説明

管用自動溶接装置

【課題】 溶接トーチの位置制御の制御ロジックを簡単にさせる。
【解決手段】 馬蹄型ガイド5に切欠部5aを越えて回転できるように保持させた切欠付リングギア6に、溶接トーチ14を取り付けて枝管溶接機4Aを形成する。多関節ロボット3Aのロボットアーム15における先端アーム部材16先端側の手首フランジ面18に、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5における切欠部5aとは反対側の端部を、取付ベース部材20を介して取り付ける。先端アーム部材16の先端側に突出する多関節ロボット3Aの手首軸17と、枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6との間に、回転伝達手段19を備えて、管用自動溶接装置を形成する。多関節ロボット3Aに元来備わる手首軸17以外の各軸の制御機能と、手首軸17の制御機能により、枝管溶接機4Aの位置の制御と、その溶接トーチ14の円周動作の制御をそれぞれ行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母管に枝管を溶接するために用いる管用自動溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等におけるヘッダ(管寄せ)の1つの形式として、母管(ヘッダ管)の外周面に、円周方向及び長手方向(軸心方向)に複数の枝管(スタブ管)を接続した形式のものがある。
【0003】
この種のヘッダを製造する場合、横向きに配置した母管の外周面における周方向の1個所、たとえば、外周面の上端側位置に、該母管の長手方向に或る間隔で配列される複数の枝管を溶接して取り付け、次いで、上記母管を、周方向に所要角度回転させてから、新たに該母管の外周面の上端側となる位置に、長手方向に所要間隔で配列される複数の枝管を溶接して取り付け、以降、上記手順を順次繰り返して行うことで、上記母管の外周面の円周方向及び長手方向に多数の枝管を取り付ける手法が多く用いられている。
【0004】
又、上記横向きに配置した母管の外周面における上端側位置に該母管の長手方向に或る間隔で配列される枝管を取り付けるための溶接作業を、溶接トーチを備えたロボットを用いて自動化できるようにした自動溶接装置が開発されてきている。
【0005】
そこで、本出願人は、上記ヘッダ製造時における母管と枝管との溶接作業を行う際に、通常の溶接トーチではアクセスが困難な狭隘部であっても、枝管の周方向の全周に亘り溶接トーチを移動させながら隅肉溶接を行うことができるようにするための装置として、図5及び図6に示す如き管用の自動溶接装置を従来提案している。
【0006】
すなわち、図5に示すように、母管1の長手方向に配列して取り付ける複数の枝管2の取付位置に応じて上記母管1の長手方向に沿って移動可能に設けた多関節ロボット3の先端側に、枝管溶接機(スタブ管溶接機)4を取り付けた構成のものを提案している。
【0007】
上記枝管溶接機4は、図6に示すように、枝管2を半径方向に沿わせて挿入するための切欠部5aを備えて該切欠部5aに挿入した枝管2を包囲可能なガイドとしての馬蹄型ガイド5を備え、上記枝管2を半径方向に沿わせて挿入するための切欠部6aを備えて該切欠部6aに挿入した枝管2を包囲可能な切欠付リングギア6を、上記馬蹄型ガイド5の下側に、該馬蹄型ガイド5の切欠部5aを超えて回転可能に支持させてある。
【0008】
更に、回転駆動用のモータ8とシーブ9と外周側に歯を有するタイミングベルト10とからなる駆動機構7を備えて、該駆動機構7により、上記切欠付リングギア6を、上記馬蹄型ガイド5に対して相対的に回転駆動させることができるようにしてある。
【0009】
上記切欠付リングギア6には、該リングギア6の切欠部6aと同じ周方向の位置に切欠部11aを備えたトーチ取付部材11が固定してあると共に、該トーチ取付部材11の下側に、トーチ支持ブロック12をスライドガイド13を介して径方向にスライド可能に取り付けて、該トーチ支持ブロック12に、溶接トーチ14を、該溶接トーチ14の下端部(先端部)が上記リングギア6の中心側に向くよう下向きに取り付けてなる構成としてある。
【0010】
これにより、上記枝管溶接機4では、上記切欠付リングギア6の切欠部6aの位相を、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aの位相に合わせた状態で、上記多関節ロボット3の操作により枝管溶接機4を、母管1の外周面の上端側位置に仮止めしてある枝管2に対し側方より近接させて、該枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5及び切欠付リングギア6の各切欠部5a,6aを、上記枝管2に外嵌させ、これにより、上記切欠付リングギア6にトーチ取付部材11、スライドガイド13及びトーチ支持ブロック12を介して取り付けてある上記溶接トーチ14を、上記枝管2と母管1との溶接個所の周方向の1個所に向けて配置できるようにしてある。
【0011】
その後、上記駆動機構7におけるモータ8の運転により上記切欠付リングギア6を駆動させると、該切欠付リングギア6と一緒に上記溶接トーチ14が、上記枝管2の周りで上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aを越えて円周動作(周回動作)させられるようにしてある。
【0012】
したがって、この円周動作する溶接トーチ14により、上記馬蹄型ガイド5の内側に配置させてある枝管2と母管1との溶接個所を、周方向の全周に亘って溶接できるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−193112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、前記したヘッドを製造する際、母管における枝管の取り付け部分には、該枝管に連通させるための図示しない孔が設けてあるが、この孔自体の加工精度により、該母管に枝管を溶接するときの実際の溶接個所について、設計データからの誤差(位置ずれ)が生じる虞がある。又、枝管を溶接するときに母管に作用する熱の影響により、該母管自体が撓んだり、歪んだりすることがあり、このことによっても、枝管と母管との実際の溶接個所に、設計データからの誤差(位置ずれ)が生じる虞がある。
【0015】
そのため、図5及び図6に示した管用の自動溶接装置では、枝管2を母管1に対して溶接する作業を実施するときには、予めタッチセンシング等の所要の計測手段を用いて枝管2と母管1との実際の溶接個所についての位置計測を行い、その後、得られた計測結果(計測データ)を基に、枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5の内側に配置させた枝管2の周りで溶接トーチ14の円周動作を行わせるときに、必要に応じて多関節ロボット3による枝管溶接機4自体の位置の調整(制御)も並行して行わせることにより、上記溶接トーチ14を、上記枝管2と母管1との溶接個所の実際の位置に追従させながら円周動作させるようにすることが求められる。
【0016】
しかし、図5及び図6に示した従来の管用の自動溶接装置では、枝管溶接機4における溶接トーチ14の円周動作は、多関節ロボット3の外部に付加された軸(付加軸)となる上記枝管溶接機4に装備した回転駆動用のモータ8の制御によって行わせるようにしてあるため、この枝管溶接機4における溶接トーチ14の円周動作と、多関節ロボット3による枝管溶接機4自体の位置の調整(制御)との連係を図るためには、上記多関節ロボット3の各軸(各関節部の旋回軸)の制御を行うようにしてある図示しないロボットコントローラと、上記枝管溶接機4のモータ8の運転を制御するための図示しない制御手段との同期をとる必要があり、そのために、上記溶接トーチ14の位置を制御するために必要とされる自動溶接装置全体での制御ロジックが、複雑になっている。
【0017】
そこで、本発明は、多関節ロボットによる枝管溶接機の位置の調整と、枝管溶接機にて円周動作させる溶接トーチの位置の制御をより簡単な制御ロジックで実施することができる管用自動溶接装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、溶接対象の枝管に外嵌させるための切欠部を有するガイドと、該ガイドに保持され且つ上記ガイドの切欠部を超えて回転できるようにしてある切欠付リングギアと、該切欠付リングギアに取り付けて該切欠付リングギアの回転に伴って円周動作できるようにした溶接トーチを具備してなる枝管溶接機を、多関節ロボットのロボットアームの先端アーム部材の先端側に取り付け、更に、該先端アーム部材の先端より突出する多関節ロボットの手首軸と、上記枝管溶接機の切欠付リングギアとの間に、上記手首軸の回転を切欠付リングギアへ伝えるための回転伝達手段を備えてなる構成とする。
【0019】
又、上記構成において、多関節ロボットのロボットアームにおける先端アーム部材の先端側に、枝管溶接機を、該枝管溶接機における溶接トーチの円周動作の中心軸が、上記多関節ロボットの手首軸の軸心と平行になる配置で取り付けるようにした構成とする。
【0020】
更に、上記構成において、回転伝達手段を、枝管溶接機の切欠付リングギアと同一径の駆動ギアを多関節ロボットの手首軸に取り付け、且つ該駆動ギアより動力伝達用ギアを介して上記切欠付リングギアへ回転を伝える機能を有するものとした構成とする。
【0021】
同様に、上記構成において、回転伝達手段を、枝管溶接機の切欠付リングギアと同一径の駆動シーブを多関節ロボットの手首軸に取り付け、且つ該駆動シーブよりタイミングベルトを介して上記切欠付リングギアへ回転を伝える機能を有するものとした構成とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の管用自動溶接装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)溶接対象の枝管に外嵌させるための切欠部を有するガイドと、該ガイドに保持され且つ上記ガイドの切欠部を超えて回転できるようにしてある切欠付リングギアと、該切欠付リングギアに取り付けて該切欠付リングギアの回転に伴って円周動作できるようにした溶接トーチを具備してなる枝管溶接機を、多関節ロボットのロボットアームの先端アーム部材の先端側に取り付け、更に、該先端アーム部材の先端より突出する多関節ロボットの手首軸と、上記枝管溶接機の切欠付リングギアとの間に、上記手首軸の回転を切欠付リングギアへ伝えるための回転伝達手段を備えてなる構成としてあるので、多関節ロボットのロボットアームにおける手首軸を除く各軸の動作により枝管溶接機のガイドを溶接対象の枝管に外嵌させ、この状態で、上記多関節ロボットの手首軸の回転により、回転伝達手段を介して切欠付リングギアを回転させて、この切欠付リングギアの回転に伴って、溶接トーチを、上記ガイドを外嵌させた溶接対象の枝管の周りで円周動作させることができる。このため、溶接対象の枝管と、母管との溶接個所を、上記円周動作する溶接トーチにより周方向の全周に亘って溶接することができる。
(2)上記枝管溶接機における溶接トーチの円周動作は、上記多関節ロボットの手首軸の回転により行わせることができるため、枝管溶接機のガイドに、上記溶接トーチの円周動作を行わせるための専用の駆動用モータを装備する必要をなくすことができる。
(3)これにより、上記枝管溶接機における溶接トーチの円周動作の制御を、多関節ロボットに元来備えられている手首軸の制御機能によって実施することができて、溶接トーチの円周動作を専用の駆動用モータで制御する場合に付加することが必要とされていた外部の制御装置を不要にすることができる。
(4)したがって、枝管溶接機の位置の制御と該枝管溶接機における上記溶接トーチの円周動作の制御とを、多関節ロボットの制御機能で処理することができるため、枝管溶接機の位置の制御と該枝管溶接機における上記溶接トーチの円周動作の制御の組み合わせで実施される溶接トーチの位置制御の制御ロジックを、従来に比して簡単なものとすることができる。
(5)枝管溶接機のガイドに溶接トーチの円周動作を行わせるための専用の駆動用モータを装備する必要がないため、枝管溶接機の装置構成をより簡略化することができて、該枝管溶接機の小型化を図るのに有利な構成とすることができる。よって、本発明の管用自動溶接装置が、狭隘個所の溶接により有利なものとなる効果が期待できる。
(6)上記溶接トーチの円周動作のための専用の駆動用モータがなくなることで、故障の発生が懸念される個所を削減できる。
(7)上記溶接トーチの円周動作のための専用の駆動用モータと、その制御装置が不要になることに伴い、電源の数を削減することができる。
(8)上記溶接トーチの円周動作を行わせるための手首軸の駆動源は、多関節ロボットに装備されているため、枝管溶接機のガイドに、上記溶接トーチの円周動作を行わせるための専用の駆動用モータを直接装備する場合に比して、該溶接トーチの円周動作のための駆動源が溶接部周辺の高温環境に曝される虞を抑制することができて、該駆動源の耐久性、信頼性の向上化を図ることが可能になる。
(9)枝管溶接機に溶接トーチの円周動作のための専用の駆動用モータを装備する必要がなくなることで、枝管溶接機の重量を従来に比して軽減することができ、よって、枝管溶接機を先端側に取り付けた多関節ロボットの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の管用自動溶接装置の実施の一形態を示す概略側面図である。
【図2】図1の管用自動溶接装置における多関節ロボットのアームの先端側を拡大して示す一部切断側面図である。
【図3】図2のA−A方向矢視図である。
【図4】本発明の実施の他の形態を示すもので、図3に対応する図である。
【図5】従来の枝管溶接用の自動溶接装置を示す概略斜視図である。
【図6】図5の自動溶接装置における枝管溶接機を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1乃至図3は本発明の管用自動溶接装置の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0026】
すなわち、多関節ロボットとして、たとえば、図1に示す如き6軸の多関節ロボット3Aを備えて、該多関節ロボット3Aのロボットアーム15における最も先端側のアーム部材(以下、単に先端アーム部材と云う)16の先端部にて第6軸となる手首軸17の周りに設けてある手首フランジ面18に、図6に示した枝管溶接機4と同様のガイドとしての馬蹄型ガイド5と、該馬蹄型ガイド5に回転自在に支持させた切欠付リングギア6と、該切欠付リングギア6にトーチ取付部材11、スライドガイド13及びトーチ支持ブロック12を介して取り付けた溶接トーチ14を備えてなる枝管溶接機4Aを支持させる。更に、上記多関節ロボット3Aの手首軸17と、上記枝管溶接機4Aにおける切欠付リングギア6との間に、上記手首軸17の回転(旋回)を上記切欠付リングギア6へ伝えるための回転伝達手段19を備えた構成とする。これにより、上記多関節ロボット3Aにおける手首軸17の回転に伴って、上記回転伝達手段19を介して、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6を回転させ、この切欠付リングギア6の回転と一緒に、上記溶接トーチ14を円周動作させることができるようにする。
【0027】
詳述すると、上記6軸の多関節ロボット3Aは、ロボットアーム15の先端アーム部材16の先端部の外周位置に、該先端アーム部材16に固定された手首フランジ面18を備えると共に、旋回可能な手首軸17を、上記手首フランジ面18より先端アーム部材16の先端側へ突出させて設けた構成としてある。
【0028】
上記先端アーム部材16の手首フランジ面18には、平板状として中央部に軸挿通孔20aを備え、且つ上記軸挿通孔20aを中心とする周方向の一部の外周部に溶接機取付座20bを備えてなる取付ベース部材20が、軸挿通孔20aに上記多関節ロボット3Aの手首軸17を挿通させた状態で取り付けてある。この際、上記取付ベース部材20は、図2に示すように、上記多関節ロボット3Aのロボットアーム15における先端アーム部材16を先端側が下向き、すなわち、上記手首軸17が下向きとなる姿勢に配置させた状態とするときに、該先端アーム部材16の先端側に取り付けてある該取付ベース部材20の溶接機取付座20bが、上記先端アーム部材16の基端側に連結されているロボットアーム15の先端側から2番目のアーム部材21の延びる方向に対してほぼ180度対向する方向へ突出した配置となるように取り付けてある。
【0029】
更に、上記取付ベース部材20の溶接機取付座20bにおける上記手首フランジ面18に取り付けた側とは反対側の面部には、上記枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5における切欠部5aの開口側と離反した端部が取り付けてある。この際、上記枝管溶接機4Aは、溶接トーチ14の円周動作の中心軸となる上記切欠付リングギア6の軸心の方向が、上記多関節ロボット3Aの手首軸17の軸心方向と平行になり、且つ上記溶接トーチ14の先端側が、上記先端アーム部材16より離反する方向へ向く姿勢で、上記取付ベース部材20の溶接機取付座20bに取り付けるようにしてある。上記のように多関節ロボット3Aの手首軸17と、溶接トーチ14の円周動作の中心軸である切欠付リングギア6の軸心の方向を平行に配置することにより、上記回転伝達手段19は、平行な軸間で回転力の伝達を行うようにすればよいため、該回転伝達手段19の構成を、後述するように単純な構成とすることができるようにしてある。
【0030】
上記回転伝達手段19は、たとえば、取付ベース部材20の軸挿通孔20aに挿通させた多関節ロボット3Aの手首軸17に、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6が配置されている平面と同一の平面内に配置した駆動シーブ22を取り付けると共に、図6に示したものと同様に、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6の外周近傍で且つ切欠付リングギア6の周方向に切欠部6aの幅よりも広い間隔となる位置に配置した2つの従動用のシーブ9を、上記馬蹄型ガイド5に回転自在に取り付け、更に、上記駆動シーブ22と各従動用のシーブ9に、外周側に歯を有する無端状のタイミングベルト10を掛け回して、該タイミングベルト10における上記2つの従動用のシーブ9の間に位置する部分の歯を、上記切欠付リングギア6の外周部の歯に噛合させた構成としてある。これにより、上記多関節ロボット3Aの手首軸17の回転を、該手首軸17と一体に回転する上記駆動シーブ22より、該駆動シーブ22と各従動用のシーブ9の周りを循環移動する上記タイミングベルト10を介して上記切欠付リングギア6へ伝えて、該切欠付リングギア6を回転させることができるようにしてあり、よって、上記枝管溶接機4Aにおける溶接トーチ14を、上記切欠付リングギア6の回転に伴って円周動作させることができるようにしてある。
【0031】
更に、上記タイミングベルト10は、上記切欠付リングギア6の周方向に切欠部6aの幅よりも広い間隔で配置した2つの従動用のシーブ9の間に位置する部分を、切欠付リングギア6に噛合させるようにしてあるため、該切欠付リングギア6の回転に伴って切欠部6aが周方向のいかなる位置に配置された場合であっても、上記手首軸17の回転を、上記回転伝達手段19により常に切欠付リングギア6へ伝達することができるようにしてある。
【0032】
なお、図示してないが、上記多関節ロボット3Aは、リニアステージ等の直動機構を介して、図5に示したものと同様に、母管1の長手方向に配列して取り付ける複数の枝管2の取付位置に応じて上記母管1の長手方向に沿って移動可能に設けてあるものとする。その他、図5及び図6に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0033】
以上の構成としてある本発明の管用自動溶接装置を使用する場合は、予め、上記多関節ロボット3Aにおける手首軸17の回転角度を調整して、上記枝管溶接機4Aにおける上記切欠付リングギア6の切欠部6aの位相を、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aの位相に合わせた状態としておく。
【0034】
次に、この状態で、上記多関節ロボット3Aのロボットアーム15の操作により、上記先端アーム部材16を、その先端側が下方に向くように配置させて、上記枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5や切欠付リングギア6がほぼ水平に配置されるようにしながら、該ロボットアーム15における手首軸17以外の各軸の操作により、上記枝管溶接機4Aを、母管1の外周面の上端側位置に仮止めしてある溶接対象となる枝管2に対し側方より近接させて、該枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5及び切欠付リングギア6の切欠部5a,6aを、上記枝管2に外嵌させて、上記枝管溶接機4Aにて上記切欠付リングギア6にトーチ取付部材11、スライドガイド13及びトーチ支持ブロック12を介して取り付けてある上記溶接トーチ14の先端側を、上記切欠付リングギア6の軸心位置に配置された上記枝管2と、母管1との溶接個所の周方向の1個所に向けて配置させるようにする。
【0035】
ここで、仮に、6軸の多関節ロボットの手首軸の先端側に、枝管溶接機の馬蹄型ガイドを、該手首軸の軸心方向に沿って取り付けた構成とする場合について考えてみると、この構成では、多関節ロボットの動作により枝管溶接機の馬蹄型ガイドを溶接対象となる枝管に側方より外嵌させて配置した状態とするときに、上記多関節ロボットの手首軸は、溶接対象となる枝管と母管との溶接個所(溶接線)の作る平面とほぼ平行な配置となり、殆ど動作(回転)させる必要がない。
【0036】
したがって、上記本発明の管用自動溶接装置のように、6軸の多関節ロボット3Aにおける手首軸17を、枝管溶接機4Aにおける溶接トーチ14の円周動作用の駆動軸として用いる構成としてあっても、上記多関節ロボット3Aのロボットアーム15における上記手首軸17以外の各軸での回転(旋回)動作に基づいて、上記枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5を溶接対象となる枝管2に側方より外嵌させる操作に支承が生じることはない。
【0037】
その後、上記多関節ロボット3Aにおける手首軸17を回転させると、この手首軸17の回転に伴って、上記切欠付リングギア6が回転駆動されて、該切欠付リングギア6と一緒に、上記溶接トーチ14が上記溶接対象となる枝管2の周りで上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aを越えて円周動作させられるようになる。よって、この円周動作する溶接トーチ14により、上記馬蹄型ガイド5の内側に配置させてある溶接対象となる枝管2と、母管1との溶接個所を、周方向の全周に亘って溶接するようにする。
【0038】
このように、本発明の管用自動溶接装置によれば、溶接対象となる枝管2と、母管1との溶接個所を、上記枝管2の周りで円周動作させる溶接トーチ14により周方向の全周に亘って溶接することができる。
【0039】
しかも、上記枝管溶接機4Aにおける溶接トーチ14の円周動作は、上記6軸としてある多関節ロボット3Aの手首軸17の回転により行わせることができるようにしてあるため、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5に、上記溶接トーチ14の円周動作を行わせるための専用の駆動用モータを装備する必要をなくすことができる。
【0040】
このため、上記枝管溶接機4Aにおける溶接トーチ14の円周動作の制御を、多関節ロボット3Aの制御を行うための図示しないロボットコントローラに元来備えられている手首軸17の制御機能によって実施することができる。これにより、従来、溶接トーチ14の円周動作を専用の駆動用モータで制御するためにロボットコントローラの外部に付加することが必要とされていた制御装置を不要にすることができる。
【0041】
したがって、たとえば、枝管2と母管1との溶接個所の設計データからの誤差(位置ずれ)を補正する場合等のように、上記枝管溶接機4Aにおける溶接トーチ14の円周動作と、多関節ロボット3Aによる枝管溶接機4A自体の位置の調整とを連係して制御する必要が生じる場合であっても、上記枝管溶接機4Aの位置の制御と該枝管溶接機4Aにおける上記溶接トーチ14の円周動作の制御とを、上記多関節ロボット3Aの図示しないロボットコントローラの内部で処理することができるため、該図示しないロボットコントローラの外部に溶接トーチ14の円周動作を制御するための制御装置を別途設ける場合に比して、制御ロジックをより簡単なものとすることができる。
【0042】
又、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5に、上記溶接トーチ14の円周動作を行わせるための専用の駆動用モータを装備する必要がないため、枝管溶接機4Aの装置構成をより簡略化することができて、該枝管溶接機4Aの小型化を図るのに有利な構成とすることができる。よって、狭隘個所の溶接により有利なものとなる効果が期待できる。
【0043】
更に、上記溶接トーチ14の円周動作のための専用の駆動用モータがなくなることで、故障の発生が懸念される個所を削減できる。
【0044】
上記溶接トーチ14の円周動作のための専用の駆動用モータと、その制御装置が不要になることに伴い、該溶接トーチ14の円周動作専用の駆動用モータと、その制御装置のための電源も不要にできるため、電源の数を削減することができる。
【0045】
しかも、溶接トーチ14の円周動作を行わせるための手首軸17の駆動源が、上記多関節ロボット3Aの先端アーム部材16に装備されているため、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5に、上記溶接トーチ14の円周動作を行わせるための専用の駆動用モータを直接装備する場合に比して、該溶接トーチ14の円周動作のための駆動源が溶接部周辺の高温環境に曝される虞を抑制することができるため、該駆動源の耐久性、信頼性の向上化を図ることが可能になる。
【0046】
更には、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5に溶接トーチ14の円周動作のための専用の駆動用モータを装備する必要がないため、枝管溶接機4Aの重量を従来に比して軽減することができ、よって、上記枝管溶接機4Aを先端側に取り付けた多関節ロボット3Aの負担を軽減することができる。
【0047】
次に、図4は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1乃至図3に示したと同様の構成において、多関節ロボット3Aの手首軸17の回転を枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6に伝えるための回転伝達手段19を、上記手首軸17に取り付けた駆動シーブ22と、上記切欠付リングギア6の外周近傍位置に配設した2つの従動用のシーブ9と、該駆動シーブ22及び各従動用のシーブ9に掛け回して切欠付リングギア6に噛合させたタイミングベルト10とからなる構成とすることに代えて、多関節ロボット3Aの手首軸17に、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6が配置されている平面と同一の平面内に配置した駆動ギア23を取り付け、更に、同一径の2つの動力伝達用ギア24を、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6の外周部の歯に対して該切欠付リングギア6の周方向における切欠部6aの幅よりも広い間隔となる2個所で個別に噛合し、且つ上記手首軸17に取り付けた駆動ギア23にもそれぞれ噛合するように配置して、該各動力伝達用ギア24を、上記枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5の対応する個所にそれぞれ回転自在に支持させて回転伝達手段19aを構成してある。
【0048】
これにより、上記多関節ロボット3Aの手首軸17の回転を、該手首軸17と一体に回転する上記駆動ギア23より、各動力伝達用ギア24を介して上記切欠付リングギア6へ伝えて、該切欠付リングギア6を、上記手首軸17の回転方向と同一の方向に回転させることができるようにしてあり、よって、上記枝管溶接機4Aにおける溶接トーチ14を、上記切欠付リングギア6の回転に伴って円周動作させることができるようにしてある。
【0049】
更に、上記2つの動力伝達用ギア24は、上記切欠付リングギア6に対し、切欠部6aの幅よりも広い間隔となる2個所で噛合させるようにしてあるため、該切欠付リングギア6の回転に伴って切欠部6aがいずれか一方の動力伝達用ギア24に臨む配置とされて、該一方の動力伝達用ギア24が上記切欠付リングギア6の外周部の歯から離脱した状態であっても、上記手首軸17と一体の駆動ギア23の回転は、他方の動力伝達用ギア24を介して上記切欠付リングギア6へ伝えることができるようになる。よって、上記手首軸17の回転を、上記回転伝達手段19aにより常に切欠付リングギア6へ伝達することができるようにしてある。
【0050】
更に、図4の実施の形態では、上記多関節ロボット3Aの手首軸17に取り付けた駆動ギア23の径を、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6の径と同一径としてある。これにより、上記手首軸17を360度強回転させることで、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6を360度強回転させることができ、よって、溶接トーチ14を、枝管2と母管1との溶接個所の周方向の全周に亘る溶接に必要とされる360度強の円周動作を行わせることができるようになる。
【0051】
したがって、一般的な産業用ロボットとして用いられている多関節ロボットでは、手首軸17の旋回ストロークが360度強に設定されている場合があるが、この種の手首軸17の旋回ストロークが360度強に設定されている一般的な作業用ロボットとして用いられている多関節ロボットを、本発明の管用自動溶接装置を構成するための多関節ロボット3Aとして適用する場合に有利な構成とすることができる。
【0052】
その他の構成は図1乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0053】
以上の構成としてある本実施の形態の管用自動溶接装置によれば、多関節ロボット3Aの手首軸17の回転により、回転伝達手段19aを介して枝管溶接機4Aにおける切欠付リングギア6を回転させて、該切欠付リングギア6の回転に伴って溶接トーチを円周動作させることができるため、図1乃至図3の実施の形態の管用自動溶接装置と同様に用いることで、溶接対象となる枝管2と、母管1との溶接個所を、上記枝管2の周りで円周動作させる溶接トーチ14により周方向の全周に亘って溶接することができ、よって、図1乃至図3に示した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、上記各実施の形態では、多関節ロボット3Aのロボットアーム15における先端アーム部材16の先端側に設けてある手首フランジ面18に、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5における切欠部5aの開口側と離反した端部を、上記多関節ロボット3Aの手首軸17を挿通させるための軸挿通孔20aを備えた取付ベース部材20を介して取り付ける構成を示したが、取付ベース部材20は、上記多関節ロボット3Aのロボットアーム15の先端アーム部材16の手首フランジ面18に、手首軸17に干渉することなく枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5を取り付けることができるようにしてあれば、いかなる形状のものを採用してもよい。更に、取付ベース部材20は、枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5を、上記多関節ロボット3Aのロボットアーム15の先端アーム部材16の先端部に取り付けることができるようにしてあれば、上記馬蹄型ガイド5を、先端アーム部材16の先端部の側面等、手首フランジ面18以外の個所に取り付ける形式のものとしてもよい。更には、上記枝管溶接機4Aの馬蹄型ガイド5における切欠部5aの開口側と離反した端部を、取付ベース部材20を介在させることなく、上記多関節ロボット3Aの先端アーム部材16の手首フランジ面18等の先端部に直接取り付ける構成としてもよい。
【0055】
図1乃至図3の実施の形態における駆動シーブ22の径、及び、図4の実施の形態における駆動ギア23の径は、枝管溶接機4Aにおける切欠付リングギア6と一緒に溶接トーチ14を、枝管2と母管1の溶接個所の周方向の全周に亘る溶接を行うために必要となる少なくとも360度強の範囲で円周動作させることができるようにしてあれば、多関節ロボット3Aにおける手首軸17の旋回ストロークと、上記切欠付リングギア6の径に応じて適宜変更してもよい。
【0056】
更に、図1乃至図3の実施の形態において、駆動シーブ22の径を、枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6の径と同一径としてもよい。このようにすれば、上記手首軸17を360度強回転させることで、上記枝管溶接機4Aの切欠付リングギア6と共に溶接トーチ14を、枝管2と母管1との溶接個所の周方向の全周に亘る溶接に必要とされる360度強の円周動作を行わせることができるようになるため、手首軸17の旋回ストロークが360度強に設定されている一般的な作業用ロボットとして用いられている多関節ロボットを、本発明の管用自動溶接装置を構成するための多関節ロボット3Aとして適用する場合に有利なものとする効果が期待できる。
【0057】
多関節ロボット3Aの手首軸17の回転を、枝管溶接機4Aにおける切欠付リングギア6へ伝えることができるようにしてあれば、回転伝達手段19,19aは、たとえば、チェーンを用いる形式や、その他、図3及び図4に示した以外のいかなる形式のものを採用してもよい。
【0058】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
2 枝管
3A 多関節ロボット
4A 枝管溶接機
5a 切欠部
5 馬蹄型ガイド(ガイド)
6 切欠付リングギア
10 タイミングベルト
14 溶接トーチ
15 ロボットアーム
16 先端アーム部材
17 手首軸
19,19a 回転伝達手段
22 駆動シーブ
23 駆動ギア
24 動力伝達用ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象の枝管に外嵌させるための切欠部を有するガイドと、該ガイドに保持され且つ上記ガイドの切欠部を超えて回転できるようにしてある切欠付リングギアと、該切欠付リングギアに取り付けて該切欠付リングギアの回転に伴って円周動作できるようにした溶接トーチを具備してなる枝管溶接機を、多関節ロボットのロボットアームの先端アーム部材の先端側に取り付け、更に、該先端アーム部材の先端より突出する多関節ロボットの手首軸と、上記枝管溶接機の切欠付リングギアとの間に、上記手首軸の回転を切欠付リングギアへ伝えるための回転伝達手段を備えてなる構成を有することを特徴とする管用自動溶接装置。
【請求項2】
多関節ロボットのロボットアームにおける先端アーム部材の先端側に、枝管溶接機を、該枝管溶接機における溶接トーチの円周動作の中心軸が、上記多関節ロボットの手首軸の軸心と平行になる配置で取り付けるようにした請求項1記載の管用自動溶接装置。
【請求項3】
回転伝達手段を、枝管溶接機の切欠付リングギアと同一径の駆動ギアを多関節ロボットの手首軸に取り付け、且つ該駆動ギアより動力伝達用ギアを介して上記切欠付リングギアへ回転を伝える機能を有するものとした請求項2記載の管用自動溶接装置。
【請求項4】
回転伝達手段を、枝管溶接機の切欠付リングギアと同一径の駆動シーブを多関節ロボットの手首軸に取り付け、且つ該駆動シーブよりタイミングベルトを介して上記切欠付リングギアへ回転を伝える機能を有するものとした請求項2記載の管用自動溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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