、
前記主管部の前記主管部の中間部から分岐した分岐管部とを有し、
任意の前記管ユニットの前記挿入端部は、他の前記管ユニットの前記受容端部に出没可能に挿入され、前記挿入端部の外周面と前記受容端部の内周面との間は可撓性を有するシール部材によって封止され、前記挿入端部は他の前記受容端部に対して変位可能となっていることを特徴とする管構造体。
【請求項2】
前記挿入端部の外周面及び前記受容端部の内周面の一方には凸部が形成される一方、他方には前記凸部よりも大きい係止孔が形成され、
任意の前記管ユニットの前記挿入端部が他の前記管ユニットの前記受容端部に挿入される際に、前記凸部は前記係止孔に遊嵌し、前記凸部が前記係止孔内を変位可能な範囲で、前記挿入端部は他の前記受容端部に対して変位可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の管構造体。
【請求項3】
任意の前記管ユニットの前記挿入端部は、他の前記管ユニットの前記受容端部の内周面に摺接可能な外周面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管構造体。
【請求項4】
前記分岐管部の端部には、連結対象となるパイプの端部を前記分岐管に連結するコネクタが設けられ、
前記コネクタは、
前記パイプが挿脱されるパイプ挿入管と、
前記パイプを係止するパイプ係止部を有し、当該パイプ係止部が前記パイプを係止するロック位置と、当該係止を解除するロック解除位置との間を移動可能に前記パイプ挿入管に対して保持されるロック部材と、
前記ロック部材を前記ロック位置側に付勢する付勢手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の管構造体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の管構造体を有するバッテリ温調システムであって、
複数の電池セル間に介装された複数の熱交換器を有し、
前記複数の熱交換器のそれぞれは、内部に通路を有し、外面に前記通路に連通する入口管及び出口管が突設され、
前記入口管及び出口管のそれぞれは、前記管構造体の各分岐管部に連結され、
前記管構造体を介して前記複数の熱交換器のそれぞれに媒体が送給されることを特徴とするバッテリ温調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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