説明

管継手およびそれに用いられるバックアップリング

【課題】低温の時期や、管継手の受口の内周面と挿口の外周面との隙間が寸法許容差などによって小さい場合などにおいても管継手用のバックアップリングを容易に配置することができ、しかもバックアップリングを確実に機能させることができるようにする。
【解決手段】管継手は、シール材22の配置部よりも受口12の奥側に、受口12からの挿口14の離脱を防止するためのロックリング19が設けられる。バックアップリング41は、ロックリング19とシール材22との間において、シール材22の受口奥側への過度の入り込みを防止するために設けられて、環状の本体部43と、本体部43から受口開口側に向けて突出する羽根部44とを有する。羽根部44は、その基端部45が本体部43における径方向の内側部分に接続されるとともに、その先端部46が、基端部45よりも径方向の外側部分に位置するように傾斜して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手およびそれに用いられるバックアップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来のバックアップリングを用いた管継手に関する。このような管継手は、たとえば特許文献1に記載されている。
ここで、互いに接合される一方のダクタイル鋳鉄製の管11の端部には受口12が形成され、他方のダクタイル鋳鉄製の管13の端部には挿口14が形成されて、受口12の内部に挿口14が挿入される構成となっている。
【0003】
受口12の開口端の内周にはテーパ状のシール材圧接面15が形成され、このシール材圧接面15よりも奥側の受口12の部分には内周面16が形成されている。さらに、内周面16よりも奥側の部分にはロックリング収容溝17が形成され、このロックリング収容溝17から距離をおいた奥側の部分には奥端面18が形成されている。ロックリング収容溝17には、周方向一つ割りの金属製のロックリング19が収容されている。
【0004】
挿口14における先端側の部分の外周には突部20が一体に形成されている。この突部20は、挿口14を受口12の内部に挿入するときにロックリング19を弾性変形させて押し広げることで、このロックリング19の位置を通過可能である。ロックリング19は、突部20を通過させた後に、弾性力で元の状態にもどり、挿口14の外周に抱き付く。
【0005】
シール材圧接面15と挿口14の外周面21との間には、環状のゴム製のシール材22が配置されている。また受口12の開口端にはフランジ23が形成され、受口12の外側における挿口14の部分には金属製の押輪24が外ばめされている。これらフランジ23および押輪24の周方向に沿って複数配置されたボルト・ナット25によって押輪24をフランジ23に締結することで、この押輪24によってシール材22を圧縮し、それによって受口挿口間をシールしている。
【0006】
シール材22は硬質部26と軟質部27とを一体に有し、シール材22が押輪24によって押圧されたときに、硬質部26は押輪24によりシール材圧接面15に押圧され、軟質部27は、受口12の内周面16と挿口14の外周面21との間に入り込む。
【0007】
受口12の内周面16と挿口14の外周面21との間に入り込んだ軟質部27とロックリング19との間には、周方向一つ割りの樹脂製のバックアップリング28が、挿口14の外周に抱き付いた状態で配置されている。このバックアップリング28は、シール材22の軟質部27と同様に受口12の内周面16と挿口14の外周面21との間に配置されるが、軟質部27がロックリング19側に入り込むことによるシール性能の低下を防止するとともに、軟質部27がロックリング19に接触することにより損傷を受けることを防止するために設けられるものである。
【0008】
なお、図10は継手の接合完了状態を示す。この継手は、挿口14の先端面29が受口12の奥端面18に当たる位置から、挿口14の突部20がロックリング19に当たる位置までの範囲において、受口挿口間の伸縮が可能である。また挿口14の突部20がロックリング19に当たることで、受口12からの挿口14の抜け出しを防止可能である。これによって、耐震継手として機能する。
【0009】
図11は、受口挿口間に挿入する前の自然な状態におけるバックアップリング28の断面構造を示す。このバックアップリング28は、図12に示す受口12の内周面16と挿口14の外周面21との隙間31の高さよりも大きな寸法の拡径部32を有し、この拡径部32の端面33には環状の溝部34がバックアップリング28の周方向にわたって形成されている。
【0010】
バックアップリング28は、図12に示すように、溝部34をつぶすようにして拡径部32を径方向に圧縮した状態で、受口12の内周面16と挿口14の外周面21との間に配置される。すなわち、管11、13の寸法許容差などによって隙間31の高さが変動する可能性があるが、この変動にかかわらず隙間31を詰め、シール材22の軟質部27がロックリング側に入り込まないようにして、シール材22の圧縮状態を維持するように構成されている。
【特許文献1】特開2000−304176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、冬期などの低温の時期や、受口の内周面と挿口の外周面との隙間が寸法許容差などによって狭い場合などにおいては、図12に示すようにして拡径部32を圧縮することが困難となって、バックアップリング28を継手内に収めにくくなることがある。
【0012】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、低温の時期や、受口の内周面と挿口の外周面との隙間が寸法許容差などによって小さい場合などにおいても、バックアップリングを容易に配置することができ、しかもバックアップリングを確実に機能させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため本発明の管継手は、
一方の管の端部に形成された受口の内部に他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口と挿口との間で環状のシール材が圧縮されることにより受口挿口間のシールが行われるようにした管継手であって、
シール材の配置部よりも受口の奥側に、受口からの挿口の離脱を防止するためのロックリングが設けられ、
このロックリングと前記シール材との間に、前記シール材の受口奥側への過度の入り込みを防止するためのバックアップリングが設けられ、
このバックアップリングは、環状の本体部と、この本体部から受口開口側に向けて突出する羽根部とを有し、
この羽根部は、その基端部が本体部における径方向の内側部分に接続されるとともに、その先端部が、基端部よりも径方向の外側部分に位置するように傾斜して設けられることで、受口挿口間の隙間の変化に対応して変形可能とされ、かつ前記シール材が受口挿口間で圧縮されるときに、このシール材に押されて変形することにより、このシール材を受け止め可能とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明の管継手用バックアップリングは、
一方の管の端部に形成された受口の内部に他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口と挿口との間で環状のシール材が圧縮されることにより受口挿口間のシールが行われるようにした管継手に用いられるバックアップリングであって、
前記管継手は、シール材の配置部よりも受口の奥側に、受口からの挿口の離脱を防止するためのロックリングが設けられ、
前記バックアップリングは、前記ロックリングと前記シール材との間において、前記シール材の受口奥側への過度の入り込みを防止するために設けられて、環状の本体部と、この本体部から受口開口側に向けて突出する羽根部とを有し、
この羽根部は、その基端部が本体部における径方向の内側部分に接続されるとともに、その先端部が、基端部よりも径方向の外側部分に位置するように傾斜して設けられることで、受口挿口間の隙間の変化に対応して変形可能とされ、かつ前記シール材が受口挿口間で圧縮されるときに、このシール材に押されて変形することにより、このシール材を受け止め可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成であると、バックアップリングにおける傾斜構造の羽根部が受口挿口間の隙間の変化に対応して変形可能であるため、寸法許容差などにもとづき受口挿口間の隙間が小さい場合でも、バックアップリングを容易に所定位置に配置することができる。また、羽根部が、シール材が受口挿口間で圧縮されるときに、このシール材に押されて変形することにより、このシール材を受け止め可能であることにより、所要のバックアップ機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の管継手およびそれに用いられるバックアップリングを、図面を参照して、図10〜図12に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、詳細に説明する。
【0017】
図1および図2において、41は本発明の実施の形態のバックアップリングである。このバックアップリング41は、たとえばナイロン6などの樹脂によって形成され、図4(a)(b)および図5および図6(a)(b)に示すように周方向一つ割りのリング体によって構成されている。42は、その周方向の一箇所に形成された分割部である。図3〜図6に示すように、バックアップリング41は、本体部43と、羽根部44とが一体に形成された構成である。
【0018】
図3に詳細に示すように、環状の本体部43は、横断面矩形状に形成され、その高さHは、図1および図2に示される受口12と挿口14との隙間31がもっとも狭くなった場合よりも小さな寸法となるようにされている。すなわち、受口12の内周面16の内径と、挿口14の外周面21の外径とは、これら受口12および挿口14の寸法許容差によって変動し、この変動にもとづいて、隙間31の大きさも変化する。図1は隙間31が最大となった場合を示し、図2は隙間31が最小となった場合を示す。バックアップリング41の本体部43の高さHは、図2に示される最小の隙間31よりも小さく設定されている。
【0019】
環状の羽根部44は板状に形成され、その基端部45が、本体部43における径方向の内側部分に接続されている。この基端部45は、羽根部44におけるそれ以外の部分よりも薄肉に形成されている。そして羽根部44は、その先端部46が基端部45よりも径方向の外側部分に位置するように傾斜して形成されている。その傾斜角は、バックアップリング41の中心軸に対して30度程度であることが適当である。羽根部44の長さは、後述する機能が果たせるのであれば、適宜でよい。
【0020】
このような構成のバックアップリング41を所定の位置に設置する場合には、図7に示すように、あらかじめ挿口14に抱き付き状態で外ばめしておいたバックアップリング41を、受口12と挿口14との隙間31に向けて挿入する。このとき、本体部43は、図3に示すその高Hさが、最小であるときの隙間31の寸法よりも小さくなるように形成されているため、この隙間31の寸法が小さい場合であっても容易に挿入することができる。この場合において、隙間31が小さいと、羽根部44の先端側が受口12のシール材圧接面15と内周面16とに当たるが、羽根部44の基端部45が他の部分よりも薄肉に形成されているため、羽根部44は、この基端部45を中心にして縮径方向に変形した状態で、かつその先端部46が受口12の内周面16に接した状態で、本体部43とともに隙間31に挿入される。この点においても、隙間31へのバックアップリング41の挿入は容易である。
【0021】
なお、バックアップリング41は、挿口14に抱き付き状態で外ばめされるときに、挿口14の先端側からはめ合わされるが、樹脂製であり、しかも周方向一つ割りに形成されているため、容易に拡径して突部20を乗り越えることができる。このため、挿口14への装着作業を簡単に行うことができる。
【0022】
バックアップリング41を所定の位置に配置したうえで、同様にあらかじめ挿口14に装着しておいたシール材22を受口挿口間に挿入すると、図8に示すように、まずシール材22の先端の軟質部27が、傾斜した羽根部44よりも径方向の内側に入り込み、この羽根部44を受口12の奥側に向けて押す。これにより、バックアップリング41はその本体部43が任意の姿勢でロックリング19に当たるまで受口12の奥側へ押し込まれる。羽根部44は、このような作用をなすことができる程度の長さに形成されていることが必要である。
【0023】
本体部43が任意の姿勢でロックリング19に当たった後もなおシール材22を押し込むと、図9に示すようにそれによって羽根部44は変形を受け、薄肉の基端部45を中心にして容易に曲がるとともに、その先端部46が受口12の内周面16に沿うように曲がって変形する。このとき、本体部43は図9において仮想線で示すように浮き上がろうとするが、最後にはその端面がロックリング19の端面に沿うことになるため、浮き上がりのない所定の姿勢で配置されることになる。
【0024】
シール材22の押し込みが完了すると、図1および図2に示すように、羽根部44が変形によりシール材22の軟質部27の先端を包み込むようにして受け止めた状態となる。これにより、シール材22の軟質部27がそれ以上受口12の奥側へ入り込むことを防止できて、シール材22を所定の位置に収めることができる。またバックアップリング41が壁になることで、シール材22の圧縮状態を確保することができる。羽根部44は、このような作用をもなすことができる程度の長さで形成されていることが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の管継手の一例の要部の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の管継手の他の例の要部の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態のバックアップリングの断面図である。
【図4】同バックアップリングの全体図であって、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【図5】図4におけるA−A線に沿った断面図である。
【図6】同バックアップリングを示す図であって、(a)はその背面図、(b)は(a)におけるB−B線に沿った断面図である。
【図7】同バックアップリングの装着作業を示す図である。
【図8】バックアップリング装着後のシール材の装着作業を示す図である。
【図9】図8よりも工程が進んだ状態を示す図である。
【図10】従来の管継手の要部の断面図である。
【図11】従来のバックアップリングの断面図である。
【図12】図11のバックアップリングの装着作業を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
11 管
12 受口
13 管
14 挿口
19 ロックリング
22 シール材
41 バックアップリング
43 本体部
44 羽根部
45 基端部
46 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管の端部に形成された受口の内部に他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口と挿口との間で環状のシール材が圧縮されることにより受口挿口間のシールが行われるようにした管継手であって、
シール材の配置部よりも受口の奥側に、受口からの挿口の離脱を防止するためのロックリングが設けられ、
このロックリングと前記シール材との間に、前記シール材の受口奥側への過度の入り込みを防止するためのバックアップリングが設けられ、
このバックアップリングは、環状の本体部と、この本体部から受口開口側に向けて突出する羽根部とを有し、
この羽根部は、その基端部が本体部における径方向の内側部分に接続されるとともに、その先端部が、基端部よりも径方向の外側部分に位置するように傾斜して設けられることで、受口挿口間の隙間の変化に対応して変形可能とされ、かつ前記シール材が受口挿口間で圧縮されるときに、このシール材に押されて変形することにより、このシール材を受け止め可能とされていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
一方の管の端部に形成された受口の内部に他方の管の端部に形成された挿口が挿入され、受口と挿口との間で環状のシール材が圧縮されることにより受口挿口間のシールが行われるようにした管継手に用いられるバックアップリングであって、
前記管継手は、シール材の配置部よりも受口の奥側に、受口からの挿口の離脱を防止するためのロックリングが設けられ、
前記バックアップリングは、前記ロックリングと前記シール材との間において、前記シール材の受口奥側への過度の入り込みを防止するために設けられて、環状の本体部と、この本体部から受口開口側に向けて突出する羽根部とを有し、
この羽根部は、その基端部が本体部における径方向の内側部分に接続されるとともに、その先端部が、基端部よりも径方向の外側部分に位置するように傾斜して設けられることで、受口挿口間の隙間の変化に対応して変形可能とされ、かつ前記シール材が受口挿口間で圧縮されるときに、このシール材に押されて変形することにより、このシール材を受け止め可能とされていることを特徴とする管継手用バックアップリング。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−89095(P2008−89095A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271347(P2006−271347)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】