説明

管状部材埋設工法及びその工法に使用される坑内軌道システム

【課題】シールド工法を改善する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、状部材を埋設するための坑内におけるシールド掘削機の移動と物資運搬とに使用される坑内軌道システムを提供する。坑内軌道システムは、掘削区間のうち先頭部から所定の長さの切羽区間に設けられ、物資運搬に使用される第1物資運搬軌道と、掘削機の後続台車の移動に使用される後続台車用軌道とを有し、第1物資運搬軌道と後続台車用軌道とが横並びで第1枕木を介して前記坑内壁95に固定されている第1軌道と、物資運搬に使用される第2物資運搬軌道と、第2物資運搬軌道を坑内壁95に固定する第2枕木とを有し、切羽区間においては第1枕木よりも坑内壁95に底部に近い位置に配置されている第2軌道と、連結軌道装置30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削機により掘削された掘削坑の内壁面を覆工するための資材等を坑内に搬送する車両が通る軌道に関し、特に管状部材を埋設するための小口径の掘削坑の覆工に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道設備の敷設等に必要な小口径の掘削坑の形成にシールド工法が使用されている。シールド工法では、たとえば下水道設備の敷設は、一次覆工と二次覆工という2つの工程によって行われている。一次覆工は、シールドの掘削を進行させつつ鋼製または鉄筋コンクリート製のセグメントを組立てて坑内壁を形成する工事である。二次覆工は、一次覆工後の掘削坑に強プラ管等(たとえばFRPM管、鋼管、鋳鉄管)を挿入し、一次覆工後の内面と強プラ管等との間にモルタル(あるいは発泡モルタル)を注入して下水管を敷設する工事である。このような2段階の工事は、各工事の工期が必要となるため工期が長くなるという問題と、各工事において軌道装置の敷設と撤去とを行わなければならないという問題とを有していた。
【0003】
特許文献1では、一次覆工に使用される後続台車配置区間Aと、二次覆工に使用される軌条盛替え完了区間Cと、後続台車配置区間Aと軌条盛替え完了区間Cとを接続するための傾斜を有する斜路区間Bとを有する軌道区間が提案されている。この工法では、シールド機に後続する後続台車の通過に応じて、斜路区間Bを挟んで軌条盛替え完了区間Cに置き換えていくことによって一次覆工用の軌道と二次覆工用の軌道とを同時に敷設することができるので、作業の効率化および施工期間の短縮化を図ることができる。
【0004】
しかしながら、斜路区間Bは、軌条を傾斜させて敷設させるために上面フランジのみを傾斜させた特殊形状の斜路枕木を用いるとともに、坑内運搬車がスムーズに走行できるように長い区間を要するという問題を有している(特許文献1の段落0019)。
【0005】
一方、特許文献2では、二次覆工において、セグメントの内表面に面接触する主板と、主板に載置されるレールとを有する枕木が提案されている。この枕木によれば、作業を行う空間の有効径を大きくするとともに、作業者の歩行を容易にすることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献2の工法では、軌道の高さを低くすることができないので、強プラ管等を装備するための有効径が効果的に大きくなるわけではなく、二次覆工において軌道の撤去が依然として必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−336500号公報
【特許文献2】特開2006−342574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の先行技術は、いずれも軌道の枕木の構成を工夫するにすぎず、小口径の掘削坑を形成するためのシールド工法に適した軌道装置(軌道及び枕木)の全体の改善といった観点からは検討がなされていなかった。
【0009】
本発明は、上述の従来の課題を解決するために創作されたものであり、シールド工法を改善する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0011】
手段1.地中に管状部材を埋設するために、前記管状部材を埋設するための坑内におけるシールド掘削機の後続台車の移動と物資運搬とに使用される坑内軌道システムであって、
前記掘削機によって坑内壁が形成された掘削区間のうち先頭部から所定の長さの切羽区間に設けられ、前記物資運搬に使用される第1物資運搬軌道と、前記後続台車の移動に使用される後続台車用軌道とを有し、前記第1物資運搬軌道と前記後続台車用軌道とが横並びで第1枕木を介して前記坑内壁に固定されている第1軌道と、
前記掘削区間の全区間に設けられ、前記物資運搬に使用される第2物資運搬軌道と、前記第2物資運搬軌道を前記坑内壁に固定する第2枕木とを有し、前記切羽区間において前記第1枕木よりも前記坑内壁の底部に近い位置に配置されている第2軌道と、
前記第2物資運搬軌道上を移動可能であり、前記第1物資運搬軌道と前記第2物資運搬軌道の高低差と左右方向のズレとを吸収して連結する連結軌道装置と、
を備え、
前記連結軌道装置は、前記第1物資運搬軌道と連結されている第1連結軌道と、前記第2物資運搬軌道と連結されている第2連結軌道と、前記第1連結軌道と前記第2連結軌道とを連結する中間連結軌道と、前記第1連結軌道と前記中間連結軌道とを水平面内で回動可能に連結する第1連結ヒンジと、前記第2連結軌道と中間連結軌道とを水平面内で回動可能に連結する第2連結ヒンジと、を有する坑内軌道システム。
【0012】
手段1の第1軌道においては、一次覆工でのシールド掘削機の後続台車の移動に使用される後続台車用軌道と、掘削残土や資材といった物資の運搬に使用される第1物資運搬軌道とが横並びで配置されているので、比較的に長い第1枕木が必要とされることになる。これに対して、二次覆工にも使用される第2物資運搬軌道においては、物資運搬に使用される第2物資運搬軌道のみが必要なので、比較的に短い第2枕木で足りることになる。これにより、第2物資運搬軌道は、一次覆工の完了後において、掘削径に対して大きな径の管状部材を運搬することができるとともに、掘削孔内に二次覆工のための作業空間や敷設空間を広く確保することもできる。
【0013】
一方、第1物資運搬軌道と第2物資運搬軌道とは、第2物資運搬軌道上を移動する連結軌道装置によって連結されている。移動可能な連結軌道装置を使用すれば、シールド掘削機の前進に追従して通過区間の第1物資運搬軌道を撤去しつつ連結軌道装置を前進させることによって簡易に軌道の連結を維持することもできる。連結軌道装置は、第1連結部材と、第2連結部材と、中間連結部材と、第1連結部材と中間連結部材とを回動可能に接続する第1ヒンジと、第2接続部と中間接続部とを回動可能に接続する第2ヒンジとを有しているので、掘削孔がカーブしていても簡易かつ円滑に軌道の接続を維持することもできる。これにより、一次覆工の完了と同時に二次覆工に適した第2物資運搬軌道のみを残すことができるので、軌道の撤去と敷設の工期を排除して工期短縮化を図ることもできる。
【0014】
手段2.前記第2枕木は、
前記坑内壁の内面の周方向に沿う方向に湾曲している湾曲部と、
前記湾曲部の両端部の各々から前記湾曲部の中心位置に向かってそれぞれ同一距離だけ離間させて設けられている一対の突出部と、
を有し、
前記第2物資運搬軌道は、相互に直角に折り曲げられている第1の板部と第2の板部とで構成されている断面を含み、前記第2物資運搬軌道面が上面に形成されている前記第1の板部が前記湾曲部に載せられ、前記第2の板部が前記突出部に当接する手段1に記載の坑内軌道システム。
【0015】
手段2は、相互に直角に折り曲げられている第1の板部と第2の板部とで構成されている断面を含む第2の軌道装置が車輪を支持する軌道面を提供するので、耐久性が高く再利用可能ではあるが高価な軌道用レールを使用することなく坑内軌道装置を実現することができる。一方、2つの第2の軌道部材は、湾曲部の曲率中心側の面に溶着されている2つの係止部材に当接し、軌道面の各裏面には湾曲部が溶着されているので、掘削孔の内面に荷重を流す構造をコンパクトに実現することができる。これにより、軌道用レールを使用することなく、管状部材の敷設のために有効な敷設空間を大きくすることができる。
【0016】
本発明者は、車輪を支持する軌道面には、耐久性が高く高価なレールを使用しなければならないという従来の技術常識に反し、軌道システムの一部に敢えて軌道用レール以外の軌道部材(たとえば安価なL型鋼)を使用している。このような軌道部材の使用は、従来の技術常識では、磨耗や変形が問題となる。しかし、本発明者の実験によれば、このような軌道部材は、掘削残土や資材の運搬を目的とし、数キロメートル程度のトンネルの施工を1回だけ行うという用途であれば十分な耐久性を有することが確認された。本発明は、軌道の途中で軌道部材が軌道用レールからL型鋼に変更されるという従来技術の常識にも反している極めて独創的な着想に基づいて構成されたものである。
【0017】
本発明は、「安価な鋼材の使用可能性」と「有効な敷設空間の実現」という2つの特徴によって、二次覆工において軌道装置を撤去することなく、埋設することを可能とすることができる。これにより、軌道装置の撤去工事を排除して施工期間を短縮化することができるとともに、二次覆工用の軌道装置の撤去工事に伴う廃材の発生を無くすことによって環境にも好ましい工法を実現することができる。さらに、掘削孔の内面に対する軌道面の高さを低くすることができるので、仮に脱線してもズリ鋼車が転倒しにくいという構成も実現可能である。
【0018】
手段3.前記連結軌道装置は、前記第2物資運搬軌道面上を摺動し、前記第1連結軌道を支持する第1支持部と、前記第2物資運搬軌道面上を摺動し、前記中間連結軌道を支持する中間支持部と、前記第2物資運搬軌道面上を摺動し、前記第2連結軌道を支持する第2支持部と、を備え、
前記第1支持部は、前記第1物資運搬軌道の間に挟まれることによって、前記第1物資運搬軌道に対する前記第1連結軌道の平行度を維持する第1平行度規制部を有し、
前記第2支持部は、前記第2物資運搬軌道を外側から挟むことによって、前記第2物資運搬軌道に対する前記第2連結軌道の平行度を維持する第2平行度規制部を有し、
前記第2連結軌道は、前記第2平行度規制部から前記第2物資運搬軌道の中心側に延びて前記第2物資運搬軌道の内側の面と共通する面を形成する手段2に記載の坑内軌道システム。
【0019】
手段3では、連結軌道装置は、第2物資運搬軌道面上を摺動して移動するように構成されているので簡易に連結位置を移動(前進)させることができる。第1支持部は、第1物資運搬軌道に対する平行度を維持する第1平行度規制部を有し、連結軌道装置を前進移動させても第1物資運搬軌道との平行度を確実に維持することができるので、坑内運搬車両列80の円滑な走行を実現することができる。第1平行度規制部は、第1物資運搬軌道の間に挟まれることによって平行度を維持することができるので、第1物資運搬軌道が掘削坑の中心から側方にシフトした位置に配置されていても坑内壁との干渉を確実に防止することができる。
【0020】
第2支持部は、第2物資運搬軌道に対する平行度を維持する第2平行度規制部を有し、連結軌道装置を前進移動させても第1物資運搬軌道との平行度を確実に維持することができる点で、第1支持部と共通する。ただし、第2平行度規制部は、第2物資運搬軌道を外側から挟むことによって、第2物資運搬軌道に対する平行度を維持するように構成されている。このような構成は、第2平行度規制部から第2物資運搬軌道の中心側に延びて一対の第2物資運搬軌道の内側の面と共通する面の形成を実現することができる。これにより、車輪が接する面の近傍で第2物資運搬軌道と第2連結部とで連続する面を形成することができる。
【0021】
手段4.前記第2枕木は、前記湾曲部において所定の間隔を隔てて設けられ、上方に起立する一対の起立部を有し、
前記第1の板部は、前記起立部の上端部に載せられている手段2又は3に記載の軌道構造。
【0022】
手段4では、支持部は、いずれも湾曲部の周方向の中心位置と湾曲の曲率中心とを結ぶ線である中心線に平行に曲率中心側に延びている直線部なので、一本の平板を湾曲加工と曲げ加工の組成加工のみで製造することができる。さらに、本直線部は、湾曲部と折り曲げ部を介して接続されているので、L字型軌道部からの垂直荷重を折り曲げ部から掘削孔の内面に直線的な圧縮荷重として効率的に伝達させることができる。
【0023】
手段5.手段1乃至4のいずれか一つに記載の坑内軌道システムを使用して、シールド掘削機で地中を掘削するとともに、前記掘削された掘削孔内に管状部材を埋設する工法であって、
前記シールド掘削機の前方において、前記第1物資運搬軌道と前記第2物資運搬軌道と前記後続台車用軌道とを敷設する軌道敷設工程と、
前記シールド掘削機によって掘削しつつ、前記シールド掘削機を前進させる掘削機前進工程と、
前記第2物資運搬軌道を残存させた状態において、前記シールド掘削機の通過後の区間の前記第1物資運搬軌道と前記後続台車用軌道とを撤去する軌道撤去工程と、
前記第2物資運搬軌道を使用して前記連結軌道装置を前進させて、前記第2物資運搬軌道と前記第1物資運搬軌道とを連結する連結軌道工程と、
前記第2物資運搬軌道を使用して前記掘削孔内に前記管状部材を運搬する管状部材運搬工程と、
前記管状部材と前記第2物資運搬軌道とを前記掘削孔内に埋設する埋設工程と、
を備える管状部材埋設工法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の下水道施工システムの構成を示す縦断面図。
【図2】実施形態の下水道施工システムの構成を示すA−A断面図。
【図3】シールド掘削システム70が前進した状態を示す縦断面図。
【図4】実施形態の下水道施工システムの構成を示すB−B断面図。
【図5】実施形態の下段軌道装置50の構成を示す斜視図。
【図6】実施形態の下段軌道装置50を掘削方向に見た正面図。
【図7】実施形態の二次覆工が完了した状態を示す断面図。
【図8】実施形態の連結軌道装置30の構成を示す斜視図。
【図9】下段連結ユニット31と下段軌道装置50との接続状態を示す斜視図。
【図10】上段連結ユニット33の下段軌道部材55,56への設置状態を示す斜視図。
【図11】本実施形態の上段接続アダプタ36を示す斜視図。
【図12】本実施形態の中間接続アダプタ38を示す斜視図。
【図13】実施形態の下水道施工の各工程を示すフローチャート。
【図14】実施形態の一次覆工の各工程を示すフローチャート。
【図15】実施形態の二次覆工の各工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具現化した各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(実施形態のシールド掘削システムの構成)
図1は、実施形態の下水道施工システムの構成を示す縦断面図である。下水道施工システムは、シールド掘削システム70と坑内運搬車両列80と軌道構造60とを備えている。シールド掘削システム70は、地中を掘削し、掘削された坑内で複数のセグメントSを組立てることによって坑内壁95を形成するシステムである。坑内運搬車両列80は、電池で牽引駆動するバッテリ機関車81と、シールド掘削システム70にセグメントSを供給する材料台車82と、掘削残土を運搬する運搬車両83とを備えている。軌道構造60は、坑内運搬車両列80が坑内を移動するための上段軌道部材11と、シールド掘削システム70の後続台車が移動するための後続台車用軌道(後述)とを備えている。
【0027】
シールド掘削システム70の後続台車には、切刃で地中を掘削する泥土圧シールド71と、運転台車73と、電源台車74と、シールド掘削システム70を制御する制御盤台車75と、シールド掘削システム70の動力源としての油圧源を搭載する油圧源台車76と、トランス台車77と、ケーブルリール台車78とが含まれている。なお、泥土圧シールド71は、シールド掘削機あるいは掘削機とも呼ばれる。
【0028】
運転台車73は、シールド掘削システム70を操作するにオペレータが乗車する。制御盤台車75は、オペレータの操作に応じてシールド掘削システム70を制御する。ケーブルリール台車78は、電源台車74と地上とを繋ぐ電源ケーブルや通信ケーブルを格納している。トランス台車77は、電圧を変換して電源台車74に電力を供給する。電源台車74は、シールド掘削システム70に電力を供給する。泥土圧シールド71は、掘削残土を運搬車両83まで運搬するベルトコンベア72を備えている。
【0029】
図2は、実施形態の下水道施工システムの構成を示すA−A断面図である。後続台車用軌道20は、上段枕木17に固定されている。後続台車用軌道20は、シールド掘削システム70の後続台車が坑内を前進するための軌道を提供している。後続台車73,74,75,76,77,78には、相互に図示しない牽引ロープが各台車間に締結されている。これにより、泥土圧シールド71は、後続台車用軌道20が提供する軌道上において後続台車73,74,75,76,77,78を牽引することができる。上段枕木17は、第1枕木とも呼ばれる。
【0030】
制御盤台車75は、単レールの後続台車用軌道20の上を転がる車輪75dを有している。制御盤台車75は、後続台車用軌道20と平行な方向に延びる軸を有する円柱状の形状を有する可動ソリ75cと、可動ソリ75cを支持する腕部75bとを有している。可動ソリ75cは、単レールである後続台車用軌道20上の制御盤台車75を坑内壁95の側方から支持している。一方、坑内壁95には、制御盤台車75が坑内壁95の中心方向に向けて倒れないように、倒れ止め95sが制御盤台車75に対して少し隙間を空けて配置されている。なお、他の後続台車73,74,76,77,78は、制御盤台車75と同様の構成を有している。
【0031】
後続台車用軌道20は、泥土圧シールド71の掘削による前進に伴って運転台車73の前方に継ぎ足されることによって前方側に順に延長される。一方、ケーブルリール台車78の後方においては、後続台車用軌道20は存在する必要がないので解体撤去することができる。解体された後続台車用軌道20は、運転台車73の前方における軌道の延長に利用することができる。シールド掘削システム70は、一般に後進することはないからである。このように、後続台車用軌道20は、それ自体が実質的に前方に移動(順にシフト)することによって、シールド掘削システム70の前進に利用されることになる。
【0032】
上段軌道部材11は、坑内運搬車両列80の資材(たとえばセグメントや副資材)や掘削残土の運搬のための軌道を提供する。資材は、クレーン装置91を使用し、地上から縦穴T2の底部に到着した運搬車両83に搭載される。運搬車両83は、バッテリ機関車81に駆動(押される)ことによって、上段軌道部材11の軌道上を移動して泥土圧シールド71の近傍まで運搬することができる。
【0033】
一方、材料台車82は、バッテリ機関車81に牽引されることによって、上段軌道部材11の軌道上を移動して、ベルトコンベア72の掘削土排出口72a(図1参照)の下方まで移動することができる。材料台車82は、掘削土排出口72aから排出された掘削残土を搭載し、上段軌道部材11の軌道上を縦穴T2まで運搬する。これにより、掘削残土は、クレーン装置91によって引き上げ可能な状態となる。なお、クレーン装置91は、材料台車82自体を吊り上げて、地上で材料台車82を転回して掘削残土を地上に降ろすように構成されていてもよい。
【0034】
後続台車用軌道20及び上段軌道部材11は、直線状の一本のH型鋼で形成されている上段枕木17に横並びで固定されている。上段軌道部材11は、一対のレール、すなわち掘削方向に向かって左側に配置されている左側レール11aと、掘削方向に向かって右側に配置されている右側レール11bと、を備えている。上段軌道部材11は、第1物資運搬軌道とも呼ばれる。
【0035】
上段枕木17の下方には、上段軌道部材11と共通の軌道幅を有する下段軌道装置50が備えられている。下段軌道装置50は、シールド掘削システム70が通過した後において、上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17が撤去されることによって上方に露出して利用可能となる。上段軌道部材11、下段軌道装置50、および後続台車用軌道20は、相互に平行に延びている。
【0036】
図3は、実施形態の下水道施工システムにおいてシールド掘削システム70が前進した状態を示す縦断面図である。図4は、実施形態の下水道施工システムの構成を示すB−B断面図である。本図では、シールド掘削システム70の前進によって、シールド掘削システム70の後方に下段軌道装置50が露出して利用可能となった状態が示されている。下段軌道装置50は、第2物資運搬軌道とも呼ばれる。
【0037】
掘削坑内T1には、セグメントSが組立てられて坑内壁95が形成されている。このような工事は一次覆工と呼ばれる。掘削坑内T1は、軌道構造60の構成に応じて、一次覆工完了区間Z1と、二次覆工可能区間Z2と、遷移区間Z3とに分けられている。一次覆工完了区間Z1は、下段軌道装置50、上段軌道部材11、および後続台車用軌道20が備えられている区間である。二次覆工可能区間Z2は、上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17が撤去され、下段軌道装置50が露出することによって広い作業空間(移動空間あるいは敷設空間)が確保されて二次覆工が可能な区間である。遷移区間Z3は、上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17が撤去され、上段軌道部材11と下段軌道装置50とを接続する連結軌道装置30が設置されている傾斜区間である。なお、一次覆工完了区間Z1は、切羽区間とも呼ばれる。
【0038】
図5は、実施形態の下段軌道装置50の構成を示す斜視図である。図6は、実施形態の下段軌道装置50を掘削方向に見た正面図である。下段軌道装置50は、下段枕木51と、一対の下段軌道部材55,56とを備えている。下段枕木51は、坑内壁95の内面の周方向に沿う方向に湾曲している湾曲部54aと、一対の折り曲げ部54b,54cと、一対の起立部54d,54eと、位置決め部材53a,53bとを備えている。下段枕木5は、第2枕木とも呼ばれる。位置決め部材53a,53bは、一対の突出部とも呼ばれる。
【0039】
下段枕木51は、金属製の平板を曲げ加工で湾曲させて湾曲部54aを形成するとともに、一対の折り曲げ部54b,54cにおいて折り曲げて一対の起立部54d,54eを形成し、位置決め部材53a,53bを溶着することによって製造される。位置決め部材53a,53bは、湾曲部54aの両端部を形成する一対の折り曲げ部54b,54cの各々から湾曲部54aの中心位置に向かってそれぞれ同一距離だけ離間させて設けられている。
【0040】
下段軌道部材55は、相互に直角に折り曲げられている第1の板部55aと第2の板部55bとで構成されている断面を含むL型鋼を長手方向に切断することによって製造され、下段枕木51に溶着されている。第1の板部55aは、起立部54dの上端部に溶着されている。第2の板部55bは、位置決め部材53aに溶着されている。一方、下段軌道部材56は、相互に直角に折り曲げられている第1の板部56aと第2の板部56bとで構成されている断面を含むL型鋼を長手方向に切断することによって製造され、下段枕木51に溶着されている。第1の板部56aは、起立部54eの端部に溶着されている。第2の板部56bは、位置決め部材53bに溶着されている。第1の板部55a及び第1の板部56aの上面は、第2物資運搬軌道面とも呼ばれる。
【0041】
下段軌道装置50は、一般的なレール部材を使用しない簡易な構成を有することによって、坑内壁95の底部からの高さを低くすることができるので、掘削坑内T1に広い作業空間を確保することができる。これにより、下段軌道装置50は、掘削坑内T1に埋設される強化プラスティック管98を掘削坑内T1に搬入することができる。換言すれば、下段軌道装置50は、掘削坑内T1の内径を有効利用することを可能とするので、強化プラスティック管98の外形に対して、掘削坑内T1の内径を小さくして掘削量を低減させることができる。
【0042】
図7は、実施形態の二次覆工が完了した状態を示す断面図である。二次覆工とは、本実施形態では、強化プラスティック管98を埋設する工事である。強化プラスティック管98は、発泡モルタル層97によって掘削坑内T1において坑内壁95に対して固定されている。発泡モルタル層97は、坑内壁95と強化プラスティック管98との間に注入された発泡コンクリートである中込材が硬化したものである。これにより、下水道工事の二次覆工が完了したことになる。
【0043】
下段軌道装置50は、図7から分るように、地上で廃棄されること無く発泡モルタル層97の内部に埋設されている。さらに、後続台車用軌道20は、前述のように、それ自体が実質的に前方に移動することによって、シールド掘削システム70が前進するごとに再利用されるので、後続台車用軌道20の敷設のための資材を顕著に低減させることができる。これにより、軌道の敷設に必要な資材を顕著に低減させるだけでなく、軌道の敷設や撤去に伴う資材の廃棄に起因する環境負荷を顕著に低減させることができる。
【0044】
図8は、実施形態の連結軌道装置30の構成を示す斜視図である。連結軌道装置30は、
下段連結ユニット31と、中間連結ユニット32と、上段連結ユニット33と、下段接続ヒンジ34と、上段接続ヒンジ35とを備えている。下段連結ユニット31には、下段軌道装置50と連結されるための一対の下段連結軌道部材31a,31bが装備されている。上段連結ユニット33には、上段軌道部材11と連結されるための上段連結軌道部材33a,33bが装備されている。中間連結ユニット32には、下段連結軌道部材31a,31bと上段連結軌道部材33a,33bとを連結するための中間連結軌道32a,32bが装備されている。上段連結軌道部材33a,33bは、第1連結軌道とも呼ばれる。下段連結軌道部材31a,31bは、第2連結軌道とも呼ばれる。
【0045】
下段接続ヒンジ34は、下段連結軌道部材31a,31bと中間連結軌道32a,32bとを水平面内で回動可能に接続している。中間連結軌道32a,32bは、それぞれ隙間32e,32fを空けて一対の下段連結軌道部材31a,31bと連結されている。隙間32e,32fは、下段連結軌道部材31a,31bと中間連結軌道32a,32bの回動動作によって相互に干渉しないように設けられた隙間である。
【0046】
上段接続ヒンジ35は、上段連結軌道部材33a,33bと中間連結軌道32a,32bとを水平面内で回動可能に接続している。中間連結軌道32a,32bは、それぞれ隙間32c,32dを空けて一対の上段連結軌道部材33a,33bと連結されている。隙間32c,32dは、上段連結軌道部材33a,33bと中間連結軌道32a,32bの回動動作によって相互に干渉しないように設けられた隙間である。
【0047】
図9は、下段連結ユニット31と下段軌道装置50との接続状態を示す斜視図である。下段連結ユニット31は、下段連結軌道部材31a,31bと、下段軌道部材55,56上を摺動して下段連結軌道部材31a,31bをそれぞれ支持する下段支持部31c,31dと、下段平行度規制部31e,31fと、を備えている。下段平行度規制部31e,fは、下段軌道部材55,56を外側から挟むことによって、下段軌道部材55,56に対する下段連結軌道部材31a,31bの平行度を維持することができる。下段支持部31c,31dは、第2支持部とも呼ばれる。下段平行度規制部31e,31fは、第2平行度規制部とも呼ばれる。
【0048】
下段平行度規制部31e,31fは、それぞれ起立部54d,54eに対して締結工具としてのブルマン等で簡易に締結することができる。これにより、たとえば車輪75dの通過時に下段軌道装置50から下段連結軌道部材31a,31bがずれてしまう事態を防止することができる。ただし、連結軌道装置30の軌道方向の位置は、起立部54d,54eの軌道方向において飛び飛びの位置(起立部54d,54eの存在位置)に制限されることになる。
【0049】
下段支持部31cは、下段平行度規制部31eから下段軌道部材55の中心側に延びて下段軌道部材55の内側の面55fと共通する面31iを有するように構成されている。下段支持部31dは、下段支持部31cと対称の構成を有している。下段連結軌道部材31a,31bは、それぞれの端部31j,31kに近づくほど、高さが低くなる形状(断面厚さが薄くなる形状)を有している。下段支持部31c,31dは、それぞれの内側角部31g,31hに近づくほど、高さが低くなる形状を有している。これにより、下段軌道部材55,56への軌道の円滑な連結が実現されている。
【0050】
図10は、上段連結ユニット33の下段軌道部材55,56への設置状態を示す斜視図である。上段連結ユニット33は、上段連結軌道部材33a,33bと、下段軌道部材55,56上を摺動して上段連結軌道部材33a,33bを支持する上段支持部33cと、を備えている。上段支持部33cは、一対のソリ部33d,33eと、上段平行度規制部33f1,33f2と、連結腕33gと、を備えている。一対のソリ部33d,33eは、上段支持部33cを下段軌道部材55,56上において円滑に摺動させるための部材である。連結軌道装置30の移動は、バッテリ機関車81が連結腕33gで掘削側に牽引することによって簡易に実現することができる。一対のソリ部33d,33eには、上段支持部33cの下面において下段軌道部材55,56上を摺動するための各平面が連なっている。上段支持部33cは、第1支持部とも呼ばれる。
【0051】
上段平行度規制部33f1,33f2は、上段支持部33cの移動において上段軌道部材11に対する上段連結軌道部材33a,33bの平行度を維持する部材である。平行度の維持は、上段平行度規制部33f1,33f2が下段軌道部材55,56の内側に挟まれることによって実現されている。上段平行度規制部33f1,33f2は、上段軌道部材11との左右方向の位置決めも自動的に行うことができる。
【0052】
これにより、上段連結ユニット33は、バッテリ機関車81に牽引されて円滑に移動することができるとともに、上段軌道部材11との位置関係や平行度も自動的に調整されることになる。なお、上段平行度規制部33f1,33f2と下段軌道部材55,56の内側との間に所定の隙間を設けておき、摺動を円滑化するための別部材を装着するようにしてもよい。
【0053】
図11は、本実施形態の上段接続アダプタ36を示す斜視図である。上段接続アダプタ36は、上段連結軌道部材33a,33bと上段軌道部材11との間の隙間において軌道を形成して両者を接続するアダプタである。上段連結軌道部材33a,33bと上段軌道部材11との間に隙間が発生するのは、連結軌道装置30の位置が下段枕木51の位置によって飛び飛びの位置に制限され、上段連結軌道部材33a,33bの位置を上段軌道部材11の位置に合わせて微調整できないからである。
【0054】
上段接続アダプタ36は、C型の断面を有する型材を加工することによって製造することができる。上段接続アダプタ36は、平行な一対の板部36a,36cと、一対の板部36a,36cに対して垂直な板部36bと、を有している。平行な一対の板部36a,36cは、垂直な板部36bによって接続されている。本実施形態では、上段接続アダプタ36と対称な形状を有するアダプタ(図示省略)も使用される。
【0055】
板部36cには、軌道方向の端部に向かって厚さが薄くなるように形成された傾斜面36d,36eが形成されている。板部36bには、軌道方向の端部に向かって厚さが薄くなるように形成された傾斜面36f,36gが形成されている。傾斜面36d,36fは、上段連結軌道部材33bとの軌道の接続を滑らかにするために形成されている傾斜面である。傾斜面36e,36gは、上段軌道部材11の右側レール11bとの軌道の連結を滑らかにするために形成されている傾斜面である。傾斜面は、たとえば切削加工によって簡易に形成することができる。
【0056】
図12は、本実施形態の中間接続アダプタ38を示す斜視図である。中間接続アダプタ38は、中間連結軌道32a,32bの両端で生じる隙間32c,32d,32e,32f(図8参照)において隙間を埋める軌道を形成して連結するアダプタである。L型の断面を有する型材と2枚の平板を相互に溶着し、一部に切削加工を施すことによって製造することができる。L型の断面を有する型材は、相互に垂直に接続されている2枚の板部38b,38cを有している。板部38cには、中間連結軌道32a,32b等との軌道の連結を滑らかにするために軌道方向の端部に向かって厚さが薄くなるように形成されている傾斜面38d,38eが設けられている。板部38bには、中間連結軌道32a,32b等との軌道の連結を滑らかにするために軌道方向の端部に向かって厚さが薄くなるように形成されている傾斜面38g,38hが設けられている。
【0057】
板部38bには、板材38aが溶着されている。平行に配置されている板材38aと板部38cとの間には、板材38fが溶着されている。板材38fは、隙間32c,32d,32e,32f(図8参照)に挿入され、軌道上において隙間32c,32d,32e,32fの位置に拘束されることになる。すなわち、中間接続アダプタ38は、隙間32c,32d,32e,32fに嵌め込むだけで、位置ズレを生じさせること無く軌道を連結させることができる。
【0058】
(実施形態の下水道工事の内容)
図13は、実施形態の下水道施工の各工程を示すフローチャートである。ステップS10では、一次覆工(図3参照)が行われる。一次覆工は、シールド掘削システム70によって地中を掘削するとともに、掘削孔の内面に対してセグメントSを組立てて坑内壁95を形成する工程である。
【0059】
ステップS20では、二次覆工(図7参照)が行われる。二次覆工は、坑内壁95が形成された坑内に強化プラスティック管98を運び込むとともに、強化プラスティック管98を相互に接続した状態において発泡モルタルで埋設する工程である。二次覆工は、掘削が完了してシールド掘削システム70が坑内から運び出された状態で行われるので、シールド掘削システム70の移動に使用される後続台車用軌道20が不要な工程である。
【0060】
図14は、実施形態の一次覆工の各工程を示すフローチャートである。ステップS11では、作業者は、掘削工程を実行する。掘削工程は、泥土圧シールド71で地中を掘削して前進する工程である。泥土圧シールド71は、その先端部の圧力分布を調整することによって上下左右に方向を操作することができる。これにより、泥土圧シールド71は、民間地の地下を回避して道路下の地中を掘り進むことができる。
【0061】
ステップS12では、作業者は、セグメント組立工程を実行する。セグメント組立工程は、坑内壁95が複数の部分に分割されたセグメントSを油圧ジャッキ等で前方に押し込んで相互に連結して組立てる工程である。セグメントSは、本実施形態では、掘削方向の長さが0.9mなので、ステップS11とステップS12とを順に実行することによって、泥土圧シールド71は、0.9m前進することができる。一方、上段軌道部材11を形成するレールは、本実施形態では、単体として5mの長さを有しているので、ステップS11とステップS12の各工程を5回乃至6回繰り返すことによって、泥土圧シールド71の前方において、上段軌道部材11を形成するレールを敷設するだけの長さの掘削坑内T1を確保することができる(ステップS13,S14)。
【0062】
ステップS15では、作業者は、軌道設置工程を実行する。軌道設置工程は、(1)坑内壁95のリブ95rに対して下段軌道装置50を溶着して固定する工程と、(2)坑内壁95のリブ95rに対して上段枕木17を組み付ける工程と、(3)上段枕木17に対して上段軌道部材11と後続台車用軌道20と組み付ける工程とを含んでいる。上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17は、シールド掘削システム70が通過した後の資材を再利用することによって敷設される。
【0063】
上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17は、再利用が可能となるように組立と解体とが簡単にできるように坑内壁95に対して組みつけられている。上段枕木17は、たとえば上段枕木17の両端に締結(たとえば溶着)されたブルマン(図示省略)によってリブ95rを締め付けることによって固定することができる。上段軌道部材11と後続台車用軌道20とは、ネジ等の締結部材を使用して固定することができる。
【0064】
このように、本実施形態では、下段軌道装置50の材料だけを搬入することによって、上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17の資材を地上から搬入することなく、泥土圧シールド71の前方に全ての軌道装置を装着することができる。一方、下段軌道装置50は、上述のように極めて簡素な構成を有しているので、最小限の資材の搬入で軌道を前方に延ばすことができる。
【0065】
ステップS16では、作業者は、連結軌道装置移動工程を実行する。連結軌道装置移動工程は、シールド掘削システム70の後方における上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17の撤去によって露出した下段軌道装置50を使用して、上段軌道部材11と下段軌道装置50の軌道を連結するために連結軌道装置30を前進させる工程である。連結軌道装置30の前進は、前述のように連結軌道装置30が有する連結腕33g(図10参照)をバッテリ機関車81で牽引することによって行うことができる。
【0066】
ステップS17では、作業者は、連結軌道工程を実行する。連結軌道工程は、連結軌道装置30を使用して下段軌道装置50と上段軌道部材11の軌道を連結する工程である。連結軌道工程は、(1)一対の上段接続アダプタ36を使用して下段軌道装置50を連結軌道装置30の下段連結軌道部材31a,31bに連結する工程と、(2)上段軌道部材11を上段連結軌道部材33a,33bに連結する工程と、(3)4個の中間接続アダプタ38を装着する工程と、を含んでいる。
【0067】
ステップS18では、作業者は、貫通を確認する。貫通は、終端地に掘削されている縦孔(図示省略)に到達することを意味する。作業者は、坑内壁95を完成させた後にシールド掘削システム70を解体して地上に搬出する。
【0068】
図15は、実施形態の二次覆工の各工程を示すフローチャートである。ステップS21では、作業者は、配管敷設工程を実行する。配管敷設工程は、バッテリ機関車81によって掘削坑内T1の内部で強化プラスティック管98を運搬し、その埋設位置に固定する工程である。埋設位置への固定は、たとえばレバーブロック(登録商標)等によって芯出し作業を行った後に埋設済みの強化プラスティック管98に連結し、その状態で坑内壁95と強化プラスティック管98との間に位置決め用の治具(図示省略)を装着することによって行われる。
【0069】
ステップS22では、作業者は、間仕切壁設置工程を実行する。間仕切壁設置工程は、中込材の注入時に中込材の流出を防ぐために坑内壁95と強化プラスティック管98との隙間に間仕切壁を設置する工程である。間仕切壁は、たとえばセメントレンガやモルタルで形成される。
【0070】
ステップS23では、作業者は、中込材注入工程を実行する。中込材注入工程は、地上のミキシングプラント(図示省略)で配合された中込材を圧送管(図示省略)で掘削坑内T1に送って、坑内壁95と強化プラスティック管98との隙間に中込材を注入する工程である。
【0071】
本発明は以下の効果を奏することができる。
(1)一次覆工においては、以下の効果を奏することができる。すなわち、極めて簡素な構成の下段軌道装置50の資材だけを搬入することによって、上段軌道部材11、後続台車用軌道20、および上段枕木17の資材を地上から搬入することなく、泥土圧シールド71の前方に全ての軌道装置を装着することができる。これにより、後続台車用軌道20や下段軌道装置50の敷設のための資材の廃棄に起因する環境負荷を低減させることができる。
(2)一次覆工の完了後に二次覆工を開始するまでには、一次覆工用の軌道の撤去と二次覆工用の軌道の設置のための工期を費用としていたが、本実施形態によれば、一次覆工の完了時に自動的に二次覆工用の軌道が完成していることになる。これにより、工期を顕著に短縮化することができる。
(3)二次覆工においては、下段軌道装置50は、掘削坑内において広い敷設空間を提供することができるので、地上で廃棄されること無く発泡モルタル層97の内部に埋設することができる。これにより、下段軌道装置50の資材撤去の工期を不要として、その廃棄に起因する環境負荷を低減させることができる。
【0072】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0073】
上記実施形態では、下水道の敷設を例にとって本発明を説明しているが、たとえば上水道や光ケーブル、電線地中化といった管状部材を埋設する工事に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
11…上段軌道部材、17…上段枕木、20…後続台車用軌道、30…連結軌道装置、
50…下段軌道装置、60…軌道構造、70…シールド掘削システム、71…泥土圧シールド、72…ベルトコンベア、73…運転台車、74…電源台車、75…制御盤台車、
76…油圧源台車、77…トランス台車、78…ケーブルリール台車、80…坑内運搬車両列、81…バッテリ機関車、82…材料台車、83…運搬車両、91…クレーン装置、
97…発泡モルタル層、98…強化プラスティック管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に管状部材を埋設するために、前記管状部材を埋設するための坑内におけるシールド掘削機の後続台車の移動と物資運搬とに使用される坑内軌道システムであって、
前記掘削機によって坑内壁が形成された掘削区間のうち先頭部から所定の長さの切羽区間に設けられ、前記物資運搬に使用される第1物資運搬軌道と、前記後続台車の移動に使用される後続台車用軌道とを有し、前記第1物資運搬軌道と前記後続台車用軌道とが横並びで第1枕木を介して前記坑内壁に固定されている第1軌道と、
前記掘削区間の全区間に設けられ、前記物資運搬に使用される第2物資運搬軌道と、前記第2物資運搬軌道を前記坑内壁に固定する第2枕木とを有し、前記切羽区間において前記第1枕木よりも前記坑内壁の底部に近い位置に配置されている第2軌道と、
前記第2物資運搬軌道上を移動可能であり、前記第1物資運搬軌道と前記第2物資運搬軌道の高低差と左右方向のズレとを吸収して連結する連結軌道装置と、
を備え、
前記連結軌道装置は、前記第1物資運搬軌道と連結されている第1連結軌道と、前記第2物資運搬軌道と連結されている第2連結軌道と、前記第1連結軌道と前記第2連結軌道とを連結する中間連結軌道と、前記第1連結軌道と前記中間連結軌道とを水平面内で回動可能に連結する第1連結ヒンジと、前記第2連結軌道と中間連結軌道とを水平面内で回動可能に連結する第2連結ヒンジと、を有する坑内軌道システム。
【請求項2】
前記第2枕木は、
前記坑内壁の内面の周方向に沿う方向に湾曲している湾曲部と、
前記湾曲部の両端部の各々から前記湾曲部の中心位置に向かってそれぞれ同一距離だけ離間させて設けられている一対の突出部と、
を有し、
前記第2物資運搬軌道は、相互に直角に折り曲げられている第1の板部と第2の板部とで構成されている断面を含み、前記第2物資運搬軌道面が上面に形成されている前記第1の板部が前記湾曲部に載せられ、前記第2の板部が前記突出部に当接する請求項1に記載の坑内軌道システム。
【請求項3】
前記連結軌道装置は、前記第2物資運搬軌道面上を摺動し、前記第1連結軌道を支持する第1支持部と、前記第2物資運搬軌道面上を摺動し、前記中間連結軌道を支持する中間支持部と、前記第2物資運搬軌道面上を摺動し、前記第2連結軌道を支持する第2支持部と、を備え、
前記第1支持部は、前記第1物資運搬軌道の間に挟まれることによって、前記第1物資運搬軌道に対する前記第1連結軌道の平行度を維持する第1平行度規制部を有し、
前記第2支持部は、前記第2物資運搬軌道を外側から挟むことによって、前記第2物資運搬軌道に対する前記第2連結軌道の平行度を維持する第2平行度規制部を有し、
前記第2連結軌道は、前記第2平行度規制部から前記第2物資運搬軌道の中心側に延びて前記第2物資運搬軌道の内側の面と共通する面を形成する請求項2に記載の坑内軌道システム。
【請求項4】
前記第2枕木は、前記湾曲部において所定の間隔を隔てて設けられ、上方に起立する一対の起立部を有し、
前記第1の板部は、前記起立部の上端部に載せられている請求項2又は3に記載の坑内軌道システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の坑内軌道システムを使用して、シールド掘削機で地中を掘削するとともに、前記掘削された掘削孔内に管状部材を埋設する工法であって、
前記シールド掘削機の前方において、前記第1物資運搬軌道と前記第2物資運搬軌道と前記後続台車用軌道とを敷設する軌道敷設工程と、
前記シールド掘削機によって掘削しつつ、前記シールド掘削機を前進させる掘削機前進工程と、
前記第2物資運搬軌道を残存させた状態において、前記シールド掘削機の通過後の区間の前記第1物資運搬軌道と前記後続台車用軌道とを撤去する軌道撤去工程と、
前記第2物資運搬軌道を使用して前記連結軌道装置を前進させて、前記第2物資運搬軌道と前記第1物資運搬軌道とを連結する連結軌道工程と、
前記第2物資運搬軌道を使用して前記掘削孔内に前記管状部材を運搬する管状部材運搬工程と、
前記管状部材と前記第2物資運搬軌道とを前記掘削孔内に埋設する埋設工程と、
を備える管状部材埋設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−102528(P2012−102528A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251730(P2010−251730)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(507027069)TSUCHIYA株式会社 (3)
【Fターム(参考)】