管継手
【課題】正常な管端処理されていない状態においても、リング状シール材を傷めたり、脱リングさせることなくワンタッチで複合管を正常に接続することができるとともに、複合管の金属製中間層とガイド部材との接触が確実に防止して中間層の異種金属間接触腐食を防止できる管継手を提供する。
【解決手段】複合管9をノズル部1dの先端から後端に向かって差し込むに伴い、複合管9内にガイド筒部6が嵌合状態となり、嵌合後、ノズル部1dの後端側に向かってさらに複合管9を押し込むと、ガイド部材6aが、ノズル部1dの後端側に移動し、リング状シール材4が複合管9の内周面に水密に密着するようにするとともに、ガイド部材6aが、複合管9の内層92の端縁を受けて複合管9の管端に露出する金属製中間層93をガイド部材9に対して非接触状態に保つテーパ部62を備えている構成とした。
【解決手段】複合管9をノズル部1dの先端から後端に向かって差し込むに伴い、複合管9内にガイド筒部6が嵌合状態となり、嵌合後、ノズル部1dの後端側に向かってさらに複合管9を押し込むと、ガイド部材6aが、ノズル部1dの後端側に移動し、リング状シール材4が複合管9の内周面に水密に密着するようにするとともに、ガイド部材6aが、複合管9の内層92の端縁を受けて複合管9の管端に露出する金属製中間層93をガイド部材9に対して非接触状態に保つテーパ部62を備えている構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管を接続するために用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ワンタッチで接続及び止水が完了するワンタッチ式の管継手として、接続時に接続管内に入り込むノズル部(ニップル部ともいう)を備え、ノズル部の外周に形成した環状溝にノズル部より外径が大きいリング状シール材を嵌装し、接続管の接続によって、このリング状シール材が接続管の内周面に水密に密着するとともに、継手入口に設けられた抜け止めリング等の抜け止め手段によって接続管の抜け止めをワンタッチで行えるようにしたものがある。
上記ワンタッチ式の管継手においては、接続される接続管は、配管施工現場で、所望長さに切断され、管端内外面の面取り作業などの端末処理を施したのち、管継手と接続されることが作業標準となっているが、作業者によっては、作業標準を守らず端末処理をせずに接続作業を行うものもある。
しかし、従来の管継手の場合、端末処理を正確に行わず、特に斜め切りのまま接続管を管継手に接続しようとすると、接続管の先端がリング状シール材にひっかかり、リング状シール材を傷つけたり、環状溝から脱リングさせて、止水性が確保できなくなるおそれがある。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、接続管の管端がリング状シール材にあたらないようにした管継手(特許文献1)や、ノズル部とこのノズル部を周囲から囲繞するように設けられた外筒部との間に設けられる接続管の挿入空間の入口に樹脂製のガイドリングを設け、このガイドリングによって、接続管の管端を受け、接続管の押し込みに伴って、ガイドリングが接続管の管端面に沿いながら、ノズル部の後端側に移動し、接続管の管端がリング状シール材に当たり、リング状シール材を傷つけたり、脱リングさせたりすることがないようにした管継手(特許文献2)が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3600764号公報
【特許文献2】特開2010−101477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の管継手の場合、その肉厚をできるだけ薄肉なものにするために、鉄や銅合金などのプレス成形品がガイド部材として用いられるため、接続管として熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、中間層にアルミニウム層を備える複合管を用いると、以下のような問題がある。
すなわち、上記複合管は、管端に中間層のアルミニウムが露出しているため、中間層とガイド部材とが接触し、かつその間に水が存在した場合、アルミニウムが異種金属間接触腐食を起こし、漏水するおそれがある。
【0006】
一方、上記特許文献2に記載の管継手の場合、ガイドリングが樹脂製であって、金属製のように薄肉に成型できないため厚肉なものとなっており、接続管の管端でガイドリングを押し込む構造となっている。したがって、接続管の管端の切断状態によっては、管端のエッジによるリング状シール材の損傷を防止するという課題を完全に解決することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、正常な管端処理がされていない状態においても、リング状シール材を傷めたり、脱リングさせることなく、ワンタッチで複合管を正常に接続することができるとともに、複合管の金属製中間層とガイド部材との接触が確実に防止され、中間層の異種金属間接触腐食を防止できる管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管継手は、接続時に熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管内に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材と、このリング状シール材を囲繞するように装着されたガイド筒部を有する金属製のガイド部材とを備え、前記複合管をノズル部先端から後端に向かって差し込むに伴い、前記複合管内にガイド筒部が嵌合状態となった後、ノズル部の後端側に向かってさらに複合管を押し込むと、前記ガイド部材が、複合管の押し込みに伴って前記ノズル部の後端側に移動し、リング状シール材が複合管の内周面に水密に密着するようにした管継手であって、前記ガイド部材は、複合管の内層の端縁を受けて複合管の管端に露出する金属製中間層をガイド部材に対して非接触状態に保つ非接触状態保持手段を備えていることを特徴としている。
【0009】
本発明において、複合管としては、特に限定されず、内層及び外層が複層になっているものでも構わないし、内層と外層とが異なる熱可塑性樹脂で形成されていても構わない。そして、例えば、外層が高密度ポリエチレン、内層が耐熱性ポリエチレン、中間層がアルミニウムで形成された、積水化学工業社製の商品名エスロンスーパーエスロメタックス等の市販のものを用いることができる。
また、本発明において、ノズル部の先端とは、複合管への挿入される時の始端を意味する。
【0010】
ガイド部材は、特に限定されないが、できるだけ薄肉なものが好ましく、例えば、薄肉の鉄鋼や銅合金からなるパイプをプレス加工、絞り加工及び曲げ加工などして形成されたものが挙げられる。
ガイド部材が複合管の金属製中間層と非接触状態に保持する構造としては、目的を達成できれば、特に限定されないが、例えば、ガイド筒部のノズル部後端側からノズル部後端方向に徐々に拡径するテーパ部を設け、このテーパ部が、複合管の内層のみを受ける構造、複合管の内層の厚み以下の高さに立ち上がる突起または突条を設け、この突起または突条が複合管の内層のみを受ける構造、ガイド筒部先端を断面略コの字形に折り返し、折り返し部先端が複合管の外層のみに当接する構造、ガイド筒部先端で複合管の管端面を受ける部分にゴムパッキンまたは合成樹脂製カバーを設け、ゴムパッキンまたは合成樹脂製カバーのみが複合管の管端面に当接する構造などが挙げられる。
【0011】
さらに、ガイド部材は、特に限定されないが、ガイド筒部が、少なくともガイド筒部のノズル部先端側に、ノズル部の先端方向に向かって徐々に縮径し、最小外径が複合管の内径より小径になった縮径筒部を備えていることが好ましい。すなわち、ガイド筒部が縮径筒部にガイドされながらスムーズに複合管の管端部に嵌合する。したがって、斜め挿入した場合においても容易に複合管を正常位置まで差し込むことができる。
【0012】
また、ノズル部には、特に限定されないが、例えば、複合管がノズル部の正常位置まで外嵌されると、移動したガイド部材のリング状シール材側への戻りを防止する戻り止め突起または突条が設けられていることが好ましい。すなわち、接続された複合管に抜け方向の力が加わり、複合管が抜け方向に移動しようとしても、ガイド部材のノズル部先端側の端縁(以下、「ガイド筒部の後端」と記す)が上記戻り止め突起または突条に係止されて、複合管のみが抜け方向に移動する。したがって、ガイド筒部の後端でリング状シール材を傷付けたり、脱リングさせたりすることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる管継手は、以上のように、接続時に熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管内に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材と、このリング状シール材を囲繞するように装着されたガイド筒部を有する金属製のガイド部材とを備え、前記複合管をノズル部先端から後端に向かって差し込むに伴い、前記複合管内にガイド筒部が嵌合状態となった後、ノズル部の後端側に向かってさらに複合管を押し込むと、前記ガイド部材が、複合管の押し込みに伴って前記ノズル部の後端側に移動し、リング状シール材が複合管の内周面に水密に密着するようにした管継手であって、前記ガイド部材は、複合管の内層の端縁を受けて複合管の管端に露出する金属製中間層をガイド部材に対して非接触状態に保つ非接触状態保持手段を備えているので、正常な管端処理がなされていない状態においても、リング状シール材を傷めたり、脱リングさせたりすることなくワンタッチで正常に接続することができるとともに、複合管の金属製中間層とガイド部材との接触が確実に防止されて異種金属間接触腐食を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】図1の管継手に複合管を接続した状態の断面図である。
【図3】図1の管継手のリング状シール材部分の拡大断面図である。
【図4】図1の管継手のガイド部材の断面図である。
【図5】図1の管継手の抜け止めリングの断面図である。
【図6】図1の管継手へ複合管を差し込む途中の状態をあらわす断面図である。
【図7】図2の複合管の接続状態におけるノズル部後端部の拡大断面図である。
【図8】図1の管継手に接続された複合管に引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリング係止爪の作用を説明する係止爪部分の拡大断面図である。
【図9】図1の管継手に接続された複合管に大きな引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリングの作用を説明する断面図である。
【図10】図1の管継手のガイド部材の変形例をあらわす側面図である。
【図11】図10のガイド部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわしている。
【0016】
図1に示すように、この管継手Aは、継手本体1と、外筒部材2と、キャップ部材3と、リング状シール材4と、抜け止めリング5と、ガイド部材6aとを備え、図2に示すように、複合管9が接続されるようになっている。
複合管9は、高密度ポリエチレン製の外層91と、耐熱ポリエチレン製の内層92と、アルミニウム製の中間層93を備えている。
【0017】
継手本体1は、砲金やステンレス鋼等の金属材料で形成されていて、中央にスパナ等の締め付け工具(図示せず)の係合部が係合する六角ナット状のフランジ部1aを備え、フランジ部1aを挟んで一方に雄ネジ筒部1b、他方に、外筒受部1cとノズル部1dとが設けられている。
【0018】
ノズル部1dは、先端側から挿入ガイド部10、第1環状溝11、第2環状溝12、第3環状溝13、戻り止め突条14をその周面に備え、最大径部が接続される複合管9の内径より少し小径になっている。
挿入ガイド部10は、ノズル部1d先端に向かってその外径が略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面となっているとともに、先端の外径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した複合管9の管端の最小内径より小径となっている。
【0019】
第1環状溝11は、後述する抜け止めリング5を臨む位置に設けられている。
第2環状溝12は、図3に示すように、後述するガイド部材6aの縮径筒部61bが嵌り込むように設けられていて、その底面がノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径するテーパ面になっていて、ノズル部1dの後端側が第3環状溝13に連設されている。
第3環状溝13は、その底面のノズル部1dの中心軸方向中央部より少しノズル部1dの差し込み端側にリング状シール材4の位置決め突条13aをノズル部1dの中心軸に対して環状に備えている。
【0020】
戻り止め突条14は、第3環状溝13のノズル部1d側の側壁に沿って設けられていて、その高さは、ガイド部材6aの後端が係合して、ノズル部1dの差し込み端側への動きを抑えることができれば、低いことが好ましく、0.05mm程度である。
外筒受部1cは、ノズル部1dとフランジ部1aとの間に設けられ、ノズル部1dより少し大径になっているとともに、その周面に後述する外筒部材2の係合突条21が係合する係合溝15が穿設されている。
【0021】
リング状シール材4は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)等の合成ゴムで形成されていて、図3に示すように、本体部41と、第1シール部42と、第2シール部43とを備えている。
本体部41は、第3環状溝13のノズル部中心軸方向の長さより少し幅が狭く、その厚みが第3環状溝13の底からノズル部1dの外縁までの長さと略同じ厚みか少し薄い肉厚の筒状をしていて、筒の内周面に位置決め突条13aが嵌り込む係合溝41aが環状に設けられていて、外周から圧縮力が働いていないときには、第3環状溝13に嵌合状態で、第3環状溝13にノズル部後端側の壁との間、及び第2環状溝12側の壁との間に、圧縮時の逃げ空間となる隙間Sが形成されるようになっている。
【0022】
第1シール部42は、係合溝41aよりノズル部先端側に設けられていて、図3において破線で示すように、ノズル部1dの先端側から後端側に向かって徐々に拡径する断面略三角形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
第2シール部43は、係合溝41aよりノズル部後端側に設けられていて、図3に示すように、断面略かまぼこ形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
【0023】
ガイド部材6aは、肉厚0.1mm程度の薄肉のステンレス鋼や銅合金からなるパイプをプレス加工、絞り加工及び曲げ加工などして形成され、図4に示すように、ガイド筒部61と、非接触状態保持構造としてのテーパ部62と、鍔部63とを備えている。
ガイド筒部61は、筒部本体61aと、縮径筒部61bとを備えている。
【0024】
筒部本体61aは、その外径が複合管9の内径と略同じか少し小径の円筒状をしている。
縮径筒部61bは、筒部本体61aのノズル部1dの先端側に連設され、ノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径して、ノズル部1dの先端側の外径が複合管9の内径より5%程度小径になっている。
【0025】
テーパ部62は、筒部本体61aのノズル部1dの後端側からノズル部1dの後端方向に向かって徐々に拡径するように設けられ、そのテーパ角は、15〜45度であれば特に限定されないが、管端面の面仕上げまたは面取りの角度に近いことが好ましく、本実施の形態では30度である。
【0026】
鍔部63は、パイプの端部を折り曲げて重合させて形成され、その外径が複合管9の外径より少し小径になっている。
【0027】
そして、ガイド部材6aの初期位置は、図1〜図3に示すように、ガイド筒部61が第1シール部42に外嵌されるとともに、縮径筒部61bのノズル部1dの先端側の端部が第2環状溝12内に嵌り込むように装着され、鍔部63は第2シール部43に被る手前に配置される。この配置により、衝撃や振動に対して動かなくなっている。
なお、このガイド部材6aが装着された状態でリング状シール材4は、第1シール部42が、ガイド筒部61によって圧縮された状態になっている。
【0028】
外筒部材2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成された筒状体であって、一端部の内周面に係合突条21を備え、他端部側が一旦外側に膨らみ厚肉になったのち、外周面が切り欠かれた状態となり、この切欠き部に2条の係合溝22,22が形成されている。
また、外筒部材2は、内径が概ね複合管9の外径と略同じか少し大径になっていて、外周面他端に内周面が他の部分より段状に拡径している拡径部23を備えている。
外筒部材2のノズル部1dの先端側の端面は、後述する抜け止めリング5の本体51の形状に沿うように、抜け止めリング位置決め凹部24がリング状に設けられている。
【0029】
そして、外筒部材2は、その一端に設けられた係合突条21が外筒受部1cの係合溝15に係合されるように、一端部が外筒受部1cに外嵌されている。
すなわち、外筒部材2は、係合突条21が、弾性変形しながら、継手本体1方向に押し込まれ、係合突条21が係合溝15に係合することによって、継手本体1から離脱せず、継手本体1に対して回転自在に取着されている。
【0030】
抜け止めリング5は、ステンレス鋼製の薄板材を打ち抜くとともに、折り曲げ加工されていて、リング状の本体51と、この本体51の内周側に複数の係止爪52と、食い込み規制部53とを交互に備えている。
本体51は、その内径が、拡径部23の内径とほぼ同じになっていて、外径が外筒部材2の他端面(ノズル部1dの先端側の端面)の外径より小径のリング状になっている。
係止爪52は、図5に示すように、本体51に対して40〜45°の角度で一方に傾斜して立ち上がるように設けられている。
【0031】
食い込み規制部53は、係止爪52の両側でそれぞれ本体51に対して係止爪52と同じ角度で立ち上がったのち、外側に180°折り曲げて板材が重なるように形成されている。
また、食い込み規制部53は、本体51から先端までの長さが、本体51から係止爪52の先端までの長さより複合管9の外層91の肉厚分程度短くなっている。
【0032】
そして、抜け止めリング5は、本体51が抜け止めリング位置決め凹部24に嵌り込むとともに、係止爪52及び食い込み規制部53が拡径部23に収容された状態に保持されている。
【0033】
キャップ部材3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成されたキャップ本体31と、嵌合筒部32とを備えている。
キャップ本体31は、管挿入端側の内径が複合管9の外径と略同じか少し大径をしていて、中間部から先端(嵌合筒部32と反対側の端)にかけてガイド部31aを備えている。
ガイド部31aは、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっている。
【0034】
嵌合筒部32は、キャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられ、内周面に2条の係合突条32a,32aが設けられている。
そして、キャップ部材3は、係合突条32a,32aが外筒部材2の係合溝22,22に嵌り込むように、嵌合筒部32が外筒部材2に外嵌されることによって、抜け止めリング5の離脱を防止している。
【0035】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のようにして、複合管9がワンタッチ挿入で接続される。
まず、継手本体1の雄ネジ筒部1bを図示していない配管材(例えば、ヘッダー)に螺合させて、他の配管材と接続した後、複合管9をキャップ部材3の開口から継手本体1側に差し込んでいくと、複合管9の先端が、抜け止めリング5の係止爪52及び食い込み規制部53をまず差し込む方向に弾性変形させるので、図6に示すように、係止爪52及び食い込み規制部53が複合管9の外壁に沿う。
【0036】
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、図6に示すように、縮径筒部61bの先端外径が、複合管9の内径より小さくなっているので、この縮径筒部61bのテーパ面にガイドされながら、複合管9の先端内に筒部本体61aがスムーズに入り込み、ガイド筒部61全体が複合管9内に入り込むとともに、複合管9の内層92先端でテーパ部62に受けられる。
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、テーパ部62が複合管9の内層92に押され、ガイド部材6aが複合管9とともに、ノズル部後端側に差し込まれていき、図2及び図7に示すように、鍔部63が外筒受部1cの端面に当接するとともに、ガイド筒部61が戻り止め突条14よりノズル部後端側に入り込む。また、リング状シール材4の第1シール部42及び第2シール部43が複合管9の内周面に水密に密着する。
【0037】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のような優れた効果を備えている。
(1)ガイド部材6aを備えているので、複合管9の管端がリング状シール材4にあたることがない。したがって、先端が斜め切りの状態や管端面の仕上げが不足した状態で複合管9を管継手Aに差し込んでも、リング状シール材4が傷ついたり、脱リングしたりすることがない。
(2)非接触状態保持手段としてテーパ部62が設けられていて、図7に示すように、複合管9の内層92の端面がテーパ部62に受けられ、中間層93がガイド部材6aに接触することがない。したがって、異種金属間接触腐食による中間層93の劣化が防止される。
(3)ガイド部材6aが縮径筒部61bを備えているので、ガイド筒部61がスムーズに複合管9の管端に入り込む。
(4)抜け止めリング5を備えているので、複合管9の抜けを確実に防止することができる。すなわち、複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に動こうとすると、まず、係止爪52が図8に示すように、複合管9の外層91に食い込み、加わった力が大きくないときは、この食い込みのみによって抜け方向の動きを抑える。そして、加わった力が大きい場合、複合管9の抜け方向への移動に伴って、図9に示すように、外層91に食い込んだ係止爪52が本体51と平行になるように起き上がるが、食い込み規制部53によって、複合管9の管壁がノズル部1d方向に縮径し、ノズル部1dの第1環状溝11内に入り込み、それ以上の抜けが防止される。
(5)ノズル部1dが戻り止め突条14を備えているので、上記のように複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に移動して、ガイド部材6aが共ズレしようとしても、ガイド部材6aの縮径筒部61bの先端が戻り止め突条14に係止される。したがって、ガイド部材6aがそれ以上抜け方向に共ズレすることがなく、縮径筒部61bの先端によってリング状シール材4を傷つけたり、脱リングさせることがない。
(6)抜け止めリング5が、係止爪52の両側に食い込み規制部53を備えているので、係止爪52が所定位置まで食い込むと、食い込み規制部53が複合管9の外壁面に当接し、それ以上の係止爪52の外層91への食い込みを防止する。したがって、係止爪52は、外層91をつき破って中間層に達することがない。すなわち、中間層93と抜け止めリング5との直接接触による異種金属間接触腐食を防止することができる。
(7)挿入ガイド部10が、ノズル部1d先端に向かってその外径が略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面となっているとともに、先端の外径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最小径部より小径となっており、かつ、ガイド部31aが、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっているので、切断の際に複合管9が偏平し、その状態で複合管9を接続した場合においても、挿入ガイド部10がスムーズに複合管9の先端部内に入り込むとともに、複合管9がガイド31aの先端からキャップ本体31内に入り込む。そして、挿入ガイド部10及びガイド部31aによって、偏平した複合管9が円筒状体に矯正され、ガイド部材6aのガイド筒部61にスムーズに外嵌される。
(8)リング状シール材4が、ガイド部材6aのガイド筒部61によって押さえられているので、複合管9のリング状シール材4を通過する際の抵抗が小さくなり、複合管の挿入力を低減できる。したがって、施工性が向上する。
【0038】
図10及び図11は、本発明にかかる管継手のガイド部材の変形例をあらわしている。
図10及び図11に示すように、このガイド部材6bは、ガイド筒部64がテーパ部62側から他端に向かって徐々に縮径していて、ガイド筒部64の最大外径が、複合管9の内径と略同じか少し大径となっているとともに、テーパ部62に、非接触状態保持手段として3つの係止部65を備えている以外は、上記ガイド部材6aと同様になっている。
【0039】
すなわち、係止部65は、テーパ部62の壁面の一部を鍔部63側からガイド筒部61方向に凹設させることによって設けられ、係止部65のガイド筒部64のテーパ部62側に端縁からの高さhが複合管9の内層92の厚み以下になっている。
したがって、このガイド部材6bによれば、差し込まれた複合管9の内層92の端面が係止部65に受けられるため、複合管9の中間層93がガイド部材6bに接触することがない。
【0040】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、リング状シール材が1つであったが、シール材用環状溝を複数、軸方向に平行に設け、それぞれにリング状シール材を嵌合させるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、複合管が接続されるようになっていたが、この管継手は、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管を接続するのに用いても構わない。
【符号の説明】
【0041】
A 管継手
9 複合管
91 外層
92 内層
93 中間層
1 継手本体
1d ノズル部
13 第3環状溝
14 戻り止め突条
4 リング状シール材
6a,6b ガイド部材
61 ガイド筒部
61a 筒部本体
61b 縮径筒部
62 テーパ部(非接触状態保持手段)
64 ガイド筒部
65 係止部(非接触状態保持手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管を接続するために用いられる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ワンタッチで接続及び止水が完了するワンタッチ式の管継手として、接続時に接続管内に入り込むノズル部(ニップル部ともいう)を備え、ノズル部の外周に形成した環状溝にノズル部より外径が大きいリング状シール材を嵌装し、接続管の接続によって、このリング状シール材が接続管の内周面に水密に密着するとともに、継手入口に設けられた抜け止めリング等の抜け止め手段によって接続管の抜け止めをワンタッチで行えるようにしたものがある。
上記ワンタッチ式の管継手においては、接続される接続管は、配管施工現場で、所望長さに切断され、管端内外面の面取り作業などの端末処理を施したのち、管継手と接続されることが作業標準となっているが、作業者によっては、作業標準を守らず端末処理をせずに接続作業を行うものもある。
しかし、従来の管継手の場合、端末処理を正確に行わず、特に斜め切りのまま接続管を管継手に接続しようとすると、接続管の先端がリング状シール材にひっかかり、リング状シール材を傷つけたり、環状溝から脱リングさせて、止水性が確保できなくなるおそれがある。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、接続管の管端がリング状シール材にあたらないようにした管継手(特許文献1)や、ノズル部とこのノズル部を周囲から囲繞するように設けられた外筒部との間に設けられる接続管の挿入空間の入口に樹脂製のガイドリングを設け、このガイドリングによって、接続管の管端を受け、接続管の押し込みに伴って、ガイドリングが接続管の管端面に沿いながら、ノズル部の後端側に移動し、接続管の管端がリング状シール材に当たり、リング状シール材を傷つけたり、脱リングさせたりすることがないようにした管継手(特許文献2)が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3600764号公報
【特許文献2】特開2010−101477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の管継手の場合、その肉厚をできるだけ薄肉なものにするために、鉄や銅合金などのプレス成形品がガイド部材として用いられるため、接続管として熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、中間層にアルミニウム層を備える複合管を用いると、以下のような問題がある。
すなわち、上記複合管は、管端に中間層のアルミニウムが露出しているため、中間層とガイド部材とが接触し、かつその間に水が存在した場合、アルミニウムが異種金属間接触腐食を起こし、漏水するおそれがある。
【0006】
一方、上記特許文献2に記載の管継手の場合、ガイドリングが樹脂製であって、金属製のように薄肉に成型できないため厚肉なものとなっており、接続管の管端でガイドリングを押し込む構造となっている。したがって、接続管の管端の切断状態によっては、管端のエッジによるリング状シール材の損傷を防止するという課題を完全に解決することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、正常な管端処理がされていない状態においても、リング状シール材を傷めたり、脱リングさせることなく、ワンタッチで複合管を正常に接続することができるとともに、複合管の金属製中間層とガイド部材との接触が確実に防止され、中間層の異種金属間接触腐食を防止できる管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管継手は、接続時に熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管内に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材と、このリング状シール材を囲繞するように装着されたガイド筒部を有する金属製のガイド部材とを備え、前記複合管をノズル部先端から後端に向かって差し込むに伴い、前記複合管内にガイド筒部が嵌合状態となった後、ノズル部の後端側に向かってさらに複合管を押し込むと、前記ガイド部材が、複合管の押し込みに伴って前記ノズル部の後端側に移動し、リング状シール材が複合管の内周面に水密に密着するようにした管継手であって、前記ガイド部材は、複合管の内層の端縁を受けて複合管の管端に露出する金属製中間層をガイド部材に対して非接触状態に保つ非接触状態保持手段を備えていることを特徴としている。
【0009】
本発明において、複合管としては、特に限定されず、内層及び外層が複層になっているものでも構わないし、内層と外層とが異なる熱可塑性樹脂で形成されていても構わない。そして、例えば、外層が高密度ポリエチレン、内層が耐熱性ポリエチレン、中間層がアルミニウムで形成された、積水化学工業社製の商品名エスロンスーパーエスロメタックス等の市販のものを用いることができる。
また、本発明において、ノズル部の先端とは、複合管への挿入される時の始端を意味する。
【0010】
ガイド部材は、特に限定されないが、できるだけ薄肉なものが好ましく、例えば、薄肉の鉄鋼や銅合金からなるパイプをプレス加工、絞り加工及び曲げ加工などして形成されたものが挙げられる。
ガイド部材が複合管の金属製中間層と非接触状態に保持する構造としては、目的を達成できれば、特に限定されないが、例えば、ガイド筒部のノズル部後端側からノズル部後端方向に徐々に拡径するテーパ部を設け、このテーパ部が、複合管の内層のみを受ける構造、複合管の内層の厚み以下の高さに立ち上がる突起または突条を設け、この突起または突条が複合管の内層のみを受ける構造、ガイド筒部先端を断面略コの字形に折り返し、折り返し部先端が複合管の外層のみに当接する構造、ガイド筒部先端で複合管の管端面を受ける部分にゴムパッキンまたは合成樹脂製カバーを設け、ゴムパッキンまたは合成樹脂製カバーのみが複合管の管端面に当接する構造などが挙げられる。
【0011】
さらに、ガイド部材は、特に限定されないが、ガイド筒部が、少なくともガイド筒部のノズル部先端側に、ノズル部の先端方向に向かって徐々に縮径し、最小外径が複合管の内径より小径になった縮径筒部を備えていることが好ましい。すなわち、ガイド筒部が縮径筒部にガイドされながらスムーズに複合管の管端部に嵌合する。したがって、斜め挿入した場合においても容易に複合管を正常位置まで差し込むことができる。
【0012】
また、ノズル部には、特に限定されないが、例えば、複合管がノズル部の正常位置まで外嵌されると、移動したガイド部材のリング状シール材側への戻りを防止する戻り止め突起または突条が設けられていることが好ましい。すなわち、接続された複合管に抜け方向の力が加わり、複合管が抜け方向に移動しようとしても、ガイド部材のノズル部先端側の端縁(以下、「ガイド筒部の後端」と記す)が上記戻り止め突起または突条に係止されて、複合管のみが抜け方向に移動する。したがって、ガイド筒部の後端でリング状シール材を傷付けたり、脱リングさせたりすることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる管継手は、以上のように、接続時に熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管内に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材と、このリング状シール材を囲繞するように装着されたガイド筒部を有する金属製のガイド部材とを備え、前記複合管をノズル部先端から後端に向かって差し込むに伴い、前記複合管内にガイド筒部が嵌合状態となった後、ノズル部の後端側に向かってさらに複合管を押し込むと、前記ガイド部材が、複合管の押し込みに伴って前記ノズル部の後端側に移動し、リング状シール材が複合管の内周面に水密に密着するようにした管継手であって、前記ガイド部材は、複合管の内層の端縁を受けて複合管の管端に露出する金属製中間層をガイド部材に対して非接触状態に保つ非接触状態保持手段を備えているので、正常な管端処理がなされていない状態においても、リング状シール材を傷めたり、脱リングさせたりすることなくワンタッチで正常に接続することができるとともに、複合管の金属製中間層とガイド部材との接触が確実に防止されて異種金属間接触腐食を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】図1の管継手に複合管を接続した状態の断面図である。
【図3】図1の管継手のリング状シール材部分の拡大断面図である。
【図4】図1の管継手のガイド部材の断面図である。
【図5】図1の管継手の抜け止めリングの断面図である。
【図6】図1の管継手へ複合管を差し込む途中の状態をあらわす断面図である。
【図7】図2の複合管の接続状態におけるノズル部後端部の拡大断面図である。
【図8】図1の管継手に接続された複合管に引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリング係止爪の作用を説明する係止爪部分の拡大断面図である。
【図9】図1の管継手に接続された複合管に大きな引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリングの作用を説明する断面図である。
【図10】図1の管継手のガイド部材の変形例をあらわす側面図である。
【図11】図10のガイド部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわしている。
【0016】
図1に示すように、この管継手Aは、継手本体1と、外筒部材2と、キャップ部材3と、リング状シール材4と、抜け止めリング5と、ガイド部材6aとを備え、図2に示すように、複合管9が接続されるようになっている。
複合管9は、高密度ポリエチレン製の外層91と、耐熱ポリエチレン製の内層92と、アルミニウム製の中間層93を備えている。
【0017】
継手本体1は、砲金やステンレス鋼等の金属材料で形成されていて、中央にスパナ等の締め付け工具(図示せず)の係合部が係合する六角ナット状のフランジ部1aを備え、フランジ部1aを挟んで一方に雄ネジ筒部1b、他方に、外筒受部1cとノズル部1dとが設けられている。
【0018】
ノズル部1dは、先端側から挿入ガイド部10、第1環状溝11、第2環状溝12、第3環状溝13、戻り止め突条14をその周面に備え、最大径部が接続される複合管9の内径より少し小径になっている。
挿入ガイド部10は、ノズル部1d先端に向かってその外径が略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面となっているとともに、先端の外径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した複合管9の管端の最小内径より小径となっている。
【0019】
第1環状溝11は、後述する抜け止めリング5を臨む位置に設けられている。
第2環状溝12は、図3に示すように、後述するガイド部材6aの縮径筒部61bが嵌り込むように設けられていて、その底面がノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径するテーパ面になっていて、ノズル部1dの後端側が第3環状溝13に連設されている。
第3環状溝13は、その底面のノズル部1dの中心軸方向中央部より少しノズル部1dの差し込み端側にリング状シール材4の位置決め突条13aをノズル部1dの中心軸に対して環状に備えている。
【0020】
戻り止め突条14は、第3環状溝13のノズル部1d側の側壁に沿って設けられていて、その高さは、ガイド部材6aの後端が係合して、ノズル部1dの差し込み端側への動きを抑えることができれば、低いことが好ましく、0.05mm程度である。
外筒受部1cは、ノズル部1dとフランジ部1aとの間に設けられ、ノズル部1dより少し大径になっているとともに、その周面に後述する外筒部材2の係合突条21が係合する係合溝15が穿設されている。
【0021】
リング状シール材4は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)等の合成ゴムで形成されていて、図3に示すように、本体部41と、第1シール部42と、第2シール部43とを備えている。
本体部41は、第3環状溝13のノズル部中心軸方向の長さより少し幅が狭く、その厚みが第3環状溝13の底からノズル部1dの外縁までの長さと略同じ厚みか少し薄い肉厚の筒状をしていて、筒の内周面に位置決め突条13aが嵌り込む係合溝41aが環状に設けられていて、外周から圧縮力が働いていないときには、第3環状溝13に嵌合状態で、第3環状溝13にノズル部後端側の壁との間、及び第2環状溝12側の壁との間に、圧縮時の逃げ空間となる隙間Sが形成されるようになっている。
【0022】
第1シール部42は、係合溝41aよりノズル部先端側に設けられていて、図3において破線で示すように、ノズル部1dの先端側から後端側に向かって徐々に拡径する断面略三角形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
第2シール部43は、係合溝41aよりノズル部後端側に設けられていて、図3に示すように、断面略かまぼこ形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
【0023】
ガイド部材6aは、肉厚0.1mm程度の薄肉のステンレス鋼や銅合金からなるパイプをプレス加工、絞り加工及び曲げ加工などして形成され、図4に示すように、ガイド筒部61と、非接触状態保持構造としてのテーパ部62と、鍔部63とを備えている。
ガイド筒部61は、筒部本体61aと、縮径筒部61bとを備えている。
【0024】
筒部本体61aは、その外径が複合管9の内径と略同じか少し小径の円筒状をしている。
縮径筒部61bは、筒部本体61aのノズル部1dの先端側に連設され、ノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径して、ノズル部1dの先端側の外径が複合管9の内径より5%程度小径になっている。
【0025】
テーパ部62は、筒部本体61aのノズル部1dの後端側からノズル部1dの後端方向に向かって徐々に拡径するように設けられ、そのテーパ角は、15〜45度であれば特に限定されないが、管端面の面仕上げまたは面取りの角度に近いことが好ましく、本実施の形態では30度である。
【0026】
鍔部63は、パイプの端部を折り曲げて重合させて形成され、その外径が複合管9の外径より少し小径になっている。
【0027】
そして、ガイド部材6aの初期位置は、図1〜図3に示すように、ガイド筒部61が第1シール部42に外嵌されるとともに、縮径筒部61bのノズル部1dの先端側の端部が第2環状溝12内に嵌り込むように装着され、鍔部63は第2シール部43に被る手前に配置される。この配置により、衝撃や振動に対して動かなくなっている。
なお、このガイド部材6aが装着された状態でリング状シール材4は、第1シール部42が、ガイド筒部61によって圧縮された状態になっている。
【0028】
外筒部材2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成された筒状体であって、一端部の内周面に係合突条21を備え、他端部側が一旦外側に膨らみ厚肉になったのち、外周面が切り欠かれた状態となり、この切欠き部に2条の係合溝22,22が形成されている。
また、外筒部材2は、内径が概ね複合管9の外径と略同じか少し大径になっていて、外周面他端に内周面が他の部分より段状に拡径している拡径部23を備えている。
外筒部材2のノズル部1dの先端側の端面は、後述する抜け止めリング5の本体51の形状に沿うように、抜け止めリング位置決め凹部24がリング状に設けられている。
【0029】
そして、外筒部材2は、その一端に設けられた係合突条21が外筒受部1cの係合溝15に係合されるように、一端部が外筒受部1cに外嵌されている。
すなわち、外筒部材2は、係合突条21が、弾性変形しながら、継手本体1方向に押し込まれ、係合突条21が係合溝15に係合することによって、継手本体1から離脱せず、継手本体1に対して回転自在に取着されている。
【0030】
抜け止めリング5は、ステンレス鋼製の薄板材を打ち抜くとともに、折り曲げ加工されていて、リング状の本体51と、この本体51の内周側に複数の係止爪52と、食い込み規制部53とを交互に備えている。
本体51は、その内径が、拡径部23の内径とほぼ同じになっていて、外径が外筒部材2の他端面(ノズル部1dの先端側の端面)の外径より小径のリング状になっている。
係止爪52は、図5に示すように、本体51に対して40〜45°の角度で一方に傾斜して立ち上がるように設けられている。
【0031】
食い込み規制部53は、係止爪52の両側でそれぞれ本体51に対して係止爪52と同じ角度で立ち上がったのち、外側に180°折り曲げて板材が重なるように形成されている。
また、食い込み規制部53は、本体51から先端までの長さが、本体51から係止爪52の先端までの長さより複合管9の外層91の肉厚分程度短くなっている。
【0032】
そして、抜け止めリング5は、本体51が抜け止めリング位置決め凹部24に嵌り込むとともに、係止爪52及び食い込み規制部53が拡径部23に収容された状態に保持されている。
【0033】
キャップ部材3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成されたキャップ本体31と、嵌合筒部32とを備えている。
キャップ本体31は、管挿入端側の内径が複合管9の外径と略同じか少し大径をしていて、中間部から先端(嵌合筒部32と反対側の端)にかけてガイド部31aを備えている。
ガイド部31aは、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっている。
【0034】
嵌合筒部32は、キャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられ、内周面に2条の係合突条32a,32aが設けられている。
そして、キャップ部材3は、係合突条32a,32aが外筒部材2の係合溝22,22に嵌り込むように、嵌合筒部32が外筒部材2に外嵌されることによって、抜け止めリング5の離脱を防止している。
【0035】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のようにして、複合管9がワンタッチ挿入で接続される。
まず、継手本体1の雄ネジ筒部1bを図示していない配管材(例えば、ヘッダー)に螺合させて、他の配管材と接続した後、複合管9をキャップ部材3の開口から継手本体1側に差し込んでいくと、複合管9の先端が、抜け止めリング5の係止爪52及び食い込み規制部53をまず差し込む方向に弾性変形させるので、図6に示すように、係止爪52及び食い込み規制部53が複合管9の外壁に沿う。
【0036】
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、図6に示すように、縮径筒部61bの先端外径が、複合管9の内径より小さくなっているので、この縮径筒部61bのテーパ面にガイドされながら、複合管9の先端内に筒部本体61aがスムーズに入り込み、ガイド筒部61全体が複合管9内に入り込むとともに、複合管9の内層92先端でテーパ部62に受けられる。
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、テーパ部62が複合管9の内層92に押され、ガイド部材6aが複合管9とともに、ノズル部後端側に差し込まれていき、図2及び図7に示すように、鍔部63が外筒受部1cの端面に当接するとともに、ガイド筒部61が戻り止め突条14よりノズル部後端側に入り込む。また、リング状シール材4の第1シール部42及び第2シール部43が複合管9の内周面に水密に密着する。
【0037】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のような優れた効果を備えている。
(1)ガイド部材6aを備えているので、複合管9の管端がリング状シール材4にあたることがない。したがって、先端が斜め切りの状態や管端面の仕上げが不足した状態で複合管9を管継手Aに差し込んでも、リング状シール材4が傷ついたり、脱リングしたりすることがない。
(2)非接触状態保持手段としてテーパ部62が設けられていて、図7に示すように、複合管9の内層92の端面がテーパ部62に受けられ、中間層93がガイド部材6aに接触することがない。したがって、異種金属間接触腐食による中間層93の劣化が防止される。
(3)ガイド部材6aが縮径筒部61bを備えているので、ガイド筒部61がスムーズに複合管9の管端に入り込む。
(4)抜け止めリング5を備えているので、複合管9の抜けを確実に防止することができる。すなわち、複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に動こうとすると、まず、係止爪52が図8に示すように、複合管9の外層91に食い込み、加わった力が大きくないときは、この食い込みのみによって抜け方向の動きを抑える。そして、加わった力が大きい場合、複合管9の抜け方向への移動に伴って、図9に示すように、外層91に食い込んだ係止爪52が本体51と平行になるように起き上がるが、食い込み規制部53によって、複合管9の管壁がノズル部1d方向に縮径し、ノズル部1dの第1環状溝11内に入り込み、それ以上の抜けが防止される。
(5)ノズル部1dが戻り止め突条14を備えているので、上記のように複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に移動して、ガイド部材6aが共ズレしようとしても、ガイド部材6aの縮径筒部61bの先端が戻り止め突条14に係止される。したがって、ガイド部材6aがそれ以上抜け方向に共ズレすることがなく、縮径筒部61bの先端によってリング状シール材4を傷つけたり、脱リングさせることがない。
(6)抜け止めリング5が、係止爪52の両側に食い込み規制部53を備えているので、係止爪52が所定位置まで食い込むと、食い込み規制部53が複合管9の外壁面に当接し、それ以上の係止爪52の外層91への食い込みを防止する。したがって、係止爪52は、外層91をつき破って中間層に達することがない。すなわち、中間層93と抜け止めリング5との直接接触による異種金属間接触腐食を防止することができる。
(7)挿入ガイド部10が、ノズル部1d先端に向かってその外径が略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面となっているとともに、先端の外径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最小径部より小径となっており、かつ、ガイド部31aが、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっているので、切断の際に複合管9が偏平し、その状態で複合管9を接続した場合においても、挿入ガイド部10がスムーズに複合管9の先端部内に入り込むとともに、複合管9がガイド31aの先端からキャップ本体31内に入り込む。そして、挿入ガイド部10及びガイド部31aによって、偏平した複合管9が円筒状体に矯正され、ガイド部材6aのガイド筒部61にスムーズに外嵌される。
(8)リング状シール材4が、ガイド部材6aのガイド筒部61によって押さえられているので、複合管9のリング状シール材4を通過する際の抵抗が小さくなり、複合管の挿入力を低減できる。したがって、施工性が向上する。
【0038】
図10及び図11は、本発明にかかる管継手のガイド部材の変形例をあらわしている。
図10及び図11に示すように、このガイド部材6bは、ガイド筒部64がテーパ部62側から他端に向かって徐々に縮径していて、ガイド筒部64の最大外径が、複合管9の内径と略同じか少し大径となっているとともに、テーパ部62に、非接触状態保持手段として3つの係止部65を備えている以外は、上記ガイド部材6aと同様になっている。
【0039】
すなわち、係止部65は、テーパ部62の壁面の一部を鍔部63側からガイド筒部61方向に凹設させることによって設けられ、係止部65のガイド筒部64のテーパ部62側に端縁からの高さhが複合管9の内層92の厚み以下になっている。
したがって、このガイド部材6bによれば、差し込まれた複合管9の内層92の端面が係止部65に受けられるため、複合管9の中間層93がガイド部材6bに接触することがない。
【0040】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、リング状シール材が1つであったが、シール材用環状溝を複数、軸方向に平行に設け、それぞれにリング状シール材を嵌合させるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、複合管が接続されるようになっていたが、この管継手は、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管を接続するのに用いても構わない。
【符号の説明】
【0041】
A 管継手
9 複合管
91 外層
92 内層
93 中間層
1 継手本体
1d ノズル部
13 第3環状溝
14 戻り止め突条
4 リング状シール材
6a,6b ガイド部材
61 ガイド筒部
61a 筒部本体
61b 縮径筒部
62 テーパ部(非接触状態保持手段)
64 ガイド筒部
65 係止部(非接触状態保持手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続時に熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管内に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、
前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材と、
このリング状シール材を囲繞するように装着されたガイド筒部を有する金属製のガイド部材とを備え、
前記複合管をノズル部先端から後端に向かって差し込むに伴い、前記複合管内にガイド筒部が嵌合状態となった後、ノズル部の後端側に向かってさらに複合管を押し込むと、前記ガイド部材が、複合管の押し込みに伴って前記ノズル部の後端側に移動し、リング状シール材が複合管の内周面に水密に密着するようにした管継手であって、
前記ガイド部材は、複合管の内層の端縁を受けて複合管の管端に露出する金属製中間層をガイド部材に対して非接触状態に保つ非接触状態保持手段を備えていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
ガイド部材の非接触状態保持手段が、ガイド筒部の端部から徐々に拡径し、複合管の内層のみを受けるテーパ部である請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
ガイド部材の非接触状態保持手段が、複合管の内層の厚み以下の高さに立ち上がる突起または突条である請求項1に記載の管継手。
【請求項4】
ノズル部には、複合管がノズル部の正常位置まで外嵌されると、移動したガイド部材のリング状シール材側への戻りを防止する戻り止め突起または突条が設けられているを備えている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
ガイド部材のガイド筒部が、ガイド筒部の先端側に、ノズル部の先端方向に向かって縮径する縮径筒部を備えている請求項1〜請求項4のいずれかに記載の管継手。
【請求項1】
接続時に熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製中間層とを備える複合管内に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、
前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材と、
このリング状シール材を囲繞するように装着されたガイド筒部を有する金属製のガイド部材とを備え、
前記複合管をノズル部先端から後端に向かって差し込むに伴い、前記複合管内にガイド筒部が嵌合状態となった後、ノズル部の後端側に向かってさらに複合管を押し込むと、前記ガイド部材が、複合管の押し込みに伴って前記ノズル部の後端側に移動し、リング状シール材が複合管の内周面に水密に密着するようにした管継手であって、
前記ガイド部材は、複合管の内層の端縁を受けて複合管の管端に露出する金属製中間層をガイド部材に対して非接触状態に保つ非接触状態保持手段を備えていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
ガイド部材の非接触状態保持手段が、ガイド筒部の端部から徐々に拡径し、複合管の内層のみを受けるテーパ部である請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
ガイド部材の非接触状態保持手段が、複合管の内層の厚み以下の高さに立ち上がる突起または突条である請求項1に記載の管継手。
【請求項4】
ノズル部には、複合管がノズル部の正常位置まで外嵌されると、移動したガイド部材のリング状シール材側への戻りを防止する戻り止め突起または突条が設けられているを備えている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
ガイド部材のガイド筒部が、ガイド筒部の先端側に、ノズル部の先端方向に向かって縮径する縮径筒部を備えている請求項1〜請求項4のいずれかに記載の管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−77803(P2012−77803A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221861(P2010−221861)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
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