説明

管継手

【課題】 優れた施工性を有すると共に、押輪の押圧が省略されても接続管の抜け出しが防止され、しかも自立性を有する配管が得られる管継手を提供する。
【解決手段】 管継手1は、シール部材4を内蔵する継手本体2と、継手本体2に外装される押輪3と、押輪3の押込み動作により圧縮される弾性部材5と、弾性部材5の圧縮により、シール部材4を接続管11の外周面に密着される位置まで移動させる可動部材5と、接続管11の外周面に係止される抜止部材8とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水又は給湯用ステンレス鋼管などを施工現場で接続するために使用される管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
給水又は給湯用配管としては、耐食性を考慮して、ステンレス鋼管が多用されている。このステンレス鋼管を接続するための管継手としては、プレス方式、拡管方式あるいは転造ネジ方式など種々の構造のものが実用に供されている。
【0003】
プレス方式の管継手は、継手の両端部に、接続管を挿入しうる拡開された受口を形成し、その開口縁に形成した環状凹溝にOリングを嵌着した構造を有し、受口に接続管を差し込んだ後に、受口を専用のプレス工具(大型の電動工具)によりかしめることにより配管施工が行われる。この管継手は、構造が簡単であるが、施工のために専用の工具を必要とする。またかしめ工程を作業者が忘れることがあるので、例えば、受口のかしめる部分に感圧発色塗料を塗布した感圧発色テープを被覆しておき、プレス工具によりかしめた時の圧力により識別力を発色させるなどの特別な工夫(特許文献1参照)をしないと、接続管が抜け出るなどの事故を招来する。
【0004】
拡管方式の管継手によれば、接続管に袋ナットを装着後、接続管の端部を専用の工具(大型の電動工具)で拡管して環状突出部を形成し、この突出部の先方をOリングが収容された継手本体に挿入してから袋ナットを締め付けることにより、接続管を前進させて環状突出部でOリングを圧縮させて配管施工が行われる(特許文献2参照)。この管継手によれば、施工のために専用の大型電動工具を必要とし、また継手本体に袋ナットをねじ込む前に、接続管の端部に拡管加工を施す必要があるので、施工時間が長くなるという難点がある。さらに袋ナットの締め込みが不十分でもOリングで水漏れが阻止されることがあるため、袋ナットの締め込み不足が水圧試験(または気圧試験)で検知されず、施工完了後の水漏れを発生させることがある。
【0005】
転造ネジ方式の管継手は、テーパメネジを開口端に有し、メネジの奥に接続管より小径のシール材(Oリング)を設けた継手本体に、オネジ部を有しかつオネジ部の山に沿って複数の金属製の小円盤(そろばん玉状部材)が外周側に突出するように埋設されたリテーナを備えている。この管継手によれば、リテーナを継手本体にねじ込むことにより、小円盤が接続管に食い込んで(小円盤の遊星回転により、接続管に転造ねじが形成される)抜け止めが行われ、かつシール材が圧縮されて流体の漏れが防止される(特許文献3参照)。しかしてこの管継手においても、リテーナの締め忘れがあっても、それが水圧試験で検出されず、施工完了後に接続管が抜け出して大きな水漏れが発生することがある。また接続管の先端にあるバリでシール材に微小な傷が付いても、それが水圧試験で検知されず、施工完了後に数日を経て水漏れが発生する場合がある。
【0006】
さらに、上記の3方式の問題点(施工性が悪いこと、及び施工不良による接続管の抜け出し又は水漏れ)を解消するものとして、ワンタッチ方式の管継手(特許文献4参照)が実用に供されている。この管継手は、基体の大径部の内面に設けられた2条の周溝にOリングを嵌め込み、大径部の縁端にコイルバネと、内側面に直角エッジを有する押圧部材が嵌め込まれた合成樹脂製の内カラーとが配置され、これらをテーパ付外カラーで覆うようにした構造を有する。この管継手によれば、内カラーの先端より接続管が挿入されると、押圧部材が内カラーの先端側に押されるが、押圧部材の外側面が外カラーのテーパ面で押圧されて内側面の直角エッジが接続管に食い込むことにより、管継手と接続管との結合が保持される。この結合状態で接続管に引き抜き力が作用すると、押圧部材はコイルバネの弾発力により外カラーのテーパ部側に押し付けられると共に、そのテーパ部によって押圧部材のエッジが接続管を押圧することにより、接続管の引き抜きが阻止される。この結合状態から、内カラーの先端を内側に押すことにより、押圧部材は外カラーとの接触から解かれ、接続管を引き抜くことができる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−84713号公報(第4〜5頁、図1〜4)
【特許文献2】特開2002−228062号公報(第3〜5頁、図1、図2)
【特許文献3】特開平10−231967号公報(第2〜3頁、図1)
【特許文献4】特開平10−122460号公報(第3〜5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のワンタッチ方式の管継手によれば、専用の工具や管端加工が不要となるので、施工性は優れているが、コイルバネを使用するために、管継手の面間距離が長くなり、継手の製造コストが増大するという難点がある。また、コイルバネの反力で押圧部材がソフトタッチで係止されるので、施工後に水圧が付与されて接続管に引張り力が作用すると、押圧部材が外カラーのテーパ面に沿って縮径され、かつ接続管が抜け出る方向に数mm程度移動する。したがって、複数の接続部を有する通常の配管では、各接続部で接続管の曲がりが生じて、接続管の軸心が一致せず、自立性が欠如した配管になるという問題がある。
【0009】
したがって本発明の目的は、上記の問題点を解消して、優れた施工性を有すると共に、押輪の押圧が省略されても接続管の抜け出しが防止され、しかも自立性を有する配管が得られる管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の管継手は、シール部材を内蔵する継手本体と、前記継手本体に外装される押輪と、前記押輪の押込み動作により圧縮される弾性部材と、その弾性部材の圧縮により、前記シール部材を前記接続管の外周面に密着される位置まで移動させる可動部材と、前記接続管の外周面に係止される抜止部材とを有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記可動部材は、前記シール部材と前記弾性部材とで挟着されるフランジ部と前記シール部材を保持しかつ前記押込動作により前記フランジ部から分離されるリング部を有する構造とすることができる。
【0012】
本発明においては、前記リング部は、前記シール部材を非圧縮状態に保持しうる大きさの絞りリング部であり、前記絞りリング部は前記接続管が挿入されることにより前記シール部材の内径を広げる方向に変形される構造とすることができる。
【0013】
本発明においては、前記可動部材は、前記シール部材と前記弾性部材とで挟着されるフランジ部と、前記フランジ部に係止され、前記シール部材を非圧縮状態に保持しうる大きさのリング部とを有し、前記リング部は、前記押輪の押込み動作により前記フランジ部から分離される構造とすることができる。
【0014】
本発明においては、前記可動部材は、前記シール部材と前記弾性部材とで挟着されるコーン状のリング体とすることができる。
【0015】
本発明においては、前記弾性部材は線材を一端から他端に向って外径が増大するように巻回して形成された円錐台形状を有する圧縮コイルバネであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、前記圧縮コイルバネは、前記押輪が所定位置まで押し込まれたときに線径と実質的に同一の高さまで圧縮されることが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記抜止部材は、その内周面に前記接続管に食い込む楔状突部を有する複数の部材であり、かつ円筒状の内カラーに略円周方向に沿って保持されていることが好ましい。
【0018】
本発明においては、前記継手本体に、前記押込動作により前記押輪に嵌入されるストップリングが装着されていることが好ましい。
【0019】
本発明においては、前記継手本体に、前記押込動作により隠蔽されるインジケータが装着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の管継手によれば、押輪を押し込むだけの操作で、シール部材が接続管に密着しかつ抜止部材が接続管に食い込むので、短時間での施工にも係わらず、高いシール性と引き抜き阻止力が得られる。しかも接続管に抜止部材が食い込むことにより、接続管の軸心と継手本体の軸心とが一致し、自立性を確保することができる。
【0021】
また、押輪の押忘れ及び管の挿入長さの不足などの施工不良があった場合には、水圧試験時に確実に微漏れを発生でき、施工不良を検知することが可能となる。
【0022】
特に、シール部材の内周側を可動部材のリング部で支持することにより、管端バリの除去忘れなど施工不良があっても、シール部材は、管端と接触しないので、シール部材の損傷が防止され、シール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる管継手の半断面図で、左半分は接続管を挿入する前の状態を示し、右半分は接続管を挿入した状態を示し、図2は施工途中及び施工後の管継手の半断面図で、左半分が押輪を途中まで押し込んで可動部材をスライドさせた状態を示し、右半分は押輪を完全に押し込んだ状態を示し、図3は可動部材の斜視図、図4は同断面図である。
【0024】
図1に示すように、管継手1は、両端部が開口したソケット形状を有する継手本体2と、その外周に装着される押輪3と、継手本体2の内部に装着されるシール部材4とを備えている。シール部材としては、図示の如くゴム製のOリングを使用することができ、またOリングの代わりにリップ状パッキン又は低弾性を示すメタル系部材を使用することができる。継手本体2は、内周側に後述の可動部材の一部を受取る第1の段部21と、シール部材4に臨むテーパ面22と、そこから奥側に向って形成された第2の段部23と、それより小径の第3の段部24とを有する。また継手本体2の外周には、2条の円周溝25、26が形成されている。押輪3は、直円筒部31とそこから下り勾配となるテーパ部32を有し、直円筒部31の内周面には、テーパ付円周溝33とそこから離間した位置にある円周溝34が形成されている。押輪3の内部には、シール部材4に隣接する可動部材5と、それを押圧する弾性部材6と、テーパ部32に内接する抜止部材8とそれを支持する内カラー7が配置されている。弾性部材6としては、例えばその大径側が可動部材5に当接するように設けられた略円錐台状の圧縮コイルバネが使用される。継手本体2の円周溝25には、そこから一部が突出するようにストップリング9が嵌入され、また継手本体2の円周溝26には、接続完了の有無を確認するためのリング状のインジケータ10が嵌装されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、可動部材5は、内周に段部52が形成されたフランジ部51と、端部外周に円周方向に沿って複数の突部54を有するリング部53を有するとともに、フランジ部51のネック部には、円周溝55が設けられて、リング部53の肉厚が薄く形成されている。弾性部材6は、線材を一端から他端に向って外径が増大するように巻回して形成された略円錐台状のバネであり、その大径側はフランジ部51の内周に設けられた段部52に保持されている。内カラー7は、フランジ部71とリング部72からなり、リング部72には、内周面に2条の楔状突部81を有する複数の抜止部材8が円周方向に沿って固着されている。また、略円錐台状の圧縮コイルバネは、図1に示す状態とは逆に、その小径側が可動部材5のフランジ部51に当接するように設けることができる。
【0026】
本発明において、管継手1を構成する部材は例えば次の材料で形成することができる。継手本体2は、耐食性及び剛性を必要とするので、例えばSCS材や青銅材により精密鋳造の手法により形成することができる。押輪3も、耐食性及び剛性を必要とするので、例えばSCS材により精密鋳造の手法により形成するか、あるいはオーステナイト系ステンレス鋼により熱間鍛造、冷間鍛造あるいはプレス成形等の塑性加工の手法により形成することができる。シール部材4は、オレフィン系ゴムで形成することができ、特に耐熱性に優れたエチレンとプロピレン及び架橋用ジエンモノマーとの3元共重合体であるEPDM、で形成することが好ましく、また耐熱性とともに耐薬品性にも優れたFKM(フッ素ゴム)で形成することもできる。可動部材5は、架橋PEなどのポリオレフィンで形成することができる。内カラー7は、POM(ポリアセタール)などの汎用エンジニアリングプラスチックや、優れた耐熱性を有するPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの特殊エンジニアリングプラスチックで形成することができる。弾性部材6として圧縮コイルバネを使用する場合は、この部材をオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)で形成することができ、またストップリング9もこれと同様の材料で形成することができる。抜止部材8は、接続管より硬質の材料、例えば接続管がオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の場合は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420)で形成すればよい。リング状のインジケータ10としては、例えばPE、PP等のポリオレフィンからなるリング状成形体あるいは耐候性に優れたフィルム状テープを使用することができる。また、これに限らず、継手本体2に油性塗料を塗布することにより、インジケータとすることができる。
【0027】
上記の管継手1による接続管11の施工手順を図1と図2により説明する。まず、図1の左半分に示すように継手本体2に押輪3を含む全ての部品を組み込んだ後、図1の右半分に示すように接続管11(例えばSUS304製鋼管)を挿入し、その端面を可動部材5のリング部53の内周側端面に当接させる。このとき、抜止部材8は押輪3のテーパ部32に添って拡径されながら継手本体2の中央側に移動し、かつ楔状突部81が接続管11に係止する。この状態で接続管11を引き抜く方向に外力が加わったとしても、押輪3のテーパ部32に内接する抜止部材8の楔状突部81が接続管11の外周部に係止しているので、接続管11が引き抜けることはない。
【0028】
次いで、押輪3を継手本体2の中央に向って押し込むことにより、図2に示すように継手本体2と接続管11とのシール接続が行われる。なお、図2では、理解を容易にするために、継手本体2の第1の段部21及び第3の段部24の符号を省略している。詳述すると、押輪3が継手本体2の途中まで押し込まれると、図2の左半分に示すように、抜止部材8の楔状突部81が接続管11の外周に係止した状態で接続管11は継手本体2の奥まで引き込まれるとともに、可動部材5のリング部53は継手本体2の第3の段部24の奥側端面に当接しかつフランジ部51は継手本体2の第1の段部21の奥側端面に当接する。しかも内カラー7のフランジ部71が継手本体2の中央側に移動するので、弾性部材6はフランジ部71とフランジ部51とで挟着されることにより線径と同じ厚さまで圧縮される。この押輪3の押し込み操作の途中で、可動部材5はフランジ部51のネック部に存在する円周溝55(図4参照)で分断され、フランジ部51のネック部とリング部53との間に隙間が形成され、その隙間にシール部材4が挟み込まれるとともに、シール部材4はテーパ面22とフランジ部51と接続管11とで囲まれた領域に押し込まれるので、所定のシール面圧が得られる。
【0029】
押輪3を最後まで押し込むことにより、図2の右半分に示すように、押輪3のテーパ部32の内周側端面により、抜止部材8が接続管11に押し付けられ、抜止部材8の楔状突部81が接続管11に径方向に若干の塑性変形を与えながら、接続管11の外周部に食い込むので、接続管11の抜け止めが確実に行われる。また、ストップリング9は、押輪3の円周溝34に入り込むので、押輪3は所定の位置に固定される。さらに、継手本体2の円周溝26に嵌装されたリング状のインジケータ10は、押輪3で隠蔽されるので、接続が完了したことが目視で確認される。
【0030】
接続管が継手に接続された後に、接続管を引き抜く引張り試験を行うと、接続管11は図2の右半分の状態から右よりに移動してゆき、シール部材4と接続管11の管端が一致するまで確実にシール面圧が維持される。また、接続管11には抜止部材8が食い込んでいるので、接続管の軸心と継手本体の軸心とが常に一致し、自立性を確保して強固に固定することができる。
【0031】
図1に示す管継手によれば、接続管を所定長さに切断する管切断工程、接続管に挿入長さをマーキングするマーキング工程、押輪を締付ける本締め工程及び接続管が所定長さだけ挿入されたことを確認するマーキング確認工程からなる4工程で、配管施工を行うことができるので、従来の管継手と比較して、施工時間を大幅に短縮することができる。例えば拡管方式の管継手によれば、管切断工程、管端のバリを除去する管端面取り工程、接続管に押輪(ナット)を装着するナット取付け工程、拡管工程、ナットを手締めする手締め工程、ナットを本締めする本締め工程及びナット締め付け量を確認するインジケータ確認工程といった7工程からなる施工が行われる。本発明の管継手によれば、これと比較して、施工時間を約60%以上削減することができる。
【0032】
また、転造ネジ方式の管継手によれば、管切断工程、管端面取り工程、マーキング工程、手締め工程、本締め工程及びマーキング確認工程といった6工程からなる施工が行われる。この管継手によれば、拡管方式の管継手よりも施工時間が約25%短縮されるが、本発明の管継手によれば、転造ネジ方式の管継手と比較しても、施工時間を約40%以上も削減することができる。
【0033】
図1に示す管継手1によれば、施工不良があっても水圧検査で未然に検知できるとともに、水漏れなどの不具合を防止することができる。すなわち、押輪3を所定量だけ押し忘れた場合には、シール部材4が圧縮されないので、水圧試験で微小な水漏れを検知することができ、かつ抜止部材8は弾性部材6の反力(復元力)により、押輪3のテーパ部32側に押し戻されるので、接続管11がすっぽ抜けることが無くなり、例えば転造ネジ方式の管継手では生じていたようなリテーナの締め忘れによる接続管の抜け出しが未然に防止される。また、接続管11の挿入長さが不足した場合も、接続管11がシール部材4と接触しないので、水圧試験で微小な水漏れを検知することができる。さらに、大きなバリの除去は別として、管端面取り工程を行わない場合でも、接続管11の端面はシール部材4と非接触の状態で継手本体の奥まで挿入されるので、管端面のバリでシール部材4が損傷することはなく、転造ネジ方式の管継手のようにシール部材の損傷による水漏れは生じない。
【0034】
(可動部材の変形例)
図1においては、可動部材5は、上記の構造に限らず、種々の構造とすることができる。図5は可動部材の第2の例を示す斜視図で、図6はこの可動部材にシール部材4を装着した状態を示す断面図、図7は図6の可動部材に接続管を挿入した状態を示す断面図であり、図3及び図4と同一機能部分は同一の参照符号で示す。可動部材5は、内周に段部52が形成されたフランジ部51と、端部外周に円周方向に沿って複数の突部54を有しかつ軸方向の途中で内径側にくぼんだ形状を有する絞りリング部56を有するとともに、フランジ部51のネック部には、円周溝55が設けられている。絞りリング部56には、接続管(図7参照)の挿入方向と同方向に伸びる複数のスリット部57が円周方向に沿って形成されるとともに、絞りリング部56のくぼみ部は、そこにシール部材4が挿入されたときにシール部材が実質的に拡径されないような寸法に形成されている。
【0035】
図7に示すように可動部材5に接続管11が挿入されたときに、絞りリング部56は、そのスリット部57が菱形状に開口し、そこを起点として接続管11の外径と略同一の大きさに拡径され、シール部材4が半径方向に変形するので、シール部材4は所定のシール性能を発揮することができる。すなわち、シール部材(例えばOリング)に荷重が加わりそれが弾性変形(拡径)した状態で長期間放置されると、「ヘタリ現象」が生じて(圧縮永久歪が残留する)、荷重が除去されても内径が元の寸法に復帰せず、耐用年数の低下をもたらすが、図5に示す可動部材によれば、シール部材4が絞りリング部56に装着された状態では、シール部材4には内部応力が発生せず、接続管11が挿入されたときに初めてシール面圧が発生するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
【0036】
図8は、可動部材の第3の例を示す断面図であり、図3及び図4と同一機能部分は同一の参照符号で示す。可動部材5は、フランジ部51とリング部53とが別部材で形成され、フランジ部51の端部外周側に形成された凸部511に、リング部53の端部内周側に形成された凹部531が係止された構造を有する。この可動部材5によれば、フランジ部51が継手本体(不図示)の奥側(図8の右側)に押し込まれたときに、リング部53はフランジ部51から離間して、継手本体(不図示)の奥まで移動して、図2と同様にシール材4はリング部53とフランジ部51との間に保持される。したがってこの可動部材5によれば、前述した可動部材と同様の効果が得られる。
【0037】
また上記の可動部材は、図示を省略するが、フランジ部とリング部とを別部材で形成しこれらを接着剤などで一体的に接合し、配管施工時に所定の荷重で分離されるようにしてもよい。
【0038】
(第2の実施の形態)
図9は本発明の第2の実施の形態に係わる管継手の半断面図で、左半分が施工前、右半分が施工後の状態を示し、図1と同一機能部分は、同一の参照符号を示し、その説明を省略する。この管継手においては、可動部材50は、コーン状のリング体であり、弾性部材6と継手本体2の端部内面とで挟み込まれるように配置されている。
【0039】
上記の構成によれば、押輪3を押し込むことにより、図1の場合と同様の動作で接続管11が継手本体2に固定される。ここで、押輪3を押し込むことにより、弾性部材6が圧縮された後、可動部材50は、図5の右半分に示すように平板状に変形し、シール部材4も押し潰されるので、所定のシール性が確保される。
【0040】
上記の説明では、左右対称のソケット形管継手について記述したが、本発明はこれに限らず、他の構造(例えば、エルボ状継手、継手本体の一方の側に接続用オネジを形成したオネジアダプター継手)の管継手に適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる管継手の半断面図である。
【図2】図1の管継手に接続管を接続する途中及び接続後の状態を示す半断面図である。
【図3】可動部材の斜視図である。
【図4】可動部材の断面図である。
【図5】可動部材の第2の例を示す斜視図である。
【図6】図5の可動部材にシール部材を装着した状態を示す断面図である。
【図7】図6の可動部材に接続管を挿入した状態を示す断面図である。
【図8】可動部材の第3の例を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係わる管継手の半断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1:管継手
2:継手本体、21:第1の段部、22:テーパ面、23:第2の段部、24:第3の段部、25、26:円周溝、
3:押輪、31:直円筒部、32:テーパ部、33:テーパ付円周溝、34:円周溝
4:シール部材
5、50:可動部材、51:フランジ部、511:凸部、52:段部、53:リング部、531:凹部、54:突部、55:円周溝、56:絞りリング部、57:スリット部
6:弾性部材
7:内カラー、71:フランジ部、72:リング部
8:抜止部材、81:楔状突部
9:ストップリング
10:インジケータ
11:接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材を内蔵する継手本体と、前記継手本体に外装される押輪と、前記押輪の押込み動作により圧縮される弾性部材と、その弾性部材の圧縮により、前記シール部材を接続管の外周面に密着される位置まで移動させる可動部材と、前記接続管の外周面に係止される抜止部材とを有することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記可動部材は、前記シール部材と前記弾性部材とで挟着されるフランジ部と前記シール部材を保持しかつ前記押込動作により前記フランジ部から分離されるリング部を有することを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記リング部は、前記シール部材を非圧縮状態に保持しうる大きさの絞りリング部であり、前記絞りリング部は前記接続管が挿入されることにより前記シール部材の内径を広げる方向に変形されることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記可動部材は、前記シール部材と前記弾性部材とで挟着されるフランジ部と、前記フランジ部に係止され、前記シール部材を非圧縮状態に保持しうる大きさのリング部とを有し、前記リング部は、前記押輪の押込み動作により前記フランジ部から分離されることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記可動部材は、前記シール部材と前記弾性部材とで挟着されるコーン状のリング体であることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項6】
前記弾性部材は線材を一端から他端に向って外径が増大するように巻回して形成された円錐台形状を有する圧縮コイルバネであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の管継手。
【請求項7】
前記圧縮コイルバネは、前記押輪が所定位置まで押し込まれたときに線径と実質的に同一の高さまで圧縮されることを特徴とする請求項6に記載の管継手。
【請求項8】
前記抜止部材は、その内周面に前記接続管に食い込む楔状突部を有する複数の部材であり、かつ円筒状の内カラーに略円周方向に沿って保持されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の管継手。
【請求項9】
前記継手本体に、前記押込動作により前記押輪に嵌入されるストップリングが装着されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の管継手。
【請求項10】
前記継手本体に、前記押込動作により隠蔽されるインジケータが装着されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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