管状体により成形された立体構造物
【課題】 樹脂シートの片面または両面に、細くて高い針状突起が形成される立体構造物に関し、その針状突起の先端部を種々の形状を持たせた特異な性状を有する立体構造物に関する。
【解決手段】 樹脂シートの片面または両面に針状突起が形成される立体構造物において、その針状突起の先端が不連続にさらに変形されたものであり、さらに、その構造体が針状突起の内部の空洞に物体が充填されるようにするにより、特異な機能や構造を持たせた立体構造物に関する。
【解決手段】 樹脂シートの片面または両面に針状突起が形成される立体構造物において、その針状突起の先端が不連続にさらに変形されたものであり、さらに、その構造体が針状突起の内部の空洞に物体が充填されるようにするにより、特異な機能や構造を持たせた立体構造物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体からなる針状の型を用いて樹脂シートの片面または両面に針状突起が形成される立体構造物の製造手段によって製造された立体構造物に関し、特に、その細くて高い針状突起を有する立体構造物を安定して製造可能にすること、およびその針状突起の先端をさらに変形させることや、突起の内部の空洞に物体を充填させることを可能にすることにより、特異な機能や構造を持たせた立体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートの両面や片面に尖頭の突起を有する立体構造物およびその製造方法が提案されている(例えば、特開昭48−75678号)。しかし、この開示されている立体構造物については、細くて長い針状突起を安定して製造することができないため、工業的に生産されていなかった。またこの開示された構造物は、尖頭の先端部が厚いため、先端部を溶融除去して孔を開けることや、先端部で他のシート状物と溶融接合することにおいて障害になっていた。また、この開示されている構造物は、カサ高性があって圧縮強度の大なる性質のみが求められており、その突起の内部の空洞を積極的には利用されていなかった。また、この開示されている立体構造物は、尖頭が細くて長さが長い場合、型からの抜けが悪くなり、また、成型物の冷却が遅いため、安定して連続的に製造できていなかった。そのため工業的には発展しておらず、これらの構造物を安定して製造できる手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭48−75678号公報(第1頁、第2頁、第11頁左下欄、第1図、第5図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の欠点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、樹脂シートの両面や片面に針状突起を有する立体構造物の突起の先端をさらに変形させて、針状突起の先端を薄くしたり、窪みを持たせたり、孔を開けたりすることにより、立体構造物の有用性をさらに高めることにある。また本発明は、立体構造物のその突起の内部の空洞に物体を充填させて、新たな機能を有する立体構造物とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、その立体構造物としての特徴は、次の通りである。本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この針状突起の先端がさらに変形されて、この変形された先端部の厚みが、1/2H部における側壁の厚み以下である立体構造物に関する。また本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この針状突起の先端がさらに変形されて、この変形された先端部に窪みを有する立体構造物に関する。また本発明は、樹脂シートの両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この針状突起の内部に形成されている空洞に物体が充填されている立体構造物に関する。さらに本発明は、前記の針状突起の先端において、シート状物が接合されている立体構造物に関する。
【0006】
また本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上であることによって流動性を有している樹脂シートの片方の面の側に、多数の針状型が基板と一体化されて設けられており、この樹脂シートの他方の面の側には、針状型の突起に対応した位置に孔が開けられている孔開き押さえ板が、該針状型が樹脂シートを貫通する際に樹脂シートを背面から支えるように構成されおり、針状型が該孔開き押さえ板の孔の中に嵌入するように、この樹脂シートに対して垂直方向に移行することによって、該樹脂シートが変形されてシートの片面に多数の針状突起が形成されたものであり、かつ、この針状突起は、樹脂シートが管状体の針状型を用いて針状突起に成形される過程で、管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物に関する。さらに本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上である流動性を有している樹脂シートに対して、突起の高さhが3mm以上であって、hの1/2における幅wが、h≧3wである多数の針状型が基板と一体化されており、この基板の一対が互いに向かい合って設置され、その一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に移行することにより樹脂シートが変形されてシートの両面に多数の針状突起が形成された立体構造物であり、かつ、この針状突起は、樹脂シートが管状体の針状型を用いて針状突起に成形される過程で、管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物に関する。
【0007】
本発明は、樹脂シートの片面または両面に、針状突起を有することを特徴とする。樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル酸メチル樹脂等のアクリル樹脂、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の熱可塑性樹脂が好んで使用される。さらに、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂であっても、加熱等によって、以下に示す荷重たわみ温度以上で流動性を示す樹脂であれば使用することができる。また、上記の樹脂は、単体で使用されるばかりでなく、ブレンド等により樹脂相互を組み合わせて使用することも出来、さらに可塑剤や充填剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤等の添加剤等を加えて使用することもできる。また本発明は、土木用等にも使用されるので、ポリ乳酸系やポリブチレンサクシネート系等の生分解性樹脂や、ビニルケトン系ポリマー等の光分解性樹脂などの分解性樹脂も好ましい。また、本発明は柔らかい立体構造物をも目的としており、SBSやポリウレタン等の熱可塑性エラストマーも使用することができる。
【0008】
本発明は、樹脂シートの片面または両面に、その樹脂シートの一部が変形されることによって形成された多数の針状突起を有する。ここで使用される樹脂シートは、上記樹脂がシート状に成形されたものを意味する。シートは、厚みにおいて特に制限はなく、通常フィルムや膜と呼ばれるものも含むが、厚みは、好ましくは10μm以上であって3mm以下、さらに好ましくは50μm以上であって2mm以下、100μm以上であって1mm以下が最も好ましい。10μmに達しない場合や3mmを越える場合は、安定して成形することが困難だからである。本発明による針状突起を有する立体構造物は、シート状物の片面に針状突起が形成された立体構造物と、シート状物の両面に針状突起が形成された立体構造物がある。片面に針状突起が形成された立体構造は、片面の針状突起の数を多くすることができ、そのため圧縮強度が強く、また、底面には既にシート状を形成しているので、針状突起の先端にシート状物を接合するだけで、天地にシート状物を有する構造物とすることができる。両面に針状突起を形成された立体構造は、立体構造物の厚みが大きくなり、よりカサ高性のある構造物とすることができる特徴を有する。したがって、片面に針状突起を有する構造体を用いるか、両面に針状突起を有する構造体を用いるかは、これらの特性に合わせて、用途により判断される。
【0009】
本発明の立体構造物における針状突起は、突起の高さHが3mm以上であることを特徴とする。突起の高さHは、3mm以上であって、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは5mm以上であって100mm以下であり、8mm以上であって50mm以下であることが最も好ましい。3mmに達しない場合は、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができず、200mmを越える場合は、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合がある。また、本発明の突起の高さHの1/2の位置における幅Wは、H≧2Wであることを特徴とする。Wに対して、高さHを大きくできることが本発明の特徴だからである。Wは、H≧2Wであって、好ましくはH≦100W、さらに好ましくはH≧2.5WであってH≦70W、H≧3WであってH≦50Wであることが最も好ましい。これらの範囲にすることにより、カサ高性や空隙率を大きくでき、さらに柔軟性のある構造とすることができるからである。なお、H<2Wの場合では、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができない場合があり、H>100Wでは、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合があるからである。なお、突起は必ずしも円錐状の対称的な形状のみを意味するものではなく、Wにおける断面が楕円や四角、三角等の種々の形状を有することもでき、またこれらの混在であってもよい。この場合におけるWの値は、1/2Hにおける断面での最も小さい値を採用する。また、本発明における一つの構造体においては、HやWは一定である必要はなく、種々のWが混在していてもよい。なお、HやWの測定は、ランダムに選んだ30点の突起を測定し、算術平均して求める。
【0010】
本発明においては樹脂シートの片面または両面に多数の針状突起を有することを特徴とする。多数とは、10個以上、好ましくは数10個、大きい場合は数100個、数千個以上の突起を有する。針状突起の数は、主として本発明のWの値に依存するが、本発明は、突起の高さHに比較してWが小さいことより、針状突起を数多く設けることができる。針状突起の数が多いことは、それだけ圧縮強度が大きいことを意味し、Wが小さくてHが大きいことは柔軟でカサ高であることを意味するので、本発明の立体構造物は、柔軟でカサ高ではあるが圧縮強度の大きい構造とすることができた。なお、本発明の構造体における針状突起は、一定のピッチを必ず有する必要はなく、ランダムなピッチ、また単純な一定ピッチではなく、複雑なピッチを有する場合もある。
【0011】
本発明においては、樹脂シートの片方の面または両面に樹脂シートの一部が変形されることによって針状突起が形成されているその針状突起の先端がさらに変形されて、その変形された先端部の厚みが、1/2H部における側壁の厚み以下になっている構造体とすることができる。通常に針状突起を製造すれば、従来技術の特許文献1に示されているように針状突起の先端部は厚くなる。しかし、本発明における針状型によって針状突起を形成させた後、針状型が管状体となっていることより、針状型の内部より加熱エアー等の熱流体を噴出させ、その針状突起の先端部がさらに変形されて、先端部に厚みの薄い成形体がさらに加わった構造物とすることができる。先端部にさらなる変形が加わることにより針状突起に高さがさらに高くなり、よりカサ高性の構造体とすることができた。さらに、先端部の厚みが薄くなることによって、先端部に孔を開けるために先端部を溶融することが容易になり、また、先端部に他のシート状物を溶融接合する場合、先端部の溶融が容易になった。先端部の厚みは、1/2H部の厚みの1/2以下になっていることが望ましい。
【0012】
また、本発明の針状型が管状体からなることにより、針状型により針状突起が形成された後、管状体を利用して吸引することにより、この針状突起の先端がさらに変形されて、先端部に窪みを有する立体構造物とすることができる。先端に窪みを有する構造体は、先端でシート状物と接着剤接合する場合に、接着剤の載りがよく、また接合面も大きくなるので、シート状物との接合強度の大きな構造物とすることができる。また、管状体の先端を星形やハート形等の形状にしておくことにより、その窪みにそれらの形状の意匠を付与すること出来、意匠効果のある立体構造物とすることができる。
【0013】
管状体を利用して、そこで吸引する他の利用手段として、吸引を強く行うことで、針状突起の先端を破き、先端に孔をあけることにより、針状突起の先端部に孔を有する構造とすることができる。針状突起の先端に孔を有する構造は、先に説明した、先端部を膨らますさらなる変形で薄くし、その状態で先端部を溶融して除去することや突き破る等の手段でも実現することができる。
【0014】
本発明の立体構造物は、針状突起の先端において、シート状物と接合されている構造物とすることができる。本発明における針状突起は、先端を薄くすることで溶融接合を容易にし、また逆に先端部に窪みを持たすことで接着剤接合が容易するなど、先端部においてシート状物との接合が非常に容易であることを特徴とする。本発明における立体構造物とシート状物との接合方法の例としては、溶融樹脂を押出ラミネートする場合や、樹脂シートを加熱溶融する場合は、立体構造物の針状突起の先端と接触して、針状突起の先端部を溶融している樹脂シートの熱容量で溶解して接合することができる。また、シート状物または立体構造物の先端に、ホットメルト接着剤やエマルジョン接着剤などの接着剤を塗布してから、接合接着することもできる。シート状物と接合されることにより、寸法安定性がアップし、また針状突起の左右への動きを妨げるので、圧縮強度もアップする。接合するシート状物の種類は、本発明の立体構造物を形成させるシートと同様な樹脂シートばかりでなく、織物、編物、不織布、ネット、紙などの通気性や通水性を有する素材、耐熱性を要求される場合はアルミ箔等の金属やセラミック板等も使用することができる。樹脂シートでは孔開きフィルムが、通気性や透水性が要求される場合に好適である。また、通気性発泡シートも使用することができる。これらの通気性を有するシートを接合することにより、「呼吸する断熱ボード」とすることができ、水蒸気は殆ど通さないが空気は通り抜けることにより結露防止性を有する立体構造物とすることができた。それにより、グラスウールのようにチクチクせず、また製品は樹脂として再利用できるので、環境負荷が少ない。
【0015】
本発明の針状突起の内部の空洞へ、本発明における管状体の針状型により物体を充填できることに特徴がある。特に両面突起構造物では、立体構造物が形成された後に、突起の内部に物体を充填することには困難を伴うが、本発明では、突起の製造過程で物体の充填を行うことができる。物体は、充填時には流動性を有するが、充填後は、冷却や化学反応によって、固化や強い粘性を有する物体であることが好ましい。片面構造物では、充填後まだ流動性を有する場合であっても、底面に他のシート状物を接合させることで、物体を保持することができる。本発明の立体構造物は、細くて高い突起を有するので、表面積が大きく、そのことを利用して、物体に蓄熱材、加熱媒体あるいは冷却媒体等用いて、突起と突起の間に流体を流すことで、クーリングタワーなどの熱交換効率の良い熱交換構造物とすることができる。
【0016】
本発明の立体構造物の製造方法の例として、樹脂の荷重たわみ温度以上であることにより流動性を有している樹脂シートに対して、多数の針状型が基板と一体化しており、その基板の針状型が樹脂シートに対して垂直方向に移行することで樹脂シートに貫入し、樹脂シートを変形させる。そして、その変形の状態を維持した状態で冷却または凝固されることにより、片面または両面に針状突起を有する構造体を製造することができる。樹脂の荷重たわみ温度は、JISK7207により定められ、熱変形温度とも呼ばれる。本発明に使用される荷重たわみ温度においては、B法、即ち試験片に加える曲げ応力は平方センチメータ当たり45.1Nである。樹脂の荷重たわみ温度以上では、樹脂シートは針状の突起物で変形することができ、荷重たわみ温度より30℃以上が好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上が最も好ましい。荷重たわみ温度に達しない場合でも変形はできるが、変形に時間を要し、生産性が悪い。樹脂シートの軟化は、温度効果ばかりでなく、ポリビニルアルコールにおける水溶媒や、ポリ塩化ビニル樹脂における可塑剤のように、溶媒や可塑剤などによる化学的に軟化させる場合があるが、その場合でも、樹脂シートが荷重たわみ温度以上であることが要件とされる。
【0017】
本発明の製造方法における樹脂シートを変形させる針状型は、突起の高さhが3mm以上であって、hの1/2における幅wとが、h≧3wであることが好ましい。なお、針状型は、針状の細長い形状で、針の径は一定でもよいが、先が細いテーパ形状であってもよい。このような形状にすることにより、細長く高い針状突起が実現でき、本発明の柔軟ではあるが耐圧性のある立体構造物が実現できるからである。なお、針状型の高さhは、3mm以上であって、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは5mm以上であって100mm以下であり、8mm以上であって50mm以下であることが最も好ましい。3mmに達しない場合は、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができず、200mmを越える場合は、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合がある。また、針状型の高さhの1/2の位置における幅wは、h≧3wであって、好ましくはh≦100w、さらに好ましくはh≧5wであってh≦70w、h≧10wであってh≦50wであることが最も好ましい。これらの範囲にすることにより、製造された立体構造物がカサ高性や空隙率を大きくでき、さらに柔軟性のある構造とすることができるからである。なお、h<3wの場合では、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができず、h>100wでは、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合があるからである。なお、針状型は必ずしも円柱や円錐状の対称的な形状のみを意味するものではなく、wにおける断面が楕円や四角、三角等の種々の形状を有することもできる。この場合におけるwの値は、1/2hにおける断面での最も小さい値を採用する。なお、hやwの測定は、ランダムに選んだ30点の突起を測定し、算術平均して求める。
【0018】
本発明の多数の針状型は、基板と一体化している。一体化は、一体的に同一素材で機械加工された場合であってもよいが、針を基板にねじ止めや溶接、接着剤接合、かしめ等の手段で接合してもよい。本発明の細くて長い針状型の利点は、細い針状であるので、装置としての針状型も、製品の針状突起も、熱容量が小さいので冷却効率がよく、生産性が良いことである。また、圧縮強度向上には、単に形状のみでなく、成型時に付与される溶融時の変形による分子配向効果も大きい。本発明は、変形率が大きく、また冷却効率も大きいことより、分子配向を大きくすることができるという特徴もある。
【0019】
本発明の多数の針状型は、管状体により構成されており、この管状体の内部の管を通じて、気体や液体等の流体を導くことに特徴がある。それによって、例えば空気を吹き込むことで、風圧により、針状型との型離れがよくなる。またその空気を冷却風にすることで、成型体の冷却を速め、成形速度をアップすることができる。この流体として、油剤や離型剤等のミストを含んだエアーや、油剤等噴出させることで、成形された立体構造物の針状突起を、針状型や孔開き押さえ板から型離れが容易になる。さらに、この管状の針状突起を利用して、突起の成形時に、突起の内部に形成される空洞に、物体を充填することに使用することもできる。
【0020】
また、このように針状型を管状体にすることにより、本発明の立体構造物の針状突起の先端を、その管状体の内部より流体を噴出して針状突起の先端をさらに変形させることもできる。このように針状突起の先端がさらに変形された場合は、変形率が大きいため、肉厚を薄くできることを特徴とし、さらに変形された先端部の厚みが、1/2H部の側壁の厚みの1/2以下、好ましくは1/3以下、最も好ましくは1/5以下である突起を形成させることができる。このようにさらなる変形が加わることにより、変形率をアップすることができ、またその先端が薄くなっていることより、熱や溶剤等で簡単に溶解して、他のシート状物等との接着性をアップさせることができるようになった。かかる変形には、噴出する流体が、加熱流体であることが望ましく、通常、加熱エアーが用いられる。しかし、特殊な機能を持たせるために、蒸気やオイリング剤またはシーリング剤等を使用することもできる。
【0021】
さらに、このように針状型を管状体にして、その管状体の内部より吸引することにより、本発明の立体構造物の針状突起の先端の断面形状を種々変化させることにより、針状突起の先端に孔を開けられた構造にすることや、また、凹型の窪みが形成された構造とすることもできる。このような窪みは、一定の美観や意匠性を与えるばかりでなく、窪みを有することにより、その部分に他の物体を保持させるなど、種々の機能を持たせることもできる。
【0022】
本発明におけるシート状物の片面に多数の針状突起を有する立体構造物の製造においては、多数の針状型の突起に対応した孔を有する孔開き押さえ板が、樹脂シートの背面に設けられており、針状型が樹脂シートを貫通する際、樹脂シートを背面から支えるように構成されている。そして、針状型が孔開き押さえ板の孔の中に嵌入するように、樹脂シートに対して垂直方向に動くことによって、樹脂シートが変形されてシートの片面に針状突起が形成される。この孔開き押さえ板は、貫入してくる針状型の力を、シートの背面から力学的に支える機能と、樹脂シートの片面に形成される突起の径を決める形状因子として機能を有する。同じ針状型が貫入される場合であっても、孔開き押さえ板の孔の径を変えることで、異なる径(W)を有する立体構造物とすることができる。この孔開き押さえ板の樹脂シート側の孔の入口は、面取りが施され、成形時に傷が入らないようにする配慮がされていることや、表面や孔にシリコン系やフッ素樹脂系の離型剤等の離型作用のあるもので表面処理されていることが望ましい。
【0023】
本発明におけるシート状物の両面に多数の針状突起を有する立体構造物の製造においては、多数の針状型が基板と一体化されており、その基板の一対が互いに向かい合って設置され、その一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に移行することにより樹脂シートが変形されてシートの両面に多数の針状突起が形成される。本発明の製造方法における細くて長い針状型のもう一つの利点は、その多数の針状型が一対互いに向かい合って設置されている場合、向かい合っている針状型相互間で、機械的精度が不要であることが実験結果わかった。それは、一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に動いた場合、向かい合った針状型が細くてしなやかであるため、針状型の細い突起は互いに相手を避けるようにしてシートに貫通されていくためと思われる。
【0024】
次に、本発明の立体構造物を連続的に製造する手段について説明する。前記の針状型が固定されている基板が、多数連結して連続循環するコンベアA上に固定されている。また、そのコンベアAと対になるコンベアBが一対、向き合って設置されている。シートの片面に針状突起を有する構造体を製造する場合は、コンベアBには孔開き押さえ板が設けられている。そして針状型が樹脂シートを貫通する際、樹脂シートを背面から、この孔開き押さえ板が支えるように構成されている。また、シートの両面に針状突起を有する構造体を製造する場合は、コンベアBには、コンベアAと同様な針状型が向かい合って設置されている。その一対の連続循環するコンベアA、B間に荷重たわみ温度以上に加熱された樹脂が連続的に挿入される。この挿入された樹脂シートに対して、その基板が垂直方向に移行させる機構により、針状型が樹脂シートに貫通され、樹脂シートの片面または両面に突起を形成させることによって連続的に立体構造物が成形される。従来の連続するコンベアに直接樹脂シートを挟み込む方式では、本発明の針状型の針が長いので、樹脂シートを挟み込む際に針が斜めに刺さり、安定した成形ができない。本発明では、挟み込む際に、基板や孔開き押さえ板を樹脂シートに対して垂直移行させることでこの問題を解決した。この基板や孔開き押さえ板の垂直移行は、種々の手段を用いることができ、移行は基板だけ垂直に移行してもよいし、コンベアと一体になって移行してもよい。
【0025】
本発明の立体構造物を連続的に製造する際の、基板または孔開き押さえ板が垂直移行する機構の例として、上記コンベアとしてキャタピラ(またはカタピラーとも云う)を使用し、上記基板等の案内溝を用いて、挿入されてくる樹脂シートに対して垂直に移行させる手段である。また他の手段として、コンベア上の基板等のみを架台により押し上げ、または押し下げする手段がある。これらの手段の詳細は、発明を実施するための最良の手段の項で例示するものの他、磁気を利用して基板を上下することや、負圧吸引力や圧気を利用して基板を上下することもできる。
【0026】
本発明における立体構造物の製造における孔開き押さえ板および/または基板の背後に圧空室が設けられていることが好ましい。圧空室は、気体が加圧状態または負圧状態に維持されている部屋である。孔開き押さえ板および基板には、圧空室からの気体を針状突起が形成された樹脂シート側に導く孔またはスリットが設けられていることが好ましい。しかし、孔開き押さえ板の場合は、針状型の針先に対応した位置に開けられている孔をそのまま使用することもできる。気体は、通常はエアーが使用されるが、樹脂の酸化を避けたい場合は、窒素ガス等の他のガスが使用され、樹脂シートを加湿したい場合は、水蒸気を含むエアーが使用される場合もある。まず、圧空室が加圧状態で、圧空室からエアーが針状突起を形成している樹脂シート側に流出される場合について説明する。圧空室の加圧エアーにより、エアーが針状突起を形成している樹脂シート側に噴出することにより、成形品、孔開き押さえ板、基板等が冷却されることで、安定に成形され、また成形速度が速まる。また、この圧空室のエアー圧により、エアーが針状突起を形成している樹脂シート側に噴出することにより、成形された樹脂シートが孔開き押さえ板および基板から安定して分離していき、この面からも安定に成形され、また成形速度を早めることができる。
【0027】
本発明における立体構造物の製造における針状型と一体化している基板と、成形される樹脂シートとの間には、基板の表面に針状型の突起に対応した孔を有する離型板が設けられていることが好ましい。この離型板が、針状突起を有する立体構造物が成形された後、その離型板が樹脂シートの方向に垂直に移行することにより、その針状型と成形された立体構造物を安定して分離していくこができ、また成形速度を速めることができる。この離型板は、アルミニューム、銅、ステンレス、鋼材等の金属で作成されていることが望ましい。金属からなる離型板の持っている熱容量で、針状型や成形された立体構造物が冷却され、安定に成形され、また成形速度が速まるからである。本発明の針状突起は、細く高さが高いので、このような離型板が垂直に移行することで、安定して型離れできる。この離型板の垂直移行の手段は、発明を実施するための最良の手段の項で例示するものの他、磁気を利用る手段や、負圧吸引力や圧気を利用して上下することもできる。
【0028】
なお、本発明における離型板は、孔開き押さえ板からみて樹脂シートの反対側にも設けることができる。針状型等により成形された立体構造物の針状突起の先端が、孔開き押さえ板の裏面に飛び出した場合、その飛び出している針状突起の先端をこの離型板が垂直に移動して押し当て、逆に孔開き押さえ板側に押し込む。その場合の孔開き押さえ板は平板でよい。このような孔開き押さえ板側の離型板は、本発明の立体構造物が硬質塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の硬質の樹脂である場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明におけるシートの片面又は両面に針状突起を有する構造体に関し、その構造体を製造するに当たり、針状型を管状体にすることにより、次のような効果を有する。その効果の第一は、針状突起の製造における生産の安定性と生産速度をアップできることにある。すなわち、針状型の管状体から冷却風を吹き込むことで、成型体の冷却を早めることができるからである。また、空気を吹き込む際の風圧により、針状型との成型体との型離れを良くすることができ、生産性をアップさせることができる。また、油剤や離型剤のミストを含むエアーや、油剤等を噴出させることで、成形された針状突起を、針状型や孔開き押さえ板から型離れさせることが、さらに容易になる。これらの効果は、単に生産性の面だけではなく、従来生産が困難であった細くて長い針状突起とすることができる。
【0030】
その効果の第二は、針状突起の形態において、その針状突起にさらなる変形を可能にしたことにある。すなわち針状型を構成する管状体から熱風を吹き込み、シートの先端がさらに変形させることで、さらに先端を変形させ、先端部の変形率アップし、先端部を薄くすることで、接着性アップ等の効果を有する。また、管状体から吸引することで、針状突起の先端に孔を開けたり、先端を一定の形状を付与する意匠効果を付与したり、他のシートとの接着剤接合を容易にすることができる。
【0031】
その効果の第三は、本発明の針状型の径が大きく、管状体の内径が大きい場合において、成形された立体構造物の先端は針状型に接しておらず、空気に接しているので、冷却が遅い。そのため、成形された立体構造物の先端は、高温を維持しているので、そのことを利用して、管状体内部から気体を吹き込んでさらなる変形を行ない、またその高温を利用して、他のシート状物との貼り合わせを行うこともできる。
【0032】
その効果の第四は、針状突起の空洞の内部に、その管状体を利用して物体を充填することを可能にしたことにある。本発明では、針状突起の製造工程でこの内部の駆動に充填が行うことができ、特に両面突起においては、針状突起が形成された後で、この空洞に物体を充填させることは困難であるが、本発明では、成形工程中に充填が行うことができる。針状突起の空洞に物体が充填されることにより、種々の機能を有する立体構造物とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明によって製造される片面に針状突起を有する立体構造物の例を示す斜視図。
【図2】本発明によって製造される両面に針状突起を有する立体構造物の例を示す斜視図。
【図3】本発明によって先端部がさらに変形された針状突起の例を示す側面からみた断面図。
【図4】本発明の針状突起の先端に、内側に向かって変形されることによって形成された型の例を示す側面からみた断面図と、その部分の平面図。
【図5】本発明の立体構造物の針状突起の空洞に物体が封じ込められている例を示す側面からみた断面図。
【図6】本発明の立体構造物の針状突起の先端がシート状物に接合されている構造の例を示す断面図。
【図7】本発明の立体構造物の先端にシート状物を接合させる手段の例を示す概念図。
【図8】本発明における針状型を管状にすることによって、片面に針状突起を有する立体構造物を製造する装置の一部の側面からみた断面図。
【図9】本発明における針状型を管状にすることによって、両面に針状突起を有する立体構造物を製造する装置の一部の側面からみた断面図。
【図10】本発明の圧空室を用いて針状突起を製造する装置の概念図で、Aは平面図、Bは側面からみた断面図。
【図11】本発明の離型板を用いて針状突起を製造する装置の概念図で、Aは平面図、Bは側面からみた断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明の例を、図面で示す実施例に基づいて説明する。図1は、本発明によって製造される片面に針状突起を有する立体構造物の一部の斜視図である。立体構造物1は、樹脂シート2から片方に向けての多数の針状突起3a、3b、3c、・・・を有している。針状突起3a、3b、3cは、ヨコ方向に一定ピッチpで配列している。その後方の針状突起3d、3e、3fは、針状突起3a、3b、3cのp/2ピッチ(ピッチq)後方で、横方向にp/2移動した位置で、ヨコ方向に一定ピッチpで配列している。また、その後方の針状突起3g、3h、3iは、3aの列より一定ピッチpだけ後方で、一定ピッチpで横方向に配列している。すなわち、針状突起3dは、針状突起3a、3b、3g、3hのなす正方形の中心にあり、針状突起3eは、針状突起3b、3c、3h、3iのなす正方形の中心にある。両面突起構造の場合は、3d、3e、3fの突起の箇所が、樹脂シート2の裏面側に突起していたが、本発明の片面突起では、全て片方の面に突起しており、片側面に関しては、針状突起の数を多くすることができる。但し、これらの針状突起の配置は、シートにできるだけ多数の突起を設けるために好ましい配置ではあるが、このような配置に限定されるものではなく、樹脂シート2の片面側に多数の突起が出ていればよい。本発明では、針状型に管状体を使用することにより、図1のように針状突起が細くて高い構造体を、安定して生産性良く製造できるようになったことに特徴がある。
【0035】
図2は、本発明によって製造される両面に針状突起を有する立体構造物の一部の斜視図である。立体構造物11は、樹脂シート12から、上方に向けての多数の針状突起13a、13b、13c、・・・と、下方に向けての多数の針状突起14a、14b、14c、・・・を有している。上方の針状突起13a、13b、13cは、ヨコ方向に一定ピッチpで配列し、また、後方の針状突起13d、13e、13fは、13aの列より一定ピッチpだけ後方で、一定ピッチpで横方向に配列している。下方に突出している針状突起14a、14b、14cは、上方の針状突起13a、13b、13cのp/2ピッチ後方で、横方向にもp/2移動した位置で、ヨコ方向に一定ピッチpで配列している。下方の後方の針状突起14d、14e、14fは、14aの列より一定ピッチpだけ後方で、一定ピッチpで横方向に配列している。本発明では、針状型に管状体を使用することにより、図2のように針状突起が細くて高い構造体を、安定して生産性良く製造できるようになったことに特徴がある。
【0036】
図3は、図1の針状突起の先端にさらなる変形がおこなわれた例を側面からみた断面図で示す。図1の片面突起の場合で代表させたが、図2の両面突起の場合も同様である。本発明の針状型の内部の管から、加熱流体等を噴出させて、針状突起3p、3q、3rの先端に、さらに変形された突起21p、21q、21rになっている例を、側面図で示した。このさらに変形された突起21の厚みd1は、針状突起3の肉厚、特に1/2H(Hは突起の高さ)における肉厚d2よりも薄くなることを特徴とする。d1、d2の厚みの測定法は、その部分を構造体から切り出し、厚み計等で測定する。図におけるd2は斜め方向の厚みで表示してあるが、それは図面をわかりやすくするための表示で、厚みを測定する場所を特定するためであり、実際は、上記のように、その部分を切り出し、厚み計で測定する。測定は、d1、d2とも、構造体からランダムに10点サンプリングして測定し、その算術平均で表示する。
【0037】
図4は、図1の針状突起の先端を、図3の場合と逆に、内側に変形されている例を側面からみた断面図で示す。図1の片面突起の場合で代表させたが、図2の両面突起の場合も同様である。本発明針状型の内部の管から吸引することにより、針状突起3x、3y、3zの先端に、内側に向かって変形され突起32x、32y、32zとなる場合の例を、側面図で示した。そして、その先端部を下部に点線で囲んで、部分拡大した平面図として示した。さらに変形された突起32xは、急激な吸引により孔を開けた例である。32yは、窪みを持たせた例を示す。32zは、その窪みに一定の意匠効果(この例では星形の意匠)を持たせた例を示す。このように窪みに意匠性を持たせるためには、針状型の管の先端断面をこの意匠(星形)にしておくことで実現することができる。
【0038】
図5は、図2の立体構造物12の針状突起の内部の空洞に、物体41が充填されている例を側面図で示す。本発明の立体構造物は、針状突起の内部に、このような物体41が封入できることが特徴で、両面突起構造体であっても、このような充填物質封入タイプとすることが容易である点に特徴がある。物体41は、立体構造物12を成形過程で、針状突起の内部の管状体から供給することができる。
【0039】
図6は、図1の立体構造物1の針状突起の先端に、シート状物42を接合した例を示す側面からみた断面図である。図1の片面突起の場合で代表させたが、図2の両面突起の場合も同様である。このシート状物42の接合により、立体構造物は、圧縮については、全ての針状突起が平等に圧縮力を受けるようになるので、圧縮強度が飛躍的に向上する。また、曲げ強度についても、シート状物42の引張強力や圧縮強力が、曲げに抵抗するので、桁違いに強くなる。このシート状物42を、不織布、ネット状物、孔開きフィルムなどを使用することにより、通気性や透水性を持たすことができ、フィルターやドレイン材としての機能を有するようにすることができた。これらの立体構造物の突起と突起の間の空間に、繊維状物を充填させることにより、フィルター、ドレイン材、反応槽としての機能をさらにアップさせることができる。本発明の立体構造物1は、突起の先端を薄くできることで、先端部の溶融が容易になり、また、先端部を逆に凹にすることで接着剤が載りやすくすることができるので、図6のような構造体の製造を容易にしたことに特徴がある。
【0040】
図7は、本発明の立体構造物にシート状物を接合させる手段について示す。樹脂シートの両面に針状突起13a、13b、・・・、および14a、14b、・・・を有する立体構造物11の進行方向に加熱ロール51a、51bがあり、そのロール51にシート状物52a、52bが導かれ、加熱ロール51で加熱されて軟化され、針状突起13、14の先端に触れて、針状突起13、14の先端と接合されて、シート状物52が接合された立体構造物53とされる。シート状物52が、Tダイスからでた溶融樹脂シートである場合は、むしろ溶融樹脂を冷却する機能を有する温度にすべきである。シート状物52が微多孔膜や不織布などのように、加熱によって性質の変わるものや、織物やネットのように、加熱のみでは接合が困難な場合は、立体構造物11とシート状物52の間に接着性ウェブ54a、54bを導き、接着性ウェブ54によって接着することもできる。シート状物52が微多孔膜や不織布のように、通気性や通水性を有することを特徴とする場合は、それらの通気性等を損なわないように、接着性ウェブ54は、不織布状やネット状物であることが好ましく、また、接着性ウェブ54の通気性等が少ない場合は、シート状物52の全面ではなく、接着性ウェブ54が帯状に部分的に配置して接合することが好ましい。また、接着性ウェブ54を使用せず、シート状物52の接合面や、立体構造物11の針状突起13、14の先端に接着剤を塗布しておくことによっても、シート状物が接合された立体構造物53を製造することができる。本発明の立体構造物11は、突起の先端を薄くできることで、先端部の溶融が容易になり、また、先端部を逆に凹にすることで接着剤を載りやすくすることができるので、シート状物52が接合された構造体53の製造を容易にしたことに特徴がある。
【0041】
図8は、本発明の片面に針状突起を有する立体構造物1の製造方法の例を、装置の一部の側面からみた断面図で示した。基板61には、針状型63a、63b、63cが、ねじ部65を有して、ナット66で基板に固定されている。針状型63a、63b、63cは一部のみを示したもので、基板61の平面上に、針状型は横方向にも、図面の奥方向へも、一定ピッチで配列している。基板61上に孔開き押さえ板64が設けられており、孔開き押さえ板64には、針状型63のそれぞれの突起の位置に対応した孔67が開けられており、基板61または孔開き押さえ板64のどちらかの上下垂直運動、または双方の上下垂直運動により、その孔67に針状型63の突起が嵌合するように配置されている。そして、基板61と孔開き押さえ板64の間に、荷重たわみ温度以上にある溶融樹脂のシート62が導かれ、基板61または孔開き押さえ板64、またはその双方の垂直運動による上記嵌合されることによって、針状突起3a、3bが形成される。この図8においては、孔開き板64が最も下の位置に来ている状態で示す。シート2は、基板61(または孔開き板押さえ板64、またはそれらの双方)の一回の上下運動のストロークで、一定面積の突起物が形成されると、基板61が、最も低い位置に来たときに移動し、次の基板61等の上下運動で、隣接して次の一定面積に針状突起が形成される。このようにして、基板61等の上下運動ストロークで、一定面積の成形されることを繰り返すことで、多数の針状突起を有する立体構造物が連続して成形される。基板61等の上下のストロークは、エアーシリンダーや油圧シリンダーによる上下運動、カムを利用した上下運動、磁力の吸引力や反発力を利用した上下運動等も利用することができる。なお、本発明の針状突起3は、基盤上のそれらの断面や大きさは、必ずしも一定である必要はなく、混在していてもよい。また、本発明の細くて長い針状型63による成形は、変形率が大きく、表面積も大きく、冷却効率も大きいので、生産性もアップするが、さらに冷却効率をアップするために、基板61に孔を開け、冷却空気を導入することもできる。この基板61からの空気は、成形された立体構造物1を、針状型63から離す役割も果たすことができる。また、基板61には、後述する離型板を備えることもでき、孔開き押さえ板64には、後述する圧空室や空気孔を備えることもできる。
【0042】
図8における針状型63の内部は、管68a、68b、68cになっており、針状型63は管状体を構成する。管68には、ホース69a、69b、69cが連結されており、成形工程で、管の内部より流体が流出または吸引するように構成されている。このような管68を有することにより、冷却空気を吹き込み、成型品の冷却速度をアップすることもでき、また、成型品を空気圧により針状型63より離す役目も兼ねることができる。
【0043】
図9は、本発明の両面に針状突起を有する立体構造物11の製造方法の例を、装置の一部を側面からみた断面図で示した。基板71には、針状型73a、73b、73cが、ねじ部75を有して、ナット76で基板に固定されている。針状型73a、73b、73cは一部のみを示したもので、基板71の平面上に、針状型は横方向にも、図面の奥方向へも、一定ピッチで配列している。基板27の平面と向かい合って上面に、基板72の平面が設置されており、それに針状型74a、74b、74cが固定されている。針状型74a、74b、74cは、基板71の針状型とは、位置関係では、1/2ピッチだけ、ヨコ方向と奥方向にずれた位置に配置されている。そして、基板71と基板72の間に、荷重たわみ温度以上にある溶融樹脂のシート62が導かれ、基板71が固定されているのに対して、基板72が上下に動くことで、針状型73a、73b、73cと針状型74a、74b、74cが相対的に平行に動く。この平行な運動により、針状突起13a、13b、13c、14a、14b、14cが形成される。この図9においては、基板71が最も上の位置に来ており、基板72が最も下の位置に来ている状態で示す。シート62は、基板72の一回の上下運動のストロークで、一定面積の突起物が形成されると、基板72が、最も高い位置に来たときに移動し、次の基板72の上下運動で、隣接して次の一定面積に針状突起が形成される。このようにして、基板72の上下運動ストロークで、一定面積の成形されることを繰り返すことで、多数の針状突起を有する立体構造物が連続して成形される。基板72の上下のストロークは、エアーシリンダーや油圧シリンダーによる上下運動や、カムを利用した上下運動も利用することができる。本発明の針状突起13や14は、変形率が大きく、表面積も大きく、冷却効率も大きいので、生産性もアップするが、さらに冷却効率をアップするために、基板71と722に孔を開け、冷却空気を導入することもできる。本発明における針状型73a、73b、73cは、内部が管76a、76b、76cになっており管状体を形成する。そのことにより、管76から、ホース77を介してエアー等の流体を送り込むことを可能にし、また、吸引することも可能にする。また、この管76から成型品の針状突起の内部の空洞に物体を注入することで、図5で説明した、物体が充填されている立体構造物とすることができる。
【0044】
図10は、圧空室の構造と作用を示し、図Aは平面図であり、図Bは側面からの断面図で示す。孔開き押さえ板64には、針状型63に対応する孔67a、67b、67c、・・・が開けられており、その孔67が二重のリングで示されているのは、孔が面取りされていることを示す。孔開き押さえ板64には、孔67の他に多数の小孔81が開けられている。孔開き押さえ板64を上から覆うように、圧空室82が設けられている。圧空室82を囲う側壁には、フッ素系樹脂やフェルト等によって構成されているシール部83が設けられており、孔開き押さえ板64の移動による圧空室82の摺動によるエアーの漏洩を少なくしてある。圧空室82には、導管85により圧縮空気が導かれ、孔開き押さえ板64の孔67と小孔81からの圧縮空気のエアー圧により、成形された立体構造物84を孔開き押さえ板64から離される。圧空室に供給されるエアーにより、成形された立体構造物84を冷却する効果もあり、その意味で、シール部83のシールの程度は、厳密性を要しない。このような圧空室82の作用と、針状型63の内部に設けられた管76の作用を組み合わせることで、本発明の針状突起の生産性をさらにアップさせることができる。
【0045】
図11図は、図8、図10と同様な成形手段において、離型板91と離型板92が設けられた例を示す側面からの断面図で示す。離型板91は、基板61と成形された立体構造物84との間に、基板61の針状型63の突起に対応した孔93を有する。成形初期においては、離型板91は針状型63の中に収まり、基板61の近傍まで下がっている。そして、立体構造物84が成形された後、図のように基板61が下降し、そのままの位置に残っている離型板91が、立体構造物84を針状型63から離す。同時に、孔開き押さえ板64も上昇しており、その過程で離型板92が下降し、針状突起3a、3b、3cの頭を下に押し下げ、孔開き押さえ板64から離す。この離型板92は、孔開き押さえ板64の樹脂シートと反対側に設けられており、立体構造物84が成形された後、離型板92がこの樹脂シートの方向に垂直に移行して、成形された立体構造物84の先端部を押し下げて、立体構造物を孔開き押さえ板64から分離されていく。離型板92の背後には、圧空室82を設けることができ、離型板92に開けられている小孔94からエアーを吹き出し、立体構造物84や孔開き押さえ板64を冷却し、また、そのエアー圧で孔開き押さえ板64と立体構造物84を離すようにすることができる。また、この図における針状突起3が成形される初期の過程で、離型板92と圧空室82を別に設け、圧空室82を負圧吸引にして逆のエアーの流れを作り、成形を助け、針状突起3や孔開き押さえ板64を冷却することができる。なお、この図では、片面針状突起を有する立体構造物83の成形を例に説明したが、図2に示した両面に針状突起を有する立体構造物の成形の場合であっても、離型板91を有効に利用することができる。
【実施例1】
【0046】
原料樹脂として、ポリプロピレン(サンアロマー株式会社、PB370A、MFR1.3、密度0.9g/cm3、荷重たわみ温度80℃)を使用した。この樹脂を、Tダイスより225℃で押出成形し、溶融状態で150μmのシートとなるように、図8に示した立体構造物成形工程へと導かれる。図8における基板61および針状型63を1セットとする成型用金型を用意した。針状型63の針径は2.1mm、ピッチは8.4mm、高さ25mmとし、内部は内径1.5mmの管68となっている。この1セットの金型の針の先に、孔開き押さえ板64(アルミニュウム製、板厚12mm)の孔27(孔径3.5mmφ、針挿入側の孔面取り2mm)を向かい合わせ、その間にTダイスより導かれた溶融樹脂シート2が挟み込まれた状態で、樹脂シートを貫通するように、孔開き押さえ板64の孔67に、針状型63を嵌入した。この時の溶融樹脂シートの温度は218℃であった。成形された針状突起に、管68の内部より熱風(80℃)を吹き込み、針状突起の先端を図3に示すようにさらに変形させることができた。熱風を吹き込まない場合の立体構造物の高さHは、8mmで、1/2Hにおける幅Wは、2.7mm、針状突起の隣の突起までのピッチは、8.4mm、1/2部の厚みは0.1mm、先端部の厚みは0.15mmであったが、熱風を吹き込むことで、Hは、8.3mmで、先端部の厚みは0.08mmとすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の立体構造物は、柔軟性を有するにもかかわらず耐圧性に優れ、また水平方向の透水性や断熱性も有するので、緩衝シート、クッションシート、間仕切り、床材等に使用される。
【符号の説明】
【0048】
1:立体構造物、 2:樹脂シート、 3:針状突起。
11:両面に針状突起を有する立体構造物、 12:樹脂シート、
13:上方部の針状突起、 14:下方部の針状突起。
21p、21q、21r:さらに変形された突起、
32x、32y、32z:針状突起の先端が内側に変形された突起。
41:物体、 42:シート状物。
51:加熱ローラ、 52:シート状物、
53:針状突起の先端にシート状物が接合された立体構造物、
54:接着性ウェブ。
61:基板、 62:軟化点以上にある樹脂シート、 63:針状型、
64:孔開き押さえ板、 65:ねじ部、 66:ナット、 67:孔、
68:管、 69:ホース。
71、72:基板、 73、74:針状型、 75:ナット、
76:管、 77:ホース。
81:小孔、 82:圧空室、 83:シール部、 84:成形された立体構造物。
91、92:離型板、 93:孔、 94:小孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体からなる針状の型を用いて樹脂シートの片面または両面に針状突起が形成される立体構造物の製造手段によって製造された立体構造物に関し、特に、その細くて高い針状突起を有する立体構造物を安定して製造可能にすること、およびその針状突起の先端をさらに変形させることや、突起の内部の空洞に物体を充填させることを可能にすることにより、特異な機能や構造を持たせた立体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートの両面や片面に尖頭の突起を有する立体構造物およびその製造方法が提案されている(例えば、特開昭48−75678号)。しかし、この開示されている立体構造物については、細くて長い針状突起を安定して製造することができないため、工業的に生産されていなかった。またこの開示された構造物は、尖頭の先端部が厚いため、先端部を溶融除去して孔を開けることや、先端部で他のシート状物と溶融接合することにおいて障害になっていた。また、この開示されている構造物は、カサ高性があって圧縮強度の大なる性質のみが求められており、その突起の内部の空洞を積極的には利用されていなかった。また、この開示されている立体構造物は、尖頭が細くて長さが長い場合、型からの抜けが悪くなり、また、成型物の冷却が遅いため、安定して連続的に製造できていなかった。そのため工業的には発展しておらず、これらの構造物を安定して製造できる手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭48−75678号公報(第1頁、第2頁、第11頁左下欄、第1図、第5図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の欠点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、樹脂シートの両面や片面に針状突起を有する立体構造物の突起の先端をさらに変形させて、針状突起の先端を薄くしたり、窪みを持たせたり、孔を開けたりすることにより、立体構造物の有用性をさらに高めることにある。また本発明は、立体構造物のその突起の内部の空洞に物体を充填させて、新たな機能を有する立体構造物とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、その立体構造物としての特徴は、次の通りである。本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この針状突起の先端がさらに変形されて、この変形された先端部の厚みが、1/2H部における側壁の厚み以下である立体構造物に関する。また本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この針状突起の先端がさらに変形されて、この変形された先端部に窪みを有する立体構造物に関する。また本発明は、樹脂シートの両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この針状突起の内部に形成されている空洞に物体が充填されている立体構造物に関する。さらに本発明は、前記の針状突起の先端において、シート状物が接合されている立体構造物に関する。
【0006】
また本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、この樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上であることによって流動性を有している樹脂シートの片方の面の側に、多数の針状型が基板と一体化されて設けられており、この樹脂シートの他方の面の側には、針状型の突起に対応した位置に孔が開けられている孔開き押さえ板が、該針状型が樹脂シートを貫通する際に樹脂シートを背面から支えるように構成されおり、針状型が該孔開き押さえ板の孔の中に嵌入するように、この樹脂シートに対して垂直方向に移行することによって、該樹脂シートが変形されてシートの片面に多数の針状突起が形成されたものであり、かつ、この針状突起は、樹脂シートが管状体の針状型を用いて針状突起に成形される過程で、管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物に関する。さらに本発明は、樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、この立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上である流動性を有している樹脂シートに対して、突起の高さhが3mm以上であって、hの1/2における幅wが、h≧3wである多数の針状型が基板と一体化されており、この基板の一対が互いに向かい合って設置され、その一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に移行することにより樹脂シートが変形されてシートの両面に多数の針状突起が形成された立体構造物であり、かつ、この針状突起は、樹脂シートが管状体の針状型を用いて針状突起に成形される過程で、管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物に関する。
【0007】
本発明は、樹脂シートの片面または両面に、針状突起を有することを特徴とする。樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル酸メチル樹脂等のアクリル樹脂、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の熱可塑性樹脂が好んで使用される。さらに、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂であっても、加熱等によって、以下に示す荷重たわみ温度以上で流動性を示す樹脂であれば使用することができる。また、上記の樹脂は、単体で使用されるばかりでなく、ブレンド等により樹脂相互を組み合わせて使用することも出来、さらに可塑剤や充填剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤等の添加剤等を加えて使用することもできる。また本発明は、土木用等にも使用されるので、ポリ乳酸系やポリブチレンサクシネート系等の生分解性樹脂や、ビニルケトン系ポリマー等の光分解性樹脂などの分解性樹脂も好ましい。また、本発明は柔らかい立体構造物をも目的としており、SBSやポリウレタン等の熱可塑性エラストマーも使用することができる。
【0008】
本発明は、樹脂シートの片面または両面に、その樹脂シートの一部が変形されることによって形成された多数の針状突起を有する。ここで使用される樹脂シートは、上記樹脂がシート状に成形されたものを意味する。シートは、厚みにおいて特に制限はなく、通常フィルムや膜と呼ばれるものも含むが、厚みは、好ましくは10μm以上であって3mm以下、さらに好ましくは50μm以上であって2mm以下、100μm以上であって1mm以下が最も好ましい。10μmに達しない場合や3mmを越える場合は、安定して成形することが困難だからである。本発明による針状突起を有する立体構造物は、シート状物の片面に針状突起が形成された立体構造物と、シート状物の両面に針状突起が形成された立体構造物がある。片面に針状突起が形成された立体構造は、片面の針状突起の数を多くすることができ、そのため圧縮強度が強く、また、底面には既にシート状を形成しているので、針状突起の先端にシート状物を接合するだけで、天地にシート状物を有する構造物とすることができる。両面に針状突起を形成された立体構造は、立体構造物の厚みが大きくなり、よりカサ高性のある構造物とすることができる特徴を有する。したがって、片面に針状突起を有する構造体を用いるか、両面に針状突起を有する構造体を用いるかは、これらの特性に合わせて、用途により判断される。
【0009】
本発明の立体構造物における針状突起は、突起の高さHが3mm以上であることを特徴とする。突起の高さHは、3mm以上であって、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは5mm以上であって100mm以下であり、8mm以上であって50mm以下であることが最も好ましい。3mmに達しない場合は、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができず、200mmを越える場合は、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合がある。また、本発明の突起の高さHの1/2の位置における幅Wは、H≧2Wであることを特徴とする。Wに対して、高さHを大きくできることが本発明の特徴だからである。Wは、H≧2Wであって、好ましくはH≦100W、さらに好ましくはH≧2.5WであってH≦70W、H≧3WであってH≦50Wであることが最も好ましい。これらの範囲にすることにより、カサ高性や空隙率を大きくでき、さらに柔軟性のある構造とすることができるからである。なお、H<2Wの場合では、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができない場合があり、H>100Wでは、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合があるからである。なお、突起は必ずしも円錐状の対称的な形状のみを意味するものではなく、Wにおける断面が楕円や四角、三角等の種々の形状を有することもでき、またこれらの混在であってもよい。この場合におけるWの値は、1/2Hにおける断面での最も小さい値を採用する。また、本発明における一つの構造体においては、HやWは一定である必要はなく、種々のWが混在していてもよい。なお、HやWの測定は、ランダムに選んだ30点の突起を測定し、算術平均して求める。
【0010】
本発明においては樹脂シートの片面または両面に多数の針状突起を有することを特徴とする。多数とは、10個以上、好ましくは数10個、大きい場合は数100個、数千個以上の突起を有する。針状突起の数は、主として本発明のWの値に依存するが、本発明は、突起の高さHに比較してWが小さいことより、針状突起を数多く設けることができる。針状突起の数が多いことは、それだけ圧縮強度が大きいことを意味し、Wが小さくてHが大きいことは柔軟でカサ高であることを意味するので、本発明の立体構造物は、柔軟でカサ高ではあるが圧縮強度の大きい構造とすることができた。なお、本発明の構造体における針状突起は、一定のピッチを必ず有する必要はなく、ランダムなピッチ、また単純な一定ピッチではなく、複雑なピッチを有する場合もある。
【0011】
本発明においては、樹脂シートの片方の面または両面に樹脂シートの一部が変形されることによって針状突起が形成されているその針状突起の先端がさらに変形されて、その変形された先端部の厚みが、1/2H部における側壁の厚み以下になっている構造体とすることができる。通常に針状突起を製造すれば、従来技術の特許文献1に示されているように針状突起の先端部は厚くなる。しかし、本発明における針状型によって針状突起を形成させた後、針状型が管状体となっていることより、針状型の内部より加熱エアー等の熱流体を噴出させ、その針状突起の先端部がさらに変形されて、先端部に厚みの薄い成形体がさらに加わった構造物とすることができる。先端部にさらなる変形が加わることにより針状突起に高さがさらに高くなり、よりカサ高性の構造体とすることができた。さらに、先端部の厚みが薄くなることによって、先端部に孔を開けるために先端部を溶融することが容易になり、また、先端部に他のシート状物を溶融接合する場合、先端部の溶融が容易になった。先端部の厚みは、1/2H部の厚みの1/2以下になっていることが望ましい。
【0012】
また、本発明の針状型が管状体からなることにより、針状型により針状突起が形成された後、管状体を利用して吸引することにより、この針状突起の先端がさらに変形されて、先端部に窪みを有する立体構造物とすることができる。先端に窪みを有する構造体は、先端でシート状物と接着剤接合する場合に、接着剤の載りがよく、また接合面も大きくなるので、シート状物との接合強度の大きな構造物とすることができる。また、管状体の先端を星形やハート形等の形状にしておくことにより、その窪みにそれらの形状の意匠を付与すること出来、意匠効果のある立体構造物とすることができる。
【0013】
管状体を利用して、そこで吸引する他の利用手段として、吸引を強く行うことで、針状突起の先端を破き、先端に孔をあけることにより、針状突起の先端部に孔を有する構造とすることができる。針状突起の先端に孔を有する構造は、先に説明した、先端部を膨らますさらなる変形で薄くし、その状態で先端部を溶融して除去することや突き破る等の手段でも実現することができる。
【0014】
本発明の立体構造物は、針状突起の先端において、シート状物と接合されている構造物とすることができる。本発明における針状突起は、先端を薄くすることで溶融接合を容易にし、また逆に先端部に窪みを持たすことで接着剤接合が容易するなど、先端部においてシート状物との接合が非常に容易であることを特徴とする。本発明における立体構造物とシート状物との接合方法の例としては、溶融樹脂を押出ラミネートする場合や、樹脂シートを加熱溶融する場合は、立体構造物の針状突起の先端と接触して、針状突起の先端部を溶融している樹脂シートの熱容量で溶解して接合することができる。また、シート状物または立体構造物の先端に、ホットメルト接着剤やエマルジョン接着剤などの接着剤を塗布してから、接合接着することもできる。シート状物と接合されることにより、寸法安定性がアップし、また針状突起の左右への動きを妨げるので、圧縮強度もアップする。接合するシート状物の種類は、本発明の立体構造物を形成させるシートと同様な樹脂シートばかりでなく、織物、編物、不織布、ネット、紙などの通気性や通水性を有する素材、耐熱性を要求される場合はアルミ箔等の金属やセラミック板等も使用することができる。樹脂シートでは孔開きフィルムが、通気性や透水性が要求される場合に好適である。また、通気性発泡シートも使用することができる。これらの通気性を有するシートを接合することにより、「呼吸する断熱ボード」とすることができ、水蒸気は殆ど通さないが空気は通り抜けることにより結露防止性を有する立体構造物とすることができた。それにより、グラスウールのようにチクチクせず、また製品は樹脂として再利用できるので、環境負荷が少ない。
【0015】
本発明の針状突起の内部の空洞へ、本発明における管状体の針状型により物体を充填できることに特徴がある。特に両面突起構造物では、立体構造物が形成された後に、突起の内部に物体を充填することには困難を伴うが、本発明では、突起の製造過程で物体の充填を行うことができる。物体は、充填時には流動性を有するが、充填後は、冷却や化学反応によって、固化や強い粘性を有する物体であることが好ましい。片面構造物では、充填後まだ流動性を有する場合であっても、底面に他のシート状物を接合させることで、物体を保持することができる。本発明の立体構造物は、細くて高い突起を有するので、表面積が大きく、そのことを利用して、物体に蓄熱材、加熱媒体あるいは冷却媒体等用いて、突起と突起の間に流体を流すことで、クーリングタワーなどの熱交換効率の良い熱交換構造物とすることができる。
【0016】
本発明の立体構造物の製造方法の例として、樹脂の荷重たわみ温度以上であることにより流動性を有している樹脂シートに対して、多数の針状型が基板と一体化しており、その基板の針状型が樹脂シートに対して垂直方向に移行することで樹脂シートに貫入し、樹脂シートを変形させる。そして、その変形の状態を維持した状態で冷却または凝固されることにより、片面または両面に針状突起を有する構造体を製造することができる。樹脂の荷重たわみ温度は、JISK7207により定められ、熱変形温度とも呼ばれる。本発明に使用される荷重たわみ温度においては、B法、即ち試験片に加える曲げ応力は平方センチメータ当たり45.1Nである。樹脂の荷重たわみ温度以上では、樹脂シートは針状の突起物で変形することができ、荷重たわみ温度より30℃以上が好ましく、50℃以上がさらに好ましく、80℃以上が最も好ましい。荷重たわみ温度に達しない場合でも変形はできるが、変形に時間を要し、生産性が悪い。樹脂シートの軟化は、温度効果ばかりでなく、ポリビニルアルコールにおける水溶媒や、ポリ塩化ビニル樹脂における可塑剤のように、溶媒や可塑剤などによる化学的に軟化させる場合があるが、その場合でも、樹脂シートが荷重たわみ温度以上であることが要件とされる。
【0017】
本発明の製造方法における樹脂シートを変形させる針状型は、突起の高さhが3mm以上であって、hの1/2における幅wとが、h≧3wであることが好ましい。なお、針状型は、針状の細長い形状で、針の径は一定でもよいが、先が細いテーパ形状であってもよい。このような形状にすることにより、細長く高い針状突起が実現でき、本発明の柔軟ではあるが耐圧性のある立体構造物が実現できるからである。なお、針状型の高さhは、3mm以上であって、好ましくは200mm以下、さらに好ましくは5mm以上であって100mm以下であり、8mm以上であって50mm以下であることが最も好ましい。3mmに達しない場合は、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができず、200mmを越える場合は、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合がある。また、針状型の高さhの1/2の位置における幅wは、h≧3wであって、好ましくはh≦100w、さらに好ましくはh≧5wであってh≦70w、h≧10wであってh≦50wであることが最も好ましい。これらの範囲にすることにより、製造された立体構造物がカサ高性や空隙率を大きくでき、さらに柔軟性のある構造とすることができるからである。なお、h<3wの場合では、本発明の立体構造としてのカサ高性を満足することができず、h>100wでは、本発明の細長い突起を安定して製造するのに困難な場合があるからである。なお、針状型は必ずしも円柱や円錐状の対称的な形状のみを意味するものではなく、wにおける断面が楕円や四角、三角等の種々の形状を有することもできる。この場合におけるwの値は、1/2hにおける断面での最も小さい値を採用する。なお、hやwの測定は、ランダムに選んだ30点の突起を測定し、算術平均して求める。
【0018】
本発明の多数の針状型は、基板と一体化している。一体化は、一体的に同一素材で機械加工された場合であってもよいが、針を基板にねじ止めや溶接、接着剤接合、かしめ等の手段で接合してもよい。本発明の細くて長い針状型の利点は、細い針状であるので、装置としての針状型も、製品の針状突起も、熱容量が小さいので冷却効率がよく、生産性が良いことである。また、圧縮強度向上には、単に形状のみでなく、成型時に付与される溶融時の変形による分子配向効果も大きい。本発明は、変形率が大きく、また冷却効率も大きいことより、分子配向を大きくすることができるという特徴もある。
【0019】
本発明の多数の針状型は、管状体により構成されており、この管状体の内部の管を通じて、気体や液体等の流体を導くことに特徴がある。それによって、例えば空気を吹き込むことで、風圧により、針状型との型離れがよくなる。またその空気を冷却風にすることで、成型体の冷却を速め、成形速度をアップすることができる。この流体として、油剤や離型剤等のミストを含んだエアーや、油剤等噴出させることで、成形された立体構造物の針状突起を、針状型や孔開き押さえ板から型離れが容易になる。さらに、この管状の針状突起を利用して、突起の成形時に、突起の内部に形成される空洞に、物体を充填することに使用することもできる。
【0020】
また、このように針状型を管状体にすることにより、本発明の立体構造物の針状突起の先端を、その管状体の内部より流体を噴出して針状突起の先端をさらに変形させることもできる。このように針状突起の先端がさらに変形された場合は、変形率が大きいため、肉厚を薄くできることを特徴とし、さらに変形された先端部の厚みが、1/2H部の側壁の厚みの1/2以下、好ましくは1/3以下、最も好ましくは1/5以下である突起を形成させることができる。このようにさらなる変形が加わることにより、変形率をアップすることができ、またその先端が薄くなっていることより、熱や溶剤等で簡単に溶解して、他のシート状物等との接着性をアップさせることができるようになった。かかる変形には、噴出する流体が、加熱流体であることが望ましく、通常、加熱エアーが用いられる。しかし、特殊な機能を持たせるために、蒸気やオイリング剤またはシーリング剤等を使用することもできる。
【0021】
さらに、このように針状型を管状体にして、その管状体の内部より吸引することにより、本発明の立体構造物の針状突起の先端の断面形状を種々変化させることにより、針状突起の先端に孔を開けられた構造にすることや、また、凹型の窪みが形成された構造とすることもできる。このような窪みは、一定の美観や意匠性を与えるばかりでなく、窪みを有することにより、その部分に他の物体を保持させるなど、種々の機能を持たせることもできる。
【0022】
本発明におけるシート状物の片面に多数の針状突起を有する立体構造物の製造においては、多数の針状型の突起に対応した孔を有する孔開き押さえ板が、樹脂シートの背面に設けられており、針状型が樹脂シートを貫通する際、樹脂シートを背面から支えるように構成されている。そして、針状型が孔開き押さえ板の孔の中に嵌入するように、樹脂シートに対して垂直方向に動くことによって、樹脂シートが変形されてシートの片面に針状突起が形成される。この孔開き押さえ板は、貫入してくる針状型の力を、シートの背面から力学的に支える機能と、樹脂シートの片面に形成される突起の径を決める形状因子として機能を有する。同じ針状型が貫入される場合であっても、孔開き押さえ板の孔の径を変えることで、異なる径(W)を有する立体構造物とすることができる。この孔開き押さえ板の樹脂シート側の孔の入口は、面取りが施され、成形時に傷が入らないようにする配慮がされていることや、表面や孔にシリコン系やフッ素樹脂系の離型剤等の離型作用のあるもので表面処理されていることが望ましい。
【0023】
本発明におけるシート状物の両面に多数の針状突起を有する立体構造物の製造においては、多数の針状型が基板と一体化されており、その基板の一対が互いに向かい合って設置され、その一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に移行することにより樹脂シートが変形されてシートの両面に多数の針状突起が形成される。本発明の製造方法における細くて長い針状型のもう一つの利点は、その多数の針状型が一対互いに向かい合って設置されている場合、向かい合っている針状型相互間で、機械的精度が不要であることが実験結果わかった。それは、一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に動いた場合、向かい合った針状型が細くてしなやかであるため、針状型の細い突起は互いに相手を避けるようにしてシートに貫通されていくためと思われる。
【0024】
次に、本発明の立体構造物を連続的に製造する手段について説明する。前記の針状型が固定されている基板が、多数連結して連続循環するコンベアA上に固定されている。また、そのコンベアAと対になるコンベアBが一対、向き合って設置されている。シートの片面に針状突起を有する構造体を製造する場合は、コンベアBには孔開き押さえ板が設けられている。そして針状型が樹脂シートを貫通する際、樹脂シートを背面から、この孔開き押さえ板が支えるように構成されている。また、シートの両面に針状突起を有する構造体を製造する場合は、コンベアBには、コンベアAと同様な針状型が向かい合って設置されている。その一対の連続循環するコンベアA、B間に荷重たわみ温度以上に加熱された樹脂が連続的に挿入される。この挿入された樹脂シートに対して、その基板が垂直方向に移行させる機構により、針状型が樹脂シートに貫通され、樹脂シートの片面または両面に突起を形成させることによって連続的に立体構造物が成形される。従来の連続するコンベアに直接樹脂シートを挟み込む方式では、本発明の針状型の針が長いので、樹脂シートを挟み込む際に針が斜めに刺さり、安定した成形ができない。本発明では、挟み込む際に、基板や孔開き押さえ板を樹脂シートに対して垂直移行させることでこの問題を解決した。この基板や孔開き押さえ板の垂直移行は、種々の手段を用いることができ、移行は基板だけ垂直に移行してもよいし、コンベアと一体になって移行してもよい。
【0025】
本発明の立体構造物を連続的に製造する際の、基板または孔開き押さえ板が垂直移行する機構の例として、上記コンベアとしてキャタピラ(またはカタピラーとも云う)を使用し、上記基板等の案内溝を用いて、挿入されてくる樹脂シートに対して垂直に移行させる手段である。また他の手段として、コンベア上の基板等のみを架台により押し上げ、または押し下げする手段がある。これらの手段の詳細は、発明を実施するための最良の手段の項で例示するものの他、磁気を利用して基板を上下することや、負圧吸引力や圧気を利用して基板を上下することもできる。
【0026】
本発明における立体構造物の製造における孔開き押さえ板および/または基板の背後に圧空室が設けられていることが好ましい。圧空室は、気体が加圧状態または負圧状態に維持されている部屋である。孔開き押さえ板および基板には、圧空室からの気体を針状突起が形成された樹脂シート側に導く孔またはスリットが設けられていることが好ましい。しかし、孔開き押さえ板の場合は、針状型の針先に対応した位置に開けられている孔をそのまま使用することもできる。気体は、通常はエアーが使用されるが、樹脂の酸化を避けたい場合は、窒素ガス等の他のガスが使用され、樹脂シートを加湿したい場合は、水蒸気を含むエアーが使用される場合もある。まず、圧空室が加圧状態で、圧空室からエアーが針状突起を形成している樹脂シート側に流出される場合について説明する。圧空室の加圧エアーにより、エアーが針状突起を形成している樹脂シート側に噴出することにより、成形品、孔開き押さえ板、基板等が冷却されることで、安定に成形され、また成形速度が速まる。また、この圧空室のエアー圧により、エアーが針状突起を形成している樹脂シート側に噴出することにより、成形された樹脂シートが孔開き押さえ板および基板から安定して分離していき、この面からも安定に成形され、また成形速度を早めることができる。
【0027】
本発明における立体構造物の製造における針状型と一体化している基板と、成形される樹脂シートとの間には、基板の表面に針状型の突起に対応した孔を有する離型板が設けられていることが好ましい。この離型板が、針状突起を有する立体構造物が成形された後、その離型板が樹脂シートの方向に垂直に移行することにより、その針状型と成形された立体構造物を安定して分離していくこができ、また成形速度を速めることができる。この離型板は、アルミニューム、銅、ステンレス、鋼材等の金属で作成されていることが望ましい。金属からなる離型板の持っている熱容量で、針状型や成形された立体構造物が冷却され、安定に成形され、また成形速度が速まるからである。本発明の針状突起は、細く高さが高いので、このような離型板が垂直に移行することで、安定して型離れできる。この離型板の垂直移行の手段は、発明を実施するための最良の手段の項で例示するものの他、磁気を利用る手段や、負圧吸引力や圧気を利用して上下することもできる。
【0028】
なお、本発明における離型板は、孔開き押さえ板からみて樹脂シートの反対側にも設けることができる。針状型等により成形された立体構造物の針状突起の先端が、孔開き押さえ板の裏面に飛び出した場合、その飛び出している針状突起の先端をこの離型板が垂直に移動して押し当て、逆に孔開き押さえ板側に押し込む。その場合の孔開き押さえ板は平板でよい。このような孔開き押さえ板側の離型板は、本発明の立体構造物が硬質塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の硬質の樹脂である場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明におけるシートの片面又は両面に針状突起を有する構造体に関し、その構造体を製造するに当たり、針状型を管状体にすることにより、次のような効果を有する。その効果の第一は、針状突起の製造における生産の安定性と生産速度をアップできることにある。すなわち、針状型の管状体から冷却風を吹き込むことで、成型体の冷却を早めることができるからである。また、空気を吹き込む際の風圧により、針状型との成型体との型離れを良くすることができ、生産性をアップさせることができる。また、油剤や離型剤のミストを含むエアーや、油剤等を噴出させることで、成形された針状突起を、針状型や孔開き押さえ板から型離れさせることが、さらに容易になる。これらの効果は、単に生産性の面だけではなく、従来生産が困難であった細くて長い針状突起とすることができる。
【0030】
その効果の第二は、針状突起の形態において、その針状突起にさらなる変形を可能にしたことにある。すなわち針状型を構成する管状体から熱風を吹き込み、シートの先端がさらに変形させることで、さらに先端を変形させ、先端部の変形率アップし、先端部を薄くすることで、接着性アップ等の効果を有する。また、管状体から吸引することで、針状突起の先端に孔を開けたり、先端を一定の形状を付与する意匠効果を付与したり、他のシートとの接着剤接合を容易にすることができる。
【0031】
その効果の第三は、本発明の針状型の径が大きく、管状体の内径が大きい場合において、成形された立体構造物の先端は針状型に接しておらず、空気に接しているので、冷却が遅い。そのため、成形された立体構造物の先端は、高温を維持しているので、そのことを利用して、管状体内部から気体を吹き込んでさらなる変形を行ない、またその高温を利用して、他のシート状物との貼り合わせを行うこともできる。
【0032】
その効果の第四は、針状突起の空洞の内部に、その管状体を利用して物体を充填することを可能にしたことにある。本発明では、針状突起の製造工程でこの内部の駆動に充填が行うことができ、特に両面突起においては、針状突起が形成された後で、この空洞に物体を充填させることは困難であるが、本発明では、成形工程中に充填が行うことができる。針状突起の空洞に物体が充填されることにより、種々の機能を有する立体構造物とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明によって製造される片面に針状突起を有する立体構造物の例を示す斜視図。
【図2】本発明によって製造される両面に針状突起を有する立体構造物の例を示す斜視図。
【図3】本発明によって先端部がさらに変形された針状突起の例を示す側面からみた断面図。
【図4】本発明の針状突起の先端に、内側に向かって変形されることによって形成された型の例を示す側面からみた断面図と、その部分の平面図。
【図5】本発明の立体構造物の針状突起の空洞に物体が封じ込められている例を示す側面からみた断面図。
【図6】本発明の立体構造物の針状突起の先端がシート状物に接合されている構造の例を示す断面図。
【図7】本発明の立体構造物の先端にシート状物を接合させる手段の例を示す概念図。
【図8】本発明における針状型を管状にすることによって、片面に針状突起を有する立体構造物を製造する装置の一部の側面からみた断面図。
【図9】本発明における針状型を管状にすることによって、両面に針状突起を有する立体構造物を製造する装置の一部の側面からみた断面図。
【図10】本発明の圧空室を用いて針状突起を製造する装置の概念図で、Aは平面図、Bは側面からみた断面図。
【図11】本発明の離型板を用いて針状突起を製造する装置の概念図で、Aは平面図、Bは側面からみた断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下本発明の例を、図面で示す実施例に基づいて説明する。図1は、本発明によって製造される片面に針状突起を有する立体構造物の一部の斜視図である。立体構造物1は、樹脂シート2から片方に向けての多数の針状突起3a、3b、3c、・・・を有している。針状突起3a、3b、3cは、ヨコ方向に一定ピッチpで配列している。その後方の針状突起3d、3e、3fは、針状突起3a、3b、3cのp/2ピッチ(ピッチq)後方で、横方向にp/2移動した位置で、ヨコ方向に一定ピッチpで配列している。また、その後方の針状突起3g、3h、3iは、3aの列より一定ピッチpだけ後方で、一定ピッチpで横方向に配列している。すなわち、針状突起3dは、針状突起3a、3b、3g、3hのなす正方形の中心にあり、針状突起3eは、針状突起3b、3c、3h、3iのなす正方形の中心にある。両面突起構造の場合は、3d、3e、3fの突起の箇所が、樹脂シート2の裏面側に突起していたが、本発明の片面突起では、全て片方の面に突起しており、片側面に関しては、針状突起の数を多くすることができる。但し、これらの針状突起の配置は、シートにできるだけ多数の突起を設けるために好ましい配置ではあるが、このような配置に限定されるものではなく、樹脂シート2の片面側に多数の突起が出ていればよい。本発明では、針状型に管状体を使用することにより、図1のように針状突起が細くて高い構造体を、安定して生産性良く製造できるようになったことに特徴がある。
【0035】
図2は、本発明によって製造される両面に針状突起を有する立体構造物の一部の斜視図である。立体構造物11は、樹脂シート12から、上方に向けての多数の針状突起13a、13b、13c、・・・と、下方に向けての多数の針状突起14a、14b、14c、・・・を有している。上方の針状突起13a、13b、13cは、ヨコ方向に一定ピッチpで配列し、また、後方の針状突起13d、13e、13fは、13aの列より一定ピッチpだけ後方で、一定ピッチpで横方向に配列している。下方に突出している針状突起14a、14b、14cは、上方の針状突起13a、13b、13cのp/2ピッチ後方で、横方向にもp/2移動した位置で、ヨコ方向に一定ピッチpで配列している。下方の後方の針状突起14d、14e、14fは、14aの列より一定ピッチpだけ後方で、一定ピッチpで横方向に配列している。本発明では、針状型に管状体を使用することにより、図2のように針状突起が細くて高い構造体を、安定して生産性良く製造できるようになったことに特徴がある。
【0036】
図3は、図1の針状突起の先端にさらなる変形がおこなわれた例を側面からみた断面図で示す。図1の片面突起の場合で代表させたが、図2の両面突起の場合も同様である。本発明の針状型の内部の管から、加熱流体等を噴出させて、針状突起3p、3q、3rの先端に、さらに変形された突起21p、21q、21rになっている例を、側面図で示した。このさらに変形された突起21の厚みd1は、針状突起3の肉厚、特に1/2H(Hは突起の高さ)における肉厚d2よりも薄くなることを特徴とする。d1、d2の厚みの測定法は、その部分を構造体から切り出し、厚み計等で測定する。図におけるd2は斜め方向の厚みで表示してあるが、それは図面をわかりやすくするための表示で、厚みを測定する場所を特定するためであり、実際は、上記のように、その部分を切り出し、厚み計で測定する。測定は、d1、d2とも、構造体からランダムに10点サンプリングして測定し、その算術平均で表示する。
【0037】
図4は、図1の針状突起の先端を、図3の場合と逆に、内側に変形されている例を側面からみた断面図で示す。図1の片面突起の場合で代表させたが、図2の両面突起の場合も同様である。本発明針状型の内部の管から吸引することにより、針状突起3x、3y、3zの先端に、内側に向かって変形され突起32x、32y、32zとなる場合の例を、側面図で示した。そして、その先端部を下部に点線で囲んで、部分拡大した平面図として示した。さらに変形された突起32xは、急激な吸引により孔を開けた例である。32yは、窪みを持たせた例を示す。32zは、その窪みに一定の意匠効果(この例では星形の意匠)を持たせた例を示す。このように窪みに意匠性を持たせるためには、針状型の管の先端断面をこの意匠(星形)にしておくことで実現することができる。
【0038】
図5は、図2の立体構造物12の針状突起の内部の空洞に、物体41が充填されている例を側面図で示す。本発明の立体構造物は、針状突起の内部に、このような物体41が封入できることが特徴で、両面突起構造体であっても、このような充填物質封入タイプとすることが容易である点に特徴がある。物体41は、立体構造物12を成形過程で、針状突起の内部の管状体から供給することができる。
【0039】
図6は、図1の立体構造物1の針状突起の先端に、シート状物42を接合した例を示す側面からみた断面図である。図1の片面突起の場合で代表させたが、図2の両面突起の場合も同様である。このシート状物42の接合により、立体構造物は、圧縮については、全ての針状突起が平等に圧縮力を受けるようになるので、圧縮強度が飛躍的に向上する。また、曲げ強度についても、シート状物42の引張強力や圧縮強力が、曲げに抵抗するので、桁違いに強くなる。このシート状物42を、不織布、ネット状物、孔開きフィルムなどを使用することにより、通気性や透水性を持たすことができ、フィルターやドレイン材としての機能を有するようにすることができた。これらの立体構造物の突起と突起の間の空間に、繊維状物を充填させることにより、フィルター、ドレイン材、反応槽としての機能をさらにアップさせることができる。本発明の立体構造物1は、突起の先端を薄くできることで、先端部の溶融が容易になり、また、先端部を逆に凹にすることで接着剤が載りやすくすることができるので、図6のような構造体の製造を容易にしたことに特徴がある。
【0040】
図7は、本発明の立体構造物にシート状物を接合させる手段について示す。樹脂シートの両面に針状突起13a、13b、・・・、および14a、14b、・・・を有する立体構造物11の進行方向に加熱ロール51a、51bがあり、そのロール51にシート状物52a、52bが導かれ、加熱ロール51で加熱されて軟化され、針状突起13、14の先端に触れて、針状突起13、14の先端と接合されて、シート状物52が接合された立体構造物53とされる。シート状物52が、Tダイスからでた溶融樹脂シートである場合は、むしろ溶融樹脂を冷却する機能を有する温度にすべきである。シート状物52が微多孔膜や不織布などのように、加熱によって性質の変わるものや、織物やネットのように、加熱のみでは接合が困難な場合は、立体構造物11とシート状物52の間に接着性ウェブ54a、54bを導き、接着性ウェブ54によって接着することもできる。シート状物52が微多孔膜や不織布のように、通気性や通水性を有することを特徴とする場合は、それらの通気性等を損なわないように、接着性ウェブ54は、不織布状やネット状物であることが好ましく、また、接着性ウェブ54の通気性等が少ない場合は、シート状物52の全面ではなく、接着性ウェブ54が帯状に部分的に配置して接合することが好ましい。また、接着性ウェブ54を使用せず、シート状物52の接合面や、立体構造物11の針状突起13、14の先端に接着剤を塗布しておくことによっても、シート状物が接合された立体構造物53を製造することができる。本発明の立体構造物11は、突起の先端を薄くできることで、先端部の溶融が容易になり、また、先端部を逆に凹にすることで接着剤を載りやすくすることができるので、シート状物52が接合された構造体53の製造を容易にしたことに特徴がある。
【0041】
図8は、本発明の片面に針状突起を有する立体構造物1の製造方法の例を、装置の一部の側面からみた断面図で示した。基板61には、針状型63a、63b、63cが、ねじ部65を有して、ナット66で基板に固定されている。針状型63a、63b、63cは一部のみを示したもので、基板61の平面上に、針状型は横方向にも、図面の奥方向へも、一定ピッチで配列している。基板61上に孔開き押さえ板64が設けられており、孔開き押さえ板64には、針状型63のそれぞれの突起の位置に対応した孔67が開けられており、基板61または孔開き押さえ板64のどちらかの上下垂直運動、または双方の上下垂直運動により、その孔67に針状型63の突起が嵌合するように配置されている。そして、基板61と孔開き押さえ板64の間に、荷重たわみ温度以上にある溶融樹脂のシート62が導かれ、基板61または孔開き押さえ板64、またはその双方の垂直運動による上記嵌合されることによって、針状突起3a、3bが形成される。この図8においては、孔開き板64が最も下の位置に来ている状態で示す。シート2は、基板61(または孔開き板押さえ板64、またはそれらの双方)の一回の上下運動のストロークで、一定面積の突起物が形成されると、基板61が、最も低い位置に来たときに移動し、次の基板61等の上下運動で、隣接して次の一定面積に針状突起が形成される。このようにして、基板61等の上下運動ストロークで、一定面積の成形されることを繰り返すことで、多数の針状突起を有する立体構造物が連続して成形される。基板61等の上下のストロークは、エアーシリンダーや油圧シリンダーによる上下運動、カムを利用した上下運動、磁力の吸引力や反発力を利用した上下運動等も利用することができる。なお、本発明の針状突起3は、基盤上のそれらの断面や大きさは、必ずしも一定である必要はなく、混在していてもよい。また、本発明の細くて長い針状型63による成形は、変形率が大きく、表面積も大きく、冷却効率も大きいので、生産性もアップするが、さらに冷却効率をアップするために、基板61に孔を開け、冷却空気を導入することもできる。この基板61からの空気は、成形された立体構造物1を、針状型63から離す役割も果たすことができる。また、基板61には、後述する離型板を備えることもでき、孔開き押さえ板64には、後述する圧空室や空気孔を備えることもできる。
【0042】
図8における針状型63の内部は、管68a、68b、68cになっており、針状型63は管状体を構成する。管68には、ホース69a、69b、69cが連結されており、成形工程で、管の内部より流体が流出または吸引するように構成されている。このような管68を有することにより、冷却空気を吹き込み、成型品の冷却速度をアップすることもでき、また、成型品を空気圧により針状型63より離す役目も兼ねることができる。
【0043】
図9は、本発明の両面に針状突起を有する立体構造物11の製造方法の例を、装置の一部を側面からみた断面図で示した。基板71には、針状型73a、73b、73cが、ねじ部75を有して、ナット76で基板に固定されている。針状型73a、73b、73cは一部のみを示したもので、基板71の平面上に、針状型は横方向にも、図面の奥方向へも、一定ピッチで配列している。基板27の平面と向かい合って上面に、基板72の平面が設置されており、それに針状型74a、74b、74cが固定されている。針状型74a、74b、74cは、基板71の針状型とは、位置関係では、1/2ピッチだけ、ヨコ方向と奥方向にずれた位置に配置されている。そして、基板71と基板72の間に、荷重たわみ温度以上にある溶融樹脂のシート62が導かれ、基板71が固定されているのに対して、基板72が上下に動くことで、針状型73a、73b、73cと針状型74a、74b、74cが相対的に平行に動く。この平行な運動により、針状突起13a、13b、13c、14a、14b、14cが形成される。この図9においては、基板71が最も上の位置に来ており、基板72が最も下の位置に来ている状態で示す。シート62は、基板72の一回の上下運動のストロークで、一定面積の突起物が形成されると、基板72が、最も高い位置に来たときに移動し、次の基板72の上下運動で、隣接して次の一定面積に針状突起が形成される。このようにして、基板72の上下運動ストロークで、一定面積の成形されることを繰り返すことで、多数の針状突起を有する立体構造物が連続して成形される。基板72の上下のストロークは、エアーシリンダーや油圧シリンダーによる上下運動や、カムを利用した上下運動も利用することができる。本発明の針状突起13や14は、変形率が大きく、表面積も大きく、冷却効率も大きいので、生産性もアップするが、さらに冷却効率をアップするために、基板71と722に孔を開け、冷却空気を導入することもできる。本発明における針状型73a、73b、73cは、内部が管76a、76b、76cになっており管状体を形成する。そのことにより、管76から、ホース77を介してエアー等の流体を送り込むことを可能にし、また、吸引することも可能にする。また、この管76から成型品の針状突起の内部の空洞に物体を注入することで、図5で説明した、物体が充填されている立体構造物とすることができる。
【0044】
図10は、圧空室の構造と作用を示し、図Aは平面図であり、図Bは側面からの断面図で示す。孔開き押さえ板64には、針状型63に対応する孔67a、67b、67c、・・・が開けられており、その孔67が二重のリングで示されているのは、孔が面取りされていることを示す。孔開き押さえ板64には、孔67の他に多数の小孔81が開けられている。孔開き押さえ板64を上から覆うように、圧空室82が設けられている。圧空室82を囲う側壁には、フッ素系樹脂やフェルト等によって構成されているシール部83が設けられており、孔開き押さえ板64の移動による圧空室82の摺動によるエアーの漏洩を少なくしてある。圧空室82には、導管85により圧縮空気が導かれ、孔開き押さえ板64の孔67と小孔81からの圧縮空気のエアー圧により、成形された立体構造物84を孔開き押さえ板64から離される。圧空室に供給されるエアーにより、成形された立体構造物84を冷却する効果もあり、その意味で、シール部83のシールの程度は、厳密性を要しない。このような圧空室82の作用と、針状型63の内部に設けられた管76の作用を組み合わせることで、本発明の針状突起の生産性をさらにアップさせることができる。
【0045】
図11図は、図8、図10と同様な成形手段において、離型板91と離型板92が設けられた例を示す側面からの断面図で示す。離型板91は、基板61と成形された立体構造物84との間に、基板61の針状型63の突起に対応した孔93を有する。成形初期においては、離型板91は針状型63の中に収まり、基板61の近傍まで下がっている。そして、立体構造物84が成形された後、図のように基板61が下降し、そのままの位置に残っている離型板91が、立体構造物84を針状型63から離す。同時に、孔開き押さえ板64も上昇しており、その過程で離型板92が下降し、針状突起3a、3b、3cの頭を下に押し下げ、孔開き押さえ板64から離す。この離型板92は、孔開き押さえ板64の樹脂シートと反対側に設けられており、立体構造物84が成形された後、離型板92がこの樹脂シートの方向に垂直に移行して、成形された立体構造物84の先端部を押し下げて、立体構造物を孔開き押さえ板64から分離されていく。離型板92の背後には、圧空室82を設けることができ、離型板92に開けられている小孔94からエアーを吹き出し、立体構造物84や孔開き押さえ板64を冷却し、また、そのエアー圧で孔開き押さえ板64と立体構造物84を離すようにすることができる。また、この図における針状突起3が成形される初期の過程で、離型板92と圧空室82を別に設け、圧空室82を負圧吸引にして逆のエアーの流れを作り、成形を助け、針状突起3や孔開き押さえ板64を冷却することができる。なお、この図では、片面針状突起を有する立体構造物83の成形を例に説明したが、図2に示した両面に針状突起を有する立体構造物の成形の場合であっても、離型板91を有効に利用することができる。
【実施例1】
【0046】
原料樹脂として、ポリプロピレン(サンアロマー株式会社、PB370A、MFR1.3、密度0.9g/cm3、荷重たわみ温度80℃)を使用した。この樹脂を、Tダイスより225℃で押出成形し、溶融状態で150μmのシートとなるように、図8に示した立体構造物成形工程へと導かれる。図8における基板61および針状型63を1セットとする成型用金型を用意した。針状型63の針径は2.1mm、ピッチは8.4mm、高さ25mmとし、内部は内径1.5mmの管68となっている。この1セットの金型の針の先に、孔開き押さえ板64(アルミニュウム製、板厚12mm)の孔27(孔径3.5mmφ、針挿入側の孔面取り2mm)を向かい合わせ、その間にTダイスより導かれた溶融樹脂シート2が挟み込まれた状態で、樹脂シートを貫通するように、孔開き押さえ板64の孔67に、針状型63を嵌入した。この時の溶融樹脂シートの温度は218℃であった。成形された針状突起に、管68の内部より熱風(80℃)を吹き込み、針状突起の先端を図3に示すようにさらに変形させることができた。熱風を吹き込まない場合の立体構造物の高さHは、8mmで、1/2Hにおける幅Wは、2.7mm、針状突起の隣の突起までのピッチは、8.4mm、1/2部の厚みは0.1mm、先端部の厚みは0.15mmであったが、熱風を吹き込むことで、Hは、8.3mmで、先端部の厚みは0.08mmとすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の立体構造物は、柔軟性を有するにもかかわらず耐圧性に優れ、また水平方向の透水性や断熱性も有するので、緩衝シート、クッションシート、間仕切り、床材等に使用される。
【符号の説明】
【0048】
1:立体構造物、 2:樹脂シート、 3:針状突起。
11:両面に針状突起を有する立体構造物、 12:樹脂シート、
13:上方部の針状突起、 14:下方部の針状突起。
21p、21q、21r:さらに変形された突起、
32x、32y、32z:針状突起の先端が内側に変形された突起。
41:物体、 42:シート状物。
51:加熱ローラ、 52:シート状物、
53:針状突起の先端にシート状物が接合された立体構造物、
54:接着性ウェブ。
61:基板、 62:軟化点以上にある樹脂シート、 63:針状型、
64:孔開き押さえ板、 65:ねじ部、 66:ナット、 67:孔、
68:管、 69:ホース。
71、72:基板、 73、74:針状型、 75:ナット、
76:管、 77:ホース。
81:小孔、 82:圧空室、 83:シール部、 84:成形された立体構造物。
91、92:離型板、 93:孔、 94:小孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該針状突起の先端が元の針状突起から不連続にさらに変形されて、該変形された先端部の厚みが、1/2H部における側壁の厚み以下であることを特徴とする立体構造物。
【請求項2】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該針状突起の先端がさらに変形されて、該変形された先端部に窪みを有することを特徴とする立体構造物。
【請求項3】
樹脂シートの両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該針状突起の内部に形成されている空洞に物体が充填されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項4】
請求項1または請求項2の針状突起の先端において、シート状物が接合されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項5】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上であることによって流動性を有している樹脂シートの片方の面の側に、多数の針状型が基板と一体化されて設けられており、該樹脂シートの他方の面の側には、該針状型の突起に対応した位置に孔が開けられている孔開き押さえ板が、該針状型が樹脂シートを貫通する際に樹脂シートを背面から支えるように構成されおり、該針状型が該孔開き押さえ板の孔の中に嵌入するように、該樹脂シートに対して垂直方向に移行することによって、該樹脂シートが変形されてシートの片面に多数の針状突起が形成されたものであり、
かつ、該針状突起が、該樹脂シートが管状体の該針状型を用いて該針状突起に成形される過程で、該管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物。
【請求項6】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上である流動性を有している樹脂シートに対して、突起の高さhが3mm以上であって、hの1/2における幅wが、h≧3wである多数の針状型が基板と一体化されており、該基板の一対が互いに向かい合って設置され、その一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に移行することにより樹脂シートが変形されてシートの両面に多数の針状突起が形成された立体構造物であり、
かつ、該針状突起が、該樹脂シートが管状体の該針状型を用いて該針状突起に成形される過程で、該管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物。
【請求項1】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該針状突起の先端が元の針状突起から不連続にさらに変形されて、該変形された先端部の厚みが、1/2H部における側壁の厚み以下であることを特徴とする立体構造物。
【請求項2】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該針状突起の先端がさらに変形されて、該変形された先端部に窪みを有することを特徴とする立体構造物。
【請求項3】
樹脂シートの両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該針状突起の内部に形成されている空洞に物体が充填されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項4】
請求項1または請求項2の針状突起の先端において、シート状物が接合されていることを特徴とする立体構造物。
【請求項5】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上であることによって流動性を有している樹脂シートの片方の面の側に、多数の針状型が基板と一体化されて設けられており、該樹脂シートの他方の面の側には、該針状型の突起に対応した位置に孔が開けられている孔開き押さえ板が、該針状型が樹脂シートを貫通する際に樹脂シートを背面から支えるように構成されおり、該針状型が該孔開き押さえ板の孔の中に嵌入するように、該樹脂シートに対して垂直方向に移行することによって、該樹脂シートが変形されてシートの片面に多数の針状突起が形成されたものであり、
かつ、該針状突起が、該樹脂シートが管状体の該針状型を用いて該針状突起に成形される過程で、該管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物。
【請求項6】
樹脂シートの片方の面または両面に、該樹脂シートの一部が変形されることによって突起の高さHが3mm以上であって、Hの1/2における幅Wが、H≧2Wである多数の針状突起が形成されている立体構造物において、
該立体構造物が、樹脂の荷重たわみ温度以上である流動性を有している樹脂シートに対して、突起の高さhが3mm以上であって、hの1/2における幅wが、h≧3wである多数の針状型が基板と一体化されており、該基板の一対が互いに向かい合って設置され、その一対の基板の針状型が互いに樹脂シートに貫入するように平行に移行することにより樹脂シートが変形されてシートの両面に多数の針状突起が形成された立体構造物であり、
かつ、該針状突起が、該樹脂シートが管状体の該針状型を用いて該針状突起に成形される過程で、該管状体の管の内部より流体が流出または吸引されることによって形成されたものであることを特徴とする立体構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−68132(P2011−68132A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256406(P2010−256406)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【分割の表示】特願2005−28129(P2005−28129)の分割
【原出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【分割の表示】特願2005−28129(P2005−28129)の分割
【原出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
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