説明

管継手

【課題】雌型部材と雄型部材の挿嵌において締め込み不足を防止できる管継手を提供すること。
【解決手段】雌型部材10と雌型部材10に挿嵌される雄型部材20とからなる管継手1であって、雌型部材10及び雄型部材20のうちの一方に固定される中間部材(座金40)を備え、中間部材は、雄型部材20が雌型部材10に対して適正な位置まで挿嵌された場合に、雌型部材10及び雄型部材20のうちの他方に当接されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ホース等の管体や機器等を互いに接続する管継手に関し、特にねじ込み式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧機器においては、油圧ホース等の管体や油圧ポンプ等の油圧機器を互いに接続するために、オイルが流通するための通路を備えた管継手が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、雌外套筒の外側に設けたナットを雄外套筒の外側に形成したネジ面に螺合させることで雌外套筒と雄外套筒とを連結させる管継手が記載されている。この管継手において、雄外套筒内及び雌外套筒内には、側壁に流路が形成された内管通路が設けられており、雌外套筒と雄外套筒との連結によってシール部材が流路の前後を移動することで内管通路同士が連通するようになっている。
【0004】
上記例においては、流路の前側で内管通路の外壁をシールしていたシール部材が、雌外套筒に対して雄外套筒が徐々にねじ込まれるにしたがって、流路の後側に向かって徐々に移動する。そして、雌外套筒に対して雄外套筒が適正な位置までねじ込まれると、シール部材が流路の後側に移動しきって、内管通路同士の連通路にシール部材が露出しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−236990号公報(段落0005〜0014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の管継手は、雌外套筒に対する雄外套筒の締め込み具合を専ら作業者の感覚に頼っている。そのため、雌外套筒に対して雄外套筒が適正な位置まで締め込まれていないにもかかわらず、作業者が締め込み(接続)作業を終了してしまう虞があり、この場合には流通媒体(例えばオイル)が漏洩してしまうことになる。また、このような締め込み不足があった場合には、シール部材が内管通路の内側に対して露出してしまうことがあり、内部を流通する流通媒体によってシール部材が損傷してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、雌型部材と雄型部材の挿嵌において締め込み不足を防止できる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するため、本発明による管継手は、雌型部材と該雌型部材に挿嵌される雄型部材とからなる管継手であって、前記雌型部材及び前記雄型部材のうちの一方に固定される中間部材を備え、該中間部材は、前記雄型部材が前記雌型部材に対して適正な位置まで挿嵌された場合に、前記雌型部材及び前記雄型部材のうちの他方に当接されることを特徴とする。
また、前記中間部材は、平板状に形成される平板部と、該平板部に直交して形成される直立部とからなることを特徴とする。
また、前記直立部は、側面視において前記雌型部材の最外径より内側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雌型部材と雄型部材とによって中間部材が挟持されることが、適正な位置まで挿嵌されたことの目印となるため、締め込み不足を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)本発明の一の実施の形態に係る管継手が分離された状態における断面図である。(b)本発明の一の実施の形態に係る管継手が連結された状態における断面図である。
【図2】(a)本発明の一の実施の形態に係る管継手が分離された状態における側面図である。(b)本発明の一の実施の形態に係る管継手が連結された状態における側面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る管継手が連結された状態における側面図である。
【図4】(a)本発明の一の実施の形態に係る管継手におけるリング部材の正面図である。(b)同側面図である。(c)同平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。本発明は、液体、気体を問わず、様々な流体を流通させるためのねじ込み式の管継手に広く適用可能であるが、ここでは本発明を油圧機器等の配管の接続に適用した場合の一例について説明する。ここで、図1乃至図3には雌型部材及び雄型部材が示されるが、便宜上、互いに向き合う方向を先端とし、その反対側を後端として説明する。
【0012】
図1(a)に管継手1において雌型部材10と雄型部材20とが分離した状態の断面図を、図2(a)に雌型部材10と雄型部材20とが分離した状態の正面図をそれぞれ示す。図1(a)に示すように、雌型部材10は、流通媒体であるオイルを流通させるための内部通路10aが形成された内筒部11と、この内筒部11が先端側に支持され後端側がオイルの導管(図示省略)に接続される筒状の接続管部13と、この接続管部13の外周に設けられる雌型筒部15とからなる。内筒部11の先端側の壁部には、内部と外部とを連通する流路11aが形成されている。この流路11aは、雌型部材10と雄型部材20とが接続状態にないときには、内筒部11の先端側の外周に摺動自在に設けられた筒状の可動弁17によって塞がれている。このとき、可動弁17は、接続管部13の内側に配設されたコイルスプリング13aによって常に先端側に向かって付勢されているため、先端側の端部17aが内筒部11の先端に設けられた突起部11bに当接している。なお、可動弁17の先端側の内周面にはシール部材17b(図示例ではOリング)が設けられており、内筒部11における流路11aより先端側の外周が密閉されている。また、接続管部13の先端側の内周にもシール部材13bが設けられており、可動弁17の外周との間が密閉されている。そして、雌型部材10の先端である雌型筒部15の先端側の内周面15aは、雄型部材20との接続のための雌ねじが切られている。
【0013】
雄型部材20は、後端側がオイルの導管(図示省略)に接続される筒状の接続管部23と、この接続管部23の先端側の外周に設けられる雄型筒部25と、接続管部23の先端側であって雄型筒部25の内周に摺動自在に配置され、接続管部23の先端側に配置されたコイルスプリング23aによって付勢される可動弁27とからなる。可動弁27の壁部には、内部と外部とを連通する流路27aが設けられており、この流路27aは、雌型部材10と接続状態にないときには、可動弁27の先端に設けられたシール部材27bと雄型筒部25の先端側に設けられた段部25aの後端側とが当接することで密閉される。なお、接続管部23は、雄型筒部25に挿嵌されるものであり、先端側の外周に設けられたシール部材23bと雄型筒部の内周とが当接することで密閉されている。
【0014】
図2(a)に示すように、雄型筒部25の先端側の外周面25bには、雌型部材10との接続のために、雌型筒部15の内周面15aに設けられた雌ねじに対応した雄ねじが切られている。また、図1(a)に示すように雄型筒部25の段部25aより先端側の内周にはシール部材25cが設けられており、雌型部材10と接続された際に可動弁17の外周に密着するようになっている。また、雄型筒部25の外周には、雄型部材20と雌型部材10とを接続する際に使用されるナット状部25d(図示例では六角ナット状に形成されている)が一体的に形成されている。ここで、ナット状部25dの後端側は、ねじ切りされたボルト状部25eとなっており、ナット30が嵌装されている。そして、ナット30とナット状部25dとの間には中間部材としての側面視L字状の座金40が配置されおり、ナット30とナット状部25dとによって挟持されている。なお、図1及び図2はナット状部25dの対角距離が示されるように描画されたものである。
【0015】
図4(a)乃至(c)に示すように、座金40は、一部が欠けた円環平板状に形成された円形状部分41とこの円形状部分41の両端に連続して外方に延在する平板状の直線状部分43a,43bとからなる平板部45と、平板部45の直線状部分43a,43bから湾曲部44,44を介して平板部45に直交するように形成される立ち上がり部分46a,46bとこの立ち上がり部分46a,46b同士を直線状に結ぶ当接部48とからなる直立部49とによって構成される。円形状部分41の内径はボルト状部25eより僅かに大きく形成されており、ボルト状部25eに嵌装された際にぐらつき難くなっている。また、直線状部分43aと直線状部分43bとは平面視において平行となっており、内側の距離43Lがナット状部25dにおける一側面の幅25L(実施例のように六角ナット状の場合は、対角距離の半分である。図2参照)より大きく形成される。ここで、座金40はボルト状部25eに嵌装された際に、直立部49の内側の側面がナット状部25dの一側面に当接する(図3参照)ようになっているが、ナット状部25dの一側面が立ち上がり部分46a,46b間におさまるため、ナット状部25dと湾曲部44が干渉してしまうことがない。そして、平板部45から直立部49の先端までの幅49H(高さ)は、雌型部材10に対して雄型部材20が適正な位置まで挿嵌されたときの、雌型筒部15の先端からナット状部25dの後端面までの距離20Lとなるようになっている。
【0016】
図1(b)に雌型部材10と雄型部材20とが接合した状態の断面図を、図2(b)に雌型部材10と雄型部材20とが接合した状態の正面図を、図3に雌型部材10と雄型部材20とが接合した状態の側面図をそれぞれ示す。図1(b)に示すように、雄型部材20の雄型筒部25を固定した状態で、この雄型筒部25に対して雌型部材10の雌型筒部15をねじ込みながら挿嵌させていくと、雌型部材10の可動弁17の先端が雄型筒部25の段部25aの先端側に当接し、可動弁17が後端側に押圧されるとともに、雌型部材10の内筒部11の先端と雄型部材20の可動弁27とが当接し、可動弁27が後端側に押圧される。そして、雌型部材10の接続管部13の先端面と雄型筒部25の先端面とが当接する適正な位置まで挿嵌されると、雌型部材10においては、シール部材17bが流路11aより後端側の位置となるように可動弁17が移動されることで流路11aが開状態となり、雄型部材20においては、可動弁27が後端側へ移動し、シール部材27bが段部25aの後端側から離れることで流路11aが開状態となり、雌型部材10と雄型部材20が連通する。
【0017】
ここで、座金40の高さ49Hは、接続状態における雌型筒部15の先端からナット状部25dの後端面までの距離20Lと同じであるため、雌型部材10に対して雄型部材20が適正な位置まで挿嵌されたときに、図2(b)及び図3に示すように、座金40の当接部48の先端が雌型筒部15の先端に当接することになる。これによって、作業者は雄型部材20が適正な位置まで挿嵌されたことを目視によって確認することができる。また、図3に示すように、座金40の当接部48は側面視において雌型部材10の最外径(図示例では雌型筒部15の外径)より内側に配置されるため、外部からの衝撃等を受けにくく、これによる変形や破損が生じにくい。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、中間部材が側面視L字状の座金である例を示したが、これに限られない。中間部材は、雄型部材が雌型部材に対して適正な位置まで挿嵌された場合に、雌型部材と雄型部材とに挟持される構成を備えていれば、具体的な形状は限定されるものではない。
【0019】
また、中間部材がナット状部の後端面とナットの先端面とによって挟持される例を示したが、これに限られない。例えば、ナット状部の先端面側にナットを嵌装する構成とし、ナットの後端面とナット状部の先端面とに挟持されるようにしても構わない。この場合において、中間部材を座金によって構成するときは、座金の高さは、接続状態における雌型筒部の先端からナット状部の先端面までの距離と同じになるように形成されるものである。また、例えば、座金のように中間部材を挟持して固定するのではなく、雄型部材に所定の嵌合部を設けこれに嵌合させて固定するなど、その固定方法は特に限定されるものではない。実施例においては、ナット状部とこれに隣接して嵌装されるナットとによって中間部材を挟持する構成であるため、中間部材の着脱が容易であり、雌型部材を別形状のものとした場合でも取り扱いが容易となる。
【0020】
また、中間部材が雄型部材に固定される例を示したが、これに限定されず、雌型部材に固定されるように構成しても構わない。この場合、上述のように、その固定方法は特に限定されるものではない。
【0021】
また、中間部材において当接部が1箇所のみである例を示したが、これに限定されない。実施例のように中間部材として座金を用い、六角ナット形状のナット状部に隣接させる場合には、例えば当接部を2箇所として対向するように配置したり、当接部を3箇所として平面視において120度ずつずらして配置したりすることができる。
【0022】
また、雄型部材及び雌型部材の具体的な構成は単なる一例であり、雌型部材とこの雌型部材に挿嵌される雄型部材とからなる管継手であれば、具体的な形状は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1 管継手
10 雌型部材
20 雄型部材
30 ナット
40 座金(中間部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型部材と該雌型部材に挿嵌される雄型部材とからなる管継手であって、
前記雌型部材及び前記雄型部材のうちの一方に固定される中間部材を備え、
該中間部材は、前記雄型部材が前記雌型部材に対して適正な位置まで挿嵌された場合に、前記雌型部材及び前記雄型部材のうちの他方に当接されることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記中間部材は、平板状に形成される平板部と、該平板部に直交して形成される直立部とからなることを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記直立部は、側面視において前記雌型部材の最外径より内側に配置されることを特徴とする請求項2記載の管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42042(P2012−42042A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186598(P2010−186598)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】