説明

管継手

【課題】 凸状流路部を有するノーズと凹状連結部を有するボディーとを連結する管継手において、凸状流路部をノーズ本体に固定するときの組み立て作業時間を短縮すると共に、コストを低減する。
【解決手段】 合成樹脂製のノーズ本体14の凹状保持部20には、ガスケット22が嵌め込まれる当接部20Aが形成されている。当接部20Bの挿入口20B側は拡径され、段差部20Cが形成されている。合成樹脂製の凸状流路部16の根元部16Aが凹状保持部20Aに挿入され、根元部16Aとガスケット22及び段差部20Cとが当接される。そして、根元部16Aと段差部20Cとの当り面を超音波溶着することで、凸状流路部16がノーズ本体14に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機の燃料供給用等に使用され、流路部と固定部が別々に設けられた雄型のノーズと雌型のボディーとからなる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船外機の燃料供給用等のホースや配管の連結部、例えば、モータボートの燃料タンク側から伸びるホースの連結部には、エンジン側の配管と接続するための管継手が使用されている。
【0003】
このような管継手には、例えば、図5に示すように、雄型金具であるノーズ102と、雌型金具であるボディー120とからなる管継手100が使用されている。ノーズ102には、燃料が流れる金属製の凸状流路部104がノーズ本体106から突出するように設けられており、この凸状流路部104とは別に凸状固定部108が設けられている。
【0004】
図6(A)及び図6(B)に示すように、ノーズ本体106の凹部110には、ゴム製のガスケット112が保持されている。ノーズ102の組み立て時には、凸状流路部104の根元部104Aが凹部110に挿入され、ガスケット112に当接される。また、凹部110の入口110A側には溝部114が形成されており、この溝部114に金属製のロックリング116が嵌め込まれる。このロックリング116は一部を切り欠いたC型のリングであり、弾性力を利用して溝部114に嵌め込むことで、凸状流路部104が凹部110内で固定される。
【0005】
一方、ボディー120は、図5に示すように、ボディー本体126のノーズ102との結合面に、凸状流路部104が挿入される凹状連結部122と、凸状固定部108が挿入される凹状挿入部124とを備えている。図7(A)及び図7(B)に示すように、ボディー本体126の凹状連結部122には、ゴム製のガスケット128が保持されている。なお、ガスケット128より凹状連結部122側(奥側)には、ボール136が接触しており、ばね138によってガスケット128側に付勢されている。また、凹状連結部122の挿入口122A側には、ガスケット128に当接するようにガイドワッシャ−130が挿入されている。また、挿入口122Aには溝部132が形成されており、この溝部132に金属製のロックリング134が嵌め込まれる。このロックリング134はC型のリングであり、弾性力を利用して溝部132に嵌め込むことで、ガスケット128が凹状連結部122内で固定されることとなる。
【0006】
図8に示すように、ノーズ102の凸状流路部104をボディー120の凹状連結部122に、ノーズ102の凸状固定部108をボディー120の凹状挿入部124にそれぞれ同時に挿入する。そして、凸状固定部108の溝部108Aがロック部材140でロックされることで、ノーズ102とボディー120が結合される。これにより、管継手100の凸状流路部104と凹状連結部122が連通し、燃料をエンジンに供給できるようになる(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平11−030367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような管継手100では、凸状流路部104をノーズ本体106に固定するために、ロックリング116を溝部114に嵌め込む必要があり、組み立て部品が多くなる。このため、組み立て作業が煩雑で手間がかかる。また、金属製のロックリング116を使用するため、コストが高くなり、耐食性が劣るという欠点もある。また、ロックリング116を止めるための溝加工(溝部114の加工)が必要となる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、凸状流路部をノーズ本体に固定するときの組み立て時間を短縮し、コストを低減できる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、流体が供給されるノーズ本体から突出した凸状流路部を有するノーズと、流体が排出されるボディー本体に前記凸状流路部が挿入される凹状連結部を有するボディーと、からなる管継手であって、前記凸状流路部が合成樹脂製であり、合成樹脂製の前記ノーズ本体に、前記凸状流路部の根元部が挿入されて保持される凹状保持部を備え、前記凸状流路部の根元部と前記凹状保持部とが溶着されていることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明では、流体が供給されるノーズ本体の凸状流路部を、流体が排出されるボディー本体の凹状連結部に挿入することで、ノーズとボディーとが連結される構成となっている。
【0011】
合成樹脂製のノーズ本体には、凹状保持部が形成されており、この凹状保持部に凸状流路部の根元部を挿入することで、根元部が凹状保持部に当接する。そして、根元部と凹状保持部とが溶着されることで、凸状流路部がノーズ本体に固定される。このため、従来のような凸状流路部をノーズ本体に固定させるための金属製のロックリングが不用となり、部品点数が少なくなる。また、ロックリングを止めるための溝加工も不要となる。このため、部品の管理費用や材料費などのコストを低減できると共に、品質を安定化させることが可能となる。また、組み立て作業が容易で作業時間を短縮できる。また、金属製のロックリングを使用しないので、耐食性が向上する。
【0012】
また、合成樹脂製のロック部材などを使用せずに、凸状流路部の根元部を直接凹状保持部に溶着するので、凸状流路部の位置ずれがなくなり、ノーズとボディーの連結時のガタツキやシールむらがなくなる。このため、ノーズとボディーの連結時に作用する振動に対して耐久性が増す。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記凹状保持部と前記凸状流路部の根元部との当り面が超音波溶着されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明では、凸状流路部の根元部を凹状保持部に挿入し、根元部と凹状保持部とを当接させる。そして、ホーンを凸状流路部に当てて超音波溶着することで、簡単に凸状流路部の根元部を凹状保持部に固定できる。このため、管継手の組み立てが容易となり、組み立て作業の時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る管継手は、凸状流路部の根元部を凹状保持部に溶着するので、金属製のロックリングやこれを止めるための溝加工が不用となる。このため、部品点数が少なくなり、コストを低減できると共に、組み立て作業の時間を短縮できる。また、凸状流路部の位置ずれがなくなり、管継手の結合時のガタツキやシールむらなどを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の管継手における最良の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である管継手10を示す半断面図である。
【0018】
この管継手10は、雄型金具であるノーズ12と、雌型金具であるボディー30からなる。ノーズ12には、ノーズ本体14の結合面から突出する合成樹脂製の凸状流路部16と、この凸状流路部16とは別の位置から突出する凸状固定部18が設けられている。ボディー30には、合成樹脂製のボディー本体32のノーズ12との結合面に、凸状流路部16が挿入される凹状連結部34と、凸状固定部18が挿入される凹状挿入部36とが設けられている。この管継手10は、船外機の燃料供給用の配管に使用され、燃料の供給パイプ(図示せず)側にノーズ本体14の連結管14Aが連結され、エンジン側の配管パイプ(図示せず)にボディー本体32の連結管32Aが連結される構成となっている。
【0019】
図2(A)及び図2(B)に示すように、合成樹脂製のノーズ本体14には、凸状流路部16の根元部16Aが保持される凹状保持部20が形成されている。凹状保持部20には、ゴム製のガスケット22が嵌め込まれる当接部20Aが形成されており、この当接部20Aの挿入口20B側が拡径されて段差部20Cが形成されている。
【0020】
当接部20Aには、ゴム製のガスケット22が嵌め込まれ、ガスケット22の凸部22Aが凹状保持部20内の溝部21に係合されている。ノーズ本体14のガスケット22より奥側には、バルブチェック23が内挿されており、このバルブチェック23に棒状の支持部24が立設されている。この支持部24に凸状流路部16の開口16Bを挿入することで、図1に示すように凸状流路部16の根元部16Aがガスケット22に当接される。バルブチェック23の後方にはスプリング25が配設されており、バルブチェック23及び支持部24が一体となってノーズ本体14内を移動可能となっている。
【0021】
また、凹状保持部20にガスケット22が嵌め込まれたときにガスケット22と段差部20Cとがほぼ面一となる。そして、凸状流路部16の根元部16Aが挿入されると、根元部16(図2中の縦方向の面)がガスケット22と段差部20Cに当接する。凸状流路部16とノーズ本体14はポリブチレンテレフタレート(PBT)などの合成樹脂製であり、根元部16Aと段差部20Cとの当り面が溶着されることで、凸状流路部16が凹状保持部20内に固定されている。溶着には、超音波溶着などが用いられる。超音波溶着は、ホーン(図示せず)を凸状流路部16に当てて段差部20Cとの当接面に超音波振動を与え、その振動により樹脂が発熱して溶融することで、樹脂同士を溶着させるものである。その際、超音波の発振方向と直交する面(図2(B)中の縦方向の面)である根元部16Aと段差部20Cとの当り面が溶着される。凸状流路部16と段差部20Cに同じ種類の樹脂同士を用いることで、より強い溶着を得ることができる。この超音波溶着は、接着剤が不要であるため、組み立て作業が容易で作業工数が少なく、この結果、作業時間を短縮して生産性を向上させることができる。本実施形態に使用される合成樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の他、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、PET等の熱可塑性樹脂が適している。
【0022】
図3(A)及び図3(B)に示すように、ボディー本体32の凹状連結部34には、ゴム製のガスケット38が挿入される保持部40が形成されており、ガスケット38の凸部38Aが保持部40の溝部40Aに係合されて保持されている。また、保持部40の挿入口42側は拡径され、段差部42Aが形成されている。
【0023】
挿入口42には、合成樹脂製のガイドワッシャー44が嵌め込まれる構成となっている。ガイドワッシャー44の内周面の奥側には、リング状のガイドサブワッシャー46が保持される拡径部44Aと、この拡径部44Aよりも縮径されO−リング48が配置される保持部44Bとが形成されている。
【0024】
ガイドワッシャー44はリング状であり、ガスケット38との接触面で外径がガスケット38の外周よりも大きく、内径がガスケット38の外周よりも小さく形成されている。このガイドワッシャー44は、ガイドサブワッシャー46とO−リング48が装着された状態でボディー本体32の挿入口42に挿入され、ガイドワッシャー44の奥側面がボディー本体32の段差部42Aに当接する。つまり、ガスケット38、ガイドサブワッシャー46及びO−リング48をボディー本体32の保持部40とガイドワッシャー44とで挟み込む構成となっている。また、ガスケット38の奥側には、ボール50が配置されており、スプリング52によってボール50がガスケット38側に付勢されている。
【0025】
ガイドワッシャー44と保持部40(ボディー本体32)はポリブチレンテレフタレート(PBT)などの合成樹脂からなり、ガイドワッシャー44の段差部42Aとの当り面が溶着されることで、ガスケット38及びO−リング48がボディー本体32の凹状連結部34に固定される。溶着には、上述の超音波溶着などが用いられる。
【0026】
また、図1に示すように、凹状挿入部36には、図示しない板ばねに取り付けられたロック爪54が設けられており、凸状固定部18に形成された溝部18Aにロック爪54が食い込むことで、凸状固定部18がロックされる。このロック爪54は、ボディー本体32に露出した解除レバー56と図示しない板ばねを介して連結されており、解除レバー56を押下することで、溝部18Aへのロック爪54の食い込みが解除されるように構成されている。
【0027】
次に、本実施形態の管継手10の作用について説明する。
【0028】
図4に示すように、ノーズ12の凸状流路部16をボディー30の凹状連結部34に、ノーズ12の凸状固定部18をボディー30の凹状挿入部36にそれぞれ同時に挿入する。これにより、スプリング52の付勢力に抗して凸状流路部16が凹状連結部34の奥側に挿入される。これと共に、ロック爪54が凸状固定部18の先端斜面に乗っかり、結合完了位置まで来ると、ロック爪54が凸状固定部18の溝部18Aに弾性力によって食い込み、ノーズ12とボディー30とが結合される。ロック爪54によって凸状固定部18がロックされることで、凸状固定部18及び凸状流路部16のボディー本体32からの離脱が防止される。
【0029】
この状態では、凸状流路部16が凹状連結部34と連通しており、船外機の燃料供給系統で燃料をエンジンに供給することが可能となる。このとき、凸状流路部16と凹状連結部34とがガスケット38及びO−リング48によってシールされており、燃料漏れの発生が防止される。
【0030】
なお、ノーズ12とボディー30との結合を解除するときは、解除レバー56を押すと、ロック爪54が移動して溝部18Aへの食い込みが外れる。これにより、ノーズ12をボディー30から引き抜くことができる。
【0031】
このような管継手10では、凸状流路部16をノーズ本体14に固定する際には、合成樹脂製の凸状流路部16の根元部16Aをノーズ本体14の凹状保持部20に挿入し、根元部16Aと凹状保持部20の段差部20Cとを溶着する。これにより、従来の金属製のロックリング(図5参照)が不用となり、部品点数が少なくなる。また、ロックリングを止めるための溝加工も不要となる(図5参照)。このため、部品の管理費用や材料費などのコストを低減できると共に、管継手10の品質を安定化させることが可能となる。また、組み立て作業が容易で作業時間を短縮できる。また、金属製のロックリングを使用しないので、耐食性が向上する。
【0032】
さらに、合成樹脂製のロック部材などを使用せずに、凸状流路部16の根元部16Aを直接凹状保持部20の段差部20Cに溶着するので、凸状流路部16の位置ずれがなくなり、ノーズ12とボディー30との結合時のガタツキやシールむらがなくなる。このため、ノーズ12とボディー30の結合時に作用する振動に対して耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る管継手を示す半断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る管継手のノーズを示す分解半断面図及び部分断面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る管継手のボディーを示す分解半断面図及び部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る管継手の結合状態を示す半断面図である。
【図5】図5は、従来の管継手を示す半断面図である。
【図6】図6は、従来の管継手のノーズを示す分解半断面図及び部分断面図である。
【図7】図7は、従来の管継手のボディーを示す分解半断面図及び部分断面図である。
【図8】図8は、従来の管継手の結合状態を示す半断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 管継手
12 ノーズ
14 ノーズ本体
14A 連結管
16 凸状流路部
16A 根元部
16B 開口
18 凸状固定部
18A 溝部
20 凹状保持部
20A 当接部
20B 挿入口
20C 段差部
21 溝部
22 ガスケット
22A 凸部
23 バルブチェック
24 支持部
25 スプリング
30 ボディー
32 ボディー本体
32A 連結管
34 凹状連結部
36 凹状挿入部
38 ガスケット
40 保持部
42 挿入口
42A 段差部
44 ガイドワッシャー
44A 拡径部
44B 保持部
46 ガイドサブワッシャー
48 O−リング
50 ボール
52 スプリング
54 ロック爪
56 解除レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が供給されるノーズ本体から突出した凸状流路部を有するノーズと、流体が排出されるボディー本体に前記凸状流路部が挿入される凹状連結部を有するボディーと、からなる管継手であって、
前記凸状流路部が合成樹脂製であり、
合成樹脂製の前記ノーズ本体に、前記凸状流路部の根元部が挿入されて保持される凹状保持部を備え、
前記凸状流路部の根元部と前記凹状保持部とが溶着されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記凹状保持部と前記凸状流路部の根元部との当り面が超音波溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−132747(P2006−132747A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325381(P2004−325381)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(390034452)ブリヂストンフローテック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】