説明

管継手部材

【課題】シール形成面にシールリング基部が接触しない若しくはシール面に過度な押圧力が発生しない、又は組付時のシールリングの位置ずれ発生を低減する管継手部材を提供すること。
【解決手段】シールリング130は基部と筒状本体の内周面に摺動係合する摺動シール部とを有し、スライド弁体はシールリングの基部に係合する段部を有し、シールリング保持部材140は、スライド弁体の段部との間にシールリングの基部を挟着するシールリング基部係合面を備える保持部材本体と、筒状本体の内周面及びシールリングの基部の間に延びるシールリング膨張抑止部とを有し、シールリングの基部が段部とシールリング基部係合面との間で挟着されることによりスライド弁体とシールリング保持部材との間にシールを形成し、且つシールリングの半径方向外側への膨張がシールリング膨張抑止部により抑止されるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、精密ダイキャストでは、金型に熱媒体用配管が設けられており、ダイキャスト作業中に加熱した熱媒体(油)を外部の供給源から供給循環して金型を加熱するようにしており、金型を交換するときには、該熱媒体用配管を外部の供給源に接続している管継手を外して行うようになっている。
【0003】
管継手は、雌型管継手部材及び雄型管継手部材から構成されており、それらが接続された状態においても、また、外された状態においても、内部にある熱媒体が外部に漏洩しないようにすることが必要である。また、漏洩しないようシール性を確保しつつも雌型管継手部材と雄型管継手部材の取り外しが円滑に行えることも必要である。このため、これら雌型管継手部材及び雄型管継手部材の内部に設けられるシールリングとその保持構造を適切なものにすることが必要である。
【0004】
シールリングは種々の形式のものが開発されてきているが、断面形状を横向きのY型とし、該Y型の二股部分を管継手部材の半径方向内側部材と半径方向外側部材との間に設定し、該二股部分の間に押圧部材を当ててこれをバネによって押圧し、押し広げるようにすることによって該半径方向内側部材と半径方向外側部材へのシール圧力を高くして、熱媒体の漏洩を防ぐようにしたものが知られている。
【0005】
本出願人は、雄型管継手部材及び雌型管継手部材が相互に連結されている状態及び外されている状態に合わせて、適宜のシール圧力とすることにより、熱収縮などの影響を余り受けずに適正なシール作用を行うことができる管継手部材を提案している。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−316983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記管継手部材は組み付け時のシールリングの圧縮量が適切でないと、シールリングが半径方向に膨張してシールを形成する面に対して過度の圧力を生じる可能性があり、そのような場合には再度の組み付けを行わなければならないといった不都合が生じえた。また、シールリングを固定する段付部にシールリングが乗り上げて、シールリングが傾いてしまう可能性があり、そのような場合にも再度の組み付けを行う必要があった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑み、シールリングの半径方向の膨張によりシールを形成する面にシールリングが接触したり若しくはシールリングとシール面との間に過度な押圧力が発生したりすることがないような管継手部材を提供することを主要な目的とする。また、シールリングの位置ずれの発生を低減できる管継手部材を提供することもひとつの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
流体通路を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該スライド弁体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該筒状本体の内周面に対して摺動するシールリングと、
該スライド弁体上に設けられ、該シールリングを該スライド弁体上の所定位置に保持するシールリング保持部材と、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と該基部の半径方向外側部分から該軸線方向に延びて該筒状本体の内周面に摺動係合する環状の摺動シール部とを有し、
該スライド弁体は、該スライド弁体の外周面に、半径方向外側に立ち上がり該シールリングの基部の該半径方向内側部分と係合する環状の段部を有し、
該シールリング保持部材は、該スライド弁体の該段部との間に該シールリングの基部を挟着するシールリング基部係合面を備える保持部材本体と、該筒状本体の内周面と該シールリングの基部との間に延びるシールリング膨張抑止部とを有し、
該シールリングの基部が該スライド弁体の該段部と該シールリング保持部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより該スライド弁体と該シールリング保持部材との間にシールを形成し、且つ該シールリングの半径方向外側への膨張が該シールリング膨張抑止部により抑止されるようになされている管継手部材を提供する。
【0010】
この管継手部材においては、スライド弁体の外周面に設けられた段部とシールリング保持部材のシールリング基部係合面によりシールリングが挟着されるので、スライド弁体とシールリング保持部材との間に確実なシールが確保される。また、挟着時にシールリングの基部は挟着方向に圧縮され、それに伴い半径方向に膨らむことになるが、シールリングとの摺動面となる筒状本体の内周面との間にあるシールリング膨張抑止部により半径方向外側への膨張が抑えられるので、シールリングの基部が内周面に接触しないようにすることが可能となる。これに伴い、当該シールリングの摺動シール部は軸線方向である程度の伸びを生じる可能性があるが、この伸びは筒状本体の内周面と該摺動シール部との間の摺動抵抗には実質的な影響を与えないため、該摺動抵抗が適正になるように設計するのを容易にする。
【0011】
本発明はまた、
流体通路を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該スライド弁体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該筒状本体の内周面に対して摺動するシールリングと、
該スライド弁体上に設けられ、該シールリングを該スライド弁体上の所定位置に保持するシールリング保持部材と、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と、該基部の半径方向外側部分から該軸線方向に延びて該筒状本体の内周面に摺動係合する環状の摺動シール部とを有し、
該スライド弁体は、該スライド弁体の外周面に、半径方向外側に立ち上がり該シールリングの基部の該半径方向内側部分と係合する環状の段部を有し、
該シールリング保持部材は、該スライド弁体の該段部との間に該シールリングの基部を挟着する、半径方向外側に向かって該シールリング側に傾斜したシールリング基部係合面を有し、
該シールリングの基部が該スライド弁体の該段部と該シールリング保持部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより、該スライド弁体と該シールリング保持部材との間にシールを形成するとともに、該シールリングの半径方向外側への膨張が抑止されるようになされている管継手部材を提供する。
【0012】
この管継手部材においては、スライド弁体の外周面に設けられた段部とシールリング保持部材に設けられた半径方向外側に向かってシールリング側に傾斜したシールリング基部係合面によりシールリングが挟着されるので、スライド弁体とシールリング保持部材との間に確実なシールが確保される。また、シールリング基部係合面がシールリングの基部の半径方向外側を覆うように形成されるので、シールリングの基部の半径方向外側への膨張を押さえてシールリングの基部が内周面に接触しないようにすることが可能となる。これに伴い、当該シールリングの摺動シール部は軸線方向である程度の伸びを生じる可能性があるが、この伸びは筒状本体の内周面と該摺動シール部との間の摺動抵抗には実質的な影響を与えないため、該摺動抵抗が適正になるように設計するのを容易にする。さらには、シールリングに対して半径方向内側への挟着力も発生しシールリングの基部をスライド弁体の外周面に押しつける力も働くため、シールリングがスライド弁体の段部に乗り上げてしまう可能性を低減することも可能となる。
【0013】
具体的には、該スライド弁体の段部が、該シールリングの摺動シール部に隣接する位置まで立ち上がっているようにすることもできる。
【0014】
スライド弁体の段部が十分な高さをもっていることによりシールリングの基部の挟着をより確実なものとすることができるため、基部のシール性をより強固なものとすることが可能となる。また組み付け時にシールリングが該段部に乗り上げてはずれてしまう可能性をさらに低減することも可能となる。
【0015】
本発明はまた、
相互に連結され、軸線方向に延びる流体通路を画定する第1筒状部材及び第2筒状部材を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該筒状本体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該スライド弁体の外周面に対して摺動するシールリングと、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と該基部から該軸線方向に延びて該スライド弁体の外周面に摺動係合する摺動シール部とを有し、
該筒状本体の第1筒状部材は、該第2筒状部材に隣接する端部の内周面に半径方向内側に立ち上がり該シールリングの基部の半径方向外側部分と係合する環状の段部を有し、
該第2筒状部材は、該第1筒状部材の段部との間に該シールリングの基部を挟着するシールリング基部係合面を備える第2筒状部材本体と、該スライド弁体の外周面と該シールリングの基部との間に延びるシールリング膨張抑止部とを有し、該シールリングの基部が該第1筒状部材の段部と該第2筒状部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより該第1筒状部材と該第2筒状部材との間にシールを形成し、且つ該シールリングの半径方向内側への膨張が該シールリング膨張抑止部により抑止されるようになされている管継手部材を提供する。
【0016】
この管継手部材においては、第1筒状本体の内周面に設けられた段部と第2筒状本体のシールリング基部係合面によりシールリングが挟着されるので、第1筒状本体と第2筒状本体との間に確実なシールが確保される。また、挟着時にシールリングの基部は挟着方向に圧縮され、それに伴い半径方向に膨らむことになるが、摺動面となるスライド弁体の外周面との間にあるシールリング膨張抑止部により半径方向外側への膨張が抑えられるので、シールリングの基部が該外周面に接触しないか又は過度な押圧を生じないようにすることが可能となる。これに伴い、当該シールリングの摺動シール部は軸線方向である程度の伸びを生じる可能性があるが、この伸びはスライド弁体の外周面と該摺動シール部との間の摺動抵抗には実質的な影響を与えないため、該摺動抵抗が適正になるように設計するのを容易にする。さらに、シールリングが可動部であるスライド弁体側ではなく固定部である筒状本体側に取り付けられるので、スライド弁体の構造を簡素化することが可能となる。
【0017】
本発明はさらに、
相互に連結され、軸線方向に延びる流体通路を画定する第1筒状部材及び第2筒状部材を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該筒状本体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該スライド弁体の外周面に対して摺動するシールリングと、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と、該基部から該軸線方向に延びて該スライド弁体の外周面に摺動係合する摺動シール部とを有し、
該筒状本体の第1筒状部材は、該第2筒状部材に隣接する端部の内周面から半径方向内側に立ち上がり該シールリングの基部の半径方向外側部分と係合する環状の段部を有し、
該第2筒状部材は、該第1筒状部材の段部との間に該シールリングの基部を挟着する、半径方向内側に向かって前記シールリング側に傾斜したシールリング基部係合面を有し、
該シールリングの基部が該第1筒状部材の段部と該第2筒状部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより、該第1筒状部材と該第2筒状部材との間にシールを形成するとともに、該シールリングの半径方向内側への膨張が抑止されるようになされている管継手部材を提供する。
【0018】
この管継手部材においては、第1筒状本体の内周面に設けられた段部と第2筒状本体に設けられた半径方向内側に向かってシールリング側に傾斜したシールリング基部係合面によりシールリングが挟着されるので、第1筒状本体と第2筒状本体との間に確実なシールが確保される。また、シールリング基部係合面はシールリングの基部の半径方向内側を覆うように形成されているので、シールリングの基部の半径方向内側への膨張が抑えてシールリングの基部が該外周面に接触しないか又は過度な押圧を生じないようにすることが可能となる。これに伴い、当該シールリングの摺動シール部は軸線方向である程度の伸びを生じる可能性があるが、この伸びはスライド弁体の外周面と該摺動シール部との間の摺動抵抗には実質的な影響を与えないため、該摺動抵抗が適正になるように設計するのを容易にする。さらに、シールリングが可動部であるスライド弁体側ではなく固定部である筒状本体側に取り付けられるので、スライド弁体の構造を簡素化することが可能となる。加えて、シールリングに対して半径方向外側への挟着力も発生しシールリングの基部を第1筒状本体の内周面に押しつける力も働くため、シールリングが段部に乗り上げてしまう可能性を低減することも可能となる。
【0019】
具体的には、該第1筒状部材の段部が、該シールリングの摺動シール部に隣接する位置まで立ち上がっているようにすることができる。
【0020】
第1筒状部材の段部が十分な高さをもっていることによりシールリングの基部の挟着をより確実なものとすることができるため、基部のシール性をより強固なものとすることが可能となる。また組み付け時にシールリングが段部に乗り上げてはずれてしまう可能性を大幅に低減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る管継手部材の断面図である。
【図2】図1の管継手部材のシールリング部拡大断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る管継手部材の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る管継手部材の要部拡大部分断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る管継手部材の断面図である。
【図6】図5の管継手部材のシールリング部拡大断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る管継手部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る管継手部材の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1及び図2に示す本発明の第1の実施形態に係る管継手部材100は雌型管継手部材であり、流体通路112を有する筒状本体110と、該筒状本体110の流体通路112内で該筒状本体110の軸線方向に変位可能に備えられたスライド弁体120と、該筒状本体の流体通路112内に該流体流路の中心軸線に沿って配置され固定された固定弁座170とを備える。該スライド弁体120の外周面には、シールリング130と、該シールリングを固定保持するシールリング保持部材140と、該シールリング130を押圧してシールリングの摺動シール部133を筒状本体110の内周面114に押し付けるシールリング押圧部材150とが設けられており、該シールリング押圧部材150はコイルバネ160によって該シールリング130に向けて押圧されている。
【0024】
シールリング130は、半径方向内側部分134及び半径方向外側部分135からなる環状の基部132を有し、摺動シール部133は基部132の半径方向外側部分134から軸線方向に延びる。基部132は、断面が矩形状であり、4つの面すなわち内周面136、第1環状側面137、外周面138、第2環状側面139を有する。後に詳細に説明するが、これら4つの面はスライド弁体120及びシールリング保持部材140の対応する各面と密接して挟着されることで確実なシールを形成する。また、摺動シール部133は、筒状本体110の内周面114に摺動係合し該内周面114との間にシールを形成する。
【0025】
スライド弁体120は、シールリング押圧部材150を軸線方向で摺動可能に支持する第1環状外周面121、該第1環状外周面よりも僅かに小径とされシールリング保持部材140の雌ねじ部142とネジ係合される雄ねじ部127が設けられた第2環状外周面122および該第1環状外周面と第2環状外周面との間に設けられた環状突出部123を有する。該環状突出部123は半径方向外側に突出しており、シールリング130の基部132を第2環状外周面122に密封係合するようにしてシールリング130の摺動シール部133に隣接する位置まで突出した段部124を有する。
【0026】
また、スライド弁体120の先端125には、シールリング保持部材140との間に挟み込まれた環状密封部126が備えられている。該環状密封部126は、スライド弁体120が閉止位置にあるときには固定弁座170のシール部176に密封係合して流体通路112を閉じ、スライド弁体120が開放位置にあるときには固定弁座170のシール部176から離れて流体通路112を開放する。
【0027】
シールリング保持部材140の保持部材本体144は、シールリング130の第2環状側面139に面するシールリング基部係合面146を有し、その半径方向外側部には軸線方向の図示左側に延在するシールリング膨張抑止部148を有する。該シールリング膨張抑止部148の内側面はシールリングの基部132の外周面138に面し、外側面は筒状本体の内周面114に対して摺動する面となっている。なお、本実施例では、該シールリング膨張抑止部148はシールリングの基部132の外周面138全体を覆う大きさとなっているが、シールリングの基部132の半径方向への膨張を適切に抑止することができればその一部のみを覆うような大きさとしても良い。さらに、図示右端には環状密封部126をスライド弁体の先端125に固定するための環状凸部149を有する。
【0028】
上記のような構成により、シールリング130の基部132の4つの面136,137,138,139はそれぞれに対応するスライド弁体120の第2環状外周面122ならびに段部124およびシールリング保持部材140のシールリング基部係合面146ならびにシールリング膨張抑止部148により当接されるので、組み付け時などにシールリング130の位置ずれが発生する可能性が極めて低くなる。
【0029】
シールリング130の基部132はスライド弁体120の段部124とシールリング保持部材140のシールリング基部係合面146によって軸線方向で押圧され、スライド弁体120とのシールが図られる。このときシールリング130の基部132は軸線方向に圧縮されて半径方向に膨張しようとするが、この半径方向の膨張はシールリング膨張抑止部148と第2環状外周面122により抑止され、膨張した分の体積は軸線方向に逃がすようにしている。これにより、基部132が筒状本体の内周面114に押圧されるのを防ぎ、スライド弁体120の円滑な移動を保持する。また、シールリング130の基部132の半径方向への膨張により、該シールリングの基部132とシールリング膨張抑止部148および第2環状外周面122との間にもシールが形成されることになるので、段部124とシールリング基部係合面146の2面だけでシールを形成する場合に比べてさらに強固なシール性を確保することが可能となる。
【0030】
上記のようにシールリング130がスライド弁体120とシールリング保持部材140によって固定された状態において、シールリング130の摺動シール部133は段部124とシールリング膨張抑止部148の間の開口から軸線方向に延出される。シールリング130の基部132が圧縮されたことにより、その一部は該開口からスライド弁体120の摺動方向、すなわち軸線方向に膨張することになるが、このように軸線方向に延びる分については、筒状本体110の内周面114とのシール性にほとんど影響を与えない。
【0031】
また、高温環境下での使用時には熱膨張によってシールリング130が膨張するが、本実施例におけるシールリング保持構造によれば、シールリング130の基部132が筒状本体110の内周面114に接することはない。さらに、摺動シール部133が軸線方向に膨張するが、上記のようにシール性に影響を与えない。つまり、高温環境下においてもスライド弁体120の摺動性とシール性をともに確保することが可能となる。
【0032】
本実施形態に係る管継手部材100には、図1に示すように筒状本体110に半径方向に設けられた貫通孔116が設けられ、該貫通孔116にはボール状の施錠子182が挿入されている。また、筒状本体110の外周面上には筒状の操作スリーブ184が設けられている。
【0033】
雄型管継手部材(図示しない)を挿入するときには、操作スリーブ184をコイルバネ186に抗して図示左側に移動させて施錠子182が半径方向外側に変位可能として雄型管継手部材を挿入する。このとき、スライド弁体120は雄型管継手部材により図示左側の開放位置まで移動して流体通路が開放状態となる。それに伴いコイルバネ160が圧縮されるため、コイルバネ160による押圧力が増大し、シールリング押圧部材150がシールリングの摺動シール部133を筒状本体の内周面114に押圧する力も増大することになる。従って、そのときのコイルバネ160の押圧力を適正に調整することにより、流体通路112内を流れる流体に対して適正なシールを行うことができる。
【0034】
雄型管継手部材を引抜くときにも、操作スリーブ184をコイルバネ186に抗して図示左側に移動させて施錠子182が半径方向外側に変位可能として雄型管継手部材を引抜く。雄型管継手部材を引抜くと、スライド弁体120はコイルバネ160によって閉止位置まで移動し、環状密封部126が固定弁座170のシール部176に押し付けられる。
【0035】
図3は本発明の第2の実施形態に係る管継手部材200を示すものであり、第1の実施形態に係る管継手部材100において100番台の参照番号を付して示した構成要素に対応する構成要素は200番台とした同じ参照番号で示してある。この実施形態に係る管継手部材200は、第1の実施形態に係る管継手部材100と略同じであるが、シールリング膨張抑止部248が保持部材本体244とは別体に形成されている点で異なる。別体のシールリング膨張抑止部248は筒状本体210の内周面よりも僅かに小さい外周を有するリング状の部材である。
【0036】
図4は本発明の第3の実施形態に係る管継手部材300を示すものであり、第1の実施形態に係る管継手部材100において100番台の参照番号を付して示した構成要素に作用的に対応する構成要素は300番台とした同じ参照番号で示してある。本実施形態に係る管継手部材300は、シールリング保持部材340のシールリング基部係合面346が半径方向外側に向かってシールリング側に傾斜しており、第1の実施形態における管継手部材100のシールリング膨張抑止部148の機能も同時に備えている点で異なる。すなわち、本実施形態におけるシールリング基部係合面346は、シールリングをスライド弁体320の段部324との間に挟着するとともに、挟着時のシールリングの基部の半径方向外側への膨張を抑止する機能も備える。
【0037】
シールリングの基部332は、傾斜したシールリング基部係合面346に当接する傾斜した外周面338を有し、その断面が三角形となっている。シールリングの摺動シール部333は、シールリングの基部332の半径方向外側部分から軸線方向に延在し、筒状本体310の内周面314とのシールを形成している。
【0038】
シールリング基部係合面346とシールリングの基部332が上述のような構成をとることで、シールリングの基部332は、スライド弁体320の段部324に対して軸線方向の力を受けて第1環状側面337が押圧されるとともに、スライド弁体の第1環状外周面321に対して半径方向の力も受けて内周面336が押圧されることとなる。これにより、スライド弁体320側では2つの面124,122でシールが形成されるので、より強固なシール形成が可能となる。また、シールリングの基部332に半径方向内側向きの力も加わることになり、シールリングの基部332はスライド弁体の第2環状外周面322に押しつけられるので、段部324を乗り上げて外れてしまう可能性を低減することも可能となる。
【0039】
なお、図4に示した本実施形態では、シールリング基部係合面346の傾斜は直線状となっているが、湾曲した面であってもよい。
【0040】
図5及び図6は本発明の第4の実施形態に係る管継手部材400を示すものであり、第1の実施形態に係る管継手部材100において100番台の参照番号を付して示した構成要素に作用的に対応する構成要素は400番台とした同じ参照番号で示してある。本実施形態に係る管継手部材400は、シールリングが筒状本体410に固定され、スライド弁体の外周面428が、該シールリングと摺動係合するようにされている点で第1乃至第3の実施形態に係る管継手部材100、200、300と異なる。
【0041】
すなわち、管継手部材400は、第1筒状部材402、及び第1筒状部材402の外周面に形成された雄ねじ部427にネジ係合される雌ネジ部442を有する第2筒状部材404からなる筒状本体410と、該筒状本体の流体通路412内で軸線方向で変位可能とされ、筒状本体410に固定されている固定弁座470に対して係合・係合解除することにより流体通路412の開閉を行うスライド弁体420と、第1筒状部材402並びに第2筒状部材404間に固定される基部432及び該基部から軸線方向で延びる摺動シール部433からなり、軸線方向で変位するスライド弁体の外周面に対して摺動係合するシールリング430と、を備える。
【0042】
筒状本体410の第1筒状部材402は、第2筒状部材404に隣接する端部の内周面に、シールリング押圧部材450と摺動係合する第1環状内周面421、シールリング430の基部432の外周面438と当接する第2環状内周面322および第1環状内周面421と第2環状内周面422との間に設けられた環状突出部423を有する。第2筒状部材404は、シールリング430に対して第1実施形態におけるシールリング保持部材144と同じ作用をなすものであり、第1筒状部材402の環状突出部423が形成する段部424との間に該シールリング430の基部432を挟着するシールリング基部係合面446と、スライド弁体420の外周面428とシールリング430の基部432との間に延びるシールリング膨張抑止部448とを有し、シールリング430の基部432が第1筒状部材402の段部424と第2筒状部材404のシールリング基部係合面446との間で挟着されることにより第1筒状部材402と第2筒状部材404との間にシールを形成するようになされており、そのときに生じるシールリング430の基部432の半径方向内側への膨張をシールリング膨張抑止部448が抑止するようになされている。
【0043】
この実施形態においては、スライド弁体420を閉止位置に戻すためのコイルバネ460とは別に、シールリング押圧部材450を介してシールリング430の摺動シール部433を押圧する押圧用コイルバネ462が設けられている。それぞれ別のコイルバネとすることで、摺動シール部433への押圧力はスライド弁体420の位置に関わらず常に一定の力となる。このような構成は、閉止状態と開放状態とに関わらず常に一定のシール力を得る必要がある用途において有用となる。
【0044】
図7は本発明の第5の実施形態に係る管継手部材500を示すものであり、第4の実施形態に係る管継手部材400において400番台の参照番号を付して示した構成要素に作用的に対応する構成要素は500番台とした同じ参照番号で示してある。本実施形態に係る管継手部材500は、第2筒状部材504のシールリング基部係合面546が半径方向内側に向かってシールリング側に傾斜しており、第4の実施形態における管継手部材400のシールリング膨張抑止部448の機能も同時に備えている点で異なる。すなわち、本実施形態におけるシールリング基部係合面546は、シールリング530の基部532をスライド弁体520の段部524との間に挟着するとともに、挟着時のシールリングの基部の半径方向内側への膨張を抑止する機能も備える。
【0045】
すなわち、本実施形態に係る管継手部材500は、第3の実施形態に係る管継手部材300のシールリング基部係合面346を第4の実施形態に係る管継手部材400のシールリング基部係合面446に採用したものである。
【符号の説明】
【0046】
管継手部材100; 筒状本体110; 流体通路112; 内周面114; 貫通孔116; スライド弁体120; 第1環状外周面121; 第2環状外周面122; 環状突出部123; 段部124; 先端125; 環状密封部126; 雄ねじ部127; シールリング130; 基部132; 摺動シール部133; 半径方向内側部分134; 半径方向外側部分135; 内周面136; 第1環状側面137; 外周面138; 第2環状側面139; シールリング保持部材140; 雌ねじ部142; 保持部材本体144; シールリング基部係合面146; シールリング膨張抑止部148; 環状凸部149; シールリング押圧部材150; コイルバネ160; 固定弁座170; シール部176; 施錠子182; 操作スリーブ184; コイルバネ186; 管継手部材200; 筒状本体210; シールリング保持部材240; 雄ねじ部242; 保持部材本体244; シールリング基部係合面246; シールリング膨張抑止部248; 環状凸部249;管継手部材300; スライド弁体320; 第2環状外周面322; 段部324; シールリング330; 基部332; 摺動シール部333; 内周面336; 第1環状側面337; 外周面338; シールリング保持部材340; シールリング基部係合面346; 管継手部材400;第1筒状本体402; 第2筒状本体404; 筒状本体410; 流体通路412; 貫通孔416; スライド弁体420; 第1環状内周面421; 第2環状内周面422; 環状突出部423; 段部424; 先端425; 環状密封部426; 雄ねじ部427; 外周面428; シールリング430; 基部432; 摺動シール部433; 半径方向内側部分434; 半径方向外側部分435; 内周面436; 第1環状側面437; 外周面438; 第2環状側面439; 雌ねじ部442; 第2筒状部材本体444; シールリング基部係合面446; シールリング膨張抑止部448; 環状凸部449; シールリング押圧部材450; コイルバネ460; 押圧用コイルバネ462; 固定弁座470; シール部476; 施錠子482; 操作スリーブ484; コイルバネ486; 管継手部材500; スライド弁体520; 段部524; シールリング530; 基部532; シールリング基部係合面546

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該スライド弁体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該筒状本体の内周面に対して摺動するシールリングと、
該スライド弁体上に設けられ、該シールリングを該スライド弁体上の所定位置に保持するシールリング保持部材と、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と、該基部の半径方向外側部分から該軸線方向に延びて該筒状本体の内周面に摺動係合する環状の摺動シール部とを有し、
該スライド弁体は、該スライド弁体の外周面に、半径方向外側に立ち上がり該シールリングの基部の該半径方向内側部分と係合する環状の段部を有し、
該シールリング保持部材は、該スライド弁体の該段部との間に該シールリングの基部を挟着するシールリング基部係合面を備える保持部材本体と、該筒状本体の内周面と該シールリングの基部との間に延びるシールリング膨張抑止部とを有し、
該シールリングの基部が該スライド弁体の該段部と該シールリング保持部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより該スライド弁体と該シールリング保持部材との間にシールを形成し、且つ該シールリングの半径方向外側への膨張が該シールリング膨張抑止部により抑止されるようになされている管継手部材。
【請求項2】
流体通路を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該スライド弁体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該筒状本体の内周面に対して摺動するシールリングと、
該スライド弁体上に設けられ、該シールリングを該スライド弁体上の所定位置に保持するシールリング保持部材と、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と、該基部の半径方向外側部分から該軸線方向に延びて該筒状本体の内周面に摺動係合する環状の摺動シール部とを有し、
該スライド弁体は、該スライド弁体の外周面に、半径方向外側に立ち上がり該シールリングの基部の該半径方向内側部分と係合する環状の段部を有し、
該シールリング保持部材は、該スライド弁体の該段部との間に該シールリングの基部を挟着する、半径方向外側に向かって該シールリング側に傾斜したシールリング基部係合面を有し、
該シールリングの基部が該スライド弁体の該段部と該シールリング保持部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより、該スライド弁体と該シールリング保持部材との間にシールを形成するとともに、該シールリングの半径方向外側への膨張が抑止されるようになされている管継手部材。
【請求項3】
該スライド弁体の該段部が、該シールリングの摺動シール部に隣接する位置まで立ち上がっている、請求項1又は2に記載の管継手部材。
【請求項4】
相互に連結され、軸線方向に延びる流体通路を画定する第1筒状部材及び第2筒状部材を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該筒状本体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該スライド弁体の外周面に対して摺動するシールリングと、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と、該基部から該軸線方向に延びて該スライド弁体の外周面に摺動係合する摺動シール部とを有し、
該筒状本体の第1筒状部材は、該第2筒状部材に隣接する端部の内周面から半径方向内側に立ち上がり該シールリングの基部の半径方向外側部分と係合する環状の段部を有し、
該第2筒状部材は、該第1筒状部材の段部との間に該シールリングの基部を挟着するシールリング基部係合面を備える第2筒状部材本体と、該スライド弁体の外周面と該シールリングの基部との間に延びるシールリング膨張抑止部とを有し、
該シールリングの基部が該第1筒状部材の段部と該第2筒状部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより該第1筒状部材と該第2筒状部材との間にシールを形成し、且つ該シールリングの半径方向内側への膨張が該シールリング膨張抑止部により抑止されるようになされている管継手部材。
【請求項5】
相互に連結され、軸線方向に延びる流体通路を画定する第1筒状部材及び第2筒状部材を有する筒状本体と、
該筒状本体の流体通路内に該筒状本体の軸線方向で変位可能とされ、該流体通路を閉じる閉止位置と該流体通路を開く開放位置との間で変位可能とされたスライド弁体と、
該筒状本体に取り付けられ、該スライド弁体の該軸線方向での動きに伴って該スライド弁体の外周面に対して摺動するシールリングと、
を備えた管継手部材であって、
該シールリングは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分からなる環状の基部と、該基部から該軸線方向に延びて該スライド弁体の外周面に摺動係合する摺動シール部とを有し、
該筒状本体の第1筒状部材は、該第2筒状部材に隣接する端部の内周面から半径方向内側に立ち上がり該シールリングの基部の半径方向外側部分と係合する環状の段部を有し、
該第2筒状部材は、該第1筒状部材の段部との間に該シールリングの基部を挟着する、半径方向内側に向かって前記シールリング側に傾斜したシールリング基部係合面を有し、
該シールリングの基部が該第1筒状部材の段部と該第2筒状部材のシールリング基部係合面との間で挟着されることにより、該第1筒状部材と該第2筒状部材との間にシールを形成するとともに、該シールリングの半径方向内側への膨張が抑止されるようになされている管継手部材。
【請求項6】
該第1筒状部材の段部が、該シールリングの摺動シール部に隣接する位置まで立ち上がっている、請求項4又は5に記載の管継手部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−177442(P2012−177442A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41259(P2011−41259)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】